以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の一例について説明する。
〔第1実施形態〕
《装置構成》
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態を示す全体構成図(正面図)である。
本実施形態のインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙(記録媒体)Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するものである。このインクジェット記録装置10は、主として、用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部18と、画像記録部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV照射処理(定着処理)を行って画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部24と、を備えている。
〈給紙部〉
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙手段の一例としての給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成される。
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
記録媒体としての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
サッカー装置32は、給紙台30に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対34に給紙する。サッカー装置32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備え、このサクションフット32Aによって用紙Pの上面を吸着保持して、用紙Pを給紙台30から給紙ローラ対34に移送する。この際、サクションフット32Aは、束の最上位に位置する用紙Pの先端側の上面を吸着保持して、用紙Pを引き上げ、引き上げた用紙Pの先端を給紙ローラ対34を構成する一対のローラ34A、34Bの間に挿入する。
給紙ローラ対34は、互いに押圧当接された上下一対のローラ34A、34Bで構成される。上下一対のローラ34A、34Bは、一方が駆動ローラ(ローラ34A)、他方が従動ローラ(ローラ34B)とされ、駆動ローラ(ローラ34A)は、図示しないモータに駆動されて回転する。モータは、用紙Pの給紙に連動して駆動され、サッカー装置32から用紙Pが給紙されると、そのタイミングに合わせて駆動ローラ(ローラ34A)を回転させる。上下一対のローラ34A、34Bの間に挿入された用紙Pは、このローラ34A、34Bにニップされて、ローラ34A、34Bの回転方向(フィーダボード36の設置方向)に送り出される。
フィーダボード36は、用紙幅に対応して形成され、給紙ローラ対34から送り出された用紙Pを受けて、前当て38までガイドする。このフィーダボード36は、下方に向けて傾斜して設置され、その搬送面の上に載置された用紙Pを搬送面に沿って滑らせて前当て38までガイドする。
フィーダボード36には、用紙Pを搬送するためのテープフィーダ36Aが幅方向に間隔をおいて複数設置される。テープフィーダ36Aは、無端状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。フィーダボード36の搬送面に載置された用紙Pは、このテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を搬送される。
また、フィーダボード36の上には、リテーナ36Bとコロ36Cとが設置される。
リテーナ36Bは、用紙Pの搬送面に沿って前後に縦列して複数配置される(本例では2つ)。このリテーナ36Bは、用紙幅に対応した幅を有する板バネで構成され、搬送面に押圧当接されて設置される。テープフィーダ36Aによってフィーダボード36の上を搬送される用紙Pは、このリテーナ36Bを通過することにより、凹凸が矯正される。なお、リテーナ36Bは、フィーダボード36との間に用紙Pを導入しやすくするため、後端部がカールして形成される。
コロ36Cは、前後のリテーナ36Bの間に配設される。このコロ36Cは、用紙Pの搬送面に押圧当接されて設置される。前後のリテーナ36Bの間を搬送される用紙Pは、このコロ36Cによって上面が抑えられながら搬送される。
前当て38は、用紙Pの姿勢を矯正する。この前当て38は、板状に形成され、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。また、図示しないモータに駆動されて、揺動可能に設けられる。フィーダボード36の上を搬送された用紙Pは、その先端が前当て38に当接されて、姿勢が矯正される(いわゆる、スキュー防止)。前当て38は、給紙ドラム40への用紙の給紙に連動して揺動し、姿勢を矯正した用紙Pを給紙ドラム40に受け渡す。
給紙ドラム40は、前当て38を介してフィーダボード36から給紙される用紙Pを受け取り、処理液付与部14へと搬送する。給紙ドラム40は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。給紙ドラム40の外周面上には、グリッパ40Aが備えられ、このグリッパ40Aによって用紙Pの先端が把持される。給紙ドラム40は、グリッパ40Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液付与部14へと用紙Pを搬送する。
給紙部12は、以上のように構成される。給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、その給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして、その搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液付与部14へと搬送される。
