しかしながら、上述した一般的な従来の方法では、印刷用金型と金型固定盤との間が両面テープや接着剤で固定されているため、別の印刷用金型に交換する際に、金型固定盤から印刷用金型を簡単に取り外すことができなかった。印刷用金型を取り外すには、印刷用金型と金型固定盤との間にスクレーパーを差し込んで金型固定盤から印刷用金型を剥がしたり、溶剤で両面テープの接着層や接着剤を溶解させる等して金型固定盤と印刷用金型とを分離させなくてはならず、非常に手間がかかるものであった。また、上記のようにして金型固定盤から印刷用金型を取り外すために、印刷用金型が損傷しやすいという問題もあった。
さらに、金型固定盤上の間違った位置に印刷用金型を接着してしまった場合には、一旦、上記のようにして金型固定盤から印刷用金型を取り外し、印刷用金型の裏面や金型固定盤上に付着している両面テープや接着剤をきれいに除去した後に、印刷用金型の裏面に両面テープや接着剤を再度付け、金型固定盤上の所定の位置に接着しなければならなかった。
また、印刷用金型と金型固定盤との間が両面テープや接着剤で固定されているため、介在する両面テープや接着剤等により刃型の刃高や箔押し用版の版面に高低が生じやすく、印刷圧のムラが発生しやすい。それゆえ、印刷用ムラ取り材等を取り付けて印刷用金型の刃高や版面高さを調整する作業が必要となっていた。
他方、特許文献1に記載の刃型とチェースの固定方法は、刃台と刃型とを押さえ板とネジを用いて固定した後、さらに刃台とチェースとをネジで固定する必要があることから、刃型の固定にも取り外しにも工具が必要であり、多大な手間がかかっていた。
本発明は上述した点に鑑み案出されたもので、その目的は、両面テープや接着剤等を使用せずに、印刷用金型を金型固定盤に簡単かつ確実に固定でき、金型固定盤に固定されている印刷用金型を簡単に取り外しできる印刷用金型固定具を提供することにある。
本発明の他の目的は、印刷用金型を金型固定盤上の所定の位置に容易に固定することができ、間違った位置に印刷用金型を固定してしまった場合においても、固定位置を簡単に修正することのできる印刷用金型固定具を提供することにある。
本発明の他の目的は、従来の印刷用金型に特別な加工等を施すことなく、従来の印刷用金型について使用でき、印刷用金型の固定及び取外しに工具を必要とせず、簡単に印刷用金型を固定することのできる印刷用金型固定具を提供することにある。
上記課題を解決するため、印刷用金型を金型固定盤に固定させる本発明の印刷用金型固定具は、第1の面と第2の面と第1の面及び第2の面を連結しており、略U字状の折曲断面を有する折曲部とを備えた薄板状の板ばね部材と、板ばね部材の第2の面に固着され、金型固定盤に磁着可能なマグネットとを備え、板ばね部材の第1の面の折曲部とは反対側の端部には、印刷用金型の外縁部の少なくとも一部と係合する係止部が設けられ、板ばね部材には、指先を引っ掛けることができるように構成された自由端部が設けられている。
本発明の印刷用金型固定具は、主に板ばね部材とマグネットとから構成されている。この板ばね部材は、薄板を断面略U字状に折曲して形成されたものであり、第1の面と、第2の面と、第1の面及び第2の面を連結しており、略U字状の折曲断面を有する折曲部とを有する。板ばね部材の第1の面には、折曲部とは反対側の端部に係止部が設けられており、係止部は、印刷用金型の外縁部に係合して印刷用金型を係止する爪のような役割を果たしている。板ばね部材の第2の面にはマグネットが固着されており、このマグネットが金型固定盤に磁着することにより、板ばね部材全体が金型固定盤方向に牽引される。その結果、板ばね部材の第1の面の端部に設けられている係止部が印刷用金型を金型固定盤方向に押圧し、印刷用金型が固定される。他方、いったん固定された印刷用金型を取り外す際には、板ばね部材に設けられた自由端部に指先を引っ掛けて、金型固定盤から印刷用金型固定具を持ち上げ、金型固定盤とマグネットとの磁着を解消させることにより行われる。このように、印刷用金型の外縁部に印刷用金型固定具を配置することにより、印刷用金型を簡単かつ確実に金型固定盤に固定することができ、固定された印刷用金型を取り外す際には、印刷用金型固定具の自由端部に指先を引っ掛けて持ち上げることにより、簡単に金型固定盤から取り外すことができる。なお、印刷用金型を固定する際には、印刷用金型固定具を印刷用金型の少なくとも1つの対向する辺又は角部に配置するのみでよく、これにより、印刷用金型は安定して金型固定盤に固定される。
