本発明は、組み換え型リソソームスルファターゼ酵素の大規模な製造に対する必要性と、リソソームの標的化に有効であり、したがって、治療的に有効である、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素生成物の要件とを両立する、方法の発見に関する。
リソソーム酵素調製物の治療効果は、その調製時のマンノース−6−リン酸のレベルに依存する。リン酸を、小胞体および初期ゴルジにおいて、翻訳後修飾により標的糖タンパク質に付加する。折りたたまれたリソソーム酵素は、オリゴ糖修飾酵素によって認識される、固有の三次決定基を示す。決定基は、1組の特異的に間隔を空けられたリジンから構成され、一次配列の相同性が存在しないにも関わらず、ほとんどのリソソーム酵素上で見出される。修飾酵素であるUDP−GlcNAcホスホトランスフェラーゼは、タンパク質決定基に結合し、GlcNAc−1−リン酸を、結合部位に近位のオリゴ糖上の末端マンノース残基の6位に、付加し、第2の酵素であるリン酸ジエステルα−GlcNAcaseは、次に、GlcNAc−リン酸結合を切断し、マンノース−6−リン酸末端オリゴ糖をもたらす(Canfieldら、米国特許第6,537,785号)。マンノース−6−リン酸修飾の目的は、リソソーム酵素を、細胞内で、分泌経路からリソソーム経路へ方向転換することである。マンノース−6−リン酸を有する酵素は、トランスゴルジにおいてMPRによって結合され、細胞表面ではなくリソソームに配送される。
リソソーム酵素のオリゴ糖上のマンノース−6−リン酸マーカーの存在に加えて、酵素のリソソーム配送は、トランスゴルジ層板の末端から発生する輸送エンドソームの酸性化に依存する。拡散性塩基性分子を有するこれらのエンドソーム内での酸性環境の化学消失は、細胞外環境への、リソソーム酵素を含む小胞内容物の噴き出しをもたらす(Braulke et al.,Eur.J.Cell Biol.43(3):316−321,1987)。酸性化は、エンドソームの膜内に埋め込まれた、特異的な液胞ATPaseを必要とする(Nishi et al.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.3(2):94−103,2002)。 このATPaseの不足は、リソソーム配送を犠牲にして、リソソーム酵素の分泌を強化することが予想される。液胞ATPaseに欠陥を有する細胞株の製造は、細胞内リソソーム区分へのリン酸化された組み換え酵素の非生産的な転換を防止することが予想されるであろう。
1984年、エンドソーム酸性化に特異的に欠損があるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞変異体が、生成され、特徴付けられた(Park et al.,Somat.Cell Mol.Genet.17(2):137−150,1991)。CHO−K1細胞は、化学的に変異誘発され、毒素の存在下において、高温での生存のために選択された。これらの毒素は、それらの致死性の完全な発現に、エンドソームの酸性化を必要とする(Marnell et al.,J.Cell.Biol.99(6):1907−1916,1984)。先の研究において、異なる作用機構を有する2つの毒素のカクテルが、毒素特異的抵抗性の選択を回避するために選ばれた。原理は、1つの特定の毒素に対する抵抗性をもたらす偶発性変異の可能性はわずかであるが、2つの全く異なる毒素に特異的な2つの同時の偶発性変異の可能性は存在しないということである。選択は、温度感受性の変異を可能にするために、高温で行った。この遺伝子スクリーニングにより、2つの変異体をもたらし、そのうち1つは、G.7.1(G71)と示され、高温において毒素に対して抵抗性であった。G71における傷害は、2つの毒素の取り込みまたは作用機構によるものではなく、クローンが、高温でエンドソームを酸性化することができないことからもたらされた。この能力の欠如はまた、より少ない程度ではあったが、許容温度(34℃)においても明らかであった。G71細胞はまた、培地からのトランスフェリンの正常な取り込みにもかかわらず、高温において、鉄に対して栄養要求性であることが見出された(Timchak et al.,J.Biol.Chem.261(30):14154−14159,1986)。鉄は、低pHにおいてのみ、トランスフェリンから放出されるため、正常なトランスフェリンの取り込みにもかかわらず、鉄に対する栄養要求性は、エンドソーム酸性化の不足を示した。別の研究は、酸性化の欠陥は、リソソームではなく、主にエンドソームにおいて現れたことを示した(Stone et al.,J.Biol.Chem.262(20):9883−9886,1987)。G71に対するデータは、変異が、エンドソーム酸性化の原因となる液胞ATPaseの不安定化をもたらしたという結論と一致していた。不安定化は、高温(39.5℃)で最も明らかであったが、より低い温度(34℃)でさえも部分的に現れた。G71細胞における2つの内因性リソソーム酵素、カテプシンDおよびα−グルコシダーゼの輸送の研究(Park et al.,Somat.Cell Mol.Genet.17(2):137−150,1991)は、いずれの酵素も、高温で定量的に分泌され、酵素のグリコシル化は、影響を受けなかったことを示した。リン酸化された酸性α−グルコシダーゼの分泌は、非許容温度において、有意に強化された。
リソソームスルファターゼ酵素調製物の治療的効果は、マンノース−6−リン酸のレベルに依存するだけでなく、その調製時の活性酵素の存在にもまた依存する。全ての既知のスルファターゼは、それらの触媒部位にシステイン残基を有し、このシステイン残基は、酵素を活性化させるために、Cα−ホルミルグリシン(FGly)に翻訳後修飾される。スルファターゼ修飾因子1(SUMF1)によって触媒される、このシステインからFGlyへの翻訳後の酵素活性化は、スルファターゼをリソソームに標的化する前に、翻訳直後に、折りたたまれていないスルファターゼ上で小胞体内において生じる(Dierks et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11963−11968,1997)。この固有の翻訳後修飾の重要性は、リソソームスルファターゼ酵素における障害FGly形成をもたらす、SUMF1における変異が、ヒトにおいて多発性スルファターゼ欠損症(MSD)を引き起こすという事実によって、強調される(Diez−Ruiz et al.,Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.6:355−379,2005)。
したがって、エンドソーム酸性化が欠損している変異体CHO細胞であるG71細胞の、組み換え型ヒトスルファターゼ修飾酵素(SUMF1)およびヒトリソソームスルファターゼ酵素を共発現する能力は、このようなリソソームスルファターゼ酵素の欠損によって引き起こされるか、またはそれと関連するリソソーム蓄積障害の管理に有用な、高度にリン酸化された活性な組み換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素の大規模な生成のための機構を提供する。
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書に使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって広く理解されるものと同じ意味を有する。以下の参照は、当業者に、本発明に使用される多数の用語の一般的な定義を提供する。Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(2d ed.1994)、THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed.,1988)、THE GLOSSARY OF GENETICS,5TH ED.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991)、およびHale & Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。
本明細書に引用される、それぞれの出版物、特許出願、特許、および他の参照は、本開示と矛盾しない範囲で、その全体が参照により組み込まれる。
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される際、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容によってそうでない旨を明確に示さない限り、複数形への参照を含むことに留意されたい。
本明細書に使用される際、以下の用語は、別段の指定がない限り、それらに与えられた意味を有する。
「対立遺伝子改変体」は、同じ遺伝子座を占める遺伝子の2つ以上の多型形態を指す。対立遺伝子改変体は、変異を通じて自然に発生し、集団内に、表現型多型をもたらす場合がある。遺伝子変異は、サイレント(すなわち、コードされたポリペプチドに変化がない)であってもよく、または変化されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしてもよい。「対立遺伝子改変体」はまた、遺伝子対立改変体のmRNA転写産物に由来するcDNA、ならびにそれらによってコードされたタンパク質を指す。
「増幅」とは、例えば、逆転写、ポリメラーゼ連鎖反応、およびリガーゼ連鎖反応によって、ポリヌクレオチド配列を複写し、それによってより多くのポリヌクレオチド分子に拡大する、任意の手段を指す。
配列が第1の配列であるポリヌクレオチドが、配列が第2の配列であるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする場合、第1の配列は、第2の配列に対して「アンチセンス配列」である。
「cDNA」は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態で、mRNAに対して相補的または同一である、DNAを指す。
従来の表記が、ポリヌクレオチド配列を記述するために本明細書に使用される:一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は、5’方向と称する。新生RNA転写産物に対するヌクレオチドの5’から3’への付加方向は、転写方向と称される。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」と称され、そのDNAから転写されたmRNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列であり、RNA転写物の5’末端に対して5’に位置するものは、「上流配列」と称され、RNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列であり、コードRNA転写物の3’末端に対して3’であるものは、「下流配列」と称される。
「相補的」とは、2つのポリヌクレオチドの相互作用表面の位相的な適合性または互いに合致することを指す。したがって、2つの分子は、相補的として記載することができ、さらに、接触表面の特徴は、互いに相補的である。第1のポリヌクレオチドは、第1のヌクレオチドのヌクレオチド配列が、第2のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド結合パートナーのヌクレオチド配列と同一である場合、第2のポリヌクレオチドに対して相補的である。したがって、配列が5’−TATAC−3’であるポリヌクレオチドは、配列が5’−GTATA−3’であるポリヌクレオチドに相補的である。ヌクレオチド配列は、対象ヌクレオチド配列に対して相補的な配列が、基準ヌクレオチド配列と実質的に同一である場合、基準ヌクレオチド配列に対して「実質的に相補的」である。
「保存的置換」とは、アミノ酸のポリペプチドにおける、機能的に類似のアミノ酸での置換を指す。以下の6つの群は、それぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、リジン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
ポリペプチドを参照して使用される際、用語「断片」は、タンパク質のN末端もしくはC末端のいずれか、または両方におけるトランケーションのため、および/あるいは、タンパク質の内部の部分または領域の欠失によって、全長ポリペプチドよりも短いポリペプチドを指す。ポリペプチドの断片は、当該技術分野で既知の方法によって生成することができる。
ポリペプチドを参照して使用される際、用語「変異体」は、タンパク質の1つ以上のアミノ酸が、異なるアミノ酸で置換されているポリペプチドを指す。アミノ酸置換は、上で定義されたように、保存的置換であってもよく、または非保存的置換であってもよい。変異体ポリペプチドは、当該技術分野で既知の方法によって生成することができる。
ポリペプチドを参照して使用される際、用語「誘導体」は、例えば、限定されるものではないが、ユビキチン化、標識化(例えば、放射性核種もしくは種々の酵素を用いて)、ペグ化等の共有ポリマー結合(すなわち、ポリエチレングリコールでの誘導体化)、およびオルニチン等のアミノ酸の化学合成による挿入または置換等の技術によって、化学的に修飾されたポリペプチドを指し、それらは、通常、ヒトのタンパク質に生じない。誘導体ポリペプチドは、当該技術分野で既知の方法によって生成することができる。
細胞株を参照して使用される際、用語「誘導体」は、親細胞株の子孫である細胞株を指し、例えば、この用語には、親細胞から継代またはサブクローニングされていて所望の特性を保持する細胞、所望の特性の保持のために変異および選択された親細胞株の子孫、ならびに異なる発現ベクターまたは異なる外的に付加された核酸を含むように変化させられた親細胞株の子孫が含まれる。
「検出」とは、試料中の検体の存在、非存在、または量を判定することを指し、試料中または試料中の細胞当たりの検体の量を定量化することが含まれる。
「検出可能部分」または「標識」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的方法によって、検出可能である組成物を指す。例えば、有用な標識には、32P、35S、蛍光染料、高電子密度試薬(例えば、ELISAで広く使用される)、ビオチン−ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、ハプテン、および抗血清もしくはモノクローナル抗体が利用可能であるタンパク質、または標的に対して相補的な配列を有する核酸分子が挙げられる。検出可能部分は、しばしば、試料中の検出可能部分の量を定量するために使用可能である、放射性、発色性、または蛍光性のシグナル等、測定可能なシグナルを生成する。検出可能部分は、共有結合、またはイオン性のファンデルワールスもしくは水素結合を通じてのいずれかで、例えば、ストレプトアビジンによって認識される、放射性ヌクレオチドまたはビオチニル化ヌクレオチドの組み込みを通じて、プライマーまたはプローブに、組み込まれるか、または結合されてもよい。検出可能部分は、直接的または間接的に検出可能であってもよい。間接的検出は、第2の直接的または間接的検出可能部分を、検出可能部分に結合することを伴ってもよい。例えば、検出可能部分は、例えば、ストレプトアビジンに対する結合パートナーであるビオチン、または相補的配列に対する結合パートナーであり、特異的にハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列等の、結合パートナーのリガンドであってもよい。結合パートナーは、それ自体が、直接的に検出可能であってもよく、例えば、抗体は、それ自体が蛍光分子で標識化されてもよい。結合パートナーはまた、間接的に検出可能であってもよく、例えば、相補的なヌクレオチド配列を有する核酸は、他の標識化された核酸分子でのハイブリダイゼーションを通じて次に検出可能な分枝DNAの一部であってもよい。(例えば、Fahrlander et al.,Bio/Technology 6:1165,1988を参照されたい)。シグナルの定量化は、例えば、シンチレーション計数、デンシトメトリー、またはフローサイトメトリーによって達成される。
「診断」は、病的状態の存在または性質を特定することを意味する。診断方法は、それらの特異性および選択性が異なる。特定の診断方法は、症状の決定的な診断を提供しない場合があるが、その方法が、診断に役立つ明確な指示を提供する場合、十分である。
用語「有効量」は、対象の健康状態、病状、および疾患に所望の結果をもたらすために、または診断目的のために、十分な投与量を意味する。所望の結果は、投与量の受容者における主観的または客観的な改善を含んでもよい。「治療有効量」は、健康に対して意図される有益な効果をもたらすために効果的な薬剤の量を指す。
「コードする」とは、ヌクレオチドの定義された配列(すならち、rRNA、tRNA、およびmRNA)またはアミノ酸の定義された配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおける、他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型として機能する、遺伝子、cDNA、またはmRNA等のポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特異的配列の特有の特性、ならびにそこから得られる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子は、転写およびその遺伝子によって生成されたmRNAの翻訳が、細胞または他の生物学的システムにおいてタンパク質を生成する場合、タンパク質をコードする。コード鎖、すなわちmRNAと同一であり、通常、配列表内に提供される核酸配列、および転写の鋳型として使用される、遺伝子またはcDNAの非コード鎖のいずれも、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の生成物をコードすると称することができる。別段の指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮退型であり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含んでもよい。
「等量用量」とは、同じ量の活性剤を含有する、用量を指す。
「発現制御配列」とは、そこに動作的に結合されるヌクレオチド配列の発現(転写および/または翻訳)を調節する、ポリヌクレオチド内のヌクレオチド配列を指す。「動作的に結合された」とは、1つの部分の活性(例えば、転写を調節する能力)が、もう1つの部分(例えば、配列の転写)に対する作用をもたらす、2つの部分間の機能的な関係を指す。発現制御配列には、例えば、限定されるものではないが、プロモーター(例えば、誘発性または構造性)、エンハンサー、転写ターミネータ、開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、および終止コドンの配列が含まれる。
「発現ベクター」とは、発現されるヌクレオチド配列に動作的に結合される発現制御配列を含む、組み換え型ポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用エレメントを含み、発現のための他の要素は、宿主細胞またはインビトロ発現システムから提供されてもよい。発現ベクターは、コスミド、プラスミド(例えば、むき出し、またはリポソームに含まれる)、および組み換え型ポリヌクレオチドを組み込むウイルス等、当該技術分野で既知のもの全てを含む。
「高度にリン酸化された」、「高レベルのリン酸化」、および「高レベルのリン酸化されたオリゴ糖」は、リソソームスルファターゼ酵素の少なくとも50%が、リン酸化されたオリゴ糖を通じて、陽イオン非依存性のマンノース−6−リン酸に結合する、リソソームスルファターゼ酵素の調製物を指す。結合は、マンノース−6−リン酸との競合に対する感受性によって、さらに特徴付けられる。高度にリン酸化されたリソソームスルファターゼ酵素はまた、タンパク質鎖当たり、少なくとも0.25、好ましくは少なくとも0.5、およびより好ましくは少なくとも0.75のビスリン酸化されたオリゴマンノース鎖を有する、リソソームスルファターゼ酵素を指す。あるいは、高度にリン酸化されたリソソームスルファターゼ酵素(GALNS)は、線維芽細胞内の、特異的取り込みであるK取り込み(最大取り込み値の半分を生成する酵素/リガンドの濃度)が、約0.1〜10nM、もしくは約0.1〜7nM、もしくは約0.5〜5nM、もしくは約1〜5nM、もしくは約1〜3.5nM、約1nM、約1.5nM、約2nM、約2.5nM、約3nM、もしくは約3.5nM、またはこれらの数のいずれかの任意の組み合わせである、酵素を指す。
本明細書に使用される際、「ビスリン酸化されたオリゴマンノース鎖」は、リソソームスルファターゼ酵素内のアスパラギン残基にN結合され、2つのマンノース−6−リン酸残基を含む、マンノース含有オリゴ糖鎖を指す。典型的に、ビスリン酸化されたオリゴマンノース鎖は、7つのマンノース残基を有し、すなわち、ビスリン酸マンノース7(BPM7)であり、2つのGlcNAc残基に結合し、それが、次にリソソームスルファターゼ酵素内のアスパラギン酸残基に結合される。
「活性な」、「活性化された」、「高レベルの活性化」とは、タンパク質の活性部位のシステイン残基の、少なくとも50%、55%、60%、65%、好ましくは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%が、Cα−ホルミルグリシン(FGly)へ翻訳後修飾されている、リソソームスルファターゼ酵素の調製物を指す。あるいは、「活性な」、「活性化された」、「高レベルの活性化」は、組み換え型ヒトSUMF1を発現しない宿主細胞(例えば、CHO細胞、またはCHO由来細胞)において生成されている同じアミノ酸配列の対照リソソームスルファターゼ酵素の比活性よりも、少なくとも約30%(例えば、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、または50倍)大きな比活性を示す、リソソームスルファターゼ酵素の調製物を指す。リソソームスルファターゼ酵素の好適な対照調製物は、好ましくは、高度に活性な製剤と同じアミノ酸配列を有し、宿主細胞が、組み換え型ヒトSUMF1を発現しないことを除き、同じ宿主細胞中に、同じプロモーターまたは調節配列(複数を含む)を使用して、同じ遺伝子によって発現され、同じ培養期間を含む同じまたは類似の培養条件下で生成され、任意で、高度に活性な調製物と、同じまたは類似の程度に精製される。
「高度にリン酸化された活性な」とは、タンパク質の活性部位のシステイン残基の、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、およびさらにより好ましくは少なくとも95%が、Cα−ホルミルグリシン(FGly)へ翻訳後修飾されており、タンパク質鎖当たり、少なくとも0.25、好ましくは少なくとも0.5、およびより好ましくは少なくとも0.75のビスリン酸化されたオリゴマンノース鎖を有する、リソソームスルファターゼ酵素の調製物を指す。
用語「生物学的に活性な」とは、全長ポリペプチドの1つ以上の生物学的活性のうち、少なくとも実質的な量(例えば、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約70%、およびより好ましくは少なくとも約90%)を保持する、そのポリペプチド(すなわち、酵素)断片、変異体、改変体、または誘導体を指す。リソソームスルファターゼ酵素を参照して使用される際、その生物学的に活性な断片、変異体、改変体、または誘導体は、少なくとも実質的な量のスルファターゼ活性(すなわち、その標的物質からの硫酸エステルの切断)を保持する。スルファターゼ修飾因子1(SUMF1)を参照して使用される際、その生物学的に活性な断片、変異体、改変体、または誘導体は、少なくとも実質的な量のホルミルグリシン生成活性(すなわち、リソソームスルファターゼ酵素の活性部位のシステイン残基のCα−ホルミルグリシン(FGly)への修飾)を保持する。
ポリペプチドを参照して使用される際、用語「純度」または「純粋」は、特定の方法を使用して検出可能な任意の混入物質と比較して分析される、ポリペプチドの量を指す。本発明の組み換え型リソソームスルファターゼ酵素については、「純度」は、スルファターゼ酵素調製物を、還元条件下、または非還元条件下でSDS−PAGEに続くクマシーブルーもしくは銀での染色による電気泳動分離に供することによって、またはHPLC(例えば、C4逆相(RP)、C3RP)によるクロマトグラフ分離によって、あるいは、例えばサイズ排除(SEC)等の任意の他のクロマトグラフ分離によって、判定することができる。これらの方法の任意の1つを使用して、本発明の精製された組み換え型リソソームスルファターゼ酵素は、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、およびさらにより好ましくは少なくとも約97%、98%、または99%の純度を有する。
用語「前駆体」または「前駆体形態」とは、哺乳動物細胞から分泌される、組み換え型リソソームスルファターゼ酵素の形態を指し、すなわち、シグナル配列が不足しているが、ある修飾、例えば、通常リソソーム内で生じるタンパク質の内部切断が不足している。用語「成熟した」、「成熟形態」、「プロセッシングされた」、または「プロセッシング形態」とは、通常リソソーム内に存在する、組み換え型リソソームスルファターゼ酵素の形態を指す。本発明の組み換え型リソソームスルファターゼ酵素については、「前駆体」または「前駆体形態」および「成熟した」、「成熟形態」、「プロセッシングされた」、または「プロセッシング形態」の相対存在度は、スルファターゼ酵素調製物を、還元条件下でSDS−PAGEに続くクマシーブルーもしくは銀での染色による電気泳動分離に供することによって、またはHPLC(例えば、C4逆相(RP)、C3RP)によるクロマトグラフ分離によって、または例えばサイズ排除(SEC)等の任意の他のクロマトグラフ分離によって、あるいは、電気泳動分離とクロマトグラフ分離の組み合わせ、例えば、SDS−PAGEに続いてキャピラリーゲル電気泳動(SDS−CGE)によって、判定することができる。これらの方法を使用して、本発明の精製されたリソソームスルファターゼ酵素は、少なくとも約65%、70%、または75%、好ましくは少なくとも約80%または85%、より好ましくは少なくとも約90%、およびさらにより好ましくは少なくとも約95%、97%、98%、98.5%、99%、または99.5%の「前駆体」または「前駆体形態」から構成される。あるいは、これらの方法を使用して、本発明の精製された組み換え型リソソームスルファターゼ酵素は、約35%未満、30%未満、または25%未満、好ましくは約20%未満または15%未満、より好ましくは約10%未満、およびさらにより好ましくは約5%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、または0.5%未満の「成熟した」、「成熟形態」、「プロセッシングされた」、または「プロセッシング形態」から構成される。幾つかの実施形態において、「前駆体」または「前駆体形態」のみが検出される(すなわち、スルファターゼ酵素調製物が、還元条件下でSDS−PAGEに供されるとき、もしくはSDS−CGEによって判定される場合に単一の検出可能バンドから、またはHPLCによって分析される場合の単一ピークから本質的に構成される)。
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列との関連において、用語「同一」または「同一性」パーセントとは、下記の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、または目視検査によって測定すると、最大の一致のために比較し、並べた場合に、同じであるか、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の特定の割合を有する、2つ以上の配列またはサブ配列を指す。
「リンカー」とは、共有結合で、またはイオン性のファンデルワールスもしくは水素結合を通じてのいずれかで、2つの他の分子を接合する分子を指し、例えば、5’末端で1つの相補的配列とハイブリダイズし、3’末端で別の相補的配列とハイブリダイズし、したがって、2つの非相補的配列を接合する、核酸分子である。
「低レベルのリン酸化」または「低いリン酸化」とは、線維芽細胞内への取り込みが、10nMを超える最大半濃度を有するか、またはマンノース−6−リン酸受容体カラムに結合するリソソームスルファターゼ酵素の画分が、約25%未満である、リソソームスルファターゼ酵素の調製物を指す。
対象に適用される際、「天然に存在する」とは、その対象が、自然界に見られるという事実を指す。例えば、自然の源から単離することができ、研究室で人間によって故意に修飾されていない有機体(ウイルスを含む)内に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在している。
「薬学的組成物」とは、ヒトおよび哺乳動物を含む、対象動物における薬学的使用に好適な組成物を指す。薬学的組成物は、治療的リソソームスルファターゼ酵素の薬理学的有効量を含み、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤もまた含む。薬学的組成物は、活性成分(複数を含む)、および担体、希釈剤、または賦形剤を構成する不活性成分(複数を含む)、ならびに任意の2つ以上の成分の組み合わせ、錯体、もしくは凝集から、または1つ以上の成分の解離から、あるいは1つ以上の成分の他の種類の反応または相互作用から、直接的または間接的にもたらされる、いずれの生成物をも含む、組成物を包含する。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明のリソソームスルファターゼ酵素を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、混合することによって作製される、いずれの組成物をも包含する。
「薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤」とは、あらゆる標準的な薬学的担体、希釈剤、緩衝剤、および賦形剤、例えば、限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロースの5%水溶液、およびエマルジョン、例えば、油/水、または水/油エマルジョン、ならびに様々な種類の湿潤剤および/またはアジュバントを指す。好適な薬学的担体、希釈剤、または賦形剤、および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Ed.(Mack Publishing Co.,Easton,1995)に記載される。好ましい薬学的担体、希釈剤、または賦形剤は、活性剤の投与の意図される形態に依存する。典型的な投与の形態には、例えば、限定されるものではないが、腸内(例えば、経口)または非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、もしくは腹腔内)投与、あるいは、局所、経皮、または経粘膜投与が挙げられる。
「薬学的に許容される塩」は、薬学的使用のために、リソソームスルファターゼ酵素内に製剤化することができる、例えば、金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)およびアンモニアまたは有機アミンの塩を含む、塩である。
