JP2014152147A - ピロリ菌除菌療法補助剤ならびにこれを用いた医薬品組成物及び飲食品組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピロリ菌は胃の粘液の中で生きている細菌で胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん発症の原因にもなっており、予防医学の観点からピロリ菌の除菌療法は極めて重要であるにも拘わらず、近年CAMを含む3剤併用除菌療法の除菌率の低下が認められるという事情に鑑みてなされたものであり、CAMを含む3剤併用療法におけるピロリ菌除菌療法補助剤ならびにこれを用いた医薬品組成物及び飲食品組成物を提供する。
【解決手段】ニンジンなどのサポニン生薬に含まれるサポニンや、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性作用物質を有効成分として含有するピロリ菌除菌療法補助剤である。
【選択図】図4
【解決手段】ニンジンなどのサポニン生薬に含まれるサポニンや、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性作用物質を有効成分として含有するピロリ菌除菌療法補助剤である。
【選択図】図4
Description
本発明は、クラリスロマイシン(以下、CAM)を含む3剤併用療法によるピロリ菌(Helicobactor pylori)一次除菌療法の補助剤に関し、詳細には、CAMを含む3剤併用療法におけるピロリ菌の一次除菌療法の成功率を高め、一次除菌療法不成功によるピロリ菌のCAM耐性の獲得を抑えることができるピロリ菌除菌療法補助剤、ならびに、これを用いた医薬品組成物及び飲食品組成物に関する。
ピロリ菌は胃がんの発生に深く関与するといわれ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、呼気検査などでピロリ菌が見つかると、「3剤併用療法」といわれる2種類の抗生物質(抗菌薬=アモキシシリン(以下、AMPC)、CAM)と、胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬(以下、PPI)を1日2回、1週間内服するピロリ菌除菌療法が行われる。
3剤併用療法により2000年当初は約9割が除菌できたが、年々CAMの耐性菌が増加して除菌率が低下し、最近では約3割が除菌に失敗することが問題になっている。
CAM耐性感染症例では除菌率の明らかな低下と、除菌不成功後にはCAM耐性の獲得が報告されており、安易に不十分な除菌療法が行われることは耐性菌の出現を増加させる。2000年には7%程度であったCAM耐性菌が、2005年には30%近くまで増加して深刻な問題となっている。
一次除菌で不成功であった症例に対して、二次除菌として、CAMをメトロニダゾール(以下、MNZ)に変えた処方で除菌が行われているが、MNZによる副作用(飲酒に伴うジスルフィラム−アルコール反応による腹痛、嘔吐、ほてり、ワーファリンの作用増強など)が認められている。
CAMやAMPC、MNZ以外の化合物として、ベンゾヒドロキサム酸誘導体によるピロリ菌除菌療法剤(特許文献1)、漢方薬安中散と生薬芍薬、甘草を有効成分とするピロリ菌感染治療剤(特許文献2)、鉄結合型ラクトフェリン(特許文献3)、主成分がアラビノキシランである植物性グルコース配糖体である糖質(特許文献4)、抗菌性金属イオンとL−システイン、L−アスコルビン酸と非イオン系を除いた界面活性剤(特許文献5)などの抗ヘリコバクター・ピロリ剤があるが、これらは、3剤併用療法の除菌補助剤として使われることはない。
また、乳酸菌を含んだヨーグルト、チーズ、納豆などのピロリ菌除菌性または感染防御性の飲食品(特許文献6、7、8、9)もあり、乳酸菌を含んだヨーグルトを一次除菌療法の補助剤とした除菌療法は、補助剤を併用しない除菌療法に比べ除菌率が優れていることがメタ解析により報告されている(非特許文献1)。しかし、これらの飲食品に含まれる乳酸菌は、飲食品を摂取後短時間で胃の中で増殖が可能な状態で保存する必要があり、乳酸菌含有飲食品の保存性や携帯性に問題がある。
さらに、ラクトフェリンはピロリ菌感染マウスのピロリ菌減少に効果を示し(非特許文献2)、ラクトフェリンは保存性、携帯性ともに優れ、一部の臨床試験での有効性を示したが(非特許文献3)、メタ解析では標準除去療法への併用効果は認められていない(非特許文献4)。
Jlan Zou、Jie Dong and Xiaofeng Yu;Meta-Analysis;Lactobacillus Containing Quadruple Therapy Versus Standard Triple First-Line Therapy for Helicobacter pylori Eradication:Hellicobacter、14,449−459(2009)
Wada T、Aiba Y、Shimizu K、Takagi A、Miwa T、Koga Y;The therapeutic effect of bovine lactoferrin in the host infected with Helicobactor pyloro:Scand J Gastroenterol、34,238−243(1999)
Nicola de Bortoli、Giulia Leonardi et al...;Helicobacter pylori Eradication:A Randomized Prospective Study of Triple Therapy versus Triple Therapy Plus Lactoferrin and Probiotics: American Journal of Gastroenterology 102,951−956(2007)
A.SACHDEVA & J.NAGPAL;Meta-analysis:efficacy of bovine lactoferrin in Helicobacter pylori eradication: Alimen Phormacol Ther、29,720−730(2009)