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する。この処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成される。
処理液付与ドラム42は、給紙部12の給紙ドラム40から用紙Pを受け取り、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する。処理液付与ドラム42は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液付与ドラム42の外周面上には、グリッパ42Aが備えられ、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液付与ドラム42は、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する(1回転で1枚の用紙Pを搬送する。)。処理液付与ドラム42と給紙ドラム40は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
処理液付与ユニット44は、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液をローラ塗布する。この処理液付与ユニット44は、主として、用紙Pに処理液を塗布する塗布ローラ44Aと、処理液が貯留される処理液槽44Bと、処理液槽44Bに貯留された処理液を汲み上げて、塗布ローラ44Aに供給する汲み上げローラ44Cとで構成される。汲み上げローラ44Cは、塗布ローラ44Aに押圧当接して設置されるとともに、一部を処理液槽44Bに貯留された処理液に浸漬させて設置される。この汲み上げローラ44Cは、処理液を計量して汲み上げ、塗布ローラ44Aの周面に一定の厚さで処理液を付与する。塗布ローラ44Aは、用紙幅に対応して設けられ、用紙Pに押圧当接されて、その周面に付与された処理液を用紙Pに塗布する。塗布ローラ44Aは、図示しない当接離間機構に駆動されて、処理液付与ドラム42の周面に当接する当接位置と、処理液付与ドラム42の周面から離間する離間位置との間を移動する。当接離間機構は、用紙Pの通過タイミングに合わせて、塗布ローラ44Aを移動させ、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液を塗布する。
なお、本例では、処理液をローラ塗布する構成としているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。この他、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
処理液付与部14は、以上のように構成される。給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラ44Aが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
ここで、この用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。このような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成される。
処理液乾燥処理ドラム46は、処理液付与部14の処理液付与ドラム42から用紙Pを受け取り、画像記録部18へと用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム46は、円筒状に組んだ枠体で構成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液乾燥処理ドラム46の外周面上には、グリッパ46Aが備えられ、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液乾燥処理ドラム46は、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、画像記録部18に用紙Pを搬送する。なお、本例の処理液乾燥処理ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ46Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。処理液乾燥処理ドラム46と処理液付与ドラム42は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
用紙搬送ガイド48は、処理液乾燥処理ドラム46による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。本例では、2台の処理液乾燥処理ユニット50が、処理液乾燥処理ドラム内に配設され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てる構成とされている。
処理液乾燥処理部16は、以上のように構成される。処理液付与部14の処理液付与ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
〈画像記録部〉
画像記録部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出する吐出ヘッドの一例としてのインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62とで構成される。
画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平滑性をもって用紙Pを搬送することができる。
なお、この吸引穴からの吸引は一定の範囲でのみ作用し、所定の吸引開始位置から所定の吸引終了位置との間で作用する。吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置の下流側に設定される(たとえば、インク乾燥処理部20に用紙を受け渡す位置に設定される。)。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置(画像記録位置)とインラインセンサ58の設置位置(画像読取位置)では、用紙Pが画像記録ドラム52の周面に吸着保持されるように設定される。