「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチド単位から構成されるポリマーを指す。ポリヌクレオチドには、デオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)等の天然に存在する核酸、ならびに核酸類似体が含まれる。核酸類似体は、天然に存在しない塩基を含むもの、天然に存在するリン酸ジエステル結合以外の他のヌクレオチドとの結合で会合するヌクレオチド、またはリン酸ジエステル結合以外の結合を通じて結合される塩基を含むもの、が挙げられる。したがって、ヌクレオチド類似体には、例えば、限定されるものではないが、ホスホロチオエート、ジチオリン酸、ホスホロトリエステル、ホスホロアミド酸、ボラノリン酸、メチルホスホン酸、キラルメチルホスホン酸、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)等が挙げられる。このようなポリヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成装置を使用して、合成することができる。用語「核酸」は、典型的に、大きなポリヌクレオチドを指す。用語「オリゴヌクレオチド」は、典型的に、概して約50ヌクレオチドを超えない、短いポリヌクレオチド、指す。ヌクレオチド配列が、DNA配列(すなわち、A、T、G、C)によって表示される場合、これには、「T」が「U」で置き換えられる、RNA配列(すなわち、A、U、G、C)もまた含まれることが理解されるであろう。
「ポリペプチド」とは、アミノ酸残基、関連する天然に存在する構造改変体、およびペプチド結合を介して結合されたその合成の天然に存在しない類似体、関連する天然に存在する構造改変体、ならびにその合成の天然に存在しない類似体から構成される、ポリマーを指す。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成装置を使用して、合成することができる。用語「タンパク質」は、典型的に、大きなポリペプチドを指す。「ペプチド」は、典型的に、短いポリペプチドを指す。従来の表記が、ポリペプチド配列を表現するために使用され、ポリペプチド配列の左手末端が、アミノ末端であり、ポリペプチド配列の右手末端が、カルボキシル末端である。
「プライマー」とは、指定のポリヌクレオチドの鋳型に特異的にハイブリダイズし、相補的なポリヌクレオチドの合成のための開始点を提供する能力のある、ポリヌクレオチドを指す。このような合成は、ポリヌクレオチドプライマーが、合成が誘発される条件下、すなわち、ヌクレオチド、相補的なポリヌクレオチド鋳型、およびDNAポリメラーゼ等、重合のための物質の存在下に置かれる場合に生じる。プライマーは、典型的に、一本鎖であるが、二本鎖であってもよい。プライマーは、典型的に、デオキシリボ核酸であるが、広い範囲の合成および天然に存在するプライマーが、多くの適用に有用である。プライマーは、鋳型に対して相補的であり、合成開始のための部位として機能するように、それとハイブリダイズするように設計されるが、鋳型の正確な配列を反映する必要はない。このような場合において、鋳型に対するプライマーの特異的なハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリージェンシーに依存する。プライマーは、例えば、発色性、放射性、または蛍光性の部分を使用して標識化し、検出可能部分として使用することができる。
ポリヌクレオチドを参照して使用される際、「プローブ」は、別のポリヌクレオチドの指定配列と特異的にハイブリダイズする能力のある、ポリヌクレオチドを指す。プローブは、標的の相補的ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするが、鋳型の正確な相補的配列を反映する必要はない。このような場合において、標的に対するプローブの特異的なハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プローブは、例えば、発色性、放射性、または蛍光性の部分を使用して標識化し、検出可能部分として使用することができる。
「予防的」治療は、疾患の兆候を示さないか、または初期の兆候のみを示す対象に、病状が発症する危険性を減少させる目的で施される治療である。本発明の化合物は、病状の発症の可能性を低減するため、または発症した場合にその病状の重症度を最小化するために、予防的治療として提供することができる。
「組み換え型ポリヌクレオチド」とは、天然には一緒に接合されない配列を有するポリヌクレオチドを指す。増幅または結集された組み換え型ポリヌクレオチドは、好適なベクター内に含むことができ、そのベクターを使用して、好適な宿主細胞を形質転換することができる。組み換え型ポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組み換え型宿主細胞」と称される。遺伝子は、次に、組み換え型宿主細胞内で発現して、例えば、「組み換え型ポリペプチド」を生成する。組み換え型ポリヌクレオチドは、非コード機能(例えば、プロモーター、複製の起源、リボソーム結合部位等)もまた同様に供給することができる。
「特異的にハイブリダイズする」、「特異的ハイブリダイゼーション」、または「選択的にハイブリダイズする」とは、その配列が、複合混合物(例えば、全細胞)のDNAまたはRNA内に存在する場合に、ストリンジェント条件下で、特定のヌクレオチド配列への選択的な核酸分子の結合、二本鎖化、またはハイブリダイズを指す。
用語「ストリンジェント条件」とは、プローブが、その標的サブ配列と選択的にハイブリダイズし、他の配列とは、より少ない程度でハイブリダイズするか、または全くハイブリダイズしない、条件を指す。サザンおよびノーザンハイブリダイゼーション等の核酸ハイブリダイゼーション実験との関連において、「ストリンジェントハイブリダイゼーション」および「ストリンジェントハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、異なる環境パラメータ下において、異なる。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な指針は、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2 “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”,Elsevier,New Yorkに見出される。一般的に、高ストリンジェントハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、既定のイオン強度およびpHにおける特定の配列に対する熱融解点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、(既定のイオン強度およびpH下で)標的配列の50%が、完全に一致するプローブとハイブリダイズする温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブに対するTmと等しくなるように選択される。
サザンまたはノーザンブロットにおけるフィルタ上での、100を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントハイブリダイゼーション条件の例は、1mgのヘパリンを有する50%ホルマリン、42℃であり、ハイブリダイゼーションは一晩中行われる。高ストリンジェント洗浄条件の例は、0.15M NaCl、72℃で約15分間である。ストリンジェント洗浄条件の例は、0.2×SSC洗浄、65℃で15分間である(SSC緩衝液の説明については、Sambrookらを参照されたい)。しばしば、背景プローブシグナルを除去するために、高ストリンジェンシー洗浄に先立って、低ストリンジェンシー洗浄が行われる。例えば、100を超えるヌクレオチドの二本鎖のための、例示的な中程度ストリンジェンシー洗浄は、1×SSC、45℃で15分間である。例えば、100を超えるヌクレオチドの二本鎖のための、例示的な低ストリンジェンシー洗浄は、4〜6×SSC、40℃で15分間である。一般的に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおける、無関係のプローブに対して観察されるものよりも2倍(またはそれ以上)のシグナル対ノイズ比は、特異的なハイブリダイゼーションの検出を示す。
診断または治療の「対象」は、ヒトまたは哺乳動物もしくは霊長類を含む非ヒト動物である。
2つの核酸またはポリペプチドとの関連において、語句「実質的に相同」または「実質的に同一」は、概して、下記の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、または目視検査によって測定すると、最大の一致のために比較し、並べた場合に、少なくとも40%、60%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する、2つ以上の配列またはサブ配列を指す。好ましくは、実質的な同一性は、長さが少なくとも約50残基である配列の領域にわたって、より好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、配列は、少なくとも約150残基にわたって実質的に同一である。最も好ましい実施形態において、配列は、比較バイオポリマーのいずれかまたは両方の全長にわたって、実質的に同一である。
配列比較のために、典型的に、1つの配列が、試験配列が比較される基準配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および基準配列は、コンピュータに入力され、必要であれば、サブ配列の座標が指定され、配列アルゴリズムパラメータが指定される。配列比較アルゴリズムは、次に、指定されたプログラムパラメータに基づいて、基準配列と比較して試験配列(複数を含む)に対するパーセント配列同一性を計算する。
比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl Math.2:482,1981の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol Biol.48:443,1970の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988の類似方法の探求によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)によって、または目視検査によって、行うことができる。
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、関係性およびパーセント配列同一性を示すために、プログレッシブ、ペアワイズアラインメントを使用して、関連する配列の群から、マルチプル配列アラインメントを作製する。それはまた、アラインメントを作製するために使用される、クラスタリング関係を示す、系図または樹状図をプロットする。PILEUPは、Feng & Doolittle,J.Mol.Evol.35:351−360,1987のプログレッシブアラインメント法の単純化を使用する。使用される方法は、Higgins & Sharp,CABIOS 5:151−153,1989によって記載される方法に類似である。このプログラムは、最大300配列まで、それぞれ最長5,000ヌクレオチドまたはアミノ酸で、並べることができる。マルチプルアラインメント手順は、2つの最も類似した配列のペアワイズアラインメントで開始し、2つの並んだ配列のクラスタを生成する。このクラスタは、続いて、次の最も関連する配列または並べられた配列のクラスタと、並べられる。配列の2つのクラスタは、2つの個別の配列のペアワイズアラインメントの単純な拡張によって、並べられる。最終的なアラインメントは、一連の、プログレッシブ、ペアワイズアライメントによって達成される。プログラムは、特定の配列および配列比較領域に対するそれらのアミノ酸またはヌクレオチド座標を指定すること、ならびにプログラムパラメータを指定することによって、実行される。例えば、基準配列を、以下のパラメータ、初期ギャップ重量(3.00)、初期ギャップ長重量(0.10)、および加重最終ギャップを使用して、他の試験配列と比較して、パーセント配列同一性の関係を判定することができる。配列のマルチプルアラインメントを生成するために有用な別のアルゴリズムは、Clustal W(Thompson et al.,Nucleic Acids Research 22:4673−4680,1994)である。
配列同一性および配列類似性パーセントを判定するために好適なアルゴリズムの別の例は、BLASTアルゴリズムであり、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410,1990に記載される。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公的に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列内で、同じ長さの文字列と並べた際に、ある正数の閾値スコアTと一致するか、またはそれを満たす、クエリ配列内の長さWの短い文字列を特定することによって、高スコアの配列ペア(HSP)を特定することを伴う。Tは、近隣文字列のスコア閾値と称される(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410,1990)。これらの初期近隣文字列のヒットは、それらを含む、より長いHSPを発見するための検索を開始するための種として機能する。文字列のヒットは、次に、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って、両方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致残基のペアに対するリワードスコア、常に>0)、およびN(不一致残基に対するペナルティスコア、常に<0)を使用して、計算される。アミノ酸配列については、スコア行列を使用して、累積スコアを計算する。各方向への文字列ヒットの拡張は、累積アラインメントスコアが、その最大達成値から数量X低下した場合、1つ以上の負のスコアの残基配列の累積のために、累積スコアがゼロ以下になった場合、またはいずれかの配列の終点に達した場合に、停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感受性および速度を判定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、文字列長さ(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を初期値として使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、文字列長さ(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア行列を初期値として使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1989を参照されたい)。
パーセント配列同一性を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的分析も行う(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787,1993を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が、偶然に起こり得る確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と基準核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合に、基準配列と類似であると考えられる。
2つの核酸配列またはポリペプチドが、実質的に同一であることのさらなる指標は、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、以下に記載されるように、第2の核酸によってコードされるポリペプチドと、免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、2つのペプチドが、保存的置換によってのみ異なる場合に、典型的に、第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が、実質的に同一であることの別の指標は、2つの分子が、本明細書に記載のように、ストリンジェント条件下で、互いにハイブリダイズすることである。
「実質的に純粋」または「単離された」とは、目的の種が、存在する優勢種である(すなわち、モル基準において、組成物中のあらゆる他の個別の巨大分子の種よりも豊富である)ことを意味し、実質的に精製された画分は、目的の種が、存在する全ての巨大分子種の少なくとも約50%(モル基準で)を構成する、組成物である。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する巨大分子種の約80%〜90%以上が、精製された目的の種であることを意味する。目的の種は、組成物が、本質的に単一の巨大分子種から構成される場合、本質的な均質性(従来の検出方法によって、混入種を組成物中に検出することができない)まで精製される。溶媒種、小分子(<500ダルトン)、安定剤(例えば、BSA)、および元素イオン種は、この定義の目的上、巨大分子とは考えない。幾つかの実施形態において、本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、実質的に純粋であるか、または単離される。幾つかの実施形態において、本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、それらの合成において使用される巨大分子の開始物質に関して、実質的に純粋であるか、または単離される。幾つかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と混合された、実施的に精製されたか、または単離された治療的リソソームスルファターゼ酵素を含む。
「治療的」治療とは、病状の兆候または症状を示す対象に、これらの兆候または症状を低減させるまたは排除する目的のために、施される治療である。兆候または症状は、生化学的、細胞性、組織学的、機能的、主観的、または客観的であってもよい。本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、治療的治療として、または診断のために提供されてもよい。
「治療指数」とは、最小治療量を超え、許容できない毒性量に満たない用量範囲(量および/または回数)を指す。
「治療」とは、予防的治療または治療的治療または診断的治療を指す。
本明細書に使用される際、用語「単位投与形態」とは、ヒトまたは動物対象の単位投与量として好適な、物理的な不連続単位を指し、各単位は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に、所望の効果をもたらすために十分な量で計算された、所定量の本発明のリソソームスルファターゼ酵素を含有する。本発明の新規な単位投与形態の詳細は、採用される特定のリソソームスルファターゼ酵素および達成される効果、ならびに宿主における各リソソームスルファターゼ酵素と関連する薬力学に依存する。
II.リソソームスルファターゼ酵素の生成
一態様において、本発明は、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素を、このような酵素の治療的使用を可能にする量で、生成する新規な方法を特徴とする。一般的に、本方法は、ヒトスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)、またはその生物学的に活性な断片、変異体、改変体、もしくは誘導体をコードするcDNA、ならびに全長リソソームスルファターゼ酵素、またはその生物学的に活性な断片、変異体、改変体、もしくは誘導体をコードするcDNAでの好適な細胞株の形質転換を特徴とする。当業者は、本明細書に明示的に記載したもの以外の発現構築物を、それを用いてトランスフェクトされた好適な細胞株における、このようなリソソームスルファターゼ酵素の最適な生成のために、調製することができる。さらに、当業者は、天然に存在する全長酵素と同じまたは類似の生物学的活性を有する、天然に存在するSUMF1またはリソソームスルファターゼ酵素の生物学的に活性な断片、改変体、変異体、もしくは誘導体をコードするcDNAの断片を、容易に設計することができる。
宿主細胞
組み換え型リソソームスルファターゼ酵素を生成するために使用される宿主細胞は、このようなリソソームスルファターゼ酵素を、その酵素を治療的に使用することができる量で生成する、それらの能力によって特徴付けられる、エンドソーム酸性化が欠損した細胞株である。本発明は、G71と示される、CHO−K1由来のEND3相補群細胞株を提供する。本発明はまた、G71Sと示される、無血清懸濁培養液における増殖に適合されているG71細胞株を提供する。本発明はまた、さらにサブクローニングされるか、または異なる発現プラスミドを含有する、G71およびG71S細胞株の誘導体を提供する。
組み換え型タンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有および発現する細胞は、本明細書において、遺伝子修飾された細胞と称される。組み換え型タンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有および発現する、哺乳動物の細胞は、遺伝子修飾された哺乳動物細胞と称される。細胞内へのDNAまたはRNAの導入は、既知のトランスフェクション法、例えば、限定されるものではないが、電気穿孔、微量注入、微粒子銃、リン酸カルシウム沈殿、修飾されたリン酸カルシウム沈殿、陽イオン脂質処置、光穿孔(photoporation)、融合手法、受容体媒介移入、またはポリブレン沈殿によるものである。あるいは、DNAまたはRNAは、ウイルスベクターでの感染によって導入されてもよい。組み換え型タンパク質をコードするDNAまたはRNAを発現する、哺乳動物細胞を含む細胞の生成方法は、同時係属中の特許出願、Richard F Selden、Douglas A.Treco、およびMichael W.Heartleinによる表題「In Vivo Protein Production and Delivery System for Gene Therapy」の米国特許第08/334,797号(1994年11月4日出願)、Richard F Selden、Douglas A.Treco、およびMichael W.Heartleinによる「In Vivo Production and Delivery of Erythropoietin or Insulinotropin for Gene Therapy」の米国特許第08/334,455号(1994年11月4日出願)、ならびにDouglas A.Treco、Michael W.Heartlein、およびRichard F Seldenによる表題「Targeted Introduction of DNA Into Primary or Secondary Cells and Their Use for Gene Therapy」の米国特許第08/231,439号(1994年4月20日出願)に記載される。これらの出願のそれぞれの教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に明確に組み込まれる。
好ましい実施形態において、組み換え型リソソームスルファターゼ酵素を生成するために使用される宿主細胞は、リソソームスルファターゼ酵素を、その酵素を治療的に使用することを可能にする量で生成するその能力によって特徴付けられる、エンドソーム酸性化が欠損した細胞株である。好ましい実施形態において、本発明は、「定義」において特定される、ヒトスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)および組み換え型リソソームスルファターゼ酵素を共発現し、したがって、高収量の高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素を生成する能力があり、それによって、治療的なリソソームスルファターゼ酵素の大規模な生成を可能にする、G71と示されるCHO−K1由来のEND3相補群細胞株、およびG71Sと示される無血清懸濁培養液における増殖に適合されたG71細胞株を提供する。最も好ましい実施形態において、G71もしくはG71S細胞株、またはその誘導体は、少なくとも約0.5、好ましくは少なくとも約0.75、より好ましくは少なくとも約1.0、およびさらにより好ましくは少なくとも約1.25ピコグラム/細胞/日の量で、組み換え型リソソームスルファターゼ酵素を発現および分泌する。
ベクターおよび核酸構築物
ヒトスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)もしくはリソソームスルファターゼ酵素のいずれか、または両方の組み換え型タンパク質を発現させるために使用される核酸構築物は、トランスフェクトされた哺乳動物細胞において染色体外で(エピソーム的に)発現されるもの、あるいは無作為に、または相同的な組み換えを通じて事前に選択された標的化部位のいずれかで、受容細胞のゲノム内に統合されるものであってもよい。染色体外で発現される構築物は、組み換え型タンパク質をコードする配列に加えて、細胞内でのタンパク質の発現に十分な配列、および任意でその構築物の複製に十分な配列を含む。それは、典型的に、プロモーター、組み換え型タンパク質をコードするDNA、およびポリアデニル化部位を含む。組み換え型タンパク質をコードするDNAは、その発現が、プロモーターの制御下にあるような形式で、構築物内に位置される。任意で、構築物は、例えば、1つ以上の、以下のスプライス部位、エンハンサー配列、適切なプロモーターの制御下で選択可能なマーカー遺伝子、適切なプロモーターの制御下で増幅可能なマーカー遺伝子、マトリックス付着領域(MAR)、またはそれが挿入される領域の発現を強化させる、当該技術分野で既知の他の要素等、追加の構成要素を含むことができる。
DNA構築物が細胞のゲノム内に統合されるような実施形態においては、組み換え型タンパク質をコードする核酸配列のみを含む必要がある。任意で、それは、プロモーターおよびエンハンサー配列、ポリアデニル化部位(1つもしくは複数)、スプライス部位(1つもしくは複数)、選択可能なマーカー(1つもしくは複数)をコードする核酸配列、増幅可能なマーカーをコードする核酸配列、マトリックス付着領域(MAR)、もしくは挿入される領域の発現を強化する、当該技術分野で既知の他の要素、および/またはゲノム内で選択された部位へのDNAの統合を標的化するため(DNAもしくはDNA配列を標的化するため)受容細胞におけるゲノムDNAに相同性のDNAを含んでもよい。
細胞培養方法
組み換え型タンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有する哺乳動物細胞は、細胞の増殖およびDNAまたはRNAの発現に適切な条件下で培養される。組み換え型タンパク質を発現するような細胞は、既知の方法および本明細書に記載の方法を使用して、特定することができ、組み換え型タンパク質は、組み換え型タンパク質生成の増幅の有無に関わらず、既知の方法および本明細書に記載の方法もまた使用して、単離および精製することができる。特定は、例えば、組み換え型タンパク質をコードするDNAまたはRNAの存在の表現型指標を示す、遺伝子修飾された哺乳動物細胞のスクリーニング、例えば、PCRスクリーニング、サザンブロット分析によるスクリーニング、または組み換え型タンパク質の発現についてのスクリーニングを通じて、実行することができる。組み込まれた組み換え型タンパク質をコードするDNAを含有する細胞の選択は、DNA構築物に選択可能なマーカーを含むこと、続いて、選択可能なマーカー遺伝子を発現するもののみの生存に適切な条件下で、選択可能なマーカー遺伝子を含有するトランスフェクトまたは感染された細胞を培養することによって、達成することができる。導入されたDNA構築物のさらなる増幅は、適切な条件下で、遺伝子修飾された哺乳動物細胞を培養すること(例えば、増幅可能なマーカー遺伝子の多重複製を含有する細胞のみが生存可能な薬物濃度の存在下で、増幅可能なマーカー遺伝子を含有する遺伝子修飾された哺乳動物細胞を培養すること)によって、達成することができる。
組み換え型タンパク質を発現する遺伝子修飾された哺乳動物細胞は、本明細書に記載のように、発現産物の検出によって特定することができる。例えば、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素を発現する哺乳動物細胞は、サンドイッチ酵素免疫測定法によって、特定することができる。抗体は、活性剤部分に対して向けられてもよい。
リソソームスルファターゼ酵素の改変体
ある実施形態において、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素の変異体または改変体を調製することが可能であり、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素を使用することができる種々の適用において、有用であろう。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体または改変体は、置換、挿入、もしくは欠失の変異体または改変体であってもよい。欠失変異体または改変体は、機能または免疫原活性に不可欠ではない、天然のタンパク質の1つ以上の残基が不足している。欠失変異体または改変体の一般的な種類は、分泌シグナル配列、または細胞の特定の部分に結合するようにタンパク質を指示するシグナル配列が不足しているものである。挿入変異体または改変体は、典型的に、ポリペプチド内の非末端点における物質の付加を伴う。これは、免疫反応性エピトープまたは単純に単一の残基の挿入を含んでもよい。融合タンパク質とも称される末端付加は、以下に説明される。
改変体は、上述のように、修飾されていないリソソームスルファターゼ酵素と、実質的に相同または実質的に同一であってもよい。好ましい改変体は、リソソームスルファターゼ酵素の生物学的活性のうち少なくともいくらか、例えばスルファターゼ活性を保持する、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素ポリペプチドの改変体である、他の好ましい改変体には、ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼの少なくとも何らかのスルファターゼ活性を保持する、ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼポリペプチドの改変体が含まれる。
置換変異体または改変体は、典型的に、野生型ポリペプチドの1つのアミノ酸を、タンパク質内の1つ以上の部位の別のものに置き換え、ポリペプチドの1つ以上の特性、例えば、限定するものではないが、タンパク質分解切断に対する安定性等を、他の機能または特性を損失することなく、調整するように設計することができる。この種類の置換は、好ましくは、保存的である、すなわち、1つのアミノ酸が、類似の形状および電荷のもので置き換えられる。保存的置換は、当該技術分野で周知であり、例えば、アラニンからセリン、アルギニンからリジン、アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン、アスパラギン酸塩からグルタミン、システインからセリン、グルタミンからアスパラギン、グルタミンからアスパラギン酸塩、グリシンからプロリン、ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン、イソロイシンからロイシンまたはバリン、ロイシンからバリンまたはイソロイシン、リジンからアルギニン、メチオニンからロイシンまたはイソロイシン、フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニン、セリンからトレオニン、トレオニンからセリン、トリプトファンからチロシン、チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン、およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化を含む。