本発明は、ピロリ菌は胃の粘液の中で生きている細菌で胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん発症の原因にもなっており、予防医学の観点からピロリ菌の除菌療法は極めて重要であるにも拘わらず、近年CAMを含む3剤併用除菌療法の除菌率の低下が認められるという事情に鑑みてなされたものであり、CAMを含む3剤併用療法におけるピロリ菌除菌療法補助剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、ピロリ菌のCAMに対する感受性を高める界面活性機能を持つ医薬品組成物及び飲食品組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、ピロリ菌のCAMに対する感受性を高める界面活性機能を持つ医薬品組成物及び飲食品組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、3剤併用療法におけるピロリ菌除菌効果を高めるため、保存性がよく携帯に便利なピロリ菌除菌療法補助剤であって、医薬品または飲食品の組成物になりうる有効成分の探索を行った。ピロリ菌の3剤併用療法による除菌療法の不成功例は、ピロリ菌のCAMに対する耐性獲得が原因とされていることから、CAM耐性ピロリ菌のCAMに対する感受性の増強を指標とした検討を行った。その結果、界面活性作用があるサポニンを含有する生薬、または、医薬品添加物や食品添加物として認められている界面活性剤に、CAM耐性を獲得してCAMの殺菌力が低下したピロリ菌(CAM耐性ピロリ菌)に対しCAMに対する感受性を増加させる機能があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)界面活性作用物質を有効成分として含有するピロリ菌除菌療法補助剤。
(2)界面活性作用物質がサポニンであり、該サポニンが生薬またはその抽出物に含有される上記(1)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(3)生薬が、ニンジン、タイソウ、オンジ、カンゾウ、サイコ、ゴジツ、キキョウ、セネガ、モクツウ、モダマ、チモ、バクモントウ、トチノキ、サンヤクから選ばれる少なくとも1種のサポニン含有生薬である上記(2)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(4)生薬が、ニンジン、タイソウ、カンゾウ、サイコまたはバクモントウである上記(2)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(5)界面活性作用物質が、医薬品添加物及び/または食品添加物として認められた化合物である上記(1)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(6)界面活性作用物質がポリソルベート類である上記(1)または(5)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(7)界面活性作用物質がラウリル硫酸ナトリウムである上記(1)または(5)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか記載のピロリ菌除菌療法補助剤を配合してなる医薬品組成物。
(9)上記(1)〜(7)のいずれか記載のピロリ菌除菌療法補助剤を配合してなる飲食品組成物。
(2)界面活性作用物質がサポニンであり、該サポニンが生薬またはその抽出物に含有される上記(1)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(3)生薬が、ニンジン、タイソウ、オンジ、カンゾウ、サイコ、ゴジツ、キキョウ、セネガ、モクツウ、モダマ、チモ、バクモントウ、トチノキ、サンヤクから選ばれる少なくとも1種のサポニン含有生薬である上記(2)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(4)生薬が、ニンジン、タイソウ、カンゾウ、サイコまたはバクモントウである上記(2)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(5)界面活性作用物質が、医薬品添加物及び/または食品添加物として認められた化合物である上記(1)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(6)界面活性作用物質がポリソルベート類である上記(1)または(5)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(7)界面活性作用物質がラウリル硫酸ナトリウムである上記(1)または(5)に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか記載のピロリ菌除菌療法補助剤を配合してなる医薬品組成物。
(9)上記(1)〜(7)のいずれか記載のピロリ菌除菌療法補助剤を配合してなる飲食品組成物。
本発明のピロリ菌除菌療法補助剤ならびに医薬品組成物及び飲食品組成物は、保存性がよく携帯に便利で、CAMを含む3剤併用療法におけるピロリ菌の一次除菌療法の成功率を高める効果があり、ピロリ菌の感染により併発を引き起こすとされる胃粘膜の慢性炎症を背景とする委縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの上部消化管疾患の予防効果を増し、治癒することを補助することができる。
また、本発明のピロリ菌除菌療法補助剤は、界面活性機能があるサポニンを含有する植物やその加工品、または、医薬品添加物や食品添加物として認められた界面活性作用物質を含有する組成物であるので、安全面及びコスト面で優れている。
また、本発明のピロリ菌除菌療法補助剤は、界面活性機能があるサポニンを含有する植物やその加工品、または、医薬品添加物や食品添加物として認められた界面活性作用物質を含有する組成物であるので、安全面及びコスト面で優れている。
本発明の3剤併用療法によるピロリ菌除菌療法補助剤(以下、単に「補助剤」と言う。)は、界面活性作用物質を有効成分として含有する。3剤併用療法によるピロリ菌の除菌率の低下は、ピロリ菌のCAMに対する感受性の低下によるものであるため、CAMを含む3剤併用によるピロリ菌除菌療法の補助剤において、界面活性作用物質は、ピロリ菌のCAM感受性を増加させるのに有効に作用するものと推察される。界面活性作用物質の作用メカニズムの詳細は明らかではないが、リン脂質を中心に構成される細菌の細胞膜の二重層に、界面活性作用物質が吸着することにより、細胞膜の流動性が大きくなり、薬剤の透過性が増すことによるものと推察される。
