JP2013204807A - すべり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】裏金鋼101と前記裏金鋼上に設けられた軸受合金層102とを有するすべり軸受基材上に、バインダー樹脂及び固体潤滑剤を含む樹脂被覆層103が設けられたすべり軸受1であって、前記樹脂被覆層103は軸方向中央部Bの硬度が軸方向両端部A,Aの硬度よりも高い、すべり軸受。
【選択図】図1
Description
したがって本発明は、固体潤滑剤を含んだ樹脂被覆層の耐摩耗性を損ねることなく、相手軸へのなじみ性を向上させ、耐摩耗性となじみ性の両立を図ったすべり軸受を提供することを目的とするものである。
<1> 裏金鋼と前記裏金鋼上に設けられた軸受合金層とを有するすべり軸受基材上に、バインダー樹脂及び固体潤滑剤を含む樹脂被覆層が設けられたすべり軸受であって、前記樹脂被覆層は軸方向中央部の硬度が軸方向両端部の硬度よりも高い、すべり軸受。
<2> 前記樹脂被覆層の軸方向の幅寸法を1としたときに、前記軸方向両端部の幅寸法の比が0.3以上0.7以下である、前記<1>に記載のすべり軸受。
<3> 前記樹脂被覆層の軸方向中央部のナノインデンター硬さが軸方向両端部のナノインデンター硬さよりも0.1GPa以上高い、前記<1>又は<2>に記載のすべり軸受
<4> 前記樹脂被覆層の軸方向中央部の表面粗さが0.5μmRa以下である、前記<1>〜<3>のいずれか1に記載のすべり軸受
<5> 前記樹脂被覆層の軸方向の一方の端部の幅寸法に対する他方の端部の幅寸法の比が0.8以上1.25以下である、前記<1>〜<4>のいずれか1に記載のすべり軸受。
<6> 前記樹脂被覆層の軸方向の一方の端部のナノインデンター硬さに対する他方の端部のナノインデンター硬さの比が0.8以上1.25以下である、前記<1>〜<5>のいずれか1に記載のすべり軸受。
<7> 前記固体潤滑剤が二硫化モリブデン及びグラファイトのうち少なくとも一方を含み、樹脂被覆層における固体潤滑剤の含有量が総量で20〜60体積%である、前記<1>〜<6>のいずれか1に記載のすべり軸受。
<8> 前記樹脂被覆層に占める前記固体潤滑剤の含有量が、軸方向中央部に対し軸方向端部の方が大きい、前記<7>に記載のすべり軸受。
<9> 裏金鋼と前記裏金鋼上に設けられた軸受合金層とを有するすべり軸受基材の、軸受合金層の軸方向中央部面に、バインダー樹脂及び固体潤滑剤を含む樹脂組成物を塗布する工程、前記軸受合金層の全面に、固体潤滑剤を含む樹脂組成物を塗布する工程、乾燥工程、焼成工程及び加圧工程を含む、すべり軸受の製造方法。
このように、本発明のすべり軸受は、軸方向両端部においては、硬度が相対的に低い樹脂被覆層を設けて耐焼付性、ひいてはなじみ性を担い、軸方向中央部においては硬度を相対的に高めて、耐摩耗性と低摩擦性を担うものである。
なお、本発明において、すべり軸受における軸方向両端部、軸方向中央部とは、それぞれ、内周面の軸方向両端部、軸方向中央部を意味する。なお、本明細書においてこれらをそれぞれ、両端部、中央部とのみ称する場合もある。
本発明に係るすべり軸受1は、裏金鋼101と前記裏金鋼101の上に配置された軸受合金層102とを有するすべり軸受基材上に、固体潤滑剤を含む樹脂被覆層103が設けられている。この樹脂被覆層において、軸方向両端部に比して軸方向中央部の硬度が高いことを特徴とする。図1における符号Aが、それぞれ軸方向端部に相当し、軸方向の末端から中央部に向かって一定の範囲を占める部分である。軸方向両端部はこの軸方向端部A,Aを指す。また軸方向中央部Bとは、軸方向両端部A,Aを除いた部分である。
両端部の幅寸法がかかる範囲の下限以上であれば、なじみ性に対して得られる効果及び耐焼付性の向上の点から好ましく、またかかる範囲の上限以下であれば、樹脂被覆層のしゅう動面にかかる面圧及び耐摩耗性に対する効果の点から好ましい。
