JP2014160760A - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1)ネオジム(Nd)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成する工程と、2)ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を含む重希土類元素供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該重希土類元素供給源と該焼結体とを第1の拡散温度で加熱し、該重希土類元素供給源から該焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させる工程と、3)前記工程2)の後に、アルミニウム(Al)を含むアルミニウム供給源と、前記重希土類元素供給源から前記焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体とを容器内に配置し、該アルミニウム供給源と該焼結体とを前記第1の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲の第2の拡散温度で加熱し、該アルミニウム供給源から該焼結体にアルミニウム(Al)を拡散させる工程と、を含むことを特徴とするR−T−B系焼結磁石の製造方法
一般式: R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。)
【選択図】なし
Description
このため、例えば特許文献1に示すようにR−T−B系焼結磁石の表面から内部に重希土類元素(以下、重希土類元素のことを「RH」という場合がある)であるジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を拡散させ、主相結晶粒の粒界近傍(主相結晶粒の外殻部)にジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を濃化させて高いHcJを得る方法が採られている。
一般式: R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。)
一般式: R2T14B (1)
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)。)
これに対して、本発明に係る製造方法は、DyおよびTbの少なくとも一方を第1の拡散温度で拡散させる重希土類元素拡散処理を行った後、Alを第1の温度よりも低くかつ600℃〜760℃の範囲内の第2の拡散温度で拡散させるアルミニウム拡散処理(Al拡散処理)を行う点が従来の方法と異なる。これにより高温で高いHcJが得られると共に、残留磁束密度Brの低下を抑制できる。
一方、焼結体の表面からDyおよび/またはTbを拡散させると、主相結晶粒の外殻部にDyおよび/またはTbを濃化させることができるので、Brをほとんど低下させることなくHcJを向上させることができる。
本発明は、主相結晶粒の外殻部にDyおよび/またはTbを濃化させた後、Dyおよび/またはTbを拡散させる温度よりも低くかつ600℃〜760℃の温度でAlを拡散させる。これにより、主相結晶粒の外殻部にDyおよび/またはTbが濃化した状態を維持しながら、Alを結晶粒界に濃化させることができる。その結果、主相結晶粒間の磁気的結合が結晶粒界に濃化したAlによって抑制され、高温において高いHcJ向上効果が得られると考えられる。
また、Dyおよび/またはTbを拡散させると、Dyおよび/またはTbは主相結晶粒の外殻部に濃化するが、一部は結晶粒界にも存在していると考えられる。Alを拡散させることにより、結晶粒界に存在するDyおよび/またはTbが何だかの挙動を起こし、主相結晶粒の外殻部に濃化していると考えられる。このDyおよび/またはTbの拡散とAlの拡散の相乗効果により、高温において高いHcJが得られると考えられる。
AlはDyおよび/またはTbに比べ低い温度で拡散する。そのため、特許文献2〜4の方法によりDyおよび/またはTbとAlを同時に拡散させると、比較的高い拡散温度では、Dyおよび/またはTbは主相結晶粒の外殻部に濃化されるが、Alは結晶粒界とともに主相結晶粒内にも多く拡散することとなり、結晶粒界に濃化させるAl量が少なくなり、上述した効果を得ることができなくなる。さらにBrが低下する恐れがある。一方、比較的低い拡散温度では、Alは結晶粒界に濃化し主相結晶粒内には拡散しないが、Dyおよび/またはTbを主相結晶粒の外殻部へ濃化することができなくなり、HcJの向上効果が小さくなる。
また、本明細書における用語「表層部」は、文字「層」を含んでいるが、層状となった組織を有することを規定するものではなく(層状の組織を必須とするものではなく)、断面において、表面およびその近傍を意味する(「表面部」または「表面近傍部」と言い換えることができる)
