JP2013199215A - 車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】トレッドが狭い場合や、重心位置が高い場合や、速度が高い場合であっても、スムーズに車体を旋回方向内側に傾斜させることができ、車体の安定性を維持することができ、旋回性能を向上させることができるとともに、乗員が違和感を感じることがなく、乗り心地がよく、安定した走行状態を実現することができるようにする。
【解決手段】回転可能に車体に取り付けられた左右の駆動輪と、操縦装置と、車体を旋回方向に傾斜させる傾斜用アクチュエータ装置と、左右の駆動輪を駆動する駆動用アクチュエータ装置と、駆動輪の各々に付与される駆動トルクを制御して車体の姿勢を制御するとともに、走行を制御する車両制御装置とを有し、操縦装置に操舵指令が入力されると、操舵初期に、操舵指令に含まれる操舵方向に車体の重心を移動させるように制御して旋回方向内側に向けた加速度を発生させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、少なくとも左右一対の車輪を有する車両に関するものである。
従来、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関する技術が提案されている。例えば、同軸上に配設された2つの駆動輪を有し、運転者の重心移動による車体の姿勢変化を感知して駆動する車両、球体状の単一の駆動輪に取り付けられた車体の姿勢を制御しながら移動する車両等の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この場合、運転者による操縦装置の操作入力量に応じて、車体や駆動輪の動作を制御して車体の倒立状態を保ちながら走行するようになっている。
特開2004−129435号公報
しかしながら、前記従来の車両においては、旋回性能を向上させるために、車体を旋回方向内側に傾斜させることができるようになっているが、旋回方向外側に向けて作用する遠心力の影響によって、トレッドが狭い場合や、重心位置が高い場合や、速度が高い場合には、車両の安定性が低下しやすく、乗員が不快に感じたり、不安を抱いたりしてしまうことがある。
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、操舵(だ)操作の初期、すなわち、操舵初期に、操舵指令に含まれる操舵方向に車体の重心を移動させるように制御して旋回方向内側に向けた加速度を発生させることによって、トレッドが狭い場合や、重心位置が高い場合や、速度が高い場合であっても、スムーズに車体を旋回方向内側に傾斜させることができるので、車体の安定性を維持することができ、また、旋回性能を向上させることができるとともに、乗員が違和感を感じることがなく、乗り心地がよく、安定した走行状態を実現することができる安全性の高い車両を提供することを目的とする。
そのために、本発明の車両においては、回転可能に車体に取り付けられた左右の駆動輪と、走行指令を入力する操縦装置と、前記車体を旋回方向に傾斜させる傾斜用アクチュエータ装置と、前記左右の駆動輪を駆動する駆動用アクチュエータ装置と、前記駆動輪の各々に付与される駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御するとともに、前記操縦装置に入力された走行指令に応じて走行を制御する車両制御装置とを有し、前記走行指令は操舵指令を含み、前記車両制御装置は、前記操縦装置に操舵指令が入力されると、操舵初期に、前記操舵指令に含まれる操舵方向に車体の重心を移動させるように制御して旋回方向内側に向けた加速度を発生させる。
請求項1の構成によれば、操舵初期に、旋回方向内側に向けて車体の重心を移動させることができ、スムーズに車体を旋回方向内側に傾斜させることができるので、操縦性や危機回避性能を犠牲とすることなしに、車体の安定性を維持することができる。
請求項2〜4の構成によれば、操舵初期にのみ操舵指令に含まれる操舵方向と反対方向のヨーモーメントを発生させることができるので、旋回中における車体の安定性を確実に維持することができる。
本発明の実施の形態における車両の構成を示す概略図である。 本発明の実施の形態における車両のリンク機構の構成を示す図である。 本発明の実施の形態における車両の構成を示す背面図である。 本発明の実施の形態における車両制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態における走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における旋回走行時の車体の傾斜動作を説明する力学モデルを示す図である。 本発明の実施の形態における横加速度演算処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態におけるリンク角速度推定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態におけるヨーレートの微分処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 本発明の実施の形態におけるフィルタ処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における傾斜制御処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における伝達関数の入力と出力との関係を示す図である。 本発明の実施の形態における操舵制御処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態におけるリンクモータ制御処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における駆動制御処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における駆動モータ制御処理の動作を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態における車両の構成を示す概略図、図2は本発明の実施の形態における車両のリンク機構の構成を示す図、図3は本発明の実施の形態における車両の構成を示す背面図である。なお、図1において、(a)は車両の正面図、(b)は車両の側面図、(c)はジョイスティックの側面図、(d)はジョイスティックの上面図であり、図3において、(a)は車体が直立している状態を示す図、(b)は車体が傾斜している状態を示す図である。
図1において、10は、本実施の形態における車両であり、車体の本体部20、駆動輪12、支持部としての中央縦部材21及び乗員15が搭乗する搭乗部11を有し、前記車両10は、車体を前後左右に傾斜させることができるようになっている。そして、倒立振り子の姿勢制御と同様に車体の姿勢を制御する。図1(b)に示される例において、車両10は右方向に前進し、左方向に後退することができる。
前記駆動輪12は、車体の一部である中央縦部材21に対して回転可能に支持され、駆動用アクチュエータ装置としての駆動モータ51によって駆動される。なお、駆動輪12の回転軸は図1(b)に示す平面に垂直な方向に存在し、駆動輪12はその回転軸を中心に回転する。また、前記駆動輪12は、同軸上に並列に配設された左右の車輪12L及び12Rの2つである。この場合、左右の車輪12L及び12Rは、それぞれ、左右の駆動モータ51L及び51Rによって独立して駆動される。なお、駆動用アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、内燃機関等を使用することもできるが、ここでは、電気モータである駆動モータ51を使用するものとして説明する。
また、車体の一部である本体部20は、中央縦部材21によって下方から支持され、駆動輪12の上方に位置する。そして、本体部20には、車両10の運転者である乗員15が搭乗する搭乗部11が取り付けられている。
本実施の形態においては、説明の都合上、搭乗部11には乗員15が搭乗する例について説明するが、搭乗部11には必ずしも乗員15が搭乗している必要はなく、例えば、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、搭乗部11に乗員15が搭乗していなくてもよいし、乗員15に代えて、貨物等の搭載物が積載されていてもよい。なお、前記搭乗部11は、乗用車、バス等の自動車に使用されるシートと同様のものであり、足置き部、座面部、背もたれ部及びヘッドレストを備える。
