JP2014111852A - 立体規則性ポリスチレン繊維及びその製造方法 - Google Patents

立体規則性ポリスチレン繊維及びその製造方法 Download PDF

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敏文 伊香賀
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Risa Yasojima
梨沙 八十島
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祐介 木村
Akira Wakasugi
晃 若杉
Keisuke Ide
圭亮 井出
Munekazu Matoba
兵和 的場
Takeshi Matsuno
岳 松野
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武治 田島
Hideaki Yamaguchi
秀明 山口
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Abstract

【課題】軽量であり、引張特性と絶縁性と熱変形温度と耐溶剤性と加工性に優れ、製造コストが高くない熱可塑性樹脂からなる繊維を提供すること。
【解決手段】引張強度が2.0cN/dtex以上であるシンジオタクチックポリスチレンからなる繊維、及び次の繊維の製造方法。つまり、複屈折の絶対値が0.011以下の繊維を得る紡糸工程、及び前記紡糸工程で得られた未延伸繊維を2.6倍以上の延伸倍率で延伸する延伸工程を有する繊維の製造方法。特に、シンジオタクチックポリスチレンを用いて紡糸するときの設定紡糸速度が下記式(1)を満たすことが好ましい。
V<Vmax=−2.5×D+653 (1)
[V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)である。
Vmax;設定紡糸速度Vに対し、延伸可能な最大紡糸速度(m/min)である。
D;ノズルから押出される樹脂の吐出量とワインダーで巻かれる繊維の速度の割合で、下記式(a)で表される。
D=V×ρ×πR2÷M (a)
(V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)、ρ;密度(g/cm3)、R;ノズル半径(mm)、M;単孔吐出量(g/min))]
【選択図】なし

Description

本発明は、立体規則性ポリスチレン繊維及びその製造方法に関する。より詳細には、引張強度が2.0cN/dtex以上である、シンジオタクチックポリスチレンからなる繊維、並びに溶融紡糸及び延伸することで繊維化する前記繊維の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂からなる繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレート及びポリアミド等が挙げられるが、これらは加水分解しやすい。ポリエチレンやポリプロピレンは軽量で、引張特性と絶縁性にも優れるが、熱変形温度が低い。一方、ポリフェニレンスルフィドやポリテトラフルオロエチレンからなる繊維は優れた熱変形温度及び耐溶剤性を示すが、加工性が悪く、製造コストが高いという問題がある。
つまり、軽量であり、引張特性と絶縁性と熱変形温度と耐溶剤性と加工性に優れ、製造コストが高くない熱可塑性樹脂からなる繊維が求められている。また、焼却しても有害なガスが少ない熱可塑性樹脂からなる繊維が求められている。
このような状況下、軽量であり、絶縁性と熱変形温度と耐溶剤性とに優れ、製造コストが高くなく、焼却しても有害なガスが少ないということで、シンジオタクチックポリスチレンを用いた繊維が開発されている(特許文献1〜3参照)。
特開平02−104715号公報 特開平02−053909号公報 特開2002−13054号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の繊維は、引張強度が不十分であり、且つ加工性が悪いため、実用化できる繊維ではない。
そこで、本発明の課題は、軽量であり、引張特性と絶縁性と熱変形温度と耐溶剤性と加工性に優れ、製造コストが高くない熱可塑性樹脂からなる繊維を提供することにある。
まず、本発明者らは特許文献1〜3について検討し、以下のように考察した。
特許文献1では、実施例1と2〜3、実施例4と5、実施例6と7を比較すると分かるように、延伸することによる強度の増加率が小さい。また、特許文献1では強度を高めるために重量平均分子量を300,000以上としているが、そのわりに強度が小さい。これは、重量平均分子量が大きいわりに、紡糸温度が250〜300℃と低いため(特許文献1の実施例参照)、溶融粘度が高い状態で延伸前に配向結晶化が進み過ぎていたものと推察する。このため、実施例では延伸倍率50〜160%、つまり1.5〜2.6倍でしか延伸できず、最高引張強度が1.27cN/dtexにしかならなかったものと考えられる。
また特許文献2は、ポリスチレンを溶媒に溶解する工程を必須としており、溶媒の抽出工程が必須となるため工程数が多くなるほか、実施例では引張強度1.56cN/dtexが最高の値となっていて、引張強度は不十分である。
特許文献3は、実施例では重量平均分子量が約15万のSPSを600m/minで紡糸し、160℃で2.5倍延伸しているが、得られた繊維の引張強度は最高で1.94cN/dtexで低く、更なる改善が必要である。
そこで、本発明者等は、鋭意検討を行った結果、特定条件での紡糸工程及び特定条件での延伸工程を経て製造した繊維であれば上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[9]に関する。
[1]引張強度が2.0cN/dtex以上であるシンジオタクチックポリスチレンからなる繊維。
[2]前記シンジオタクチックポリスチレンの重量平均分子量が12万以上30万以下である上記[1]に記載の繊維。
[3]上記[1]又は[2]に記載の繊維の製造方法であって、
複屈折の絶対値が0.011以下の繊維を得る紡糸工程、及び
前記紡糸工程で得られた未延伸繊維を2.6倍以上の延伸倍率で延伸する延伸工程を有する繊維の製造方法。