本発明の一態様は、リソソームスルファターゼ酵素のOまたはN結合型グリコシル化部位が、変異されている、グリコシル化部位変異体または改変体を生成することを企図する。このような変異体または改変体は、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素の生物学的活性、物理的構造、および基質結合能に関連する重要な情報をもたらす。特定の態様において、生物学的活性を保持するが、増加または減少した基質結合活性を有する、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素ポリペプチドの他の変異体または改変体が生成されてもよいことが企図される。このように、変化された基質結合活性を有するタンパク質変異体または改変体を生成するために、活性部位または触媒領域の変異が、特に企図される。このような実施形態において、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素の配列は、他の関連する酵素のものと比較され、選択された残基は、特異的に変異される。
推定上のアミノ末端から成熟タンパク質のアミノ酸を、アミノ酸番号1として番号付けし、有用な可能性のある例示的な変異には、例えば、組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の位置178および397を含む、潜在的にグリコシル化されたアルパラギンの全てまたは幾つかの置換が挙げられる(図5を参照されたい)。
基質結合は、リソソームスルファターゼ酵素の活性部位/その付近の変異によって、修飾されてもよい。このような変異が例示であることを考慮に入れて、当業者は、酵素配列の他の変異が、このタンパク質およびその活性についての追加の構造的および機能的情報を提供するためになされてもよいことを理解するであろう。
上述のもののような変異体または改変体を構築するために、当業者は、周知の標準的な技術を採用することができる。N末端欠失、C末端欠失、内部欠失、ならびに無作為および点変異誘発が、特に企図される。
N末端およびC末端欠失は、例えば、CまたはN末端領域の末端付近の好適な単一の制限酵素部位の存在を利用する、欠失変異誘発の形態である。DNAは、その部位で切断され、切断末端は、BAL31、エキソヌクレアーゼIII、DNase I、およびS1ヌクレアーゼ等のヌクレアーゼによって分解される。2つの末端を再接合することにより、制限酵素部位周辺に種々の寸法の欠失を有する、一連のDNAを生成する。このような変異体から発現されたタンパク質は、生物学的機能、例えば、酵素活性について、当該技術分野の標準的な技術、および本明細書に記載の技術を使用してアッセイすることができる。類似の技術が、2つの好適に配置された制限酵素部位を使用し、それによって、正確に定義された欠失がなされ、末端が上述のように再連結されることを可能にすることにより、内部欠失変異体に採用されてもよい。
部分的消化変異体もまた企図される。このような事例において、当業者は、反応時間の長さに応じて、多くの位置で、DNAを切断する「高頻度切断」を採用するであろう。したがって、反応条件を変化させることによって、寸法の異なる一連の変異体を生成することが可能となり、続いて、活性についてスクリーニングすることができる。
無作為挿入変異もまた、例えば、DNase IでDNA配列を切断すること、および3、6、9、12等のアミノ酸をコードする一続きのヌクレオチドを挿入すること、および、末端を再結紮すること、によって行うことができる。このような変異がなされた時点で、変異体は、野生型タンパク質によって示される種々の活性について、スクリーニングすることができる。
点変異誘発はまた、具体的にどのアミノ酸残基が、リソソームスルファターゼ酵素の生物学的活性と関連する特定の活性において、重要であるかを特定するために採用されてもよい。したがって、当業者は、変化コドンおよびミスセンス変異をもたらすために、DNA鎖における単一塩基の変化を生成することができる。
特定のタンパク質のアミノ酸は、同等、またはさらに改善された、第2世代の分子を作製するために、変化させることができる。このような変化は、例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子もしくは受容体上の結合部位等の構造との相互作用結合能力の目立った損失なしに、タンパク質の既定のアミノ酸の置換を企図する。タンパク質の生物学的機能活性を定義するのはタンパク質の相互作用能力および性質であるため、あるアミノ酸置換が、タンパク質配列およびその基本的なDNAコード配列においてなされ、それでもなお、同様の特性を有するタンパク質を得ることができる。したがって、種々の変更が、遺伝子のDNA配列において、以下に記載のように、それらの生物学的有用性または活性の目立った損失なしに、なされてもよい。
このような変化を加える上で、アミノ酸の疎水性親水性指標が考慮され得る。アミノ酸の相対的な疎水性親水性の特徴は、次に、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、および抗原等の、他の分子とのタンパク質の相互作用を画定する、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷特性に基づいて、疎水性親水性指標を割り当てられている、ことが受け入れられている。(Kyte & Doolittle,J.Mol.Biol.,157(1):105−132,1982、参照により本明細書に組み込まれる)。一般的に、アミノ酸は、類似の疎水性親水性指標またはスコアを有する、他のアミノ酸によって置換することができ、依然として、類似の生物学的活性を有するタンパク質をもたらすことができる、すなわち、依然として生物学的な機能的に同等のタンパク質を得ることができる。
さらに、同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて、効果的に行うことができる。米国特許第4,554,101号は、タンパク質の最大の局所的平均親水性が、その隣接するアミノ酸の親水性によって左右されるように、タンパク質の生物学的特性と相関することについて述べ、参照により本明細書に組み込まれる。このように、アミノ酸は、類似の親水性値を有する別のアミノ酸と置換することができ、依然として、生物学的に同等および免疫学的に同等のタンパク質を得ることができる。
本発明との関連において使用可能な例示的なアミノ酸置換には、限定されるものではないが、アルギニンおよびリジン、グルタミンおよびアスパラギン酸塩、セリンおよびトレオニン、グルタミンおよびアスパラギン、ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシンの交換が含まれる。タンパク質の二次構造を変化させながら、生物学的活性のいくらかまたは全てを保持する必要性を考慮する他のこのような置換は、当業者には周知であろう。
本発明によるポリペプチドの調製のために企図される他の種類の改変体は、ペプチド模倣体の使用である。模倣体は、タンパク質二次構造の要素を模倣する、ペプチド含有分子である。例えば、Johnson et al.,“Peptide Turn Mimetics” in BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY,Pezzuto et al.,Eds.,Chapman and Hall, New York(1993)を参照されたい。ペプチド模倣体の使用の背後にある基本的な根拠は、タンパク質のペプチド骨格が、主として、抗体または抗原のもの等の分子相互作用を促進するような方法で、アミノ酸側鎖を配向するために存在することである。ペプチド模倣体は、天然の分子と類似の分子相互作用を可能にすることが予想される。上述の原理と併せて、これらの原理を使用して、リソソームスルファターゼ酵素の天然の特性を多数有するが、変化され、さらに改善された特徴を有する、第2世代の分子を設計することができる。
リソソームスルファターゼ酵素の修飾されたグリコシル化
親ポリペプチドに対して、修飾されたグリコシル化パターン、例えば、1つ以上の炭水化物分の欠失、および/または天然のポリペプチド内に存在しない1つ以上のグリコシル化部分の付加を有する、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素の改変体もまた生成することができる。
グリコシル化は、典型的に、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。Xがプロリンを除く任意のアミノ酸である、トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニンは、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素結合のための認識配列である。ポリペプチド内のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を作製する。したがって、N結合型グリコシル化部位は、これらのトリペプチド配列の1つ以上を含有するように、アミノ酸配列を変化させることによって、ポリペプチドに付加することができる。O結合型グリコシル化は、糖類N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた使用可能であるが、最も一般的にはセリンまたはトレオニンである、ヒドロキシアミノ酸への結合を指す。O結合型グリコシル化部位は、1つ以上のセリンまたはトレオニン残基を、元のポリペプチド配列内に挿入すること、またはそれらに置換することによって、付加することができる。
ドメインスイッチング
リソソームスルファターゼ酵素タンパク質の種々の部分は、相当な量の配列相同性を有する。変異は、その機能を変化させることが可能な、リソソームスルファターゼ酵素ポリペプチド内に特定することができる。これらの研究は、少なくとも2つの原因のために、潜在的に重要である。第1に、それらは、この遺伝子の他の相同体、対立遺伝子改変体、および変異体が、関連種、例えば、ラット、ウサギ、サル、テナガザル、チンパンジー、類人猿、ヒヒ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、およびネコ等において存在する可能性があるという妥当な予想を提供する。これらの相同体、改変体、および変異体の単離に際して、他の分析と併せて、ある活性または機能ドメインを特定することができる。第2に、これは、上述のような分子のさらなる変異分析の出発点を提供する。この情報を生かすことが可能な1つの方法は、「ドメインスイッチング」におけるものである。
ドメインスイッチングは、異なるが、関連するポリペプチドを使用する組み換え型分子の生成を伴う。例えば、リソソームスルファターゼ酵素、例えば、N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼの配列を、別の起源からの類似のリソソームスルファターゼ酵素のもの、ならびにこれらのポリペプチドの変異体および対立遺伝子改変体と比較することによって、これらの分子の機能的に重要な領域について予測を行うことができる。次いで、リソソーム蓄積障害における酵素機能および効果に対するこれらの領域の臨界を判定する目的で、これらの分子の関連ドメインを切り替えることが可能である。これらの分子は、これらの「キメラ」が、天然の分子と区別することができる点において、さらなる価値を有することができ、一方で、同じ、またはさらに強化された機能を提供する可能性がある。
現在特定されている多数のリソソームスルファターゼ酵素に基づいて、変異および二次構造におけるそれらの予測効果のさらなる分析が、この理解を増加させることになる。リソソームスルファターゼ酵素間でドメインを切り替える変異体は、これらの分子およびそれらが相互作用するポリペプチドの構造的/機能的関係についての有用な情報を提供することが企図される。
融合タンパク質
上述の変異に加えて、本発明は、融合タンパク質として既知の、特殊な種類の挿入改変体の生成をさらに企図する。この分子は、一般的に、天然の分子の全てまたは大部分が、NまたはC末端において、第2のポリペプチドの全てまたは部分に結合されている。例えば、融合は、典型的に、異種宿主におけるタンパク質の組み換え発現を可能にするために、他の種からのリーダー配列を採用する。別の有用な融合には、融合タンパク質の精製を促進するために、抗体エピトープ等の免疫学的に活性なドメインの付加が含まれる。融合接点またはその付近における切断部位の包含は、精製後の外来ポリペプチドの除去を促進することになる。他の有用な融合には、酵素からの活性部位、グリコシル化ドメイン、細胞標的シグナル、または膜貫通領域等の機能ドメインの結合が含まれる。
本発明に使用可能な種々の市販の融合タンパク質発現システムが存在する。特に有用なシステムには、限定されるものではないが、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)システム(Pharmacia,Piscataway,NJ)、マルトース結合タンパク質システム(NEB,Beverley,MA)、FLAGシステム(IBI,New Haven,CT)、6xHisシステム(Qiagen,Chatsworth,CA)が挙げられる。これらのシステムは、組み換え型ポリペプチドの抗原性能力に影響する可能性が低い、少数の追加アミノ酸のみを有する、組み換え型ポリペプチドを生成する能力がある。例えば、FLAGシステムおよび6xHisシステムのいずれも、短い配列のみを付加し、いずれも、抗原性が乏しいことが既知であり、その本来の立体配座に対するポリペプチドの折りたたみに悪影響を与えることがない。有用であることが企図される別のN末端融合は、タンパク質またはペプチドのN末端領域におけるMet−Lysジペプチドの融合である。このような融合は、タンパク質発現または活性において、有益な増加をもたらすことができる。
特に有用な融合構築物は、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素ポリペプチドまたはその断片が、リソソームスルファターゼ酵素融合構築物の免疫原性を強化するために、ハプテンに融合されるものであってもよい。これは、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素に対する抗体の生成において有用であり、タンパク質の検出を可能にすることができる。他の実施形態において、融合構築物は、特異的部位または細胞に対するリソソームスルファターゼ酵素関連の組成物の標的化を強化するように作製されてもよい。
他の融合構築物は、所望の特性、例えば、リソソームスルファターゼ酵素を特定の器官、組織、または細胞の種類に標的化するためのモチーフを有する、異種ペプチドを含む。好ましい実施形態において、リソソームスルファターゼ酵素に融合された、骨標的化ペプチド、例えば、6アスパラギン酸残基(6xAspまたは6D)を含む融合構築物は、酵素を骨の特定の部位に標的化する。
所望の特性、例えば、血清半減期を延長するためのIg定常領域または標的化のための抗体もしくはその断片を有する異種ポリペプチドを含む他の融合構築物もまた、企図される。他の融合システムは、所望のポリペプチドからの融合パートナーを切除することが望ましい場合に、ポリペプチドハイブリッドを生成する。一実施形態において、融合パートナーは、プロテアーゼに対する特異的な認識配列を含有するペプチド配列によって、組み換え型の高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素ポリペプチドに結合される。好適な配列の例は、Tobacco Etch Virusプロテアーゼ(Life Technologies,Gaithersburg,MD)またはFactor Xa(New England Biolabs,Beverley,MA)によって認識されるものである。
誘導体
上述のように、誘導体とは、例えば、限定されるものではないが、ユビキチン化、標識化(例えば、放射性核種もしくは種々の酵素を用いて)、ペグ化等の共有ポリマー結合(ポリエチレングリコールでの誘導体化)、およびオルニチン等のアミノ酸の化学合成による挿入または置換等の技術によって、化学的に修飾されたポリペプチドを指す。リソソームスルファターゼ酵素の誘導体はまた、治療剤としても有用であり、本発明の方法によって生成することができる。
ポリエチレングリコール(PEG)は、本発明の方法によって生成されるリソソームスルファターゼ酵素に結合して、インビボにおけるより長い半減期を提供することができる。PEG基は、任意の簡便な分子量のものであってもよく、直鎖または分枝鎖であってもよい。PEGの平均分子量は、好ましくは、約2キロダルトン(「kDa」)〜約100kDa、より好ましくは約5kDa〜約50kDa、最も好ましくは約5kDa〜10kDaの範囲となる。PEG基は、一般的に、PEG部分の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル基)を通じて、タンパク質部分の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)への、アシル化または還元的アルキル化を介して、本発明のリソソームスルファターゼ酵素に結合される。目的のポリペプチドへのPEG部分の付加は、当該技術分野で既知の技術を使用して実行することができる。例えば、国際公開第WO96/11953号および米国特許第4,179,337号を参照されたい。
リソソームスルファターゼ酵素ポリペプチドのPEGとの連結反応は、通常、水相で起こり、逆相分析HPLCによって容易に監視することができる。PEG化されたペプチドは、分取HPLCによって容易に精製可能であり、分析HPLC、アミノ酸分析、およびレーザー脱離質量分析によって特徴付けることができる。
標識
幾つかの実施形態において、治療的リソソームスルファターゼ酵素は、その検出を促進するために、標識化される。「標識」または「検出可能部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的方法によって検出可能な組成物である。例えば、本発明での使用に好適な標識には、限定されるものではないが、放射性標識(例えば、32P)、フルオロフォア(例えば、フルオレセイン)、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで広く使用されるような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテン、ならびに例えば、放射性標識をハプテンもしくはペプチドに組み込むことによって検出できるように作製されるか、またはハプテンもしくはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用可能であるタンパク質が挙げられる。
本発明における使用に好適な標識の例には、限定されるものではないが、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、Texas red、ローダミン等)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、およびELISAで広く使用されるその他のもの)、ならびにコロイド金、色ガラス、またはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)の比色分析標識が挙げられる。
標識は、当該技術分野で周知の方法によって、直接的または間接的に、リソソームスルファターゼ酵素の所望の構成成分に連結することができる。好ましくは、一実施形態において、標識は、本発明による活性剤の共役のため、イソシアネート試薬を使用して、リソソームスルファターゼ酵素に共有結合される。本発明の一態様において、本発明の二官能性イソシアネート試薬を使用して、標識をリソソームスルファターゼ酵素に共役し、そこに結合される活性剤なしに、標識リソソームスルファターゼ酵素共役体を形成することができる。標的リソソームスルファターゼ酵素共役体は、本発明による標識化された共役体の中間体として使用することができ、または、リソソームスルファターゼ酵素共役体の検出に使用されてもよい。上記のように、幅広い種類の標識を使用することができ、標識の選択は、必要とされる感受性、リソソームスルファターゼ酵素の所望の構成成分との共役の容易さ、安定性要件、利用可能な器具、および処分既定に依存する。非放射性標識は、しばしば、間接的手段によって付加される。一般的に、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、リソソームスルファターゼ酵素に共有結合される。リガンドは、次いで、本質的に検出可能であるか、または検出可能酵素、蛍光化合物、もしくは化学発光化合物等の、シグナルシステムに共有結合するかのいずれかである、別の分子(例えば、ストレプトアビジン)に結合する。
本発明のリソソームスルファターゼ酵素はまた、例えば、酵素またはフルオロフォアとの共役によって、シグナル生成化合物に直接的に共役されてもよい。標識として使用するために好適な酵素には、限定されるものではないが、ヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エステラーゼ、およびグリコシダーゼ、またはオキシダーゼ、特にペルオキシダーゼが挙げられる。標識としての使用に好適な蛍光化合物、すなわち、フルオロフォアには、限定されるものではないが、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン等が挙げられる。好適なフルオロフォアのさらなる例には、限定されるものではないが、エオシン、TRITC−アミン、キニーネ、フルオレセインW、アクリジンイエロー、リサミンローダミン、Bスルホニルクロリドエリスロセイン(sulfonyl chloride erythroscein)、ルテニウム(トリス、ビピリジニウム)、Texas Red、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド等が挙げられる。標識としての使用に好適な化学発光化合物には、限定されるものではないが、ルシフェリンおよび2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えばルミノールが挙げられる。本発明の方法において使用可能な種々の標識化またはシグナル生成システム評価については、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
標識を検出するための方法は、当業者に周知である。したがって、例えば、標識が放射性である場合、検出方法には、シンチレーション計数器またはオートラジオグラフィーに見られるような感光性フィルムが挙げられる。標識が蛍光標識である場合、蛍光色素を適切な波長の光で励起し、結果として生じる蛍光を検出することによって、検出することができる。蛍光は、電荷結合装置(CCD)または光電子倍増管等の電子検出器の使用によって、視覚的に検出されてもよい。同様に、酵素標識は、適切な基質を酵素に提供し、結果として生じる反応生成物を検出することによって、検出することができる。比色分析または化学発光標識は、単純に、標識と関連する色を観察することによって検出することができる。本発明の方法における使用に好適な他の標識化および検出システムは、当業者には容易に明らかであろう。このような標識化された調整因子およびリガンドは、疾患または健康状態の診断に使用することができる。
好ましい実施形態において、本方法は、エンドソームの輸送に欠損を有する細胞株から、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素を生成するステップを含む。特に好ましい実施形態において、本方法は、CHO細胞株G71またはその誘導体から、高度にリン酸化された活性な組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)を生成するステップを含む。例えば、限定されるものではないが、GALNS等のリソソームスルファターゼ酵素の生成には、(a)組み換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素、例えば、N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)、および組み換え型ヒトスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)を共発現する、G71またはG71誘導体の細胞株を成長させるステップ、(b)ヒトリソソームスルファターゼ酵素およびSUMF1を共発現する細胞株を培養するステップ、ならびに(c)ヒトリソソームスルファターゼ酵素およびSUMF1を共発現する細胞株を、リソソームスルファターゼ酵素の生成のためのバイオリアクターにスケールアップするステップが含まれる。好ましい実施形態において、ヒトリソソームスルファターゼ酵素、例えば、N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)、およびヒトSUMF1のcDNAは、基本的に本明細書において以下に記載されるように、哺乳動物の発現ベクターにサブクローニングされる。
細胞株の成長のために、G71または無血清懸濁培養液内での増殖のために適合されたG71クローンであるG71Sを、ヒトGALNSの哺乳動物発現ベクター、ヒトSUMF1の哺乳動物発現ベクター、および選択可能マーカー遺伝子でコトランスフェクトし、安定した形質転換体を選択した。安定なトランスフェクタントの1回目のサブクローニング後、細胞株を、蛍光基質を使用して選択し、具体的に指定した。G71またはG71S細胞株を、それぞれ、微小担体を有するスピナーまたは懸濁培養液において、細胞特異的生産性(生成物のpg/細胞)を分析した。ヒトGALNSの最良生成細胞株を特定し、前臨床物質の生成のため、バイオリアクターにスケールアップした。
別の実施形態において、本発明は、天然基質を分解する組み換え型ヒトリソソーム酵素の活性を測定するための細胞に基づくアッセイを提供する。本方法は、(a)単離した、リソソーム酵素が欠損しているヒト細胞を、リソソーム酵素の天然基質が蓄積する条件下で、培養することと、(b)細胞をリソソーム酵素と接触させることと、(c)細胞を溶解することと、(d)細胞溶解産物に、(i)天然基質に対して特異的であり、(ii)天然基質から小オリゴ糖を切断する、酵素を添加することと、(e)小オリゴ糖を検出可能部分で標識化することと、(f)任意で、標識化した小オリゴ糖を分離することと、(g)標識化した小オリゴ糖を検出することと、(h)天然基質を分解する、リソソーム酵素の活性を、(i)リソソーム酵素と接触した細胞に由来する標識化した小オリゴ糖の量を、(ii)リソソーム酵素と接触していない細胞に由来する標識化された小オリゴ糖の量と、比較することによって検出することと、を含み、(h)(ii)と比較して、(h)(i)における減少は、天然基質を分解する、リソソーム酵素の活性を示す。一実施形態において、小オリゴ糖は、単糖、二糖、または三糖である。関連する実施形態において、小オリゴ糖は、二糖である。
幾つかの実施形態において、リソソーム酵素は、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)、およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、リソソーム酵素は、α−L−イズロニダーゼ(IDU)である。幾つかの実施形態において、リソソーム酵素は、酸性α−グルコシダーゼ(GAA)である。幾つかの実施形態において、リソソーム酵素は、β−グルクロニダーゼ(GUSB)である。幾つかの実施形態において、リソソーム酵素は、β−ガラクトシダーゼ(GLB1)である。
細胞に基づくアッセイに使用可能である、好適なヒト細胞には、試験されるリソソームが欠損し、その結果、リソソーム酵素に対する天然基質が蓄積する可能性のある、任意のヒト細胞が含まれる。例えば、活性における完全(100%)または部分的な欠損、例えば、活性における30%、50%、70%、80%、90%、95%の減少を、天然に示す細胞が使用可能である。低下した活性を有する変異酵素を発現する細胞、またはリソソーム蓄積症、例えばムコ多糖症を患う患者に由来する細胞が、使用可能である。例えば、変異体を、コード遺伝子もしくはそのプロモーター、または他の調節領域に導入することを通じて、リソソーム酵素活性をノックアウトまたは低下させるように組み換え変化させた細胞を、使用してもよい。リソソーム酵素活性を低下させるように処理された細胞、例えば、酵素発現を低下させるためにアンチセンスまたはRNAiで処理された細胞を、使用してもよい。
小オリゴ糖を、炭化水素から切断(消化)し、リソソーム酵素の天然基質に「特異的な」(すなわち、主に消化する)、好適な酵素は、当業者によって選択することができる。例えば、GALNSまたはGLB1(ケラタン硫酸を分解する酵素)の活性の検出のために、ステップ(d)の酵素は、ケラタナーゼIIまたは主にケラタン硫酸に作用する任意の酵素であってもよい。別の例として、IDU、ARSB、IDS、またはGUSB(デルマタン硫酸を分解する酵素)の検出のために、ステップ(d)の酵素は、コンドロイチナーゼABC、または主にデルマタン硫酸に作用する任意の酵素であってもよい。別の例として、IDU、IDS、SGHS、G6S、またはGUSB(ヘパラン硫酸塩を分解する酵素)の検出のために、ステップ(d)の酵素は、ヘパラナーゼIもしくはヘパラナーゼII、または両方であってもよい。さらに別の例として、GAA(グリコーゲンを分解する酵素)の検出のために、ステップ(d)の酵素は、α−アミラーゼ、または主にグリコーゲンに作用する任意の酵素であってもよい。
この細胞に基づく方法は、リソソーム酵素活性の検出において、高い感受性を可能にする。幾つかの実施形態において、リソソーム酵素活性は、リソソーム酵素の濃度が、約10nM、または約5nM、または約1nM、または約0.75nM、または約0.5nM、または約0.25nM、または約0.1nM、または約0.05nM、または約0.01nM、または約0.005nM、または約1pM、または約0.5pM程度の低さである場合に、検出可能である。
III. リソソームスルファターゼ酵素の精製
組み換え型ヒトGALNSを含有するバイオリアクター物質を、0.2μmで滅菌濾過し、4℃で保管した。バイオリアクター物質は、直接的に捕捉カラムに充填したか、または捕捉カラムへの充填前に、限外濾過によって10〜20倍に濃縮したかのいずれかである。バイオリアクター物質または濃縮したバイオリアクター物質を、pH4.5にpH調節し、次いで、Blue−Sepharoseカラムに充填し、20mM 酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH4.5、および20mM 酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH6.0で連続して洗浄し、20mM 酢酸塩/リン酸塩、100mM NaCl、pH7.0で溶出した。Blue−Sepharoseカラム溶出液を、次にFractogel SE Hi−Capに充填し、20mM 酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH5.0、および20mM 酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH5.5で連続して洗浄し、20mM 酢酸塩/リン酸塩、50〜350mM NaCl勾配、pH5.5で溶出した。Fractogel SE Hi−Cap溶出液を、10mM NaOAc、1mM NaH2PO4、0.005%Tween−80、pH5.5に製剤化した。