また、前記車両10は、車体を左右に傾斜させる車体左右傾斜機構としてのリンク機構30と、該リンク機構30を作動させるアクチュエータである傾斜用アクチュエータ装置としてのリンクモータ25とを有する。そして、旋回時には、図1(a)及び3(b)に示されるように、左右の車輪12L及び12Rの路面18に対する角度、すなわち、キャンバ角を変化させるとともに、搭乗部11及び本体部20を含む車体を旋回内輪側へ傾斜させることによって、旋回性能の向上と乗員15の快適性の確保とを図ることができるようになっている。すなわち、前記車両10は車体を横方向(左右方向)にも傾斜させることができる。なお、図2及び3(a)に示される例においては、左右の車輪12L及び12Rは路面18に対して直立している、すなわち、キャンバ角が0度になっている。また、図1(a)及び3(b)に示される例においては、左右の車輪12L及び12Rは路面18に対して右方向に傾斜している、すなわち、キャンバ角が付与されている。
前記リンク機構30は、左側の車輪12L及び該車輪12Lに駆動力を付与する電気モータ等から成る左側の駆動モータ51Lを支持する左側の縦リンクユニット33Lと、右側の車輪12R及び該車輪12Rに駆動力を付与する電気モータ等から成る右側の駆動モータ51Rを支持する右側の縦リンクユニット33Rと、左右の縦リンクユニット33L及び33Rの上端同士を連結する上側の横リンクユニット31Uと、左右の縦リンクユニット33L及び33Rの下端同士を連結する下側の横リンクユニット31Dと、本体部20に上端が固定され、上下に延在する中央縦部材21とを有する。また、左右の縦リンクユニット33L及び33Rと上下の横リンクユニット31U及び31Dとは回転可能に連結されている。さらに、上下の横リンクユニット31U及び31Dは、その中央部で中央縦部材21と回転可能に連結されている。なお、左右の車輪12L及び12R、左右の駆動モータ51L及び51R、左右の縦リンクユニット33L及び33R、並びに、上下の横リンクユニット31U及び31Dを統合的に説明する場合には、駆動輪12、駆動モータ51、縦リンクユニット33及び横リンクユニット31として説明する。
そして、駆動用アクチュエータ装置としての前記駆動モータ51は、いわゆるインホイールモータであって、固定子としてのボディが縦リンクユニット33に固定され、前記ボディに回転可能に取り付けられた回転子としての回転軸が駆動輪12の軸に接続され、前記回転軸の回転によって駆動輪12を回転させる。なお、前記駆動モータ51は、インホイールモータ以外の種類のモータであってもよい。
また、前記リンクモータ25は、電気モータ等を含む回転式の電動アクチュエータであって、固定子としての円筒状のボディと、該ボディに回転可能に取り付けられた回転子としての回転軸とを備えるものであり、前記ボディが取付フランジ22を介して本体部20に固定され、前記回転軸がリンク機構30の上側の横リンクユニット31Uに固定されている。なお、リンクモータ25の回転軸は、本体部20を傾斜させる傾斜軸として機能し、中央縦部材21と上側の横リンクユニット31Uとの連結部分の回転軸と同軸になっている。そして、リンクモータ25を駆動して回転軸をボディに対して回転させると、本体部20及び該本体部20に固定された中央縦部材21に対して上側の横リンクユニット31Uが回動し、リンク機構30が作動する、すなわち、屈伸する。これにより、本体部20を傾斜させることができる。なお、リンクモータ25は、その回転軸が本体部20及び中央縦部材21に固定され、そのボディが上側の横リンクユニット31Uに固定されていてもよい。
また、リンクモータ25は、リンク機構30のリンク角の変化を検出するリンク角センサ25aを備える。該リンク角センサ25aは、リンクモータ25においてボディに対する回転軸の回転角を検出する回転角センサであって、例えば、レゾルバ、エンコーダ等から成る。前述のように、リンクモータ25を駆動して回転軸をボディに対して回転させると、本体部20及び該本体部20に固定された中央縦部材21に対して上側の横リンクユニット31Uが回動するのであるから、ボディに対する回転軸の回転角を検出することによって、中央縦部材21に対する上側の横リンクユニット31Uの角度の変化、すなわち、リンク角の変化を検出することができる。
なお、リンクモータ25は、回転軸をボディに対して回転不能に固定する図示されないロック機構を備える。該ロック機構は、メカニカルな機構であって、回転軸をボディに対して回転不能に固定している間は電力を消費しないものであることが望ましい。前記ロック機構によって、回転軸をボディに対して所定の角度で回転不能に固定することができる。
さらに、搭乗部11の後方若しくは下方又は本体部20には、図示されないバッテリ装置が配設されている。該バッテリ装置は、駆動モータ51及びリンクモータ25のエネルギ供給源である。また、搭乗部11の後方若しくは下方又は本体部20には、図示されない制御装置、インバータ装置、各種センサ等が収納されている。
前記搭乗部11の脇(わき)には、操縦装置としてのジョイスティック41が配設されている。乗員15は、操縦装置であるジョイスティック41を操作することによって、車両10を操縦する、すなわち、車両10の加速指令、減速指令、操舵指令、停止指令、制動指令等の走行指令を入力するようになっている。
図1(c)及び(d)に示されるように、ジョイスティック41は、入力操舵角検出手段としてのハンドル角センサ62及び前後入力量検出手段としてのスロットル位置センサ73を含む基部41b、該基部41bに傾動可能に取り付けられ、前後及び左右に傾斜させることで入力する手段である入力手段としてのレバー41aを備える。
そして、操縦者としての乗員15は、レバー41aを、図1(c)及び(d)において矢印で示されるように、前後及び左右に傾斜させることで走行指令を入力する。すると、ジョイスティック41のハンドル角センサ62及びスロットル位置センサ73は、レバー41aの前後、すなわち、駆動輪12の回転軸に垂直な方向(x軸方向)、及び、左右、すなわち、駆動輪12の回転軸に平行な方向(y軸方向)の傾斜量に相当する状態量を計測し、その計測値を操縦者の入力した前後入力量(前後操作量)及び左右入力量(左右操作量)として、制御装置に送信する。
また、レバー41aは、図示されない中立状態復帰用のばね部材によって付勢され、操縦者が手を放して解放すると、自動的に零入力に相当する中立状態に復帰する。これにより、操縦者の不測の事態等によって、操縦操作の継続が不可能になった場合でも、車両10の適切な制御が可能となる。
なお、本実施の形態における以降の説明は、搭乗部11の座面が水平であるときに、駆動輪12の回転軸に垂直な方向にx軸、平行な方向にy軸、鉛直上向きにz軸を採る座標系に基づくものとする。
本実施の形態において、車両10は横加速度センサ44を有する。該横加速度センサ44は、一般的な加速度センサ、ジャイロセンサ等から成るセンサであって、車両10の横加速度、すなわち、車体の幅方向としての横方向(図3における左右方向)の加速度を検出する。
車両10は、旋回時に車体を旋回内側に傾斜させて安定させるので、車体を傾斜させることによって、旋回時の旋回外側への遠心力と重力とが釣り合うような角度になるように制御される。このような制御を行うことによって、例えば、路面18が進行方向と垂直な方向(進行方向に対する左右方向)に傾斜していたとしても、常に車体を水平に保つことが可能になる。これにより、車体及び乗員15には、見かけ上、常に重力が鉛直下向きにかかっていることになり、違和感が低減され、また、車両10の安定性が向上する。
そこで、本実施の形態においては、傾斜する車体の横方向の加速度を検出するために、横加速度センサ44を車体に取り付け、横加速度センサ44の出力がゼロとなるようにフィードバック制御を行う。これにより、旋回時に作用する遠心力と重力とが釣り合う傾斜角まで、車体を傾斜させることができる。また、進行方向と垂直な方向に路面18が傾斜している場合でも、車体が鉛直になる傾斜角となるように制御することができる。なお、前記横加速度センサ44は、車体の幅方向の中心、すなわち、車体の縦方向軸線上に位置するように配設されている。
しかし、横加速度センサ44が1つであると、不要加速度成分をも検出してしまうことがある。例えば、車両10の走行中、路面18の窪(くぼ)みに左右の車輪12L及び12Rのいずれか一方のみが落下する場合があり得る。この場合、車体が傾斜するので、横加速度センサ44は、周方向に変位し、周方向の加速度を検出することになる。つまり、遠心力や重力に直接由来しない加速度成分、すなわち、不要加速度成分が検出されてしまう。
また、車両10は、例えば、車輪12L及び12Rのタイヤ部分のように弾性を備え、ばねとして機能する部分を含み、また、各部材の接続部等に不可避的なガタが含まれる。そのため、横加速度センサ44は、不可避的なガタやばねを介して車体に取り付けられていると考えられるので、ガタやばねの変位によって生じる加速度をも不要加速度成分として検出してしまう。
このような不要加速度成分は、車両制御システムの制御性を悪化させる可能性がある。例えば、車両制御システムの制御ゲインを大きくすると、不要加速度成分に起因する制御系の振動、発散等が発生するので、応答性を向上させようとしても制御ゲインを大きくすることができなくなってしまう。
