JP2014009335A - 非引火性表面処理剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価で、地球温暖化係数(GWP)が非常に低い非引火性溶剤の使用により安価に提供され得る、各種基材表面に撥水性、撥油性および撥IPA性を充分に付与し得る環境への負荷が少ないフッ素系表面処理剤の提供。
【解決手段】(1)CF3CH2OCF2CHF2、(2)炭素数が1〜3のアルコール、および(3)含フッ素重合体またはポリフルオロアルキル基含有のリン酸エステル化合物を必須とし、非引火性である表面処理剤。
【選択図】なし
【解決手段】(1)CF3CH2OCF2CHF2、(2)炭素数が1〜3のアルコール、および(3)含フッ素重合体またはポリフルオロアルキル基含有のリン酸エステル化合物を必須とし、非引火性である表面処理剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、非引火性のフッ素系表面処理剤に関する。
従来、各種基材表面には、撥水性、撥油性およびフラックス等の溶剤(2−プロパノール:IPA)に対する撥IPA性を付与するためのフッ素系重合体、特に多くの場合パーフルオロアルキル基を有するフッ素系重合体を乾燥性溶剤中に含む表面処理剤が適用される。この表面処理剤に使用される溶剤は、乾燥性が良好であって、かつフッ素系重合体の溶剤となり得るものである。フッ素系重合体は、本質的に通常の有機溶剤に対する溶解性が貧しいことから、フッ素系重合体の溶剤は、実質的にフッ素系溶剤である。
これまで使用されてきたフッ素系溶剤の典型例は、いわゆるフロン溶剤であり、たとえばジクロロペンタフルオロプロパンおよびジクロロフルオロエタン等のハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)などである。これらの溶剤は、フッ素系重合体の溶解性の他にも、低表面張力を持つため、表面処理剤の溶剤として非常に有用であった。
しかし、HCFCはオゾン破壊係数を有するため、先進国においては2020年に生産が全廃されることが決まっている。また、代替フロンとして使用されてきたトリデカフルオロヘキサンやデカフルオロペンタン等の一部のハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロヘキサン等のパーフルオロカーボン(PFC)も、温暖化係数が高いため、地球温暖化防止の目的から京都議定書の規制対象物質となっている。
そこで、上記に代わり得るフッ素系溶剤の開発が進められているものの一つに、ハイドロフルオロエーテル(HFE)がある。その中には、(パーフルオロブトキシ)メタン(C4F9OCH3)、(パーフルオロブトキシ)エタン(C4F9OC2H5)、2,2,2−トリフルオロエトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(CF3CH2OCF2CF2H)など既に市販されているものもある。このようなHFEをコーティング組成物に用いたものもある(特許文献1参照)。しかしながら、これらHFEは溶解性に乏しいものが多い。
表面処理剤が引火性で、消防法上危険物に該当する場合には、取り扱い場所や保管場所および保管数量に非常に大きく制限を受けるだけではなく、使用設備を防爆対応することが義務付けられ、莫大な経済的負担が必要となる。このため、表面処理剤の大部分を占める溶剤は、安価でかつ非引火性であることが望まれる。
本発明は、安価で、地球温暖化係数(GWP)が非常に低い非引火性溶剤の使用により安価に提供され得る、各種基材表面に撥水性、撥油性および撥IPA性を充分に付与し得る環境への負荷が少ないフッ素系表面処理剤の提供を目的とする。
本発明は、(1)CF3CH2OCF2CHF2(HFE−347pc−f、以後HFE-347と記載する)と、(2)炭素数が1〜3のアルコールと、(3)含フッ素重合体またはポリフルオロアルキル基含有のリン酸エステル化合物を必須とし、非引火性の表面処理剤を提供する。
(1)及び(2)以外の溶剤成分としては、非引火性の溶剤成分を含有することができる。このHFE-347以外の非引火性溶剤は、HFE-347より蒸気圧が低い溶剤であることが好ましい。このHFE-347以外の非引火性溶剤の含有量は、溶剤全量中20質量%以下であることが好ましい。
本発明の表面処理剤は、はんだ用フラックス這い上がり防止剤、潤滑オイルの染み出し防止剤、防水・防湿コーティング剤、電子部品用樹脂付着防止剤等および離型剤に使用することができる。
本発明では、上記のような表面処理剤で被覆された基材も提供することができる。