[4]前記紡糸工程において、シンジオタクチックポリスチレンを用いて紡糸するときの設定紡糸速度が下記式(1)を満たす上記[3]に記載の繊維の製造方法。
V<Vmax=−2.5×D+653 (1)
[V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)である。
Vmax;設定紡糸速度Vに対し、延伸可能な最大紡糸速度(m/min)である。
D;ノズルから押出される樹脂の吐出量とワインダーで巻かれる繊維の速度の割合で、下記式(a)で表される。
D=V×ρ×πR2÷M (a)
(V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)、ρ;密度(g/cm3)、R;ノズル半径(mm)、M;単孔吐出量(g/min))]
[5]前記紡糸工程において、前記設定紡糸速度が下記式(2)を満たす上記[4]に記載の繊維の製造方法。
V<Vmax=−3.6×D+366 (2)
[V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)である。
Vmax;設定紡糸速度Vに対し、延伸可能な最大紡糸速度(m/min)である。
D;ノズルから押出される樹脂の吐出量とワインダーで巻かれる繊維の速度の割合で、下記式(a)で表される。
D=V×ρ×πR2÷M (a)
(V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)、ρ;密度(g/cm3)、R;ノズル半径(mm)、M;単孔吐出量(g/min))]
[6]前記延伸工程において、前記紡糸工程で紡糸した繊維を、レーザーを照射しつつ延伸する上記[3]〜[5]のいずれかに記載の繊維の製造方法。
[7]前記延伸工程において、4.0倍以上に延伸する上記[6]に記載の繊維の製造方法。
[8]前記延伸工程において、前記紡糸工程で紡糸した繊維を、熱ロールによって、シンジオタクチックポリスチレンのガラス転移温度以上150℃以下に加熱しつつ延伸する上記[3]〜[5]のいずれかに記載の繊維の製造方法。
[9]上記[3]〜[8]のいずれかに記載の繊維の製造方法により製造された繊維。
本発明によれば、軽量であり、引張特性と絶縁性と熱変形温度と耐溶剤性と加工性に優れ、製造コストが高くない繊維を提供することができる。
実施例及び比較例におけるドラフト比(D)と設定紡糸速度(V)との関係を示すグラフである。
本発明の繊維は、引張強度が2.0cN/dtex以上であるシンジオタクチックポリスチレン(以下、SPSと称することがある。)からなる繊維である。
本発明の繊維の引張強度は、3.0cN/dtex以上であることが好ましい。より好ましくは3.7cN/dtex以上で、引張強度の上限値には特に制限はなく、用いる用途により必要とされる引張強度が決まる。例えば、6.0cN/dtexあれば通常の用途では十分である。すなわち、通常の工程を経て繊維製品として使用するためには、引張強度は2.0cN/dtex以上6.0cN/dtex以下でよい。引張強度が2.0cN/dtex未満であると、繊維製品化する際に強度が不足する。2.0cN/dtex以上であれば、織物及び編物といった繊維製品への加工性に優れる。
一般的に、延伸した繊維の配向度の指標として、複屈折が用いられる。本発明の繊維は、複屈折の絶対値が0.070以上であり、好ましいものでは0.100以上となる。複屈折の絶対値の上限に特に制限はないが、分子配向には上限があり、0.200では分子配向は飽和状態にある。従って、通常の用途であれば、複屈折の絶対値が0.070以上0.200以下でよい。複屈折の絶対値が0.070未満では、繊維の配向度が不十分で繊維の強度が低くなる傾向にあり、特に0.020以下になると繊維の強度が低く、実用的ではない。
本発明の繊維の弾性率は、50cN/dtex以上が好ましく、より好ましいものでは90cN/dtex以上、さらに好ましいものでは100cN/dtex以上である。なお、弾性率の上限値に特に制限はなく、用いる用途により必要とされる弾性率が決まる。例えば、150cN/dtexあれば通常の用途では十分である。従って、通常の用途であれば、50cN/dtex以上150cN/dtex以下でよい。また、伸度は、2%以上であることが好ましく、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である。なお、伸度の上限値に特に制限はなく、用途により必要とされる伸度が決まる。例えば、伸度40%であれば通常の用途では十分である。従って、通常の用途であれば、伸度は2%以上40%以下でよい。本発明の繊維は長繊維であってもよく短繊維としてもよい。長繊維とするか短繊維とするかは用途によって適した方を選択することになる。
なお、引張強度、複屈折、弾性率及び伸度は、実施例に記載の方法に従って測定した値である。
本発明の「シンジオタクチックポリスチレンからなる繊維」は、「実質的」に、後述する「(シンジオタクチックポリスチレン)」の項において定義される構造を持つシンジオタクチックポリスチレンからなる繊維である。つまりシンジオタクチックポリスチレン100%からなる繊維のみに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含んでいてもよい。
例えば、本発明の繊維にシンジオタクチックポリスチレンが95質量%以上含まれていれば、本発明の効果を得られる。本発明の繊維にシンジオタクチックポリスチレンが98質量%以上含まれることがより好ましく、さらに好ましくはシンジオタクチックポリスチレンが100質量%である。
