JP2013163646A - 着床能改善用組成物、及びこれを含む医薬、食品または飲料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、副作用が少なく妊娠を目指す女性も抵抗なく摂取できる、着床能改善組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質を含む着床能改善用組成物を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質を含む着床能改善用組成物を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質を含む着床能改善用組成物に関する。
産婦人科領域において、生殖補助医療技術(Assisted Reproductive Technologies; ART)は、体外受精、胚移植法により近年目覚しい発展を遂げてきた。しかしながら、未だ不妊症に悩むカップルも多い。
不妊症の原因の一つに着床不全がある。ヒトの妊娠が成立するためには、良好な胚が子宮内膜に付着し、子宮内に進入する着床の過程が重要である。妊娠成立の際に、着床能力が不良であるために妊娠不成立または流産に至る確率は70%にものぼるという推計も存在する。
しかしながら、依然としてヒト着床のメカニズム解明は、倫理的のみならず実験的制約によって比較的立ち遅れており、有効な治療法の開発が切望されている。
不妊症の原因の一つに着床不全がある。ヒトの妊娠が成立するためには、良好な胚が子宮内膜に付着し、子宮内に進入する着床の過程が重要である。妊娠成立の際に、着床能力が不良であるために妊娠不成立または流産に至る確率は70%にものぼるという推計も存在する。
しかしながら、依然としてヒト着床のメカニズム解明は、倫理的のみならず実験的制約によって比較的立ち遅れており、有効な治療法の開発が切望されている。
ところで、着床成立のために重要な分子として、E-カドヘリンが挙げられる。E-カドヘリン欠損マウスでは、胚自体の形成不全のみならず、着床不全をきたすことが報告されている(非特許文献1)。また、子宮内膜癌細胞株を用いた着床モデル実験において、着床能がE-カドヘリンの発現により制御されること(非特許文献2および3)、E-カドヘリンが抗老化分子SIRT1に制御されること(非特許文献4)が報告されている。
SIRT1は、元来ClassIIIヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)として同定された。NAD+依存性にその活性が制御され、カロリー摂取の制限により活性化される。酵母や線虫などではSir2という名称で個体の寿命を延ばす作用が知られており、長寿遺伝子とも呼ばれている。SIRT1は、PGC-1α、p53、NF-κB、ヒストンなどを脱アセチル化し、様々な細胞機能(遺伝子発現制御、細胞死、ストレス反応、老化、脂質・糖代謝)を有する。また、腫瘍形成にも関与しており、腫瘍細胞の増殖や細胞死抵抗性の獲得などに関わる。実際これまでに、SIRT1の過剰発現が胃癌などで確認されている。近年は分子標的治療の標的分子としても注目され、SIRT1活性を高める糖尿病治療薬の開発が進められている。また、SIRT1の活性化が、酵母におけるSir2と同様に、線虫、ハエ、ネズミ、霊長類などの多細胞生物においても寿命の延長と老化に関連する病気の減少をもたらす可能性があることも示唆されている。しかしながら、その全体的機能には未だ不明な点が多い。
Riethmacher D. et al. 1995 Proc Natl Acad Sci 28 U S A 92: 855-859
Rahnama F et al. 2006 Endocrinol 147: 5275-83
Rahnama F et al. 2009 Endocrinol 150: 1466-72
Pruitt K. et al. 2006 PLoS Genet 2: e40
本発明は、副作用が少なく妊娠を目指す女性も抵抗なく摂取できる、着床能改善組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、非特許文献4の報告と異なり、SIRT1の発現とE-カドヘリンの発現が正の相関を示すこと;SIRT1の活性剤であるレスベラトロールや5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオシド(AICAR)により濃度依存的にE-カドヘリンの発現が増加し、SIRT1抑制剤であるニコチン酸アミド(NAM)や2-[(2-ヒドロキシナフタレン-1-イルメチレン)アミノ]-N-(1-フェネチル)ベンズアミド(サーチノール)によりE-カドヘリンの発現が減少すること;胎児腎細胞由来株293Tにおいて、SIRT1の強制発現またはレスベラトロール投与によりE-カドヘリンのプロモーター活性が増強されること;子宮内膜癌細胞株Ishikawaと、絨毛癌細胞株JARを用いたin vitro 着床アッセイにおいて、SIRT1を強制発現させると細胞塊の接着数が有意に増加し、SIRT1をノックダウンすると細胞塊の接着数が有意に減少すること:及びin vitro着床アッセイにおいて、レスベラトロールまたはAICARの投与により細胞塊の接着数が有意に増加し、サーチノールにより有意に低下することを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質を含む着床能改善用組成物;
〔2〕前記SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質が、レスベラトロールまたはSRT1720である、上記〔1〕に記載の着床能改善用組成物;
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の着床能改善用組成物を含む医薬;
〔4〕上記〔1〕または〔2〕に記載の着床能改善用組成物を含む医薬部外品;
〔5〕上記〔1〕または〔2〕に記載の着床能改善用組成物を含む食品;及び
〔6〕上記〔1〕または〔2〕に記載の着床能改善用組成物を含む飲料、
に関する。
すなわち、本発明は、