本発明では、上記のような表面処理剤で被覆された基材も提供することができる。
本発明は、表面処理剤の溶剤として、安価な非引火性溶剤を使用するとともに、HFE−347と炭素数が1〜3のアルコールを混合することにより、HFEの低い溶解性を改善した。さらに、HFE−347とと低級アルコールでは、共沸組成を有しているため、浸漬処理など開放系状態での使用では、本発明の表面処理剤は、混合溶液の液組成が変化せず非常に好適である。さらに、本発明の表面処理剤は、混合溶剤が引火性を有さないため、各種基材表面に撥水性、撥油性および撥IPA性を充分に付与することができるとともに、非引火性で、環境的にも経済的にも優れたフッ素系表面処理剤の提供を可能とした。
本発明の表面処理剤において、上記(1)/(2)の質量比は非引火性であれば特に限定されないが、90/10〜99/1が好ましく、94/6〜99/1が特に好ましい。
本発明の目的を損なわない範囲であれば、上記特定成分(1)および(2)の混合溶剤に、他の溶剤成分を加えることができる。その場合、(1)および(2)の合計質量が、溶剤全量中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。なお、他の溶剤成分は、表面処理剤の溶剤として、(1)(2)と共に予め混合して含有するだけでなく、例えば、含フッ素重合体や含フッ素リン酸エステルの合成時に使用した溶剤がそのまま残存したものでもよい。
HFE−347以外の非引火性の溶剤成分を含有する場合、その蒸気圧はHFE−347より低いことが好ましい。溶質の含フッ素化合物の溶解性から、他の非引火性溶剤成分としては、HFCおよびHFEなどが好ましく、特にHFEが好ましい。
(1)以外のHFEとしては、具体的に以下のものが挙げられる。
C4F9OCH3
C4F9OC2H5
C6F13OCH3
C6F13OC2H5
C3F7OCH3
C3F7OC2H5
CF2HCF2CH2OCF2CF2H
CF3(OCF2CF2)n(OCF2)mOCF2H
C8F17OCH3
C7F15OCH3
CF3CH2OCF2CHF2
およびこれらの混合物。
上記例示中、添字mおよびnは各々1〜20の整数を表し、アルキル骨格基は直鎖または分岐の態様を含む。
C4F9OCH3
C4F9OC2H5
C6F13OCH3
C6F13OC2H5
C3F7OCH3
C3F7OC2H5
CF2HCF2CH2OCF2CF2H
CF3(OCF2CF2)n(OCF2)mOCF2H
C8F17OCH3
C7F15OCH3
CF3CH2OCF2CHF2
およびこれらの混合物。
上記例示中、添字mおよびnは各々1〜20の整数を表し、アルキル骨格基は直鎖または分岐の態様を含む。
(2)の炭素数が1〜3のアルコールは、非引火性に影響を与えない範囲で含有される。特に、溶剤全量中10質量%以下の量が好ましい。炭素数が1〜3のアルコールとしては、エチルアルコールまたは2-プロパノール(IPA)が好ましい。
非引火性を損なわない範囲であれば、(2)の炭素数が1〜3のアルコール以外にも引火性成分を含有していてもかまわない。この場合は他の引火性成分の含有量は溶剤全量中の5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
本発明において、「引火性」とは、以下の手順で引火点測定を実施し引火点を持つことと定義する。各引火点測定方法はJIS−K−2265に定められている方法に従うものとする。
<引火点の測定手順>
(a)タグ密閉法による引火点測定の実施。
(b)(a)において、引火点が80℃以下の温度で引火点が測定できない場合にあっては、クリーブランド開放法による引火点測定の実施。
<引火点の測定手順>
(a)タグ密閉法による引火点測定の実施。
(b)(a)において、引火点が80℃以下の温度で引火点が測定できない場合にあっては、クリーブランド開放法による引火点測定の実施。
本発明の表面処理剤は、上記のような(1)(2)を含有する非引火性溶剤と、溶質とから形成される。ここで、溶剤とは、室温において動粘度が1.0×10-5m2/s未満の液体成分と定義し、溶質とは、室温において固体もしくは動粘度が1.0×10-5m2/s以上の液体成分と定義する。
本発明に係る表面処理剤は、溶質としてポリフルオロアルキル基を含有する含フッ素重合体または含フッ素リン酸エステルを含む。
含フッ素重合体は、少なくともポリフルオロアルキル基含有化合物(a)から導かれる構成単位を含む。この化合物(a)は、典型的に(メタ)アクリル酸化合物であり、具体的には(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリルアミドなどである。