他の成分としては、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、及びその他の熱可塑性樹脂並びにゴム状弾性体が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS);ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン4・6等のポリアミド樹脂;ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリエーテル樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4−メチルペンテン−1、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ弗化ビニリデンなどの含ハロゲンビニル化合物重合体;ポリオキシメチレン;ポリビニルアルコール樹脂;及びこれらの誘導体が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ゴム状弾性体としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン(登録商標)、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB,SEBC)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、さらには、ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)及びメチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。
これらのゴム状弾性体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、適宜、相溶化剤及び各種添加剤から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
相溶化剤としては、例えば、SPSと熱可塑性樹脂やゴム状弾性体と相溶性又は親和性を有し、かつ極性基を有する重合体が挙げられる。具体的には、酸無水物で変性したゴム、例えば無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、無水マレイン酸変性SEB、無水マレイン酸変性SEP、無水マレイン酸変性EPR、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、末端カルボン酸変性ポリスチレン、末端エポキシ変性ポリスチレン、末端オキサゾリン変性ポリスチレン、末端アミン変性ポリスチレン、スルホン化ポリスチレン、スチレン系アイオノマー、スチレン−メチルメタクリレートグラフトポリマー、(スチレン−グリシジルメタクリレート)−メチルメタクリレートグラフトポリマー、酸変性アクリル−スチレン−グラフトポリマー、(スチレン−グリシジルメタクリレート)−スチレングラフトポリマー、ポリブチレンテレフタレート−ポリスチレングラフトポリマー、さらには、無水マレイン酸変性シンジオタクチックポリスチレン、フマル酸変性シンジオタクチックポリスチレン、グリシジルメタクリレート変性シンジオタクチックポリスチレン、アミン変性シンジオタクチックポリスチレンなどの変性スチレン系ポリマー、(スチレン−無水マレイン酸)−ポリフェニレンエーテルグラフトポリマー、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル、フマル酸変性ポリフェニレンエーテル、グリシジルメタクリレート変性ポリフェニレンエーテル、アミン変性ポリフェニレンエーテルなどの変性ポリフェニレンエーテル系ポリマーなどが挙げられる。これらの相溶化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
各種添加剤としては、例えば酸化防止剤、核剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、カーボンブラック、帯電防止剤などが挙げられる。これらは、それぞれ必要に応じて公知のものを配合すればよい。また、添加剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(シンジオタクチックポリスチレン)
本発明の繊維は、主成分がシンジオタクチックポリスチレン(SPS)である。
SPSは、主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体である。ここで、シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量される。
核磁気共鳴法(13C−NMR法)により測定されるシンジオタクチック構造のタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、通常、ラセミダイアッドで好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、若しくはラセミペンタッドで好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン系重合体が用いられる。
SPSとしては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、及びこれらの水素化重合体、さらにはこれらから選択される2種以上の混合物、並びにこれらを主成分とする共重合体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソピルスチレン)、ポリ(t−ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)などがあり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)などがある。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)などがあり、ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)などがある。
なお、これらの中でも、好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−又はt−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられ、ポリスチレンがより好ましい。
SPSは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