なお、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、上記の負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
また、本例の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥処理ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
4台のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
なお、上記のように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kから吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって記録された画像を読み取る。
なお、インラインセンサ58の下流側には、インラインセンサ58に近接して接触防止板59が設置される。この接触防止板59は、搬送の不具合等によって用紙Pに浮きが生じた場合に、用紙Pがインラインセンサ58に接触するのを防止する。
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド56Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、エアコン(図示せず)と、そのエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aとで構成される。ダクト62Aは、画像記録ドラム52に対して、用紙Pの搬送領域以外の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。本例では、画像記録ドラム52のほぼ上側半分の円弧面に沿って用紙Pが搬送されるので、ダクト62Aは、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する構成とされている。具体的には、ダクト62Aの吹出口が、画像記録ドラム52のほぼ下側半分を覆うように円弧状に形成され、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気が吹き当てられる構成とされている。
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
画像記録部18は、以上のように構成される。処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパ52Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって画像が記録された用紙Pは、次いで、インラインセンサ58を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時に表面に記録された画像が読み取られる。この記録画像の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。読み取りを行う際は、画像記録ドラム52に吸着保持された状態で読み取りが行われるので、高精度に読み取りを行うことができる。また、画像記録直後に読み取りが行われるので、たとえば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。これにより、無駄な記録を防止できるとともに、損紙の発生を最小限に抑えることができる。
この後、用紙Pは、画像記録ドラム52への吸着が解除された後、搬送ドラム64で受け取られる。搬送ドラム64は、用紙Pの先端をグリッパ64Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。さらに、搬送ドラム64で受け取られた用紙Pは、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、本発明の第1実施形態の搬送装置70を備えている。より具体的には、搬送装置70は、画像が記録された用紙Pを矢印A方向に搬送する搬送部材の一例としての搬送ベルト72と、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pを風(本実施形態では熱風)により乾燥処理する乾燥手段の一例としてのインク乾燥ユニット90とを備えている。
搬送装置70は、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から搬送ドラム64を介して受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
この搬送装置70は、搬送ドラム64に近接して設置される第1ローラ76Aと、排紙部24より搬送方向上流側に設置されるガイド100に近接して配置される第2ローラ76Bと、第1ローラ76Aと第2ローラ76Bとに巻き掛けられる無端状の搬送ベルト72と、搬送ベルト72の下方側に配置されて用紙Pを搬送ベルト72上に吸着させる用紙吸着装置としてのチャンバ74と、を備えている。第1ローラ76Aと第2ローラ76Bは、用紙Pの幅方向に沿って配設される。
第1ローラ76Aは、搬送ドラム64から受け渡される用紙Pを搬送ベルト72上で受け取ることができるように、搬送ドラム64に近接して設置される。この第1ローラ76Aは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられるとともに、図示しないモータが連結される。第1ローラ76A及び第2ローラ76Bに巻き掛けられる搬送ベルト72は、このモータを駆動することにより矢印A方向に走行する。
第2ローラ76Bは、搬送ドラム64から受け取った用紙Pを排紙部24で回収できるように、排紙部24側に設置される。すなわち、この第2ローラ76Bの設置位置が、搬送ベルト72による用紙Pの搬送経路の終端とされる。この第2ローラ76Bは、軸部77(図2参照)が図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられる。なお、搬送装置70については、後に詳述する。
