以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る振動制御装置について説明する。なお、各図において適宜示される矢印Vは、振動制御対象物の振動方向を示している。
先ず、第1実施形態について説明する。
図1には、第1実施形態に係る振動制御装置30が設置された張弦梁10が示されている。張弦梁10は、例えば、構造物の屋根材を支持するものであり、構造物の頂部に設けられている。この張弦梁10は、一対の支持部材12の間に架設された梁材14と、梁材14の両端部14A,14B間に張り渡された引張材としての張弦材16と、梁材14と張弦材16と連結する連結部材としての複数(本実施形態では、3つ)の束材18A,18B,18Cとを備えている。
梁材14は全体として上方へ凸を成すように湾曲されており、その両端部14A,14Bが一対の支持部材12にそれぞれ支持されている。この梁材14は、地震時や強風時に、その両端部14A,14Bを支点として上下方向(矢印V方向)に振動するようになっている。なお、梁材14の両端部14A,14Bと一対の支持部材12とは、ピン接合でも良いし、剛接合でも良い。
梁材14の下方には、張弦材16が配置されている。張弦材16は、PC鋼線やストランド等の線材で構成されている。この張弦材16は、梁材14と反対側(下方)へ凸を成すように湾曲された状態で、梁材14の両端部14A,14B間に張り渡されている。
梁材14と張弦材16との間には、複数の束材18A〜18Cが配置されている。各束材18A〜18Cは、梁材14及び張弦材16と交差する方向に延びる長手材とされており、梁材14及び張弦材16の軸方向に間隔を空けて配置されている。具体的には、束材18Bは梁材14及び張弦材16の長手方向中央部に配置され、束材18A,18Cは束材18Bの両側にそれぞれ配置されている。
また、各束材18A〜18Cは、各々の長手方向一端部(上端部)が梁材14に連結されると共に、各々の長手方向他端部(下端部)が張弦材16に連結されている。これらの束材18A〜18Cによって梁材14と張弦材16との間隔が保持されている。
振動制御装置30は、前述した振動制御対象物としての梁材14の振動を低減するアクティブ制振装置である。この振動制御装置30は、張弦材16を軸方向に伸縮させることにより、束材18A〜18Cを介して梁材14に制御力(制振力)を付与するアクチュエータとしての振動制御用圧電素子32と、梁材14の振動(の加速度)を検出する振動検出センサとしての加速度センサ34と、加速度センサ34で検出された梁材14の加速度に基づいて、振動制御用圧電素子32に電圧を印加し、当該振動制御用圧電素子32に張弦材16を伸縮させる振動制御部36とを備えている。
振動制御用圧電素子32は、張弦材16の両端部16A,16Bにそれぞれ取り付けられている。図2に示されるように、各振動制御用圧電素子32は、可撓性を有するシート状の膜型圧電素子で構成されている。なお、膜型圧電素子とは、例えば、繊維状の圧電セラミックの束で形成された繊維シートの両面に、電極がプリントされたポリイミドフィルムをエポキシ樹脂により接着したものであり、印加された電圧に応じて所定方向(矢印D方向)に収縮する(歪む)ように構成されている。
振動制御用圧電素子32は、その伸縮方向(歪み方向)を張弦材16の軸O方向にして当該張弦材16の一端部16Aの外周面に巻き付けられており、エポキシ樹脂等の接着剤によって張弦材16の外周面に貼付(接着)されている。この振動制御用圧電素子32に所定間隔で電圧を印加し、当該振動制御用圧電素子32を矢印D方向に伸縮させることにより、振動制御用圧電素子32が貼付された張弦材16の一端部16Aが軸方向に伸縮され、図1に示されるように、張弦材16がその両端部16A,16Bを支点として梁材14の振動方向と同方向(矢印S方向)に振動するようになっている。また、この張弦材16の振動に伴って、各束材18A〜18Cを介して梁材14が振動方向(矢印V方向)へ加振されるようになっている。つまり、各振動制御用圧電素子32によって張弦材16の両端部16A,16Bを軸方向に伸縮させることにより、束材18A〜18C介して梁材14に振動方向の制御力F(図3(A)参照)が付与されるようになっている。
また、各振動制御用圧電素子32には、振動制御部36が電気的に接続されている。振動制御部36は、一般的なフィードバック回路を有する電気回路等で構成されており、加速度センサ34の出力(加速度センサ34で検出された梁材14の加速度)に基づいて、当該梁材14の振動を打ち消すように、各振動制御用圧電素子32に印加する電圧をフィードバック制御するものである。