そこで、本実施の形態においては、横加速度センサ44が複数であって、互いに異なる高さ位置に配設されている。図3に示される例において、横加速度センサ44は、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bの2つであって、第1横加速度センサ44aと第2横加速度センサ44bとは互いに異なる高さ位置に配設されている。第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bの位置を適切に選択することで、効果的に不要加速度成分を取り除くことができる。
具体的には、図3(a)に示されるように、第1横加速度センサ44aは、搭乗部11の背面において、路面18からの距離、すなわち、高さがL1 の位置に配設されている。また、第2横加速度センサ44bは、搭乗部11の背面又は本体部20の上面において、路面18からの距離、すなわち、高さがL2 の位置に配設されている。なお、L1 >L2 である。そして、旋回走行時に、図3(b)に示されるように、車体を旋回内側(図において右側)に傾けた状態で旋回すると、第1横加速度センサ44aは、横方向の加速度を検出して検出値a1 を出力し、第2横加速度センサ44bは、横方向の加速度を検出して検出値a2 を出力する。なお、車体が傾く際の傾斜運動の中心、すなわち、ロール中心は、厳密には路面18よりわずかに下方に位置するが、実際上は、概略路面18と等しい位置であると考えられる。
本実施の形態においては、車体の傾斜運動の角速度を検出する後述されるロールレートセンサ44c、及び、車体の旋回運動の角速度、すなわち、車体のヨー角速度を検出するヨー角速度検出手段としての後述されるヨーレートセンサ44dが配設されている。
なお、前記ロールレートセンサ44cは、一般的なロールレートセンサであって、例えば、ジャイロセンサを、路面18と垂直方向の面内での回転角速度を検出することができるように取り付けたものである。また、前記ヨーレートセンサ44dは、一般的なヨーレートセンサであって、例えば、ジャイロセンサを、路面18と平行な面内での回転角速度を検出することができるように取り付けたものである。なお、三次元ジャイロセンサであれば、ロールレートセンサ44c及びヨーレートセンサ44dの機能を発揮することができる。つまり、ロールレートセンサ44c及びヨーレートセンサ44dは、それぞれ、別個に構成されたものであってもよいし、一体的に構成されたものであってもよい。
さらに、車両10の走行速度である車速を検出する車速検出手段としての後述される車速センサ54が配設されている。該車速センサ54は、駆動輪12の回転速度に基づいて車速を検出するセンサであり、例えば、エンコーダ等から成る。
また、本実施の形態における車両10は、車両制御装置としての車両制御システムを有する。該車両制御システムは、一種のコンピュータシステムであり、ECU(Electronic Control Unit)等から成る傾斜制御装置、操舵制御装置及び駆動制御装置を備える。前記傾斜制御装置は、プロセッサ等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、リンク角センサ25a、第1横加速度センサ44a、第2横加速度センサ44b、ロールレートセンサ44c、ヨーレートセンサ44d、車速センサ54及びリンクモータ25に接続されている。そして、前記傾斜制御装置は、リンクモータ25を作動させるためのトルク指令値を出力する。また、前記操舵制御装置は、プロセッサ等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、ハンドル角センサ62及び車速センサ54に接続されている。さらに、前記駆動制御装置は、プロセッサ等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、ハンドル角センサ62、ヨーレートセンサ44d、スロットル位置センサ73、並びに、左右の駆動モータ51L及び51Rに接続されている。そして、前記駆動制御装置は、左右の駆動モータ51L及び51Rを作動させるためのトルク指令値を出力する。なお、前記傾斜制御装置と操舵制御装置と駆動制御装置とは相互に接続されている。また、前記傾斜制御装置、操舵制御装置及び駆動制御装置は、必ずしも別個に構成される必要はなく、一体的に構成されたものであってもよい。
前記傾斜制御装置は、旋回走行の際には、フィードバック制御及びフィードフォワード制御を行い、車体の傾斜角度が、横加速度センサ44が検出する横加速度の値がゼロとなる角度になるように、リンクモータ25を作動させる。つまり、旋回外側への遠心力と重力とが釣り合って、横方向の加速度成分がゼロとなる角度になるように、車体の傾斜角度を制御する。これにより、車体及び搭乗部11に搭乗している乗員15には、車体の縦方向軸線と平行な方向の力が作用することとなる。したがって、車体の安定性を維持することができ、また、旋回性能を向上させることができる。
また、傾斜方向への外乱を受けたときには、車体の傾斜角度の変化のうちの外乱による部分を抽出し、残余の部分に対しては通常モードで車体の傾斜角度を制御するとともに、抽出した部分に対しては外乱対応モードで車体の傾斜角度を制御する。したがって、外乱を受けたときでも、車体の安定性を維持することができる。また、乗員15が違和感を感じることがなく、乗り心地が向上する。
さらに、本実施の形態においては、左右の駆動輪12である車輪12L及び12Rの回転角速度に差を発生させることによって操舵指令に応じた旋回方向への旋回を行うとともに、操舵指令が入力されると、操舵初期にのみ、旋回方向と反対方向のヨーモーメントが発生するように左右の車輪12L及び12Rに差動トルクを発生させ、操舵方向に車体の重心を移動させる。
なお、旋回方向と反対方向のヨーモーメントが発生するように左右の駆動輪12に差動トルクを発生させる方法としては、左右輪の合計トルクを変えることなく、逆操舵が生成されている場合には旋回内側の車輪のトルクを大きく、その分旋回外側のトルクを小さくすることで実現される。この分配比は、操舵指令と、実際のヨーレートとの差が大きいほど、言い換えると、より逆操舵量が強いほど大きくなる。
この場合、具体的には、乗員15がレバー41aを操作して入力した操舵指令としてのレバー41aの横方向傾斜角を変化させると、駆動モータ51L又は51Rによって旋回外側に該当する左右の車輪12L又は12Rに内側に該当する車輪よりも少ないトルクを配分し、駆動トルクのアンバランスを発生させる。すると、旋回方向に向いた横加速度が発生する。なお、操舵初期が終了すると、駆動トルクのアンバランスを解除し、操舵指令に対応してリンクモータ25を作動させ、車体の傾斜を制御する。
これにより、操舵初期(乗員15がレバー41aを操作し始めた時、つまり、ハンドルを切り始めた時)に、操舵方向(ハンドルを切った方向)に旋回し始める前に、旋回方向に向いた横加速度を発生させてから、操舵方向に向けて車体を傾斜させることができる。そのため、スムーズに車体を旋回方向に傾斜させることができる。つまり、操舵初期において旋回方向のヨーモーメントが発生するような差動トルクの発生(回転角速度差の発生)及び車体の傾斜に先行して、旋回方向に向けて車体の重心を移動させることができるので、スムーズに車体を旋回方向に傾斜させることができる。
このような操舵初期の制御を行うことなしに車体傾斜制御を行うと、例えば、トレッド(左右の車輪12L及び12Rの接地点間の距離)が狭い場合や、車両10の重心位置が高い場合や、操舵速度(ハンドルを切る速度)が高い場合には、旋回によって発生する遠心力が旋回方向と反対方向に車体を傾斜させる力として作用するので、旋回方向に車体を傾斜させにくく、車両10の安定性が低下することがある。もっとも、旋回方向への旋回を行うための左右の車輪12L及び12Rの回転角速度差を減少させれば、遠心力を抑制して、スムーズに車体を旋回方向に傾斜させることができるので、車体の安定性を維持することができる。しかし、この場合、車両10の運動性能が低下するので、操縦性が悪化するとともに、危機回避性能も低下してしまう。
これに対して、本実施の形態においては、前述のように、操舵初期において旋回を行うための左右の車輪12L及び12Rの回転角速度差が発生する前に、旋回方向に向いた横加速度を発生させてから旋回方向に向けて車体が傾斜し始めるので、スムーズに車体を旋回方向に傾斜させることができ、操縦性や危機回避性能を犠牲とすることなしに、車体の安定性を維持することができる。
次に、前記車両制御システムの構成について説明する。
図4は本発明の実施の形態における車両制御システムの構成を示すブロック図である。
図において、46は傾斜制御装置としての傾斜制御ECUであり、リンク角センサ25a、第1横加速度センサ44a、第2横加速度センサ44b、ロールレートセンサ44c、ヨーレートセンサ44d、車速センサ54及びリンクモータ25に接続されている。また、前記傾斜制御ECU46は、横加速度演算部48、リンク角速度推定部50、外乱演算部43、傾斜制御部47及びリンクモータ制御部42を備える。
また、61は操舵制御装置としての操舵制御ECUであり、ハンドル角センサ62及び車速センサ54に接続されている。そして、前記操舵制御ECU61は、操舵制御部66を備える。