インク乾燥ユニット90は、搬送ベルト72の用紙搬送方向に沿って複数台配置される。この設置数は、インク乾燥ユニット90の処理能力や用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、画像記録部18から受け取った用紙Pが複数のインク乾燥ユニット90との対向部を搬送されている間に乾燥させることができるように設定される。したがって、搬送ベルト72の長さも、このインク乾燥ユニット90の能力を考慮して設定される。
〈UV照射処理部〉
図1に示されるように、UV照射処理部22は、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。このUV照射処理部22は、搬送装置70に設けられた搬送ベルト72上に吸着されて搬送される用紙Pに紫外線を照射する定着ユニットの一例としてのUV照射ユニット94を備えている。すなわち、搬送装置70は、インク乾燥処理部20及びUV照射処理部22に共通して使用される。
UV照射ユニット94は、搬送ベルト72の上方側に配置され、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pの表面に紫外線を照射する。このUV照射ユニット94は、紫外線ランプ(UVランプ)を備え、搬送ベルト72の用紙搬送方向に沿って複数配設される。そして、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pの表面に向けて紫外線を照射する。このUV照射ユニット94の設置数は、用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、用紙PがUV照射ユニット94との対向部を搬送されている間に照射した紫外線によって画像を定着させることができるように設定される。したがって、UV照射ユニット94との対向部の用紙搬送方向の長さも、この用紙Pの搬送速度等を考慮して設定される。
UV照射処理部22では、用紙Pの記録面上の水性UVインクを用いて記録された画像に、UV照射ユニット94から紫外線(UV)を照射することで、画像を定着させる。UV照射ユニット94では、紫外線光源を複数用いてもよい。これにより、一つ一つの紫外線光源の照射強度を低減することにより、照射時間で硬化条件を稼ぐことが可能となり、コストダウン及びUV照射ユニット94の発熱量低減を図ることができる。
UV照射ユニット94に用いる紫外線光源としては、特に限定されるものではなく、例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ、エキシマレーザー、紫外線レーザー、ブラックライト、冷陰極管、LED、レーザダイオード等が適用可能であり、メタルハライドランプ管、水銀ランプ管もしくはブラックライトなどが好適に用いられる。
UV照射処理部22は、以上のように構成される。搬送ベルト72上を搬送される用紙Pは、インク乾燥処理部20で乾燥処理が施された後、UV照射ユニット94との対向部を通過する。このUV照射ユニット94との対向部を通過する過程で用紙Pは、UV照射ユニット94によりUV照射処理が施される。すなわち、UV照射ユニット94から表面に向けて紫外線が照射される。この際、用紙Pは、搬送ベルト72上に吸着された状態でUV照射処理が施される。
〈排紙部〉
搬送ベルト72上を搬送される用紙Pは、チャンバ74による吸引作用が及ばなくなると、搬送ベルト72への吸着が解除され、用紙Pはガイド100に沿って搬送されて排紙部24に排出される。排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。この排紙部24は、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台96を備えている。
排紙台96は、搬送ベルト72によって搬送された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台96には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。
また、排紙台96は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台96にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台96を昇降させる。
〈搬送装置の詳細〉
次に、本実施形態のインクジェット記録装置10の主要部である搬送装置70を備えたインク乾燥処理部20について、さらに詳しく説明する。
図2及び図3に示されるように、搬送ベルト72は、用紙Pの搬送方向に沿って配置される複数の長尺状の搬送部72Aを備えている。複数の搬送部72Aは第1ローラ76A(図1参照)及び第2ローラ76Bの幅方向にほぼ平行に配置されている。すなわち、複数の搬送部72Aの間には、用紙搬送方向に沿って空間が形成されている。なお、複数の搬送部72Aを第2ローラ76Bの幅方向にほぼ平行に保持するために、複数の搬送部72Aを幅方向に沿って連結する連結部(図示省略)を複数箇所に設けてもよい。各搬送部72Aには、長手方向に沿ってほぼ等間隔に多数の吸着孔78が設けられている。
図4に示されるように、チャンバ74は、複数の搬送部72Aの下側に搬送部72Aに沿って形成された長尺状の開口部74Aと、搬送部72Aに形成された多数の吸着孔78から空気を吸引する複数の吸引ファン74Bと、複数の吸着孔78から吸引された空気を排出する排出管74Cと、を備えている。開口部74Aは、各搬送部72Aの長手方向に沿って、各搬送部72Aの幅より小さく形成されている。すなわち、上面視にて、開口部74Aの幅は、搬送部72Aの幅方向両側からはみ出さない寸法とされている。このチャンバ74は、吸引ファン74Bの回転により、搬送部72Aに形成された多数の吸着孔78を通して用紙Pを搬送ベルト72上に吸着させる。なお、開口部74Aは、各搬送部72Aの長手方向に沿って1つ形成されていてもよいが、各搬送部72Aの長手方向に沿って複数並べて形成されていてもよい。