具体的には、振動制御部36には、梁材14の振動を検出する振動検出センサとしての加速度センサ34が電気的に接続されている。加速度センサ34は、梁材14の長手方向中央部に取り付けられており、検出した梁材14の加速度を加速度情報として振動制御部36に出力するようになっている。この加速度情報に基づいて、例えば、振動制御部36が梁材14と逆位相の制御力Fを算出し、算出された制御力Fが束材18A〜18Cを介して梁材14に付与されるように、各振動制御用圧電素子32に所定間隔で電圧を印加する。つまり、振動制御部36は、梁材14の加速度が大きくなったときに、束材18A〜18Cを介して梁材14に付与される制御力Fが大きくなるように各振動制御用圧電素子32に印加する電圧を増加し、梁材14の加速度が小さくなったときに、束材18A〜18Cを介して梁材14に付与される制御力Fが小さくなるように、各振動制御用圧電素子32に印加する電圧を減少する。
なお、振動制御部36は、例えば、加速度センサ34で検出された梁材14の加速度情報を増幅する増幅器、及び増幅器で増幅された加速度情報をデジタル信号に変換するA/D変換器等を含んで構成しても良い。
次に、第1実施形態の作用について説明する。
地震時や強風時に梁材14がその両端部14A,14Bを支点として振動(矢印V方向)すると、加速度センサ34が梁材14の加速度を検出し、加速度情報として振動制御部36に出力する。この加速度情報に基づいて、振動制御部36が梁材14と逆位相の制御力F(図3(A)参照)を算出すると共に、算出された制御力Fが束材18A〜18Cを介して梁材14に付与されるように、各振動制御用圧電素子32に所定間隔で電圧を印加し、各振動制御用圧電素子32を伸縮させる。これにより、各振動制御用圧電素子32が貼付された張弦材16の両端部16A,16Bが軸方向に伸縮を繰り返し、張弦材16がその両端部16A,16Bを支点として梁材14の振動方向と同方向(矢印S方向)へ振動する。この張弦材16の振動に伴って、梁材14の振動と逆位相の制御力Fが束材18A〜18Cを介して梁材14に付与される。これにより、梁材14の振動が打ち消されるため、梁材14の振動が低減される。
より詳細に説明すると、図3(A)に示されるように、各振動制御用圧電素子32に電圧を印加し、これらの振動制御用圧電素子32を収縮させると、各振動制御用圧電素子32が貼付された張弦材16の両端部16A,16Bが収縮し、当該張弦材16に引張力(張力)が導入される。これにより、張弦材16の全長が短くなり、束材18A〜18Cを介して梁材14が上方へ押し上げられる。この結果、梁材14に制御力Fが付与される。
一方、図3(B)に示されるように、各振動制御用圧電素子32に印加する電圧を停止し、収縮した各振動制御用圧電素子32を復元(伸張)させると、各振動制御用圧電素子32が貼付された張弦材16の両端部16A,16Bが元の長さに復元(伸張)し、当該張弦材16に導入された引張力が放出される。これにより、張弦材16の全長が元の長さに復元し、梁材14及び束材18A〜18Cが下方へ移動する。さらに、梁材14及び束材18A〜18C等の慣性力によって張弦材16が下方へ押し下げられ、張弦材16が軸方向に伸張する。
このように振動制御用圧電素子32によって張弦材16の両端部16A,16Bを伸縮させ、張弦材16を軸方向に伸縮させることにより、梁材14の振動と逆位相の制御力Fが束材18A〜18Cを介して梁材14に付与される。したがって、梁材14の振動が打ち消されるため、梁材14の振動が低減される。
また、本実施形態では、張弦材16の外周面に振動制御用圧電素子32を貼付するため、振動制御用圧電素子32の取り付け作業の手間が低減される。さらに、新設の張弦梁10に限らず、既存の張弦梁10に対しても振動制御用圧電素子32を容易に取り付けることができる。したがって、振動制御装置30の汎用性が向上する。
さらに、張弦材16の両端部16A,16Bに振動制御用圧電素子32を取り付けることにより、例えば、張弦材16の中央部に振動制御用圧電素子32を取り付ける場合と比較して、振動制御用圧電素子32の取り付け作業の手間がさらに低減される。張弦材16の両端部16A,16Bは、作業者の手が届き易いためである。
しかも、振動制御用圧電素子32によって張弦材16の両端部16A,16Bを収縮させることにより、例えば、振動制御用圧電素子32によって張弦材16の中央部を収縮させる構成と比較して、小さい振動制御用圧電素子32の収縮量(歪み量)で、所定の大きさの制御力Fを発生することができる。したがって、各振動制御用圧電素子32の消費電力を低減することができ、また、各振動制御用圧電素子32の小型化を図ることができる。
