以下、本発明の実施の形態を図1〜図24を用いて詳細に説明する。
最初に、図1を用いて、本発明の1実施例に係る筒内噴射エンジン1の制御システム全体の構成概略について説明する。
筒内噴射エンジン1は4気筒からなる。図1は、簡略化のため1気筒のみ図示する。各気筒はシリンダ207bを有し、シリンダ207bに導入する空気は、エアクリーナ202の入口部から取り入れられ、空気流量計(エアフロセンサ203)を通り、吸気流量を制御する電制スロットル弁205aが収容されたスロットルボディ205を通ってコレクタ206に入る。コレクタ206に吸入された空気は、筒内噴射エンジン1の各シリンダ207bに接続された各吸気管201に分配された後、ピストン207a,シリンダ207b等によって形成される燃焼室207cに導かれる。また、エアフロセンサ203からは、吸気流量を表す信号が本実施形態の高圧燃料ポンプ制御装置を有するエンジン制御ユニット101に出力される。さらに、スロットルボディ205には、電制スロットル弁205aの開度を検出するスロットルセンサ204が取り付けられており、その信号もエンジン制御ユニット101に出力されるようになっている。
一方、ガソリン等の燃料は、燃料タンク250から低圧燃料ポンプ251により一次加圧されて燃圧レギュレータ252により一定の圧力(例えば0.3MPa)に調圧されるとともに、後述する高圧燃料ポンプ209でより高い圧力(例えば5MPaや10MPa)に2次加圧され、フューエルレール253を介してシリンダ207bに設けられている燃料噴射弁(以下、インジェクタ254と呼ぶ)から燃焼室207cに噴射される。燃焼室207cに噴射された燃料は、点火コイル222で高電圧化された点火信号により点火プラグ208で着火される。なお、本実施例においては、インジェクタ254は筒内噴射エンジン1の各シリンダ207b側から噴射するサイド噴射方式としているが、燃焼室207cの真上から噴射するセンター噴射方式としても良い。
筒内噴射エンジン1のクランク軸207dに取り付けられたクランク角センサ216は、クランク軸207dの回転位置を表す信号をエンジン制御ユニット101に出力し、また、吸気弁225の開閉タイミングを可変にする機構と、排気弁226の開閉タイミングを可変にする機構を備え、排気弁226の開閉タイミングを可変にする機構を備えたカム軸(図示省略)に取り付けられたカム角センサ211は、カム軸の回転位置を表す角度信号をエンジン制御ユニット101に出力するとともに、排気弁226のカム軸の回転に伴って回転する高圧燃料ポンプ209のポンプ駆動カム200の回転位置を表す角度信号をもエンジン制御ユニット101に出力する。
なお、本実施例においては、筒内噴射エンジン1を4気筒で記載しているが、3気筒や6気筒等、他の気筒数のエンジンとしても良い。
また、本実施例においては、吸気弁225,排気弁226ともに開閉タイミング可変機構を備えているが、可変動弁機構として、吸気弁225の開閉タイミングのみ可変とする構成としても良いし、開閉タイミングに加えて弁リフト量を可変とする機構を用いも良い。
図2は、前記高圧燃料ポンプ209を備えた燃料系システムの全体構成概略図を示している。
高圧燃料ポンプ209は、燃料タンク250からの燃料を加圧してフューエルレール253に高圧の燃料を圧送するものである。
燃料はタンク250から低圧燃料ポンプ251にて高圧燃料ポンプ209の燃料導入口に、燃圧レギュレータ252によって一定の圧力に調圧されて導かれる。燃料導入口側には燃料吸入量を制御する電磁制御弁であるポンプソレノイド209aが設けられている。ポンプソレノイド209aはノーマルクローズ型のソレノイドであり、非通電時に閉弁し、通電時には開弁する。低圧燃料ポンプ251によって供給された燃料は、エンジン制御ユニット101によってポンプソレノイド209aを制御することによって吸入量を調節され、ポンプ駆動カム200、および加圧室209bにて加圧され、燃料吐出口からフューエルレール53に圧送される。燃料吐出口には、下流側の高圧燃料を加圧室に逆流させないために吐出弁209cが設けられている。フューエルレール253には、インジェクタ254,フューエルレール253内の燃料圧力(以下燃圧)を計測するための圧力センサ256が装着されている。