図3及び図4に示されるように、インク乾燥ユニット90は、内部の上部側に設けられたファン90A(図1参照)と、ファン90Aの回転により下端部から風(本実施形態では熱風)を吹き出す吹出口90Bと、を備えている。インク乾燥ユニット90では、吹出口90Bから風(本実施形態では熱風)が搬送ベルト72上に吸着された用紙Pに吹き付けられる。インク乾燥ユニット90の吹出口90Bは、用紙搬送方向上流側かつ斜め下方側に向けて配置されており、搬送ベルト72上に吸着された用紙Pに吹出口90Bから風が用紙搬送方向上流側に向けて(矢印B方向に)吹き付けられる。
複数の搬送部72Aには、吹出口90Bからの風が用紙搬送方向における用紙Pの先端部P1に当たるのを遮るための風除けガイド80を備えている。図4に示されるように、風除けガイド80は、板状とされ、側面視にて略クランク状に形成されている。より具体的には、風除けガイド80は、搬送部72Aに取り付けられる横壁からなる取付部80Aと、取付部80Aの端部から上方側に屈曲された縦壁部80Bと、縦壁部80Bの上端部から横方向に屈曲された横壁部80Cと、を備えている。すなわち、横壁部80Cは、複数の搬送部72Aの上方側に所定の間隔をおいて配置されており、縦壁部80Bの上端部から用紙搬送方向上流側に向かって延びている。
本実施形態では、風除けガイド80の横壁部80Cの先端が、側面視にて用紙Pの先端部P1に対応する上方側に配置されると共に、風除けガイド80の横壁部80Cが、用紙Pの先端部P1を覆うように配置されている。ここで、「用紙Pの先端部P1を覆う」とは、風除けガイド80(本実施形態では横壁部80C)が、インク乾燥ユニット90の吹出口90Bから吹き付けられる風と用紙Pの先端部P1との間に介在されていることを言う。風除けガイド80の横壁部80Cがインク乾燥ユニット90の吹出口90Bから吹き付けられる風と用紙Pの先端部P1との間に介在されていることで、吹出口90Bからの風が用紙Pの先端部P1に当たるのを遮ることができる。
図3等に示されるように、風除けガイド80は、搬送ベルト72の複数の搬送部72Aに一定の間隔をもって複数取り付けられる。複数の搬送部72Aには、用紙Pの幅方向に沿ってほぼ同じ位置に風除けガイド80が設けられている。この風除けガイド80の取り付け間隔は、搬送ドラム64から搬送ベルト72への用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定されている。すなわち、搬送ドラム64から順次受け渡される用紙Pの先端部P1をタイミングを合わせて搬送ベルト72の風除けガイド80付近(横壁部80Cの用紙搬送方向上流側)に供給できるように、搬送ドラム64からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定されている。
なお、搬送ベルト72の複数の搬送部72Aの間には空間が形成されており、搬送ドラム64から用紙Pが搬送ベルト72に供給されるときに、用紙Pの先端部P1を把持するグリッパ64Aが搬送部72Aの間の空間に入り込むようになっている。
図2及び図3に示されるように、インク乾燥ユニット90は、搬送ベルト72による用紙搬送方向に沿って4つ配置されている。各インク乾燥ユニット90の間には、搬送ベルト72上に吸着されて搬送される用紙Pを熱により乾燥処理するIR(赤外線)ヒータ92が設けられている。すなわち、インク乾燥ユニット90とIRヒータ92は、用紙Pの搬送方向に沿って交互に配置されている。これらのインク乾燥ユニット90とIRヒータ92により、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面(記録面)に残存する液体成分を除去する。
なお、IRヒータ92は本実施形態のインク乾燥処理部20に必ずしも必要ではなく、IRヒータ92がないタイプでも構わない。
搬送装置70は、以上のように構成される。上記のように、第1ローラ76Aに接続されたモータ(図示せず)を駆動すると、搬送ベルト72が走行する(図1参照)。搬送ベルト72は、搬送ドラム64の周速度と同じ速度で走行する。また、搬送ドラム64から受け渡される用紙Pの先端部P1が、複数の搬送部72Aの風除けガイド80の搬送方向上流側付近に配置されるように、搬送ドラム64と搬送ベルト72の移動タイミングが合わせられる(図3及び図4参照)。
搬送ベルト72上に供給された用紙Pは、チャンバ74に設けられた吸引ファン74Bの回転により、多数の吸着孔78を通して搬送ベルト72上に吸着される。その際、用紙Pは、その裏面(画像が記録されていない側の面)が搬送ベルト72上に吸着される。搬送ベルト72上に吸着されて搬送される用紙Pは、4つのインク乾燥ユニット90の下方側を通過する際に、吹出口90Bから風(本実施形態では熱風)が吹き付けられる。そして、交互に配置されたインク乾燥ユニット90とIRヒータ92により、画像記録後の用紙Pが乾燥処理され、用紙Pの表面に残存する液体成分が除去される。
図4に示されるように、インク乾燥ユニット90の吹出口90Bから風が用紙搬送方向上流側(矢印B方向)に向かって吹き出され、搬送ベルト72上に吸着されて搬送される用紙Pに吹き付けられる。その際、風除けガイド80の横壁部80Cの先端が、側面視にて用紙Pの先端部P1に対応する位置に配置されると共に、風除けガイド80の横壁部80Cが、インク乾燥ユニット90の吹出口90Bから吹き付けられる風と用紙Pの先端部P1との間に介在されている。これによって、インク乾燥ユニット90の吹出口90Bからの風が、搬送ベルト72の複数の搬送部72Aに設けられた風除けガイド80の横壁部80Cによって遮られる。すなわち、風除けガイド80の横壁部80Cによって、吹出口90Bから風が用紙Pの先端部P1に当たることが抑制され、用紙Pの先端部P1が搬送ベルト72から捲れる(剥離される、又は浮き上がる)ことが抑制される。
図2に示すように、インク乾燥処理部20では、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pをインク乾燥ユニット90及びIRヒータ92により乾燥処理する。すなわち、インク乾燥処理部20は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pと対向する位置に熱風を吹き付けるインク乾燥ユニット90と、IRヒータ92とが用紙搬送方向に沿って交互に設けられている。