本発明の好ましい補助剤は、植物配糖体であるサポニンを界面活性作用物質として含有するものであり、特に好ましい補助剤は、サポニン含有生薬またはその抽出物に含有されるものである。サポニンに結合した糖を除いた部分はサポゲニンと呼ばれ、サポゲニンはトリテルペノイドサポニンとステロイドサポニンに大別され、また、トリテルペノイドサポニンには、オレアナン系とダンマラン系がある。本発明において、サポニン含有生薬は、ダンマラン系サポニン、オレアナン系サポニン、ステロイドサポニンのうち、いずれのサポニンを含有するものでもよい。
サポニン含有生薬は多数知られており、本発明ではいずれをも利用することができる。すなわち、サポニンを含み、有毒性がない植物であれば特に制限はなく、これらの植物の葉、幹、茎、樹皮、根、根茎、いずれの部位をも利用することができる。
本発明で利用するのに適当なサポニン含有生薬の具体例は、下記の通りである。
・オタネニンジン(Panax ginseng)、トチバニンジン(Panax japonicus)、デンシチニンジン(Panax notoginseng)、アメリカニンジン(Panax quinquefolius)などのニンジン
・タイソウ (Zizyphus jujuba) =ナツメ類の実
・オンジ (Polygala temuifolia) =イトヒメハギの根
・カンゾウ(Glycyrrhiza glabra、G.uralensis)=カンゾウの根
・サイコ(Bupleurum falcatum)=ミシマサイコの根
・ゴシツ(Achyranthes fauriei)=ヒナタイノコズチの根
・キキョウ(Platycodon grandiflora)=キキョウの根
・セネガ(Polygala senega)=ヒロハセネガの根
・モクツウ(Akebia quinata、Akebia trifoiata)=アケビの茎
・モダマ(Entada phaseoloides)
・チモ(Aemarrhena asphodeloides)=ハナスゲの根茎
・バクモンドウ(Ophiopogon japonicus)=ジャノヒゲの根茎
・トチノキ(Aesculus turbinata)=トチノキの葉実
・サンヤク(Dioscorea japonica)=ヤマイモの根
・ザボンソウ(Saponaria offecinalis)
・ムクロジ(Sapindus mukurossi)=ムクロジの果皮
・オタネニンジン(Panax ginseng)、トチバニンジン(Panax japonicus)、デンシチニンジン(Panax notoginseng)、アメリカニンジン(Panax quinquefolius)などのニンジン
・タイソウ (Zizyphus jujuba) =ナツメ類の実
・オンジ (Polygala temuifolia) =イトヒメハギの根
・カンゾウ(Glycyrrhiza glabra、G.uralensis)=カンゾウの根
・サイコ(Bupleurum falcatum)=ミシマサイコの根
・ゴシツ(Achyranthes fauriei)=ヒナタイノコズチの根
・キキョウ(Platycodon grandiflora)=キキョウの根
・セネガ(Polygala senega)=ヒロハセネガの根
・モクツウ(Akebia quinata、Akebia trifoiata)=アケビの茎
・モダマ(Entada phaseoloides)
・チモ(Aemarrhena asphodeloides)=ハナスゲの根茎
・バクモンドウ(Ophiopogon japonicus)=ジャノヒゲの根茎
・トチノキ(Aesculus turbinata)=トチノキの葉実
・サンヤク(Dioscorea japonica)=ヤマイモの根
・ザボンソウ(Saponaria offecinalis)
・ムクロジ(Sapindus mukurossi)=ムクロジの果皮
サポニン含有生薬及びその抽出物は、サポニンを含有する植物またはその加工品(泥や枯葉などの不要部分の除去、天日干し、粉砕、水や溶媒への浸漬、加熱、炙り焼き、水洗、蒸煮などの加工を施したもの)の粉砕品や、抽出物(エキス、チンキ)、抽出物の濃縮エキス、エキス末などである。
サポニン含有生薬の抽出物は、上記のような生薬を原料として、その生薬から常法により得ることができる。例えば、原料生薬を脱脂せずにあるいは通常の脂溶性有機溶媒を用いて脱脂してから、水または低級脂肪族アルコール(特に、炭素数1〜4の一価アルコール)または水と低級脂肪族アルコールとの混合物、を抽出溶媒としてその有効成分の抽出を行うことで得られる。抽出溶媒としては、これらの他に、アセトンなどの低級ケトン、ジエチルエーテルなどの低級エーテル、酢酸エチルなどの低級モノカルボン酸と低級アルコールとのエステルを利用することもできる。
抽出液をそのままあるいは濃縮して利用することができるが、ある程度精製してから利用するのが一般的である。精製例としては、濃縮抽出物を水に懸濁させ、n−ブタノールを加えて振とうし、n−ブタノール層を分離してこれを蒸発乾固させる方法などである。
こうして得られた抽出物は、サポニン成分を含有する。本発明で使用するのに好ましい抽出物は、ニンジン(ウコギ科)、タイソウ(クロウメモドキ科)から抽出されるダンマラン系サポニン、カンゾウ(マメ科)、サイコ(セリ科)から抽出されるオレアナン系サポニン、および、チモ(ユリ科)、バクモントウ(ユリ科)、トチノキ(トチノキ科)から抽出されるステロイドサポニンである。これらのサポニン含有生薬は、古くから漢方薬として用いられており、安全性が高い。
本発明で使用するのに特に好ましい抽出物は、ウコギ科の多年草オタネニンジンの抽出物であり、なかでも、サポニン含有量が高い高麗人参6年根を用いた紅参またはその加工品の抽出物が好ましい。ウコギ科の多年草オタネニンジンの根を原料とするものであれば、「人参」、「高麗人参」、「朝鮮人参」など呼称の違いがあってもよい。また、製法(加工法や使用部位)が異なる水参、白参、生干人参、大極参、紅参、御種人参、鬚人参などであってもよい。