図3にエンジン制御ユニット101の入出力関係を示す。エンジン制御ユニット101は、A/D変換器を含むI/O LSI101a,CPU101b等から構成され、アクセサリ,イグニッションON,スタータONを示すキースイッチ401の信号,アクセル開度センサ402,ブレーキスイッチ403,車速センサ404,エアフロセンサ203,スロットルセンサ204,カム角センサ211,クランク角センサ216,水温センサ217,空燃比センサ218,圧力センサ256,油温センサ219を含む各種センサ等からの信号を入力として取り込み、所定の演算処理を実行し、演算結果として算出された各種の制御信号を出力し、アクチュエータである電制スロットル弁205a,ポンプソレノイド209a,点火コイル222,低圧燃料ポンプ251,インジェクタ254に所定の制御信号を供給し、フューエルレール253内の燃圧制御,燃料噴射量制御及び点火時期制御等を実行するものである。I/O LSI101aにはインジェクタ254を駆動する駆動回路が設けられており、バッテリから供給される電圧を昇圧回路(図示しない)を用いて昇圧して供給し、IC(図示しない)によって電流制御することによってインジェクタ254を駆動する。
次に、図4〜図7を用いて、インジェクタ254から噴射する燃料のペネトレーション(貫徹力)、すなわち、燃料到達距離について説明する。
図4は、所定の燃圧,所定の噴射パルス幅で、インジェクタ254から燃料を噴射した場合の、噴射開始後、すなわち通電開始後からの経過時間と、噴射した燃料の到達距離(ペネトレーション)の関係を示している。通電開始直後はインジェクタ254の開弁遅れがあるため、ペネトレーションは0であり、所定時間経過後から徐々にペネトレーションが伸びていく。ある時間を経過すると、噴射した燃料が気化するため、ペネトレーションは収束する(図の破線)。この場合のペネトレーションの最大値はPNT_maxとなっている。
図5は、所定の背圧の環境下に対し、所定の燃圧で、インジェクタ254から燃料を噴射した場合の、噴射パルス幅毎のペネトレーションの最大値、すなわち、図4のPNT_m
axに相当するペネトレーションの関係を示している。噴射パルス幅が短い場合、すなわち、噴射量が少ない場合はペネトレーションの最大値は小さく、噴射パルス幅が長い場合はペネトレーションの最大値は大きくなっている。ここで、Ti_minは最小パルス幅であり、Ti_minのときのペネトレーションが最も小さくなっている。
図6は、ピストン207aが上死点(TDC)から下死点(BDC)へと移動する間に、燃焼室207cへ、インジェクタ254から燃料を噴射した場合の、インジェクタ254の噴射口からピストン冠面又はシリンダボアまでの最短距離の関係を示している。図6では簡単のため、インジェクタ254から噴射する燃料は1方向に噴射する場合を例として記載している。クランク角度が0(ピストン207aがTDC)にある場合、インジェクタ254の噴射口に最もピストン207aの冠面が接近しているため、最短距離は短く、クランク角度が進むにつれてピストン207aがTDCからBDCへと移動するため、徐々に最短距離は伸びてゆく。クランク角度がCA_0以降となると、ピストン207aはインジェクタ254の噴射口からさらに遠ざかるが、シリンダボア壁面の方がインジェクタ254の噴射口に近くなるため、最短距離は一定となる。
ここで例えば、インジェクタ254から噴射する燃料のペネトレーション(燃料到達距離の最大値)が大きい場合、クランク角度CA_0よりも進角側(TDC側)で噴射した場合は燃料はピストン冠面に到達し、クランク角度CA_0よりも遅角側(BDC側)で噴射した場合は燃料はシリンダボア壁面に到達する。ただし、インジェクタ254から噴射する燃料のペネトレーション(燃料到達距離の最大値)がp1の場合、クランク角度CA_p1以降に噴射を開始すれば、燃料はピストン冠面にもボア壁面にも到達しないこととなる。また例えば、インジェクタ254から噴射する燃料のペネトレーションがp2の場合、クランク角度CA_p2以降に噴射を開始すれば、燃料はピストン冠面にもボア壁面にも到達しないこととなる。たとえば、最小噴射パルス幅で噴射した場合のペネトレーションがp1であり、所定の分割比で分割した1回あたりの噴射パルス幅で噴射した場合のペネトレーションがp1だった場合はクランク角度CA_p1以降に噴射を開始すれば良く、所定の分割比で分割した1回あたりの噴射パルス幅で噴射した場合のペネトレーションがp2だった場合はクランク角度CA_p2以降に噴射を開始すれば良い。
図7は、インジェクタ254から噴射する燃料が複数方向に噴射される、いわゆるマルチホールインジェクタの場合で、ピストン207aが上死点(TDC)から下死点(BDC)へと移動する間に、燃焼室207cへ、インジェクタ254から燃料を噴射した場合の、インジェクタ254の噴射口からの最短距離の関係を示している。図7では、マルチホールインジェクタの例として、6本のビームを噴射する場合を記載している。