化合物(a)としては、下記構造が挙げられる。
CH2=CR1−COX−Q1−Rf1
該式中のR1は水素原子またはメチル基であり、Xは−O−または−NH−であり、Q1は単結合または2価の連結基であり、Rf1は炭素数1〜20のポリフルオロアルキル基である。2価の連結基としては炭素数1〜5のアルキレン基が好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」の語は、アクリルおよびメタクリルの両方またはどちらか一方を意味する。このような化合物(a)を具体的に(メタ)アクリル酸エステルで例示すれば、
CH2=CH−COO−(CH2)n−(CF2)mF、
CH2=C(CH3)−COO−(CH2)n−(CF2)mF
(上記例示中、添字nは0〜4、添字mは1〜16の整数である。)
などが挙げられるが、化合物(a)は、これらに限定されるものではない。
これらのうちでも、mが1〜6であるものが好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステルは、表面処理剤に求める性能により適宜選択できる。例えば、撥水性を特に重視する場合はメタクリル酸エステルが好ましく、撥油性や撥IPA性を特に重視する場合や、被膜の耐熱性を特に重視する場合は、アクリル酸エステルである場合が好ましい。
化合物(a)としては、下記構造が挙げられる。
CH2=CR1−COX−Q1−Rf1
該式中のR1は水素原子またはメチル基であり、Xは−O−または−NH−であり、Q1は単結合または2価の連結基であり、Rf1は炭素数1〜20のポリフルオロアルキル基である。2価の連結基としては炭素数1〜5のアルキレン基が好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」の語は、アクリルおよびメタクリルの両方またはどちらか一方を意味する。このような化合物(a)を具体的に(メタ)アクリル酸エステルで例示すれば、
CH2=CH−COO−(CH2)n−(CF2)mF、
CH2=C(CH3)−COO−(CH2)n−(CF2)mF
(上記例示中、添字nは0〜4、添字mは1〜16の整数である。)
などが挙げられるが、化合物(a)は、これらに限定されるものではない。
これらのうちでも、mが1〜6であるものが好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステルは、表面処理剤に求める性能により適宜選択できる。例えば、撥水性を特に重視する場合はメタクリル酸エステルが好ましく、撥油性や撥IPA性を特に重視する場合や、被膜の耐熱性を特に重視する場合は、アクリル酸エステルである場合が好ましい。
含フッ素重合体は、化合物(a)から導かれる構成単位を、通常50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有する。なお本発明において、重合体における構成単位の質量%は、重合に使用した原料化合物がすべて構成単位を構成するとみなした値である。
含フッ素重合体が、化合物(a)のみの重合体である場合には、化合物(a)の1種の単独重合体でも2種以上の共重合体でもよい。
含フッ素重合体が、化合物(a)のみの重合体である場合には、化合物(a)の1種の単独重合体でも2種以上の共重合体でもよい。
また、含フッ素重合体が共重合体である場合には、他の化合物(b)から導かれる構成単位を1種または複数種含むことができる。化合物(b)は、通常、ポリフルオロアルキル基を含有しない化合物であり、たとえば(メタ)アクリル酸、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、反応性を有する官能基を含む化合物、例えば、マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有化合物、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有化合物、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有化合物、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸などのカルボキシル基含有化合物などであるが、これらに限られない。
含フッ素リン酸エステルとしては、下記構造が挙げられる。
(Rf2−Q2−O−)r−P(O)(OM)s