さらに、71は駆動制御装置としての駆動制御ECUであり、ヨーレートセンサ44d、ハンドル角センサ62、スロットル位置センサ73、並びに、左右の駆動モータ51L及び51Rに接続されている。また、前記駆動制御ECU71は、駆動制御部72及び駆動モータ制御部74を備える。
ここで、前記横加速度演算部48は、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが検出した横加速度に基づいて合成横加速度を算出する。また、前記リンク角速度推定部50は、ヨーレートセンサ44dが検出したヨー角速度としてのヨーレート、及び、車速センサ54が検出した車速に基づいてリンク角速度予測値を算出する。さらに、前記外乱演算部43は、ロールレートセンサ44cが検出した車体の傾斜運動の角速度としてのロールレート、及び、リンク角センサ25aが検出したリンク角に基づいて外乱分のロールレートを算出する。
そして、前記傾斜制御部47は、横加速度演算部48が算出した合成横加速度、リンク角速度推定部50が算出したリンク角速度予測値、及び、外乱演算部43が算出した外乱分のロールレートに基づいて、制御値としての速度指令値を演算して出力する。さらに、前記リンクモータ制御部42は、傾斜制御部47が出力した速度指令値、及び、操舵制御部66が出力した目標ヨーレート値に基づいてリンクモータ25を作動させるための制御値としてのリンクトルク指令値を出力する。
また、前記操舵制御部66は、ハンドル角センサ62が検出したジョイスティック41のレバー41aの左右方向(y軸方向)の傾斜量に相当する左右入力量(左右操作量)、及び、車速センサ54が検出した車速に基づいて、制御値としての目標ヨーレート値を演算して出力する。
さらに、前記駆動制御部72は、ハンドル角センサ62が検出した左右入力量(左右操作量)、ヨーレートセンサ44dが検出したヨーレート、スロットル位置センサ73が検出したジョイスティック41のレバー41aの前後方向(x軸方向)の傾斜量に相当する前後入力量(前後操作量)、及び、操舵制御部66が出力した目標ヨーレート値に基づいて、制御値としての駆動トルク指令値及び左右トルク増減比を演算して出力する。前記駆動モータ制御部74は、駆動制御部72が出力した駆動トルク指令値及び左右トルク増減比に基づいて、左右の駆動モータ51L及び51Rを作動させるための制御値としての右駆動トルク指令値及び左駆動トルク指令値を出力する。
次に、前記構成の車両10の動作について詳細に説明する。まず、走行及び姿勢制御処理について説明する。
図5は本発明の実施の形態における走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態においては、状態量、パラメータ等を次のような記号によって表す。
θWR:右駆動輪(車輪12R)回転角〔rad〕
θWL:左駆動輪(車輪12L)回転角〔rad〕
θW :平均駆動輪回転角〔rad〕;θW =(θWR+θWL)/2
ΔθW :駆動輪回転角左右差〔rad〕;ΔθW =θWR−θWL
θ1 :車体傾斜ピッチ角(鉛直軸基準)〔rad〕
φ1 :車体傾斜ロール角(鉛直軸基準)〔rad〕
τL :リンクトルク〔Nm〕
τWR:右駆動トルク〔Nm〕
τWL:左駆動トルク〔Nm〕
τW :総駆動トルク〔Nm〕;τW =τWR+τWL
ΔτW :駆動トルク左右差〔Nm〕;ΔτW =τWR−τWL
g:重力加速度〔m/s2
W :駆動輪接地半径〔m〕
D:2輪間距離(トレッド)〔m〕
1 :車体質量(搭乗部を含む)〔kg〕
W :駆動輪質量(2輪合計)〔kg〕
1 :車体重心距離(車軸から)〔m〕
1 :車体慣性モーメント(重心周り)〔kgm2
W :駆動輪慣性モーメント(2輪合計)〔kgm2
αX :車両前後加速度〔m/s2
αY :車両左右加速度〔m/s2
V:車両速度(車速)〔m/s〕
走行及び姿勢制御処理において、車両制御システムは、まず、センサから各状態量を取得する(ステップS1)。具体的には、図示されない車輪センサから左右の車輪12L及び12Rの回転角又は回転角速度を取得し、ロールレートセンサ44c、図示されないピッチレートセンサ等のセンサから車体傾斜ピッチ角又はピッチ角速度及び車体傾斜ロール角又はロール角速度を取得する。
続いて、車両制御システムは、残りの状態量を算出する(ステップS2)。この場合、取得した状態量を時間微分又は時間積分することによって、残りの状態量を算出する。例えば、取得した状態量が駆動輪回転角、車体傾斜ピッチ角及び車体傾斜ロール角である場合には、これらを時間微分することによって、回転角速度、ピッチ角速度及びロール角速度を得ることができる。また、例えば、取得した状態量が回転角速度、ピッチ角速度及びロール角速度である場合には、これらを時間積分することによって、駆動輪回転角、車体傾斜ピッチ角及び車体傾斜ロール角を得ることができる。
続いて、車両制御システムは、操縦者の操縦操作量を取得する(ステップS3)。この場合、操縦者が、車両10の加速指令、減速指令、操舵指令としての旋回指令、その場回転指令、停止指令、制動指令等の走行指令を入力するために操作したジョイスティック41のレバー41aの操作量を取得する。
続いて、車両制御システムは、車両加速度目標値決定処理を実行し(ステップS4)、取得したジョイスティック41のレバー41aの操作量等に基づいて、車両10の車両加速度目標値を決定する。
続いて、車両制御システムは、車両加速度目標値から、駆動輪回転角速度の目標値を算出する(ステップS5)。具体的には、下記の式によって平均駆動輪回転角速度の目標値を決定する。
Figure 2013199215
なお、Δtは制御処理周期(データ取得間隔)であり、所定値である。また、本実施の形態における説明において、上付き添字*は目標値であることを表し、上付き添字(n)は時系列のn番目のデータであることを表し、記号上の1ドットは1階時間微分した値、すなわち、速度であることを表し、記号上の2ドットは2階時間微分した値、すなわち、加速度であることを表すものとする。下付き添字Xは前後(x軸方向)であることを表し、下付き添字Yは左右(y軸方向)であることを表し、下付き添字dは操縦指令値であることを表すものとする。
また、下記の式によって駆動輪回転角速度左右差の目標値を決定する。
Figure 2013199215
このように、車両加速度目標値に相当する駆動輪回転角速度の目標値を決定する。つまり、車両前後加速度目標値を時間積分することによって、左右の駆動輪12である車輪12L及び12Rの回転角速度の平均値の目標である平均駆動輪回転角速度目標値を決定する。また、車両左右加速度目標値及び平均駆動輪回転角速度目標値から左右の車輪12L及び12Rの回転角速度の差の目標である駆動輪回転角速度左右差目標値を決定する。
なお、本実施の形態においては、操縦装置であるジョイスティック41のレバー41aの操作量を前後及び左右の加速度と対応させているが、車速やヨーレートなどに対応させてもよい。また、車速やヨーレート自体を状態量として、フィードバック制御を実行してもよい。さらに、本実施の形態においては、駆動輪12の接地点と路面18との間に滑りが存在しないという仮定の下で、車速やヨーレートを駆動輪12の回転角速度に換算しているが、滑りを考慮して駆動輪回転角速度の目標値を決定してもよい。
続いて、車両制御システムは、車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS6)。具体的には、車両加速度目標値から、下記の式によって車体傾斜ピッチ角の目標値を決定する。
Figure 2013199215
また、下記の式によって車体傾斜ロール角の目標値を決定する。
Figure 2013199215
このように、車両加速度目標値に応じて車体傾斜角の目標値を決定する。つまり、車体傾斜ピッチ角については、前後の車体姿勢と走行状態に関する倒立振り子の力学的構造を考慮して、前後加速度で与えられる走行目標を達成することができる車体姿勢を目標値として与える。また、車体傾斜ロール角については、接地荷重中心が2つの駆動輪12の接地点間である安定領域に存在する範囲で、自由に目標姿勢を設定することができるが、本実施の形態では乗員15の負荷が最も少ない姿勢を目標値として与える。
なお、車体傾斜ロール角の目標値として他の値を与えてもよい。例えば、目標左右加速度の絶対値が所定の閾値よりも小さい場合には目標車体傾斜ロール角を零として、小さな左右加速度に対しては直立姿勢を維持させてもよい。
続いて、車両制御システムは、残りの目標値を算出する(ステップS7)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することによって、駆動輪回転角及び車体傾斜角速度の目標値をそれぞれ算出する。
続いて、車両制御システムは、各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS8)。具体的には、下記の式によって、フィードフォワード出力として、総駆動トルクのフィードフォワード量τW,FF、駆動トルク左右差のフィードフォワード量ΔτW,FF及びリンクトルクのフィードフォワード量τL,FFを決定する。
Figure 2013199215