本発明のもう一つの好ましい補助剤は、医薬品添加物及び/または食品添加物として認められた界面活性作用物質である。かかる界面活性作用物質は、例えば、Tween80(ポリソルベート80:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)などの、医薬品添加物や食品添加物として認められた化合物であれば、いずれも使用することができる。
本発明の補助剤は、界面活性作用物質を有効成分とする場合、上記の界面活性作用物質またはサポニン含有生薬またはその抽出物の、単独または相互の混合物からなるか、これと液体または固体の賦型剤とからなるか、のいずれかであることができる。投与の剤型としては、上記の界面活性作用物質またはサポニン含有生薬またはその抽出物を、周知の方法により、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、エキス剤、ドリンク剤、浸煎剤などに加工したもの、または、乳糖やブドウ糖などを加えて加工したものなどがあり得る。これらは経口的に投与することが望ましい。
投与量は、本発明による補助剤の効果、すなわち3剤併用療法におけるピロリ菌除菌効果が認められる限り任意である。3剤併用療法では、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬の1種と、アモキシシリン、クラリスロマイシンなどの抗生物質の2種とを併用することができる。一般に、成人1回当りの投与量は、原生薬に換算して300〜3000mg程度である。
本発明の補助剤は、サポニン含有生薬またはその抽出物、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウムをそのまま、あるいは、後述する医薬品組成物素材や飲食品組成物素材と組み合わせて用いられることで、CAM耐性ピロリ菌のCAM感受性増加機能に優れた医薬品組成物または飲食品組成物が得られる。例えば、一般用医薬品、健康食品などの各種製品であり、その形状は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤など経口的に摂取できる形態であればよい。製法については、第十六改正日本薬局方解説書(参考文献2:杉山雄一ほか 第十六改正日本薬局方解説書 製剤総則 廣川書店 2011年)記載の方法が全て使用できる。
医薬品組成物及び飲食品組成物中での補助剤の配合量は、3剤併用療法におけるピロリ菌除菌効果が認められる限り任意である。製品形態に応じて配合量を適宜定めれば良く、例えば1%(水剤の場合)から100%(純末、100%エキスの場合)まで可能である。
本発明で用いることができる医薬品組成物素材としては、例えば、各種ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンEなどを1種または2種以上を適宜混合)などが挙げられる。
また、飲食品組成物素材としては、例えば、糖質(ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、オリゴ糖、トレハロース、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、水飴、還元麦芽糖、還元乳糖、還元水飴粉末などを1種または2種以上を適宜混合)、酸味料(クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸などを1種または2種以上を適宜混合)、香料、着色料、上記の各種ビタミン類、ミネラル類(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などを含む塩類や食品素材を1種または2種以上を適宜混合)、蛋白質類(大豆蛋白、乳蛋白、小麦蛋白、卵蛋白、魚肉蛋白、牛肉蛋白などを1種または2種以上を適宜混合)、各種油脂類(動物油、植物油などを1種または2種以上を適宜混合)、甘味料(アスパルテーム、ステビアなどを1種または2種以上を適宜混合)、食物繊維(セルロース、ガラクトマンナン、コーンファイバー、ペクチンなどを1種または2種以上を適宜混合)、各種果汁類(オレンジ、リンゴ、みかん、ブドウ、なし、もも、バナナ、メロン、すいかなどを1種または2種以上を適宜混合)フレーバー粉末(コーヒー粉末、抹茶粉末、煎茶粉末、ココア粉末などを1種または2種以上を適宜混合)、安定化剤、調味料(塩、味噌、醤油、酒類、みりんなどを1種または2種以上を適宜混合)、スパイス類、野菜類、果実類、はちみつ、ローヤルゼリーなどが挙げられる。
本発明の補助剤、医薬品組成物、飲食品組成物は、これらを経口的に3剤併用除菌療法と同時または3剤併用除菌療法を始める1週間前ないし2週間前から投与することが望ましい。
以下、試験例及び実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの試験例、実施例に限定されるものではない。
(試験例1)
この試験は、CAMに耐性を持ったピロリ菌のCAM感受性を高める物質について調べた。界面活性作用物質に殺菌作用や抗菌作用があることが知られている(参考文献1)ので、合成界面活性剤ならびにサポニンを含む生薬エキスのCAM耐性ピロリ菌のCAMに対する感受性増強作用を調べた。
(参考文献1;藤川福二郎、岡本正夫 飲食物防腐剤の研究 薬学雑誌 71,967−968(1951))
この試験は、CAMに耐性を持ったピロリ菌のCAM感受性を高める物質について調べた。界面活性作用物質に殺菌作用や抗菌作用があることが知られている(参考文献1)ので、合成界面活性剤ならびにサポニンを含む生薬エキスのCAM耐性ピロリ菌のCAMに対する感受性増強作用を調べた。
(参考文献1;藤川福二郎、岡本正夫 飲食物防腐剤の研究 薬学雑誌 71,967−968(1951))
(1)ピロリ菌は、臨床分離株で東海大学医学部基礎医学系生体防御学の教室保存株のCAM感受性のNo.130、CAM耐性株のTM15、TK7、TK10、TK21、TK29を使用した。
(2)界面活性作用物質ならびに生薬エキスは、以下の市販品などを使用した。
・Tween80(ポリソルベート80(HX2)日油株式会社)
・ラウリル硫酸ナトリウム(SLS、東京化成株式会社)
・ニンジンエキス(紅参エキス=コウジンエキス;高麗紅参精 スノーデン株式会社 原生薬換算2:1)