また、本発明の印刷用金型固定具の自由端部は、第1の面と同一平面に設けられていることも好ましい。板ばね部材の第1の面と同一平面に自由端部が設けられていることから、自由端部と金型固定盤との間に相対的に大きなスペースが生じる。それゆえ、自由端部に指先が引掛けやすく、印刷用金型固定具を金型固定盤から取り外すことをより簡単にすることができる。
本発明の印刷用金型固定具の自由端部は、第2の面と同一平面に設けられていることも好ましい。自由端部が第1の面よりも低い位置の第2の面と同一平面に設けられていることから、自由端部が印刷用金型の打ち抜き刃や箔押版と干渉するおそれがなく、確実に印刷用金型を固定しつつ、印刷加工することが可能である。また、自由端部の長さをより長く設計することもできるため、印刷用金型固定具を金型固定盤から取り外すことをより簡単にすることができる。
そして、本発明の印刷用金型固定具の板ばね部材には、係止部の高さ位置を調整するための調整手段を備えることも好ましい。係止部の高さ位置を調整するための調整手段を板ばね部材に備えることにより、マグネット底部からの係止部の高さ位置を調整することができる。それゆえ、固定する印刷用金型の厚みに合わせて係止部の高さを調整することができる。また、係止部が印刷用金型の外縁部と係合して押圧する力も調整することができる。
また、板ばね部材は磁性材からなり、板ばね部材には、マグネットの両側面を覆うように第2の面の折曲部に対して両側端を折曲したヨーク部が設けられていることも好ましい。マグネットの磁力線をヨーク部に集中させて磁着力を強めることができるため、印刷用金型を金型固定盤に安定して固定することができる。
また、ヨーク部は、印刷用金型固定具を金型固定盤に磁着させた際にマグネットが金型固定盤から離隔するように、マグネットの厚みよりもヨーク部の長さが長くなるように構成されていることも好ましい。印刷用金型を金型固定盤に固定する際に、マグネットの底面ではなく、ヨーク部が金型固定盤に当接するため、マグネットにかかる衝撃を防ぐことができ、マグネットの破損を防ぐことができる。
また、第2の面の係止部とは異なる側において、第2の面に固着された非磁性体をさらに備えたことも好ましい。板ばね部材の第2の面の係止部とは反対側に非磁性体を配置させることにより、印刷用金型を金型固定盤に確実に固定するための係止部側の高い磁着力は維持しつつ、金型固定盤と磁着する面の磁着力を全体的に弱めることができる。それゆえ、希土類磁石等の磁力の強いマグネットを用いた場合においても、より簡単に印刷用金型固定具を取り外すことができる。
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する印刷用金型固定具を提供することができる。
(1)工具や両面テープや接着剤を使用せずに、印刷用金型を簡単かつ確実に金型固定盤上に固定することができる。
(2)印刷用金型を傷めずに、金型固定盤上に固定された印刷用金型を簡単かつ迅速に取り外すことができる。
(3)印刷用金型を金型固定盤上の所定の位置に容易に固定することができ、間違った位置に印刷用金型を固定してしまった場合においても、簡単に固定位置を修正することができる。
(4)従来の印刷用金型に特別な加工等を施すことなく、従来の印刷用金型を固定するために使用することができる。
以下、図1〜図3を参照しつつ本発明の第1の実施形態に係る印刷用金型固定具1について説明する。