インク乾燥ユニット90の熱風の吹出口90Bは、所定の温度に制御された熱風を一定の風量で用紙Pに用紙搬送方向上流側(図4の矢印B方向)に向けて吹き付けるように構成される。IRヒータ92は、それぞれ所定の温度に制御される。これらのインク乾燥ユニット90及びIRヒータ92によって、用紙Pの記録面に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。
このような搬送装置70では、搬送ベルト72の複数の搬送部72Aに設けられた風除けガイド80の横壁部80Cが、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pの先端部P1付近(用紙Pの先端部P1の用紙搬送方向下流側かつ斜め上方側)に配置されるように搬送ベルト72上に用紙Pが供給されている。これによって、インク乾燥ユニット90の吹出口90Bからの熱風が、風除けガイド80の横壁部80Cによって遮られる(遮蔽される)。すなわち、風除けガイド80の横壁部80Cによって、吹出口90Bから風が用紙Pの先端部P1に当たることが抑制され、用紙Pの先端部P1が搬送ベルト72から捲れる(剥離する、又は浮き上がる)ことが抑制される。このため、インク乾燥ユニット90の吹出口90Bからの熱風の風速を十分高めることができる。
なお、蒸発した水分は図示を省略した排出手段によりエアとともに機外に排出することが好ましい。また、回収されたエアを冷却器(ラジエータ)などで冷却して液体として回収してもよい。
なお、風除けガイド80はクランク状でなくてもよく、吹出口90Bから風が用紙Pの先端部P1に当たるのを遮ることができる形状であれば、他の形状に変更可能である。
〔第2実施形態〕
次に、図5〜図9を用いて、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられる搬送装置について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図5に示されるように、本実施形態の搬送装置110は、用紙Pを吸着して搬送する搬送ベルト72と、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pの先端部P1を覆う風除けガイド112と、風除けガイド112を用紙Pの先端部P1に対して搬送方向に移動させる移動手段の一例としての移動装置120と、を備えている。
図5及び図6に示されるように、風除けガイド112は、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pの幅方向に沿って配置されており、側面視にて略クランク状に形成されている。より具体的には、風除けガイド112は、横壁からなる支持部112Aと、支持部112Aの端部から下方側に屈曲された縦壁部112Bと、縦壁部112Bの下端部から略直交する方向に屈曲された横壁部112Cとを備えている。さらに、風除けガイド112は、支持部112Aの幅方向両側に設けられ上方に屈曲された側壁部112Dを備えている。
移動装置120は、搬送ベルト72の幅方向両側に設けられたチェーン108に固定されるベース部122と、ベース部122の幅方向両側の側面に回動可能に支持される左右一対のカムフォロア124と、を備えている。ベース部122は、幅方向両側の側壁に設けられた連結部132によりチェーン108に固定されている。チェーン108は、搬送ベルト72の複数の搬送部72Aと共に用紙搬送方向に走行する構成とされており、ベース部122はチェーン108及び搬送ベルト72と共に用紙搬送方向(矢印A方向)に移動する。
ベース部122は、搬送ベルト72の幅方向に沿って配置されており、ベース部122の上面には、幅方向両側にピン130が設けられている。風除けガイド112の支持部112Aには、幅方向両側に長孔114が形成されており、長孔114の長径部が用紙搬送方向(矢印A方向)に沿って配置されている。そして、ピン130の軸部が風除けガイド112の長孔114に挿通された状態で、風除けガイド112がベース部122の上面に当接しながら用紙搬送方向に沿って移動可能とされている。ピン130の頭部は、風除けガイド112の長孔114の内径(短い部分)より大きく形成されており、風除けガイド112の長孔114がピン130の頭部から抜けるのが防止される。
カムフォロア124は、角部がR状に形成された略三角形状とされており、カムフォロア124の下端部に設けられた支持軸124Aを中心にベース部122に回動可能に支持されている。カムフォロア124の中間部には、ベース部122との間にカムフォロア124を用紙搬送方向上流側(矢印A方向と反対側)に付勢するバネ部材126が取り付けられている。ベース部122の側面には、カムフォロア124の用紙搬送方向上流側に突き当てピン128が設けられている。カムフォロア124は、バネ部材126に付勢された状態で突き当てピン128に当接している。この状態で、上面視にて風除けガイド112の横壁部112Cが、搬送ベルト72上に吸着される用紙Pの先端部P1を覆っている(先端部P1を収容している)。言い換えると、上面視にて風除けガイド112の横壁部112Cと用紙Pの先端部P1とがオーバーラップしている。
風除けガイド112の側壁部112Dには、長孔116が形成されており、長孔116の長径部が上下方向に沿って配置されている。カムフォロア124の中間部には、バネ部材126より用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に、カムフォロア124の幅方向内側に突出するピン124Bが設けられている。カムフォロア124のピン124Bは、風除けガイド112の長孔116に挿通された状態で長孔116内を移動可能とされている。ピン124Bの外径は、長孔116の幅方向(短い部分)の内径より若干小さく形成されている。