クランク角度が0(ピストン207aがTDC)にある場合、インジェクタ254の噴射口に最もピストン207aの冠面が接近しているため、いずれのビームについても最短距離は短く、クランク角度が進むにつれてピストン207aがTDCからBDCへと移動するため、徐々に各ビームの最短距離は伸びてゆく。ここでマルチホールでは複数の方向に燃料を噴射するため、最短距離はビームによって異なり、例えばビームNo1は最も上向き、すなわち、冠面に対して平行面に近い方向に噴射されているため、クランク角度が進むにつれて最短距離の増加幅が大きく、逆に、ビームNo5,6は、最も下向き、すなわち冠面に対して垂直面に近い方向に噴射されているため、クランク角度が進むにつれて最短距離の増加幅が小さくなっている。それぞれのビームは、クランク角度が所定値以降となると、ピストン207aはインジェクタ254の噴射口からさらに遠ざかるが、シリンダボア壁面の方がインジェクタ254の噴射口に近くなるため、最短距離は一定となる。
ここで、図6同様に、例えば、インジェクタ254から噴射する燃料のペネトレーション(燃料到達距離の最大値)がp1の場合、クランク角度CA_p1以降に噴射を開始すれば、いずれのビームの燃料も、ピストン冠面にもボア壁面にも到達しないこととなる。また例えば、インジェクタ254から噴射する燃料のペネトレーションがp2の場合、クランク角度CA_p2以降に噴射を開始すれば、いずれのビームによる燃料も、ピストン冠面にもボア壁面にも到達しないこととなる。以下の実施例はインジェクタ254がマルチホールインジェクタの場合を例として記載する。
図6,図7いずれの場合も幾何学的な距離を示しており、実際の燃焼においては燃焼室207c内の吸気流動の影響を受けるが、1サイクル中に噴射する燃料を複数回に分割して燃料噴射を実行し、分割された各噴射パルス幅のペネトレーション(燃料到達距離の最大値)に応じて噴射するクランク角度を選択する、または噴射クランク角度に応じて、ペネトレーションが許容できる長さとなるように、各噴射パルス幅を選択することによって、ピストン冠面やボア壁面に付着する燃料量を大幅に低減できる。
次に、図8〜図17を用いて、本実施形態による内燃機関の分割多段噴射制御の具体的な制御内容について説明する。
図8は、本発明の一実施形態による、分割多段噴射制御の制御内容を示すフローチャートである。
図8の内容は、エンジン制御ユニット101のCPU101bにプログラミングされ、あらかじめ定められた周期で繰り返し実行される。すなわち、以下のステップ501〜506の処理は、エンジン制御ユニット101によってあらかじめ定められた周期で繰り返し実行される。エンジン制御ユニット101は図8の処理内容で算出された、噴射パルス幅と、噴射タイミングに基づき、各インジェクタ254に所定の制御信号を供給し、1サイクル中に複数の燃料噴射を実行する。
ステップ801では、各インジェクタから1サイクル中に噴射する総燃料量である、合計噴射パルス幅Ti_allを設定する。合計噴射パルス幅Ti_allは、エアフロセンサ203にて計量する吸入空気量や、運転状態等に応じて設定される空燃比,圧力センサ256信号を用いて算出される燃圧等に応じて設定される。
ステップ802では、最小噴射パルス幅Ti_minを算出する。最小噴射パルス幅Ti_minは図8(B)に示すように、圧力センサ256信号を用いて算出される燃圧Pfを入力とした関数Fminを参照して算出する。ここで最小噴射パルス幅は、インジェクタ254の電気特性,機械特性、及びインジェクタの駆動電流波形に依存するため、諸特性を考慮のうえ、関数Fminを設定することが望ましい。
ステップ803(分割噴射設定)では、分割多段噴射の各噴射パルス幅や噴射タイミングの設定を行う。ステップ803の詳細は図9に示す。
次に、図9を用いて、図8のステップ803(分割噴射設定)の詳細について説明する。図9は初めに1サイクルにおける分割噴射の分割数を設定し、各噴射パルス幅と各噴射タイミングを設定する制御方式の制御フローチャートである。分割数をNとすると、n=1〜Nの各噴射パルス幅と各噴射タイミングを設定する。
ステップ901では、カウンタの初期化を行う。
ステップ902では、分割数Nの設定を行う。図8のステップ801,802でそれぞれ設定した合計噴射パルス幅Ti_all,最小噴射パルス幅Ti_minを用いて、Ti_all÷Ti_minの除算を実行し、その商を分割数Nとして設定する。例えば、Ti_allが1.0ms、Ti_minが0.3msの場合、Ti_all÷Ti_min=3.33・・・となり、商は3となるのでN=3とする。
ステップ903では、カウンタnが分割数Nよりも大きいか否かの判定を行い、大きい場合(n=1〜Nまでの設定が完了した場合)は処理を終了する。カウンタnが分割数N以下の場合はステップ904以降の処理を行う。
ステップ904では、各噴射の噴射パルス幅Ti_n(n=1〜N)の算出を行う。ステップ904ではTi_all÷Nとして噴射パルス幅Ti_nを算出しているが、詳細には桁落ちを防止するため、例えば、Ti_allが1.0ms、分割数N=3の場合、Ti_1=0.33,Ti_2=0.33,Ti_3=0.34などのような桁落ち帽子処理を行うことが望ましい。または分割比を設定し、予め桁落ち防止を分割比算出に織り込んで算出する処理としても良い。
