以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一又は対応する要素には全図を通じて同一符号を付して重複説明を省略する。以降の説明における方向の概念は、立乗り式電動車両に乗車した運転者が見る方向を基準としており、車長方向は前後方向に一致し、車幅方向は左右方向に一致する。
図1は、実施形態に係る立乗り式電動二輪車1の外観を示す斜視図である。図1に示すように、立乗り式電動二輪車1(以下「電動二輪車」又は「車両」と称する場合もある)は、車体1aと、車体1aに支持された前輪2及び後輪3の2つの車輪と、車体1aに設けられたフロアパネル4と、フロアパネル4の前側に設けられたハンドルポール5と、ハンドルポール5の後端部(又は上端部)に設けられたハンドル6と、前輪2又は後輪3を駆動する電気モータ7とを備える。
本実施形態では、電気モータ7により発生された駆動力で後輪3が回転駆動され、それにより電動二輪車1が走行する。電気モータ7はいわゆるインホイールモータ式であり、電気モータ7の出力軸(図示せず)は後輪車軸3a上に同軸上に配置され、電気モータ7全体が後輪3の径方向内側に収容される。また、電気モータ7は、低速でトルクが大きく高速で出力が小さいという出力トルク特性を有する。このような特性を有する電気モータ7は、高いトラクション及び高い制御応答性を得ることができる点に照らして、低速走行を主とする立乗り式電動二輪車1の駆動源として好適に適用することができる。
前輪2は、左右のフロントスイングアーム8により車体1aに左右方向の軸線周りに揺動可能に支持されている。後輪3は、左右のリアスイングアーム9により車体1aに左右方向の軸線周りに揺動可能に支持されている。電気モータ7のケーシングは、リアスイングアーム9に結合され又は一体成形されている。フロアパネル4は、車体1aの概ね前後方向中央部に設けられ、車体1aの外面の一部を成している。車体1aの前部にはフロアパネル4の前方に配置されたポール支持部10が設けられ、ハンドルポール5は、その前端部(下端部)にてポール支持部10に支持され、基本的にはポール支持部10から後上方に延在している。
運転者は、両足裏をフロアパネル4上に置いて起立すると共にハンドル6を把持した起立姿勢で乗車する。ハンドル6の近傍には、アクセルグリップやブレーキレバー等の複数の操作子が設けられており(図4参照)、運転者は、これら操作子を操作して電気モータ7の出力及び車輪2,3への制動力を調整することで、電動二輪車1の速度及び加減速度を調整することができる。ハンドル6は、ハンドルポール5に回動可能に取り付けられている。運転者は、ハンドル6を回動することで前輪2を操舵することができる。
フロアパネル4は、略水平な平坦部4aを有する。平坦部4aは、前輪2及び後輪3が平坦路面上に接地している状態で、前輪2の上端及び後輪3の上端よりも下方に配置される。運転者は、平坦部4a上に両足裏を置くことで、垂直に起立した楽な姿勢をとることができる。平坦部4aは、平坦路面上を低速で走行するときなど、走行状況に大きな変化がなく運転者に大きな外力が作用しない走行での利用に適している。
フロアパネル4の前端部4bは、平坦部4aの前部から上向きに傾斜するように延在し、フロアパネル4の後端部4cは、平坦部4aの後部から上向きに傾斜するように延在している。運転者は、片方の足裏を前端部4bに置き、もう片方の足裏を後端部4cに置くことで、フロアパネル4上で強く踏ん張ることができる。これにより運転者は大きな慣性力や遠心力や風圧が働いても、高い操縦安定性を維持することができる。また、踏ん張りが効くと、上半身の前後移動や腰の上げ下げ等を容易且つ安定的に行うことができるようにもなり、そのため自身の重心を前後方向及び上下方向に容易且つ安定的に移動させることができる。このため、アップダウンが連続する道に沿って走行するとき等、路面状況や加速度が変化しやすい場合でも、その変化に応じて体位及び重心を自在に移動させることができ、それにより高い操縦安定性を維持することができる。