あるいは、組み換え型ヒトGALNSを含有するバイオリアクター物質を、捕捉カラムへの充填前に、限外濾過によって20倍に濃縮した。濃縮したバイオリアクター物質を、pH4.5にpH調節し、濾過し、次いで、Fractogel SE Hi−Capカラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH4.5、および10mM 酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH5.0で連続して洗浄し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、140mM NaCl、pH5.0で溶出した。Fractogel SE Hi−Capカラム溶出液を、次いで500mM NaCl、pH7.0に調節し、Znキレート化Sepharose(Zn−IMAC)カラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、125mM NaCl、10mM イミダゾール、pH7.0で洗浄し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、125mM NaCl、90mM イミダゾール、pH7.0で溶出した。Znキレート化Sepharose(Zn−IMAC)カラム溶出液を、低pHウイルス不活性化のためにpH3.5に調節し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、2M NaCl、pH5.0に調節し、次いでToyoPearl Butyl 650Mカラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、2M NaCl、pH5.0で洗浄し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、0.7M NaCl、pH5.0で溶出した。ToyoPearl Butyl 650M溶出液を、20mM 酢酸塩、1mM リン酸塩、150mM NaCl、pH5.5において限外濾過および透析濾過し、次いで、20mM 酢酸塩、1mM リン酸塩、150mM NaCl、0.01%Tween−20、pH5.5に製剤化した。
あるいは、組み換え型ヒトGALNSを含有するバイオリアクター物質を、限外濾過/透析濾過によって濾過して20倍に濃縮し、次いで、捕捉カラムへの充填前に、活性炭を通して濾過した。濃縮したバイオリアクター物質を、伝導率約55±5mS/cmでZnキレート化Shepharose FF(Zn−IMAC)カラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、500mM NaCl、pH7.0、および10mM酢酸塩/リン酸塩、125mM NaCl、pH7.0(緩衝液A)で連続して洗浄し、次いで、70%の緩衝液Aと、30%の10mM酢酸塩/リン酸塩、125mM NaCl、300mMイミダゾール、pH7.0(緩衝液B)との混合液で溶出した。Znキレート化Shepharose FF(Zn−IMAC)カラム溶出液を、伝導率約6.0±0.5mS/cmおよびpH7.0に調節し、潜在的なウイルス除去のためにMustang Qフィルタに充填した。Mustang Q濾液を、pH4.5±0.1に調節し、CUNO 60ZAフィルタ、続いて0.2μmの直列フィルタを通して濾過し、次いでFractogel EMD SE Hi−Cap(M)カラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH4.5、および80%の緩衝液A(10mM 酢酸塩/リン酸塩、pH5.0)と20%の緩衝液B(10mM 酢酸塩/リン酸塩、250mM NaCl、pH5.0)との混合液で連続して洗浄し、直線勾配20%〜75%の緩衝液B(80%〜25%の緩衝液A中)で溶出した。Fractogel EMD SE Hi−Capカラム溶出液を、次いで、低pHウイルス不活性化のために、0.2Mクエン酸緩衝液、pH3.4の添加により、pH3.5±0.1に調節した。低pHウイルス不活性化したFractogel EMD SE Hi−Capカラム溶出液を、0.2Mクエン酸緩衝液、pH6.0の添加により2M NaClおよびpH5.0に調節し、次いで、ToyoPearl Butyl 650Mカラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、2M NaCl、pH5.0(緩衝液A)で洗浄し、続いて、35%の緩衝液Aと65%の緩衝液B(10mM 酢酸塩/リン酸塩、pH5.0)の混合液で溶出した。ToyoPearl Butyl 650M溶出液を、緩衝液交換して、20mM NaOAc/HOAc、50mM NaH2PO4、30mMアルギニンHCl、2%(w/v)ソルビトール、pH5.4にし、任意で、GALNSの最終濃度3mg/mLに調節した。緩衝液交換および濃度調節したGALNSを、ウイルスフィルタ(DV20)およびDNAフィルタ(Mustang Q)を通して濾過し、あらゆる残存ウイルスおよびDNAを除去した。Tween−20(ポリソルベート20またはPS20としても既知)を、最終濃度0.01%(w/v)まで添加し、原薬(BDS)を得た。BDSは、2〜8℃または冷凍で保管した。
あるいは、組み換え型ヒトGALNSを含有するバイオリアクター物質を、濾過し、限外濾過/透析濾過によって20倍に濃縮し、次いで、捕捉カラムへの充填前に、活性炭を通して濾過した。濃縮したバイオリアクター物質を、伝導率約50±5mS/cmでZnキレート化Shepharose FF(Zn−IMAC)カラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、500mM NaCl、pH7.0、および10mM 酢酸塩/リン酸塩、125mM NaCl、pH7.0(緩衝液A)で連続して洗浄し、次いで、70%の緩衝液Aと、30%の10mM酢酸塩/リン酸塩、125mM NaCl、300mMイミダゾール、pH7.0(緩衝液B)との混合液で溶出した。Znキレート化Shepharose FF(Zn−IMAC)カラム溶出液を、1.75M酢酸塩、pH4.0でpH4.5±0.1に調節し、Millipore COHCフィルタを通して濾過し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、pH 4.5と30:70(v/v)の比率で混合し、次いで、伝導率<7mS/cmでFractogel EMD SE Hi−Cap(M)カラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH4.5、および80%の緩衝液A(10mM 酢酸塩/リン酸塩、pH5.0)と20%の緩衝液B(10mM 酢酸塩/リン酸塩、250mM NaCl、pH5.0)との混合液で、連続して洗浄し、直線勾配20%〜75%の緩衝液B(80%〜25%の緩衝液A中)で溶出した。Fractogel EMD SE Hi−Capカラム溶出液を、次いで、低pHウイルス不活性化のために、0.4M クエン酸緩衝液、pH3.4の添加により、pH3.5±0.1に調節した。低pHウイルス不活性化したFractogel EMD SE Hi−Capカラム溶出液を、0.4M クエン酸緩衝液、pH6.0の添加により、2M NaClおよびpH5.05±0.1に調節し、5M NaClを含有する10mM 酢酸塩/リン酸塩、pH5と混合して、2M NaClの濃度を達成し、次いで、ToyoPearl Butyl 650Mカラムに充填し、10mM 酢酸塩/リン酸塩、2M NaCl、pH4.4±0.1および10mM酢酸塩/リン酸塩、2.5M NaCl、pH5.0(緩衝液A)で、連続して洗浄し、続いて、直線勾配100%〜32%の緩衝液Aおよび0%〜68%の緩衝液B(10mM酢酸塩/リン酸塩、pH5.0)、続いて32%の緩衝液Aと68%緩衝液Bの混合液で、溶出した。ToyoPearl Butyl 650M溶出液を、緩衝液交換して、20mM NaOAc/HOAc、50mM NaH2PO4、30mMアルギニンHCl、2%(w/v)ソルビトール、pH5.4にし、任意で、GALNSの最終濃度3mg/mLに調節した。緩衝液交換および濃度調節したGALNSを、ウイルスフィルタ(DV20)およびDNAフィルタ(Mustang Q)を通して濾過し、あらゆる残存ウイルスおよびDNAを除去した。Tween−20(ポリソルベート20またはPS20としても既知)を、最終濃度0.01%(w/v)まで添加し、原薬(BDS)を得た。BDSは、2〜8℃または冷凍で保管した。
組み換え型ヒトGALNSの精製は、以下に詳細に記載され、上述のプロトコルから修正された手順に従う組み換え型ヒトGALNSの精製は、以下に詳細に記載される。
組み換え型ヒトGALNS酵素は、実施例IIIに記載のように、G71S細胞において発現され、実施例Vまたは実施例VIに記載のように精製した。本発明の精製された組み換え型ヒトGALNSを、他の実証されたGALNSの調製物と比較することができる。Masue et al.,J.Biochem.110:965−970,1991は、ヒト胎盤由来のGALNSの精製および特徴付けについて記載した。精製された酵素は、120kDaの分子量を有することがわかっており、40kDaおよび15kDaのポリペプチドから構成され、後者は、糖タンパク質であることが示されている。したがって、MasueらのGALNS酵素は、図5に描写される、プロセッシング形態に相当すると見られる。Bielicki et al.,Biochem.J.279:515−520,1991は、ヒト肝臓由来のGALNSの精製および特徴付けについて記載した。SDS−PAGEにより分析した際、酵素は、非還元条件で70kDaの分子量を有し、還元条件下で57kDa、39kDa、または19kDaの分子量を有した。Bielicki et al.,Biochem J.311:333−339,1995は、チャイニーズハムスター卵巣細胞由来の組み換え型ヒトGALNSの精製および特徴付について記載した。SDS−PAGE上の精製された酵素は、非還元条件下で、58〜60kDaの分子量を有し、還元条件下で、55〜57kDa、39kDa、および38kDaの分子量を有することがわかった。したがって、BielickiらのGALNS酵素は、酵素のプレプロセッシング(前駆体)形態と、図5に描写されるプロセッシング形態との混合物に相当すると見られる。対照的に、本発明の組み換え型ヒトGALNS酵素は、ほぼ完全に酵素の前駆体形態から構成されるか(図9および図12を参照されたい)、または大部分が(すなわち、少なくとも約85%)酵素の前駆体形態から構成される(図10を参照されたい)。
IV. リソソームスルファターゼ酵素およびリソソーム蓄積症
リソソームスルファターゼ酵素は、全長酵素、または酵素の治療的または生物学的活性(例えば、スルファターゼ活性)の少なくとも実質的な量(例えば、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、およびより好ましくは少なくとも約90%)、実質的に全て、または全てを保持する、そのあらゆる断片、変異体、改変体、もしくは誘導体である。
幾つかの実施形態において、リソソームスルファターゼ酵素は、発現もしくは生成されない場合、または発現もしくは生成が実質的に低下する場合、限定されるものではないが、リソソーム蓄積症を含む疾患を引き起こす可能性があるものである。幾つかの実施形態において、リソソームスルファターゼ酵素は、発現もしくは生成されない場合、または発現もしくは生成が実質的に低下する場合、限定されるものではないが、リソソーム蓄積症を含む、疾患を引き起こすわけではないが、その欠乏または低下した発現もしくは生成が、その疾患と関連するものである。好ましくは、リソソームスルファターゼ酵素は、ヒトに由来するか、またはヒトから得られる。
好ましくは、リソソーム蓄積症の治療において、リソソームスルファターゼ酵素は、発現もしくは生成されない場合、または発現もしくは生成が実質的に低下する場合、リソソーム蓄積症を引き起こす可能性のある細胞内に見出される酵素である。あるいは、リソソーム蓄積症の治療において、リソソームスルファターゼ酵素は、その欠乏または実質的に低下した発現または生成は、それ自体は疾患を引き起こすわけではないが、その欠乏または実質的に低下した発現もしくは生成が疾患と関連する、酵素である。好ましくは、リソソームスルファターゼ酵素は、ヒトに由来するか、またはヒトから得られる。
好ましくは、酵素は、リソソームスルファターゼ酵素、例えば、アリールスルファターゼA(ARSA)(Genbank受託番号NP_000478(アイソフォームa)、Genbank受託番号NP_001078897(アイソフォームb)、および他の改変体)、アリールスルファターゼB/N−アセチルグルコサミン4−スルファターゼ(ARSB)(Genbank受託番号P15848)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)(Genbank受託番号NP_000193(アイソフォームa)、Genbank受託番号NP_006114(アイソフォームb))、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)(Genbank受託番号NP_000190)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)(Genbank受託番号NP_002067)、ならびにガラクトース6−スルファターゼ/N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)(Genbank受託番号NP_000503)等である。リソソーム蓄積症、およびそれらにおいて欠損している、治療剤として有用なリソソームスルファターゼ酵素の表が、次に続く。
好ましい実施形態において、リソソームスルファターゼ酵素は、エンドソーム酸性化が欠損した細胞株によって生成される、組み換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素である。より好ましい実施形態において、組み換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素は、「定義」において明記したように、活性であり、高レベルのリン酸化されたオリゴ糖を有する。最も好ましい実施形態において、リソソームスルファターゼ酵素は、高度にリン酸化された活性な組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)である。
したがって、本発明の方法を使用して治療または予防可能なリソソーム蓄積症には、限定されるものではないが、異染性白質ジストロフィーまたはMLD、マロトーラミー症候群またはMPS VI、ハンター症候群またはMPS II、サンフィリポA症候群またはMPS IIIa、サンフィリポD症候群またはMPS IIId、およびモルキオA症候群またはMPS IVaが挙げられる。特に好ましい実施形態において、リソソームスルファターゼ酵素は、その欠損が、モルキオA症候群またはMPS IVaを引き起こすようなものである。別の特に好ましい実施形態において、リソソームスルファターゼ酵素は、その欠損が、多発性スルファターゼ欠損症またはMSD等のヒトリソソーム蓄積症と関連するようなものである。
したがって、上記の表によると、各疾患に対して、リソソームスルファターゼ酵素は、好ましくは、疾患において欠損している特定の活性なリソソームスルファターゼ酵素を含む。例えば、MPS IIに関する方法のために、好ましい酵素は、イズロン酸−2−スルファターゼである。MPS IIIAに関する方法のために、好ましい酵素は、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼである。MPS IIIDに関する方法のために、好ましい酵素は、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼである。MPS IVAに関する方法のために、好ましい酵素は、ガラクトース6−スルファターゼ/N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼである。MPSVIに関する方法のために、好ましい酵素は、N−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼである。異染性白質ジストロフィー(MLD)に関する方法のために、好ましい酵素は、アリールスルファターゼAである。多種スルファターゼ欠損症(MSD)に関する方法のために、酵素は、アリールスルファターゼA、アリールスルファターゼB/N−アセチルグルコサミン4−スルファターゼ、イズロン酸−2−スルファターゼ、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ、またはガラクトース6−スルファターゼ/N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼであってもよく、好ましい酵素は、ガラクトース6−スルファターゼ/N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼである。
V.ムコ多糖症IVA型(モルキオ症候群、MPS IVA)
ムコ多糖症IVA型(モルキオ症候群、MPS IVa)は、ムコ多糖類蓄積症の群に属する、遺伝性の常染色体劣性疾患である。モルキオ症候群は、ケラタン硫酸(KS)およびコンドロイチン−6−硫酸(C6S)の、2つのグリコサミノグリカン(GAG)の分解に必要とされるリソソーム酵素の欠損により引き起こされる。具体的には、MPS IVaは、酵素N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の欠乏および尿中のKSの排出によって特徴付けられる。GALNSの不足は、骨格組織の主要構成要素である、硝子軟骨に異常に大量のムコ多糖類の蓄積をもたらす。全ての患者は、全身性の骨格形成異常を有する。他の症状は、患者によって重症度が異なり、とりわけ、聴力損失、白内障、脊髄不安定、心臓弁疾患、および呼吸器の問題が挙げられる。
GALNSは、KSのガラクトース−6−硫酸およびC6SのN−アセチルガラクトサミン−6−硫酸の硫酸エステル結合を加水分解する。ヒトGALNSは、潜在的なアスパラギン結合されたグリコシル化部位を2つだけ有する、55〜60kDaの前駆体タンパク質として発現される。マンノース−6−リン酸(M6P)は、GALNS分子上に存在するオリゴ糖の一部である。M6Pは、リソソーム細胞表面の受容体によって認識され、その結果、GALNS効果的な取り込みに不可欠である。
全てのスルファターゼと同様に、GALNSは、活性を得るために、スルファターゼ修飾因子1(SUMF1)遺伝子によってコードされるホルミルグリシン活性化酵素(FGE)によって、プロセッシングされる必要がある。活性部位のシステイン残基のCα−ホルミルグリシン(FGly)への翻訳後修飾を伴う、この活性化ステップのために、組み換え型スルファターゼの過剰発現は、低い比活性を有するスルファターゼ酵素(すなわち、活性化されたスルファターゼ酵素と活性化されていないスルファターゼ酵素との混合物)、および低い生成力価(すなわち、活性化されていないスルファターゼの分解および/または非分泌)の両方の生成をもたらす可能性がある。
本発明の目的は、酵素N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼの欠損によって引き起こされるか、またはそれと関連する、モルキオ症候群および他の疾患、例えば、多発性スルファターゼ欠損症(MSD)の治療に有用な、高度にリン酸化された活性なヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ酵素を提供することである。このような高度にリン酸化された活性なヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ酵素は、KSおよびC6Sが中に蓄積する組織に局所化する能力を有し、効果的な取り込みに適切なM6Pレベルを有し、酵素活性のために十分に高いFGlyの割合を有し、比較的高い生成レベルを有する。
本明細書に記載の本発明の方法は、他のリソソームスルファターゼ酵素、例えば、アリールスルファターゼA(ARSA)、アリールスルファターゼB/N−アセチルグルコサミン4−スルファターゼ(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、およびN−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)の生成に適用可能であり、それらの欠損によって、引き起こされ、または特徴づけられるリソソーム蓄積症の治療に有用である、ことが理解されるべきである。
VI. 薬学的組成物および投与
本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、種々の経路によって投与することができる。経口製剤については、リソソームスルファターゼ酵素は、単独でか、または錠剤、粉末、顆粒、またはカプセルを作製するための適切な添加剤、例えば、従来の添加剤、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、またはジャガイモデンプンと、結合剤、例えば、結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプン、またはゼラチンと、崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムと、潤滑剤、例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムと、ならびに所望であれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、および香味剤との組み合わせで使用することができる。
本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、水性または非水性溶媒、例えば、植物性油もしくは他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル、またはプロピレングリコール中に、所望であれば、従来の添加剤、例えば、可溶化剤、等張剤、乳化剤、安定剤、および保存剤と共に、それらを溶解、懸濁、または乳化させることによって、注入用の製剤に製剤化することができる。
本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、吸入を介して投与される、エアロゾル製剤に利用することができる。本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の加圧された許容可能な噴霧剤に、製剤化することができる。
さらに、本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、乳化基剤または水溶性基剤等の種々の基剤と混合することによって、坐薬にすることができる。本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、坐薬を介して直腸に投与することができる。坐薬は、体温で融解しながらも、室温では依然として凝固状態である、ココアバター、カーボワックス、およびポリエチレングリコール等のビヒクルを含むことができる。
経口または直腸投与のための、本発明のリソソームスルファターゼ酵素の単位投与形態、例えば、シロップ、エリキシル、および懸濁液を提供することができ、各投与量単位、例えば、茶さじ、大さじ、錠剤、または坐薬は、活性剤を含有する所定量のリソソームスルファターゼ酵素を含有する。同様に、注入または静脈内投与のための単位投与形態は、滅菌水、生理食塩水、または別の薬学的に許容される担体中の溶液として、リソソームスルファターゼ酵素を含むことができる。
特定の使用において、本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、従来の薬学的調合技術に従って、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤との密接な混合物において、活性成分として、合わせることができる。
担体、希釈剤、または賦形剤は、例えば、経口または非経口(静脈内を含む)投与に望ましい製剤の好ましい形態に応じて、幅広い種類の形態を取ることができる。
経口投与形態のためのリソソームスルファターゼ酵素組成物の調製において、通常の薬学的媒体のうちの任意のもの、例えば、経口液体製剤、例えば、懸濁液、エリキシル、および溶液の場合、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤等、または、経口固体製剤、例えば、粉末、硬もしくは軟カプセル、および錠剤の場合、デンプン、糖類、微小結晶セルロース等の担体、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等を採用することができ、経口固体製剤が、経口液体製剤よりも好ましい。
本発明は、本明細書に記載のGALNS酵素調製物の任意の製剤であって、任意で約0.1〜5mg/mL(または0.5〜1.5mg/mL)のタンパク質濃度および任意で約5〜5.8のpHであり、(i)前記GALNS酵素の脱リン酸化を低減するのに効果的な量のリン酸緩衝液、および(ii)アミノ酸塩、アミノ酸緩衝液、界面活性剤、およびポリオールからなる群から選択される、1つ以上の安定剤の安定量を含む、製剤を提供する。幾つかの実施形態において、製剤は、第2の緩衝剤を含んでもよい。ある実施形態において、製剤は、本明細書に記載の組み換え型ヒトGALNS酵素調製物の任意のもの、約25mM〜約75mMの濃度のリン酸緩衝液、約10mM〜約30mMの濃度の酢酸緩衝液、およびタンパク質凝集を低減させる安定剤を含む。幾つかの実施形態において、製剤は、アルギニンまたはヒスチジンの塩または緩衝液、および任意で非イオン性界面活性剤、ならびに任意で三価以上のポリオール(糖アルコール)を含む。具体的な実施形態において、製剤は、アルギニン塩または緩衝液、ポリソルベート、任意でポリソルベート20、およびソルビトールを含む。これらの実施形態のいずれにおいても、リン酸緩衝液は、NaH2PO4であってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、酢酸緩衝液は、NaOAc/HOAcであってもよい。
第2の緩衝剤は、所望の範囲内にpHを維持するために好適な任意の薬剤であってもよい。好適な緩衝剤には、トリス、クエン酸、コハク酸、酢酸、グルコン酸、または他の有機酸の緩衝液が含まれる。幾つかの実施形態において、安定剤は、アミノ酸塩または緩衝液、任意でアルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、ロイシン、2−フェニルアラニン、またはグルタミン酸の塩または緩衝液である。幾つかの実施形態において、安定剤は、界面活性剤、任意で非イオン性界面活性剤である。好適な界面活性剤には、ポリソルベート、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80、ポロキサマー、例えば、ポロキサマー188または184、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシプロピレン誘導体、ナトリウムモノラウレート、およびSDSが挙げられる。既知の非イオン性界面活性剤の非限定的な例には、アルキレンオキシド、一般的にエチレンオキシド、一般的に6〜30個のエチレンオキシド基を有する、脂肪族の、第1級もしくは第2級の直鎖もしくは分枝鎖のアルコールまたはフェノールが挙げられる。他の既知の非イオン性界面活性剤には、モノまたはジアルキルアルカノールアミド、アルキルポリグリコシド、およびポリヒドロキシ脂肪酸アミドが挙げられる。既知の陰イオン性界面活性剤の非限定的な例には、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸、アルカリルスルホン酸、アルキルコハク酸、アルキルスルホコハク酸、N−アルコイルサルコシネート(N−alkoyl sarcosinate)、アルキルリン酸、アルキルエーテルリン酸、アルキルエーテルカルボン酸、およびα−オレフィンスルホン酸、のナトリウム塩、アンモニウム塩、ならびにモノ、ジ、およびトリエタノールアミン塩が挙げられる。アルキル基は、一般的に、8〜18個の炭素原子を含有し、不飽和であってもよい。アルキルエーテル硫酸、アルキルエーテルリン酸、およびアルキルエーテルカルボン酸は、1つの分子当たり、1〜10個のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド単位を含有することができ、好ましくは、1つの分子当たり、2〜3個のエチレンオキシドを含有する。既知の陰イオン性界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウムまたはアンモニウム、およびラウリルエーテル硫酸ナトリウムまたはアンモニウムが挙げられる。既知の両性界面活性剤の非限定的な例には、アルキルアミンオキシド、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルグリシネート、アルキルカルボキシグリシネート、アルキルアンホプロピオネート、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、アシルタウリン、およびアシルグルタメートが挙げられ、アルキルおよびアシル基は、8〜18個の炭素原子を有する。
幾つかの実施形態において、安定剤は、ポリオールまたは糖類、好ましくは、三価以上の糖アルコールである。安定なポリオールには、エリトリトール、アラビトール、マルチトール、セロビイトール(cellobiitol)、ラクチトール、マンニトール、トレイトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロール、およびグリセリンが挙げられる。既知のポリオールにはまた、ラクトース、トレハロース、およびスタキオース由来のアルコールが含まれる。既知の非還元糖には、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、およびラフィノースが含まれる。既知の糖にはまた、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース、二糖、例えばラクトース、マルトース、スクロース、三糖、例えばラフィノース、および多糖、例えばデキストランが含まれる。
本発明はまた、精製された組み換え型ヒトGALNS酵素の脱リン酸化を防ぐ方法であって、前記GALNS酵素と、脱リン酸化を低減するために効果的な量のリン酸緩衝液、任意で最終濃度約25mM〜75mMのリン酸緩衝液と混合することを含む、方法を提供する。幾つかの実施形態において、精製された組み換え型ヒトGALNS酵素はまた、上述のあらゆる薬剤を含む、第2の緩衝剤と混合される。幾つかの実施形態において、酵素は、アミノ酸塩、アミノ酸緩衝液、界面活性剤、およびポリオールからなる群から選択される、1つ以上の安定剤の安定量と混合される。例示的な実施形態において、脱リン酸化の量は、例えば、室温(例えば、25℃)での1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヶ月の保管後に試験した場合、1mMのリン酸緩衝液中の同じ酵素の製剤と比較して、減少する。具体的な実施形態において、加速安定性試験は、40℃で、このような期間保管した後に実行される。
ある実施形態において、GALNS製剤における脱リン酸化の減少(1mMリン酸緩衝液と比較して)は、少なくとも約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、または約50%以上であり得る。別の実施形態において、製剤中のGALNSにおけるビスリン酸化されたマンノース7(BPM7)のレベルは、約25%〜約40%、または約30%〜35%である。
前述の製剤または方法のいずれの実施形態においても、GALNS酵素は、組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素であって、配列番号4のアミノ酸27〜522と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み、(i)非還元条件でSDS−PAGEに供されるとき、クマシーブルー染色により判定される、少なくとも約95%の純度を有し、(ii)位置53のシステイン残基のCα−ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約80%の変換を有し、(iii)単量体タンパク質鎖当たり、0.5〜0.8のビスリン酸化されたオリゴマンノース鎖を有し、前記GALNS酵素の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%が、還元条件下でSDS−PAGEに供されるときのクマシーブルー染色、またはSDS−キャピラリーゲル電気泳動(SDS−CGE)によって判定される、前駆体形態にある、酵素であり得る。