・カンゾウエキス(カンゾウエキス−L 日本粉末薬品株式会社 原生薬換算4:1)
・サイコエキス(サイコエキス−S 松浦薬業株式会社 原生薬換算5:1)
・バクモントウエキス(市販のバクモントウ(小西製薬)を購入し常法に従い水で抽出後に濃縮して原生薬換算2:1として使用した)
・Tween80(ポリソルベート80(HX2)日油株式会社)
・ラウリル硫酸ナトリウム(SLS、東京化成株式会社)
・ニンジンエキス(紅参エキス=コウジンエキス;高麗紅参精 スノーデン株式会社 原生薬換算2:1)
・カンゾウエキス(カンゾウエキス−L 日本粉末薬品株式会社 原生薬換算4:1)
・サイコエキス(サイコエキス−S 松浦薬業株式会社 原生薬換算5:1)
・バクモントウエキス(市販のバクモントウ(小西製薬)を購入し常法に従い水で抽出後に濃縮して原生薬換算2:1として使用した)
(3)ピロリ菌に対するCAMの最小発育阻止濃度(以下、MIC)の測定は、Tween80は1mg/ml、ラウリル硫酸ナトリウムは0.5mg/ml、生薬エキスはそれぞれ2mg/ml(原生薬換算)を添加または無添加(コントロール)のブレインハートインフュージョン(BHI)寒天培地(ベクトン・デッキンソン社製)100mlに、ウマ血清5mlを加えた寒天培地19mlを、あらかじめ各種濃度のCAM溶液1.0mlを入れ、径12cmのシャーレに流し込みよく混和し寒天平板希釈培地を調製した。この寒天平板培地に1×107個/mlのピロリ菌液10μを接種して、微好気条件下37℃で3日間培養した後のピロリ菌の発育の有無により行った。
試験例1の結果を表1に示した。合成界面活性剤、サポニンを含む生薬エキスは、共にCAM耐性ピロリ菌のCAMに対する感受性を増強させる効果が認められた。
(試験例2)
この試験は、試験例1と同様に、ニンジン(紅参)エキスによるピロリ菌のCAM感受性の変化を、ニンジンエキスの濃度(原生薬換算)を変えて調べた。
この試験は、試験例1と同様に、ニンジン(紅参)エキスによるピロリ菌のCAM感受性の変化を、ニンジンエキスの濃度(原生薬換算)を変えて調べた。
試験例2の結果は、表2に示した。ピロリ菌のCAMに対する感受性は、CAM感受性菌、耐性菌いずれにおいても、培地に添加したニンジンエキス量(原生薬換算量はその2倍)に応じ感受性が高まり、ニンジンにはCAMのピロリ菌の殺菌効果を高める作用があることが認められた。
(試験例3)
この試験は、ニンジン(紅参)エキスを、乳糖などを加えた加工品にしても効果があるか否かを調べた。加工品は後述する紅参エキス細粒を用い、添加する紅参エキス量は原生薬に換算して同じ量を用いた。
この試験は、ニンジン(紅参)エキスを、乳糖などを加えた加工品にしても効果があるか否かを調べた。加工品は後述する紅参エキス細粒を用い、添加する紅参エキス量は原生薬に換算して同じ量を用いた。
(1)ピロリ菌は、試験例1と同じCAM耐性株のTM15、TK7、TK21を使用した。
(2)紅参エキスは試験例1、2と同じ高麗紅参精を使用、紅参エキス顆粒は、紅人参顆粒(スノーデン株式会社)を使用した。添加量はいずれも商品記載量に基づき原生薬換算量とした。
(3)ウマ血清5%含有ブレインハートインフュージョン(BHI)ブロスに、3mg/mlの紅参エキスまたは紅参エキス顆粒を溶解させた液体培地に、CAMを100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/mlを加えたあるいはCAMを加えない培地に、培地1ml当たりピロリ菌を1×107の割で接種し、37℃の微好気培養条件下で24時間培養した培養液を採取して、菌数測定用試料液とした。なお、紅参エキスまたは紅参エキス顆粒を添加しない液体培地で培養したものを対照とした。
(4)採取した試料中の生存ピロリ菌数の測定は、7%のウマ血清を添加したブレインハートインフュージョン(BHI)寒天培地1000mlに、テトラゾニウム(シグマ・アルドリッチ社)25mg、ポリミキシB(シグマ・アルドリッチ社)2500単位、バンコマイシン(シグマ・アルドリッチ社)10mg、バシトラシン(シグマ・アルドリッチ社)5mg、アンフォテリシン(シグマ・アルドリッチ社)2mgを添加した寒天培地で、37℃で4日間微好気培養して測定した。
試験例3の結果は、図1、図2及び図3に示した。横軸はBHI培地に含まれるCAMの濃度(μg/ml)、縦軸はピロリ菌の平均生菌数(Log)を示す。CAM濃度とLog(平均生菌数)の関係を相関式(y)、重相関(r2)で示した。
図1は、ウマ血清添加BHI培地(対照)及びそれに紅参エキス原生薬換算3mg/mlを添加した培地に、CAM耐性ピロリ菌TM15を1×107/ml植菌し、37℃で24時間後のTM15のLog(平均生菌数)とCAM濃度の関係を示した。
図2は、CAM耐性菌をTK7に変え、さらに紅参エキス及び紅参エキス顆粒によるCAM感受性の増強効果を示した。
図3は、CAM耐性菌をTK21に変えても、同じようにCAM感受性の増強効果があることを示した。
図1、図2及び図3ともに、紅参エキス、紅参エキス顆粒いずれを添加した培地においても、3剤併用除菌療法補助剤による耐性ピロリ菌のCAM感受性を増強させる結果が認められた。
上記の通り、試験例1、試験例2及び試験例3の結果から、界面活性作用物質、ニンジンをはじめとするサポニン含有植物は、ピロリ菌のCAM感受性を増強させ3剤併用ピロリ菌除菌療法の補助剤となることがわかった。
次に、試験例4〜試験例6では、ピロリを感染させたマウスを3剤併用除菌療法剤またはそれに補助剤を併用した時の、血中ガストリン濃度(pg/ml)、胃組織中に生息するピロリ菌数(CFU/g)、及び血清中のピロリ菌抗体価を調べる実験を行った。
(試験例4)
この試験は、CAM耐性ピロリ菌感染マウスでの3剤併用ピロリ菌除菌療法における紅参エキスの除菌補助剤としての効果を調べた。
この試験は、CAM耐性ピロリ菌感染マウスでの3剤併用ピロリ菌除菌療法における紅参エキスの除菌補助剤としての効果を調べた。
(1)ピロリ菌感染マウスは、ビニールアイソレーター内で飼育された8週齢の無菌Balb/c雄マウス25匹を用意した。無作為に選んだ5匹はエーテル麻酔下開腹して心臓から血液約1mlを採血し、遠心分離により分離した血清を個別に凍結保存してピロリ菌感染前血清試料とした。