〔1〕SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質を含む着床能改善用組成物;
〔2〕前記SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質が、レスベラトロールまたはSRT1720である、上記〔1〕に記載の着床能改善用組成物;
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の着床能改善用組成物を含む医薬;
〔4〕上記〔1〕または〔2〕に記載の着床能改善用組成物を含む医薬部外品;
〔5〕上記〔1〕または〔2〕に記載の着床能改善用組成物を含む食品;及び
〔6〕上記〔1〕または〔2〕に記載の着床能改善用組成物を含む飲料、
に関する。
本発明によれば、子宮内膜の着床能を改善することが可能である。特に、レスベラトロールを用いれば、副作用が少なく、妊娠を目指す女性も服用しやすい着床能改善組成物とすることができる。
本発明に係る着床能改善用組成物は、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質を有効成分として含む。
本発明者らは、後述する実施例に示すとおり、SIRT1をノックダウンするとE-カドヘリンの発現が低下し、SIRT1を強制発現させるとE-カドヘリンの発現が上昇すること、及びSIRT1はE-カドヘリンプロモーターに結合してその活性を促進することを確認した。
そして、E-カドヘリンの発現が上昇すると、in vitro着床アッセイにおいて、JAR細胞スフェロイド(胚盤胞モデル)の単層のIshikawa細胞(子宮内膜モデル)への接着が促進されることを確認した。
一方、SIRT1の阻害剤として知られるNAMやサーチノールを投与すると、E-カドヘリンの発現が減少し、in vitro着床アッセイでも着床効率が低下することを確認した。
以上より、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質は、子宮内膜着床能を改善させると考えられる。
本発明者らは、後述する実施例に示すとおり、SIRT1をノックダウンするとE-カドヘリンの発現が低下し、SIRT1を強制発現させるとE-カドヘリンの発現が上昇すること、及びSIRT1はE-カドヘリンプロモーターに結合してその活性を促進することを確認した。
そして、E-カドヘリンの発現が上昇すると、in vitro着床アッセイにおいて、JAR細胞スフェロイド(胚盤胞モデル)の単層のIshikawa細胞(子宮内膜モデル)への接着が促進されることを確認した。
一方、SIRT1の阻害剤として知られるNAMやサーチノールを投与すると、E-カドヘリンの発現が減少し、in vitro着床アッセイでも着床効率が低下することを確認した。
以上より、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質は、子宮内膜着床能を改善させると考えられる。
本明細書において、SIRT1の機能とは、SIRT1タンパク質が有するどのような機能であってもよいが、例えば、E-カドヘリンプロモーターに結合してその活性を亢進させる機能、E-カドヘリンの発現を亢進させる機能と解することができる。これらの機能の亢進の有無は、実施例で示された方法、その他公知の方法にしたがって確認することができる。
本明細書において、E-カドヘリンの機能とは、E-カドヘリンタンパク質のどのような機能であってもよいが、例えば細胞接着機能、胚盤胞の着床能改善機能とすることができる。これらの機能の亢進の有無は、実施例で示された方法、その他公知の方法にしたがって確認することができる。
本明細書において、「発現」とは、DNAの配列に基づいて転写酵素によりmRNAが合成される転写と、mRNAの配列情報に基づいてリボソームでアミノ酸が結合してタンパク質が合成される翻訳のいずれの過程も含む概念として用いられる。
本明細書において、発現または機能の亢進とは、ある物質を細胞に投与したときに、当該細胞におけるタンパク質の発現または機能が、その物質を投与しない場合に比較して、有意に増加していることを意味する。
本明細書において、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質は特に限定されず、SIRT1、E-カドヘリンの双方の機能または発現を亢進させるものであってもよいし、いずれかの機能または発現を亢進させるものであってもよい。また、機能または発現を亢進させるメカニズムも特に限定されない。
SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質としては、例えば、レスベラトロール、SRT1720、AICARが挙げられる。
SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質としては、例えば、レスベラトロール、SRT1720、AICARが挙げられる。
レスベラトロール(3,4',5-Trihydroxy-stillbene)は、SIRT1活性剤として知られるポリフェノールの一種であり、植物エストロゲン作用も有する。レスベラトロールについては、抗酸化作用、抗炎症作用、抗腫瘍増殖作用などが研究されており、マウスなどの動物を用いた研究では、寿命延長、抗炎症、抗癌、認知症予防、放射線による障害の抑止、血糖効果、脂肪の合成や蓄積に関わる酵素の抑制など、多岐にわたる効果が報告されている。
副作用に関する報告が少ないことから、ヒトに対する試験的な投与も行われており、高血圧の被検者に30−470mgのレスベラトロールを投与したところ、血管拡張反応を改善し、動脈硬化を防いだことが報告されている(Wong RHX et al., Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2011 21: 851-6)
また、健常者に対して250−500mgのレスベラトロールを投与すると、前頭葉の血流の亢進が認められたことから、脳機能の改善や認知症を予防する可能性も報告されている(Kennedy DO et al., Am J Clin Nutr. 2010 91: 1590-7)。