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る印刷用金型固定具1は、薄板を断面略U字状に折曲して形成された板ばね部材2と、板ばね部材2に固着されたマグネット3とから主として構成されている。板ばね部材2は、第1の面2aと、第2の面2bと、第1の面2a及び第2の面2bを連結し、略U字状の折曲断面を有する折曲部2cとを有しており、マグネット3はこの第2の面2b上に固着されている。板ばね部材2の第1の面2aには、折曲部2cとは反対側の端部に、第1の面2aと同一平面上に延出する係止部20が設けられている。さらに、第1の面2aには、板ばね部材2の折曲方向と直交する長手方向の両端部に、第1の面2aと同一平面上に延出する自由端部21が夫々設けられている。本実施形態においては、印刷用金型固定具1は全体として、板ばね部材2の折曲方向と直交する方向、すなわち、長手方向を2等分する線に対して、線対称に形成されている。
図2及び図3を参照しつつ、印刷用金型固定具1の板ばね部材2についてより詳細に説明する。この板ばね部材2は、所定の形状に形成された薄板を断面略U字状に折曲して形成されている。薄板を折曲げることにより、第1の面2aと第2の面2bが形成され、第1の面2aと第2の面2bとの間には、これらを連結する断面略U字状の折曲部2cが形成される。このように形成された第1の面2a、折曲部2c及び第2の面2bにより板ばね部材2、具体的には、後述する板ばね部材2の係止部20が印刷用金型5の外縁部を押圧する弾性力が生じる。板ばね部材2は係止部20が印刷用金型5の外縁部を押圧できる程度に折曲されていればよく、折曲部2cの折曲角度は特に限定されない。本実施形態においては、第1の面2aと第2の面2bとの間の距離が、折曲部2c側よりも、折曲部2cとは反対側の端部側の方が狭くなるように折曲されており、第1の面2aに備えられた係止部20が印刷用金型5の外縁部を押圧して固定する際に、第1の面2aが第2の面2bと略平行となるように調整されている。また、板ばね部材2を形成する薄板としては、鋼板、ステンレス板及びアルミニウム板等の金属板を用いることができ、後述する板ばね部材2の第2の面2bをマグネット3のヨークとして使用する場合には、磁性材の鋼板が好適に用いられる。
次に、図2及び図3を参照しつつ、板ばね部材2に設けられている係止部20について説明する。本実施形態において、板ばね部材2の第1の面2aには、折曲部2cとは反対側の端部に、第1の面2aと同一平面上に矩形状に延出する係止部20が2箇所設けられている。係止部20は、印刷用金型5の外縁部と係合して外縁部を押圧し、印刷用金型5を金型固定盤6に係止できるように設計されている。係止部20の構成としては、具体的には、少なくとも1つ以上の矩形形状、台形形状、半円形状、三角形状又はくさび形状等の形状の係止片から構成される。本実施形態では、係止部20は矩形形状の係止片からなり、板ばね部材2の長手方向の中央部分からやや離れた部分に1つ、板ばね部材2の折曲方向と直交する長手方向を2等分する線に対して線対称の位置にもう1つ設けられている。このように、長手方向を2等分する線に対して線対称に複数の係止部20を設けることにより、印刷用金型5の外縁部を確実に押圧して固定することができ、印刷用金型5の厚みにムラがあるような場合においても、複数の係合部20で印刷用金型5を押圧することができるため、安定して印刷用金型5を金型固定盤6に固定することができる。さらに、本実施形態のように、長手方向の中央部分に係止部20を設けないことにより、印刷用金型5に備えられた中央位置ガイド(センタートンボ)を確認しながら印刷用金型5の位置合わせをすることができる。