このように、目標とする走行状態や車体姿勢を実現するのに必要なアクチュエータ出力を力学モデルより予測し、その分をフィードフォワード的に付加することで、車両10の走行及び姿勢制御を高精度に実行する。つまり、前後方向の走行目標を達成することができるように、総駆動トルクのフィードフォワード量を決定する。具体的には、車両前後加速度に応じて発生する慣性力と、車両速度に相当する平均駆動輪回転角速度に応じて発生する走行抵抗とを予測し、それを打ち消すような総駆動トルクを与えることで、目標とする前後走行状態を実現する。
また、左右車体傾斜の目標を実現することができるように、リンクトルクのフィードフォワード量を決定する。具体的には、車体傾斜ロール角に応じて発生する重力のトルクと、車両左右加速度に応じて発生する遠心力のトルクとを予測し、それを打ち消すようなリンクトルクを与えることで、目標とする左右車体傾斜状態を実現する。
なお、本実施の形態においては、力学モデルにおける主な要素をすべて考慮して、必要な出力をフィードフォワード量として与えているが、これらの要素の中で影響が小さいものを無視し、より簡素なモデルによってフィードフォワード量を決定してもよい。また、本実施の形態では考慮していない要素を新たに考慮してもよい。例えば、駆動輪12の転がり抵抗やリンク機構30での乾性摩擦等を考慮してもよい。
さらに、本実施の形態においては、走行状態や車体姿勢の目標値に応じて必要な出力をフィードフォワード量として与えているが、計測値に基づく準フィードバック量として与えてもよい。これにより、目標値と実値に大きな隔たりがある場合でも、適切に制御を行うことができる。
続いて、車両制御システムは、各目標値と状態量との偏差から各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS9)。具体的には、下記の式によってフィードバック出力として、総駆動トルクのフィードバック量τW,FB、駆動トルク左右差のフィードバック量ΔτW,FB及びリンクトルクのフィードバック量τL,FBを決定する。
Figure 2013199215
なお、各フィードバックゲインK**の値は、例えば、極配置法等によって決定される値をあらかじめ設定しておく。また、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入してもよい。さらに、より簡単な制御として、KW2、KW3、Kd2及びKL3を除くゲインのいくつかを零にしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
このように、状態フィードバック制御によって、実際の状態を目標とする状態に近付けるようにフィードバック出力を与える。具体的には、前後走行状態に相当する平均駆動輪回転状態と、車体の倒立状態に相当する車体傾斜ピッチ角について、計測値と目標値との差に比例する総駆動トルクを与えることで、車両10の前後走行状態及び車体の倒立姿勢を目標とする状態で安定に維持する。
また、旋回走行状態に相当する駆動輪回転状態左右差について、計測値と目標値との差に比例する駆動トルク左右差を与えることで、車両10の旋回走行状態を目標とする状態で安定に維持する。
さらに、左右傾斜状態に相当する車体傾斜ロール角について、計測値と目標値との差に比例するリンクトルクを与えることで、車体の左右傾斜状態を目標とする状態で安定に維持する。
さらに、旋回走行状態に相当する状態量として、駆動輪回転角速度左右差を用いる。このように、駆動輪12の回転状態を制御することで、駆動輪12がロックや空転の状態に至る可能性を低減することができる。
最後に、車両制御システムは、各要素制御システムに指令値を与えて(ステップS10)、走行及び姿勢制御処理を終了する。この場合、駆動制御ECU71及び傾斜制御ECU46に、下記の式によって決定される指令値として、右駆動トルク指令値τWR、左駆動トルク指令値τWL、総駆動トルク指令値τW 、駆動トルク左右差指令値ΔτW 及びリンクトルク指令値τL が与えられる。
Figure 2013199215
なお、ξは接地荷重移動率である。
このように、各フィードフォワード出力と各フィードバック出力の和を指令値として与える。また、総駆動トルクと駆動トルク左右差が要求する値になるように、右駆動トルク指令値及び左駆動トルク指令値を与える。
なお、走行及び姿勢制御処理は、所定の制御周期TS (例えば、100〔μs〕毎)で繰り返し実行される。
次に、旋回走行において車体を傾斜させるための車体傾斜制御処理の動作について詳細に説明する。まず、旋回走行における車体傾斜制御処理の動作の一部である横加速度演算処理の動作について説明する。
図6は本発明の実施の形態における旋回走行時の車体の傾斜動作を説明する力学モデルを示す図、図7は本発明の実施の形態における横加速度演算処理の動作を示すフローチャートである。
旋回走行が行われると、車体傾斜制御システムは車体傾斜制御処理を開始する。姿勢制御が行われることで、車両10は、リンク機構30によって、旋回走行時には、図3(b)に示されるように、車体を旋回内側(図において右側)に傾けた状態で旋回する。また、旋回走行時には、旋回外側への遠心力が車体に作用するとともに、車体を旋回内側に傾けたことによって重力の横方向成分が発生する。そして、横加速度演算部48は、横加速度演算処理を実行し、合成横加速度aを算出して傾斜制御部47に出力する。すると、該傾斜制御部47は、フィードバック制御を行い、合成横加速度aの値がゼロとなるような制御値としての速度指令値を出力する。そして、リンクモータ制御部42は、傾斜制御部47が出力した速度指令値に基づいてリンクトルク指令値をリンクモータ25に出力する。
なお、車体傾斜制御処理は、前記走行及び姿勢制御処理と同様に、繰り返し所定の制御周期TS で実行される処理であり、旋回時において、旋回性能の向上と乗員15の快適性の確保とを図る処理である。
また、図6において、44Aは車体において第1横加速度センサ44aの配設された位置を示す第1センサ位置であり、44Bは車体において第2横加速度センサ44bの配設された位置を示す第2センサ位置である。
第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが検出してその検出値を出力する加速度は、〈1〉旋回時に車体に作用する遠心力、〈2〉車体を旋回内側に傾けたことによって発生する重力の横方向成分、〈3〉左右の車輪12L及び12Rのいずれか一方のみが路面18の窪みに落下することによる車体の傾斜、ガタやばねの変位等により第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが周方向に変位することによって生じる加速度、並びに、〈4〉リンクモータ25の作動又はその反作用により第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが周方向に変位することによって生じる加速度、の4つであると考えられる。これら4つの加速度のうち、前記〈1〉及び〈2〉は、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bの高さ、すなわち、L1 及びL2 と無関係である。一方、前記〈3〉及び〈4〉は、周方向に変位することによって生じる加速度であるから、ロール中心からの距離に比例する、すなわち、概略L1 及びL2 に比例する。
ここで、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが検出してその検出値を出力する〈3〉の加速度をaX1及びaX2とし、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが検出してその検出値を出力する〈4〉の加速度をaM1及びaM2とする。また、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが検出してその検出値を出力する〈1〉の加速度をaT とし、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが検出してその検出値を出力する〈2〉の加速度をaG とする。なお、前記〈1〉及び〈2〉は、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bの高さに無関係なので、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bの検出値は等しい。
そして、左右の車輪12L及び12Rのいずれか一方のみが路面18の窪みに落下することによる車体の傾斜、ガタやばねの変位等による周方向の変位の角速度をωR とし、その角加速度をωR ’とする。また、リンクモータ25の作動又はその反作用による周方向の変位の角速度をωM とし、その角加速度をωM ’とする。なお、角速度ωM 又は角加速度ωM ’は、リンク角センサ25aの検出値から取得することができる。
すると、aX1=L1 ωR ’、aX2=L2 ωR ’、aM1=L1 ωM ’、aM2=L2 ωM ’となる。