一方、結晶粒界に存在するAlについては、Al拡散処理により増加するAlの量は、例えば質量比で0.01質量%〜0.05質量%程度と少量であるため、TEM−EDX等の分析手段を用いても結晶粒界に存在するAlを検出できない場合がある。そのため、本発明では、態様2、3において、Al拡散処理前後のAlの増加量を規定している。
以下に詳述するように本発明に係る製造方法では、焼結体に、DyおよびTbの少なくとも一方を拡散させる重希土類元素拡散処理を行った後、Alを拡散させるAl拡散処理を実施する。本明細書では、焼結体に重希土類元素拡散処理およびAl拡散処理のいずれか一方を行った状態でも「焼結体」と呼ぶ場合があり(「××処理を行った焼結体」と言う場合もある)、焼結体に重希土類元素拡散処理とAl拡散処理の両方を行った状態を「磁石」と呼ぶ場合がある(「焼結磁石」または「R−T−B系焼結磁石」という場合もある。)。
(1)焼結体の組成
焼結体は、Ndを含む希土類元素と、Feと、Bとを含む焼結体として知られている任意の組成であってよい。以下に好ましい焼結体の組成を示す。
Rは、希土類元素であって、Ndが必須であり、Rのうち質量比で50%以上をNdとする。焼結体全体でNdと他の希土類元素を合計して25質量%以上35質量%以下含有することが好ましい。25質量%未満では焼結ができない場合があり、35質量%を超えるとBrが著しく低下する場合があるためである。
また、拡散処理を行う前の焼結体の段階で、DyおよびTbのような重希土類元素を多く含むと、最終的に得られたR−T−B系焼結磁石のBrが低下することから、重希土類元素は焼結体全体で0.5〜3.0質量%以下であることが好ましい。
Nd以外の希土類元素は、例えば、ミッシュメタルおよび/またはジジム合金(Nd−Pr合金)を用いることにより含まれることが多い。例えば、ジジム合金を用いると、焼結体はPrを含む。
Tの含有量は、Rとボロン(B)あるいはRとBと後述するM元素との残部を占めてよい。
一方、上述のようにM元素としてAlを選択する(意図的にAlを添加)場合がある。この場合、好ましいAlの含有量は0.2質量%〜0.5質量%程度である。
これは、焼結体に含まれるAlは、焼結時に高温の焼結温度まで加熱されるため、結晶粒界だけに留まらず、結晶粒内を含め、比較的均一に分布しており、Al拡散処理を行うことにより、結晶粒界に存在するAl量のみを確実に増加できるためと考えられる。また、このように焼結によりAlは比較的均一に分布しているため、上述した好ましい範囲内の含有量であればBrを著しく低下させることもほとんどない。
また、溶湯を単ロール、双ロール、回転ディスクまたは回転円筒鋳型等に接触させて急冷し、インゴット法で作られた合金よりも薄い凝固合金を作製するストリップキャスト法または遠心鋳造法に代表される急冷法により合金フレークを製造することができる。
急冷法によって作製したR−T−B系焼結磁石用原料合金(急冷合金)の厚さは、通常0.01mm〜3mmの範囲にあり、フレーク形状である。合金溶湯は冷却ロールの接触した面(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)に比較して、短時間で凝固されているため、初晶Feの析出を抑制でき、組織が微細化され、結晶粒径が小さい。急冷合金を水素粉砕することで、水素粉砕粉(粗粉砕粉)のサイズを例えば1.0mm以下とすることができる。
得られた合金粉末を用いて磁場中プレス成形を行い、成形体を得る。磁界中プレス成形は、磁界を印加した金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入しプレスする乾式法、および金型のキャビティー内にスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながらプレスする湿式法を含む既知の任意の方法を用いてよい。
成形体を焼結することにより焼結体を得る。
成形体の焼結は、公知の焼結体の製造方法と同様の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、雰囲気ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより置換しておくことが好ましい。
そして、主相結晶粒は、焼結体の断面観察において、50%(体積比または断面の面積比)以上、好ましくは70%(体積比または断面の面積比)以上存在している。
R2T14B (1)
ここで、RはNdを質量比で50%以上含有する1種類以上の希土類元素であり(すなわち、R全体の50質量%以上がNd)、TはFeまたはFeとCoである。
次に、焼結体にDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させる重希土類元素拡散処理を行った後、該焼結体にAlを拡散させるAl拡散処理を行う。なお、重希土類元素拡散処理前の焼結体に研削等の機械加工などを施してもよい。以下に、重希土類元素拡散処理とAl拡散処理の詳細を示す。