なお、本実施形態では、張弦材16の両端部16A,16Bに振動制御用圧電素子32をそれぞれ取り付けた例を示したが、これに限らない。振動制御用圧電素子32は、少なくとも1つあれば良く、その数や配置は適宜変更可能である。なお、前述したように、振動制御用圧電素子32の消費電力等を低減する観点からすれば、振動制御用圧電素子32は張弦材16の一端部16A又は他端部16Bに設けることが望ましい。
また、複数の振動制御用圧電素子32を積層した状態で張弦材16に取り付けることも可能である。この場合、振動制御用圧電素子32の積層枚数に応じて振動制御用圧電素子32の圧縮力を増加させることができる。さらに、複数の振動制御用圧電素子32を張弦材16の軸方向に隣接して取り付けも良い。この場合、振動制御用圧電素子32の数に応じて、張弦材16を収縮させる収縮量を増加することができる。
また、本実施形態では、梁材14の振動を検出する振動検出センサとして加速度センサ34を用いた例を示したが、これに限らない。振動検出センサとしては、例えば、速度センサ、変位センサを用いても良い。この場合、速度センサ又は変位センサで検出された梁材14の速度又は変位に基づいて、振動制御部36が、梁材14の振動が打ち消されるように振動制御用圧電素子32に印加する電圧を制御すれば良い。
また、本実施形態では、加速度センサ34を梁材14に取り付けた例を示したが、これに限らない。例えば、加速度センサ34を張弦材16に取り付け、間接的に梁材14の加速度を検出することも可能である。また、振動検出センサとしては、後述する第2実施形態のように振動検出用圧電素子44を用いることも可能である。
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成のものは同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図4には、第2実施形態に係る振動制御装置40が開示されている。第2実施形態に係る振動制御装置40は、梁材14を強制的に振動させながら、当該梁材14の振動性状を分析することにより、梁材14の健全性を判定可能にする健全性判定装置である。この振動制御装置40は、張弦材16の他端部16Bに取り付けられ、梁材14に制御力を付与する振動制御用圧電素子32と、振動制御用圧電素子32に電圧を印加し、当該振動制御用圧電素子32に張弦材16を伸縮させる強制振動制御部42と、張弦材16の一端部16Aに取り付けられ、梁材14の振動を検出する振動検出用圧電素子44と、振動検出用圧電素子44の圧電信号(振動検出用圧電素子44で検出された梁材14の振動)に基づいて、梁材14の振動性状を分析する振動性状分析部46とを備えている。
振動制御用圧電素子32は、張弦材16の他端部16Bの伸縮させることにより、束材18A〜18Cを介して梁材14に制御力(加振力)Kを付与し、梁材14を強制的に振動させるものである。この振動制御用圧電素子32には、強制振動制御部42が電気的に接続されている。強制振動制御部42は、例えば、所定モード(例えば、1次モード)の梁材14の固有振動数を少なくとも1つ含むランダム波やスリープ波等によって梁材14が加振されるように、振動制御用圧電素子32に印加する電圧を制御するように構成されている。
振動検出用圧電素子44は、梁材14の振動を検出する振動検出センサとして機能するものである。より具体的には、梁材14の振動に応じて軸方向に伸縮する張弦材16の伸縮量から梁材14の振動を間接的に検出するものである。振動検出用圧電素子44は、振動制御用圧電素子32と同様に、膜型圧電素子で構成されており、伸縮方向を張弦材16の軸方向にして当該張弦材16の一端部16Aの外周面に巻き付けられている。また、振動検出用圧電素子44は、張弦材16の一端部16Aの外周面にエポキシ樹脂等の接着剤によって貼付(接着)されており、張弦材16の軸方向の伸縮量に応じて伸縮する(歪む)ようになっている。この振動検出用圧電素子44が伸縮することにより、張弦材16の伸縮量、即ち梁材14の振動に応じた圧電信号が後述する振動性状分析部46へ出力されるようになっている。
振動検出用圧電素子44には、振動性状分析部46が電気的に接続されている。振動性状分析部46は、振動検出用圧電素子44から入力された圧電信号に基づいて梁材14の振動性状(動特性)を分析(推定)するものである。この振動性状分析部46は、例えば、振動検出用圧電素子44から入力された圧電信号をFFT(Fast Fourier Transform)分析等し、梁材14の振動性状として、当該梁材14の所定モードの固有振動数を算出するように構成されている。