SPSは、公知の方法に従って製造することができ、例えば、不活性炭化水素溶媒中又は溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(前記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができる(特開昭62−187708号公報参照)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)は特開平1−46912号公報に記載の方法、水素化重合体は特開平1−178505号公報に記載の方法などにより得ることができる。
(SPSの物性)
SPSの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは12万以上、より好ましくは13万以上、更に好ましくは15万以上、より更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは30万以下、より好ましくは28万以下、更に好ましくは27万以下、より更に好ましくは25万以下である。重量平均分子量が12万以上であれば、溶融粘度が低くなり過ぎず、紡糸性が良好であり、且つ強度を高く維持し易い。また、重量平均分子量が30万以下であれば、ノズル部の樹脂圧力が高くなるのを抑制できる。なお、ノズル部の樹脂圧力が高くなる場合、樹脂圧力を下げるために高温にする方法を採用することが可能であるが、その場合、樹脂が分解してガスが発生し、ノズルを汚す可能性があり、連続生産できなくなるおそれがある。ここで、上記重量平均分子量は、SPSを1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解して、135℃の条件の下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値である。
SPSのメルトマスフローレイト(MFR)は、好ましくは3.0〜30g/10min、より好ましくは6.0〜9.0g/10minである。ここで、該メルトマスフローレイトは、JIS K7210に準拠し、300℃、荷重1.2kgで測定した値である。
SPSは結晶性を有し、その融点は、好ましくは240〜280℃である。また、融解エンタルピーは、約30J/gを有することが好ましい。
SPSのガラス転移点(Tg)は、好ましくは90〜110℃である。
[シンジオタクチックポリスチレン(SPS)からなる繊維の製造方法]
本発明のSPSからなる繊維の製造方法は、複屈折の絶対値が0.011以下の繊維を得る「紡糸工程」、及び前記紡糸工程で得られた未延伸繊維を2.6倍以上の延伸倍率で延伸する「延伸工程」を有する。
巻取り機によって巻き取られた繊維(未延伸繊維)の複屈折の絶対値は、配向に伴う結晶化が進み過ぎないようにする観点から、0.011以下、好ましくは0.010以下であり、また、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.003以上である。
本発明のSPSからなる繊維の製造方法は、好ましくは、シンジオタクチックポリスチレンを用いて紡糸するときの設定紡糸速度が下記式(1)を満たす紡糸工程と、紡糸工程で紡糸した繊維を2.6倍以上の延伸倍率で延伸する延伸工程とを含む。
V<Vmax=−2.5×D+653 (1)
[V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)である。
Vmax;設定紡糸速度Vに対し、延伸可能な最大紡糸速度(m/min)である。
D;ノズルから押出される樹脂の吐出量とワインダーで巻かれる繊維の速度の割合で、下記式(a)で表される[ドラフト比と称することがある。]。
D=V×ρ×πR2÷M (a)
(V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)、ρ;密度(g/cm3)、R;ノズル半径(mm)、M;単孔吐出量(g/min))]
(紡糸工程)
紡糸工程では、マルチフィラメント法、スパンボンド法、メルトブローン法、モノフィラメント法などの公知の溶融紡糸方法を利用すればよい。
溶融温度(押出機の押出温度)は、少なくともSPSの融点以上であり、通常、SPSが完全に溶融する温度以上とする。溶融不良を回避し、且つSPSの分解を抑制する観点から、好ましくは280〜330℃、より好ましくは300〜320℃である。
押出機のノズルから押出された繊維は冷却された後、繊維が十分に固化する程度に距離をおいた巻取り機に巻かれる。ノズルから押出された繊維の冷却方法に特に制限はなく、空冷でもよいし、水などの冷媒を用いてもよい。冷却温度は、通常、好ましくは0〜40℃、より好ましくは0〜30℃である。
巻取り機による巻取り速度、つまり設定紡糸速度は、前述の通り、前記式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは下記式(2)を満たす。この場合、図1では、それぞれの式が表す直線の下側に位置することになる。
V<Vmax=−3.6×D+366 (2)
(式(2)中、V、Vmax、Dは、式(1)中のものと同じである。)
なお、設定紡糸速度(V)は、通常、好ましくは30〜600m/min、より好ましくは40〜500m/min、さらに好ましくは50〜450m/minである。設定紡糸速度が遅すぎると生産性が悪いばかりでなく、配向がかからず、速すぎると配向に伴う結晶化が進み過ぎて延伸性が悪くなる。前記式(a)が示すように、設定紡糸速度が前記式(1)又は(2)を満たすようにノズル半径及び吐出量を調整することができる。
前記式(a)中、密度(ρ)は、本発明に用いたシンジオタクチックポリスチレンの密度1.04g/cm3である。ノズル半径(R)は、延伸可能倍率が低くならないようにする観点から、好ましくは0.05〜0.5mm、より好ましくは0.1〜0.5mmである。単孔吐出量は、好ましくは0.2〜3g/min、より好ましくは0.3〜2.5g/min、さらに好ましくは0.4〜2.0g/minである。
なお、本明細書において、該紡糸工程にて得られた繊維を、未延伸繊維と称することがある。
(延伸工程)
前記紡糸工程にて巻取り機によって巻き取られた繊維(未延伸繊維)は延伸機で延伸される。紡糸ラインからそのまま延伸してもよいし、一旦巻き取ってから延伸してもよい。