レスベラトロールを最大5g、合計28日投与した研究では、血中の増殖因子IGF-1やその結合タンパク質IGFBP-3の減少が認められたことから、乳癌や肺癌リスクを低減する可能性も報告されている(Brown VA et al., Cancer Res, 2010 70: 9003-11)。これだけ多い投与量にもかかわらず、副作用は胃腸障害症状のみであり、比較的安全な物質であるということができる。
明らかな催奇形性もないと考えられ、妊娠を目指す女性にも有用であると考えられる。
本発明者らは、後述する実施例に示すとおり、レスベラトロールの投与により、E-カドヘリンプロモーターが活性化されること、E-カドヘリンの発現が亢進すること、in vitro着床モデルアッセイにおいて、着床能が向上することを確認した。
副作用に関する報告が少ないことから、ヒトに対する試験的な投与も行われており、高血圧の被検者に30−470mgのレスベラトロールを投与したところ、血管拡張反応を改善し、動脈硬化を防いだことが報告されている(Wong RHX et al., Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2011 21: 851-6)
また、健常者に対して250−500mgのレスベラトロールを投与すると、前頭葉の血流の亢進が認められたことから、脳機能の改善や認知症を予防する可能性も報告されている(Kennedy DO et al., Am J Clin Nutr. 2010 91: 1590-7)。
レスベラトロールを最大5g、合計28日投与した研究では、血中の増殖因子IGF-1やその結合タンパク質IGFBP-3の減少が認められたことから、乳癌や肺癌リスクを低減する可能性も報告されている(Brown VA et al., Cancer Res, 2010 70: 9003-11)。これだけ多い投与量にもかかわらず、副作用は胃腸障害症状のみであり、比較的安全な物質であるということができる。
明らかな催奇形性もないと考えられ、妊娠を目指す女性にも有用であると考えられる。
本発明者らは、後述する実施例に示すとおり、レスベラトロールの投与により、E-カドヘリンプロモーターが活性化されること、E-カドヘリンの発現が亢進すること、in vitro着床モデルアッセイにおいて、着床能が向上することを確認した。
なお、本発明に係る着床能改善用組成物において、レスベラトロールは精製されたものを用いてもよく、植物抽出物等として用いてもよい。例えばレスベラトロールは、ブドウなどの植物にも含まれていることが知られているので、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質として、ブドウ抽出物などの植物抽出物を用いてもよい。
SRT1720(N-[2-[3-(piperazin-1-ylmethyl)imidazo[2,1-b][1,3]thiazol-6-yl]phenyl]quinoxaline-2-carboxamide)は、SIRT1活性化剤として開発された。生体内では、SIRT1の活性化剤として知られるレスベラトロールに似た活性を示すが、その活性は1000倍以上強いことが知られている。
AICAR(5-Aminoimidazole-4-carboxyamide ribonucleoside)は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化剤として知られている。AMPKは、細胞内NAD+レベルを上昇させることにより、SIRT1の活性を増大させることが知られる。
本発明者らは、後述する実施例に示すとおり、AICARの投与により、E-カドヘリンの発現が亢進すること、in vitro着床モデルアッセイにおいて、着床能が向上することを確認した。
本発明者らは、後述する実施例に示すとおり、AICARの投与により、E-カドヘリンの発現が亢進すること、in vitro着床モデルアッセイにおいて、着床能が向上することを確認した。
本発明に係る着床能改善用組成物は、不妊症や不妊傾向のある女性に投与することができる。ヒト以外の動物に用いてもよい。
本発明に係る着床能改善用組成物は、添加剤を適宜使用して、公知の方法により製剤化することができる。製剤化の例としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤、懸濁剤、シロップ剤、液剤、トローチ剤、チュアブル剤、舌下剤、注射剤、点滴剤、吸入剤、点眼剤、坐剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、貼付剤等を挙げることができる。
具体的には、添加剤として、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、分散剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、希釈剤、張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を使用することができる。賦形剤として、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α化デンプン、デキストリン、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、トレハロース、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等;結合剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、アラビアガム、トラガント、ゼラチン、セラック等;滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等;崩壊剤として、結晶セルロース、ゼラチン、寒天、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等を;着色剤として、カルミン、カラメル、β−カロチン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、タルク、リン酸リボフラビンナトリウム、黄色アルミニウムレーキ等;矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ油、メントール、レモン油、竜脳、桂皮末、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等;乳化剤または海面活性剤として、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等;溶解補助剤として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリソルベート80等;懸濁化剤として、上記界面活性剤の他、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等;等張化剤として、ブドウ糖、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール等;緩衝剤として、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液;防腐剤として、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等;抗酸化剤として、亜硫酸塩、アスコルビン酸、トコフェロール等;安定化剤として、例えばアスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、エリソスビン酸、トコフェロール等;吸収促進剤として、ミリスチン酸イソプロピル、トコフェロール、カルシフェロール等を用いることができるがこれらに限定されない。
また、製剤化するに際しては、他の有効成分を含む合剤としてもよい。
具体的には、添加剤として、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、分散剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、希釈剤、張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を使用することができる。賦形剤として、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α化デンプン、デキストリン、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、トレハロース、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等;結合剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、アラビアガム、トラガント、ゼラチン、セラック等;滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等;崩壊剤として、結晶セルロース、ゼラチン、寒天、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等を;着色剤として、カルミン、カラメル、β−カロチン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、タルク、リン酸リボフラビンナトリウム、黄色アルミニウムレーキ等;矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ油、メントール、レモン油、竜脳、桂皮末、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等;乳化剤または海面活性剤として、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等;溶解補助剤として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリソルベート80等;懸濁化剤として、上記界面活性剤の他、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等;等張化剤として、ブドウ糖、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール等;緩衝剤として、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液;防腐剤として、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等;抗酸化剤として、亜硫酸塩、アスコルビン酸、トコフェロール等;安定化剤として、例えばアスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、エリソスビン酸、トコフェロール等;吸収促進剤として、ミリスチン酸イソプロピル、トコフェロール、カルシフェロール等を用いることができるがこれらに限定されない。
また、製剤化するに際しては、他の有効成分を含む合剤としてもよい。
本発明に係る着床能改善用組成物は、製剤化して、またはそのままで、医薬、医薬部外品、特定保健用食品、栄養補助食品(サプリメント)、健康補助食品、食品、飲料等として市販することができる。
本発明に係る着床能改善用組成物における、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質の含有量は、特に限定されず、当業者が適宜選択することができる。
例えば、レスベラトロールを用いる場合、25mg経口摂取すると1時間後に血中濃度が2μMに達したとの報告がある(Walle T. et al., Drug Metab Dispos 2004 32: 1377-82)ので、これから投与量を求めることも可能である。
レスベラトロールの場合、例えば、1日あたり1mg〜10g、10mg〜5g、20mg〜1000mg等としてもよいが、これに限定されない。
例えば、レスベラトロールを用いる場合、25mg経口摂取すると1時間後に血中濃度が2μMに達したとの報告がある(Walle T. et al., Drug Metab Dispos 2004 32: 1377-82)ので、これから投与量を求めることも可能である。