次に、梁材14の振動性状の分析方法について説明すると共に、第2実施形態の作用について説明する。
先ず、強制振動制御部42によって振動制御用圧電素子32に所定間隔で電圧を印加し、振動制御用圧電素子32に張弦材16の他端部16Bを伸縮させ、束材18A〜18Cを介して梁材14に振動方向(矢印V方向)の制御力Kを付与する。これにより、梁材14が振動方向へ振動する。このとき、強制振動制御部42は、所定のランダム波やスイープ波等によって梁材14が加振されるように、振動制御用圧電素子32に印加する電圧を制御する。
梁材14が振動すると、梁材14の振動が束材18A〜18Cを介して張弦材16へ伝達される。これにより、張弦材16が梁材14の振動に応じて軸方向に伸縮する。この張弦材16の軸方向の伸縮に伴って、張弦材16の一端部16Aに取り付けられた振動検出用圧電素子44が伸縮(歪み)する。これにより、振動検出用圧電素子44から梁材14の振動に応じた圧電信号が振動性状分析部46へ出力される。振動性状分析部46は、振動検出用圧電素子44から出力された圧電信号をFFT分析等し、梁材14の振動性状として、当該梁材14の所定モードの固有振動数を算出する。
ここで、梁材14の振動性状は、当該の損傷や経年劣化等によって変化する。したがって、振動性状分析部46によって、定期的(例えば、月1回)に梁材14の振動性状を算出し、記憶しておくことにより、梁材14の振動性状の変化が把握可能になる。この梁材14の振動性状の変化から梁材14の損傷や経年劣化等の有無、即ち、梁材14の健全性を判定することができる。また、地震等の発生後に、振動制御装置40によって梁材14の振動性状を分析(推定)することにより、地震による梁材14の損傷等の有無を判定することができる。本実施形態では、梁材14の振動性状の一例として、梁材14の所定モードの固有振動数を算出し、記憶しておくことにより、梁材14の健全性を判定することができる。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、張弦材16の外周面に振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44を貼付するため、振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44の取り付け作業の手間が低減される。さらに、新設の張弦梁10に限らず、既存の張弦梁10に対しても振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44を容易に設置することができる。したがって、振動制御装置40の汎用性が向上すると共に、既存の張弦梁10の損傷等の有無を容易に判定することができる。
さらに、第1実施形態と同様に、張弦材16の両端部16A,16Bに振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44を取り付けることにより、例えば、張弦材16の中央部に振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44を取り付ける場合と比較して、振動制御用圧電素子32の取り付け作業の手間がさらに低減される。
さらにまた、張弦材16の中央部と比較して、振動時に軸方向の伸縮量が小さくなる張弦材16の一端部16Aに振動検出用圧電素子44を取り付けたことにより、振動検出用圧電素子44の破損、損傷を抑制することができる。
なお、本実施形態では、梁材14の振動性状として梁材14の所定モードの固有振動数を振動性状分析部46で算出した例を示したが、これに限らない。梁材14の振動性状(動特性)としては、例えば、アクセレランス(加速度/制御力)、コンプライアンス(変位/制御力)、モビリティ(速度/制御力)等を用いることができる。
また、本実施形態では、張弦材16の一端部16Aに振動検出用圧電素子44を取り付け、張弦材16の他端部16Bに振動制御用圧電素子32を取り付けた例を示したが、これに限らない。振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44の配置は適宜変更可能であり、例えば、張弦材16の一端部16Aに、振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44を張弦材16の軸方向に隣接して取り付けても良い。この場合、本実施形態のように張弦材16の両端部16A,16Bに振動制御用圧電素子32、振動検出用圧電素子44をそれぞれ取り付ける場合と比較して、振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44の取り付け作業の手間がさらに低減される。また、張弦材16の中間部に振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44を取り付けることも可能である。