また、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bが検出して出力する加速度の検出値をa1 及びa2 とすると、a1 及びa2 は、4つの加速度〈1〉〜〈4〉の合計であるから、次の式(1)及び(2)で表される。
1 =aT +aG +L1 ωR ’+L1 ωM ’ ・・・式(1)
2 =aT +aG +L2 ωR ’+L2 ωM ’ ・・・式(2)
そして、式(1)から式(2)を減算すると、次の式(3)を得ることができる。
1 −a2 =(L1 −L2 )ωR ’+(L1 −L2 )ωM ’ ・・・式(3)
ここで、L1 及びL2 の値は、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bの高さであるから既知である。また、ωM ’の値は、リンクモータ25の角速度ωM の微分値であるから既知である。すると、前記式(3)の右辺においては、第1項のωR ’の値のみが未知であり、他の値はすべて既知である。したがって、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bの検出値a1 及びa2 から、ωR ’の値を得ることが可能である。つまり、第1横加速度センサ44a及び第2横加速度センサ44bの検出値a1 及びa2 に基づいて、不要加速度成分を取り除くことができる。
車体傾斜制御システムが車体傾斜制御処理を開始すると、横加速度演算部48は、横加速度演算処理を開始し、まず、第1横加速度センサ値a1 を取得するとともに(ステップS11)、第2横加速度センサ値a2 を取得する(ステップS12)。そして、横加速度演算部48は、加速度差Δaを算出する(ステップS13)。該Δaは次の式(4)によって表される。
Δa=a1 −a2 ・・・式(4)
続いて、横加速度演算部48は、ΔL呼出を行うとともに(ステップS14)、L2 呼出を行う(ステップS15)。前記ΔLは次の式(5)によって表される。
ΔL=L1 −L2 ・・・式(5)
続いて、横加速度演算部48は、合成横加速度aを算出する(ステップS16)。なお、合成横加速度aは、横加速度センサ44が1つである場合における横加速度センサ値aに相当する値であって、第1横加速度センサ値a1 と第2横加速度センサ値a2 とを合成した値であり、次の式(6)及び(7)によって得られる。
a=a2 −(L2 /ΔL)Δa ・・・式(6)
a=a1 −(L1 /ΔL)Δa ・・・式(7)
理論上は、式(6)によっても式(7)によっても、同じ値を得ることができるが、周方向の変位によって生じる加速度はロール中心からの距離に比例するので、実際上は、ロール中心により近い方の横加速度センサ44、すなわち、第2横加速度センサ44bの検出値であるa2 を基準にすることが望ましい。そこで、本実施の形態においては、式(6)によって合成横加速度aを算出することとする。
最後に、横加速度演算部48は、傾斜制御部47へ合成横加速度aを送出して(ステップS17)、横加速度演算処理を終了する。
このように、本実施の形態においては、第1横加速度センサ44aと第2横加速度センサ44bとを互いに異なる高さ位置に配設し、第1横加速度センサ値a1 と第2横加速度センサ値a2 とを合成した合成横加速度aを算出し、該合成横加速度aの値がゼロとなるように、フィードバック制御を行って車体の傾斜角度を制御する。
これにより、不要加速度成分を取り除くことができるので、路面状況の影響を受けることがなく、制御系の振動、発散等の発生を防止することができ、車体傾斜制御システムの制御ゲインを大きくして制御の応答性を向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、横加速度センサ44が2つである場合について説明したが、横加速度センサ44は、複数であって互いに異なる高さに配設されていれば、3つ以上であってもよく、いくつであってもよい。
次に、旋回走行におけるリンク角速度を推定するリンク角速度推定処理の動作について説明する。
図8は本発明の実施の形態におけるリンク角速度推定処理の動作を示すフローチャート、図9は本発明の実施の形態におけるヨーレートの微分処理のサブルーチンを示すフローチャート、図10は本発明の実施の形態におけるフィルタ処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
リンク角速度推定部50は、リンク角速度推定処理を開始すると、まず、ヨーレートセンサ44dが検出したヨーレートの値であるヨーレートセンサ値ψを取得するとともに(ステップS21)、車速センサ54が検出した車速の値である車速センサ値νを取得する(ステップS22)。
そして、リンク角速度推定部50は、ヨーレートの微分処理を実行し(ステップS23)、Δψを算出する。該Δψは、ヨーレートを時間微分した値であり、ヨー角加速度に相当する。
ヨーレートの微分処理において、リンク角速度推定部50は、まず、ψold 呼出を行う(ステップS23−1)。なお、ψold は、前回の車体傾斜制御処理実行時に保存されたψ(t)の値である。なお、初期設定においては、ψold =0とされている。
続いて、リンク角速度推定部50は、制御周期TS を取得する(ステップS23−2)。
続いて、リンク角速度推定部50は、ヨーレート微分値Δψを算出する(ステップS23−3)。Δψは、次の式(8)によって算出される。
Δψ=(ψ(t)−ψold )/TS ・・・式(8)
そして、リンク角速度推定部50は、ψold =ψ(t)として保存し(ステップS23−4)、ヨーレートの微分処理を終了する。
続いて、リンク角速度推定部50は、ヨーレート微分値Δψに対して、フィルタ処理を実行する(ステップS24)。
フィルタ処理において、リンク角速度推定部50は、まず、制御周期TS を取得する(ステップS24−1)。
続いて、リンク角速度推定部50は、カットオフ周波数wを取得する(ステップS24−2)。
続いて、リンク角速度推定部50は、Δψold 呼出を行う(ステップS24−3)。なお、Δψold は、前回の車体傾斜制御処理実行時に保存されたΔψ(t)の値である。
続いて、リンク角速度推定部50は、フィルタ処理されたヨーレート微分値Δψ(t)を算出する(ステップS24−4)。Δψ(t)は、次の式(9)によって算出される。
Δψ(t)=Δψold /(1+TS w)+TS wψ/(1+TS w) ・・・式(9)
該式(9)は、バンドパスフィルタとして一般的に使用されるIIR(Infinite Impulse Response)フィルタの式であるが、単純に一次遅れ系のローパスフィルタを用いてもよい。IIRフィルタとしては、例えば、チェビシェフII型フィルタを使用してもよいし、その他のフィルタを使用してもよい。また、一般的に使用されるFIR(Finite Impulse Response)フィルタを使用してもよい。さらに、バンドパスフィルタのカットオフ周波数(−3〔dB〕周波数)は、10〔Hz〕以下であることが望ましく、数〔Hz〕であることがより望ましい。
そして、リンク角速度推定部50は、Δψold =Δψ(t)として保存し(ステップS24−5)、フィルタ処理を終了する。つまり、今回の車体傾斜制御処理実行時に算出したΔψ(t)の値をΔψold として、記憶手段に保存する。
続いて、リンク角速度推定部50は、リンク角速度予測値f2 を算出する(ステップS25)。ここで、重力をgとすると、リンク角速度予測値f2 は、次の式(10)によって算出される。
2 =dη/dt=(ν/g)(dψ/dt) ・・・式(10)
前述のように、リンク角センサ25aは、中央縦部材21に対する上側の横リンクユニット31Uの角度の変化、すなわち、リンク角の変化を検出する。ここで、リンク角をηとし、旋回時における車体の傾斜角が、横加速度としての遠心力a0 と重力gとが釣り合うように制御されているものとすると、路面18が水平であれば、遠心力a0 と重力gとの間には、次の式(11)で表される関係が成立する。
0 cos η=gsin η ・・・式(11)
該式(11)から、次の式(12)が導出される。
0 /g=sin η/cos η=tan η ・・・式(12)
さらに、該式(12)から、次の式(13)が導出される。
0 =gtan η ・・・式(13)
一方、ヨーレートがψであり、旋回半径がrであるとすると、車速ν及び旋回時に車体に作用する横加速度としての遠心力a0 は次の式(14)及び(15)によって表される。
ν=rψ ・・・式(14)
0 =rψ2 =νψ ・・・式(15)
そして、該式(15)と前記式(13)とから、次の式(16)が導出される。
tan η=νψ/g ・・・式(16)
さらに、tan η≒ηと近似することができるとともに、車速νの変化がリンク角ηの変化と比較して十分に遅いので、車速νを定数とみなすことができるとすると、前記式(16)から、前記式(10)を得ることができる。
続いて、リンク角速度推定部50は、リンク角速度制御値af を算出する(ステップS26)。リンク角速度制御値af は、次の式(17)によって算出される。