ステップ905では、ペネトレーションの推定を行う。分割した各噴射パルス幅Ti_nと、燃圧Pfに基づき、図10に示すようなマップ構造を用いて、分割した各噴射のペネトレーション(燃料到達距離の最大値)pnt_nを算出する。図10では各噴射パルス幅Ti_nと、燃圧Pfのマップ構造としているが、さらに吸入する空気温度を検出もしくは推定して、各噴射パルス幅Ti_nと、燃圧Pfと、空気温度の4次元マップ構造とするのが望ましい。さらには、筒内噴射エンジン1にターボチャージャーやスーパーチャージャー等の過給システムが搭載された場合等は、燃焼室内の圧力変化によるペネトレーション変化を考慮するために吸気管圧力や過給圧等を用いて推定したペネトレーションを補正することが望ましい。またさらには、重質,軽質などの燃料の性状によってもペネトレーションは変化するため、燃料性状に応じた複数のマップを用意し、重質,軽質の判定を行い、判定結果に基づいて検索するマップ値を切替え、または補完することが望ましい。
ステップ906では、分割した各噴射の噴射インターバルである噴射間隔CAINTnを算出する。噴射間隔は、複数の条件の最大値として設定することが望ましい。一つはペネトレーションに関する条件である。分割した各噴射パルス幅Ti_n同士の間隔を短くしてしまうと、ペネトレーションが増大するため、燃圧Pfを入力とした関数によってペネトレーションによる噴射間隔を算出する。二つ目はエンジン制御ユニット101に設けられた、各インジェクタ254を駆動する駆動回路に関する条件である。インジェクタ254を駆動すると、エンジン制御ユニット101に備えられた昇圧回路によって昇圧された電圧が低下し、再び元の水準に戻るまでに時間がかかる。いわゆる昇圧復帰時間であり、昇圧復帰時間をTbstとすると、次回の噴射Ti_(n+1)を噴射するには、今回の噴射Ti_nが終了してから所定時間空ける必要がある。すなわち、噴射間隔はTbst−Ti_n以上必要となる。したがって、ペネトレーションによる噴射間隔と、昇圧復帰時間による噴射間隔の最大値を必要噴射間隔TINTnとし、必要噴射間隔TINTnを、エンジン回転数Neを用いてクランク角度変換することによって噴射間隔CAINTnを算出する(間隔[ms]×エンジン回転数[r/min]×6÷1000=クランク角度[°CA])。なお、混合気の均質性を改善するために噴射間隔が必要な場合は、三つ目の条件を加えて最大値を選択してクランク角度変換するように構成しても良い。混合気の均質性は吸気流動に大きく依存するため、エンジン回転数Neや、吸気弁225,排気弁226の開閉タイミングを用いて均質性に関する噴射間隔を算出する構成としても良い。
ステップ907(噴射タイミング設定)では、分割多段噴射の各噴射の噴射タイミングの設定を行う。ステップ907の詳細は図11に示す。
ステップ908では、カウンタnのインクリメント処理を行い、ステップ903に戻る。このようにしてn=1〜Nまで処理を繰り返し、各噴射パルス幅と各噴射タイミングを設定する。
次に、図11を用いて、図9のステップ907(噴射タイミング設定)の詳細について説明する。
ステップ1101では、図9のステップ905で推定したペネトレーションの場合に許容しうる最も進角側の噴射タイミング(クランク角度)を算出する。n回目噴射の推定ペネトレーションpnt_nと、ピストン冠面温度Tpを入力として、図12(A)に示すようなマップMcatを参照することによって、温度許容噴射角度PCAtを算出する。マップMcatの設定は、インジェクタ254の配置(燃焼室207cに対する配置),インジェクタ254から噴射する各ビームの方向,燃焼室207cのボア,ストロークに基づいて設定する。なお、ピストン207aの冠面形状も考慮に入れて設定するとより好適である。また、マップMcatの設定は、ピストン冠面温度Tpが低い場合は、ピストン冠面に付着した燃料の気化が悪化するため、図12(A)の破線のように所定のペネトレーションに対する噴射許容角度は遅角側に設定し、ピストン冠面温度Tpが適温の場合は冠面に付着した燃料の気化が促進されるため、図12(A)の実線のように所定のペネトレーションに対する噴射許容角度は進角側に設定する。一方、ピストン冠面温度Tpがさらに高温となった場合、冠面に燃料が付着すると、蒸発燃料(気体)の層が燃料(液体)の下に生じて熱伝導を阻害するために液体が瞬時に蒸発することを妨げる現象、いわゆるライデンフロスト現象が発生するため、図12(A)の一点破線のように所定のペネトレーションに対する噴射許容角度は遅角側に設定することが望ましい。