経皮投与経路に関して、薬物の経皮投与のための方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Edition,(Gennaro et al.,Eds.Mack Publishing Co.,1985)に開示される。真皮または皮膚パッチは、本発明のリソソームスルファターゼ酵素の経皮送達のための好ましい手段である。パッチは、好ましくは、リソソームスルファターゼ酵素の吸収を増加させるため、DMSO等の吸収増進剤を提供する。経皮的な薬物送達の他の方法は、米国特許第5,962,012号、同第6,261,595号、および同第6,261,595号に開示され、そのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
薬学的に許容される賦形剤、例えば、ビヒクル、アジュバント、担体、または希釈剤は、市販で入手可能である。さらに、薬学的に許容される補助剤、例えば、pH調節剤および緩衝剤、張度調節剤、安定化剤、湿潤剤等もまた、市販入手可能である。
これらの態様のそれぞれにおいて、リソソームスルファターゼ酵素組成物には、限定されるものではないが、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内、および静脈内を含む)、肺(鼻腔もしくは口腔吸入)、または鼻腔内の投与に好適な組成物が含まれるが、いかなる場合においても、最も好適な経路は、治療される症状の性質および重症度、ならびに活性成分の性質に、部分的に依存することになる。例示的な投与経路は、経口および静脈経路である。リソソームスルファターゼ酵素組成物は、簡便に、単位投与形態において存在し、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
投与の容易さのため、錠剤およびカプセルが、最も有利な経口投与単位形態を代表であり、この場合、固体の薬学的担体が明らかに採用される。所望であれば、錠剤は、標準的な水性または非水性技術によりコーティングされてもよい。これらの組成物中の活性なリソソームスルファターゼ酵素の割合は、当然ながら、多様であり、簡便には、その単位の重量の約2パーセント〜約60パーセントであってもよい。
本発明のリソソームスルファターゼ酵素組成物は、ウイルスのエンベロープもしくは小胞に封入または付加するか、あるいは細胞内に組み込んで投与することができる。小胞は、通常は球状であり、しばしば脂質である、ミセル粒子である。リポソームは、二分子層膜から形成される、小胞である。好適な小胞には、限定されるものではないが、単層の小胞および多重層の脂質小胞またはリポソームが挙げられる。このような小胞およびリポソームは、広範な脂質またはリン脂質化合物、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、糖脂質、ガングリオシド等から、例えば、米国特許第4,394,448号に記載のもの等、標準的な技術を使用して、作製することができる。このような小胞またはリポソームは、細胞内にリソソームスルファターゼ酵素を投与するため、および標的器官にリソソームスルファターゼ酵素を送達するために使用することができる。目的のリソソームスルファターゼ酵素の制御された放出はまた、封入を用いて達成することができる(例えば、米国特許第5,186,941号を参照されたい)。
血流内、または好ましくは、少なくとも血液脳関門の外側で、リソソームスルファターゼ酵素組成物を希釈する、任意の投与経路が使用可能である。好ましくは、リソソームスルファターゼ酵素組成物は、末梢に、最も好ましくは、静脈内、または心臓カテーテルによって投与される。頸静脈内および頸動脈内注入もまた、有用である。リソソームスルファターゼ酵素組成物は、腹腔内、皮下、または筋肉内等、局所的または局部的に投与されてもよい。一態様において、リソソームスルファターゼ酵素組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に投与される。
当業者は、用量レベルが、特定のリソソームスルファターゼ酵素、症状の重症度、および副作用に対する対象の感受性に応じて、変化する可能性があることを、容易に理解するであろう。所定のリソソームスルファターゼ酵素に対する好ましい投与量は、限定されるものではないが、患者、試験動物、およびインビトロで行われる、用量反応および薬物動態評価を含む、種々の手段によって、当業者により容易に決定することができる。
投与される投与量はまた、個別の必要性、所望の効果、使用される具体的なリソソームスルファターゼ酵素、および選択された投与経路にも依存する可能性がある。リソソームスルファターゼ酵素の投与量は、約0.2pmol/kg〜約20nmol/kgの範囲であり、好ましい投与量は、2pmol/kg〜2nmol/kgの範囲であり、特に好ましい投与量は、2pmol/kg〜200pmol/kgの範囲である。あるいは、リソソームスルファターゼ酵素の投与量は、0.01〜1000mg/kgの範囲内であってもよく、好ましい投与量は、0.1〜100mg/kgの範囲内であってもよく、特に好ましい投与量は、0.1〜10mg/kgの範囲である。これらの投与量は、例えば、限定されるものではないが、特定のリソソームスルファターゼ酵素、薬学的組成物の形態、投与の経路、および特定のリソソームスルファターゼ酵素の作用部位によって、影響されることになる。
本発明のリソソームスルファターゼ酵素は、動物、具体的にはヒトにおける、治療的、予防的、および診断的な診療に有用である。リソソームスルファターゼ酵素は、特定の組織において、選択的蓄積を示す場合がある。診断用途に好ましい医学的指標は、例えば、目的の標的器官(例えば、肺、肝臓、腎臓、脾臓)と関連する、任意の症状を含む。
本主題の方法は、種々の異なる疾患症状の治療における使用を見出す。ある実施形態において、所望の活性を有するリソソームスルファターゼ酵素は、既に特定されているが、そのリソソームスルファターゼ酵素は、完全に満足できる治療結果をもたらすようには、標的部位、領域、または区分に十分に送達されない疾患症状における、本主題の方法の使用が、特に興味深い。このようなリソソームスルファターゼ酵素を用いて、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素を生成する、本主題の方法を使用して、リソソームスルファターゼ酵素の治療効果および治療指数を強化することができる。
治療は、リソソームスルファターゼ酵素の投与と関連する患者にとって有益な結果を包含することを意味し、疾患にかかる可能性の減少、疾患の予防、疾患の進行の減速、停止、もしくは逆行、または宿主を苦しめている疾患症状と関連する症状の緩和を含み、あらゆる緩和または利点は、広い意味で使用され、少なくともパラメータ、例えば、治療される病状と関連する症状、例えば関連する炎症および疼痛等の減少を指す。このように、治療には、病状、または少なくともそれと関連する症状が、完全に阻害される、例えば、発生の予防、または停止、例えば、終結され、その結果、宿主は、もはやその病状を患わないか、または少なくともその病状を特徴付ける症状をもはや患わなくなる、状況もまた含まれる。
種々の宿主または対象が、本主題の方法に従って、治療可能である。一般的に、このような宿主は、「哺乳動物」または「哺乳類」であり、これらの用語は、哺乳綱の分類内の生物を記載して広く使用され、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、ならびに霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む。多くの実施形態において、宿主は、ヒトである。
これまで本発明について一般的に記載してきたが、同様のことは、以下の参照から以下の実施例を通じて、より容易に理解することができ、これらは、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素の生成および精製のための例示的なプロトコル、ならびにリソソーム蓄積症の治療におけるそれらの使用を提供する。実施例は、例示の目的でのみ提供され、決して本発明の範囲を制限するように意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度等)に関して、正確性を確保するために、努力を尽くしたが、いくらかの実験的誤差および偏差は、当然ながら、許容されるべきである。
実施例I
ヒトスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)およびヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の哺乳動物発現ベクター
安定にトランスフェクトされた細胞内に、改善されたリン酸化レベルを有する、十分な量の活性なリソソームスルファターゼ酵素を生成するために適切な哺乳動物発現ベクターを構築することを目的とした。
374アミノ酸ポリペプチドをコードする、全長ヒトスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)のcDNA(2005年6月9日公開の米国特許出願第US20005/0123949号、および2004年11月8日公開の同第US2004/0229250号を参照されたく、これらの両方は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる)を、ヒトCMVエンハンサー−プロモーターおよび複数のクローニング部位を含む、哺乳動物発現ベクターのcDNA4(Invitrogen, Carlsbad, CA)にクローニングした。効率的な転写終結を、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列の存在により確保した。選択マーカーは、EM−7プロモーターの制御下のゼオシン耐性遺伝子およびSV40初期ポリアデニル化配列であった。結果として得られたプラスミドを、pcDNA4 SUMF1と示した。ヒトSUMF1ポリヌクレオチド(配列番号1)およびポリペプチド(配列番号2)の配列を、それぞれ、図1および図2に示す。
26アミノ酸のシグナルペプチドを含む、522アミノ酸のポリペプチドをコードする、全長ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)のcDNA(Tomatsu et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.181(2):677−683,1991を参照されたい)を、ウサギβグロビンIVS2イントロンに結合したヒトCMVエンハンサー−プロモーターおよび多重クローニング部位を含む、哺乳動物発現ベクターpCIN(BioMarin)にクローニングした。効率的な転写終結を、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列の存在により確保した。選択マーカーは、酵素効率を減少させるための点変異を有する、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子であった。減弱化されたマーカーを、弱いHSV−tkプロモーターでさらにハンディキャップをつけた。結果として得られたプラスミドを、pCIN 4Aと示した。ヒトGALNSポリヌクレオチド(配列番号3)およびポリペプチド(配列番号4)の配列を、それぞれ、図3および図4に示す。
SUMF1およびGALNSの発現レベルを増加させるために、足場/マトリックス付着領域(MAR)要素(Mermodら、米国特許第7,129,062号を参照されたい)を、SUMF1およびGALNSの発現プラスミドにクローニングした。
BMAR SUMF1は、BamHIおよびHincIIでP<1_68 X_X NcoI充填MAR(Selexis)を消化し、次に、放出されたMAR断片を、BglIIおよびNruIで消化したpcDNA4 SUMF1に挿入することによって作製した。
PMAR SUMF1は、HindIIIおよびXbaIでP<1_68 NcoI充填(MAR)SV40 EGFP(Selexis)を消化してEGFP遺伝子を除去し、次いで、HindIIIおよびXbaIでの消化により、pcDNA4 SUMF1から放出された、SUMF1遺伝子を挿入することにより作製した。
BMAR 4Aは、PmeIおよびSpeIでBMAR SUMF1を消化してSUMF1遺伝子を除去し、次いで、PmeIおよびSpeIでの消化によりpCIN 4Aから放出された、GALNS遺伝子を挿入することにより作製した。
PMAR 4Aは、P<1_68 NcoI充填(MAR) SV40 EGFP(Selexis)を、HindIIIおよびXbaIで消化してEGFP遺伝子を除去し、次いで、HindIIIおよびXbaIでの消化によりpCIN 4Aから放出された、GALNS遺伝子を挿入することにより作製した。
全長ヒトGALNSのcDNAもまた、哺乳動物発現ベクターpcDNA4(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした。pCDNA4 SUMF1を、HindIIIおよびXbaIで消化してSUMF1 cDNAを除去し、pCIN 4AをHindIIIおよびXbaIで消化して、GALNS cDNAを単離した。GALNSのcDNA HindIII/XbaI断片を、pcDNA4ベクターのHindIII/XbaI断片に、連結させた。結果として得られたプラスミドを、pcDNA4−4Aと示した。
pCIN 4A、BMAR、およびCDNA4−4A発現ベクター内のGALNS遺伝子の完全性を、New England Biolabsから入手した酵素を使用して、制限酵素マッピングにより確認した。PMAR 4A発現ベクターはマッピングしなかった。
ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の完全なプロセッシング形態の構造を、図5に描写する。GALNSは、26アミノ酸のシグナルペプチド配列を有する、522アミノ酸のポリペプチドとして発現する。496アミノ酸のGALNSポリペプチドは、約55〜60kDaの分子量を有する酵素のプレプロセッシング(前駆体)形態として分泌される。活性なGALNSにおいて、前駆体または完全にプロセッシングされたGALNSポリペプチドの位置53のシステイン残基(全長GALNSポリペプチドの位置79に対応する)は、スルファターゼ修飾因子1(SUMF1)によってCα−ホルミルグリシン(FGly)に変換されている。リソソームにおいて、GALNSは、完全にプロセッシングされたGALNSポリペプチドの位置325の後で切断され、約40kDaおよび19kDaのGALNSペプチド断片をもたらす。これらのGALNSペプチドを、完全にプロセッシングされたGALNSポリペプチドの位置282と393のシステイン(C)残基間のジスルフィド架橋により結合する。完全にプロセッシングされたGALNSポリペプチドの位置178および397に、2つの基準のN結合型グリコシル化部位が存在する。2つのマンノース−6−リン酸残基を含む、ビスリン酸化されたマンノース7(BPM7)は、N397ではなく、N178に見出されている。
実施例II
ヒトスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)およびヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)を共発現するG71S細胞株
改善されたリン酸化レベルを有する、活性なリソソームスルファターゼ酵素を生成する能力のある細胞株を開発することを目的とした。
G71細胞(Rockford K.Draper)を、CHO−K1(ATCC CCL−61)から直接的に誘導した。G71細胞株は、エンドソームの酸性化に関する、CHO−K1の温度感受性変異体であり、高温において、全タンパク質の分泌および複数の酵素のマンノース残基上のリン酸化に、差を生むことが観察されている(Park et al.,Somat.Cell Mol.Genet.17(2):137−150,1991、Marnell et al.,J.Cell.Biol.99(6):1907−1916,1984)。
G71細胞を、2.5%のウシ胎児血清、2mMのグルタミン、ゲンタマイシン、およびアンホテリシンを補充したBioWhittaker UltraCHO培地において、34℃で維持した。
タンパク質生成のための細胞株のより容易な使用を可能にするために、付着G71細胞を、足場依存性、血清依存性の哺乳動物細胞を高密度無血清懸濁培養液に適合させるためのプロトコルを使用して、無血清増殖培地に前適合させ(Sinacore et al.,Mol.Biotechnol.15(3):249−257,2000)、結果として無血清懸濁培養液適合した細胞株、G71Sを得た。あるいは、付着G71細胞は、以下に記載のように安定にトランスフェクトした後に、Sinacoreらに概説されるように、無血清増殖培地に適合させてもよい。
ヒトSUMF1およびヒトGALNSの発現ベクターの対をなす組み合わせ(実施例I)、pcDNA4 SUMF1とpCIN4 4A、BMAR SUMF1とBMAR 4A、またはPMAR SUMF1とPMAR 4Aのいずれかを、Selexisによって記載のMARtech IIプロトコルに従って、抗生抗真菌性溶液(100IUのペニシリン、10mgのストレプトマイシン、25μgのアンホテリシンB、Cellgro)を補充した培養培地で増殖させたG71S細胞にトランスフェクトした。トランスフェクタントのプールを、5%のγ照射ウシ胎児血清(FBS、JRH)、200μg/mLのG418(AG Scientific)、および200μg/mLのゼオシン(Invitrogen)を補充したUltraCHO培地(Cambrex)で増殖させ、同じ増殖培地において96ウェルプレート中での限界希釈により、クローニングした。クローンの増殖を、Cell Screen(Innovatis)撮像により監視した。酵素捕捉活性ELISAを使用して、全てのクローンを、活性なGALNSについてスクリーニングした(実施例IVを参照されたい)。細胞生産性を、4日間の期間にわたって、GALNS活性についての酵素捕捉活性ELISAを、1日当たりの細胞増殖(Vi−Cell,Beckman Coulter)で割ることにより、計算した。
202個のG71Sクローンを生成し、活性なGALNSについてスクリーニングした。pcDNA4 SUMF1とpCIN 4Aとでコトランスフェクトしたクローン86個、BMAR SUMF1とBMAR 4Aとでコトランスフェクトしたクローン65個、PMAR SUMF1とPMAR 4Aとでコトランスフェクトしたクローン51個。クローンは、最初に、高レベルの活性なGALNSを基準に、96ウェル組織培養プレートから選択した(図6A)。GALNS活性を、酵素捕捉活性ELISAを使用して測定し、ng/mL(y軸)で表した。x軸は、SUMF1およびGALNSの発現に使用した3つのコトランスフェクション条件を示す。MARを有しないhCMVプロモーター、MARを有するhCMVプロモーター、およびMARを有するSV40プロモーター。各棒は、それぞれの集団に由来する単一のクローンを表す。細胞密度は、この96ウェルのクローンスクリーニングにおいては考慮せず、また、コトランスフェクトしたG71Sクローンの全てがこの図に表示されているわけではない。
最も高く活性なGALNSを生成するG71Sクローンを、生産性分析のために選択した(図6B)。日毎の細胞生産性は、pg/細胞/日で測定し、GALNS活性をその日の細胞密度で割ることによって得た。この図は、5×105細胞/フラスコで播種した後、4日目(96時間)を示す。クローンを、pg/細胞/日(y軸)で、酵素活性ELISAを使用してGALNSについてアッセイした。陽性対照は、GALNSを発現するBHKおよびCHOクローンから構成された(BioMarin)。各縦棒は、単一のクローンを表す。活性なGALNSは、pCIN 4Aクローンによって生成されたが、アッセイの背景をわずかに上回るのみであった。
96ウェルスクリーニングおよび4日間の生産性アッセイによるクローンの分析は、MAR要素を有する発現ベクターのコトランスフェクションが、MARを有しない発現ベクターのコトランスフェクションと比較して、G71Sクローンの生産性を増加させたことを示した。BMAR 4A+BMAR SUMF1をコトランスフェクトされたクローンは、迅速なプール生成、急速なクローン増殖、ならびにPMAR 4Aクローンよりも2倍よりも多く、MAR要素が不足しているCHO 4AおよびBHK 4Aクローンよりも最大10倍増加した活性なGALNSを生成する能力を示した。
GALNS発現G71Sクローンを、Sinacore et al.,Mol.Biotechnol.15(3):249−257,2000に概説されるプロトコルを使用して、無血清培地に適合させた。完全な適合を、両方の選択薬剤(ゼオシン200μg/mLおよびネオマイシン200μg/mL)の存在下で行った。T型フラスコで培養したGALNS発現G71クローンを、次のように分けた。(1)Cambrex UltraCHO培地および5%FBS(ロット#8L2242)を有する125mLのシェーカー内、(2)JRH 302M培地(生成培地)および5%のFBSを有する125mLのシェーカー内、ならびに(3)予備としてT型フラスコ内(UltraCHO、5%FBS)。懸濁培養液を確立した時点で、付着細胞を廃棄し、FBSからの離脱を開始した。増殖速度が3継代の間に>0.5(1/日)に戻り、生存率が>95%になったときに、FBS濃度を、50%減少させた。細胞は、最低3回の継代の間、ある所定のFBS濃度に留めた。2.5%FBSにおける増殖に適合した時点で、細胞を無血清培地中に直接取り出した。細胞を、10%(v/v)のDMSOを有する新しい培地に貯蔵した。試験的な解凍を、細胞が凍結プロセスを生存したことを確実にするために、試験した。BMAR 4A+BMAR SUMF1トランスフェクション由来の2つのGALNS発現G71Sクローンである、クローン4および5は、無血清懸濁培養液への適合に、おおよそ15回の継代を要した。pcDNA4 SUMF1とpCIN 4Aとのトランスフェクション由来のGALNS発現クローンであるC6もまた、単離し、無血清培養液に適合させた。
ヒトSUMF1およびヒトGALNS発現ベクター(実施例I)、pcDNA4 SUMF1とpCDNA4−4Aの対をなす組み合わせを、200μg/mLゼオシン(Invitrogen)を選択に使用したこと以外は、基本的に上述のようにG71S細胞にトランスフェクトした。6つのGALNS発現クローン、C2、C5、C7、C10、C11、およびC30を単離し、基本的に上述のように、無血清懸濁培養液に適合させた。
実施例III
ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)を発現するG71S細胞株の大規模培養
ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)を発現するG71Sクローンからの酵素生成を測定することを目的とした。無血清懸濁培養液に適合させた、ヒトSUMF1およびヒトGALNSを共発現するG71S細胞株を、大きな規模で培養し、活性なGALNS酵素の生成について評価した。
無血清懸濁培養液への適合が、G71S宿主細胞株については比較的迅速であったため、生成は、灌流形式で動作するWAVEバイオリアクターで行うことができると判断した。WAVEバイオリアクターは、スケールアップを直接的にバッグ内で行い、汚染の危険性を減少させ、物質の生成を促進することができるため、カラム内の体積において、より高い柔軟性を可能にする。図7は、WAVEバイオリアクターの概略図を示す。図は、灌流形式において、ロードセルが、バッグの重量を判定し、供給および収集の速度を調節して所望の体積を維持することによって、バッグ内の培地量を監視することを示す。10Lのバッグにおいては、pHもまた、バッグ内に挿入したプローブによって、所望の設定点に制御される。
GALNS発現G71Sクローン4および5由来の物質を、1Lのスケールで生成した。培養液のpHは、これらの実行中、制御しなかった。WAVEバッグの動作限界は、1日当たり3容器量(VV/日)の処理量である。物質のあらゆる不活性化を防止するためには、標的細胞に特異的な灌流速度(CSPR)は、0.3nl/細胞/日であり、結果として、GALNS酵素について8時間の平均滞留時間をもたらした。したがって、バッグ内の細胞密度は、おおよそ10〜12×106細胞/mLに維持された。GALNS発現G71Sクローン4および5の増殖速度は、それぞれ、0.16および0.20であった。標的細胞の密度を維持するための排出は、バッグから直接的に行った。
GALNSが、pH6で安定であることを事前に示していたため、収集流体のpHを、pH5.5〜6.5に調節して酵素活性を維持した。これは、リアクターから出ている収集物と順に混合された、5体積%、pH4.0のクエン酸ナトリウム緩衝液を、指定時間にボーラス添加することにより達成した。調節した収集流体を、下流処理の前に、4℃で保管した。2つのGALNS発現G71Sクローン4および5は、平均して、約1.25pg/細胞/日の関連する特異的生産性を有する、約4.2mg/Lの力価となった。
GALNS発現G71Sクローン、C2、C5、C6、C7、C10、C11、およびC30を、同様に、大きな規模で培養し、活性なGALNS酵素の生成について評価した。
実施例IV
ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の濃度および活性の測定
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を、ヒトSUMF1およびヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)を共発現するG71Sクローン由来のGALNS酵素の濃度および活性を測定するために展開した。
酵素捕捉活性ELISA
酵素捕捉活性ELISAは、ELISAプレートに結合した抗GALNS特異的抗体による捕捉に続いて、固相においてGALNS酵素の活性を測定する。
緩衝液。緩衝液A(炭酸塩緩衝液):3.09グラムのNa2CO3および5.88グラムのNaHCO3を900mLの脱イオン(DI)H2O中に溶解し、次いで、DI H2Oを、1000mLの最終体積まで添加する。pHが、9.4〜9.6であることを確認し、次いで、濾過滅菌する。1つの96ウェルマイクロプレートを、ウェル当たり100μLで完全にコーティングするために、19μLの抗GALNS抗体を、1つの管(12mL)の中に希釈する。緩衝液B(ELISAブロッキング緩衝液および連続希釈緩衝液):1倍の酸性PBS、0.05% Tween−20、および2%BSAを、酢酸でpH 6.5に調節した。緩衝液BW(洗浄緩衝液):100mM NaOAcおよび0.05% Tween−20を、酢酸でpH6.5に調節した。緩衝液C(基質緩衝液):25mM酢酸ナトリウム、1mM NaCl、0.5mg/mL脱塩BSA、および0.01% アジ化ナトリウムを、氷酢酸でpH4.0に調節した。緩衝液D(β−ガラクトシダーゼ緩衝液):300mMリン酸二ナトリウム、0.1mg/ml BSA、0.01%アジ化ナトリウム、および0.01%Tween−20を、リン酸でpH7.2に調節した。緩衝液E(停止緩衝液):350mMグリシンおよび440mM炭酸塩緩衝液を、6M NaOHで、pH10.7に調節した。
試薬。抗GALNS IgG抗体:ポリクローナルウサギ抗体を、血清からGタンパク質で精製する。D−PBS中、全タンパク質=3.17mg/mL(BCA)。アリコート(19μL)は、それぞれ1回の使用のために−20℃で保管する。4MU−Gal−6−S基質(固体、440MW):100mMのストックをDI水中で調製し、4℃で保管した。β−ガラクトシダーゼ(Sigma G−4155):使用前に、緩衝液D中で12μg/mLに希釈する。
プロトコル:抗GALNS抗体のプレートへの結合:Nunc MaxiSorp ELISAプレート(Nalge/Nunc International,Fisher #12−565−135)を、緩衝液A中で、最終タンパク質濃度5μg/mLにおいて、抗GALNS抗体でコーティングする。この溶液を調製するために、1つの19μLアリコートを解凍し、微量遠心分離機で短時間(10秒)回転させて、液体を収集する。19μL全てを、12mLの緩衝液Aに移す。反転によって激しく混合し、次いで、リザーバに注ぎ、その後、マルチチャネルピペッターを使用して、プレート充填を行う(ウェル当たり100μL)。プレートを覆い、4℃で一晩インキュベートする。結合していない抗GALNS抗体の除去:緩衝液BWを3回多量に注ぐことによりプレートを洗浄する。ブロッキング:緩衝液B(ウェル当たり320μL)でプレートをブロッキングし、次いで、プレートを覆い、37℃で1時間インキュベートする。ブロッキングのステップ中の、精製されたGALNS標準および試験試料(未知)の希釈系列の調製:標準物は、アッセイの線形範囲の上限まで、緩衝液B中で希釈し(列Aにおいて128ng/mL)、次いで、96ウェルプレートの列B〜Gに連続希釈する(2倍)。レーンHは、緩衝液のブランクである(すなわち、GALNS酵素なし)。まず、緩衝液B中で、濃度128ng/mLで500μLを調製する。次いで、2ng/mLに達するまで、緩衝液B中で連続2倍希釈(250μL中に250μLを入れる)を行う。ブロッキング緩衝液の除去:ブロッキングステップの後、緩衝液Bを廃棄する。GALNS酵素の標準および試験試料の、抗GALNS抗体への結合:プレートに、100μL/ウェルの連続希釈した標準および試験試料を充填する(2部で操作)。プレートを覆い、37℃で1時間インキュベートする。GALNS阻害剤の除去:緩衝液BWを3回多量に注ぐことによりプレートを洗浄する。GALNS基質の添加(第1の反応):ウェル当たり100μLの充填に十分な最終基質溶液を調製する(使用前1時間以内に調製する)。4MU−Gal−6−Sストック溶液(100mM)を、緩衝液C中で1mMに希釈する。ウェル当たり100μLを充填する。プレートを覆い、37℃で30時間インキュベートする。β−ガラクトシダーゼの添加(第2の反応):50μLの12μg/ml β−ガラクトシダーゼを、緩衝液D中で、各ウェルに添加する。プレートを覆い、37℃で15時間インキュベートする。停止反応:100μLの緩衝液E(停止緩衝液)を各ウェルに添加し、放出された4MUをイオン化する。蛍光プレートへの移動:ELISAプレートの各ウェルから、250μLのうち200μLを、黒色の未処理平底マイクロタイタープレート(Fluoroplate,Costar #3915)に移動させる(1度に8ウェル)。蛍光の読み取り:SOFTmax PROプログラム(366nm励起、446nm発光、435nmカットオフ)を使用して、プレートを、Geminiプレートリーダー(Molecular Devices Corporation)で読み取る。
GALNS ELISA
GALNS ELISAは、サンドイッチ免疫学的アッセイを使用して、細胞培養馴化培地または他のプロセス試料における、GALNS酵素の濃度を測定する。
緩衝液。緩衝液A(炭酸塩緩衝液):3.09グラムのNa2CO3および5.88グラムのNaHCO3を900mLの脱イオン(DI)H2O中に溶解し、次いで、DI H2Oを、1000mLの最終体積まで添加する。pHが、9.4〜9.6であることを確認し、次いで、濾過滅菌する。1つの96ウェルマイクロプレートを、ウェル当たり100μLで完全にコーティングするために、19μLの抗GALNS抗体を、1つの管(12mL)の中に希釈した。緩衝液B(ELISAブロッキング緩衝液および連続希釈緩衝液):1倍の酸性PBS、0.05% Tween−20、および2%BSAを、酢酸でpH6.5に調節した。緩衝液BW(洗浄緩衝液):100mM NaOAcおよび0.05% Tween−20を、酢酸でpH6.5に調節した。緩衝液F(停止緩衝液):2N H2SO4:合計600mL、100mLの12N H2SO4および500mLのMilliQ水を添加。
試薬。抗GALNS IgG抗体:ウサギポリクローナル抗体を、血清からGタンパク質で精製する。D−PBS中、全タンパク質=3.17mg/mL(BCA)。アリコート(19μL)は、それぞれ1回の使用のために−20℃で保管する。HRP共役型検出抗体(RIVAH):最終的な共役抗体を、1:100でD−PBS/1% BSA中に希釈し、1回の使用のために−20℃で、120μLアリコートで保管した。TMB EIA Substrate Kit(BioRad #172−1067)。