繊維は、加熱しながら延伸する。繊維の加熱延伸方法に特に制限はなく、公知の方法を採用できる。例えば、(i)一般の加熱延伸機等により熱ロールや熱板を用いて加熱延伸する方法、(ii)レーザー加熱延伸機等によりレーザー照射しながら加熱延伸(以下、レーザー延伸と略称することがある。)する方法、(iii)スチーム延伸機等により、高温のスチームを通過させて繊維を加熱しながら延伸する方法などが挙げられる。これらの中でも、方法(i)及び(ii)が好ましい。
方法(i)において、熱ロール延伸時の加熱温度(熱ロールを用いる場合はロール温度、熱板を用いる場合は板温度)は、SPSのガラス転移温度以上、且つ150℃以下であることが好ましく、110℃以上130℃以下であることがより好ましく、110℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。主成分であるSPSのガラス転移温度以上であれば、樹脂が硬くなって変形し難くなるのを抑制できるため、糸が切れるのを避けられる。また、150℃以下であれば、糸が軟化し過ぎないため、溶け切れたり、熱ロール等に巻きついたりするのを避けられる。
また、方法(ii)のようにレーザー延伸することにより、延伸倍率を高めることができる。レーザー延伸時は、糸が白化したり糸切れしたりしないように、延伸倍率に応じてレーザーの出力を調整することで延伸繊維が得られる。本発明では、レーザーの出力は、好ましくは1〜30W、より好ましくは1〜20W、さらに好ましくは3〜20Wである。
延伸は、2.6倍以上の延伸倍率で実施する。2.6倍以上の延伸倍率で延伸することにより引張特性が良好な繊維を得ることができる。同様の観点から、延伸倍率は、好ましくは3.4倍以上、より好ましくは4.0倍以上である。延伸倍率の上限に特に制限はないが、延伸倍率を上げすぎると糸切れを生じたり、繊維にクレーズが入って繊維が白化したりする恐れがあるため、上限値は好ましくは6.0倍、より好ましくは5.5倍、さらに好ましくは5.0倍である。
繊維製造条件としては、より好ましくは、前記式(2)を満たす設定紡糸速度で得られた繊維を4.0〜5.0倍程度に延伸する条件であり、この条件であれば、引張特性がより一層良好な繊維を得ることができる。
また、設定紡糸速度を式(2)とし、レーザー延伸することにより、4.0倍以上(好ましくは4.0〜5.0倍程度)に延伸することができる。
本発明は、以上の製造方法によって得られる繊維にも関する。以上の製造方法によって得られる繊維は、前記した通りの引張強度、複屈折、弾性率及び伸度を有する。
本発明の繊維は、良好な熱変形温度及び耐溶剤性を示す繊維であり、紡績糸、織物、編物、不織布等の繊維製品に加工できる強度を有するため、公知の繊維の用途、特に熱可塑性樹脂を含有する繊維の用途に利用可能である。
本発明の繊維の好ましい用途としては、紡績糸、編織物、不織布、フェルト、繊維分散体等が挙げられる。また、これらを用いた繊維製品としては、例えば、プレス・クリーニング機布、産業用濾布、研磨布、フィルター、積層シート、電池用セパレータ、不織布マット、絶縁材、断熱材、樹脂フィラー等が挙げられる。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた繊維を用いて、以下の方法によって物性評価を行った。
(1.引張試験)
各例で製造した繊維について、「オートグラフAGS−X引張試験機」(株式会社島津製作所製)を用いて、チャック間距離40mm、引張速度40mm/minで単糸の引張特性(引張強度、伸度、弾性率)をn=12で測定し、平均値を求めた。この時、測定した試料1本あたり3か所を「デジタルマイクロスコープ VHX−1000」(株式会社KEYENCE製)で測定した直径を用いて、断面積を算出した。
(2.複屈折)
複屈折は、浸透液にリン酸トリクレジルを使用し、偏光顕微鏡「BX51N−33P−OC」(オリンパス株式会社製)を用いて測定した。
(3.糸径)
未延伸繊維の糸径は、「デジタル寸法測定器 LS−7010」(株式会社KEYENCE製)を延伸工程の前に設置し、オンライン測定した。
(シンジオタクチックポリスチレン(SPS)1〜3の準備)
(SPS1)
1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として、135℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が20万のポリスチレン(出光興産株式会社製「ザレック90ZC」)を準備した。300℃、荷重1.2kgで測定した該ポリスチレンのMFRは9g/10minであった。また、該ポリスチレンの示差走査熱量測定(DSC)での融点は271℃であり、13C−NMRの測定でシンジオタクチック構造のポリスチレン、つまりSPSであることを確認した。該SPSの密度(ρ)は1.04g/cm3であった。
(SPS2)
1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として、135℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が25万のポリスチレン(出光興産株式会社製「ザレック60ZC」)を準備した。13C−NMRの測定でシンジオタクチック構造のポリスチレン、つまりSPSであることを確認した。また、測定した結果、融点及び密度は上記SPS1と同様であった。
(SPS3)
1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として、135℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が14万のポリスチレン(出光興産株式会社製「ザレック300ZC」)を準備した。13C−NMRの測定でシンジオタクチック構造のポリスチレン、つまりSPSであることを確認した。また、測定した結果、融点及び密度は上記SPS1と同様であった。
これらのSPS1〜SPS3を以下の実施例及び比較例で用いた。
<実施例1>
上記のように準備したSPS1(Mw=20万)を、120℃で12時間、減圧乾燥機にて乾燥した。その後、スクリュー径30mmの二軸押出機を用い、シリンダー及びギアポンプ温度をいずれも290℃、口金温度を310℃として樹脂を溶融し、φ0.6の12孔の口金から、単孔吐出量0.46g/minでSPS1を押出した。このSPS1を、常温及び空気環境下で、ノズル−巻取り機間距離475cmとして、設定紡糸速度(巻取り速度)60m/minにて溶融紡糸した。この未延伸繊維は、糸径96.2μm、複屈折の絶対値0.006であった。