f =Adη/dt ・・・式(17)
ここで、Aは、0〜1の任意の値であり、車両10の構造に応じて決定されるチューニング定数である。
最後に、リンク角速度推定部50は、傾斜制御部47へリンク角速度制御値af を送出して(ステップS27)、リンク角速度推定処理を終了する。
次に、リンクモータ制御部42へ速度指令値を出力するための傾斜制御処理の動作について説明する。
図11は本発明の実施の形態における傾斜制御処理の動作を示すフローチャートである。
傾斜制御処理において、傾斜制御部47は、まず、横加速度演算部48から合成横加速度aを受信する(ステップS31)。
続いて、傾斜制御部47は、aold 呼出を行う(ステップS32)。aold は、前回の傾斜制御処理実行時に保存された合成横加速度aである。なお、初期設定においては、aold =0とされている。
続いて、傾斜制御部47は、制御周期TS を取得し(ステップS33)、aの微分値を算出する(ステップS34)。ここで、aの微分値をda/dtとすると、該da/dtは次の式(18)によって算出される。
da/dt=(a−aold )/TS ・・・式(18)
そして、傾斜制御部47は、aold =aとして保存する(ステップS35)。つまり、今回の傾斜制御処理実行時に取得した横加速度センサ値aをaold として、記憶手段に保存する。
続いて、傾斜制御部47は、第1制御値UP を算出する(ステップS36)。ここで、比例制御動作の制御ゲイン、すなわち、比例ゲインをGP とすると、第1制御値UP は次の式(19)によって算出される。
P =GP a ・・・式(19)
続いて、傾斜制御部47は、第2制御値UD を算出する(ステップS37)。ここで、微分制御動作の制御ゲイン、すなわち、微分時間をGD とすると、第2制御値UD は次の式(20)によって算出される。
D =GD da/dt ・・・式(20)
続いて、傾斜制御部47は、第3制御値Uを算出する(ステップS38)。該第3制御値Uは、第1制御値UP と第2制御値UD との合計であり、次の式(21)によって算出される。
U=UP +UD ・・・式(21)
第3制御値Uを算出すると、傾斜制御部47は、リンク角速度推定部50からリンク角速度制御値af を受信する(ステップS39)。
続いて、傾斜制御部47は、第4制御値Uを算出する(ステップS40)。該第4制御値Uは、第3制御値Uとリンク角速度制御値af との合計であり、次の式(22)によって算出される。
U=U+af ・・・式(22)
最後に、傾斜制御部47は、第4制御値Uを速度指令値としてリンクモータ制御部42へ出力して(ステップS41)、傾斜制御処理を終了する。
次に、旋回走行における車体制御動作の一部である操舵制御処理の動作について説明する。
図12は本発明の実施の形態における伝達関数の入力と出力との関係を示す図、図13は本発明の実施の形態における操舵制御処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態における操舵制御部66は、操舵制御処理を開始すると、まず、ハンドル角センサ62が検出したハンドル角の値であるハンドル角センサ値δを取得する(ステップS51)。前記ハンドル角は、操縦者がジョイスティック41のレバー41aを操作して入力した操縦指令値としての操舵指令値である。
続いて、操舵制御部66は、ハンドル角センサ値δに対して、フィルタ処理を実行する(ステップS52)。該フィルタ処理は、前記リンク角速度推定処理におけるフィルタ処理と同様の、ローパスフィルタによる処理であり、バンドパスフィルタとして一般的に使用されるIIRフィルタ又はFIRフィルタを使用することができ、また、一次遅れ系の単純なローパスフィルタを用いてもよい。
続いて、操舵制御部66は、ハンドル角センサ値δから一次目標ヨーレートψ* を算出する(ステップS53)。前記ハンドル角センサ値δは、操縦者が操作したジョイスティック41のレバー41aの左右方向(y軸方向)の傾斜量に相当する左右操作量であり、一次目標ヨーレートψ* は、前記左右操作量に対応するヨーレートの値である。
続いて、操舵制御部66は、二次目標ヨーレートψ**を算出する(ステップS54)。ここで、二次目標ヨーレートψ**は次の式(23)によって算出される。
ψ**=ψ* G(z) ・・・式(23)
なお、G(z)は、連続系の伝達関数G(s)を離散系に変換した伝達関数である。G(s)は、カウンタステア操作も含めた操舵操作のゲインを算出するための伝達関数であり、例えば、ラプラス変数sを用いて表現され、次の式(24)で表される。
{1−0.1s}/{1+0.11s+0.001s2 } ・・・式(24)
なお、該式(24)は、次の式(25)に式(26)を乗じることによって得られたものである。
{1−0.1s}/{1+0.01s} ・・・式(25)
1/{1+0.1s} ・・・式(26)
前記式(25)は、ラプラス変数による表現において零点を持つような伝達関数に対応し、前記式(26)は、一次遅れ要素に対応するものであって安定性を補償するために使用される。
そして、伝達関数G(s)が前記式(24)で表わされる場合、その入力と出力との関係は、図12のようになる。なお、図12において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸はゲイン(無次元)を示している。また、線α1〜α4は入力を示し、線β1〜β4は、それぞれ、線α1〜α4で示される入力に対応する出力を示している。
伝達関数G(s)の入力は、一次目標ヨーレートψ* であるから、操縦者が操作したジョイスティック41のレバー41aの左右方向の傾斜量に対応する。また、伝達関数G(s)の出力は、二次目標ヨーレートψ**に対応する。そして、線α1〜α4の傾斜は、レバー41aの傾斜速度を表している。
線α1〜α4とそれに対応する線β1〜β4を観ると、レバー41aの傾斜速度が高いと、すなわち、操縦者がレバー41aを急操作すると、操舵初期に、伝達関数G(s)の出力がマイナスとなる、すなわち、カウンタステア操作が発生することが分かる。また、レバー41aの傾斜速度が低いと、すなわち、操縦者がレバー41aを緩操作すると、操舵初期にも、伝達関数G(s)の出力がマイナスとならない、すなわち、カウンタステア操作が発生しないことが分かる。
伝達関数G(s)は、連続系の伝達関数なので、そのままでは操舵制御ECU61で計算することができない。そのため、例えば、双一次変換等によって、連続系の伝達関数G(s)は、あらかじめ、離散系の伝達関数G(z)に変換されて使用される。
前記伝達関数G(s)(又はG(z))を構成するには次の2つの手順がある。第1の手順は、零点がある一次遅れの伝達関数を準備し、実験的に時定数と零点の値とを調整することである。第2の手順は、ナイキストの安定判別の条件を満たすように、一次遅れの伝達関数を前記第1の手順で準備した伝達関数に乗じて使用することである。
なお、車速やヨーレートに応じて、動的に(リアルタイムで)零点の値を変更するようにしてもよい。このときの零点の値は、例えば、車速やヨーレートに応じて実験的に決定された値を二次元マップとして保持し、該二次元マップを計算に使用してもよい。
続いて、操舵制御部66は、リンク角補正値USLを算出する(ステップS55)。ここで、リンク角補正値USLは次の式(27)によって算出される。
SL=GSL{ψ**−ψ* } ・・・式(27)
続いて、操舵制御部66は、リンク角マスク値GLMを算出する(ステップS56)。ここで、リンク角マスク値GLMは次の式(28)によって算出される。
LM=f4 (ψ**−ψ* ) ・・・式(28)
なお、f4 は、カウンタステア操作時に、横加速度に基づいた傾斜制御処理の影響を排除するための関数である。カウンタステア操作によって、操縦者の意図した旋回方向と逆の旋回方向への旋回が開始されるので、該旋回により発生する遠心力が、操縦者の意図した旋回方向の内側に車体を傾斜させる方向の横加速度として検出される。そのため、該横加速度に基づいた傾斜制御処理が行われると、操縦者の意図した旋回方向の外側に車体を傾斜させることになってしまう。したがって、カウンタステア操作時には、横加速度に基づいた傾斜制御処理の影響を排除する必要がある。
そこで、f4 は、入力が実際に取り得る最大値のときに0を出力するような関数として構成される。なお、出力は0〜1である。例えば、入力をxとし、該xが実際に取り得る最大値をXMAX とすると、出力yは、次の式(29)によって得ることができる。
y=−1/XMAX ・|x|+1 ・・・式(29)
続いて、操舵制御部66は、目標ヨーレート値として、算出した二次目標ヨーレートψ**を駆動制御部72へ出力する(ステップS57)。
最後に、操舵制御部66は、算出したリンク角補正値USL及びリンク角マスク値GLMをリンクモータ制御部42へ出力して(ステップS58)、操舵制御処理を終了する。
このように、本実施の形態においては、零点がある一次遅れの伝達関数を使用する。具体的には、伝達関数G(s)(又はG(z))を使用する。これにより、操縦者によるジョイスティック41のレバー41aの左右方向の操作の初期、すなわち、操舵初期にのみカウンタステア操作を発生させるようにすることができる。