軸方向中央部の表面粗さをかかる範囲とするには、例えば、後述する樹脂被覆層の形成工程において、加圧処理することが挙げられる。軸方向中央部は相手軸との当たりが弱く、樹脂被覆層を加圧することによって中央部の表面粗さを細かくすることができ、低摩擦性を実現することができる。表面粗さをかかる範囲にするために必要な加圧条件は、樹脂被覆層に含まれるバインダー樹脂や固体潤滑剤の種類や含有量等などに応じて、適宜好適な条件を採用することができる。
固体潤滑剤は、少なくともMoS2及びグラファイトのどちらか一方を含み、MoS2又はグラファイトの他に固体潤滑剤をさらに含む場合には、MoS2又はグラファイトの総量が少なくとも固体潤滑剤全体の70体積%を超えることが好ましい。固体潤滑剤の含有量、配合種類、配合比率については軸方向中央部と軸方向端部で同一でもよいし異なっていてもよいが、なじみ性の観点から、固体潤滑剤の含有量は軸方向端部が軸方向中央部に比べ大きいほうが好ましい。
前者の群の元素は主として強度及び耐摩耗性を付与し、後者の群の元素は主としてなじみ性を付与し、添加する元素の種類と量により軸受特性を発揮する。
また、アルミ合金鋳物であるAC8A、AC9Bなどの高Si−Al合金からなるピストンのスカート部を下地として、本発明の樹脂被覆層を使用し、その耐摩耗性を向上することもできる。
これらの元素において、軟質金属であるBiはなじみ性を発揮し、青銅の基本成分であるSnは高強度性と耐摩耗性を発揮し、その他の成分は補助的に特性を向上する。特に、Pは脱酸素、焼結促進、強化などに有効であり、Agは潤滑油又は銅中の不純物成分Sとの反応でしゅう動特性向上に有効な化合物を形成し、Inは耐食性と潤滑油の濡れ性を向上し、NiやAlは銅を強化する等の作用がある。
すべり軸受の製造方法は、例えば以下の工程を含む。
(a)裏金鋼に合金を圧接することにより、または裏金鋼に合金粉末を散布した後に焼結、圧接することにより、裏金鋼上に軸受合金層を設けた、すべり軸受基材を得る工程、
(b)すべり軸受基材の軸受合金層表面に、当該基材と樹脂被覆層との密着性を確保するための処理を施す工程、
(c)すべり軸受基材の軸受合金層表面に樹脂被覆層を形成する工程。
なお、加圧工程は密着性の観点から焼成工程の後に行うことが好ましいが、これに限らない。
空孔は発泡剤が発泡することで形成され、上記有機熱分解型及び無機系吸熱分解型の発泡剤の場合は、例えば、乾燥工程や焼成工程における熱により発砲し、空孔が形成される。
裏金鋼にアルミニウム系軸受合金を圧接して軸受基材を製造した。軸受基材と樹脂被覆層との密着性を確保するため、サンドブラストで粗面化処理を行い、その後ブラスト粉を除去するために洗浄した。
バインダー樹脂、固体潤滑剤及び溶剤を混合した樹脂組成物の塗布液を調製した。
上記で得られた軸受基材を70℃雰囲気で予熱を行い、軸方向両端部をマスキングした状態で、軸受合金層上の軸方向中央部に3μmの膜厚でスプレー法にて上記塗布液を塗布した。その後120℃にて30分乾燥を行った。
続いて、マスキングのための治具を除去し、しゅう動面全面にスプレー法により6μmの膜厚で塗布液を塗布し、120℃にて30分乾燥を行った。
その後、200℃にて1時間焼成し、さらに、当該樹脂被覆面の全面を金属製のロールで加圧して、厚さ6μmの樹脂被覆層を形成し、実施例1〜4のすべり軸受を作製した。
なお、ナノインデンター硬さ及び表面粗さは、軸方向中央部は軸受の軸方向中心の位置での測定値であり、軸方向両端部は軸受の軸方向端部から軸受の軸方向長さの10%分、軸受の軸方向中心側にあるそれぞれの位置での測定値の平均値である。比較例については、軸方向中心にて測定した。
焼付面圧及び摩耗量についてはそれぞれ焼付試験及び摩耗試験で計測した。