得られた繊維の1本を、炭酸ガスレーザー加熱延伸装置「PIN−30S」(レーザー波長10.6μm、照射スポット径6mm、送出速度4m/min)(特開2009−113324号公報の実施例で用いたものと同じ)でレーザー出力4.3Wにて3.6倍に延伸することができた。
得られた繊維の引張強度は2.7cN/dtexであった。また、弾性率106cN/dtex、伸度13%、複屈折の絶対値0.109、糸径53.3μmであった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例2>
実施例1において、延伸倍率を4.2倍に増やしたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例3>
実施例1において、延伸倍率を4.8倍に増やしたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
得られた繊維の引張強度は3.8cN/dtexであった。また、弾性率129cN/dtex、伸度5.4%、複屈折の絶対値0.139、糸径45.7μmであった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例4>
実施例1において、延伸倍率を5.0倍に増やしたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
得られた繊維の引張強度は実施例3と同様に3.8cN/dtexであったが、僅かに白化が認められた。
<実施例5>
実施例1において、設定紡糸速度を100m/minに変えて、糸径が76.3μm、複屈折の絶対値0.007の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.8倍に変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例6>
実施例5において、延伸倍率を4.0倍に増やしたこと以外は実施例5と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
得られた繊維の引張強度は3.6cN/dtexであったが、僅かに白化が認められた。
<実施例7>
実施例1において、設定紡糸速度を200m/minに変えて、糸径が55.1μm、複屈折の絶対値0.010の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.2倍に変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。なお、延伸倍率を4.0倍にまで高めた場合には糸が切れた。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例8>
実施例1において、加熱延伸装置を熱ロール延伸機(旭化成エンジニアリング株式会社製)に変え、送出速度10m/min、ロール温度を113℃とし、延伸倍率を3.6倍としたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例9>
実施例5において、加熱延伸装置を熱ロール延伸機(旭化成エンジニアリング株式会社製)に変え、送出速度10m/min、ロール温度を113℃とし、延伸倍率を3.4倍に変えたこと以外は実施例5と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例10>
実施例7において、加熱延伸装置を熱ロール延伸機(旭化成エンジニアリング株式会社製)に変え、送出速度10m/min、ロール温度を113℃とし、延伸倍率を3.0倍に変えたこと以外は実施例7と同様に操作を行なった。なお、延伸倍率を4.0倍にまで高めた場合には糸が切れた。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例11>
実施例1において、単孔吐出量を0.93g/minに、設定紡糸速度を120m/minに変えて、糸径が97.7μm、複屈折の絶対値0.006の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.8倍に変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例12>
実施例8において、単孔吐出量を0.93g/minに、設定紡糸速度を120m/minに変えて、糸径が97.7μm、複屈折の絶対値0.006の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.7倍に変えたこと以外は実施例8と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例13>
実施例1において、単孔吐出量を1.38g/minに、設定紡糸速度を150m/minに変えて、糸径が105μm、複屈折の絶対値0.005の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.8倍に変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例14>
実施例1において、単孔吐出量を1.38g/minに、設定紡糸速度を180m/minに変えて、糸径が96.3μm、複屈折の絶対値0.006の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.8倍に変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例15>
実施例8において、単孔吐出量を1.38g/minに、設定紡糸速度を150m/minに変えて、糸径が105μm、複屈折の絶対値0.005の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸したこと以外は実施例8と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例16>