図1及び図3に示すように、印刷用金型固定具1の係止部20は、印刷用金型5の外縁部と係合し、外縁部を金型固定盤6方向に押圧して固定する。係止部20の高さ位置は、板ばね部材2の折曲角度及び板ばね部材2に固着されているマグネット3の厚みにより調整され、具体的には係止部20が印刷用金型5の外縁部と係合して押圧できるように、印刷用金型5の厚みの長さよりも、印刷用金型固定具1の底部から係止部20までの高さの長さの方が若干低くなるように調整されている。板ばね部材2には、係止部20の高さ位置を調整するための調整手段22を備えることも可能である。本実施形態においては、板ばね部材2に係止部20の高さ位置を調整するためのねじ穴及びねじによる調整手段22が備えられている。この調整手段22により、印刷用金型固定具1の底部からの係止部20までの高さ位置を調整することができるため、固定する印刷用金型5の厚みに合わせて係止部20の高さ位置を調整することができる。また、係止部20が印刷用金型5の外縁部を押圧する力も調整することができる。
また、印刷用金型5としてシール用刃型を使用した際には、打ち抜き刃50の表面からの刃高さがトムソン刃では通常約5〜7mm、ゼンマイ刃では通常約1〜3mmと僅かであり、箔押し用版においても版厚が通常約1〜7mmと僅かであることから、係止部20の高さ位置を含めた板ばね部材2の第1の面2aの高さ位置については、係止部20が印刷用金型5の外縁部と係合して印刷用金型5を固定した際に、印刷物の打ち抜きや箔押し加工等に影響を及ぼさないように設計されている。具体的には、係止部20を印刷用金型5の外縁部に係合させた際、打ち抜き刃50や版の高さ位置よりも係止部20を含めた板ばね部材2の第1の面2aの高さ位置が低くなるように調整されている。
次に、図2を参照しつつ、板ばね部材2に設けられている自由端部21について説明する。本発明の印刷用金型固定具1に備えられているマグネット3は、印刷用金型5を確実に金型固定盤6に固定するために、吸着力の強い磁石が使用されている。それゆえ、印刷用金型5を金型固定盤6に固定した印刷用金型固定具1を容易に取り外しできるように自由端部21が設けられている。自由端部21の構成としては、自由端部21に指先を引っ掛けて印刷用金型固定具1を取り外すことができるように構成されていればよく、板ばね部材2を構成する薄板と同じ薄板で形成することも、別の薄板を板ばね部材2と組み合わせて一体的に形成することもでき、少なくとも1つ以上の矩形形状、楕円形状、半円形状又は台形形状等の形状の薄板片から形成される。本実施形態においては、自由端部21は、板ばね部材2の折曲方向と直交する方向の第1の面2aの両端部に形成されており、夫々第1の面2aと同一平面上に羽根のように延出する矩形状の薄板片から構成されている。このように、自由端部21が板ばね部材2の第1の面2aと同一平面に設けられることにより、自由端部21と印刷用金型固定具1が磁着している金型固定盤6との間に相対的に大きなスペースが生じるため、自由端部21に指先が引掛けやすく、取り外しを容易にすることができる。さらに、梃子の原理において力点となる指を引っ掛ける自由端部21と、梃子の原理において支点となるマグネット3の端部との距離を稼ぐこともできるため、印刷用金型固定具1を金型固定盤6から少ない力で取り外すことができる。また、自由端部21の表面を指で金型固定盤6の方向に押して印刷用金型固定具1を取り外す場合においても、梃子の原理の力点となる自由端部21の表面と、梃子の原理の支点となるマグネット3の端部との距離を稼ぐことができるため、印刷用金型固定具1を金型固定盤6から少ない力で取り外すことができる。