プロトコル。抗GALNS抗体のプレートへの結合:Nunc MaxiSorp ELISAプレート(Nalge/Nunc International,Fisher #12−565−135)を、緩衝液A中で、最終タンパク質濃度5μg/mLにおいて、抗GALNS抗体でコーティングする。
この溶液を調製するために、1つの19μLアリコートを解凍し、微量遠心分離機で短時間(10秒)回転させて、液体を収集する。19μL全てを、12mLの緩衝液Aに移す。反転によって激しく混合し、次いで、リザーバに注ぎ、その後、マルチチャネルピペッターを使用して、プレート充填を行う(ウェル当たり100μL)。プレートを覆い、37℃で(対流インキュベーター)2時間インキュベートする。ホットブロックは使用しないものとする。結合していない抗GALNS抗体の除去:緩衝液BWを3回多量に注ぐことによりプレートを洗浄する。ブロッキング:緩衝液B(ウェル当たり320μL)でプレートをブロッキングし、次いで、プレートを覆い、37℃で1時間インキュベートする。ブロッキングのステップ中の、精製されたGALNS標準および試験試料(未知)の希釈系列の調製:標準物は、アッセイの線形範囲の上限まで、緩衝液B中で希釈し(列Aにおいて40ng/mL)、次いで、96ウェルプレートの列B〜Gに連続希釈する(2倍)。レーンHは、緩衝液のブランクである(すなわち、GALNS酵素なし)。まず、緩衝液B中で、濃度40ng/mLで500μLを調製する。次いで、0.625ng/mLに達するまで、緩衝液B中で連続2倍希釈(250μL中に250μLを入れる)を行う。ブロッキング緩衝液の除去:ブロッキングステップの後、緩衝液Bを廃棄する。GALNS酵素の標準および試験試料の、抗GALNS抗体への結合:プレートに、100μL/ウェルの連続希釈した標準および試験試料を充填する(2部実行)。プレートを覆い、37℃で1時間インキュベートする。洗浄:緩衝液BWを3回多量に注ぐことによりプレートを洗浄する。検出抗体共役体の結合:この溶液を調製するために、1つのアリコート(120μL)をRIVAHにより解凍し、微小遠心分離機で短時間(10秒)回転させて、液体を収集する。120μL全てを11.9mLの緩衝液B中に希釈し、管を激しく反転させて、混合する。リザーバに注ぎ、マルチチャネルピペッターでウェル当たり100μLを添加する。プレートを覆い、37℃で30時間インキュベートする。洗浄:緩衝液BWを3回多量に注ぐことによりプレートを洗浄する。TMB基質:1.2mLの溶液Bを、10.8mLの溶液Aを混合することによって、最終的な基質溶液を調製する。リザーバに注ぎ、マルチチャネルピペッターでウェル当たり100μLを添加する。プレートを覆い、37℃で15時間インキュベートする。停止溶液:12mLの2N H2SO4停止溶液を、ピペットでリザーバに取り、マルチチャネルピペッターで、ウェル当たり100μLを添加した。穏やかに叩いて、混合する。A450の読み取り:プレートリーダーでプレートを読み取る。
GALNS比活性アッセイ
GALNS比活性アッセイは、GALNSに特異的な基質を使用して、溶液中のGALNSの酵素活性を測定する。
緩衝液。MilliQ H2Oを、全ての緩衝液に対して使用する。希釈緩衝液(DB):1LのDBに対して、1.74mLの酢酸、0.75gの酢酸ナトリウム、233.6mgのNaCl、2mLの50% Tween−20、および10mLの1%アジ化ナトリウムを、MilliQ H2Oに溶解し、pHが3.95未満の場合は0.1M NaOHで、pHが4.05を超える場合は0.1M酢酸で、pHを4.0±0.5に調節する。最終濃度は:19.5mM酢酸、5.5mM酢酸ナトリウム、1mM NaCl、0.1% Tween−20、および0.01%アジ化ナトリウムである。リン酸緩衝液(PB):1LのPBに対して、13.9gのNaH2PO4−H2Oおよび55gのNaHPO4−7H2Oを、MilliQ H2O中に溶解し、pHを7.2に調節する。最終濃度は、300mM NaPiである。停止緩衝液(SB):1LのSBに対して、26.2gのグリシンおよび46.6gの炭酸ナトリウムをMilliQ H2O中に溶解し、NaOHでpHを10.6に調節する。アッセイ緩衝液(AB):4MU−Gal−6Sストックを1:50でDB中に希釈する(最終2mM)。β−ガラクトシダーゼ緩衝液(βGB):300mM NaPi、pH7.2中の25μg/mLβ−ガラクトシダーゼ。
試薬。4MU−Gal−6S:H2O中100mM(Toronto Research Chemicals Cat.#M334480)。β−ガラクトシダーゼ:Sigma G−4155。4−メチルウンベリフェロン(4MU標準):Sigma M−1381(DMSO中の10mMストック)。
プロトコル。GALNS酵素の連続希釈を行う。精製および製剤化されたGALNS(約1.5mg/mL)について、1:1の連続希釈前に、試料を、DBを含有する低タンパク質付着微量遠心分離管(USA Scientific Cat#1415−2600)中で1:10,000に希釈する。100μLのDBを、タンパク質低結合の96ウェルプレートに設置する。第1の列に、100μLのGALNS試料をピペットで入れる。ここで、プレートの下方向に(96ウェルプレートのA〜G)、連続希釈する(1:1)。ウェルHには試料を添加しない(ブランク)。このアッセイの線形範囲は、1〜75ng/mLである。4MUの標準曲線の作成に同じ手順を使用する。DMSO中の10mM 4MUストックを、DB中で1:100に希釈する。4MUの標準曲線を、50μLの50μM 4MUを第1のウェルに添加することにより開始し、続いて連続希釈する。AB中に希釈した50μLの基質(DB中の2mM 4MU−ガラクトース−6S)を、96ウェル蛍光プレートに添加する。基質を、37℃で10分間プレインキュベートする。GALNSおよび4MUの標準の100μLの連続希釈物のうち50μLを、AB中の50μLの基質に添加する。37℃で30分間インキュベートし(この第1の反応により、基質から硫酸を除去する)、第1の反応をクエンチし、50μLのβ−ガラクトシダーゼを添加することにより、第2の反応を開始する(β−ガラクトシダーゼストックをβGB中で25μg/mLに希釈する)。リン酸は、GALNSを阻害し、pHの増加もまた、GALNS反応を停止させる。結果として得られたpHは、現在、β−ガラクトシダーゼの最適pH範囲内である。第2の反応を、37℃で15分間インキュベートする。放出された4MUを、100μLのSBを添加することにより、イオン化する。96ウェル蛍光プレートリーダーで、励起355、発光460を読み取る。酵素活性計算(pH4.0の緩衝液中、37℃で):1単位=μmol放出された4MU/分、活性=μmol 4MU/分/mL、比活性=μmol 4MU/分/mg。タンパク質濃度計算:GALNSの吸光係数を使用(280nmにおいて1mg/mL=1.708吸光度単位)。
実施例V
ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の精製
大量の組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)を得ることを目的とした。ヒトSUMF1およびヒトGALNSを共発現する、安定にトランスフェクトされたG71細胞を、バイオリアクター培養条件下で増殖させ、活性なGALNS酵素を細胞培地から精製した。
液体クロマトグラフィー装置。Unicorn制御ソフトウェアを利用しする、Amersham Pharmacia Biotech AKTA explorer 900システム。
タンパク質分析方法。SDS−PAGE、クマシーブルー染色(B101−02−COOM)、ウェスタンブロット法、およびブラッドフォードタンパク質アッセイについては、標準的な手順に従った。精製作業を、活性の収量により評価し、GALNS生成物の純度をSDS−PAGEによって、目視で評価した。プロセッシングされた不純物の存在を、抗GALNS抗体を使用して、ウェスタンブロット法により検出した。タンパク質濃度を、ブラッドフォードタンパク質アッセイを使用して測定した。最終的な精製されたGALNSタンパク質の濃度を、吸光係数1.708を使用して、A280測定により測定した。
クロマトグラフィー樹脂。Blue Sepharose 6 FF(GE Healthcare,ロット#306346)およびFractogel SE Hi−Cap(Merck KgaA,FC040894449)。
GALNS酵素活性の判定。GALNS比活性を、小分子蛍光基質4−メチルウンベリフェリル−6−S−GAL(4−MU−6−S−GAL)を使用して、判定した。GALNS比活性アッセイは、2ステップの反応を伴い、一定期間、GALNSを基質でインキュベートした後、蛍光タグを放出するためにβ−ガラクトシダーゼの添加が必要である。測定は、蛍光プレートリーダーを使用して行う。
10DG脱塩カラム(Bio−RAD)を、平衡緩衝液(EQB、50mM NaOAc、10mM NaCl、pH5.8)で平衡化した。MilliQ H2Oを、全ての緩衝液に使用した。3(3)mLの精製されたGALNS(0.5〜2mg/mL)を、脱塩カラムに充填し、溶出して、EQBを使用して、別個の試験管中の4mLのアリコートに収集した。タンパク質濃度を、GALNSの吸光係数を使用して、計算した(280nmにおいて1mg/mL=1.708吸光度単位)。
脱塩したGALNS試料を、希釈緩衝液(DB、50mM NaOAc、1mM NaCl、pH4.0+0.5mg/mL BSA)中で連続希釈した(1:1)。BSAストックを、milliQ H2Oで事前に平衡化したG25カラムに50mg/mL BSAストック(5%CV以下)を充填することにより使用する前に、脱塩した。100μLの脱塩GLANS試料を、低タンパク質結合の96ウェルプレートの第1の列にピペットで入れ、連続希釈したGALNS試料を、プレートの下方向にピペットで入れた(96ウェルプレートの列A〜G)。100μLのDBを、最後のウェル(H)にピペットで入れた。このアッセイの線形範囲の上限は、200ng/mLであり、線形範囲は、3〜200ng/mLである。4−メチルウンベリフェロン(4MU)(Sigma M−1381、DMSO中10mMストック)を用いて標準曲線を作成するために、同じ手順を実行した。GALNSおよび4MUの連続希釈物の100μLのうち50μLを、新しい96ウェル蛍光プレート(黒い底のプレート)に移した。50μLの2mM 4MU−ガラクトース−6S(milliQ H2O中)を、アッセイを行う試料に添加し、37℃で30分間インキュベートした。この第1の反応をクエンチし、50μLのβ−ガラクトシダーゼ(Sigma G−4155、300mM NaPi中で12μg/mLの希釈したストック、pH7.2)を添加することにより、第2の反応を開始し、37℃で15分間インキュベートした。放出された4MUを、100μLの停止緩衝液(グリシン/炭酸塩、pH10.6)の添加によりイオン化した。プレートを、96蛍光プレートリーダーで読み取った(励起355nm、発光460nm)。1単位を、1μmolの4MU放出/分として定義し、酵素活性は、μmol 4MU/分/mLで示し、比活性は、μmol 4MU/分/mgで示し、全て、37℃でpH4.0の緩衝液におけるものであった。
第1の精製プロセス。第1の精製プロセスには、限外濾過(UF)ステップ、続いて2カラム精製プロセスが含まれた。
1.収集濾過(HF):バイオリアクター物質を、0.2μm滅菌濾過した。
2.限外濾過(UF):バイオリアクター物質を、30kDのSartocon膜を通す限外濾過によって、10〜20倍に濃縮した。
3.pH4.5に調節:濃縮したバイオリアクター物質(UF(20倍))を、室温において、pH調節緩衝液(1.75M NaOAc、pH4.0)で4.5に調節し、Blue Sepharoseカラムへの充填前に滅菌濾過した。
4.Blue Sepharose 6 Fast Flow(FF):pH4.5に調節したUF(20倍)を、Blue Sepharoseカラムに充填し、GALNSタンパク質を、表1および図9Aに示されるように、溶出した。
5.Fractogel SE Hi−Cap:Blue Sepharoseカラムからの溶出液を、pH4.3に調節し、Fractogel SE Hi−Capカラムに充填し、GALNSタンパク質を、表2および図9Bに示されるように溶出した。
溶出液中のGALNSタンパク質を、分画によって収集し、溶出前のショルダーおよび溶出後のテールを廃棄した。
6.最終UF/HF:Fractogel SE Hi−CAPカラムからの溶出液を、限外濾過により濃縮し、上述のように滅菌濾過した。
製剤。精製したGALNSタンパク質を、10mM NaOAc、1mM NaH2PO4、0.005% Tween−80、pH5.5中に製剤化した。
安定性研究。最終的な製剤化された精製したGALNSの安定性を、4℃〜−70℃において、小アリコートのGALNS試料をそれぞれの温度で保管することによって、時間の関数として監視した。一定の時点において、凍結試料のアリコートを、活性測定前に37℃の水浴で解凍した。図8は、精製されたGALNSが、製剤緩衝液中で、少なくとも79日までの期間にわたり、4℃および−70℃で安定であったことを示す。
第1の精製プロセスの結果。表3は、懸濁培養液バイオリアクターにおいて、G71Sクローン4から生成された、GALNSタンパク質の3回の調製に対する精製収率を示す。純度は、全ての場合において約95%であると、SDS−PAGEによって目視で推定した。
図9は、(A)Blue Sepharose 6 Fast Flowクロマトグラフィー、続いて、(B)Fractogel SE Hi−CAPクロマトグラフィーにより分離したGALNSタンパク質のSDS−PAGEを示す。ゲルを、クマシーブルー(左)または抗GALNS抗体(右)で染色した。ウエスタンブロット法については、抗GALNSウサギ抗体は1:5000に希釈し、二次抗体は、抗アルカリホスファターゼウサギ抗体であった。GALNSタンパク質は、SDS−PAGE上で、約55〜60kDaの見かけの分子量を有し、26アミノ酸残基シグナルペプチドが不足し、位置325後の切断もまた不足している酵素の分泌されるプレプロセッシング(前駆体)形態の予想寸法と一致する。
N末端の特徴付け。精製されたGALNSタンパク質のN末端は、LC/MSにより判定した。N末端配列は、APQPPNであり、これは、26アミノ酸残基のシグナルペプチドが不足しているGALNSの分泌される形態の予測されるN末端に対応する(図4および図5におけるヒトGALNSポリペプチド配列を比較されたい)。
第2の精製プロセス。第2の精製プロセスには、限外濾過/透析濾過(UF/DF)ステップ、続いて3カラム精製プロセスが含まれる。
1.限外濾過(UF/DF):バイオリアクター物質を、pH5.5において、30kDのSartocon膜を通す限外濾過/透析濾過によって、20倍に濃縮した。
2.pH4.5に調節:濃縮したバイオリアクター物質(UF/DF(20倍))を、室温において、pH調節緩衝液(1.75M NaOAc、pH4.0)で4.5に調節し、Fractogel EMD SE Hi−Capカラムへの充填前に滅菌濾過した。
3.Fractogel EMD SE Hi−Cap:pH4.5にpH調節したUF/DFを、Fractogel SE Hi−Capカラムに充填し、10mM酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH4.5、および10mM酢酸塩/リン酸塩、50mM NaCl、pH5.0で連続して洗浄し、GALNSタンパク質を、10mM酢酸塩/リン酸塩、140mM NaCl、pH5.0で溶出した。
5.Znキレート化Sepharose FF:Fractogel EMD SE Hi−Capカラムからの溶出液を、500mM NaCl、pH7.0に調節し、Znキレート化Sepharose FF(Zn−IMAC)カラムに充填し、10mM酢酸塩/リン酸塩、125mM NaCl、10mMイミダゾール、pH7.0で洗浄し、GALNSタンパク質を、10mM酢酸塩/リン酸塩、125mM NaCl、90mMイミダゾール、pH7.0で溶出した。
6.pH3.5に調節:GALNSタンパク質を含有するZnキレート化Sepharose FFカラムからの溶出液を、低pHウイルス不活性化のために、pH3.5に調節し、次いで、10mM酢酸塩/リン酸塩、2M NaCl、pH5.0に適合させた。
7.ToyoPearl Butyl 650M:低pHに調節したZnキレート化Sepharose FFカラムからの溶出液を、ToyoPearl Butyl 650Mカラムに充填し、10mM酢酸塩/リン酸塩、2M NaCl、pH5.0で洗浄し、GALNSタンパク質を、10mM酢酸塩/リン酸塩、0.7M NaCl、pH5.0で溶出した。
8.最終UF/HF:ToyoPearl Butyl 650M溶出液からの溶出液を、20mM酢酸塩、1mM リン酸塩、150mM NaCl、pH5.5において、限外濾過および透析濾過した。
製剤。精製したGALNSタンパク質を、10mM NaOAc/HOAc、1mM NaH2PO4、150mM NaCl、0.01% Tween−20、pH5.5に製剤化した。
第2の精製プロセスの結果。表4は、第2の精製プロセスを使用して、懸濁培養液バイオリアクターにおいて、G71SクローンC2から生成された、GALNSタンパク質の回収率を示す。製剤化されたGALNS酵素の純度(すなわち、前駆体および成熟またはプロセッシングの形態を合わせて)は、C3 RP−HPLCにより判定すると、約98%であった。GALNS酵素の前駆体形態の割合は、SDS−キャピラリーゲル電気泳動により判定すると、約85%であった。
図10は、限外濾過/透析濾過(UF/DF)、Fractogel SE Hi−Capクロマトグラフィー、Znキレート化FFSepharoseクロマトグラフィー、およびToyoPearl Butyl 650Mクロマトグラフィーによって分離された、GALNS酵素のSDS−PAGEを示す。ゲルは、クマシーブルー(左上)、抗GALNS抗体(右上)、抗カテプシンL(左下)、および抗CHOタンパク質(CHOP、右下)で染色した。ウェスタンブロット法については、抗GALNSラビットポリクローナル抗体は、1:5000に希釈し、二次抗体は抗ウサギAP共役体であり、抗カテプシンLヤギポリクローナル抗体は、1:1000に希釈し、二次抗体は抗ヤギHRP共役体であり、抗CHOPウサギポリクローナル抗体は、1:1000に希釈し、二次抗体は抗ウサギHRP共役体であった。前駆体GALNS酵素は、SDS−PAGE上で約55〜60kDaの見かけの分子量を有し、GLANS酵素の成熟またはプロセッシング形態は、SDS−PAGE上で、約39kDaおよび約19kDaの見かけの分子量を有する。
第1の精製プロセスの概要。GALNS酵素を、標準系列から修正した精製系列を使用して、精製した(表5を参照されたい)。バイオリアクター収集物質を、0.2μmフィルタ滅菌濾過し、Blue−Sepharose捕捉カラムに充填する前に4℃で保管した。濾過したバイオリアクター物質は、直接的に充填したか、または限外濾過により最大15倍に濾過した。精製系列の修正は、下流の精製ステップ、SP Sepharoseクロマトグラフィーに続いてPhenyl Sepharoseクロマトグラフィーが、十分に純粋なGALNSを生成しなかったため、必要であった。SE Hi−Capクロマトグラフィーを2つの下流精製カラムの代替として使用することにより、結果として、2カラム精製プロセスとなり、最終物質の純度は、有意に改善され、全体的なGALNSの回収率は、約22%〜約80%まで有意に増加した。GALNS酵素(本質的に、前駆体形態から構成される、図9を参照されたい)の純度は、C4−RPクロマトグラフィーにより判定すると、概ね>95%と推定され、精製されたGALNS酵素は、4℃および−70℃の両方において、79日を超える期間、製剤緩衝液中で安定したままであった。
第2の精製プロセスの概要。GALNS酵素はまた、第2の精製系列を使用して精製した(表6を参照されたい)。全体的なGALNSの回収率は、約70%であり、GALNS酵素の純度(前駆体および成熟またはプロセッシング形態の両方を含む、図10を参照されたい)は、C4−RPクロマトグラフィーにより判定すると、概ね約97%であると推定された。
これらのアッセイは、組み換え型リソソームスルファターゼ酵素を調製するための上述のプロトコルが、高度に精製された酵素、特に、ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の分泌されたプレプロセッシング(前駆体)形態の、大量生成のための効率的な方法を提供することを示す。
実施例VI
切除を最小限に抑えたヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の精製
組み換え酵素のタンパク質分解の制御は、タンパク質系治療薬の生成および製剤化における懸念である。大量の組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)を、分泌されたプレプロセッシング(前駆体)形態で得ることを目的とした。プロテアーゼ、特に、カテプシンLからの切除を最小限に抑え、ヒトGALNSの大規模製造を可能にする、生成プロセスを開発した。
本明細書に使用される、「切除を最小限に抑える」とは、GALNSが、還元条件下でのSDS−PAGEに続くクマシーブルー染色によって、またはSDS−キャピラリーゲル電気泳動(SDS−CGE)により判断すると、最終的な精製された製剤において、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%完全であることを意味する。
GALNSの大規模製造のための生成プロセスの開発の際、約55kDaの分泌された酵素の前駆体形態が、酸性pHで活性であるプロテアーゼ、特に、カテプシンLによるタンパク質分解に対して感受性であったことがわかった。GALNSのプロテアーゼ分解は、還元条件下でのSDS−PAGEで、約40kDaおよび約19kDaに、2つのバンドとして見られる、GALNSの成熟、切除形態をもたらす。このタンパク質分解の切除は、陽イオン交換カラム捕捉ステップに必要な、低pH(すなわち、4.5〜5.0)により悪化した。このpH範囲は、カテプシン等の酸性プロテアーゼが、細胞培養回収物中に存在するのに好都合な条件を提供した。
細胞培養培地中に分泌されるGALNSを切除することができるプロテアーゼの存在および/または活性を最小化するために、GALNSの回収および精製プロセスに変更を加えた。
GALNSの大規模製造のための例示的な回収および精製プロセスを描写するフローチャートを、図11に示す。左側のプロセスは、実施例Vで前述の精製系列と類似である、第I/II相プロセスで使用される回収および精製プロセスを示し、これは、結果として、カテプシンLの活性化のために、還元条件下でのSDS−PAGE作業に続いてクマシーブルー染色(図12、レーン3を参照されたい)により判定すると、ペプチド鎖が約6〜30%の範囲、またはSDS−CGE(表8を参照されたい)により判断すると、GALNSの完全な前駆体形態が65.3%〜93.7%の範囲である、不定量の切除をもたらす。SDS−PAGE方法は、タンパク質分解に、視覚的だが、より定性的な情報を提供するが、一方で、SDS−CGE方法は、最終的な精製された製剤中に存在する完全なタンパク質の%に関するより定量的な情報を提供する。
図11の右側のプロセスは、第III相プロセスで使用される回収および精製プロセスを示し、結果として、還元条件下でのSDS−PAGE作業に続くクマシーブルー染色(図12、レーン5を参照されたい)によって、またはSDS−CGE(表8を参照されたい)によって判断すると、GALNSの完全な前駆体形態が98%〜99.6%の範囲である、最小限の切除をもたらす。
プロセス変更の概要。GALNS切除の範囲および変動性を減少させるために、次の2つの因子を考慮した。(i)プロテアーゼは、中性pHにおいて、著しく活性率が低く、(ii)陽イオン交換クロマトグラフィーおよび固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)の両方のステップは、GALNSからプロテアーゼを分離する。第III相プロセス(図11、右を参照されたい)は、これらの因子を有効に利用し、精製手順中のGALNSの切除を減少させることを助ける。これは、最初の2つのカラムステップを入れ替え、pH6.5〜7.0でZn−IMACカラムに捕捉することによって達成した。この最初の2つのカラムの入れ替えはまた、第I/II相のプロセス(図11、左を参照されたい)で使用した、より酸性のpH(すなわち、pH5.5)と比較して、より高いpH(すなわち、pH6.5)で、細胞培養収集物を収集および保管することを便利にした。無細胞収集物のpH6.5での保管は、細胞培養流体中に存在する、プロテアーゼ、例えば、カテプシンの活性化の可能性を低減させ、それによって、GALNSの切除を防止または低減させる。
第III相プロセス。GALNSの回収および精製のための例示的な第III相プロセスにおけるステップのそれぞれを、以下に概説する。
1.無細胞収集物(1倍)。ヒトSUMF1およびヒトGALNSを共発現する、安定にトランスフェクトされたG71細胞を、実施例IIIに記載のバイオリアクター培養条件下で、増殖させた。GALNSを含有するバイオリアクター物質(すなわち、細胞培養流体)を、pH6.5で収集し、CUNO 30SP02Aの濾過系列、続いて、CUNO 90ZA08A、および0.2μmのCUNO BioAssureフィルタを使用して、濾過した。
2.UF/DF(20倍)。細胞培養流体を、伝導率≦7mS/cmで、10mMリン酸塩/酢酸塩、50mM NaCl、pH6.5に、限外濾過/透析濾過(UF/DF)した。UF/DFステップは、30kDaのHydrosartカセットを使用して、行った。細胞培養流体を、20倍に濃縮した。比較のために、第I/II相プロセスのUF/DFステップを、pH5.5で行った。第III相プロセスにおけるより高いpHは、無細胞収集物中に存在するプロテアーゼによるGALNSの切除の可能性を減少させる。
3.炭フィルタ。UF/DF(20倍)物質を、Zeta Plus R55活性炭(Z1274)を通して濾過し、続いて、2〜8℃での保管前に、0.2μmのフィルタを使用して、滅菌濾過した。炭フィルタは、後続のZn−IMACカラムへの充填時に、圧力を減少させる。
4.固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)。Zn−固定化金属親和性クロマトグラフィー(Zn−IMAC)カラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、500mM NaCl、pH7.0において平衡化させ、伝導率約55±5mS/cmで、活性炭濾過したUF/DF(20倍)物質を用いて、2.5M NaClを含有するpH9.2の50mM リン酸緩衝液の添加によりpH7.0±0.1で、充填した。充填したカラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、500mM NaCl、pH7.0、続いて、10mMリン酸塩/酢酸塩、125mM NaCl、pH7.0(緩衝液A)で、洗浄した。GALNSを、70%の緩衝液Aと30%の緩衝液B(10mM リン酸塩/酢酸塩、125mM NaCl、300mMイミダゾール、pH7.0)との混合液を用いて、カラムから溶出した。
5.Mustang Qフィルタ。Zn−IMACカラムの溶出液を、pH7.0で伝導率6.0±0.5mS/cmに調節し、Mustang Qフィルタに充填し、ウイルスを除去した。
6.pHの調節および濾過。Mustang Q濾液を、pH4.5±0.1に調節し、CUNO 60ZAフィルタ、続いて0.2μmの直列フィルタを使用して濾過し、次に陽イオン交換カラムに充填した。
7.陽イオン交換クロマトグラフィー。Fractogel SE HiCap陽イオン交換カラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、50mM NaCl、pH4.5中で平衡化させ、伝導率<7mS/cmにおいてpH4.5±0.1に調節した、濾過したMustang Q濾液を充填した。充填したカラムを10mMリン酸塩/酢酸塩、50mM NaCl、pH4.5、続いて10mMリン酸塩/酢酸塩、pH5.0(緩衝液A)と10mMリン酸塩/酢酸塩、250mM NaCl、pH5.0(緩衝液B)との80%:20%混合液で、洗浄した。GALNSを、80%〜25%緩衝液A中の、直線勾配20〜75%の緩衝液B(すなわち、50〜190mM NaCl)で、カラムから溶出した。
8.ウイルス不活性化のための低pHの維持。Fractogel SE HiCap溶出液を、ウイルス不活性化のために、0.2M クエン酸緩衝液、pH3.4の添加によりpH3.5±0.1に酸性化し、約1時間低pHで維持し、0.2Mクエン酸緩衝液、pH6.0の添加によりpH5.0±0.1に再調節し、次いで、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ポリッシングカラムに充填した。
9.疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)。ToyoPearl Butyl 650M HICカラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、2M NaCl、pH5.0中で平衡化し、2M NaCl、pH5.0に調節した低pHウイルス不活性化Fractogel SE HiCap溶出液を充填した。充填したカラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、2M NaCl、pH5.0(緩衝液A)で洗浄した。GALNSを、35%の緩衝液Aと65%の緩衝液B(10mM リン酸塩/酢酸塩、pH5.0)との混合液で、カラムから溶出した。
10.緩衝液交換およびrhGALNSの3mg/mLへの調節。ToyoPearl Butyl 650M HIC溶出液を、緩衝液交換して、20mM酢酸、50mMリン酸、30mMアルギニン、2%(v/v)ソルビトール、pH5.4にし、次いで、同じ緩衝液中のGALNSの最終濃度を3 mg/mLに調節した。
11.濾過によるウイルスおよびDNAの除去 緩衝液交換したToyoPearl Butyl 650M HIC溶出液を、ウイルスフィルタ(DV20)およびDNAフィルタ(Mustang Q)を使用して濾過し、あらゆる残存ウイルスおよびDNAを除去した。
12.PS20を0.01%まで添加。ウイルスおよびDNA濾過した、緩衝液交換したToyoPearl Butyl 650M HIC溶出液を、0.01%(v/v)ポリソルベート20(PS20またはTween−20)に調節した。
13.2〜8℃または冷凍でのBDSの保管。精製されたGALNSの最終製剤、すなわち、原薬(BDS)を、2〜8℃または冷凍で保管した。
結果。SDS−PAGE結果(図12、レーン5を参照されたい)に見られるように、見かけの分子量の大きなバンドは、約55kDaであり、GALNS単量体に対する期待値と一致する。第I/II相プロセス(レーン3)を使用して生成された、ロット#AP400802の、見かけの分子量約40kDaおよび約19kDaにおけるバンドの移動は、Q348とG349の間のタンパク質分解の切除からもたらされた、GALNSの分解生成物である。この切除は、第III相プロセス(レーン5)を使用して生成された、ロット#BMN110−0110−001において、大いに減少した。約40kDaの切断生成物よりもわずかに鈍く移動する、小さなバンドが、いずれの製剤においても存在する。
さらなるプロセス変更の概要。修正された第III相プロセスを、以下の特定の問題に取り組むために開発した。(i)濃縮した収集物中の沈殿物の形成、(ii)Zn−IMAC捕捉ステップにおけるGALNSの損失、(iii)ToyoPearl Butylステップ中の画分の洗浄におけるGALNSの損失、および(iv)ToyoPearl Butylステップの溶出液中の高レベルのCHOP不純物の存在。
修正した第III相プロセス。GALNSの回収および精製のための例示的な第III相プロセスにおけるステップのそれぞれを、以下に概説する。