また、地震や強風等によって梁材14が振動したときに、振動性状分析部46によって梁材14の振動性状を分析しても良い。この場合、振動制御用圧電素子32は省略可能である。
また、本実施形態に係る振動制御装置40は、上記第1実施形態に係る振動制御装置30と適宜組み合わせることが可能である。具体的には、本実施形態における振動制御用圧電素子32に第1実施形態における振動制御部36(図1参照)を電気的に接続する。そして、地震時や強風時に梁材14が振動したときに、振動検出用圧電素子44で検出された梁材14の振動(圧電信号)に基づいて、梁材14の振動が打ち消されるように、振動制御部36が振動制御用圧電素子32に印加する電圧を制御する。これにより、梁材14の振動を低減することができる。
このように梁材14の振動低減時には、梁材14に制御力Fを付与するアクチュエータとして振動制御用圧電素子32を機能させる一方で、梁材14の健全性判定時には、梁材14に制御力Kを付与するアクチュエータとして振動制御用圧電素子32を機能させることにより、アクチュエータの数を低減することができる。したがって、コスト削減を図ることができる。
次に、上記第1,第2実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、第1実施形態を例に各種の変形例を説明するが、これらの変形例は第2実施形態にも適用可能である。
上記第1実施形態では、連結部材としての複数の束材18A〜18Cによって梁材14と張弦材16とを連結した例を示したが、これに限らない。連結部材は少なくとも1つあれば良く、その数、配置は適宜変更可能である。また、上記第1実施形態では、梁材14及び張弦材16を湾曲させた例を示したが、梁材14及び張弦材16の形状は適宜変更可能である。
また、上記第1実施形態は、振動制御対象物としての張弦梁10に振動制御装置30を設置した例を示したが、これに限らない。例えば、図5に示されるように、振動制御対象物としての階段50に振動制御装置30を設置しても良い。
具体的には、階段50は、下階の下床部52と上階の上床部54との間に架け渡されている。この階段50は、下床部52と上床部54との略中間に設けられた踊り場50Mと、踊り場50Mに対して下床部52側に設けられた複数の下階側踏み板50Lと、踊り場50Mに対して上床部54側に設けられた複数の上階側踏み板50Uとを備えている。
下階側踏み板50Lの裏面側(下方)には、その両端部に振動制御用圧電素子32及び振動検出センサとしての振動検出用圧電素子44がそれぞれ取り付けられた張弦材56Lが配置されている。この張弦材56Lは、階段50の下端部と踊り場50Mの上階側端部との間に張り渡されており、その中央部が束材58Lを介して踊り場50Mの下階側端部に連結されている。これと同様に、上階側踏み板50Uの表面側(上方)には、その両端部に振動制御用圧電素子32及び振動検出センサとしての振動検出用圧電素子44がそれぞれ取り付けられた張弦材56Uが配置されている。この張弦材56Uは、上床部54の端部と踊り場50Mの下階側端部との間に張り渡されており、その中央部が束材58Uを介して踊り場50Mの上階側端部に連結されている。つまり、階段50には、張弦構造が適用されている。
ここで、階段50は、人の上り下りや地震等によって振動方向(矢印V方向)へ振動する。一方、振動制御用圧電素子32によって各張弦材56L,56Uの一端部をそれぞれ軸方向に伸縮させることにより、束材58L,58Uを介して階段50に振動方向の制御力Fが付与される。したがって、振動検出用圧電素子44で検出された階段50の振動に基づいて、図示しない振動制御部が振動制御用圧電素子32に各張弦材56L,56Uを軸方向に伸縮させ、束材58L,58Uを介して階段50に当該階段50と逆位相の制御力Fを付与することにより、階段50の振動を低減することができる。