レスベラトロールの場合、例えば、1日あたり1mg〜10g、10mg〜5g、20mg〜1000mg等としてもよいが、これに限定されない。
本発明は、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質を投与する着床能の改善方法も含む。
SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質については、既に説明したとおりであるため、ここでは説明を省略する。当該物質は、上記説明にしたがって製剤化してもよい。
SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質は、他の医薬と併用投与してもよい。
投与する時期は、胚盤胞が着床する受精後約7日目に、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質の血中濃度が、着床能の改善に十分となるように当業者が選択することができる。
例えば、着床する時期の数日前から投与してもよいし、より長期間、連続的または非連続的に投与してもよい。
SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質については、既に説明したとおりであるため、ここでは説明を省略する。当該物質は、上記説明にしたがって製剤化してもよい。
SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質は、他の医薬と併用投与してもよい。
投与する時期は、胚盤胞が着床する受精後約7日目に、SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能または発現を亢進させる物質の血中濃度が、着床能の改善に十分となるように当業者が選択することができる。
例えば、着床する時期の数日前から投与してもよいし、より長期間、連続的または非連続的に投与してもよい。
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
1.方法
〔細胞培養〕
子宮内膜癌細胞株Ishikawaは、筑波大学の西田博士より提供を受けた。RL95-2細胞(CRL-1671、子宮内膜腺癌)、293T細胞(CRL-11268、ヒト胎児腎細胞)、及びJAR細胞(HTB-144、ひと絨毛癌細胞)は、American Type Culture Collection(Manassas, VA)より購入した。RL95-2細胞及び293T細胞はDMEM培地(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、Ishikawa細胞はMEM培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)、JAR細胞はRPMI1640培地(Invitrogen)で維持した。細胞は、37℃、5% CO2でインキュベートした。すべての培地に、10%FBS(Sigma-Aldrich)、2mMのL-グルタミン(GIBCO-BRL)、100 U/mlのペニシリン、及び100 mg/mlストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)を加えた。
〔細胞培養〕
子宮内膜癌細胞株Ishikawaは、筑波大学の西田博士より提供を受けた。RL95-2細胞(CRL-1671、子宮内膜腺癌)、293T細胞(CRL-11268、ヒト胎児腎細胞)、及びJAR細胞(HTB-144、ひと絨毛癌細胞)は、American Type Culture Collection(Manassas, VA)より購入した。RL95-2細胞及び293T細胞はDMEM培地(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、Ishikawa細胞はMEM培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)、JAR細胞はRPMI1640培地(Invitrogen)で維持した。細胞は、37℃、5% CO2でインキュベートした。すべての培地に、10%FBS(Sigma-Aldrich)、2mMのL-グルタミン(GIBCO-BRL)、100 U/mlのペニシリン、及び100 mg/mlストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)を加えた。
〔試薬及び抗体〕
レスベラトロール、ニコチンアミド(NAM)、及びサーチノールは、Sigma-Aldrichより購入した。AICARはCell Signaling Technology(Danvers, MA)から購入した。これらの化合物は、ジメチルスルホキシドに溶解させ、ジメチルスルホキシドの終濃度が0.05%を超えないようにした。
抗DBC1抗体は自研究室において作成したものを使用し(Hiraike H. et al. 2010 Br J Cancer 102:1061-1067)、抗E-カドヘリン抗体(catalog no. 4065S, Cell Signaling Technology)、抗αE-カテニン抗体(catalog no. sc-7894, Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA)として、ウサギポリクローナル抗体を用いた。
抗SIRT1抗体(E104, Abcam, Cambridge, UK)及び抗グリコデリン抗体(EP870Y, Novus Biologicals, CO)として、ウサギモノクローナル抗体を用いた。
抗E-カドヘリン抗体(610181, BD Transduction Labolatories, Franklin Lakes, NJ)、及び抗b-Actin抗体(catalog no. sc-47778, Santa Cruz Biotechnology, Inc.)として、マウスモノクローナル抗体を用いた。
Alexa Fluor 488を接合したロバ抗マウスIgG(A-21428)及びAlexa Fluor 555を接合したヤギ抗ウサギIgG(A-21202)はInvitrogenから購入した。