DyおよびTbの少なくとも一方を焼結体の表面から拡散し、主相結晶粒の外殻部にDyおよびTbの少なくとも一方を濃化できる既知の任意の方法を用いてよい。多くの既知の拡散方法は、同じ処理室内に、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する重希土類元素供給源と焼結体とを配置し、重希土類元素供給源および焼結体を加熱することにより重希土類元素拡散処理を行っている。このような処理として、既知の任意の方法を用いてよい。以下に既知の拡散処理の詳細を説明する。
特許文献1に記載の方法は、焼結体と、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する重希土類元素供給源とをNb製またはMo製の網等を介して離間して処理室に配置し、処理室を所定温度に加熱することにより、前記重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体の表面に供給しつつ、焼結体の内部に拡散させる方法である。焼結体の加熱温度と重希土類元素供給源の加熱温度は実質的に同じである。
焼結体および重希土類元素供給源を加熱する温度(重希土類元素拡散処理を行う温度)は、それぞれ、850℃以上1000℃以下が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、10−5Pa以上500Pa以下が好ましい。なお、本明細書における「雰囲気ガス」とは、真空または不活性ガスを含むものとする。また、「不活性ガス」とは、例えば、アルゴン(Ar)などの希ガスである。
国際公開公報WO2012/043692号に記載された方法は、焼結体と重希土類元素供給源とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理容器内に挿入し、焼結体と重希土類元素供給源とを処理容器内にて連続的または断続的に移動させながら、焼結体および重希土類元素供給源を加熱することにより、重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体に拡散する方法である。焼結体の加熱温度と重希土類元素供給源の加熱温度は実質的に同じである。
焼結体と重希土類元素供給源を加熱する温度(重希土類元素拡散処理を行う温度)は、800℃以上950℃以下が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、大気圧以下で実施でき、100kPa以下で行うのが好ましく、例えば10−3Pa以上103Pa以下の範囲内に設定することができる。
国際公開公報WO2006/043348号に記載された方法は、重希土類元素供給源を焼結体表面に存在させた状態で焼結温度よりも低い温度で加熱することで、前記重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体に拡散させる方法である。
重希土類元素供給源を焼結体表面に存在させる方法としては、例えば、粒子状の重希土類元素供給源をそのまま焼結体表面に吹き付ける方法、同供給源を溶媒に溶解した溶液を焼結体表面に塗布する方法、同供給源を分散媒に分散させたスラリーを焼結体表面に塗布する方法等があげられる。スラリーに用いる分散媒としては、例えばアルコール、アルデヒド、エタノール、ケトン等が挙げられる。
念のために言及するが、本明細書において、「1パーセントポイント増加する」とは、パーセント(質量%)で示される含有量において、その数値が1増加することを意味する。例えば、対象物の希土類元素中のDyの含有量が10質量%である場合、Dyの含有量が1パーセントポイント増加するとは、対象物のDyの含有量が11質量%になることを意味する。
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体にAl拡散処理を施す。焼結体の表面から内部にAlを拡散させる。
アルミニウム供給源として、Alを含む固体、スラリー等、任意の形態のアルミニウム供給源を用いてよい。
上述のように、Al拡散処理により増加するAl含有量が、例えば0.01パーセントポイント〜0.05パーセントポイントと少量であることから、アルミニウム供給源は、アルミニウム単体よりも合金の方が好ましい。
このような好ましい合金として、Nd−Al合金を例示できる。Nd−Al合金の中でもAl含有量が1〜10質量%(残部がNdと不可避的不純物)である合金が好ましく、Al含有量が2〜8質量%である合金がより好ましい。
アルミニウム供給源の形態は、例えば直径が100μm以下のような粉末であってもよく、また板状、ブロック状または球状等のバルク状であってもよく、以下に述べる拡散方法に適した形態を選べばよい。
Al拡散処理によりAlを拡散させる温度(拡散温度)は、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲の温度(好ましくは600℃〜700℃の範囲の温度)である。これにより、例えば140℃のような高温において、Brの低下を抑制しつつ高いHcjを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。重希土類元素拡散処理の処理温度以上では重希土類元素拡散処理により主相結晶粒の外殻部へ拡散、濃化されたDyおよびTbの少なくとも一方の状態を維持できない恐れがある。また、600℃未満であると、温度が低すぎるために、Alが十分に粒界拡散せず、所望の効果を得ることができない恐れがあり、760℃を超えると、Alが主相結晶粒内へ多量に拡散してしまう恐れがあるからである。