カムフォロア124の上端部には、カムフォロア124の幅方向内側に突出する円柱状の当接部124Cが設けられている。図6に示されるように、搬送装置110には、所定の位置にカム140が固定されている。そして、カム140の下方側で、搬送ベルト72が移動する構成とされている。カム140の上部には、用紙搬送方向上流側から下流側に向かって、水平方向に沿って配置される下側上面部140Aと、下側上面部140Aの端部から斜め上方側に向かって配置される傾斜面140Bと、傾斜面140Bの上端から水平方向に沿って配置される上側上面部140Cと、上側上面部140Cの端部から斜め下方側に向かって湾曲して配置される湾曲面140Dと、を備えている。
図6及び図8に示されるように、搬送ベルト72の矢印A方向への走行によりベース部122が移動すると、カムフォロア124がカム140に接触する位置まで移動する。そして、バネ部材126によりカムフォロア124が突き当てピン128側に付勢された状態で、当接部124Cがカム140の下側上面部140Aに当接する。さらに、ベース部122が矢印A方向に移動すると、当接部124Cが傾斜面140Bを摺動しながら移動し、上側上面部140Cに当接する。当接部124Cが傾斜面140Bから上側上面部140Cに摺動しながら移動する過程で、カムフォロア124が支持軸124Aを中心に用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に回動する。
その際、図8に示されるように、カムフォロア124の用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)への回動に伴い、カムフォロア124のピン124Bが風除けガイド112の長孔116を下方側に移動すると共に、風除けガイド112がベース部122の上面に沿って用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に移動する。これによって、図7及び図8に示されるように、風除けガイド112の横壁部112Cが用紙Pの先端部P1から離れる。この状態で、搬送ベルト72からの用紙Pの排出(離脱)が可能となる。
さらに、ベース部122が矢印A方向に移動すると、当接部124Cが上側上面部140Cから湾曲面140Dに摺動しながら移動することで、バネ部材126の付勢力によりカムフォロア124が支持軸124Aを中心に用紙搬送方向上流側(矢印A方向と反対側)に回動する(図5及び図6参照)。そして、カムフォロア124がピン128に当接すると共に、当接部124Cがカム140から離れる。
図9に示されるように、搬送装置110では、搬送ドラム64から用紙Pが搬送ベルト72に供給される位置にカム150が設けられ、用紙Pが搬送ベルト72から排出(離脱)される位置にカム140が設けられている。カム150の上部には、用紙搬送方向上流側から下流側に向かって、下側上面部140Aと、下側上面部140Aの端部から上方側に傾斜する傾斜面140Bと、傾斜面140Bの上端に連続する上側上面部140Cと、上側上面部140Cの端部から下方側に傾斜する傾斜面140Eと、傾斜面140Eの下端と連続する下側上面部140Fと、を備えている。そして、カムフォロア124の当接部124Cがカム150の上側上面部140Cに当接することで、カムフォロア124が支持軸124Aを中心に用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に回動する(図7及び図8参照)。
このような搬送装置110では、搬送ドラム64から用紙Pが搬送ベルト72に供給される位置にカム150が設けられている。搬送ベルト72の矢印A方向への移動により、ベース部122がカム150の位置まで移動すると、カムフォロア124の当接部124Cがカム150の下側上面部140Aから傾斜面140Bを摺動して上側上面部140Cに当接する(図8参照)。この過程で、カムフォロア124が支持軸124Aを中心に用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に回動する。これによって、風除けガイド112の横壁部112Cが用紙Pの先端部P1と干渉しない位置に移動し、搬送ドラム64からの用紙Pの供給が可能となる(図7及び図8)。このため、用紙Pの供給時に用紙Pの先端部P1が風除けガイド112の横壁部112Cと干渉することが防止される。
搬送ベルト72は、用紙Pの先端部P1を把持するグリッパ64Aが風除けガイド112の横壁部112C付近に回転したときに、グリッパ64Aが用紙Pの先端部P1を開放して搬送ベルト72に用紙Pを供給するように、タイミングが設定されている(図7及び図8参照)。
搬送ベルト72に用紙Pが供給された後、カムフォロア124の当接部124Cがカム150の傾斜面140Eを摺動して下側上面部140Fに当接することで、バネ部材126の付勢力によりカムフォロア124が支持軸124Aを中心に用紙搬送方向上流側(矢印A方向と反対側)に回動する(図5及び図6参照)。これにより、風除けガイド112の横壁部112Cが、ベース部122に対して用紙搬送方向上流側に移動し、上面視にて搬送ベルト72上に吸着される用紙Pの先端部P1の上方側を覆う(先端部P1を収容している)。すなわち、風除けガイド112の横壁部112Cの先端が、用紙Pの先端部P1のより奥側の位置に移動する。
搬送ベルト72に用紙Pが供給されると、チャンバ74の吸引力により用紙Pが搬送ベルト72上に吸着されて矢印A方向に搬送される。その際、搬送ベルト72上に吸着されて搬送される用紙Pの先端部P1の斜め上方側から用紙搬送方向上流側(矢印Aと反対方向)に向かってインク乾燥ユニット90の吹出口90B(図2参照)から風(例えば熱風)が吹き付けられる。そのとき、図5に示されるように、風除けガイド112の横壁部112Cによって、吹出口90Bからの風が用紙Pの先端部P1に当たることが抑制され、用紙Pの先端部P1が搬送ベルト72から捲れることが抑制される。
本実施形態では、風除けガイド112の横壁部112Cが、上面視にて搬送ベルト72上に吸着される用紙Pの先端部P1の上方側を覆うと共に、風除けガイド112の横壁部112Cの先端が用紙Pの先端部P1のより奥側の位置に移動している。このため、風除けガイド112の横壁部112Cによる用紙Pの先端部P1での風除け面積が大きくなり、吹出口90Bからの風により用紙Pの先端部P1が搬送ベルト72から捲れることをより確実に抑制することができる。このため、インク乾燥ユニット90の吹出口90Bからの風(例えば熱風)の風速を十分高めることができる。