1.無細胞収集物(1倍)。ヒトSUMF1およびヒトGALNSを共発現する、安定にトランスフェクトされたG71細胞を、実施例IIIに記載のバイオリアクター培養条件下で、増殖させた。GALNSを含有するバイオリアクター物質(すなわち、細胞培養流体)を、pH6.5で収集し、Millipore DOHCの濾過系列、続いて、Millipore XOHC、および0.2μmのMillipore SHCフィルタを使用して、濾過した。
2.UF/DF(20倍)。細胞培養流体を、伝導率≦7mS/cmで、10mMリン酸塩/酢酸塩、50mM NaCl、pH6.5中で、限外濾過/透析濾過(UF/DF)した。UF/DFステップは、30kDaのHydrosartカセットを使用して、行った。細胞培養流体を、20倍に濃縮した。
3.炭フィルタ。UF/DF(20倍)物質を、Zeta Plus R55活性炭(Z1274)を通して濾過し、続いて、2〜8℃での保管前に、0.2μmのフィルタを使用して、滅菌濾過した。
4.固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)。Zn−固定化金属親和性クロマトグラフィー(Zn−IMAC)カラムを、50mM酢酸緩衝液、pH5.0で洗浄し、50mM ZnSO4を補充し、50mM酢酸緩衝液、pH5.0で洗浄し、次いで、5mMイミダゾールを含有する、10mMリン酸塩/酢酸塩、500mM NaCl、pH7.0中で平衡化した。平衡化したZn−IMACに、75:25(v/v)の比率で2.5M NaClを含有する50mMリン酸緩衝液、pH9.2±0.1と、Zn−IMACカラムの充填中、順に混合することにより、pH7.0±0.1で、炭濾過したUF/DF(20倍)物質を、伝導率約50±5mS/cmにおいて充填した。充填したカラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、500mM NaCl、pH7.0、続いて、10mMリン酸塩/酢酸塩、125mM NaCl、pH7.0(緩衝液A)で、洗浄した。GALNSを、70%の緩衝液Aと30%の緩衝液B(10mMリン酸塩/酢酸塩、125mM NaCl、300mMイミダゾール、pH7.0)との混合液で、カラムから溶出した。
5.pHの調節および濾過。Zn−IMACカラム溶出液を、1.75M酢酸、pH4.0で、pH4.5±0.1に調節し、次いでMillipore COHCフィルタを使用して濾過した。濾過した物質を、30:70(v/v)の比率で、陽イオン交換カラムの充填中に、10mMリン酸塩/酢酸塩、pH4.5と順に混合した。
6.陽イオン交換クロマトグラフィー。Fractogel SE HiCap陽イオン交換カラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、50mM NaCl、pH4.5中で平衡化させ、伝導率<7mS/cmにおいてpH4.5±0.1に調節した、濾過したMustang Q濾液を充填した。充填したカラムを10mMリン酸塩/酢酸塩、50mM NaCl、pH4.5、続いて10mMリン酸塩/酢酸塩、pH5.0(緩衝液A)と10mMリン酸塩/酢酸塩、250mM NaCl、pH5.0(緩衝液B)との80%:20%混合液で、洗浄した。GALNSを、80%〜25%緩衝液A中の、直線勾配20〜75%の緩衝液B(すなわち、50〜190mM NaCl)で、カラムから溶出した。
7.ウイルス不活性化のための低pHの維持。Fractogel SE HiCap溶出液を、ウイルス不活性化のために、0.4Mクエン酸緩衝液、pH3.4の添加によりpH3.5±0.1に酸性化し、約1時間低pHで維持し(温度12〜23℃)、0.4Mクエン酸緩衝液、pH6.0の添加によりpH5.0±0.1に再調節し、5M NaClを含有する10mMリン酸/酢酸緩衝液、pH5と混合し、最終濃度2M NaClを達成し、次いで、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ポリッシングカラムへの充填前に0.2μmのフィルタを通して濾過した。
8.疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)。ToyoPearl Butyl 650M HICカラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、2M NaCl、pH4.4中で平衡化し、濾過した、2M NaCl、pH4.3〜4.4に調節した低pHウイルス不活性化Fractogel SE HiCap溶出液を充填した。充填したカラムを、10mMリン酸塩/酢酸塩、2M NaCl、pH4.4、続いて、10mMリン酸塩/酢酸塩、2.5M NaCl、pH5.0(緩衝液A)で、洗浄した。GALNSを、0〜68%の緩衝液B(10mMリン酸塩/酢酸塩、pH5.0)中、直線勾配100%〜32%の緩衝液A(すなわち、2.5〜0.8M NaCl)、続いて、32%の緩衝液Aと68%の緩衝液Bとの混合液(すなわち、0.8M NaCl)で、カラムから溶出した。
9.緩衝液交換、濾過によるDNAおよびウイルス除去、ならびにrhGALNSの3mg/mLへの調節。ToyoPearl Butyl 650M HIC溶出液を、緩衝液交換して、20mM酢酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、30mMアルギニン−HCl、2%(w/v)ソルビトール、pH5.4にした。緩衝液交換したToyoPearl Butyl 650M HIC溶出液を、DNAフィルタ(Mustang Q)およびウイルスフィルタ(DV20)を使用して、濾過し、あらゆる残存DNAおよびウイルスを除去した。濾過した、緩衝液交換されたToyoPearl Butyl 650M HIC溶出液を、次いで、上述のものと緩衝液中で、最終GALNS濃度3mg/mLに調節した。
10.PS20を0.01%まで添加。DNAおよびウイルス濾過した、緩衝液交換したToyoPearl Butyl 650M HIC溶出液を、0.01%(v/v)ポリソルベート20(PS20またはTween−20)に調節した。
11.2〜8℃または冷凍でのBDSの保管。精製されたGALNSの最終製剤、すなわち、原薬(BDS)を、0.2μmのMillipak 200フィルタを通過させて、最終保管容器に入れ、バッグで2〜8℃または冷凍で保管した。
結果。この修正した第III相プロセスにより、Zn−IMACおよびToyoPearl ButylカラムへのGALNSの結合が改善され、ToyoPearl Butyl溶出液中のCHOP不純物が減少する。この修正された第III相プロセスにより精製されたGALNSは、試験された特性の全て(例えば、以下の表7のもの)が、上述の第III相プロセスによって精製された酵素と同程度である。
第III相回収および精製プロセスにより製造されたrhGALNSの特徴付け。第III相プロセスを使用して精製されたGALNSを、第I/II相プロセスにより精製された酵素と比較した。特徴付けの結果を、表7に示す。いずれのGALNS製剤も、試験された特性の全てにおいて同程度であったが、第III相プロセスにより精製された酵素は、第I/II相プロセスにより精製されたものと比較して、著しく少ない切除を示した。
表8は、SDS−CGE方法を使用して、第I/II相プロセス(65.3〜93.7%)または第III相プロセス(98〜99.6%)のいずれかを使用して調製されたロットにおける、最終的な精製された製剤中の完全なGALNSパーセントを比較する。ここで得られた値は、SDS−PAGE方法から得られた結果を支持し、精製プロセスに加えられた修正の結果として、切除の範囲が有意に減少したことを示す。
これらのアッセイは、切除を最小限に抑えた組み換え型リソソームスルファターゼ酵素を調製するための上述のプロトコルが、高度に精製された酵素、特に、ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の分泌されたプレプロセッシング(前駆体)形態の、大量生成のための効果的な方法を提供することを示す。
実施例VII
精製されたヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の特徴付け
G71細胞株は、平均的な哺乳動物の細胞株に見られるものよりも、高いレベルで高マンノースリン酸化を有し、対応して、より低いレベルで非リン酸化高マンノース型オリゴ糖を有する、タンパク質(例えば、リソソーム酵素)を生成する。本明細書に定義される、高レベルのビスリン酸化された高マンノース型オリゴ糖を含む、リソソームスルファターゼ酵素(例えば、組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS))を、複合オリゴ糖を含まず、高マンノース型オリゴ糖のみを示す、Canfieldらの米国特許第6,537,785号において得られる分子と比較する。
リソソームスルファターゼ酵素における、非リン酸化高マンノースのレベルを判定するために、当業者は、放出されたオリゴ糖のエキソグリコシダーゼ配列決定法(「FACE配列決定法」)を使用して、非リン酸化高マンノース型オリゴ糖鎖の割合を特定することができる。通常のロット放出のFACEプロファイリングゲル上で、非リン酸化高マンノースは、特定の複合オリゴ糖(例えば、オリゴマンノース6および完全にシアル化された二分枝複合体)と、共に移動する。非リン酸化高マンノースを、次いで、酵素配列決定法により他のオリゴ糖から分化する。
G71S細胞に発現される精製されたリソソームスルファターゼ酵素(例えば、組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS))が、リン酸化の増加を示すかどうかを判定するために、リソソームスルファターゼ酵素上のマンノース−6−リン酸(M6P)のレベル、ならびに酵素がM6P受容体(MPR)に結合する能力を判定した。
G71S細胞に発現し、精製された、組み換え型ヒトGALNS酵素を、蛍光支援炭水化物電気泳動(FACE)、およびMPR−Sepharose樹脂でのクロマトグラフィーによって、分析した。FACEシステムは、糖タンパク質から放出されるオリゴ糖の分離、定量化、および判定に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用する。FACE上のオリゴマンノース7ビスリン酸(O7P)バンドの相対強度(Hague et al.,Electrophoresis 19(15):2612−20,1998)およびMPRカラムに保持された活性パーセント(Cacia et al.,Biochemistry 37(43):15154−61,1998)は、タンパク質1モル当たりのリン酸化レベルの信頼できる尺度をもたらす。
比活性。組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の比活性を、37℃で、小分子蛍光基質4−メチルウンベリフェリル−6−S−GAL(4MU−Gal−6S)を使用して判定した。このアッセイを使用して、精製されたGALNSの比活性は、165μmol/分/mg(0.165U/mg)であった。
ヒト血清の安定性。GALNSのエキソビボ血清安定性を判定した。ヒト血清(Sigma H−4522)を、0.2μmのPESフィルタを通して滅菌濾過し、4mLの濾過滅菌したヒト血清を、T−25細胞培養フラスコにおいて37℃で1時間、10% CO2雰囲気下でプレインキュベートした(この時点のpHは7.4±0.1である)。0.4mLの脱塩した精製されたGALNS(2mg/mLの精製されたGALNSを、Bio−RAD 10DGカラムを使用してPBS中で脱塩した)を、プレインキュベートしたヒト血清、または0.5mg/L BSAを含有するPBS対照に添加した。100μLの試料を、指定の時点(例えば、0、1、3.5、7.5、および26時間)で回収し、900mLのクエンチ緩衝液(QB、50mM NaOAc、pH5.6+150mM NaCl+0.5mg/mL BSA+0.001% Tween−80)に添加した。試料を、GALNS酵素活性の測定準備が整うまで、4℃で保管した。
GALNS酵素活性を、酵素捕捉活性ELISAを使用して測定した。GALNS酵素活性の%残留の指数関数的減衰曲線を外挿法により推定することによって、精製されたGALNSのエキソビボ血清半減期は、217時間であると推定した。
滑膜細胞(軟骨細胞)への取り込み。GALNSが滑膜細胞(軟骨細胞)内へ取り込まれる能力を判定した。
軟骨細胞(ATCC Number CRL−1832)を、増殖培地(Ham’s F12+10% FBS)において、37℃で5%CO2中、37℃で、12ウェルディッシュで培養した。3つの試料の取り込みの分析は、4×12ウェルプレートを必要とした。精製されたGALNS試料およびGALNS基準を、acPBS/BSA(酸性PBS+200μg/mL BSA)中で、1μMに希釈した。1μMのストックから、GALNS試料および基準の取り込み希釈曲線を作成した。5mLの取り込みアッセイ希釈剤(UAD、DMEM+2mM L−グルタミン+0.5mg/mL BSA)中に50.5μL(1μM rhASB)を入れて、結果として10nMのGALNS試料および基準を生じさせ、さらにUAD中での2倍連続希釈によって、5、2.5、1.25、0.62、0.31、および0.16nMに連続希釈した。コンフルエントな軟骨細胞の12ウェルディッシュ由来の増殖培地を吸引し、1mLのUAD(ブランク)またはGALNS試料もしくは基準物の連続希釈物をウェルに添加し、10% CO2インキュベーターにおいて、37℃で4時間インキュベートした。取り込み培地を吸引し、完全にするために各ディッシュを傾斜させ、各ウェルを、1mLのPBSで1回すすいだ。PBSを吸引し、軟骨細胞を、1ウェル当たり0.5mLのトリプシン/EDTA(0.25%トリプシン/0.1% EDTA(Mediatech 25−053−CI、ロット25053025))を添加することにより、分離した。プレートからの分離後、軟骨細胞を、氷上で事前冷却したEppendorf管(全30管)に等分した。トリプシン処理した軟骨細胞を、冷却し、次いで、微量遠心分離機において低速でペレット化した(4000rpmで3分間)。トリプシンを完全に吸引し、細胞ペレット1mL PBSですすぎ、微量遠心分離および吸引ステップを1回繰り返した。200μLの細胞溶解緩衝液(CLB、50mM酢酸ナトリウム、pH5.6+0.1%Triton X−100)を各管に添加した。細胞ペレットを、3回パルスボルテックスすることにより、再懸濁した。再懸濁後、細胞溶解混合物を、−80℃で一晩保管したか、または直ぐに分析した。
細胞溶解物を、室温で解凍し、解凍後氷上に移した。細胞溶解物をボルテックスして、あらゆる可視固体物質を再懸濁し、次いで14Krpmで10分間、4℃において微量遠心分離機で回転させ、不溶性物質をペレット化した。上清を新しい管の組に移し、ペレットを廃棄した。次いで、GALNS活性アッセイを上清で行った。7点希釈曲線(10nMで開始し、0.16nMで終了する連続2倍希釈)を通常に行い、これは、予想されるK取り込みを、両側に極めて均等に包囲する。開始試料のモル濃度は、タンパク質のみの分子量を使用して、計算する。
精製されたGALNSは、滑膜細胞への取り込みに対して、単一部位のリガンド結合に基づいて、4.9nMのKdを有した。
マンノース−6−リン酸(M6P)受容体プレート結合アッセイ。GALNSが、マンノース−6−リン酸(M6P)受容体に結合する能力を、プレート結合アッセイで判定した。FluoroNunc高結合プレートを、4μg/mL M6P受容体でコーティングした。コーティングしたプレートを、250 μL/ウェルの洗浄緩衝液(WB、TBS+0.05% Tween20)で2回洗浄し、非特異的結合を200 μL/ウェルのブロッキングおよび希釈緩衝液(BDB、Pierce SuperBlock緩衝液、ロット#CA46485)でブロッキングした。プレートを、室温(RT)で1時間インキュベートした。このブロッキングステップの間、精製されたGALNS試料(0.5〜2mg/mL、4℃で2週間保管)を、BDB中で10nMに希釈し、次いで、希釈緩衝液(DB、50mM NaOAc、1mM NaCl、pH4.0+0.5mg/mL BSA)中で連続希釈し(250μL+250μL)、5、2.5、1.25、0.62、0.31、および0.16nMまで下げた。ブロッキングしたプレートを、上述のようにWBで洗浄し、希釈したGALNS試料を100μL/ウェルで2組のウェルに分注し、室温で1時間インキュベートした。このインキュベーションステップ中に、0.1mLの100mM 6S−ガラクトース−4MU ストック(H2O中、−20℃で保管)を5mLのDB中に希釈することによって、2mMの活性基質を調製し、37℃の水浴で事前に温めた。インキュベーション後、プレートを、上述のようにWBで2回洗浄し、100μLの希釈した基質を添加し、GALNSの比活性を判定した。
アッセイを使用して、精製されたGALNSは、M6P受容体への結合に対して、単一部位の結合に基づいて、2.4nMのKdを有した。
マンノース−6−リン酸(M6P)受容体カラム結合。GALNSが、マンノース−6−リン酸(M6P)受容体に結合する能力を、カラム結合アッセイで判定した。M6P受容体カラムを、製造業者の指示書に従って調製した。M6P 受容体は、Peter Lobelの研究室からのものであり、カラム樹脂は、NHSの活性化樹脂(Bio−RAD Affi−Gel 15)であり、カラム寸法は、0.7mLであった。M6P受容体カラムを、流速0.25mL/分において、10カラム体積(CV)の平衡緩衝液(EQ、酸性PBS、pH6.0、5mM β−グリセロリン酸、0.05% Tween20、5mMグルコース−1−リン酸、および0.02% NaN3を含有)で、平衡化した。6μgの精製されたGALNS(200μl当たり)を、流速0.1mL/分で、M6P受容体カラムに充填した。結合していないGALNSを、流速0.25mL/分で、10CVのEQでカラムから洗い流した。結合したGALNSを、勾配(10CV)、続いて2CVの100%ELの0〜100%溶出緩衝液(EL、酸性PBS、pH6.0、5mM β−グリセロリン酸、0.05% Tween 20、5mMマンノース−6−リン酸、および0.02% NaN3を含有)を使用して、カラムから溶出した。カラムを、3CVのEQで再平衡化した。
GALNS ELISAを使用して、M6P受容体に結合した精製されたGALNSのパーセントは、56%であると判定した。
キャピラリー電気泳動(CE)による全オリゴ糖分析。GALNS上のマンノース−6−リン酸化のレベルを判定するために、GALNS上の全オリゴ糖のN結合型炭水化物プロファイルを、Ma et al.,Anal.Chem.71(22):5185−5192,1999に記載のように、キャピラリー電気泳動(CE)によって、判定した。本方法は、アスパラギンN結合型オリゴ糖を切断するために、PNGase Fを使用した。切断されたオリゴ糖を、蛍光色素で単離および誘導化し、G10スピンカラムに適用させて、余分な色素を除去した。精製された、蛍光標識化されたオリゴ糖を、電気泳動的に分離し、ピークを、続いてMDQ−CEソフトウェア(32 Karat Ver.7.0)を使用して、定量化した。
このアッセイを使用して、精製されたGALNSに対する、ビスリン酸化されたマンノース7(BPM7)、モノリン酸化されたマンノース6(MPM6)、およびオリゴ糖を含有するシアル酸の量は、それぞれ、0.58mol/モル酵素、0.08mol/モル酵素、および検出不可能であった。BPM7を含有するGALNSタンパク質のパーセントは、29%であると推定した。
ビス7オリゴ糖の特徴付け。GALNS上のビスリン酸化されたマンノース7(BPM7)オリゴ糖の位置を、判定した。位置178のアスパラギン(Asn)残基は、BPM7に対してN結合型でグリコシル化した。位置397のAsn残基は、BPM7に対してN結合型グリコシル化されなかったが、主にオリゴマンノース型の糖であることがわかった。
ヒドロキシアパタイト親和性。インビトロ骨モデルを開発し、GALNSが、骨に標的化する能力を有するかどうかを判定した。4mg/mLのHTP−DNAグレードのヒドロキシアパタイト(Bio−RAD)懸濁液を調製し、DBS+50μg/mL BSA、pH7.4中で平衡化した。精製したGALNSを、50μg/mL BSAの添加後、DBS、pH7.4中で脱塩した。おおよそ2mg/mLの最終濃度の脱塩したGALNSを、96ウェルプレートにおいて、DBS+50μg/mL BSA、pH7.4中で連続希釈した。50μLの連続希釈したGALNSを、96ウェルフィルタプレート(Millipore #MSGVN2210、親水性PVDF、低タンパク質結合、細孔寸法22μm)に移した。50μLのヒドロキシアパタイト懸濁液を、連続希釈したGALNSを含有するフィルタプレートのウェルに添加し、穏やかに揺動させながら37℃で1時間インキュベートした。プレートを、真空濾過に供した。
真空フィルタの上清を、上述のように、HPLCまたはGALNS酵素活性のいずれかによって分析した。精製されたGALNSは、ヒドロキシアパタイトに対して3〜4.0μMのKdを有した。
ヒトスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)を発現するG71S細胞株は、高い量の活性化(すなわち、活性部位のシステイン残基のCα−ホルミルグリシン(FGly)への変換)を有する、リソソームスルファターゼ酵素を生成する。
G71S細胞において、SUMF1と共発現される、精製された組み換え型リソソームスルファターゼ酵素(例えば、ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS))が、活性の増加を示すかどうかを判定するために、精製されたリソソームスルファターゼ酵素における、活性部位のシステイン残基のFglyへの変換量を判定した。
GALNSの活性化。GALNSの活性化パーセント、すなわち、活性部位のシステイン(Cys)システイン残基のCα−ホルミルグリシン(FGly)への変換パーセントを、LC/MS(TFA)によって判定した。Cys、Fgly、およびGlyに対するTIC/1000は、それぞれ、39、1840、および183であり、精製されたGALNSの約90%が、活性(すなわち、FGly)形態であることを示す。
概要。表9は、G71Sクローン4細胞において発現した組み換え型GALNSの特徴付けの概要を示す。表10は、G71SクローンC2細胞において発現した組み換え型GALNSの特徴付けの概要を示す。
これらの結果は、精製された組み換え型ヒトGALNSが、高レベルの活性化、および高レベルのマンノース6−リン酸のリン酸化を有することを示す。したがって、SUMF1およびリソソームスルファターゼ酵素(すなわち、GALNS)を共発現するG71S細胞は、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素を効率的に生成する。このようなリソソームスルファターゼ酵素における高いマンノース残基のレベルの増加は、細胞上のMPRによる取り込みの増加につながる。
実施例VIII
インビトロにおける、モルキオ軟骨細胞への組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の取り込みおよび活性
インビトロにおいて、モルキオ軟骨細胞のリソソームによる組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の取り込み、およびGALNSのケラタン硫酸(KS)を分解する能力を評価した。
ムコ多糖症IVa型(MPS IVa、モルキオ症候群)を有する患者由来の軟骨細胞は、低減したGALNS活性を有し、かつKSのリソソーム蓄積を示す。MPS IVaのインビトロモデルを、MPS IVa患者の腸骨稜生検から単離された軟骨細胞を用いて確立した。しかしながら、初代軟骨細胞は脱分化し、培養中にそれらの軟骨細胞の特性を失う。したがって、培養条件を、インビトロで軟骨細胞の分化を誘導するために確立した。
MPS IVa患者から単離された軟骨細胞(MQCHと示される)を、IGF−1、TGF−β、トランスフェリン、インスリン、およびアスコルビン酸(軟骨細胞増殖培地、Lonza♯CC−3225)の存在下で、アルギネートビーズ中で培養した。培地を、6週から15週にかけて、実験期間の間、1週間に2回取り替えた。これらの培養条件は、軟骨細胞の表現型の発現および分化を誘導した。これらのMQCH細胞は、MQCH細胞の培養から単離されたRNAを用いる定量的RT−PCR分析によって測定されるとき、性決定領域Y−box9(Sox9)、コラーゲンII、コラーゲンX、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質およびアグレカン(aggregan)のmRNAを含む軟骨細胞マーカーを発現した。これらの培養されたMQCH細胞はまた、細胞外のマトリックスを合成した。
共焦点顕微鏡検査を、MQCH細胞がKSを蓄積したことを確認するために行った。8週の培養におけるMQCH細胞を、トリプシン処理し、スライドガラス上にサイトスピンし(cytospin)、アセトン中で固定し、使用まで冷凍した。解凍後、細胞を再水和し、一次抗体および二次抗体として、抗KSモノクローナル抗体(Chemicon)およびAlexa−488(緑)が共役したヤギ抗ウサギ抗体をそれぞれ用いて染色した。MQ−CH細胞は、リソソームのKS蓄積と一致する、点状の細胞内染色を示した。
精製された組み換え型ヒトGALNSがMQCH細胞によってリソソームに取り込まれ、KSを分解し得るかどうかを決定するために、6週のMQCH細胞培養物を、9週間の間、週に2回、10nMの組換え型ヒトGALNSと共にインキュベートした。GALNS取り込みおよびKSの除去を共焦点顕微鏡検査によって測定した。使用した一次抗体は、(a)抗GALNSウサギポリクローナル抗体および抗リソソームに付随した膜タンパク質(Lysosomal Associated Membrane Protein)−1(LAMP−1)モノクローナル抗体、または(b)抗KSモノクローナル抗体および抗LAMP−1ポリクローナル抗体であった。使用した二次抗体は、抗GALNS抗体もしくは抗KS抗体を検出するためのAlexa−488(緑)が共役された抗体、または抗LAMP−1抗体を検出するためのAlexa−555もしくは−594(赤)が共役された抗体であった。MQCH細胞調製物を、核を染色するDAPIを含有する包理剤(mountant)中でマウントした。
GALNS酵素およびKSとリソソームマーカーのLAMP−1との顕著な共局在化を、GALNSで処理したMQCH細胞において観察した。MQCHを組み換え型ヒトGALNSに曝露すると、細胞内KSの量が減少した。
GALNS取り込みはまた、GALNS酵素捕捉ELISAおよびGALNS比活性ELISA(両方とも上の実施例IVに記載)を用いて測定した。GALNSを発現する正常なヒト軟骨細胞(NHKC)を、陽性対照として用いた。表11および12に示されるように、処理されていないMQCH細胞は、検出可能なGALNS酵素も活性も有さなかったが、一方、10nMのGALNSを用いて9週間処理したMCQH細胞は、有意なGALNS酵素および活性を有した。
これらの結果は、インビトロで、精製された組み換え型ヒトGALNSが、モルキオ軟骨細胞によってリソソームに取り込まれ、リソソームのKSを分解し得ることを示す。これらのモルキオ軟骨細胞は、KSを分解するGALNS等のリソソームスルファターゼ酵素を試験するためのインビトロ有効性モデルとして有用である。
実施例IX
インビトロの細胞に基づくアッセイにおける、天然基質を分解する組み換え型ヒトリソソーム酵素の活性
細胞に基づくインビトロのアッセイを、天然基質を分解する組み換え型ヒトリソソーム酵素、例えばリソソームスルファターゼ酵素の活性を測定するために開発した。
組み換え型ヒトリソソーム酵素、例えばリソソームスルファターゼ酵素の酵素活性を、典型的に、人工の蛍光原基質を用いる無細胞のインビトロアッセイによって測定する(GALNSについては実施例4を参照)。しかしながら、測定される酵素活性は、人工の基質の大きさ、すなわち、単糖類単位数に依存する。加えて、酵素活性を、インビボの状態を反映しない環境において測定する。したがって、この無細胞のインビトロアッセイは、天然基質を切断するリソソームの能力、または標的細胞に取り込まれ、リソソームに局在するリソソーム酵素の能力、そのいずれも、考慮に入れていない。
細胞に基づくインビトロのアッセイを、2つの組み換え型ヒトリソソーム酵素であるα−L−イズロニダーゼ(IDU)およびアリールスルファターゼB(ARSB)が、それらの天然基質、すなわち、細胞内のデルマタン硫酸(DS)含有基質を分解する活性を測定するために開発した。DSは、変動的に硫酸化されたイズロン酸β(1−3)−N−アセチル−ガラクトサミンβ(1−4)二糖類単位を含有する。
ARSB欠損GM00519ヒト線維芽細胞またはIDU欠損GM01391ヒト線維芽細胞を、12ウェルプレートにおいて密集するまで(confluency)培養し、この培養物を、細胞内のDSの蓄積を可能にするために3〜6週間、密集後維持した。
次いで、密集後のGM00519またはGM01391細胞を、飽和量の組み換え型ヒトARSB(10nM)または組み換え型ヒトIDU(25nM)のそれぞれに4〜5日間曝露した。処理していない細胞およびリソソームスルファターゼ酵素で処理した細胞を収集し、溶解し、遠心分離した。
細胞溶解産物中のリソソーム酵素活性を、(1)細胞を溶解すること、(2)細胞溶解産物において、コンドロイチンABCリアーゼ(EC4.2.2.4)を用いてDS含有基質を二糖類に特異的に消化すること、(3)蛍光色素(例えば、2−アミノ−アクリドン、AMAC)を用いてDS二糖類を標識すること、(4)DS二糖類を分離すること(例えば、キャピラリーゾーン電気泳動、CZE)、および(5)標識されたDS二糖類を検出すること(例えば、レーザー誘起蛍光、LIF)によって、細胞の残余のDS含有量を決定することにより測定した。そのような方法を、例えば、Zinellu et al.,Electrophoresis 2:2439−2447,2007、およびLamari et al.,J.Chromatogr.B 730:129−133,1999において記載する(Volpi et al.,Electrophoresis 29:3095−3106,2008において概説する)。
表13は、優勢なDS二糖類であるN−アセチルガラクトサミン−4−硫酸塩を含有する二糖類(4S二糖類)の量を測定することによって決定されるときの、ARSBを用いて処理されたGM00519細胞を用いる、DSの分解率を示す。類似した結果を、IDUを用いて処理されたGM01391細胞を用いて得た。
上記のアッセイは、標的細胞が組み換え型ヒトARSBおよびIDUを取り込み、次いで、リソソームに局在し、そこで、これらの天然基質の細胞内DSを分解することを示した。
用量発見実験を、IDUがこの細胞に基づくアッセイにおいて律速になる濃度を決定するために行った。GM01391細胞を、12ウェルプレートにおいて培養した。密集から4週間後に、細胞を、6または26時間、0.8nM〜25nMの種々の濃度のIDUに曝露した。細胞溶解産物を、上述のように、調製し、プロセッシングした。IDUは、1nMを下回る律速にならないと決定した。
第2の用量発見実験では、密集から3週間後に、GM01391細胞を、0.01〜0.2nMの種々の濃度のIDUに2日間曝露した。細胞溶解産物を、上述のように、調製し、プロセッシングした。この実験では、既知量の内部標準単糖類のGlcNAc−6Sを、プロセッシング中の回収を制御するために細胞溶解産物に添加した。図13に示されるように、DS基質の量における用量依存的減少を、IDUで処理したGM01391細胞において観察した。
同様の用量発見実験では、密集から3週間後に、GM00519細胞を、0.001〜0.06nMの種々の濃度のIDUに5日間曝露した。細胞溶解産物を、上述のように、調製し、プロセッシングした。この実験では、既知量の内部標準単糖類のGlcNAc−6Sを、プロセッシング中の回収を制御するために細胞溶解産物に添加した。図14に示されるように、DS基質の量における用量依存的減少を、ARSBで処理したGM00519細胞において観察した。
細胞に基づくインビトロアッセイを、天然基質、すなわち、細胞内のケラタン硫酸(KS)含有基質を分解する、組み換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素であるGALNSの活性を測定するために開発した。