ハンドルポール5の前端部(又は下端部)は、ポール支持部10に、左右方向の軸線周りに揺動可能に支持されている。ハンドルポール5は、車体1aの前部から上方又は後方に延在し、ポール支持部10を支点にして起伏可能である。ハンドル6を把持した運転者は、ハンドルポール5を揺動させることで、上半身の前後移動及び/又は腰の上げ下げを行う際にハンドル6も一緒に前後方向及び上下方向に移動させることができる。これによりハンドル6を把持して(場合により、フロアパネル4の前端部及び後端部それぞれに片足ずつ足裏を置くこともしながら)安定な姿勢を確保しつつ、自身の重心を走行状況に応じて前後方向及び上下方向に容易且つ安定的に移動させることができる。
ハンドルポール5の後端部には弾性を有した保護パッド11が設けられている。このため、ハンドルポール5を後傾した状態で運転者の上半身が不意に前方へ移動する等して運転者がハンドルポール5に接触しても、保護パッド11で緩衝することができる。保護パッド11は、ハンドルポール5の後端部上面から後方に突出し、そこから若干下方へと張り出してハンドル6周辺にも配置されている(図2及び図3も参照)。これにより、運転者の保護性が高くなる。
ポール支持部10はフロアパネル4の前端部4bよりも前方に設けられ、フロアパネル4の前端部4bは平坦部4aから前上方へと延びる。このため、フロアパネル4の前端部4bからポール支持部10にかけての部分(つまり、車体1aの前部)は、フロアパネル4の平坦部4aが配置された部分(つまり、車体1aの前後方向中央部)と比べ、上下方向に大型である。車体1aの底面高さ位置は前端部から後端部まで略一定であり、そのため車体1aの前部は、車体1aの前後方向中央部(更に言えば、車体1aの残余部分)から見れば上方に突出している。後述のとおり、上下方向に相対的に大型化された車体1aの前部は、バッテリ群を含む車載電装品を収容する電装品収容部12を成しており、また、車載電装品のメンテナンスの便宜が考慮された構成となっている。
車体1aの前部上面側には、左右方向中央部で前後方向に延びる溝13が設けられている。ハンドルポール5は、ポール支持部10から後上方へと傾斜して延びる起立位置と、ハンドルポール5の前部が溝13に収容されてポール支持部10から後方へとほぼ水平に延びる収納位置との間で起伏可能である。これにより、電動二輪車1を使用しないとき、ハンドルポール5を収納位置に位置させることで、電動二輪車1の車高を低くしてコンパクトにすることができる。溝13は上方だけでなく後方でも開放されているので、ハンドルポール5を収納位置まで倒伏させようとするときに、ハンドルポール5の後部を溝13の後部開放部分を通じて後方へ突出させることができる。これにより、ハンドルポール5を極力長くして起立姿勢で乗車する運転者がハンドル6を自然に把持できるようにすることと、ハンドルポール5を収納位置まで倒伏させたときの車高を極力低くして電動二輪車1をコンパクトに保管できるようにすることとを、両立することができる。
図2は、図1に示す電動二輪車1の左側面図であり、図3は、図1に示す電動二輪車1の左側面視部分断面図である。図3には、前述した起立位置に位置するハンドルポール5が実線で、収納位置に位置するハンドルポール5が二点鎖線でそれぞれ示されている。ハンドルポール5が収納位置に位置するとき、溝13(図1参照)から突出したハンドルポール5の後部は、フロアパネル4の平坦部4aに上から被さる。ポール支持部10から平坦部4aの後端までの前後方向距離は、ポール支持部10から収納位置に位置したハンドルポール5の後端までの前後方向距離に略等しい一方、フロアパネル4は、平坦部4aの後端から延びる後端部4cを有している。このようにフロアパネル4は、収納位置に位置したハンドルポール5の後端よりも後方且つ上方へ延びている。よって、ハンドルポール5の後端部は、フロアパネル4の後端部4cと前後方向に近接し、ハンドルポール5は、上方に延びるフロアパネル4の後端部4cで後から覆われる。このため、ハンドルポール5を収納位置に位置させたときには、ハンドルポール5の後端部及びそこに取り付けられたハンドル6をフロアパネル4の後端部4cで保護することができる。