次に、印刷用金型固定具1を構成するマグネット3について説明する。図2及び図3に示すように、マグネット3は、板ばね部材2の第2の面2bに固着されており、このマグネット3の磁力によって、印刷用金型固定具1を金型固定盤6に磁着することによって、印刷用金型5を固定する。マグネット3の第2の面2bへの固着は、板ばね部材2の第2の面2bとマグネット3とを強固に固着できる観点から、ねじ及び/又は接着剤により実施されていることが好ましい。本実施形態における印刷用金型固定具1については、第2の面2b上に矩形形状のマグネット3がねじ22及び接着剤により固着されている。マグネット3は、印刷用金型5を金型固定盤6上に確実に固定できる特性を有するものが選択され、具体的には、サマリウムコバルト磁石やネオジム磁石等の希土類磁石又はアルニコ磁石等の吸着力の強い磁石が用いられる。特に、印刷用金型5として箔押し用版やエンボス用版を用いる際には、金型固定盤6が加熱されて熱くなることから、耐熱性を有するサマリウムコバルト磁石が好適に用いられる。また、マグネット3の大きさとしては、印刷用金型5を金型固定盤6上に安定して固定できるだけの磁着力を有する程度の大きさが選択される。
マグネット3の磁着力を高めるため、マグネット3にはヨークを設けることができる。ヨークは、別途磁性材からなる部材を板ばね部材2やマグネット3に配置させて設けることのほか、マグネット3が固着されている板ばね部材2の第2の面2bの両側端を、マグネット3の両側面を覆うように折曲部2cに対して折曲して設けることが可能である。本実施形態においては、板ばね部材2を磁性材の鋼板で形成し、板ばね部材2の第2の面2bの両側端を折曲部2cに対して略垂直に折曲してマグネット3の両側面を覆ってヨーク部23を構成している。マグネット3の両側面を覆うヨーク部23が設けられることにより、ヨーク部23にマグネット3の磁力線を集中させて磁着力を強めることができる。
本実施形態では、金型固定盤6に印刷用金型固定具1を磁着させた際にマグネット3が金型固定盤6から離隔するように、ヨーク部23の長さがマグネット3の厚みよりも長くなるように構成されている。それゆえ、印刷用金型5を金型固定盤6に固定する際に、マグネット3の底面ではなく、ヨーク部23の端部が金型固定盤6に当接するため、マグネット3にかかる衝撃を防ぐことができ、マグネット3の破損を防ぐことができる。なお、上述の板ばね部材2の第2の面2bの両側端を略垂直に折曲してマグネット3の両側面を覆い、覆った部分の長さをマグネット3の厚みよりも長くする構成は、板ばね部材2が非磁性材で形成されていてもよい。その場合には第2の面2bの折曲された端部が金型固定盤6に当接するため、マグネット3にかかる衝撃を防ぐことができ、マグネット3の破損を防ぐことができる。
なお、図2に示すように、印刷用金型固定具1には、印刷用金型5の金型固定盤6上での位置合わせを容易にするための位置合わせガイド24を設けることができる。位置合わせガイド24は、印刷用金型5を金型固定盤6上の所定の位置、例えば金型固定盤6の中心に合わせることができる位置に設けられる。本実施形態においては、印刷用金型5上に設けられた位置合わせガイドが印刷用金型5の各辺の中央に設けられていることから、印刷用金型固定具1の位置合わせガイド24も、印刷用金型固定具1の長手方向の中央に設けられている。
印刷用金型5としては、印刷物のシール加工に用いられるシール用刃型や、箔押し加工(ホットスタンプ)に用いられる箔押し用版及びエンボス加工に用いられるエンボス用版が使用される。印刷用金型5は、亜鉛、銅又はアルミ等の金属、樹脂、木材並びにこれらを組み合わせた材料から形成され、主に非磁性材料で形成されている。なお、シール用刃型の打ち抜き刃には、磁性材の鉄が使用されることがある。他方、金型固定盤6としては、シール用刃型を固定するチェスや、箔押し用版及びエンボス加工に用いられるエンボス用版を固定する熱盤が使用される。金型固定盤6は、印刷用金型固定具1のマグネット3を磁着させるために磁性材料で形成されるが、印刷用金型5を固定する金型固定盤6の表面を非磁性材料で形成し、金型固定盤6の内部に磁性材料を埋設するような構造とすることも可能である。
