JP2013249244A - 二酸化炭素の精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物に二酸化炭素を反応させて、環状カーボネート化合物を生成させる二酸化炭素吸収工程、および、その環状カーボネート化合物における環状カーボネート構造の分解温度よりも高く、基本骨格の分解温度よりも低い温度において、環状カーボネート化合物を分解させて二酸化炭素を発生させる二酸化炭素再生工程を順に行う。
【選択図】なし
Description
上記目的を達成するための本発明の二酸化炭素精製方法の特徴構成は、
分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物に二酸化炭素を反応させて、環状カーボネート化合物を生成させる二酸化炭素吸収工程、および、
その環状カーボネート化合物における環状カーボネート構造の分解温度よりも高く、前記基本骨格の分解温度よりも低い温度において、環状カーボネート化合物を分解させて二酸化炭素を発生させる二酸化炭素再生工程
を順に行う点にある。
分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物:
ハロヒドリンのように分子内に水酸基とハロゲン基を有する化合物は、アルカリ処理により脱ハロゲン化水素化反応を起こして、環状エーテルを形成する。この環状エーテルで、特にエポキシ基等を有する化合物は、二酸化炭素ガスと反応して環状カーボネート化合物を形成する(化1参照)ことが知られている(以下単に原料化合物と呼ぶ場合がある)。
mは0以上の整数、
nは1以上の整数
Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基より選択される一価の基である。
また、本願では、Rを除く残基を環状カーボネート構造と呼ぶ。
原料化合物を、たとえば排ガスなどに含まれる純度の低い二酸化炭素を反応させると、二酸化炭素ガスが選択的に吸収分離されて、環状カーボネート化合物の合成に用いられ、環状カーボネート化合物の合成を行うことができる。
合成された環状カーボネート化合物を昇温すると、上記新知見より、環状カーボネート化合物は、昇温したときに、環状カーボネート構造が優先的に分解され始める。つまり、環状カーボネート化合物を昇温すると、環状カーボネート構造のみが分解して、前記基本骨格が、分解しない温度に達する。この状況で、環状カーボネート化合物の分解反応を行うと、環状カーボネート化合物は基本骨格を崩すことなく二酸化炭素を放出する。
すなわち、上記化1における逆反応が生起することになり、環状カーボネート化合物は、純粋な二酸化炭素ガスを発生させるとともに、原料化合物に復元し、さらに二酸化炭素ガスを吸収分離可能な状況に再生される。
また、前記分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物(原料化合物)がエポキシ基(化2)を有する化合物とすることができる。
上記原料化合物としては、エポキシ基を有する化合物としてあれば、二酸化炭素ガスとの反応性が高く、2−オキソ−1,3−ジオキソリル基を形成し、対応する環状カーボネート化合物を容易に生成することができる。
前記原料化合物としては、(10−(2’,5’−ジグリシジルエーテルフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド)(化3、化合物A)、トリグリシジルシアヌレート(化4、化合物B)、テトラグリシジルソルビトール(化5、化合物C)、ジグリシジルビスフェノールA(化6、化合物D)を採用することができる。
上記原料化合物として、前記化合物(A)を用いた例を以下に示す。なお、前記化合物(A)は、たとえば、新日鉄化学よりエポトート FX−305EK70として入手可能である。
フラスコにアンモニウム系イオン性化合物(触媒)としてN,N,N−トリエチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムブロマイドを0.50mmolを入れ、2−ブタノン(MEK)(溶媒)10.0gを加える。また、この液に上記化合物(B)(10−(2’,5’−ジグリシジルエーテルフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド)29.71g(68.1mmol)を加える。
この反応容器を還流管に取り付け、CO2を5%含有する混合ガスを流しながら20分間反応液中に導入して室温、常圧でバブリングした。ついで玉栓で反応容器を密閉した後、還流管の頭頂部の三方コックにおいて模擬排ガスを流しながら80℃で24時間加熱撹拌した(二酸化炭素吸収工程)。
なお、本実施形態においては、溶媒として沸点80℃の2−ブタノン(MEK)を用いたため80℃で二酸化炭素吸収行程を行っているが、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いれば二酸化炭素吸収行程を100℃以上で行っても良く、二酸化炭素吸収行程の温度が80℃以下に限定されるわけではない。
反応終了後、反応溶液を、加熱すると、約210℃においてガスの発生を確認することができた(二酸化炭素再生工程)。
上記二酸化炭素再生工程において、210℃において発生したガスを分析したところ、純粋な二酸化炭素であることがわかった。
得られた環状カーボネート構造を有するホスフィン酸エステル化合物の1HNMR(C
DCl3)スペクトルは、8.3−6.2,m,(芳香族プロトン),4.94,bs,
(環状カーボネート構造のプロトン),4.48,m,(環状カーボネート構造のプロトン),4.2−2.8,m,(環状カーボネート構造のプロトンとオキシメチレン部分のプロトン),1.82,s,(水酸基のプロトン)であった。
また、得られた環状カーボネート構造を有するホスフィン酸エステル化合物のC=O伸縮振動(IR)は1793cm-1であった。