図2及び図3に示すように、車体1aは、前輪2及び後輪3の間に設けられた車体フレーム21と、車体フレーム21を覆うフード22とを有する。フロアパネル4は、車体フレーム21上に設けられ、フード22と共に車体フレーム21を外から覆っている。
車体フレーム21は、左右一対のフロアフレーム23及び左右一対のロアフレーム24を有する。フロアフレーム23は、前後方向に略水平に延びている。左右のロアフレーム24は、左右のフロアフレーム23よりも下方で前後方向に略水平に延びている。各ロアフレーム24は、前端部及び後端部にて上方へ向かうよう屈曲し、対応するフロアフレーム23の前端部及び後端部に結合されている。
フレーム23,24の後端部同士の結合部は左右に対をなすところ、前述した左右のリアスイングアーム9は、前端部にて該一対の結合部それぞれに左右方向の軸線周りに揺動可能に連結され、後端部にて後輪車軸3aの左部及び右部それぞれを回転可能に支持している。車体フレーム21は、一対の結合部から後上方へと傾斜して延びる左右一対のリアフレーム26を有し、これらリアフレーム26の上端部にリアフェンダ27が設けられている。リアフェンダ27は、リアフレーム26から後方へ延び、後輪3及びリアスイングアーム9よりも上方に配置される。また、略上下方向に向けられたリアサスペンション28が、上端部にてリアフレーム26に揺動可能に支持されて下端部にてリアスイングアーム9に揺動可能に支持される。
フレーム23,24の前端部同士の結合部も左右に対をなすところ、前述した左右のフロントスイングアーム8は、前端部にて該一対の結合部それぞれに左右方向の軸線周りに揺動可能に連結され、後端部にて前輪車軸2aの左部及び右部それぞれを回転可能に支持している。
前述したポール支持部10は、フロアフレーム21の前端部上に設置されている。ポール支持部10は、左右のフロアフレーム21の前端部それぞれから上方に立設する左右の支持フレーム部29と、これら支持フレーム部29の上端部に設けられた支持プレート部30とを有する。支持プレート部30の上面には、左右一対のリブ31が設けられており、ハンドルポール5は、その前端部(又は下端部)において、これら一対のリブ31により左右方向の軸線周りに揺動可能に両持ち支持されている。なお、図示のとおり、左右の支持フレーム部29がどちらも前後2本のフレームを有し、それにより支持フレーム部29が全体として前後左右4本のフレームで構成されてもよい。支持プレート部30が支持フレーム部29を介して車体フレーム21に強固に取り付けられるので、ハンドルポール5の支持剛性が高くなる。また、略前後方向に向けられたフロントサスペンション32が、前端部にて前輪2に揺動可能に支持されて後端部にて左右いずれかの支持フレーム部29に揺動可能に支持される。
図4は、図1に示すハンドル6周辺を示す電動二輪車1の平面図である。図4に示すように、ハンドル6は、ハンドルポール5の後端部(又は上端部)の左右方向中央部に回動可能に連結され、ハンドルポール5から左右それぞれに突出した一対のグリップ6a,6bを有する。運転者は、走行中に両手でこれらグリップ6a,6bそれぞれを把持することとなる。ハンドル6には、前述した複数の操作子が設けられている。例えば、右グリップ6aはそれ自体が、自転可能なアクセルグリップであり、アクセルグリップの回転量(すなわち、アクセル開度)に応じて電気モータ7(図1〜図3参照)の出力が調整される。右グリップ6aに近接してフロントブレーキレバー33が設けられ、左グリップ6bに近接して回生ブレーキレバー34が設けられている。フロントブレーキレバー33が操作されると前輪2(図1〜図3参照)に油圧を用いた制動力が付与される。回生ブレーキレバー34が操作されると、電気モータ7に制動トルクが発生し、それにより後輪3(図1〜図3参照)が制動される。
本実施形態では、ハンドル6は、左右のステアリングケーブル35,36を介して前輪2(図1〜図3参照)に接続される。例えば、ハンドル6が上から見て右に回転すると、前輪2の右側が右ステアリングケーブル35によって後に引っ張られ且つ前輪2の左側が左ステアリングケーブル36により前に押し出され、その結果、前輪2が右に転向して電動二輪車1が右回りに旋回走行する。このように本実施形態に係る電動二輪車1の操舵システムでは、ハンドル6が回動されても、ハンドルポール5が回転しない。このように、ハンドルポール5を操舵に伴って作動する部材とはしないことで、ハンドルポール5を左右方向の軸線周りに揺動可能にポール支持部10(図1〜図3参照)に支持させる構造を容易に実現することができ、前述したとおり走行状況に応じたハンドル6の前後及び上下の移動が可能となる。