次に、本実施形態における印刷用金型固定具1の使用方法について説明する。図1及び図3に示すように、本実施形態における印刷用金型固定具1は、従来より用いられている印刷用金型5に加工等を施すことなく、そのまま用いることができ、印刷用金型5の外縁部の任意の位置で印刷用金型固定具1を係合させて固定させることができる。図1には、印刷用金型固定具1が、印刷用金型5の各辺に1つずつ配置されているところが示されているが、印刷用金型5の対向する2つの辺のみに、印刷用金型固定具1を配置させて固定することも可能である。また、印刷用金型5の各辺に2つ以上の印刷用金型固定具1を配置させても良い。さらに、印刷用金型5の各辺の中央部から偏位した位置に印刷用金型固定具1を配置させても良いし、印刷用金型5の形状によっては、その角部に印刷用金型固定具1を配置させても良い。
図1及び図3に示すように、本実施形態に係る印刷用金型固定具1を使用する際には、印刷用金型5を金型固定盤6上に載置した後、印刷用金型固定具1を印刷用金型5の各辺に配置し、印刷用金型固定具1のマグネット3を金型固定盤6上に磁着させると共に、係止部20を印刷用金型の外縁部に係合させる。金型固定盤6上の印刷用金型5は、印刷用金型固定具1の係止部20により金型固定盤6表面方向に押さえられて固定される。印刷用金型5を金型固定盤6に固定する際に、印刷用金型固定具1に備えられた位置合わせガイド24を金型固定盤6上の中心線及び印刷用金型5の中心線に合わせて印刷用金型5を固定することにより、印刷用金型5の位置合わせを簡単に行うことができる。
金型固定盤6上に固定された印刷用金型5を取り外す際には、印刷用金型固定具1のマグネット3と金型固定盤6との磁着を解消すること、即ち、金型固定盤6から印刷用金型固定具1を指でつまんで持ち上げる等により取り外すことができる。金型固定盤6から印刷用金型固定具1を取り外す際には、印刷用金型固定具1の自由端部21に指先を引掛けてマグネット3を金型固定盤6から持ち上げること、又は、自由端部21の表面を指で金型固定盤6方向に押してマグネット3を金型固定盤6から持ち上げること等により、金型固定盤6上に固定された印刷用金型固定具1を簡単に取り外すことができる。
次に、図4及び図5を参照しつつ本発明の第2の実施形態に係る印刷用金型固定具100について説明する。
図4及び図5に示すように、本実施形態に係る印刷用金型固定具100は、薄板を断面略U字状に折曲して形成された板ばね部材102と、板ばね部材102に固着されたマグネット103とから主として構成されている。板ばね部材102は、第1の面102aと、第2の面102bと、第1の面102a及び第2の面102bを連結し、略U字状の折曲断面を有する折曲部102cとを有しており、マグネット103はこの第2の面102b上に固着されている。板ばね部材102の第1の面102aには、折曲部102cとは反対側の端部に、第1の面102aと同一平面上に延出する係止部120が設けられている。さらに、第1の面102aには、板ばね部材102の折曲方向と直交する長手方向の両端部に、第2の面102bと同一平面上に延出する自由端部121が夫々設けられている。本実施形態においては、印刷用金型固定具100は全体として、板ばね部材102の折曲方向と直交する方向、すなわち長手方向を2等分する線に対して、線対称に形成されている。
図4及び図5を参照しつつ、印刷用金型固定具100の板ばね部材102についてより詳細に説明する。この板ばね部材102は、所定の形状に形成された薄板を断面略U字状に折曲して形成されている。薄板を折曲げることにより、第1の面102aと第2の面102bが形成され、第1の面102aと第2の面102bとの間には、これらを連結する断面略U字状の折曲部102cが形成される。このように形成された第1の面102a、折曲部102c及び第2の面102bにより、板ばね部材102、具体的には、後述する板ばね部材102の係止部120が印刷用金型105の外縁部を押圧する弾性力が生じる。本実施形態においては、第1の面102aと第2の面102bとの間の距離が、折曲部102c側よりも、折曲部102cとは反対側の端部側の方が狭くなるように折曲されており、第1の面102aに備えられた係止部120が印刷用金型105の外縁部を押圧して固定する際に、第1の面102aが第2の面102bと略平行となるように調整されている。