さらに、図9に示されるように、用紙Pが搬送ベルト72上に吸着されて搬送され、ベース部122がカム140の位置まで移動する。そして、図8に示されるように、カムフォロア124の当接部124Cがカム140の下側上面部140Aから傾斜面140Bを摺動して上側上面部140Cに当接することで、カムフォロア124が支持軸124Aを中心に用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に回動する。これによって、図7及び図8に示されるように、風除けガイド112の横壁部112Cが用紙Pの先端部P1から離れた位置に移動し、搬送ベルト72からの用紙Pの排出(離脱)が可能となる。すなわち、用紙Pが搬送ベルト72から排出(離脱)される際に用紙Pの先端部P1が風除けガイド112の横壁部112Cと干渉することが防止される。
なお、風除けガイド112はクランク状でなくてもよく、インク乾燥ユニット90の吹出口90Bから風が用紙Pの先端部P1に当たるのを遮ることができる形状であれば、他の形状に変更可能である。
〔第3実施形態〕
次に、図10を用いて、本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられる搬送装置について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図10に示されるように、本実施形態の搬送装置200は、用紙Pを吸着して搬送する搬送ベルト72と、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pを風(例えば熱風)により乾燥処理する乾燥手段の一例としてのインク乾燥ユニット202と、搬送ベルト72上を搬送される用紙Pの搬送方向の後端部P2側を覆う(遮蔽する)風除けガイド204と、を備えている。さらに、搬送装置200は、第1ローラ76Aを駆動するモータ210と、モータ210の駆動を制御する制御手段としての制御部212と、を備えている。
インク乾燥ユニット202は、搬送ベルト72上に吸着されて搬送される用紙Pに斜め上方から用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に向かって風を吹き付ける吹出口202Aを備えている。本実施形態では、インク乾燥ユニット202は、用紙搬送方向(矢印A方向)に沿って4個設けられている。
風除けガイド204は、側面視にて略クランク状に形成されており、上部側の横壁部が用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に向かって延びている。風除けガイド204は、搬送ベルト72に所定の間隔で複数設けられている。
制御部212は、用紙Pの搬送方向の長さに基づき、用紙Pの後端部P2の位置に風除けガイド204を合わせるように搬送ベルト72の移動位置を制御する。本実施形態では、例えば給紙台30(図1参照)に設けられた図示しないセンサによって用紙Pの搬送方向の長さを検出する。そして、搬送ドラム64から用紙Pを搬送ベルト72に供給するときに、風除けガイド204の用紙方向下流側付近に用紙Pの後端部P2が配置されるように、搬送ベルト72の移動タイミングが制御される。すなわち、搬送ベルト72に供給される用紙Pの後端部P2の位置に風除けガイド204を合わせるように、搬送ベルト72の移動タイミングが制御される。
このような搬送装置200では、制御部212によって搬送ベルト72の移動タイミングが制御されることで、搬送ドラム64から用紙Pが搬送ベルト72に供給されたときに、風除けガイド204の用紙方向下流側付近に用紙Pの後端部P2が配置される。搬送ベルト72に用紙Pが供給されると、チャンバ74の吸引力により用紙Pが搬送ベルト72上に吸着されて矢印A方向に搬送される。その際、搬送ベルト72上に吸着されて搬送される用紙Pの後端部P2の斜め上方側から用紙搬送方向下流側(矢印A方向の側)に向かって、インク乾燥ユニット202の吹出口202Aから風(例えば熱風)が吹き付けられる。そのとき、風除けガイド204の横壁部が、用紙Pの後端部P2側を覆うように配置されており、風除けガイド204の横壁部の先端が、インク乾燥ユニット202の吹出口202Aから吹き付けられる風と用紙Pの後端部P2との間に介在されている。これにより、風除けガイド204によって、吹出口202Aから用紙Pの後端部P2に向かう風が遮られる。このため、吹出口202Aからの風が用紙Pの後端部P2に当たることが抑制され、用紙Pの後端部P2が搬送ベルト72から捲れることが抑制される。このため、インク乾燥ユニット202の吹出口202Aからの風(例えば熱風)の風速を十分高めることができる。
<その他>
以上、本発明の実施例について記述したが、本発明は上記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
なお、第2実施形態では、移動装置120にカムを設け、カムフォロアの当接部を当接させることで、風除けガイドを用紙搬送方向に移動させたが、これに限定されるものではない。風除けガイドを用紙搬送方向に移動させるために、例えば、ソレノイド、アクチュエータ、モータなどの移動手段を用いてもよい。
なお、第3実施形態では、風除けガイド204が搬送ベルト72に固定されているが、これに限定されず、風除けガイドが搬送ベルト72に対して用紙搬送方向に移動可能に設けられる構成でもよい。この場合、搬送ベルト72に用紙が供給される位置、又は搬送ベルト72から用紙が排出(離脱)される位置において、風除けガイドが用紙搬送方向上流側(矢印A方向と反対側)に移動することで、用紙Pの後端部P2と風除けガイドとの干渉を防止することが可能となる。
なお、第1〜第3実施形態では、風除けガイドは、用紙の搬送方向の少なくとも一方の端部を覆い、インク乾燥ユニットからの風を遮る構成であるが、用紙の搬送方向両側の端部を覆うように前後一対の風除けガイドを設け、風除けガイドを用紙搬送方向に移動可能とする構成でもよい。
なお、第1〜第3実施形態では、用紙を吸着して搬送する搬送ベルトが用いられているが、これに代えて、例えば、用紙を吸着して搬送するドラムなどの搬送部材を用いてもよい。