本実施形態に係るハンドルポール5は中空に形成され、ステアリングケーブル35,36は、ハンドル6からハンドルポール5内を通過している。これにより、ステアリングケーブル35,36を外界から保護することができるし、ハンドルポール5周辺及び車両1全体の美観が向上する。なお、ハンドルポール5内には、フロントブレーキレバー33から延びる油圧配管や、回生ブレーキレバー34から延びる通信配線等、他の配管、電気配線及び通信配線が通過していてもよい。
図2及び図3に示すように、フロアパネル4は、左右のフロアフレーム23で支持されている。平坦部4aはフロアフレーム23上に設置される。なお、左右のフロアフレーム23は、平坦部4aを支持する部分で、前後方向に並ぶ複数本のフレームで左右を梯子状に繋いでもよいし、井桁状のパネルで左右を繋いでもよい。これにより、平坦部4aの左右方向中央部の撓みを防ぐことができる。
フロアパネル4の前端部4bは、フロアフレーム23から遠ざかるようにして平坦部4aの全部から前上方へと傾斜している。フロアパネル4の前端部4bは、ポール支持部10よりも後方に配置され、ポール支持部10とは前後方向に離隔している。フロアパネル4の後端部4cは、リアフレーム26よりも若干後方でフロアフレーム23から遠ざかるようにして平坦部4aの後部から後上方へと傾斜している。リアフェンダ27は、後端部4cの上端(後端)から連続するように設けられ、フロアパネル4から後方に延びている。
フード22は、本体フード部41と、フロントフード部42とを有している。本体フード部41は、車体フレーム21及びポール支持部10の左方及び右方それぞれを覆う一対の側壁部43と、車体フレーム21の下方を覆う底壁部44と、ポール支持部10の上方を覆う上壁部45とを有している。本体フード部41は、単一部材で構成されていてもよいし複数部材を組み合わせることで構成されてもよく、例えばツートンカラー彩色の便宜や車両組立ての便宜や要求強度の相違等を考慮して底壁部45のみを別部材としてもよい。一対の側壁部43は、下縁部にて、底壁部44の左縁部及び右縁部それぞれに連続している。一対の側壁部43は、上縁部の前端部にて、上壁部45の左縁部及び右縁部それぞれに連続している。一対の側壁部43は、上縁部の前後方向中央部から後端部にわたって、フロアパネル4の平坦部4aから後端部4cにかけて左縁部及び右縁部それぞれに連続し、これらフロアパネル4の縁部と共に前後方向に延びる分割線を形成している。
一対の側壁部43の上縁部は、フロアパネル4の平坦部4aに連続する部位から見て前方に略水平に延びており、フロアパネル4の前端部4bの左縁部及び右縁部それぞれから下方に離間している。その後、一対の側壁部43の上縁部は、ポール支持部10と側面視で重なる領域内又はポール支持部10よりも後方で、上向きに延びるように屈曲している。この屈曲により一対の側壁部43には、上下方向に延びる段差縁部が形成され、段差縁部は、上端部にて上壁部45の後縁部に連続する。以下、本体フード41の縁部のうち、一対の側壁部43の上縁部であってフロアパネル4の平坦部4aから離間して前方に延びる部分と、一対の側壁部43の段差縁部と、上壁部45の後縁部とを纏めて、「装着縁部46」と称する。
図5は、図1に示す電動二輪車1の正面視部分断面図である。図5に示すように、左右のロアフレーム24は、左右のフロアフレーム23それぞれよりも車幅方向中心側に配置されている。より詳細に言えば、一対のロアフレーム24の左右方向中心も、一対のフロアフレーム23の左右方向中心も、車両1の車幅方向中心WC上に位置するが、一対のロアフレーム24間の距離は、一対のフロアフレーム23間の距離よりも短い。