また、冠面温度Tpは、空気量,空燃比,点火時期などを用いて燃焼温度を推定し、さらに水温センサ217,油温センサ219で検出した水温,油温を用いて熱モデルを構成して推定する方法が望ましいが、制御簡略化の観点から、水温センサ217,油温センサ219で検出した水温,油温のうち、より低い値を入力値(冠面温度Tpの代替)として、マップMcatを検索する構成としても良い。またはさらに簡略化して水温センサ217で検出した水温を入力値として、マップMcatを検索する構成としても良い。
また、マップMcatは、推定ペネトレーションpnt_nと、ピストン冠面温度Tpを入力として構成しているが、推定ペネトレーションpnt_nと、ピストン冠面温度Tpと、シリンダボア壁面温度を入力とした4次元マップとして構成しても良い。シリンダボア壁面温度は、空気量,空燃比,点火時期などを用いて燃焼温度を推定し、さらに水温センサ217で検出した水温を用いて熱モデルを構成して推定する方法が望ましいが、制御簡略化の観点から、推定ペネトレーションpnt_nと、油温と、水温を入力とした4次元マップとして構成しても良い。
ステップ1102では、噴射した燃料が到達するまでの時間遅れの補正を行う。図4に示したように、通電開始直後はインジェクタ254の開弁遅れがあるため、ペネトレーションは0であり、所定時間経過後から徐々にペネトレーションが伸びていく。燃料噴霧の速度、すなわち噴射開始後の経過時間に対するペネトレーションの変化は燃圧に依存するため、例えば燃圧Pfを入力としたテーブル関数によって時間遅れを設定し、時間遅れを、エンジン回転数Neを用いてクランク角度変換することによって時間補正値PCAcを算出する(時間[ms]×エンジン回転数[r/min]×6÷1000=クランク角度[°CA])。
ステップ1103では、温度許容噴射角度PCAtから時間補正値PCAcを減算し、許容噴射角度PCAを算出する。ステップ1103によって到達時間遅れを考慮しつつ、図9のステップ905で推定したペネトレーションの場合に許容しうる最も進角側の噴射タイミング(クランク角度)を算出できる。
ステップ1104では、1サイクルにおける分割噴射のうち、1回目の噴射タイミングの設定か否かの判定を行う。n=1の場合、ステップ1107に進み、1回目の噴射開始タイミングSOI1=許容噴射角度PCAとして終了する。n≠1の場合(2回目以降の場合)、ステップ1105に進み、n回目噴射開始可能角度PCAnを算出する。前回(n−1回目)の噴射終了時期EOI(n−1)に図9のステップ906で算出した噴射間隔CAINTnを加算してn回目噴射開始可能角度PCAnを算出する。前回(n−1回目)の噴射終了時期EOI(n−1)は、前回(n−1回目)の噴射開始時期SOI(n−1)に、前回(n−1回目)の噴射パルス幅Ti_(n−1)のクランク角度換算値を加算することによって算出する。次にステップ1106を実行し、今回(n回目)の噴射開始タイミングSOInを算出する。n回目噴射開始タイミングSOInは、ステップ1103で算出した許容噴射角度PCAと、ステップ1105で算出したn回目噴射開始可能角度PCAnの大きい値、すなわち進角側の値とする。これにより、分割噴射の噴射間隔を確保しつつ、図9のステップ905で推定した各噴射のペネトレーションの場合に許容しうる噴射タイミングを設定できる。
次に、図13から図16を用いて、図8から図12に示すようにして構成したときの、内燃機関の分割多段噴射制御の具体的な制御例について説明する。
図13は、ピストン冠面温度Tpが適温、例えばエンジン暖機が完了し通常運転している場合で、1サイクル中に5回の分割噴射を実行した場合のタイムチャートである。
図13において、図13(A)はクランク角度、図13(B)はインジェクタ254の駆動パルス、図13(C)はインジェクタ254の駆動電流、図13(D)はインジェクタ254の噴射口からの各ビームの最短距離の関係を示している。図13(A)のクランク角度が0から180まで増加してゆき、図13(D)の各ビームの最短距離は徐々に大きくなってゆく。図11のステップ1101によって、ピストン冠面温度が適温の場合の、分割された各噴射のペネトレーションが許容できるタイミングでインジェクタ254の駆動パルスを5回発生させ、吸気行程の中盤で5回の分割噴射を実行している。
図14は、ピストン冠面温度Tpが適温、例えばエンジン暖機が完了し通常運転している場合で、1サイクル中に4回の分割噴射を実行した場合のタイムチャートである。図14の(A),(B),(C),(D)は、図13の(A),(B),(C),(D)と同様である。図13の場合に比較して、インジェクタ254の駆動パルス(噴射パルス幅Ti_n)が長く(ペネトレーションが長く)なっているため、図11に示した処理によって噴射開始タイミングSOInが図13よりもやや遅角側(BDC側)に設定されて、4回の分割噴射を実行している。