(2)残り20匹のマウスには、CAM耐性ピロリ菌TM15株(CAMのMIC 64μg/ml)1×109CFUをリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBS)0.5mlに懸濁したものを、4日間連続で経口的に胃の中に投与して、マウスの胃にCAM耐性ピロリ菌を感染させた。
(3)初回のピロリ菌投与から4週間目に無作為に5匹を選びエーテル麻酔下に開腹して心臓から採血、ピロリ菌感染4週目の除菌治療措置前血清試料とした。開腹したマウスから胃を摘出して内容物を除いた胃をガラスホモジナイザーで磨り潰し、ピロリ菌感染4週目の胃組織に生息するピロリ菌を測定するための胃組成物試料とした。
(4)残りの15匹は、無作為に3群に分け、実験群1にはコントロールとしてPBS、実験群2にはPBSに溶解したAMPC 2000μg/マウス、CAM 375μg/マウス、PPIとしてオメプラゾール150μg/マウスからなる3剤併用除菌剤、実験群3には3剤併用除菌剤に紅参エキス3mg/マウス(原生薬換算6mg/マウス)を、それぞれ1日1回7日間連続投与するピロリ菌除菌療法を施した。
(5)除菌療法終了の翌日、感染4日目と同じ方法で各実験群の血清、内容物を除いた胃をホモジナイズしたものを血清試料並びに胃組成物試料とした。
(6)血清試料中の血清ガストリン量の測定は、ガストリン・リアキットII(株式会社テイエフビー)を用いてガストリン・リアキットIIの添付文書記載の操作法でRIA PEG法によりにより行った。
(7)除菌治療前胃組成物試料ならびに除菌治療施行後の各群の胃組成物試料中のピロリ菌数は、試験例3(4)と同じ方法で測定した。
試験例4により得られた血清試料のBalb/c雄マウスの血清ガストリン量ならびにCAM耐性ピロリ菌TM15感染マウス、感染マウスをPBS、3剤併用除菌剤ならびに3剤併用除菌剤に紅参エキスを除菌補助剤として併用した除菌療法を施した後の血清試料の血清ガストリン量を、図4に示した。図中「n」は、一群のマウスの匹数を表わす。「*」は対照の平均値(vs感染4週の平均値)に対し5%の有意水準で有意差が認められることを示し、「**」は対照の平均値(vs感染4週の平均値)に対し0.1%の有意水準で有意差が認められることを示す。(以下、図中の「n」、「*」、「**」は同じことを表わす)。
図4より、無菌マウスの血清中のガストリン濃度(感染前)は、CAM耐性ピロリ菌TM15に感染(感染4週)することで有意に減少し、1週間のPBS除菌(Control)及び3剤併用除菌治療(3剤)では血清ガストリン量の回復は認められないが、3剤併用療法と同時に紅参エキスを与える(3剤+紅参)ことより、血清ガストリン量は回復することが認められた。
試験例4により得られた胃内容物試料中のピロリ菌数を、図5に示した。
図5は、無菌マウスにCAM耐性ピロリ菌TM15を感染させた時の胃組織に生息するTM15生菌数(感染4週)、その後の1週間のPBS除菌(Control)、3剤併用除菌治療(3剤)、3剤併用療法と同時に紅参エキス施した場合(3剤+紅参)の胃組織に生息するTM15生菌数を示す。
図5は、無菌マウスにCAM耐性ピロリ菌TM15を感染させた時の胃組織に生息するTM15生菌数(感染4週)、その後の1週間のPBS除菌(Control)、3剤併用除菌治療(3剤)、3剤併用療法と同時に紅参エキス施した場合(3剤+紅参)の胃組織に生息するTM15生菌数を示す。
図5より、マウスの胃に生息したCAM耐性ピロリ菌TM15数は、3剤併用除菌療法でも有意に減少するが、胃の組織1g当たり10万以上の生菌が生息していた。3剤併用療法に紅参を同時に与えると、胃の組織に生息するCAM耐性ピロリ菌TM15は百分の一に減少し、CAM耐性ピロリ菌の3剤除菌療法除菌補助剤として有効なことが認められた。
試験例4の結果より、経口投与したCAM耐性ピロリ菌TM15は、マウスの胃に定着し、ピロリ菌の定着によりマウス血清ガストリン量は感染前より減少する。CAM耐性ピロリ菌TM15を感染させたマウスに3剤併用除菌療法を施すことで、胃の中のTM15は約1/3に減少するが、血清ガストリン量は治療前に比べ変化がない。一方、3剤併用除菌剤にさらに紅参エキスを併用することにより、TM15は1/100以下に減少し、血清ガストリン量はTM15感染前の値に復帰することから、紅参エキス(ニンジンエキス)は3剤併用療法によるピロリ菌除菌療法の補助剤として有効であることが認められた。
(試験例5)
この試験は、紅参エキスが、3剤併用ピロリ菌除菌療法補助剤の成分として有用なことを、血清中のガストリン量の変化、血清ピロリ菌抗体価の変化ならびに胃の中のピロリ菌数から調べた。
この試験は、紅参エキスが、3剤併用ピロリ菌除菌療法補助剤の成分として有用なことを、血清中のガストリン量の変化、血清ピロリ菌抗体価の変化ならびに胃の中のピロリ菌数から調べた。
(1)CAM耐性ピロリ菌TM15株感染マウスは、試験例4と同様に作成した。
(2)CAM耐性ピロリ菌TM15株感染マウス20匹は、無作為に4群に分け、実験群1にはコントロールとしてPBS、実験群2にはPBSに溶解した紅参エキス3mg/マウス(原生薬換算6mg/マウス)を単独で、実験群3は試験例4と同様の3剤併用除菌剤、実験群4は3剤併用除菌剤に紅参エキス3mg/マウス(原生薬換算6mg/マウス)を併用して、それぞれ1日1回14日間連続投与するピロリ菌除菌療法を施した。
(3)除菌療法終了の翌日、試験例4と同様に各実験群の血清、胃を取り出し血清試料並びに胃組成物試料とした。
(4)血清試料中の血清ガストリン量の測定は、試験例4と同様に測定した。
(5)胃の中のピロリ菌数は、試験例4と同様に測定した。
(6)血清中のピロリ菌抗体価は、ELISA法により測定した。
(2)CAM耐性ピロリ菌TM15株感染マウス20匹は、無作為に4群に分け、実験群1にはコントロールとしてPBS、実験群2にはPBSに溶解した紅参エキス3mg/マウス(原生薬換算6mg/マウス)を単独で、実験群3は試験例4と同様の3剤併用除菌剤、実験群4は3剤併用除菌剤に紅参エキス3mg/マウス(原生薬換算6mg/マウス)を併用して、それぞれ1日1回14日間連続投与するピロリ菌除菌療法を施した。
(3)除菌療法終了の翌日、試験例4と同様に各実験群の血清、胃を取り出し血清試料並びに胃組成物試料とした。
(4)血清試料中の血清ガストリン量の測定は、試験例4と同様に測定した。
(5)胃の中のピロリ菌数は、試験例4と同様に測定した。