実施例8において、単孔吐出量を1.38g/minに、設定紡糸速度を180m/minに変えて、糸径が96.3μm、複屈折の絶対値0.006の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.4倍に変えたこと以外は実施例8と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例17>
実施例1において、単孔吐出量を1.85g/minに、設定紡糸速度を200m/minに変えて、糸径が107μm、複屈折の絶対値0.005の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を4.2倍に変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例18>
実施例1において、単孔吐出量を1.85g/minに、設定紡糸速度を400m/minに変えて、糸径が75.5μm、複屈折の絶対値0.007の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.0倍に変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。なお、延伸倍率を4.0倍にまで高めた場合には糸が切れた。
<実施例19>
実施例1において、SPS1(Mw=20万)をSPS2(Mw=25万)に変えて、糸径が95.6μm、複屈折の絶対値0.002の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸したこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例20>
実施例19において、延伸倍率を4倍に増やしたこと以外は実施例19と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
得られた繊維の引張強度は3.4cN/dtexであったが、僅かに白化が認められた。
<実施例21>
実施例19において、延伸倍率を4.2倍に増やしたこと以外は実施例19と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
得られた繊維の引張強度は実施例20と同様に3.4cN/dtexであったが、僅かに白化が認められた。
<実施例22>
実施例19において、設定紡糸速度を100m/minに変えて、糸径が74.3μm、複屈折の絶対値0.004の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸したこと以外は実施例19と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例23>
実施例19において、単孔吐出量を0.93g/minに変えて、糸径が137μm、複屈折の絶対値0.001の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を5倍に変えたこと以外は実施例19と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例24>
実施例19において、単孔吐出量を0.93g/minに、設定紡糸速度を100m/minに変えて、糸径が106μm、複屈折の絶対値0.002の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を4倍に変えたこと以外は実施例19と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例25>
実施例19において、単孔吐出量を0.93g/minに、設定紡糸速度を120m/minに変えて、糸径が97.2μm、複屈折の絶対値0.003の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.8倍に変えたこと以外は実施例19と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例26>
実施例19において、単孔吐出量を0.93g/minに、設定紡糸速度を200m/minに変えて、糸径が75.4μm、複屈折の絶対値0.005の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を2.8倍に変えたこと以外は実施例19と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。なお、延伸倍率を4.0倍にまで高めた場合には糸が切れた。
<実施例27>
実施例1において、SPS1(Mw=20万)をSPS3(Mw=14万)に変えて、糸径が97.1μm、複屈折の絶対値0.002の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を4.4倍に変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<実施例28>
実施例27において、設定紡糸速度を200m/minに変えて、糸径が50.4μm、複屈折の絶対値0.003の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を3.2倍に変えたこと以外は実施例27と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。なお、延伸倍率を4.0倍にまで高めた場合には糸が切れた。
<実施例29>
実施例27において、単孔吐出量を0.93g/minに、設定紡糸速度を120m/minに変えて、糸径が97.5μm、複屈折の絶対値0.001の未延伸繊維を得た。これを用いて延伸倍率を4.6倍に変えたこと以外は実施例27と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<比較例1>
実施例1において、加熱延伸をしなかったこと以外は実施例1と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<比較例2>
実施例8において、設定紡糸速度を300m/minに変えて、糸径は43.5μm、複屈折の絶対値0.014の未延伸繊維を得た。これを用いて実施例8と同様に操作を行なったところ、2.0倍延伸しただけで糸が切れた。