次に、図4及び図5を参照しつつ、板ばね部材102に設けられている係止部120について説明する。本実施形態において、板ばね部材102の第1の面102aには、折曲部102cとは反対側の端部に、第1の面102aと同一平面上に矩形状に延出する係止部120が2箇所設けられている。係止部120は、印刷用金型105の外縁部と係合して外縁部を押圧し、印刷用金型105を金型固定盤106に係止できるように設計されている。本実施形態では、係止部120は矩形形状の係止片からなり、板ばね部材102の長手方向の中央部分からやや離れた部分に1つ、板ばね部材102の折曲方向と直交する長手方向を2等分する線に対して線対称の位置にもう1つ設けられている。このように、長手方向を2等分する線に対して線対称に複数の係止部120を設けることにより、印刷用金型105の外縁部を確実に押圧して固定することができ、印刷用金型105の厚みにムラがあるような場合においても、複数の係合部120で印刷用金型5を押圧することができるため、安定して印刷用金型105を金型固定盤106に固定することができる。さらに、本実施形態のように、長手方向の中央部分に係止部120を設けないことにより、印刷用金型105に備えられた中央位置ガイド(センタートンボ)を確認しながら印刷用金型の位置合わせをすることができる。
図5に示すように、印刷用金型固定具100の係止部120は、印刷用金型105の外縁部と係合し、外縁部を金型固定盤106方向に押圧して固定する。係止部120の高さ位置は、板ばね部材102の折曲角度及び板ばね部材102に固着されているマグネット103の厚みにより調整される。具体的には係止部120が印刷用金型105の外縁部と係合して押圧できるように、印刷用金型105の厚みの長さよりも、印刷用金型固定具100の底部から係止部120までの高さの長さの方が若干低くなるように調整されている。
次に、図4を参照しつつ、板ばね部材102に設けられている自由端部121について説明する。本発明の印刷用金型固定具100に備えられているマグネット103は、印刷用金型105を確実に金型固定盤106に固定するために、吸着力の強い磁石が使用されている。それゆえ、印刷用金型105を金型固定盤106に固定した印刷用金型固定具100を容易に取り外しできるように自由端部121が設けられている。本実施形態においては、自由端部121は、板ばね部材102の折曲方向と直交する方向の第2の面102bの両端部に形成されており、夫々第2の面102bと同一平面上に羽根のように延出する矩形状の薄板片から構成されている。このように、自由端部121が板ばね部材102の第2の面102bと同一平面に設けられることにより、自由端部121に指先を引っ掛けて印刷用金型固定具100を取り外すことができる。また、自由端部121が第1の面102aよりも低い位置の第2の面102bと同一平面に設けられるため、自由端部121が印刷用金型105の打ち抜き刃150や箔押版と干渉するおそれがなくなり、自由端部121の長さをより長く設計することも可能である。それゆえ、自由端部121の長さを長く設計することにより、梃子の原理において力点となる指を引っ掛ける自由端部121と、梃子の原理において支点となるマグネット103の端部との距離を稼ぐことができるため、印刷用金型固定具100を金型固定盤106から少ない力で取り外すことができる。また、その際には、自由端部121の表面を指で金型固定盤106の方向に押すことによっても、印刷用金型固定具100を金型固定盤106から少ない力で取り外すことができる。