ここで例えば、ピストン冠面温度Tpが適温、例えばエンジン暖機が完了し通常運転している状態で、エンジンの負荷を増加させる場合、図8のステップ801にて算出される合計噴射パルス幅Ti_allも増加する。燃圧Pfが一定のままである場合は、図8のステップ802にて算出される最小噴射パルス幅Ti_minは一定である。したがって、低負荷から中負荷,高負荷へとエンジン負荷を増加させる場合は、例えば、図9のステップ902で算出される分割数Nが低負荷時に4であった場合、エンジン負荷が増加するにつれて図9のステップ904にて算出される各噴射の噴射パルス幅Ti_n(n=1〜4)が徐々に増加し、負荷増加量が所定以上となると図9のステップ902で算出される分割数Nが1つ増加して5となる。さらにエンジン負荷が増加すると、図9のステップ904にて算出される各噴射の噴射パルス幅Ti_n(n=1〜5)が徐々に増加する。その結果、図9のステップ905で算出される推定ペネトレーションpnt_nは、低負荷からエンジン負荷が徐々に増大するにつれて徐々に大きくなり、分割数が1つ増加したときに一度小さくなって、さらにエンジン負荷が徐々に増大するにつれて徐々に大きくなってゆく。最終的に図11にて設定される各噴射開始タイミングSOInは、低負荷時に図14に図示の噴射タイミングであった場合、低負荷からエンジン負荷が徐々に増大するにつれて徐々に図14の噴射タイミングよりも遅角側になり、分割数が1つ増加したときには図15に図示の噴射タイミングのようになり、さらにエンジン負荷が徐々に増大するにつれて図15の噴射タイミングよりも遅角側になってゆく。
図15は、ピストン冠面温度Tpが低温、例えば低温でエンジン始動後、暖機が完了しておらず、油温や水温はまだ十分に上昇していない場合で、1サイクル中に5回の分割噴射を実行した場合のタイムチャートである。図15の(A),(B),(C),(D)は、図13の(A),(B),(C),(D)と同様である。図13の場合に比較して、ピストン冠面温度が低いため、図11に示した処理によって、ピストン冠面温度が低温の場合の、分割された各噴射のペネトレーションが許容できるよう、噴射開始タイミングSOInが図13よりもやや遅角側(BDC側)に設定された上で、5回の分割噴射を実行している。
図16は、ピストン冠面温度Tpが高温、例えば高負荷で連続運転した場合で、1サイクル中に5回の分割噴射を実行した場合のタイムチャートである。図16の(A),(B),(C),(D)は、図13の(A),(B),(C),(D)と同様である。図13の場合に比較して、ピストン冠面温度が高いため、図11に示した処理によってピストン冠面温度が高温の場合の、分割された各噴射のペネトレーションが許容できるよう、噴射開始タイミングSOInが図13よりもやや遅角側(BDC側)に設定された上で、5回の分割噴射を実行している。
図8から図12に示すようにして構成することで、図13から図16に示したような様々な運転状態において、ペネトレーション増大を防止するための噴射間隔を維持しつつ、ピストン冠面温度を考慮して、分割された各噴射のペネトレーションに応じて噴射タイミングを設定して分割多段噴射制御を実行するため、筒内燃料付着を低減することができ、PM排出粒子数の増大、および未燃燃料の増大を抑制することができる。
なお、筒内噴射エンジン1が所定条件の成立中に一時的に自動停止させる間欠運転制御、いわゆるアイドルストップを実行する場合、アイドルストップ中は燃焼が発生しないため、燃焼室内の壁面温度は低下してゆくが、図11に示した噴射タイミングの設定では、ステップ1101にて温度許容噴射角度PCAtを算出するため、アイドルストップ機能を備えた筒内噴射式エンジンに本制御を適用することによって、ピストン冠面温度を考慮して、分割された各噴射のペネトレーションに応じて噴射タイミングを設定して分割多段噴射制御を実行するため、アイドルストップから筒内噴射エンジン1を再始動させた後の運転において、筒内燃料付着を低減することができ、PM排出粒子数の増大、および未燃燃料の増大を抑制することができる。
図17は、冷機始動後に、吸気行程噴射,圧縮行程噴射による弱成層混合気形成を行い、さらに点火時期を遅角させることによって触媒昇温を行う、いわゆる触媒暖機制御において、吸気行程噴射に、図8から図12に示した分割多段噴射制御を適用した場合のタイムチャートである。図17の(A),(B),(C),(D)は、図13の(A),(B),(C),(D)と同様である。図17は吸気行程から圧縮行程までを示しており、図17(A)のクランク角度は0から360まで増加している。したがって、図13(D)の各ビームの最短距離は徐々に大きくなり、徐々に小さくなっている。図17(A)のクランク角度が0から180までの期間、すなわち吸気行程において、3回の分割噴射を実行している。さらに図17(A)のクランク角度が180から360までの期間、すなわち圧縮行程においてさらに1回噴射を実行している。このように構成することで、点火プラグ周りに可燃混合気を形成しつつ、吸気行程噴射においては、分割された各噴射のペネトレーションに応じて噴射タイミングを設定して分割多段噴射を実行するため、筒内燃料付着を低減することができ、PM排出粒子数の増大、および未燃燃料の増大を抑制することができる。