これらのデータより、前記化3の反応式で得られた化合物は、化合物(A2)10−(2’,5’−ビス(1”,3”−ジオキソラン−2”−オン−4”−イルメチルオキシ)フェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドであることが確認できた。
二酸化炭素吸収工程により得られたホスフィン酸エステル化合物(A2)を2℃/分で昇温しつつ、重量計により重量減少率の推移、および、質量分析計により二酸化炭素フラグメント検出強度の推移を調べたところ、図1のようになった。なお、図1〜4を通じて、右上がりに増加する直線が左縦軸(温度)の推移を示し、上図において右下がりに減少する曲線が右縦軸(重量減少)の推移を示すものである。下図においてピークをもって増減する曲線が右縦軸(質量分析による二酸化炭素由来のピーク(m/z=44の強度))の推移である。
さらに昇温すると、二酸化炭素由来のフラグメントピークの強度は強くなり、260℃程度で重量減少も2%程度にいたる。ここまでの間、二酸化炭素由来のフラグメント以外のフラグメントが観測されていないことから原料化合物(A)の基本骨格の分解はまだ始まっていないことも確認できる。さらに、原料化合物(A)から化合物(A2)を生成した際、化合物(A2)が吸収した二酸化炭素量は8.2%であるから、この時点でも主に二酸化炭素は環状カーボネート構造の分解に由来すると考えられる。しかし、化合物(A2)の温度が260℃に達すると、質量分析計の出力は二酸化炭素由来のフラグメントピーク以外のピークが発生しはじめる(リン酸部分と推定される)。そのため、化合物(A2)は、260℃以上になると原料化合物(A)の基本骨格が分解しはじめると考えられ、基本骨格の分解温度を260℃と考えることができ、二酸化炭素再生工程上限温度として扱うことができる。
上記原料化合物(A)に代えて原料化合物としてトリグリシジルシアヌレート(B)を用いて実施形態1と同様に検証実験を行った。前記化合物(B)は、たとえば、日産化学社より入手可能である。
実施形態1と同様に二酸化炭素吸収工程により得られたシアヌレート化合物(B2)を2℃/分で昇温しつつ、重量計により重量減少率の推移、および、質量分析計により二酸化炭素フラグメント検出強度の推移を調べたところ、図2のようになった。
また、急激に化4の逆反応を生起し、基本骨格が分解しはじめるまでの温度(二酸化炭素再生工程上限温度)までの温度差が十分にあることから、原料化合物(B)は、繰りかえし二酸化炭素精製を行っても原料化合物(B)の劣化を抑制することのできる温度管理を容易に行えることがよみとれる。
上記原料化合物(A)に代えて原料化合物としてテトラグリシジルソルビトール(C)を用いて実施形態1と同様に検証実験を行った。前記化合物(C)は、たとえば、ナガセケムテック社より、ソルビトールポリグリシジルエーテルとして入手可能である。
実施形態1と同様に二酸化炭素吸収工程により得られたソルビトール化合物(C2)を2℃/分で昇温しつつ、重量計により重量減少率の推移、および、質量分析計により二酸化炭素フラグメント検出強度の推移を調べたところ、図3のようになった。
上記原料化合物(A)に代えて原料化合物としてジグリシジルビスフェノールA(D)を用いて実施形態1と同様に検証実験を行った。前記化合物(D)は、たとえば、ジャパンエポキシレジン社より、エピコート828として入手可能である。
実施形態1と同様に二酸化炭素吸収工程により得られたビスフェノール化合物(D2)を2℃/分で昇温しつつ、重量計により重量減少率の推移、および、質量分析計により二酸化炭素フラグメント検出強度の推移を調べたところ、図4のようになった。
Claims (6)
- 分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物に二酸化炭素を反応させて、環状カーボネート化合物を生成させる二酸化炭素吸収工程、および、
その環状カーボネート化合物における環状カーボネート構造の分解温度よりも高く、前記基本骨格の分解温度よりも低い温度において、環状カーボネート化合物を分解させて二酸化炭素を発生させる二酸化炭素再生工程
を順に行う二酸化炭素の精製方法。 - 前記分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物がエポキシ基を有する化合物である請求項1に記載の二酸化炭素の精製方法。
- 前記分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物が、(10−(2’,5’−ジグリシジルエーテルフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド)であり、
前記環状カーボネート構造の分解温度よりも高く、前記基本骨格の分解温度よりも低い温度が210℃以上260℃以下の温度とする
請求項2記載の二酸化炭素の精製方法。 - 前記分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物が、トリグリシジルシアヌレートであり、
前記環状カーボネート構造の分解温度よりも高く、前記基本骨格の分解温度よりも低い温度が240℃以上260℃以下の温度とする
請求項2記載の二酸化炭素の精製方法。 - 前記分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物が、テトラグリシジルソルビトールであり、
前記環状カーボネート構造の分解温度よりも高く、前記基本骨格の分解温度よりも低い温度が230℃以上250℃以下の温度とする
請求項2記載の二酸化炭素の精製方法。 - 前記分子内の基本骨格に水酸基とハロゲン基を有する化合物の分子内脱ハロゲン化水素化物が、ジグリシジルビスフェノールAであり、
前記環状カーボネート構造の分解温度よりも高く、前記基本骨格の分解温度よりも低い温度が240℃以上285℃以下の温度とする
請求項2記載の二酸化炭素の精製方法。
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