次に、印刷用金型固定具100を構成するマグネット103について説明する。図4及び図5に示すように、マグネット103は、板ばね部材102の第2の面102bに固着されており、このマグネット103の磁力によって印刷用金型固定具100を金型固定盤106に磁着させ、印刷用金型105を固定する。本実施形態における印刷用金型固定具100は、第2の面102b上に矩形形状のマグネット103が接着剤により固着されている。マグネット103は、印刷用金型105を金型固定盤106上に確実に固定できる特性を有するものが選択され、具体的には、サマリウムコバルト磁石やネオジム磁石等の希土類磁石又はアルニコ磁石等の吸着力の強い磁石が用いられる。また、マグネット103の大きさとしては、印刷用金型105を金型固定盤106上に安定して固定できるだけの磁着力を有する程度の大きさが選択される。さらに、本実施形態のマグネット103の底部には、マグネット103が金型固定盤106に当接することにより受ける衝撃を吸収するための衝撃吸収材130が配置されている。衝撃吸収材130としては、具体的には、厚紙や樹脂の薄片、樹脂フィルム、シリコンシート等が用いられる。これにより、マグネット103にかかる衝撃を防ぐことができ、マグネット103の破損を防ぐことができる。
また、図4及び図5に示すように、本実施形態の板ばね部材102の第2の面102bには、マグネット103のほか、折曲部102c側に沿って非磁性体104が固着されている。板ばね部材102の第2の面102bの係止部120とは異なる側に非磁性体104を配置させることにより、印刷用金型105を確実に固定するための係止部120側の高い磁着力は維持しつつ、金型固定盤106と磁着する面の磁着力を全体的に弱めることができる。それゆえ、希土類磁石等の磁力の強いマグネットを用いた場合においても、簡単に印刷用金型固定具100を取り外すことができる。非磁性体104としては、特に限定されないが、アルミニウム等の非磁性金属や、樹脂等が用いられる。また、非磁性体104は、本実施形態においては、板ばね部材102の折曲部102cに沿って配置されているが、第2の面102bの折曲部102cに対する側面に沿って配置されていてもよい。
なお、印刷用金型固定具100の構成に関するその他の説明は、上述した第1の実施形態の場合と同様であり、その作用効果も同様である。
次に、本実施形態における印刷用金型の使用方法について説明する。本実施形態における印刷用金型固定具100は、従来から用いられている印刷用金型105に加工等を施すことなく、そのまま用いることができ、印刷用金型105の外縁部の任意の位置で印刷用金型固定具100を係合させて固定させることができる。
本実施形態に係る印刷用金型固定具100を使用する際には、印刷用金型105を金型固定盤106上に載置した後、印刷用金型固定具100を印刷用金型105の各辺に配置し、印刷用金型固定具100のマグネット103を金型固定盤106上に磁着させると共に、係止部120を印刷用金型の外縁部に係合させる。金型固定盤106上の印刷用金型105は、印刷用金型固定具100の係止部120により金型固定盤106表面方向に押さえられて固定される。
金型固定盤106上に固定された印刷用金型105を取り外す際には、印刷用金型固定具100のマグネット103と金型固定盤106との磁着を解消すること、即ち、金型固定盤106から印刷用金型固定具100を指でつまんで持ち上げる等により取り外すことができる。金型固定盤106から印刷用金型固定具100を取り外す際には、印刷用金型固定具100の自由端部121に指先を引掛けて、マグネット103を金型固定盤106から持ち上げること、又は、自由端部121の表面を指で金型固定盤106方向に押してマグネット103を金型固定盤106から持ち上げること等により、金型固定盤106上に固定された印刷用金型固定具100を簡単に取り外すことができる。
さらに、本実施形態に係る印刷用金型固定具の使用方法及び取り扱い方法に係るその他の説明は、上述した第1の実施形態と同様であり、その作用効果も同様である。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。