(6)血清中のピロリ菌抗体価は、ELISA法により測定した。
図6〜図8に、CAM耐性ピロリ菌TM15株感染マウスに、紅参(紅参)、3剤併用療法(3剤)、3剤併用療法に紅参を加えた療法(3剤+紅参)を、2週間施した時の血清ガストリン濃度(図6参照)、胃組織中のTM15菌数(図7参照)及び血清ピロリ菌抗体価(図8参照)を、PBS投与無治療群(Control)と共に示した。
紅参単独では、ピロリ菌抗体価において僅かな減少が認められたが、血清ガストリン量及び胃組織内のTM15生菌数では効果が認められなかった。さらに3剤併用除菌療法では、十分な血清ガストリン量の回復(図6)、胃組織内TM15生菌数の減少(図7)、及びピロリ菌抗体価の減少(図8)が認められた。
3剤併用除菌療法に紅参エキスを除菌補助剤として併用した除菌療法を施した場合(3剤+紅参)は、血清ガストリン量はTM15感染前の値に復し(図6参照)、胃組織に生息するピロリ菌TM15は、200CFU/gまで減少し(図7参照)、さらにピロリ菌抗体価も有意に減少する(図8参照)ことから、紅参は3剤併用除菌療法補助剤として効果が認められた。
試験例5の結果より、CAM耐性ピロリ菌TM15を感染させたマウスに3剤併用除菌療法を14日間施すことで、胃の中のTM15は約1/3に減少し、また3剤併用除菌剤に紅参エキスを併用することによりTM15は1/300以下に減少するが、紅参エキスの単独投与での除菌効果は認められなかった。
紅参エキスの単独投与は、血清ガストリン量の回復も認められないことから、紅参エキス(ニンジンエキス)は、単独ではCAM耐性ピロリ菌の除菌効果はないが、3剤併用療法によるピロリ菌除菌療法の補助剤として有効である。
紅参エキスの単独投与は、血清ガストリン量の回復も認められないことから、紅参エキス(ニンジンエキス)は、単独ではCAM耐性ピロリ菌の除菌効果はないが、3剤併用療法によるピロリ菌除菌療法の補助剤として有効である。
(試験例6)
この試験は、紅参エキスは、CAM感受性ピロリ菌の3剤併用ピロリ菌除菌療法補助剤の成分として有用なことを、血清中のガストリン量の変化、胃の中のピロリ菌数から調べた。
この試験は、紅参エキスは、CAM感受性ピロリ菌の3剤併用ピロリ菌除菌療法補助剤の成分として有用なことを、血清中のガストリン量の変化、胃の中のピロリ菌数から調べた。
(1)CAM感受性ピロリ菌No.130株感染マウスは、試験例4と同様に作成した。
(2)CAM感受性ピロリ菌No.130株感染マウス20匹は、無作為に4群に分け、試験例5と同じように、実験群1はPBS、実験群2は紅参エキス単独、実験群3は3剤併用除菌剤、実験群4は3剤併用除菌剤に紅参エキスを併用して、それぞれ1日1回7日間連続投与するピロリ菌除菌療法を施した。
(3)除菌療法終了の翌日、試験例5と同様に各実験群の血清、胃を取り出し血清試料並びに胃組成物試料とした。
(4)血清資料中の血清ガストリン量の測定は、試験例4と同様に測定した。
(5)胃の中のピロリ菌数は、試験例4と同様に測定した。
(2)CAM感受性ピロリ菌No.130株感染マウス20匹は、無作為に4群に分け、試験例5と同じように、実験群1はPBS、実験群2は紅参エキス単独、実験群3は3剤併用除菌剤、実験群4は3剤併用除菌剤に紅参エキスを併用して、それぞれ1日1回7日間連続投与するピロリ菌除菌療法を施した。
(3)除菌療法終了の翌日、試験例5と同様に各実験群の血清、胃を取り出し血清試料並びに胃組成物試料とした。
(4)血清資料中の血清ガストリン量の測定は、試験例4と同様に測定した。
(5)胃の中のピロリ菌数は、試験例4と同様に測定した。
試験例6により得られた胃内容物試料中のピロリ菌数を、図9に示した。また、試験例6により得られた胃内容物試料中のピロリ菌抗体価は、図10に示した。
血清中のガストリン濃度(感染前)は、CAM感受性ピロリ菌No.130感染により低下するが、3剤併用に紅参を加えた治療(3剤+紅参)を1週間続ける療法で、感染前の値になり、定着したピロリ菌No.130数は対照に比べ著しく少なくなり、3剤併用除菌補助剤はCAM感受性菌の除菌にも有効であることが認められた。
また試験例6の結果より、紅参エキス(ニンジンエキス)は、CAM感受性ピロリ菌No.130を感染させたマウスの除菌療法で、単独投与では除菌効果は認められないが、感受性ピロリ菌の除菌療法において、3剤併用療法によるピロリ菌除菌療法の補助剤として有効であることが認められた。
次に実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
第十六改正日本薬局方記載の紅参を同じく第十六改正日本薬局方記載の軟エキス剤の製造方法に準じて紅参エキスを製造した。この紅参エキス1gは原生薬2g(原生薬換算2:1)あるいは3g(原生薬換算3:1)に相当する。
製造した紅参エキスをピロリ菌除菌療法補助剤として使用する場合は、3剤併用除菌療法の1週間前から1日2回〜3回、1回0.3g〜0.5gを摂取し、その後3剤併用除菌療法の投薬時に合わせ1日2回、1回0.3g〜0.5gを同時に摂取するように、医薬品または飲食品における紅参エキスの配合量を調整し、最終製剤の剤形により用いる紅参エキスの原生薬換算量を適宜変更した。
第十六改正日本薬局方記載の紅参を同じく第十六改正日本薬局方記載の軟エキス剤の製造方法に準じて紅参エキスを製造した。この紅参エキス1gは原生薬2g(原生薬換算2:1)あるいは3g(原生薬換算3:1)に相当する。
製造した紅参エキスをピロリ菌除菌療法補助剤として使用する場合は、3剤併用除菌療法の1週間前から1日2回〜3回、1回0.3g〜0.5gを摂取し、その後3剤併用除菌療法の投薬時に合わせ1日2回、1回0.3g〜0.5gを同時に摂取するように、医薬品または飲食品における紅参エキスの配合量を調整し、最終製剤の剤形により用いる紅参エキスの原生薬換算量を適宜変更した。
(実施例2)
表3に示した配合により混合した原料を造粒装置で造粒して、ピロリ菌除菌療法の補助機能を賦与した顆粒を製造した。この顆粒は、1包3gにしてピロリ菌の3剤併用除菌療法に準じて、通常は実施例1と同様に1回1包を摂取して、3剤併用除菌療法の除菌率の奏効率を高めさせる医薬品または飲食品の紅参顆粒を製造した。