本体フード部41の一対の側壁部43は、このように配置された車体フレーム21を左方及び右方それぞれから覆っていることから、フロアフレーム23の車幅方向外側に屈曲部を有している。この屈曲部よりも上方では概ね上下方向に延びている一方、フロアフレーム23よりも下部では、下方に向かうほど、ロアフレーム24に近づくようにして車幅方向中心側に傾斜している。換言すれば、本体フード部41は、フロアフレーム23よりも下方では左右方向に先細りに形成される。これにより、旋回走行するときに遠心力に抗して車体1aを傾けても、車体1aの外側面が路面に接触するのを防ぐことができる。これによりフロアパネル4を低く配置しながら円滑に旋回走行することができる。
そして、本体フード部41の該側面には、側壁部43の下縁部から底壁部44の左右縁部にかけて、左右一対のロアスライダバンパ47が設けられており、また、前述した側壁部43の屈曲部にて、左右一対のアッパスライダバンパ48が設けられている。これらスライダバンパ47,48を設けたことで、旋回走行時に車体1aを極端に傾けた場合や、車両1が転倒した場合であっても、フード22をはじめとして車両1を構成する他の部品や装置が損傷するのを防ぐことができる。
図1、図3及び図5に示すように、フロントフード部42は、本体フード部41及びフロアパネル4に対して着脱可能に装着され、本体フード部41への装着状態において本体フード部41によっては覆われていない領域を覆う。すなわち、フロントフード部42は、前後方向においてフロアパネル4の前端部4bと本体フード部41の段差縁部との間の領域を覆うことができる。また、フロントフード部42は、一対の側壁部43の上縁部であってフロアパネル4の平坦部4aから離間して前方に延びる部分よりも上方の領域を覆うことができる。
フロントフード部42は、一対の側壁部49と、一対の側壁部49の上縁部同士を繋ぐ上壁部50とを有している。フロントフード部42の後縁部は、背面視で逆U状を呈しており、装着状態ではフロアパネル4の前端部4bの上縁部、左縁部及び右縁部に連続する。一対の側壁部49の下縁部は前後方向に延び、一対の側壁部49の前縁部は正面視で逆U状を呈している。これら下縁部及び前縁部は、装着状態で、本体フード部41の装着縁部46に連続する。
このようにフロアフレーム23上に設置されたポール支持部10と、フロアフレーム23から上方に離間するように延びるフロアパネル4の前端部4bとの間が、フロントフード部42により着脱可能に覆われる。すると、前後方向においてポール支持部10とフロアフレーム23との間の領域であってフロアフレーム23よりも上方に、フロントフード部42によって開閉されるスペースが形成される。本実施形態に係る電動二輪車1では、このスペースが、バッテリ群を含む車載電装品を収容する電装品収容部12に利用されている。このスペースは、フロアパネル4の前端部4bの傾斜とポール支持部10の設置のため確保されたデッドスペースでもあり、このデッドスペースを有効活用して電装品が車両1に搭載される。そして、このスペースは、フロントフード部42を本体フード部41から取り外すことで、上方、左方及び右方に開放される。このため当該スペースに収容された電装品にアクセス容易となり、当該電装品のメンテナンス作業を簡便に行うことができる。
なお、フロントフード部42は、車体1aの前部を構成している。前述したとおり、車体1aの前部には収納位置へと倒伏したハンドルポール5の前部が収容される溝13が設けられるところ、フロントフード部42の上壁部50には、左右方向中央部を前後方向に延びる溝13が設けられており、左右方向中央部は左端部及び右端部に比べて下方に凹んでいる。
電動二輪車1には多数の電装品が搭載されており、そのうち電気モータ7を除く電装品の殆どが車体フレーム21に支持されてフード22で覆われる。左右のロアフレーム24上及び左右のフロアフレーム23の前端部上には、電装品を支持するための台座51,52が設置される。