アルミニウム供給源として粉末を用いる場合、焼結体の表面に直接散布してもよい。またヒドロキシプロピルセルロース水溶液等のバインダーを焼結体表面に塗布した後、アルミニウム供給源の粉末を散布し、さらに乾燥させることによりバインダーにより粉末状のアルミニウム供給源を焼結体の表面に固定してもよい。
重希土類元素拡散処理およびAl拡散処理後の焼結磁石の表面は、粗面化される場合がある。またこれら拡散処理時に重希土類元素やAlと相互拡散したNdなどが焼結磁石表面に染み出し、固化して酸化し易い状態になっていることが多い。このような場合、表面を切削、研磨等の機械加工等(面出し加工)を行うことが好ましい。
Al拡散処理を行った後の焼結磁石は、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うのが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などの熱処理条件は、焼結体の焼結後の熱処理条件として公知の条件(例えば、500℃で3時間)を採用することができる。なお、最終的な磁石寸法の調整を研削などの機械加工等により行ってもよい。この場合、熱処理の前に行っても、後に行ってもよい
このことは、本発明にかかる製造方法を用いれば、高温において、従来と同等の残留磁束密度Brと固有保磁力HcJを有するR−T−B系焼結磁石を従来よりも少ないDyおよび/またはTbの含有量により実現できることを意味することに留意されたい。
ストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。得られた微粉砕粉を油に分散させてスラリーを作製した。そして、このスラリーから湿式法により成形体を作製し、脱油処理を行った後、真空炉により1000℃で4時間の焼結を行い、長さ23.0mm×幅15.0mm×厚さ4.0mmの焼結体を得た。
焼結体の組成は、Nd:29.6質量%、Pr:0.08質量%、Dy:1.0質量%、B:0.94質量%、Ga:0.10質量%、Co:2.0質量%、Al:0.11質量%、Cu:0.10質量%、Fe:残部であり、焼結体に含まれる酸素、窒素、炭素濃度はそれぞれ、酸素:0.13質量%、窒素:0.04質量%、炭素:0.09質量%であった。また、機械加工を行うことで、長さ23.0mmの中央部分から長さ7mm×幅14.6mm×厚さ3.6mmの評価試料を得た。評価試料に対し、磁気特性の向上を目的として行う熱処理を500℃で3時間施した後、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性を測定した結果、Br1.22T、HcJ:454kA/mであった。
重希土類元素拡散処理を行った焼結体にバインダー(ヒドロキシプロピルセルロース2%水溶液)を塗布し、焼結体の長さ23.0mm×幅15.0mmの面(2面)にアルミニウム供給源(またはNdメタル)を1面につき60mg(合計120mg)散布した後、温風にて乾燥させた。
乾燥後の焼結体を処理容器内に載置しAr雰囲気中で加熱し、Al拡散処理を行った。Al拡散処理を行った温度及び時間を表1に示す。表1から判るように試料No.1は、重希土類元素拡散処理を行った後、Al拡散処理を行っていないサンプルであり、試料No.2は、アルミニウム供給源を用いず(すなわちAlを拡散させず)Al拡散処理と同等の熱履歴を与えたサンプルであり、試料No.11は、重希土類元素拡散処理を行なわずにAl拡散処理を行なったサンプルである。
拡散処理を行った23.0mm×15.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、長さ23.0mmの中央部分から長さ7mm×幅14.6mm×厚さ3.6mmの評価試料を得た。これらの試料について、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(HcJ、Br、Hk)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。ここで、Hkとは、磁気ヒステリスループ(4πI−Hカーブ)の第2象限における磁化がBrの90%となるときの磁界強度である。Hkを用いて、Hk/HcJで表される角型比を求めた。角型比が小さいと、減磁の程度が大きい性質を意味する。これらの測定結果を表1に示す。なお総希土類量(Nd+Pr+Dy)は、30.6質量%〜30.8質量%の範囲内であり、磁気特性に影響するほどの差異はなかった。