樹脂被覆層のナノインデンター試験は超微小硬度計(株式会社エリオニクス製)を用いて以下の条件で行い、軸方向中央部と軸方向両端部におけるナノインデンター硬さを測定した。
測定温度:23℃
負荷荷重:1000mg
ステップインターバル:20msec
分割数:500
焼付試験は軸受焼付試験機を用いて以下の条件で行った。
回転数:8000rpm
潤滑油:0W−20
給油温度:120℃
荷重:3分毎に3kNずつ荷重漸増
樹脂被覆層の軸方向中央部と軸方向両端部における表面粗さは、JIS B 061:2001に準拠し、算術平均粗さRaを測定した。
摩耗試験は片当たり摩耗試験機を用いて以下の条件で行った。なお、測定箇所は軸方向中央部である。
回転数:0rpm(1分保持)→1200rpm(1分保持)→0rpm(1分保持)のサイクル試験
潤滑油:0W−20
給油温度:100℃
荷重:4.41kN
試験時間:100時間
このように本発明のすべり軸受けは、軸方向中央部と両端部とで樹脂被覆層の硬さを変えることにより、それぞれの部位に異なる特長を付与し、相補的な関係として両立させることで、すべり軸受全体の性能を向上させたものである。
軸と軸受が接触する軸方向両端部における高いなじみ性と、軸方向中央部の硬い樹脂被覆層による耐摩耗性によって、起動停止エンジンなどの高性能な自動車やその他の産業機械用のエンジン用すべり軸受に採用される可能性は大きい。
101 裏金鋼
102 軸受合金層
103 樹脂被覆層
104 マスキング
A 軸方向端部
B 軸方向中央部
C 軸方向
D しゅう動方向(円周方向)
Claims (9)
- 裏金鋼と前記裏金鋼上に設けられた軸受合金層とを有するすべり軸受基材上に、バインダー樹脂及び固体潤滑剤を含む樹脂被覆層が設けられたすべり軸受であって、前記樹脂被覆層は軸方向中央部の硬度が軸方向両端部の硬度よりも高い、すべり軸受。
- 前記樹脂被覆層の軸方向の幅寸法を1としたときに、前記軸方向両端部の幅寸法の比が0.3以上0.7以下である、請求項1に記載のすべり軸受。
- 前記樹脂被覆層の軸方向中央部のナノインデンター硬さが軸方向両端部のナノインデンター硬さよりも0.1GPa以上高い、請求項1又は2に記載のすべり軸受。
- 前記樹脂被覆層の軸方向中央部の表面粗さが0.5μmRa以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のすべり軸受。
- 前記樹脂被覆層の軸方向の一方の端部の幅寸法に対する他方の端部の幅寸法の比が0.8以上1.25以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のすべり軸受。
- 前記樹脂被覆層の軸方向の一方の端部のナノインデンター硬さに対する他方の端部のナノインデンター硬さの比が0.8以上1.25以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のすべり軸受。
- 前記固体潤滑剤が二硫化モリブデン及びグラファイトのうち少なくとも一方を含み、樹脂被覆層における固体潤滑剤の含有量が総量で20〜60体積%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のすべり軸受。
- 前記樹脂被覆層に占める前記固体潤滑剤の含有量が、軸方向中央部に対し軸方向端部の方が大きい、請求項7に記載のすべり軸受。
- 裏金鋼と前記裏金鋼上に設けられた軸受合金層とを有するすべり軸受基材の、軸受合金層の軸方向中央部面に、バインダー樹脂及び固体潤滑剤を含む樹脂組成物を塗布する工程、前記軸受合金層の全面に、固体潤滑剤を含む樹脂組成物を塗布する工程、乾燥工程、焼成工程及び加圧工程を含む、すべり軸受の製造方法。
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