フード22で覆われる電装品には、例えば、電気モータ7の電源としてのバッテリ群61と、バッテリ群61に蓄えられた直流電力を電気モータ7への給電のため交流に変換するインバータ62と、バッテリ群61とインバータ62との間の電気的接続などを断接するリレー群63と、バッテリ群61同士の電気的接続を運転者が切断操作するためのサービスプラグ64が含まれる。バッテリ群61には、電気モータ7の電源として機能する動力バッテリだけでなく、電気モータ7よりも駆動電圧が低い車載電装品(例えば、灯火器や警報器や表示器)の電源として機能する補機バッテリが含まれていてもよい。この場合、電装品に、動力バッテリと補機バッテリとの間に介在するDCDCコンバータが含まれていてもよく、リレー群63に、DCDCコンバータと動力バッテリ又は補機バッテリとの間の電気的接続を断接するリレーが含まれていてもよい。
インバータ62は、車体1aの後内部に収容されている。つまり、インバータ62は、ロアフレーム24上の台座51の後端部に設置されており、本体フード部42の後端部で覆われる。これによりインバータ62をフード22で保護しながら、インホイールモータである電気モータ7に極力近付けることができるようになる。よって、インバータ62から電気モータ7に繋がる電気配線を短くすることができる。なお、当該電気配線は、左右一対のリアスイングアーム9の内側に設けることができ、これにより当該配線をリアスイングアーム9で保護することができる。
バッテリ群61は、インバータ62よりも前方に配置される。バッテリ群61には、ロアフレーム24に支持される下部バッテリ群61aと、フロアフレーム23に支持される上部バッテリ群61bとが含まれる。下部バッテリ群61aは、インバータ24よりも若干前方からロアフレーム24の前端部にわたって前後方向にも左右方向にも密に配置されている。フロアフレーム23は、前後方向中央部から後端部にかけてはフロアパネル4の平坦部4aを支持しているので、台座52は、フロアフレーム23のうち平坦部4aよりも前方に延びる部分に設けられており、上部バッテリ群61bはこのように設けられた台座52上に設置される。すなわち、上部バッテリ群61bは、車体1aの前上部に配置され、電装品収容部12に収容される。
電装品収容部12はフロントフード部42により覆われるところ、フロントフード部42は収納位置に位置するハンドルポール5を収容するための溝13を有しており、そのため電装品収容部12の左右方向中央部の上下方向寸法が、電装品収容部12の左端部及び右端部の上下方向寸法と比べて小さくなっている。
上部バッテリ群61bは、相対的に上下方向に大型化された左端部及び右端部に設けられている。これによりバッテリを極力大型にすることができ、電動二輪車1の航続距離を長くすることができる。一方、相対的に上下方向に小さい左右方向中央部には、リレー群63及びサービスプラグ64が設けられる。リレー群63もサービスプラグ64もバッテリ群61と比べれば低背に構成可能であるので、このような小さいスペースを有効活用してこれら電装品を効率よく収容することができる。また、電装品収容部12の後端部では、フロアパネル4の前端部4aの側面視形状に沿って、側面視三角形状の空間が形成される。電装品にDCDCコンバータ65が含まれる場合、この空間にDCDCコンバータ65が収容されてもよい。DCDCコンバータ65もバッテリ群61と比べると低背に構成可能であるので、このような小さく特異な形状のスペースを有効活用して電装品を効率よく収容することができる。
このようにバッテリ群61の他にも多数の電装品62〜65がフードで覆われる。このため、これら電装品を保護することができる。特に、リレー群63及びサービスプラグ64は、上部バッテリ群61bにより左右方向に挟まれており、これらバッテリ群によっても保護される。そしてこれら電装品61〜65はフード22で覆われるところ、このフード22の外面にはスライダバンパ47,48が設けられており、電装品61〜65はスライダバンパ47,48よりも車幅方向中央側に配置される。このため、車体1aが極端に傾斜したり車両1が転倒したりするときでも、スライダバンパ47,48によって電装品を保護することができる。なお、電装品収容部12には、不図示の充電コネクタが設けられていてもよく、その場合、電装品収容部12をフロントフード部42に開閉可能な蓋42aを設け、蓋42aを開放すると通常フロントフード部42で覆われた充電コネクタにアクセス可能にしてもよい。