本発明サンプルである試料No.4〜7は、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲でAl拡散処理を行うことによりAl含有量が0.12〜0.16質量%と、Al拡散処理前のAlの量(0.11質量%)から0.01〜0.05パーセントポイント増加した。そして、試料No.4〜7では、140℃におけるHCJが795kA/m以上(試料No.4〜6では800kA/m以上)と高い値を示した。一方、140℃でのBrは1.21Tであり、Al拡散処理を行っていない試料No.1と比べて低下は認められなかった。
一方、比較例サンプルである試料No.1は、Al拡散処理を行っておらず、試料No.2はAl供給源を用いずAl拡散処理と同等の熱履歴の加熱を行い、試料No.3はAl供給源に代えてNdメタルを用いているため、いずれのサンプルでもAlの含有量の増加が認められなかった。このため、HCJは746〜756kA/mと低い値であった。
試料No.8は、Al拡散処理の拡散温度が550℃と低いため、Al含有量が増加しておらず、この結果、HCJは747kA/mと低い値であった。
試料No.9、10では、HCJは745〜764kA/mと低かった。これは拡散温度がそれぞれ、900℃、850℃と高く、このため相当量のAlが主相結晶粒内に拡散したためと考えられる。
880℃で重希土類元素拡散処理のみ(Al拡散処理なし)を行なうことにより、Dy含有量を1.0質量%から1.5質量%に0.5パーセントポイント増加させた試料No.1の140℃におけるHcJ(756kA/m)は、重希土類元素拡散処理する前の焼結体の140℃におけるHcJ(454kA/m)から302kA/m向上している。また、660℃でAl拡散処理のみ(重希土類元素拡散処理なし)を行うことにより、Al含有量を0.11質量%から0.13質量%に0.02パーセントポイント増加させた試料No.11の場合は、140℃におけるHcJ(465kA/m)がAl拡散処理をする前の焼結体の140℃におけるHcJ(454kA/m)から11kA/mとほとんど向上していない。そしてこれらの向上値を合計すると313(302+11)kA/mとなる。このため、相乗効果がなく、重希土類元素拡散処理の効果とAl拡散処理の効果を単純に加算すると(念のため断っておくが、単純に加算できるというだけでも顕著な効果である)上述した重希土類元素拡散処理前の焼結体の140℃におけるHcJ454kA/mに313kA/mを足した値=767kA/mとなるはずである。しかし、880℃で重希土類元素拡散処理を行い、Dy含有量を1.0質量%から1.5質量%に0.5パーセントポイント増加させた後、660℃に加熱してAl拡散処理を行ない、Al含有量を0.11質量%から0.13質量%に0.02パーセントポイント増加させた本発明である試料No.4は、140℃におけるHcJが813kA/mと767kA/mより明らかに高くなっている。これは、上述したように、Dy拡散処理後に本発明のAl拡散処理を行なうことにより、結晶粒界に存在しているDyに何らかの挙動を及ぼし、Dyを主相結晶粒の外殻部にさらに濃化することができたからと考えられる。
これは、Dyの濃化が生じにくい焼結磁石の中央部では、Al拡散処理によりもたらされた結晶粒界へのAlの濃化により、140℃におけるHcJが向上していると考えられる
実施例1と同様に、ストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。得られた微粉砕粉を油に分散させてスラリーを作製した。そして、このスラリーから湿式法により成形体を作製し、脱油処理を行った後、真空炉により焼結を行い、長さ23.0mm×幅15.0mm×厚さ4.0mmの焼結体を得た。
本実施例で得た焼結体の組成(6種類)(質量%)を表5に示す。
乾燥後の焼結体を処理容器内に載置しAr雰囲気中で加熱し、Al拡散処理を行った。Al拡散処理を行った温度及び時間を表6に示す。
その後それぞれのサンプルの23.0mm×15.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、長さ23.0mmの中央部分から長さ7mm×幅14.6mm×厚さ3.6mmの評価試料を得た。これらの試料について、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(Br、HcJ)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。これらの測定結果を表6に示す。
実施例1と同様に、ストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。得られた微粉砕粉を油に分散させてスラリーを作製した。そして、このスラリーから湿式法により成形体を作製し、脱油処理を行った後、真空炉により1000℃で4時間の焼結を行い、長さ13.4mm×幅15.0mm×厚さ3.4mmの焼結体を得た。
焼結体の組成は、Nd:30.5質量%、Pr:0.14質量%、B:0.93質量%、Ga:0.11質量%、Co:2.0質量%、Al:0.13質量%、Cu:0.11質量%、Fe:残部であり、焼結体に含まれる酸素、窒素、炭素濃度はそれぞれ、酸素:0.12質量%、窒素:0.04質量%、炭素:0.10質量%であった