次に、リンクモータ25へリンクトルク指令値を出力するためのリンクモータ制御処理の動作について説明する。
図14は本発明の実施の形態におけるリンクモータ制御処理の動作を示すフローチャートである。
リンクモータ制御処理において、リンクモータ制御部42は、まず、傾斜制御部47から第4制御値Uを受信する(ステップS61)。
続いて、リンクモータ制御部42は、操舵制御部66からリンク角補正値USL及びリンク角マスク値GLMを受信する(ステップS62)。
続いて、リンクモータ制御部42は、第5制御値Uを算出する(ステップS63)。該第5制御値Uは、第4制御値Uとリンク角補正値USL及びリンク角マスク値GLMとに基づいて、次の式(30)によって算出される。
U=GLMU+USL ・・・式(30)
続いて、リンクモータ制御部42は、リンク角の角速度、すなわち、リンク角速度Δηを取得する(ステップS64)。該リンク角速度Δηは、リンク角センサ25aが検出したリンク角センサ値ηを取得し、該リンク角センサ値ηを時間微分することによって算出される。また、リンクモータ制御部42は、リンク角速度Δηの値を外乱演算部43から取得することもできる。
続いて、リンクモータ制御部42は、制御誤差としての偏差を算出する(ステップS65)。ここで、偏差をεとすると、該εは、次の式(31)によって算出される。
ε=U−Δη ・・・式(31)
なお、Uは第5制御値Uである。
続いて、リンクモータ制御部42は、リンクモータ25を作動させるためのリンクトルク指令値としてのリンクモータ制御値を算出する(ステップS66)。ここで、リンクモータ制御値をUM とすると、該UM は次の式(32)によって算出される。
M =GMPε ・・・式(32)
なお、GMPはモータ制御比例ゲインであって、GMPの値は、実験等に基づいて設定された値であり、あらかじめ記憶手段に格納されている。
最後に、リンクモータ制御部42は、リンクモータ制御値UM をリンクモータ25へ出力して(ステップS67)、リンクモータ制御処理を終了する。
ここでは、リンクモータ制御処理が比例制御、すなわち、PD制御であるものとして説明したが、PID制御であってもよい。
次に、駆動モータ制御部74へ駆動トルク指令値及び左右トルク増減比を出力するための駆動制御処理の動作について説明する。
図15は本発明の実施の形態における駆動制御処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態における駆動制御部72は、駆動制御処理を開始すると、まず、スロットル位置センサ73が検出したスロットル位置の値であるスロットル位置センサ値ρを取得する(ステップS71)。前記スロットル位置は、操縦者が操作したジョイスティック41のレバー41aの前後方向の傾斜量に相当する前後操作量であって、操縦指令値としての加減速指令値である。
続いて、駆動制御部72は、スロットル位置センサ値ρに対して、フィルタ処理を実行する(ステップS72)。該フィルタ処理は、前記操舵制御処理におけるフィルタ処理と同様の、ローパスフィルタによる処理であり、バンドパスフィルタとして一般的に使用されるIIRフィルタ又はFIRフィルタを使用することができ、また、一次遅れ系の単純なローパスフィルタを用いてもよい。
続いて、駆動制御部72は、総駆動トルク指令値τW を算出する(ステップS73)。ここで、左右の駆動モータ51L及び51Rが出力可能な最大トルクの合計値をτWMAXとすると、総駆動トルク指令値τW は、次の式(33)によって算出される。
τW =τWMAXρ ・・・式(33)
なお、0≦ρ≦1である。
続いて、駆動制御部72は、UWRold 呼出を行う(ステップS74)。なお、UWRold は、前回の駆動制御処理実行時に保存された左右トルク増減比UWRの値であり、現在の左右トルク増減比を示す値である。また、初期設定においては、UWRold =0.5とされている。
続いて、駆動制御部72は、ヨーレートセンサ44dが検出したヨーレートの値であるヨーレートセンサ値ψを取得するとともに(ステップS75)、操舵制御部66から二次目標ヨーレートψ**を受信する(ステップS76)。
続いて、駆動制御部72は、目標ヨーレートとの差分Δψを、次の式(34)によって算出する(ステップS77)。
Δψ=ψ−ψ** ・・・式(34)
続いて、駆動制御部72は、左右トルク増減比を算出する(ステップS78)。ここで、左右トルク増減比をUWRとすると、該UWRは、次の式(35)によって算出される。
WR=UWRold +GWRΔψ ・・・式(35)
なお、GWRは左右トルク増減比ゲインであって、GWRの値は、実験等に基づいて設定された値であり、あらかじめ記憶手段に格納されている。ただし、GWRは、必ずしも定数である必要はなく、例えば、車速に応じた関数であってもよい。また、0≦UWR≦1であるが、計算中にこの数値範囲を超えた場合には、この数値範囲内に収まるように丸められる。
最後に、駆動制御部72は、総駆動トルク指令値τW 及び左右トルク増減比UWRを駆動モータ制御部74へ出力して(ステップS79)、駆動制御処理を終了する。
次に、左右の駆動モータ51L及び51Rへ左右の駆動トルク指令値を出力するための駆動モータ制御処理の動作について説明する。
図16は本発明の実施の形態における駆動モータ制御処理の動作を示すフローチャートである。
駆動モータ制御処理において、駆動モータ制御部74は、まず、駆動制御部72から総駆動トルク指令値τW 及び左右トルク増減比UWRを受信する(ステップS81)。
続いて、駆動モータ制御部74は、右側の駆動モータ51Rを作動させるためのトルク指令値としての右駆動トルク指令値τWRを算出し(ステップS82)、左側の駆動モータ51Lを作動させるためのトルク指令値としての左駆動トルク指令値τWLを算出する(ステップS83)。ここで、前記τWR及びτWLは、駆動トルク指令値P及び左右トルク増減比UWRに基づいて、次の式(36)及び(37)によって算出される。
τWR=UWRτW ・・・式(36)
τWL=(1−UWR)τW ・・・式(37)
最後に、駆動制御部72は、駆動モータ51へそれぞれτWR、τWLを出力して(ステップS84)、すなわち、右側の駆動モータ51Rへ右駆動トルク指令値τWRを出力するとともに左側の駆動モータ51Lへ左駆動トルク指令値τWLを出力して、駆動モータ制御処理を終了する。
このように、本実施の形態においては、操舵初期に、旋回方向と反対方向のヨーモーメントが発生するように左右の駆動輪12に差動トルクを発生させ、車体を旋回方向に傾斜させる。つまり、操縦者がジョイスティック41のレバー41aの左右方向の操作を開始した直後の時期に、カウンタステア操作に相当する動作を実行し、レバー41aの操作によって入力された操舵方向に車体の重心を移動させ、これにより、旋回方向内側に向けた加速度を発生させる。
これにより、操舵初期に、旋回方向内側に向けて車体の重心を移動させることができ、スムーズに車体を旋回方向内側に傾斜させることができるので、操縦性や危機回避性能を犠牲とすることなしに、車体の安定性を維持することができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明は、少なくとも左右一対の車輪を有する車両に利用することができる。
10 車両
12 駆動輪
12L、12R 車輪
25 リンクモータ
41 ジョイスティック
51L、51R 駆動モータ

Claims (4)

  1. 回転可能に車体に取り付けられた左右の駆動輪と、
    走行指令を入力する操縦装置と、
    前記車体を旋回方向に傾斜させる傾斜用アクチュエータ装置と、
    前記左右の駆動輪を駆動する駆動用アクチュエータ装置と、
    前記駆動輪の各々に付与される駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御するとともに、前記操縦装置に入力された走行指令に応じて走行を制御する車両制御装置とを有し、
    前記走行指令は操舵指令を含み、
    前記車両制御装置は、前記操縦装置に操舵指令が入力されると、操舵初期に、前記操舵指令に含まれる操舵方向に車体の重心を移動させるように制御して旋回方向内側に向けた加速度を発生させることを特徴とする車両。
  2. 前記車両制御装置は、操舵初期に、前記操舵方向と反対方向のヨーモーメントが発生するように左右の駆動輪に差動トルクを発生させることによって、前記車体の重心を移動させる請求項1に記載の車両。
  3. 前記車両制御装置は、零点がある一次遅れの伝達関数を使用することによって、操舵初期にのみ、前記操舵方向と反対方向に車体の重心を移動させる請求項1又は2に記載の車両。
  4. 前記車両制御装置は、前記操舵方向の駆動輪の駆動トルクを増加させ、反対側の駆動輪の駆動トルクを減少させることによって、前記差動トルクを発生させる請求項2に記載の車両。
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