このような電装品配置は、電装品の保護性を高めるだけでなく、操安性の向上にも貢献する。つまり、インバータ62を後輪3及び電気モータ7に近付けるべく車体1aの後内部に配置したことで、バッテリ群61はインバータ62よりも前方に配置されている。バッテリ群61は、下部バッテリ群61bと上部バッテリ群61bとを含むところ、下部バッテリ群61aは、ロアフレーム24の前端部に至るまで設けられている。このため、下部バッテリ群61aの全部又は大部分が、前輪車軸2aと後輪車軸3aとの前後方向における中間点Mよりも前方に配置される。上部バッテリ群61bは、車体1aの前部に配置されており、中間点Mよりも前方に配置される。このため、バッテリ群61の重心G61は、当該中間点Mよりも前方に配置される。
そして、上部バッテリ群61bは、下部バッテリ群61aの一部(前部)の上に重なるように配置されており、下部バッテリ群61aの重量は上部バッテリ群61bの重量よりも大きい。下部バッテリ群61aはフロアパネル4の平坦部4aよりも下方に配置されているので、バッテリ群61の重心は、当該平坦部4aよりも下方に配置される。
バッテリ群61は、電動二輪車1を構成する装置や機器のなかでも特に重量物である。このような重量物であるバッテリ群61の重心が、前輪車軸2aよりも後方であって中間点Mよりも前方であり且つフロアパネル4の平坦部4aよりも下方に配置されるので、車両1の重心G1もこれに伴って中間点M付近であってフロアパネル4の平坦部4a付近に配置される。
一方、電動二輪車1の乗車した運転者は、フロアパネル4上に立って腰を若干落とした姿勢をとっている場合に、その腰はフロアパネル4の後端部4c又はリアフェンダ26の上方に位置する。このため、運転者の重心GRは、フロアパネル4よりも上方であって前記中間点Mよりも後方に位置する。
すると、車両及び運転者全体の重心Gは、前後方向においては概ね前記中間点M付近に位置し、上下方向においては概ねフロアパネル4の平板部4a付近に位置する。なお、この全体の重心Gは、運転者の姿勢に応じて変化させることができる。このように本実施形態に係る電動二輪車1によれば、車両及び運転者全体の重心Gが、前後方向において中間点M付近に配置することができる。これにより、前輪2の接地荷重と後輪3の接地荷重とのバランスをとることができ、操安性が増す。また、運転者の姿勢が変化しても、車両及び運転者全体の重心Gが車両前側又は車両後側に極端にシフトするようなことがない。このため運転者は自身の姿勢を前述したとおり自在に変化させながら、車両1を安定的に操縦することができる。
特に、本実施形態では、フロアパネル4の前後方向中央が、前輪車軸2aと後輪車軸3aとの中間点Mよりも後方に配置される。このため、バッテリ群61の重心G61が中間点Mよりも前方に配置された場合に、運転者の重心GRを中間点Mよりも後方に配置しやすくなり、それにより車両及び運転者全体の重心Gが中間点M付近でバランスしやすくなる。
本実施形態では、電気モータ7がインホイールモータであるが、その電気モータ7が後輪車軸3aと同軸上に配置されている。これにより電気モータ7が後輪車軸3aよりも後方に配置されるような場合と比べて、車両全体の重心をより前方に位置させることができる。このため、運転者の姿勢が垂直起立姿勢から後傾姿勢に変化したときでも、ウィリーが抑制されるなどして操安性を高く維持することができる。
これまで本発明に係る実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。例えば、車体1aが傾斜したときに、電気モータ7の出力トルクを増大補正する制御が実行されてもよい。これにより傾斜した車体1aを起こしやすくなり、操安性が増す。また、ハンドルポールが収納位置に位置しているときには、バッテリ群61とインバータ62との間に介在するリレー63を開き、電気モータ7への給電を遮断する制御が実行されてもよい。これにより電動二輪車1の誤動作を防ぐことができる。車体1aには、電動二輪車1を自立させるためのスタンドが設けられていてもよい。これにより、電動二輪車1を保管するときの便宜が図られる。