該式中のRf2は炭素数1〜20のポリフルオロアルキル基であり、Q2は単結合または2価の連結基であり、Mは水素原子、アンモニウム基、置換アンモニウム基またはアルカリ金属原子であり、rは1〜3の整数であり、sは0〜2の整数であり、r+sは3である。2価の連結基としてはOH基で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基が好ましい。
含フッ素リン酸エステルの具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
F(CF2)m-CH2CH2-P(O)(OH)2
(F(CF2)m -CH2CH2)2P(O)(OH)
F(CF2)m -CH2CH(OH)CH2O-P(O)(OH)2
(F(CF2)m -CH2CH(OH)CH2O)2P(O)(OH)
F(CF2)m -CH2CH2O-P(O)(OH)2
(F(CF2)m -CH2CH2O)2-P(O)(OH)
上記例示中、添字mは1〜16の整数であり、好ましくは1〜6である。
含フッ素リン酸エステルは、表面処理剤として金属表面を処理する場合に特に好適である。また、離型剤として用いる場合にも特に好適である。
(Rf2−Q2−O−)r−P(O)(OM)s
該式中のRf2は炭素数1〜20のポリフルオロアルキル基であり、Q2は単結合または2価の連結基であり、Mは水素原子、アンモニウム基、置換アンモニウム基またはアルカリ金属原子であり、rは1〜3の整数であり、sは0〜2の整数であり、r+sは3である。2価の連結基としてはOH基で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基が好ましい。
含フッ素リン酸エステルの具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
F(CF2)m-CH2CH2-P(O)(OH)2
(F(CF2)m -CH2CH2)2P(O)(OH)
F(CF2)m -CH2CH(OH)CH2O-P(O)(OH)2
(F(CF2)m -CH2CH(OH)CH2O)2P(O)(OH)
F(CF2)m -CH2CH2O-P(O)(OH)2
(F(CF2)m -CH2CH2O)2-P(O)(OH)
上記例示中、添字mは1〜16の整数であり、好ましくは1〜6である。
含フッ素リン酸エステルは、表面処理剤として金属表面を処理する場合に特に好適である。また、離型剤として用いる場合にも特に好適である。
本発明の表面処理剤は、上記溶剤に溶解もしくは分散させることが可能で、本発明の目的を損なわず、安定性、性能および外観等に悪影響を与えない範囲であれば上記のような含フッ素化合物以外にも他の溶質を特に制限なく含むことができる。
たとえば、ジメチルメチルシリコーンやポリエチレングリコールアルキルアミンなどが挙げられる。さらに、被膜表面の腐食を防止するためのpH調整剤、防錆剤、界面活性剤、表面処理剤を希釈して使用する場合に液中の重合体の濃度管理をする目的や未処理部品との区別をするための染料、染料の安定剤、難燃剤、消泡剤および帯電防止剤等の他の成分が挙げられる。
たとえば、ジメチルメチルシリコーンやポリエチレングリコールアルキルアミンなどが挙げられる。さらに、被膜表面の腐食を防止するためのpH調整剤、防錆剤、界面活性剤、表面処理剤を希釈して使用する場合に液中の重合体の濃度管理をする目的や未処理部品との区別をするための染料、染料の安定剤、難燃剤、消泡剤および帯電防止剤等の他の成分が挙げられる。
本発明の表面処理剤は、溶質濃度が20質量%以下であることが好ましい。この溶質とは、表面処理剤における溶質全体、すなわち上記含フッ素化合物だけでなく、他の溶質および他の成分も含むことを意味する。
本発明の表面処理剤の含フッ素化合物の濃度は、用途によって適宜設定されることが好ましい。防水・防湿コート剤では、1〜20質量%であるのが好ましい。潤滑オイルの染み出し防止剤や電子部品用樹脂付着防止剤では、1〜5質量%であるのが好ましい。はんだ用フラックス這い上がり防止剤では、濃度が0.01〜1質量%であるのが好ましい。離型剤では、0.1〜10質量%であるのが好ましい。
上記含フッ素化合物の濃度は、各用途での最終的な濃度であればよい。各用途に供するには高濃度、たとえばはんだ用フラックス這い上がり防止剤である場合の1質量%を超えていてもなんら差し支えなく、希釈等により適宜調整すればよい。また、含フッ素化合物が含フッ素重合体である場合には、重合体を高濃度(固形分濃度)で含む重合溶液をそのまま各用途での好適濃度に希釈して使用することができる。