次に、図9から図12に示した制御方式とは別の方式を用いて図8のステップ803(分割噴射設定)を構成した場合の詳細について、図18から図24を用いて説明する。
図18は初めに1サイクルにおける分割噴射の分割数を設定する方式ではなく、ペネトレーションが許容できるパルス幅を算出してN回の分割噴射を行う制御方式の制御フローチャートである。分割数をNとすると、n=1〜Nの各噴射パルス幅と各噴射タイミングを設定する。
ステップ1801では、カウンタの初期化を行う。
ステップ1802では、図8のステップ801,802でそれぞれ設定した合計噴射パルス幅Ti_all,最小噴射パルス幅Ti_minを用いて、分割噴射が実行可能か否かの判断を行う。Ti_all<Ti_min×2の場合、ステップ1805(非分割時処理)を実行する。ステップ1805の詳細は図19に示す。
ステップ1803では、1サイクルにおける分割噴射のうち、1回目噴射の噴射パルス幅、及び噴射タイミングの設定か否かの判定を行う。n=1の場合、ステップ1806(1回目噴射処理)に進み、ステップ1806を実行後にステップ1807に進む。n≠1の場合(2回目以降の場合)、ステップ1807に進む。ステップ1806の詳細は図20に示す。
ステップ1807では、合計噴射パルス幅Ti_allから、分割噴射した各噴射パルス幅を引いた残りの噴射時間がさらに分割可能か否かの判断を行う。Ti_min×2>Ti_all−ΣTi_x(x=1〜n)の場合、ステップ1808(最終噴射処理)を実行する。ステップ1808の詳細は図22に示す。Ti_min×2≦Ti_all−ΣTi_x(x=1〜n)の場合、ステップ1807(分割噴射処理)を実行し、ふたたびステップ1804に戻る。ステップ1807の詳細は図21に示す。
次に、図19を用いて、図18のステップ1805(非分割時処理)の詳細について説明する。
ステップ1901では、噴射パルス幅Ti_nを設定する。図19の処理においては分割無し、すなわち分割数N=1となるため、n回目噴射パルス幅Ti_n=合計噴射パルス幅Ti_allとする。
ステップ1902では、図9のステップ905と同一処理を行い、ペネトレーション(燃料到達距離の最大値)pnt_nを算出する。
ステップ1903では、図11のステップ1101からステップ1103までの処理を行い、許容噴射角度PCAを算出する。
ステップ1904では、噴射開始タイミングSOI1=許容噴射角度PCAとして終了する。
次に、図20を用いて、図18のステップ1806(1回目噴射処理)の詳細について説明する。
ステップ2001では、n=1回目の噴射パルス幅Ti_nを設定する。n=1回目の噴射パルス幅Ti_n=最小噴射パルス幅Ti_minとする。
ステップ2002では、図9のステップ905と同一処理を行い、ペネトレーション(燃料到達距離の最大値)pnt_nを算出する。
ステップ2003では、図11のステップ1101からステップ1103までの処理を行い、許容噴射角度PCAを算出する。
ステップ2004では、n=1回目の噴射開始タイミングSOI1=許容噴射角度PCAとして終了する。
なお、本実施例においては、1回目の噴射パルス幅を最小噴射パルス幅Ti_minとする形態で構成しているが、ステップ1901〜1902の替わりに、予め1回目噴射の許容ペネトレーションをピストン冠面温度やシリンダボア壁面温度、または簡略化して油温や水温に基づいて設定し、後述の図21のステップ2105と同様の処理によって、1回目噴射の許容ペネトレーションと燃圧に基づいて1回目の噴射パルス幅を算出する構成としても良い。
次に、図21を用いて、図18のステップ1807(分割噴射処理)の詳細について説明する。
ステップ2101では、カウンタnのインクリメント処理を行う。
ステップ2102では、n−1回目の噴射と、n回目噴射の噴射インターバルである噴射間隔CAINT(n−1)を算出する。ステップ2102の処理は、図9のステップ906の処理と同様である。
ステップ2103では、n回目の噴射開始可能角度PCAnを算出する。前回(n−1回目)の噴射終了時期EOI(n−1)にステップ2102で算出した噴射間隔CAINT(n−1)を加算してn回目噴射開始可能角度PCAnを算出する。
ステップ2104では、ステップ2103で算出したn回目噴射開始可能角度PCAnと、ピストン冠面温度Tpを入力として、マップMcat2を参照することによって、n回目の噴射として許容できるペネトレーションである、許容ペネトレーションPPNTnを算出する。マップMcat2の設定は、図12に示した図11のステップ1101で用いたマップMcatの逆マップとして設定する。