表3に示した配合により混合した原料を造粒装置で造粒して、ピロリ菌除菌療法の補助機能を賦与した顆粒を製造した。この顆粒は、1包3gにしてピロリ菌の3剤併用除菌療法に準じて、通常は実施例1と同様に1回1包を摂取して、3剤併用除菌療法の除菌率の奏効率を高めさせる医薬品または飲食品の紅参顆粒を製造した。
(実施例3)
表4に示した原料を混合し、打錠機で1錠当たり1.0gに打錠してピロリ菌除菌療法補助剤とて、除菌療法前及び3剤併用ピロリ菌除菌療法に合わせ1日2回、1回1錠を摂取する。
表4に示した原料を混合し、打錠機で1錠当たり1.0gに打錠してピロリ菌除菌療法補助剤とて、除菌療法前及び3剤併用ピロリ菌除菌療法に合わせ1日2回、1回1錠を摂取する。
(実施例4)
表5に示した原料を含有する50mlのドリンク剤を調製し、除菌療法前及び3剤併用ピロリ菌除菌療法に合わせ1日2回、1回1本を摂取する。
表5に示した原料を含有する50mlのドリンク剤を調製し、除菌療法前及び3剤併用ピロリ菌除菌療法に合わせ1日2回、1回1本を摂取する。
ピロリ菌の感染診断は、ピロリ菌は尿素分解酵素ウレアーゼを産生し、ピロリ菌に感染しているとそのウレアーゼによって、胃の中の尿素が、アンモニアと二酸化炭素に分解され、呼気中の二酸化炭素の含有量が増加することを利用した尿素呼気試験により実施した。
(実施例5)
ピロリ菌感染診断用剤(尿素C13錠:ユービット錠100mg、大塚製薬、呼気中13CO2分析:赤外分光分析装置ポックワン(POCone)、フクダ電子)でユービット錠服用後20分のΔ13C:2.5%以上のピロリ菌感染者10名に、実施例2の紅参顆粒を1日2〜3回、1回1包を1週間摂取させたのち、3剤併用療法(CAM 200mg 1錠、AMPC 250mg3カプセル、オメプラゾール 20mg)と同時に紅参顆粒1包を1週間、朝・夕食後の2回感染者に服用させた。被験者の13C−尿素呼気検査値(摂取前)、紅参顆粒1週間摂取後(紅参単独)及び紅参顆粒を加えた3剤併用除菌療法(3剤+紅参)終了直後の治験成績は表6に示した。
ピロリ菌感染診断用剤(尿素C13錠:ユービット錠100mg、大塚製薬、呼気中13CO2分析:赤外分光分析装置ポックワン(POCone)、フクダ電子)でユービット錠服用後20分のΔ13C:2.5%以上のピロリ菌感染者10名に、実施例2の紅参顆粒を1日2〜3回、1回1包を1週間摂取させたのち、3剤併用療法(CAM 200mg 1錠、AMPC 250mg3カプセル、オメプラゾール 20mg)と同時に紅参顆粒1包を1週間、朝・夕食後の2回感染者に服用させた。被験者の13C−尿素呼気検査値(摂取前)、紅参顆粒1週間摂取後(紅参単独)及び紅参顆粒を加えた3剤併用除菌療法(3剤+紅参)終了直後の治験成績は表6に示した。
表6が示すとおり、3剤併用療法に除菌補助剤として紅参顆粒を同時に摂取した時の除菌成功率は90%であり、不成功者は10%であった。最近の3剤併用ピロリ菌除菌成功率は、60%〜70%であるが、無作為に選ばれたピロリ菌感染者に対し90%が除菌に成功した。実施施設における過去の3剤併用除菌療法の成績から無作為に選んだ50症例の除菌成功率は67.8%であることから、除菌成功率90%は本発明による3剤併用除菌療法の除菌補助剤の効果と判断した。
(実施例6)
症例数を増やし無作為に2群に分けて、3剤併用除菌療法施行群と3剤併用除菌療法に除菌補助剤として紅参顆粒を加えた群との比較試験は実施中である。
症例数を増やし無作為に2群に分けて、3剤併用除菌療法施行群と3剤併用除菌療法に除菌補助剤として紅参顆粒を加えた群との比較試験は実施中である。
以上記載したとおり、界面活性作用物質を有効成分として含有するピロリ除菌療法補助剤は、医薬品組成物や飲食品組成物などへの利用が可能である。
Claims (9)
- 界面活性作用物質を有効成分として含有するピロリ菌除菌療法補助剤。
- 界面活性作用物質がサポニンであり、該サポニンが生薬またはその抽出物に含有される請求項1に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
- 生薬が、ニンジン、タイソウ、オンジ、カンゾウ、サイコ、ゴジツ、キキョウ、セネガ、モクツウ、モダマ、チモ、バクモントウ、トチノキ、サンヤクから選ばれる少なくとも1種のサポニン含有生薬である請求項2に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
- 生薬が、ニンジン、タイソウ、カンゾウ、サイコまたはバクモントウである請求項2に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
- 界面活性作用物質が、医薬品添加物及び/または食品添加物として認められた化合物である請求項1に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
- 界面活性作用物質がポリソルベート類である請求項1または5に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
- 界面活性作用物質がラウリル硫酸ナトリウムである請求項1または5に記載のピロリ菌除菌療法補助剤。
- 請求項1〜7のいずれか記載のピロリ菌除菌療法補助剤を配合してなる医薬品組成物。
- 請求項1〜7のいずれか記載のピロリ菌除菌療法補助剤を配合してなる飲食品組成物。
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CN106974952A (zh) * | 2017-04-10 | 2017-07-25 | 通化鑫业生物科技研发有限公司 | 鲜人参活性提取物在制备治疗口腔及消化道溃疡药物中的应用 |
KR101756775B1 (ko) * | 2015-10-15 | 2017-07-26 | 남부대학교산학협력단 | 헬리코박터 파이로리 유래 질환의 예방, 개선 또는 치료용 조성물 |
JP2017189160A (ja) * | 2016-04-12 | 2017-10-19 | キム ソン ペKim Song Bae | アケビ抽出物の製造方法およびその抽出物を用いた機能性食品 |
-
2013
- 2013-02-12 JP JP2013024024A patent/JP2014152147A/ja active Pending
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