GALNS欠損MQCH細胞を、上記の実施例8に記載されるように培養し、1または10nMの組み換え型ヒトGALNSを用いて処理した。処理後、MQCH細胞溶解産物を調製し、大きなKSオリゴ糖をKS二糖類に分解するケラタナーゼII(EC3.2.1)を用いて消化した。このKS二糖類を、DS二糖類について上に記載されるように、AMACを用いて標識し、CZEによって分離し、LIFによって検出した。KS単糖類のGlcNAc−6Sを、プロセッシング中の回収を制御するために、内部標準として細胞溶解産物に添加した。2つの特徴的なKS二糖類であるGal6S−GlcNAc6SおよびGal−GlcNAc6Sの量を測定し、得られたデータを、回収されたGlcNAc6Sの量によって補正した。表14は、2つの特徴的なKS二糖類の量を測定することによって決定されるときの、GALNSで処理されたMQCH細胞を用いたKSの分解率を示す。
上記のアッセイは、標的細胞が組み換え型ヒトGALNSを取り込み、次いで、リソソームに局在し、そこで、GALNSがその天然基質の細胞内KSを分解したことを示した。
全体として、これらの結果は、組み換え型ヒトリソソーム酵素であるARSB、IDU、およびGALNSが、これらの天然基質を分解する活性を、細胞に基づくインビトロアッセイにおいて測定および定量化し得ることを示した。この細胞に基づくインビトロアッセイを、他のリソソームスルファターゼ酵素ならびに幅広く多様な組み換え型リソソーム酵素の活性を測定および定量化するために、容易に変更し得ることを認識すべきである。
実施例X
特定の組織への組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の送達
G71細胞において発現および精製された組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の能力が、マウスへのその投与時、GALNSの欠乏に影響されるか、またはそれに関連する特定の組織へ送達される能力を評価した。
ケラタン硫酸の高度に特異的な分布は、ムコ多糖症IVa型(MPS IVA)またはモルキオ症候群の非常に特徴的な表現型を与える。ケラタン硫酸は、もともと、軟骨(骨組織成長板の連結、心臓弁、喉頭、および鼻中隔)および角膜において見出され、MPS IVA患者においてケラタン硫酸塩の蓄積を示すのは、これらの組織である。したがって、MPS IVAまたはモルキオ症候群において不足しているN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)については、長骨の骨組織成長板、心臓弁、角膜、喉頭、および鼻へのGALNS酵素の送達を示すことは重要である。十分に血管新生化されていない標的であるこれらの特定の組織を調べるため、蛍光GALNSの送達をマウスにおいて調査した。
2つの免疫組織化学的染色方法を、マウスにおいて試験した:(1)Alexa 488により共役されたヒトGALNSおよび(2)共役されていないヒトGALNS。Alexa 488へのヒトGALNSの共役を、Molecular Probes Alexa Fluor 488 C5マレイミド標識キット(A−10254)を用いて行った。マレイミド共役体化化学は、結果として、1:1の標識対タンパク質の比を生じた。
蛍光タグがGALNSの取り込みを妨げなかったことを確認するため、免疫細胞学実験を、培養された滑膜細胞(ATCC#CRL−1832)を用いて行った。標準取り込みアッセイを使用して、共役されていないGALNSと共役されたGALNS(GALNS−A488またはGALNS−A555)とを比較した。細胞を、GALNS酵素と共に4時間インキュベートし、その後、α−L−イズロニダーゼ(IDU)を用いて2時間追跡した。この結果は、Alexa 488の共役体が、細胞内への取り込みを妨げなかったことを示した。図15は、GALNS、GALNS−A488、およびGALNS−A555についての、推定されるKdを示す。標識が酵素を不活性化したため、この取り込みを、酵素活性ではなく細胞溶解産物の抗原ELISAによって測定した。共役されていないGALNS酵素および共役されたGALNS酵素のKdは、ほぼ同等であると決定した。
一旦、GALNS酵素が細胞に組み込まれると、蛍光タグの安定性を決定するために、共役されていないGALNSおよび共役されたGALNSについての免疫染色を行った。染色のために使用された一次抗体は、タンパク質Gで精製された1μg/mLの濃度の抗GALNSウサギ抗体であった。全ての画像を、MetaMorphソフトウェアを使用した、Leica IRE2広視野落射蛍光顕微鏡上で取得した。面外光の存在のため、画像スタックのデコンボリューションを、これらの画像において共局在を測定するために必要とした。このデコンボリューションを、理論的点拡散関数(ブラインドアルゴリズム)を使用したAutoQuant/AutoDeblur可視化ソフトウェアを使用して行った。
この免疫染色は、GALNS−A488物質によって増幅されたシグナルと、かなり良いオーバーラップを示した。感度において観察された上昇は、一次抗体および二次抗体がともにポリクローナルであることに起因した。
GALNS酵素がリソソームに標的とされたかどうかを決定するために、Molecular Probes Lysotrackerまたはリソソーム中に局在する別の酵素を用いて培養された滑膜細胞の免疫染色を行った。Lysotrackeは、GALNS−488酵素との多少のオーバーラップを示しているようであったが、この染色は均一ではなかった。組み換え型ヒトN−アセチルガラクトースアミン−4−スルファターゼ(rhASB)、リソソーム酵素を用いた2時間の追跡は、GALNSとの多少の共局在を示した。
上記の実験は、GALNS−A488酵素が細胞によって取り込まれ、リソソームに局在し、かつインビボでの生体内分布を決定するために使用することができることを示した。
2つのインビボ研究を行った。第1の予備的研究は、正常なBalb/cマウスの尾の静脈への単一用量(10mg/kg)のボーラス注射であり、続いて、第2の研究は、正常なBalb/cマウスの尾の静脈への10mg/kgの1日おきの複数回(5回)注射であった。表15および表16は、それぞれ、第1および第2の研究についての実験計画を記載する。
第1の予備的研究では、心臓、肝臓、および脛骨/大腿関節を、2時間および24時間の時点で収集した。第2の研究では、心臓、腎臓、肝臓、四頭筋およびヒラメ筋を有する骨組織を、2時間、4時間、および8時間の時点で収集した。両方の研究において、心臓、腎臓、および肝臓を、4日間、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)中で浸漬し、パラフィン包埋し、次いで、7μmの厚さで薄片にした。第2の研究における筋肉を含む骨組織を、4%のPFA中で8日間浸漬し、脱石灰し、パラフィン包埋し、7μmの厚さで薄片にした。
GALNS−A488が注射されたマウスの画像を、Zeissレーザー走査共焦点顕微鏡上で取得した。第1の予備的研究における分析のため、試料当たり1つの共焦点のスタックを心臓弁および肝臓について取得し、容量分析に用いた。2つの共焦点のスタック/試料をこの成長板について取得し、容量分析に用いた。第2の研究では、心臓弁、腎臓、および肝臓について1つの共焦点のスタック/試料を取得し、容量分析に用い、この成長板および残余の軟骨の領域(zrc)について2つの共焦点のスタック/試料を取得し、容量分析に用いた。
共焦点顕微鏡での画像化の研究からの結論は、(1)インビボで蛍光GALNSを検出することが可能であった、(2)シグナルは特異的であり(バックグラウンドがない)、かつその局在はリソソームであった、(3)GALNSの存在を、肝臓中の洞様毛細血管の細胞において示した、(5)心臓において、GALNS酵素は中隔および心房において存在するが、より重要なことには、複数回の注射後、より強く分布していた場合には、GALNS酵素は心臓弁のレベルにおいて、明らかに可視であった、(6)大腿/脛骨接合部において、GALNS酵素は、骨組織の鉱化された部分(骨端)、ならびに骨髄において存在した、であった。GALNSは、この成長板において存在する。より具体的には、GALNSは、残余の領域の軟骨細胞(または貯蔵軟骨の領域)において豊富であり、増殖性の領域の最初の部分に存在し、この成長板の末端における骨形成の領域において再び豊富に現れた。複数回の注射の累積的な効果を定量化することは困難であるが、第2の研究は、より広い分布を示していると思われた。表17は、共焦点画像研究の概要を示す。
二次染色のため、最初のステップは、GALNS一次抗体の最適化であった。種々の組織をタンパク質Gで精製された抗GALNSウサギ抗体を用いた1:100〜1:400の希釈物を用いて染色した。第1の予備的研究の結果は、1:100の希釈が、高いシグナル対ノイズ比にとって最適であったことを示した。この結果を、第2の研究において確認した。残余のスライドを、1:100の一次抗体の希釈および1:1000の二次抗体の希釈で処理した。
GALNSを投与したBalb/cマウスについてのシグナルは、タンパク質Gで精製された抗GALNS抗体を用いて染色したとき、対照(すなわち、PBS−Cysが投与されたマウス)を上回るシグナルを有した。GALNS酵素がリソソームに局在したことを確認するため、切片を、抗LAMP1抗体を用いて染色した。LAMP1は、リソソームについてのマーカーである。画像は、抗LAMP1抗体と抗GALNS抗体との間でのオーバーラップを示し、これは、GALNS酵素がリソソームに局在したことを示した。
全体として、2つのインビボ研究は、GALNS生体内分布が血管新生と関係付けられる、すなわち、より血管新生化された組織が、より多くの蛍光シグナルを含むことを示す。より重要なことには、この研究は、モルキオ症候群におけるケラタン硫酸塩蓄積の部位は血管新生化が不十分であるとしても、これらの部位でのGALNSの存在を示す。
実施例XI
ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の製剤
本発明の製剤において組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の活性および構造における種々の賦形剤、例えば緩衝液、等張化剤、および安定剤の効果を調査することを目的とした。
実施例Vにおいて記載されるように、GALNS酵素を調製した。
実施例VIIにおいて記載されるように、GALNS酵素が特徴付けられた。
実施例Vにおいて、精製された組み換え型ヒトGALNS酵素は、10mMのNaOAc/HOAc、1mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、および0.005%または0.01%のTween−20、pH5.5中に製剤化された。低濃度のリン酸緩衝液中での保存時、GALNS酵素の脱リン酸化が生じることに留意した。したがって、リン酸緩衝液濃度は、100mMのNaH2PO4まで増加させた。高濃度のリン酸緩衝液中での保存時、GALNS酵素の有意な脱リン酸化は観察されなかった。しかしながら、5℃、25℃、または40℃での保存時、GALNSの可溶性凝集体が観察され、40℃での保存時、GALNSの不溶性凝集体が観察された。
第1の研究において、組み換え型GALNSの安定性における安定剤濃度およびpHの効果を評価した。精製された組み換え型GALNS酵素は、20mMのNaOAc/HOAc、50mMのNaH2PO4、0.01%のTween−20、および4%のスクロースまたは2%のソルビトール中に製剤化された。安定剤は、15mMまたは30mMの塩酸アルギニン(アルギニンHCl)および15mMまたは30mMのNaClを試験した。pHは、5.0、5.4、および5.8を試験した。pH5.8の製剤は、pH5.8から6.0までさまざまであるように決定された。酵素製剤を5℃、25℃、または40℃で最長2ヶ月間保存した後、GALNS酵素は、実施例VIにおいて記載される種々のアッセイを使用して分析された。
種々の製剤中の可溶性凝集体の形成は、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)によってGALNS酵素をプロファイリングすることによって判定された。15mMおよび30mMのアルギニンHClの両方の存在は、SEC−HPLCによって判定されるように、可溶性凝集体の増殖を抑制した(図16)。
製剤中のGALNS酵素活性の安定性は、インビトロ酵素活性アッセイを使用して測定された。5℃で、GALNS酵素活性は、アルギニンHClまたはNaClの存在下で安定であり、25℃で、GALNS酵素活性は、アルギニンHClまたはNaClのいずれかの存在下で安定であり、40℃で、NaCl含有製剤中のGALNS酵素活性は、少なくとも安定性を示した(図17)。
アスパラギンN結合型オリゴ糖を切断するために、PNGase Fで酵素を消化した後に、キャピラリー電気泳動(CE)によってビスリン酸化マンノース7(BPM7)のパーセントを測定することによって、製剤中のGALNS酵素の脱リン酸化を調査した。5℃、25℃、または40℃で2ヶ月後、酵素製剤の全てにおけるGALNS酵素が、BPM7率においてグリコシル化プロファイルを有し、これは第I相臨床製剤中に使用されるGALNSの基準ロットのグリコシル化プロファイルと同程度であった(図18)。
製剤中のGALNS酵素の純度は、逆相−高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって酵素をプロファイリングすることによって判定された。5℃または25℃で2ヶ月後、製剤のいずれもいかなるピーク面積の変化を示さず、40℃で、pH5.0およびpH5.4でアルギニンHCl含有製剤はまた、いかなるピーク面積を示さなかったが、pH5.0およびpH5.4でNaCl含有製剤ならびにpH5.8で製剤の全ては、ピーク面積の減少を示した(図19)。RP−HPLCクロマトグラムにおいて、ピーク後のショルダーが製剤中に観察された。30mMのアルギニンHClを含有するGALNS製剤は、少なくとも顕著なピーク後のショルダーを示した。
実施例XII
ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の例示的な製剤
以下の実施例は、モルキオ症候群またはMPS IVaの治療に有用である、組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)またはその生物学的に活性な断片、変異体、改変体、もしくは類似体を含む組成物を製剤化するために使用されるパラメータにおけるガイダンスを提供する。本発明のGALNS組成物を製剤化するために使用されるパラメータとしては、pHを維持する緩衝液、等張を調節する薬剤、安定剤の存在または不在、他の賦形剤、ビヒクル、希釈剤等の存在または不在が挙げられるが、これらに限定されない。
実施例XIにおいて、組み換え型GALNSは、約1mg/mLの濃度で製剤化された。好ましいGALNSは、約0.1〜10mg/mL、好ましくは約0.5〜5mg/mL、より好ましくは約0.5〜1.5mg/mLの範囲である濃度で製剤化される。一実施形態において、本発明のGALNS組成物の製剤は、約1+/−0.5mg/mLのGALNS酵素の濃度を有する。
実施例XIにおいて、組み換え型GALNS酵素は、20mMのNaOAc/HOAc、50mMのNaH2PO4、pH5.0、5.4、および5.8中に製剤化される。好ましい緩衝液は、約5〜100mM、好ましくは約5〜50mM、より好ましくは約10〜30mMの範囲であるNaOAc/HOAcの濃度を有し、約5〜100mM、好ましくは約25〜100mM、より好ましくは約25〜75mMの範囲であるNaH2PO4の濃度を有する、NaOAc/HOAcまたはその同等物、およびNaH2PO4またはその同等物である。例示的な実施形態において、本発明のGALNS組成物の製剤は、約20+/−10mMのNaOAc/HOAc緩衝液の濃度、および約50+/−25mMのNaH2PO4緩衝液の濃度を有する。
好ましい製剤のpHは、約pH4.5〜6.5、好ましくは約pH5.0〜6.0、より好ましくは約pH5.0〜5.8である。一実施形態において、本発明のGALNS組成物の製剤は、約pH5.4+/−0.4のpHを有する。
実施例XIにおいて、組み換え型GALNS酵素は、15mMまたは30mMのアルギニンHClまたはNaCl中に製剤化された。好ましい安定剤は、約5〜200mM、好ましくは約10〜100mM、より好ましくは約10〜50mMの範囲である濃度を有する、アルギニンHClまたはその同等物である。例示的な実施形態において、本発明のGALNS組成物の製剤は、約30+/−20mMの濃度のアルギニンHClを有する。
実施例XIにおいて、組み換え型GALNS酵素は、0.01%のTween−20中に製剤化された。好ましい安定剤は、約0.001〜1.0%(w/v)、好ましくは約0.005〜0.2%(w/v)、より好ましくは約0.005〜0.015%(w/v)の範囲である濃度を有する、Tween−20(ポリソルベート−20としても知られている)またはその同等物である。一実施形態において、本発明のGALNS組成物の製剤は、約0.01%+/−0.005%(w/v)のTween−20の濃度を有する。
実施例XIにおいて、組み換え型GALNS酵素は、4%のスクロースまたは2%のソルビトール中に製剤化された。好ましい安定剤/抗凍結剤/等張化剤は、約0.1〜10%(w/v)、好ましくは約0.5〜5%(w/v)、より好ましくは約1.0〜3.0%(w/v)の範囲である濃度を有する、ソルビトールまたはその同等物である。本発明のGALNS組成物の例示的な製剤は、約2.0%+/−1.0%(w/v)のソルビトール濃度を有する。
したがって、本発明のGALNS酵素組成物の例示的な製剤を表18に示す。
実施例XIII
リソソームスルファターゼ酵素活性が不足しているマウスにおける、組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)および他のリソソームスルファターゼ酵素の効果
リソソームスルファターゼ酵素活性が不足しているマウスにおける、本発明の高度にリン酸化された活性なヒトリソソームスルファターゼ酵素、例えば組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)の効果を評価する。
組み換え型ヒトGALNSタンパク質は、G71S細胞において発現され、精製される。他の組み換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素を、基本的には本明細書に記載された方法に従って、または当該技術分野で公知の手順によって、発現および精製し得る。
ヒトリソソームスルファターゼ酵素欠乏の幾つかのマウスモデルが記載されており、これには 異染性白質萎縮症(MLD)(アリールスルファターゼA欠乏)(Hess et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14821−14826,1996)、ムコ多糖症VI型(MPS VI)またはマロトーラミー症候群(アリールスルファターゼB欠乏)(Evers et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8214−8219,1996)、ムコ多糖症II型(MPS II)またはハンター症候群(イズロン酸−2−スルファターゼ欠乏)(Muenzer et al.,Acta Paediatr.Suppl.91(439):98−99,2002、Cardone et al.,Hum.Mol.Genet.15:1225−1236,2006)、ムコ多糖症IIIa型(MPS IIIa)またはサンフィリポA症候群(スルファミダーゼ/ヘパラン−N−スルファターゼ欠乏)(Bhaumik et al.,Glycobiology 9(12):1389−1396,1999)、ムコ多糖症IVa型(MPS IVa)またはモルキオA症候群(N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ欠乏)(Tomatsu et al.,Hum.Mol.Genet.12:3349−3358,2003)、および多発性スルファターゼ欠損症(MSD)(スルファターゼ修飾因子1欠乏)(Settembre et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:4506−4511,2007)が含まれる。ムコ多糖症IIId型(MPS IIId)またはサンフィリポD症候群(N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ欠乏)のマウスモデルは、まだ記載されていない。
ヒトリソソームスルファターゼ酵素欠乏のマウスモデルは、リソソーム蓄積障害を治療するための手段としての、酵素補充療法(ERT)の実行可能性を評価するために使用され得る。例えば、MPS IVaノックアウトマウス(GALNS−/−マウス;Tomatsu et al.,Hum.Mol.Genet.12:3349−3358,2003)は、検出可能なGALNS酵素活性を有さず、尿のグリコサミノグリカン(GAG)、すなわち、ケラチン硫酸塩およびコンドロイチン−6−硫酸塩の上昇、ならびに多数の組織および器官、例えば肝臓、腎臓、膵臓、心臓、脳、骨髄、および軟骨におけるGAGの蓄積を示す。しかしながら、GALNS−/−マウスは、ヒト疾患と関連付けられる、骨格異常を示さない。不活性なヒトGALNSおよび変異させられた不活性な内因性のマウスのGALNS(GALNStm(hC79S.mC76S)sluマウス;Tomatsu et al.,Hum.Mol.Genet.14:3321−3335,2005)を発現する、別のMPS IVaマウスモデルを開発した。検出可能なGALNS酵素活性を有さないGALNStm(hC79S.mC76S)sluマウスにおいては、尿のGAG排出が上昇し、GAGが内臓器官、脳、角膜、骨組織、靭帯、および骨髄を含む多数の組織において蓄積し、リソソーム蓄積が多数の組織において示され、骨組織蓄積が明らかである。GALNStm(hC79S.mC76S)sluマウスにおける病理学的変質は、GALNS−/−マウスにおいて観察されるものとは異なる。しかしながら、GALNS−/−マウスと同様に、GALNStm(hC79S.mC76S)sluマウスは、ヒト疾患と関連付けられる、骨格異常を示さない。したがって、GALNS−/−またはGALNStm(hC79S.mC76S)sluマウスを、尿のGAGの上昇および組織におけるGAGの蓄積に対する、組み換え型ヒトGALNSの投与の効果を調査するために使用し得る。
4週齢のGALNS−/−、GALNStm(hC79S.mC76S)slu、または野生型マウスに、16〜20週齢の間、週に1回、組み換え型ヒトGALNS(例えば、0.1、0.3、1、3、10mg/kg)またはビヒクル対照の種々の用量の静脈内注射(n=1群当たり少なくとも6または8)を与え、次いで、組織学的検査のために殺処分する。尿をマウスから収集し、尿のGAG排出を、記載されるように決定する(Tomatsu et al.,Hum.Mol.Genet.12:3349−3358,2003)。種々の組織の病理学的検査を、記載されるように行う(Tomatsu et al.,Hum.Mol.Genet.12:3349−3358,2003)。
GALNS−/−またはGALNStm(hC79S.mC76S)sluマウスを用いて、本発明の組み換え型ヒトGALNSが、(1)尿のGAG排出、(2)例えば、内臓器官、脳、角膜、骨組織、靭帯、および骨髄等の多数の組織におけるGAGの蓄積、(3)多数の組織におけるリソソーム蓄積、ならびに(4)骨組織の蓄積を低減する能力を示すことが予想される。
組み換え型ヒトGALNSの効果を、多発性スルファターゼ欠損症(MSD)のマウスモデル(SUMF1−/−マウス;Settembre et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:4506−4511,2007)において調査する。SUMF1−/−マウスは、生存の初期において頻繁に死亡を示すため、組み換え型ヒトGALNSを用いたこれらのマウスへの注射を、GALNS−/−マウスに関して上に記載したときよりも早く始める。
当該技術分野で既知の手順に従って、他の組み換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素、すなわち、アリールスルファターゼA、アリールスルファターゼB、イズロン酸−2−スルファターゼ、スルファミダーゼ/ヘパラン−N−スルファターゼ、およびN−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼの効果を、MLDのマウスモデル(ASA−/−マウス;Hess et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14821−14826,1996)、MPS VIのマウスモデル(As1−s−/−マウス;Evers et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8214−8219,1996)、MPS IIのマウスモデル(idsy/−マウス;Cardone et al.,Hum.Mol.Genet.15:1225−1236,2006)、MPS IIIaのマウスモデル(Bhaumik et al.,Glycobiology 9(12):1389−1396,1999)、およびMSDのマウスモデル(SUMF1−/−マウス;Settembre et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:4506−4511,2007)において調査する。
実施例XIV
組み換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)および他のリソソームスルファターゼ酵素を用いたムコ多糖症IVA型(またはモルキオ症候群)または他のリソソームスルファターゼ酵素欠乏を有するヒト患者の治療
ムコ多糖症IVA型(MPS IVaまたはモルキオ症候群)と診断された患者等のリソソームスルファターゼ酵素欠乏の臨床上の表現型が現れているヒト患者は、組み換え酵素、すなわち、ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)を用いる酵素補充療法に対して企図される。リソソームスルファターゼ酵素欠乏を患う全ての患者は、特定のリソソーム蓄積症と関連する機能的障害の程度が異なること、またはそれと関連する健康状態が悪化することによって現されるような、内臓および軟組織のリソソームにおける蓄積物質の過度のまたは有害な蓄積等の、何らかの臨床的証拠を示す。全てのMPS IVa患者は、機能的障害の程度が異なる、骨組織の変形、低身長および歩行異常、ならびに/または血液もしくは尿におけるグリコサミノグリカン(GAG)の蓄積等の何らかの臨床的証拠を示す。
好ましくは、酵素レベルを、リソソームスルファターゼ酵素欠乏を患う患者において監視し、患者の組織におけるリソソームスルファターゼ酵素の活性の欠如または低減を確認する。10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、さらにより好ましくは1%未満のリソソーム酵素活性を有する患者(その他の点では正常な被験体である)は、適切なリソソームスルファターゼ酵素を用いる治療には適切な候補である。データは、治療の前、治療の間、および治療の後における、患者のリソソームスルファターゼ酵素活性を決定するために収集され得る。
有効性は、時間とともに、リソソームスルファターゼ酵素の基質、すなわち、グリコサミノグリカン(GAG)の尿の排出における、パーセンテージの減少を測定することによって決定される。リソソームスルファターゼ酵素欠乏を患う患者における尿のGAGレベルは、正常な排出レベル、および/または同じリソソームスルファターゼ酵素欠乏を患う治療されていない患者におけるレベル、および/またはリソソームスルファターゼ酵素を用いる治療の前の同じ患者におけるレベルと比較される。リソソームスルファターゼ酵素を用いる治療後の分解されていないGAGの排出における、25%を超える減少、好ましくは50%を超える減少は、治療への個体の応答を評価するための有効な手段である。
有効性はまた、リソソーム蓄積症と関連する病状の兆候および症状の低減によっても決定され得る。有効性は、GAGがリソソーム、細胞、または組織において低減した程度を決定するための、組織生検ならびに細胞および/またはリソソームの検査によって決定され得る。有効性は、機能的評価によって決定され得、客観的または主観的であり得る(例えば、痛みまたは機能における障害の低減、筋肉の強度または持久力の増進、心拍出量と運動耐久性の増進、体重、身長または外見における変化等)。
G71S細胞において発現され、精製され、当該技術分野で既知の手順に従って製剤化される、組み換え型ヒトGALNSを含む薬学的組成物。本発明の薬学的組成物を静脈に投与することが好ましい。
MPS IVa患者への組み換え型ヒトGALNSの投与の効果を調査するための初期臨床的研究の基本的なデザインは、非盲検、用量増大、安全性/有効性研究を含み、これは種々の用量の酵素を、固定された間隔(例えば、限定されるものではないが、週に1回の酵素注射)で、患者に静脈内に投与する。
MPS IVa患者に関して、有効性は、例えば、血液または尿のGAGの減少(数週間以内のERTでおそらく観察される)、心臓、肺、および/もしくは運動性の機能の試験における耐久性の増進(数ヶ月以内のERTでおそらく観察される)ならびに/または、骨格の変化および/もしくは身体の成長(数年以内のERTでおそらく観察される)を測定することによって決定される。
尿のGAG測定は、時間とともに、尿のGAG排出におけるパーセンテージの減少を測定することによる、適切な用量レジメンを確立すること、ならびに有効性を決定することに対して有用である。
例えば、限定されるものではないが、歩行試験(6または12分間に歩いた距離)、階段登り(1分当たりの段)、ならびに心臓の機能(ECG、心エコー図)および肺の機能(FVC、FEV1、ピークフロー)等の肺/呼吸の機能を含む、種々の耐久性試験が使用され得る。
長期間、治療を受けている若い患者に関しては、成長(身長)が測定され得る。
本発明の方法を使用して治療または予防され得るリソソームスルファターゼ酵素活性の欠乏と関連するリソソーム蓄積症は、異染性白質萎縮症(MLD)、ムコ多糖症VI型(MPS VI)もしくはマロトーラミー症候群、ムコ多糖症II型(MPS II)もしくはハンター症候群、ムコ多糖症IIIa型(MPS IIIa)もしくはサンフィリポA症候群、ムコ多糖症IIId型(MPS IIId)もしくはサンフィリポD症候群、ムコ多糖症IVa型(MPS IVa)もしくはモルキオA症候群、または多発性スルファターゼ欠損症(MSD)である。各リソソーム蓄積症に対し、組み換え型リソソームスルファターゼ酵素は、特異的なリソソームスルファターゼ酵素を含む。
MLDに関する方法のために、好ましいリソソームスルファターゼ酵素は、アリールスルファターゼAである。MPS VIに関する方法のために、好ましいリソソームスルファターゼ酵素は、アリールスルファターゼBである。MPS IIに関する方法のために、好ましいリソソームスルファターゼ酵素は、イズロン酸−2−スルファターゼである。MPS IIIAに関する方法のために、好ましいリソソームスルファターゼ酵素は、スルファミダーゼ/ヘパラン−N−スルファターゼである。MPS IIIDに関する方法のために、好ましいリソソームスルファターゼ酵素は、N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼである。MPS IVAに関する方法のために、好ましいリソソームスルファターゼ酵素は、N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼである。MSDに関する方法のために、好ましいリソソームスルファターゼ酵素は、N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼである。
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上記の例示的実施例において記載されるような、本発明の多数の修正および変更が、当業者に想到することが予想される。したがって、添付の特許請求の範囲に見られる限定のみが、本発明に課されるべきである。