次に、図6には、振動制御装置30が設置された振動制御対象物としてのガラススクリーン60が示されている。ガラススクリーン60は、上下左右に配列された複数の板ガラス60Aをクランプ材62で連結して構成されており、上下の梁64間に壁状に配置されている。このガラススクリーン60の室内側には、その両端部に振動制御用圧電素子32、振動検出用圧電素子44がそれぞれ取り付けられた第1張弦材66Aと、その両端部に振動制御用圧電素子32、振動検出用圧電素子44がそれぞれ取り付けられた第2張弦材66Bとが配置されている。
第1張弦材66Aは、上下方向に隣接する2つのクランプ材62に設けられた束材68の先端部に取り付けられると共に、各束材68をガラススクリーン60側へ押圧するように上下の梁64間に張り渡されている。一方、第2張弦材66Bは、2つの束材68の基端側(ガラススクリーン60側)に取り付けられると共に、各束材68を室内側へ押圧するように上下の梁64間に張り渡されている。つまり、ガラススクリーン60には、張弦構造が適用されている。なお、束材18A〜18Cに対する第1張弦材66Aの押圧力と束材18A〜18Cに対する第2張弦材66Bの押圧力とは釣り合っている。
ここで、ガラススクリーン60は、風圧や地震等によって振動方向(矢印V方向)へ振動する。一方、振動制御用圧電素子32によって第1張弦材66A及び第2張弦材66Bの一端部を軸方向に伸縮させることにより、束材68及びクランプ材62を介してガラススクリーン60に振動方向の制御力Fに付与される。したがって、振動検出用圧電素子44で検出されたガラススクリーン60の振動に基づいて、図示しない振動制御部が振動制御用圧電素子32に第1張弦材66A及び第2張弦材66Bの一端部を軸方向に伸縮させ、束材68を介してガラススクリーン60に当該ガラススクリーン60と逆位相の制御力Fを付与することにより、ガラススクリーン60の振動を低減することができる。
次に、図7(A)及び図7(B)には、振動制御装置30が設置された振動制御対象物としてのドーム状の屋根材70が示されている。屋根材70は、その四隅が平面視にて略矩形のフレーム材72の角部にそれぞれ取り付けられている。この屋根材70の裏面側には、その両端部に振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44がそれぞれ取り付けられた第1張弦材74Aと、その両端部に振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44がそれぞれ取り付けられた第2張弦材74Bとが配置されている。
第1張弦材74Aは、フレーム材72の一方の対角上に張り渡されており、第2張弦材74Bは、フレーム材72の他方の対角上に張り渡されている。これらの第1張弦材74Aと第2張弦材74Bとは、各々の中央部で互いに交差されると共に、当該交差部が束材76を介して屋根材70の中央部(頂部)70Aに連結されている。つまり、屋根材70には、張弦構造が適用されている。
ここで、図7(B)に示されるように、屋根材70は、風圧や地震等によって振動方向(矢印V方向)に振動する。一方、振動制御用圧電素子32によって第1張弦材74A及び第2張弦材74Bの一端部をそれぞれ軸方向に伸縮させることにより、束材76を介して屋根材70に振動方向の制御力Fに付与される。したがって、振動検出用圧電素子44で検出された屋根材70の振動に基づいて、図示しない振動制御部が振動制御用圧電素子32に第1張弦材74A及び第2張弦材74Bの一端部をそれぞれ軸方向に伸縮させ、束材76を介して屋根材70に当該屋根材70と逆位相の制御力Fを付与することにより、屋根材70の振動を低減することができる。なお、屋根材70と同様に、振動制御対象物としてのパラボラアンテナに振動制御装置30を設置することも可能である。
また、上記第1実施形態では、張弦構造を構成する張弦材16に振動制御用圧電素子32を取り付けた例を示したが、これに限らない。例えば、図8に示されるように、振動制御対象物としての片持ち式の屋根材80に振動制御装置30を設置しても良い。
具体的には、屋根材80は、立体トラス構造を有し、その長手方向中間部が支柱82の頂部82Aに支持されている。この屋根材80の一端部と支柱82の下端部との間には、PC鋼線又はPC鋼棒等の線材で構成された引張材としてのPC鋼材84が張り渡されている。このPC鋼材84によって、屋根材80が支柱82の頂部82Aを支点として図中左回り(矢印G方向)に回転しないように支持されている。また、PC鋼材84の一端部(下端部)には、振動制御用圧電素子32及び振動検出用圧電素子44が軸方向に隣接して取り付けられている。