重希土類元素拡散処理を行った焼結体にバインダー(ヒドロキシプロピルセルロース2%水溶液)を塗布し、焼結体の長さ13.4mm×幅15.0mmの面(2面)にアルミニウム供給源を1面につき30mg(合計60mg)散布した後、温風にて乾燥させた。
乾燥後の焼結体を処理容器内に載置しAr雰囲気中で加熱し、Al拡散処理を行った。Al拡散処理を行った温度及び時間を表7に示す。表7から判るように試料No.91は、重希土類元素拡散処理を行った後、Al拡散処理を行っていないサンプルである。
拡散処理を行った13.4mm×15.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、長さ13.4mmの中央部分から長さ13mm×幅14.6mm×厚さ3.0mmの評価試料を得た。これらの試料について、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(Br、HcJ)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。これらの測定結果を表7に示す。
さらに、重希土類元素(Dy)拡散処理後に長さ13.3mm×幅14.9mm×3.3mmに加工した(全面50μmずつ加工)後、以下に説明する真空蒸着によりAlを焼結体へ成膜して拡散させたこと以外、実施例3の試料No.92と同じ条件で焼結磁石(試料No.94)を準備した。
前記真空蒸着は、焼結体と96Nd−4Al合金とを処理室内に配置した後、処理室内の圧力が10−1Paになるまで真空排気した後、Arガスを導入した。次にRF出力300Wを加えて10分間の逆スパッタを行って磁石表面の酸化膜を除去した。続いてDC出力300Wを印加し、Nd−4Al合金を加熱して溶融し、蒸発させて、前記焼結体の表面に1.5μmのAlを成膜させた。成膜後の焼結体に対し、Arガスを流気して大気圧に保持し、660℃で4時間加熱することによりAlの成膜を焼結体内部へ拡散させた。試料No.93、94に対し、試料No.91、92と同様の加工を行い評価試料を得た。これらの試料について、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(Br、HcJ)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。これらの測定結果を表8に示す。なお試料No.91〜94の総希土類量(Nd+Pr+Dy)は、30.7質量%〜30.8質量%の範囲内であり、磁気特性に影響するほどの差異はなかった。
Claims (4)
- 1)ネオジム(Nd)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成する工程と、
2)ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を含む重希土類元素供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該重希土類元素供給源と該焼結体とを第1の拡散温度で加熱し、該重希土類元素供給源から該焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させる工程と、
3)前記工程2)の後に、アルミニウム(Al)を含むアルミニウム供給源と、前記重希土類元素供給源から前記焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体とを容器内に配置し、該アルミニウム供給源と該焼結体とを前記第1の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲の第2の拡散温度で加熱し、該アルミニウム供給源から該焼結体にアルミニウム(Al)を拡散させる工程と、を含むことを特徴とするR−T−B系焼結磁石の製造方法。
一般式: R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。) - 前記工程3)において、前記ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体のアルミニウム(Al)含有量を、質量比で0.01〜0.05パーセントポイント増加させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記工程3)において、前記ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体のアルミニウム(Al)含有量を、質量比で0.01〜0.03パーセントポイント増加させることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
- 前記工程3)において、前記アルミニウム供給源がNd−Al合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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