溶質全量中の含フッ素化合物の量は、用途により異なっていても構わない。例えば、防水・防湿コート剤、潤滑オイルの染み出し防止剤、電子部品用樹脂付着防止剤およびはんだ用フラックス這い上がり防止剤では、溶質成分の90質量%以上が含フッ素化合物であることが好ましいが、離型剤では、含フッ素化合物が溶質成分の50質量%以下であっても構わない。
本発明の表面処理剤の動粘度は、1.0×10-5m2/s未満であることが好ましく、より好ましくは5.0×10-6m2/s以下である。これらの動粘度範囲であれば、表面処理剤の作業性が良好である。
本発明の表面処理剤は、撥水性、撥油性および撥IPA性等の性能を付与したい部分に塗布して被膜を形成して利用することができる。該被膜は、本発明の表面処理剤から溶剤が除去されて形成されるものであり、主として、本発明の溶質成分からなるものである。被覆方法としては一般的な被覆加工方法が採用できる。例えば浸漬塗布、スプレー塗布、ローラー塗布等の方法がある。
本発明の表面処理剤の塗布後は、溶剤の沸点以上の温度で乾燥を行うことが好ましい。無論、被処理部品の材質などにより加熱乾燥が困難な場合には、加熱を回避して乾燥すべきである。なお、熱処理の条件は、塗布する表面処理剤の組成や、塗布面積等に応じて選択すればよい。
本発明の表面処理剤は、各種材料の処理に適用可能であるが、中でも精密機器部品や摺動部品(モーター、時計、HDD)、電気部品(電子回路や基板、電子部品等)および各種樹脂製系のモールドの処理に用いるのが好ましい。中でも、本発明の表面処理剤を、はんだ用フラックス這い上がり防止剤、潤滑オイルのにじみ出し防止剤、防水コート剤、防湿コート剤、電子部品用樹脂付着防止剤および離型剤として用いることが好ましい。
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例で使用した化合物は、市場から試薬として入手することができるものまたは既知の合成法によって容易に合成できるものである。また、以下の実施例において、特に断わりのない限り「%」で表示されるものは「質量%」を表すものとする。
(合成例1)含フッ素重合体1の合成
密閉容器に、CH2=C(CH3)-COO-CH2CH2(CF2)6F(C6FMA)を294質量部、CH2=C(CH3)-COO-CH2CH2OH(HEMA)を6質量部、m−XHFを299質量部および開始剤(ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオナート,和光純薬工業,V−601)を1質量部、それぞれ仕込み、70℃で18時間反応させた。反応後の重合溶液に、m-XHFを加えて希釈し、含フッ素重合体濃度20%のm-XHF溶液とした後、大過剰量のメタノールと混合し、含フッ素ポリマーを析出させた。析出させた含フッ素ポリマーをメタノールで洗浄後、減圧乾燥機で乾燥させて含フッ素重合体1を得た。
密閉容器に、CH2=C(CH3)-COO-CH2CH2(CF2)6F(C6FMA)を294質量部、CH2=C(CH3)-COO-CH2CH2OH(HEMA)を6質量部、m−XHFを299質量部および開始剤(ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオナート,和光純薬工業,V−601)を1質量部、それぞれ仕込み、70℃で18時間反応させた。反応後の重合溶液に、m-XHFを加えて希釈し、含フッ素重合体濃度20%のm-XHF溶液とした後、大過剰量のメタノールと混合し、含フッ素ポリマーを析出させた。析出させた含フッ素ポリマーをメタノールで洗浄後、減圧乾燥機で乾燥させて含フッ素重合体1を得た。
(合成例2〜5)含フッ素重合体2〜5の合成
密閉容器に、C6FMAを100質量部、C4F9OC2H5を399質量部および開始剤V−601を1質量部、それぞれ仕込み、70℃で18時間反応させ、含フッ素重合体2の20%溶液を得た。含フッ素重合体2と同様にして、含フッ素重合体3〜5の20%溶液をそれぞれ得た。各重合体における化合物の仕込み比を表1に示す。
表1中、C6FAは、CH2=CH-COO-CH2CH2(CF2)6Fである。
密閉容器に、C6FMAを100質量部、C4F9OC2H5を399質量部および開始剤V−601を1質量部、それぞれ仕込み、70℃で18時間反応させ、含フッ素重合体2の20%溶液を得た。含フッ素重合体2と同様にして、含フッ素重合体3〜5の20%溶液をそれぞれ得た。各重合体における化合物の仕込み比を表1に示す。
(実施例1)表面処理剤1-A、1-Bの調製
合成例1で得られた含フッ素重合体1を、各所定量の溶剤(希釈剤A及びB)で重合体濃度1%または0.1%に希釈した。希釈剤A及びBの溶剤組成を表2に記載した。希釈剤Aを用いたものを表面処理剤1-A、希釈剤Bを用いたものを表面処理剤1-Bとした。