ここで、屋根材80は、地震時や強風時等に、支柱82の頂部82Aを支点として矢印R方向に回転振動する。一方、振動制御用圧電素子32によってPC鋼材84の一端部を軸方向に伸縮させることにより、屋根材80が支柱82の頂部82Aを支点として振動方向(矢印R方向)と同方向に加振される。したがって、振動検出用圧電素子44で検出された屋根材80の振動に基づいて、図示しない振動制御部が振動制御用圧電素子32にPC鋼材84の一端部を軸方向に伸縮させ、屋根材80に当該屋根材80と逆位相の制御力Fを付与することにより、屋根材80の振動を低減することができる。
次に、図9には、振動制御装置30が設置された振動制御対象物としてのプレキャスト梁90が示されている。プレキャスト梁90は、プレキャストコンクリートで形成されており、一対のプレキャスト柱92の間に架設されている。また、プレキャスト梁90の内部には、当該プレキャスト梁90の軸方向へ延びると共に、長手方向中間部が下に凸を成すように湾曲されたシース管94が埋設されている。このシース管94内には、PC鋼線又はPC鋼棒等の線材で構成された引張材としてのPC鋼材96が挿入されている。PC鋼材96は、引張力が導入された状態で、その両端部が固定金具98等によってシース管94の両端部にそれぞれ固定されている。このPC鋼材96によって、プレキャスト梁90にプレストレスが導入されている。また、PC鋼材96の両端部には、振動制御用圧電素子32、振動検出用圧電素子44がそれぞれ取り付けられている。
ここで、プレキャスト梁90は、地震時や強風時、建物使用者の歩行時等に、一対のプレキャスト柱92との結合部(仕口部)を支点として上下方向(矢印V方向)へ振動する。一方、振動制御用圧電素子32によってPC鋼材96の一端部を軸方向に伸縮させることにより、PC鋼材96がその両端部を支点としてプレキャスト梁90の振動方向(矢印V方向)と同方向に振動する。これにより、凸状に湾曲された当該PC鋼材96の中間部を介して、プレキャスト梁90の長手方向中間部に制御力Fが付与される。
したがって、振動検出用圧電素子44で検出されたプレキャスト梁90の振動に基づいて、図示しない振動制御部が振動制御用圧電素子32にPC鋼材96を軸方向に伸張させ、プレキャスト梁90に当該プレキャスト梁90と逆位相の制御力Fを付与することにより、プレキャスト梁90の振動を低減することができる。
次に、図10には、振動制御装置30が設置された振動制御対象物としての斜張橋100の橋桁102が示されている。斜張橋100は、橋桁102と、複数の主塔104と、各主塔104と橋桁102との間に斜めに張り渡され、主塔104に対して橋桁102を支持する引張材としての複数のケーブル106とを備えている。線材としての各ケーブル106の一端部(下端部)には、振動制御用圧電素子32又は振動検出用圧電素子44が取り付けられている。
ここで、橋桁102は、車両の往来時や地震時、強風時等に、主塔104との結合部を支点として上下方向(矢印V方向)へ振動する。一方、振動制御用圧電素子32によってケーブル106の一端部を軸方向に伸縮させることにより、橋桁102が振動方向(矢印V方向)に加振される。このケーブル106によって、橋桁102に振動方向の制御力Fが付与される。
したがって、振動検出用圧電素子44で検出された橋桁102の振動に基づいて、図示しない振動制御部が振動制御用圧電素子32にケーブル106を軸方向に伸縮させ、橋桁102に当該橋桁102と逆位相の制御力Fを付与することにより、橋桁102の振動を低減することができる。
また、上記第1実施形態では、引張材として張弦材16を用いたが、これに限らない。例えば、一対の支持部材12の間に鋼板等で構成された引張材としての板材を架設すると共に、当該板材と梁材14とを連結部材によって連結し、張弦構造を構成する。そして、板材の表面及び裏面の少なくとも一方に、当該板材を伸縮可能に振動制御用圧電素子32を貼付する。この振動制御用圧電素子32によって板材を伸縮させ、連結部材を介して梁材14に制御力(制振力)を付与することにより、当該梁材14の振動が低減される。このように、引張材は、張弦材16等の線材に限らず、板材等も含む概念である。また、板材に振動制御用圧電素子を貼付する場合は、振動制御用圧電素子に可撓性が求められないため、当該振動制御用圧電素子を積層型圧電素子等で構成しても良い。振動検出用圧電素子についても同様である。
以上、本発明の第1,第2実施形態について説明したが、本発明はこうした第1,第2実施形態に限定されるものでなく、第1,第2実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。