繊維製造条件を表1に示す。
<比較例3>
比較例2において、延伸倍率を1.2倍に留めたこと以外は比較例2と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
<比較例4>
実施例8において、単孔吐出量を1.85g/minに、設定紡糸速度を600m/minに変えて、糸径は61.8μm、複屈折の絶対値0.014の未延伸繊維を得た。これを用いて実施例8と同様に操作を行なったところ、1.1倍延伸しただけで糸が切れた。
繊維製造条件を表1に示す。
<比較例5>
実施例8において、ロール温度を160℃に変えたこと以外は実施例8と同様に操作を行なったところ、糸がロールに巻き付いて延伸できなかった。
繊維製造条件を表1に示す。
<比較例6>
実施例19において、単孔吐出量を0.93g/minに、設定紡糸速度を400m/minに変えて、糸径が53.8μm、複屈折の絶対値0.012の未延伸繊維を得た。これを用いて実施例19と同様に操作を行なったところ、1.1倍延伸しただけで糸が切れた。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。なお、表1中に示した得られた繊維の物性値は未延伸繊維の値である。
<比較例7>
実施例19において、加熱延伸をしなかったこと以外は実施例19と同様に操作を行なった。
繊維製造条件及び繊維の物性を表1に示す。
また、各実施例、比較例におけるドラフト比(D)と設定紡糸速度(V)との関係をプロットしたものを図1に示す。これらのプロットから得られる直線から、ドラフト比(D)とVmaxとの関係が求められる。
Figure 2014111852
*1:ノズルから押出される樹脂の吐出量とワインダーで巻かれる繊維の速度の割合で、前記式(a)で表される。
*2:2.6倍延伸が可能な最大紡糸速度
*3:4倍延伸が可能な最大紡糸速度
*4:レーザー延伸ではレーザー出力(W)、熱ロール延伸ではロール温度(℃)を示す。なお、レーザー出力は延伸倍率に応じて適宜変更されている。
*5:4.0倍延伸では糸が切れた。
*6:未延伸
*7:延伸不可。得られた糸のデータは未延伸繊維の値
表1より、本発明の製造方法によって、複屈折の絶対値が0.011以下の繊維を2.6倍以上延伸して得られた繊維は、引張強度が2.0cN/dtex以上と高いことがわかる。
また、本発明の繊維は、従来から知られているように、軽量であり、絶縁性と熱変形温度と耐溶剤性とに優れ、製造コストが高くなく、焼却しても有害なガスが少ないシンジオタクチックポリスチレンを用いた繊維であるため、これに加えて引張強度向上という課題が解決したため、本発明の課題が全て解決されたと言える。
本発明の繊維は、良好な熱変形温度及び耐溶剤性を示す繊維であり、織物、編み物、不織布等の繊維製品に加工できる強度を有するため、公知の繊維の用途、特に熱可塑性樹脂を含有する繊維の用途に利用可能である。具体的には、紡績糸、編織物としては例えば、プレス・クリーニング機布、産業用濾布、研磨布等に有用である。また、不織布及びフェルトとしては例えば、フィルター、積層シート、電池用セパレータ、不織布マット、絶縁材等に有用である。また、繊維分散体としては例えば、断熱材、樹脂フィラー等に有用である。

Claims (9)

  1. 引張強度が2.0cN/dtex以上であるシンジオタクチックポリスチレンからなる繊維。
  2. 前記シンジオタクチックポリスチレンの重量平均分子量が12万以上30万以下である請求項1に記載の繊維。
  3. 請求項1又は2に記載の繊維の製造方法であって、
    複屈折の絶対値が0.011以下の繊維を得る紡糸工程、及び
    前記紡糸工程で得られた未延伸繊維を2.6倍以上の延伸倍率で延伸する延伸工程を有する繊維の製造方法。
  4. 前記紡糸工程において、シンジオタクチックポリスチレンを用いて紡糸するときの設定紡糸速度が下記式(1)を満たす請求項3に記載の繊維の製造方法。
    V<Vmax=−2.5×D+653 (1)
    [V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)である。
    Vmax;設定紡糸速度Vに対し、延伸可能な最大紡糸速度(m/min)である。
    D;ノズルから押出される樹脂の吐出量とワインダーで巻かれる繊維の速度の割合で、下記式(a)で表される。
    D=V×ρ×πR2÷M (a)
    (V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)、ρ;密度(g/cm3)、R;ノズル半径(mm)、M;単孔吐出量(g/min))]
  5. 前記紡糸工程において、前記設定紡糸速度が下記式(2)を満たす請求項4に記載の繊維の製造方法。
    V<Vmax=−3.6×D+366 (2)
    [V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)である。
    Vmax;設定紡糸速度Vに対し、延伸可能な最大紡糸速度(m/min)である。
    D;ノズルから押出される樹脂の吐出量とワインダーで巻かれる繊維の速度の割合で、下記式(a)で表される。
    D=V×ρ×πR2÷M (a)
    (V;ノズルから出された溶融樹脂がワインダーで巻かれるときの設定紡糸速度(m/min)、ρ;密度(g/cm3)、R;ノズル半径(mm)、M;単孔吐出量(g/min))]
  6. 前記延伸工程において、前記紡糸工程で紡糸した繊維を、レーザーを照射しつつ延伸する請求項3〜5のいずれかに記載の繊維の製造方法。
  7. 前記延伸工程において、4.0倍以上に延伸する請求項6に記載の繊維の製造方法。
  8. 前記延伸工程において、前記紡糸工程で紡糸した繊維を、熱ロールによって、シンジオタクチックポリスチレンのガラス転移温度以上150℃以下に加熱しつつ延伸する請求項3〜5のいずれかに記載の繊維の製造方法。
  9. 請求項3〜8のいずれかに記載の繊維の製造方法により製造された繊維。
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