合成例1で得られた含フッ素重合体1を、各所定量の溶剤(希釈剤A及びB)で重合体濃度1%または0.1%に希釈した。希釈剤A及びBの溶剤組成を表2に記載した。希釈剤Aを用いたものを表面処理剤1-A、希釈剤Bを用いたものを表面処理剤1-Bとした。
(実施例2〜5)表面処理剤2B〜5Bの調製
含フッ素重合体2の20%溶液を、希釈剤Bで1%または0.1%に希釈して表面処理剤2Bを調整した。同様にして、含フッ素重合体3〜5も、それぞれ希釈剤Bで1%または0.1%に希釈して、表面処理剤3B〜5Bをそれぞれ調整した。
含フッ素重合体2の20%溶液を、希釈剤Bで1%または0.1%に希釈して表面処理剤2Bを調整した。同様にして、含フッ素重合体3〜5も、それぞれ希釈剤Bで1%または0.1%に希釈して、表面処理剤3B〜5Bをそれぞれ調整した。
上記で得られた各表面処理剤の1%溶液および0.1%溶液について、接触角測定を実施した結果を表3に示した。なお「表面処理剤の1%溶液」とは、「表面処理剤中の含フッ素重合体濃度が1%である溶液」を意味し、0.1%溶液も同様である。
[接触角の測定]
実施例1〜5の各表面処理剤に室温でガラス板を1分間浸漬した後、室温で乾燥させ、各処理剤の被膜を有する各ガラス板を得た。
次に各ガラス板の被膜上に、水、IPAまたはn-ヘキサデカン(n-HD)を滴下し、接触角を測定した。
接触角の測定には、自動接触角計OCA−20[dataphysics社製]を用いた。
実施例1〜5の各表面処理剤に室温でガラス板を1分間浸漬した後、室温で乾燥させ、各処理剤の被膜を有する各ガラス板を得た。
次に各ガラス板の被膜上に、水、IPAまたはn-ヘキサデカン(n-HD)を滴下し、接触角を測定した。
接触角の測定には、自動接触角計OCA−20[dataphysics社製]を用いた。
以上の結果から、本発明では、撥水性、撥油性および撥IPA性が、各種基材への表面処理に十分な性能であるとともに、引火性を有さず非常に安全な表面処理剤の提供を可能にした。
Claims (10)
- (1)CF3CH2OCF2CHF2、(2)炭素数が1〜3のアルコール、および(3)含フッ素重合体またはポリフルオロアルキル基含有のリン酸エステル化合物を必須とし、非引火性である表面処理剤。
- CF3CH2OCF2CHF2以外の非引火性溶剤成分をさらに含有する請求項1に記載の表面処理剤。
- 蒸気圧がCF3CH2OCF2CHF2より低い非引火性溶剤成分をさらに含有する請求項1〜2のいずれかに記載の表面処理剤。
- CF3CH2OCF2CHF2以外の非引火性溶剤成分が溶剤全量中の20質量%以下である請求項1〜3のいずれか表面処理剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤を使用したはんだ用フラックス這い上がり防止剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤を使用した潤滑オイルの染み出し防止剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤を使用した防水・防湿コーティング剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤を使用した電子部品用樹脂付着防止剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤を使用した離型剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤で被覆された基材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012148647A JP2014009335A (ja) | 2012-07-02 | 2012-07-02 | 非引火性表面処理剤 |
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Cited By (2)
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JP2021095479A (ja) * | 2019-12-16 | 2021-06-24 | Agcセイミケミカル株式会社 | 表面処理組成物 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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