ステップ2105では、ステップ2104で設定した許容ペネトレーションPPNTnと、燃圧Pfを入力として、マップMpnt2を参照することによって、n回目噴射の噴射パルス幅Ti_nを算出する。マップMpnt2の設定は、図10に示した図9のステップ905で用いたマップMpntの逆マップとして設定する。
ステップ2106では、ステップ2103で算出したn回目噴射開始可能角度PCAnを、n回目の噴射開始タイミングSOInとして終了する。
次に、図22を用いて、図18のステップ1808(最終噴射処理)の詳細について説明する。
ステップ2201では、カウンタnのインクリメント処理を行う。
ステップ2202では、最終のn=N回目の噴射に相当する、噴射パルス幅Ti_nを設定する。合計噴射パルス幅Ti_allから、1回目〜n−1回目の噴射パルス幅を合計した値を減算した値を、Ti_nとする。
ステップ2203では、図9のステップ905と同一処理を行い、ペネトレーション(燃料到達距離の最大値)pnt_nを算出する。
ステップ2204では、図11のステップ1101からステップ1103までの処理を行い、許容噴射角度PCAを算出する。
ステップ2205では、n−1回目の噴射と、n回目噴射の噴射インターバルである噴射間隔CAINT(n−1)を算出する。ステップ2205の処理は、図9のステップ906の処理と同様である。
ステップ2206では、n回目の噴射開始可能角度PCAnを算出する。前回(n−1回目)の噴射終了時期EOI(n−1)にステップ2205で算出した噴射間隔CAINT(n−1)を加算してn回目噴射開始可能角度PCAnを算出する。
ステップ2207では、最終のn=N回目の噴射開始タイミングSOInを算出する。n回目噴射開始タイミングSOInは、ステップ2204で算出した許容噴射角度PCAと、ステップ2206で算出したn回目噴射開始可能角度PCAnの大きい値、すなわち進角側の値とする。
以上、図18から図22に示した処理を実行することによって、分割回数Nの増大を抑制し、分割噴射の噴射間隔を確保しつつ、各噴射タイミングを可能な限り進角側に設定でき、かつ、当該噴射タイミングでペネトレーションが許容できる各パルス幅を算出して、分割噴射を行うことができる。
次に、図23から図24を用いて、図18から図22に示した制御方式を用いて図8のステップ803(分割噴射設定)を構成した場合の詳細について説明する。
図23は、ピストン冠面温度Tpが適温、例えばエンジン暖機が完了し通常運転している場合で、1サイクル中に4回の分割噴射を実行した場合のタイムチャートである。図23の(A),(B),(C),(D)は、図13の(A),(B),(C),(D)と同様である。
図23(A)のクランク角度が0から180まで増加してゆく途中で、インジェクタ254の駆動パルスを4回発生させ、クランク角度0〜180、すなわち吸気行程の中盤で4回の分割噴射を実行している。1回目の噴射は、図18のステップ1806によって噴射パルス幅が設定されるとともに、当該噴射パルス幅のペネトレーションが許容できる噴射タイミングで燃料噴射を実行している。図18のステップ1807によって、1回目の噴射終了後、噴射間隔CAINT(n−1)を明けて2回目の噴射タイミングが設定されるとともに、当該タイミングで許容できるペネトレーションに基づいて2回目の噴射パルス幅が設定される。続いて、2回目の噴射終了後、噴射間隔CAINT(n−1)を明けて3回目の噴射タイミングが設定されるとともに、当該タイミングで許容できるペネトレーションに基づいて3回目の噴射パルス幅が設定される。最後に図18のステップ1808によって、最終すなわち4回目の噴射パルス幅が設定されるとともに、当該噴射パルス幅のペネトレーションが許容できる噴射タイミングで燃料噴射を実行している。
図24は、ピストン冠面温度Tpが低温、例えば低温でエンジン始動後、暖機が完了しておらず、油温や水温はまだ十分に上昇していない場合で、1サイクル中に4回の分割噴射を実行した場合のタイムチャートである。図24の(A),(B),(C),(D)は、図13の(A),(B),(C),(D)と同様である。図23の場合に比較して、ピストン冠面温度が低いため、図18に示した処理によって噴射開始タイミングSOInが図23よりもやや遅角側(BDC側)に設定された上で、4回の分割噴射を実行している。
このように構成することで、様々な運転状態において、ペネトレーション増大を防止するための噴射間隔を維持しつつ、ピストン冠面温度を考慮して、分割された各噴射のペネトレーションに応じて噴射タイミングを設定して分割多段噴射制御を実行するため、分割噴射回数Nの増大を抑制し、かつ、筒内燃料付着を低減することができ、PM排出粒子数の増大、および未燃燃料の増大を抑制することができる。