レスベラトロール、ニコチンアミド(NAM)、及びサーチノールは、Sigma-Aldrichより購入した。AICARはCell Signaling Technology(Danvers, MA)から購入した。これらの化合物は、ジメチルスルホキシドに溶解させ、ジメチルスルホキシドの終濃度が0.05%を超えないようにした。
抗DBC1抗体は自研究室において作成したものを使用し(Hiraike H. et al. 2010 Br J Cancer 102:1061-1067)、抗E-カドヘリン抗体(catalog no. 4065S, Cell Signaling Technology)、抗αE-カテニン抗体(catalog no. sc-7894, Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA)として、ウサギポリクローナル抗体を用いた。
抗SIRT1抗体(E104, Abcam, Cambridge, UK)及び抗グリコデリン抗体(EP870Y, Novus Biologicals, CO)として、ウサギモノクローナル抗体を用いた。
抗E-カドヘリン抗体(610181, BD Transduction Labolatories, Franklin Lakes, NJ)、及び抗b-Actin抗体(catalog no. sc-47778, Santa Cruz Biotechnology, Inc.)として、マウスモノクローナル抗体を用いた。
Alexa Fluor 488を接合したロバ抗マウスIgG(A-21428)及びAlexa Fluor 555を接合したヤギ抗ウサギIgG(A-21202)はInvitrogenから購入した。
〔ウェスタンブロッティング〕
SIRT1の機能による効果を決定するために、細胞を種々の濃度のレスベラトロール、サーチノール、NAMまたはAICARで処理した。Ishikawa及びRL95-2細胞を播種し、24時間接着させた。コンフルエントになるまで、各化合物の存在下または非存在下で24時間培養24時間培養した。細胞の形態と、タンパク質レベルでの遺伝子発現で調べた。可溶性タンパク質は、Wada-Hiraikeらの方法(Wada-Hiraike O. et al. 2005 Br J Cancer 11 92:2286-2291)で抽出した。タンパク質の濃度を測定し、等量の全細胞抽出液でSDS-PAGEを行い、ポリビニリデンジフルオライド膜(Millipore Corp., Billerica, MA)に転写した。非特異的結合部位をブロッキングした後、5%脱脂粉乳と0.2%Tween 20を含むトリス緩衝生理食塩水(25 mM Tris-HCl pH 7.6 and 150 1 mM NaCl)と共に、1時間インキュベートした。PVD膜を、一次抗体により4℃で一晩ブロッティングした。反応性のあるタンパク質を、西洋わさびペルオキシダーゼを接合した二次抗体(GE 4 healthcare UK Ltd., Buckinghamshire, UK)と60分室温で反応させ、ECL Plus Western Blotting Detection Reagents(GE healthcare UK Ltd.)で検出した。
SIRT1の機能による効果を決定するために、細胞を種々の濃度のレスベラトロール、サーチノール、NAMまたはAICARで処理した。Ishikawa及びRL95-2細胞を播種し、24時間接着させた。コンフルエントになるまで、各化合物の存在下または非存在下で24時間培養24時間培養した。細胞の形態と、タンパク質レベルでの遺伝子発現で調べた。可溶性タンパク質は、Wada-Hiraikeらの方法(Wada-Hiraike O. et al. 2005 Br J Cancer 11 92:2286-2291)で抽出した。タンパク質の濃度を測定し、等量の全細胞抽出液でSDS-PAGEを行い、ポリビニリデンジフルオライド膜(Millipore Corp., Billerica, MA)に転写した。非特異的結合部位をブロッキングした後、5%脱脂粉乳と0.2%Tween 20を含むトリス緩衝生理食塩水(25 mM Tris-HCl pH 7.6 and 150 1 mM NaCl)と共に、1時間インキュベートした。PVD膜を、一次抗体により4℃で一晩ブロッティングした。反応性のあるタンパク質を、西洋わさびペルオキシダーゼを接合した二次抗体(GE 4 healthcare UK Ltd., Buckinghamshire, UK)と60分室温で反応させ、ECL Plus Western Blotting Detection Reagents(GE healthcare UK Ltd.)で検出した。
〔RNAi〕
Ishikawa細胞及びRL95-2細胞に、siRNA(Invitrogen及びQiagen(Hilden, Germany)で合成)を導入することにより、SIRT1及びDBC1のノックダウンを行った。
コントロールsiRNA(AllStars Negative Control siRNA, 102728)、DBC1特異的siRNA(DBC1-RNAi: 5' AAACGGAGCCUACUGAACA 3'(DBC1遺伝子のmRNAにおける1379位〜1397位、アミノ酸で460位〜466位に相当。)、及びKIAA1967-RNAi(SI00461853))を、HyperFect reagent(Qiagen)を用いて細胞に導入した。SIRT1(Oligo ID: HSS118729, HSS177403 and HSS117404)に特異的なステルスRNAi Duplex(Invitrogen)は、Lipofectamine RNAi MAX(Invitrogen)を用いて細胞に導入した。
Ishikawa細胞及びRL95-2細胞に、siRNA(Invitrogen及びQiagen(Hilden, Germany)で合成)を導入することにより、SIRT1及びDBC1のノックダウンを行った。
コントロールsiRNA(AllStars Negative Control siRNA, 102728)、DBC1特異的siRNA(DBC1-RNAi: 5' AAACGGAGCCUACUGAACA 3'(DBC1遺伝子のmRNAにおける1379位〜1397位、アミノ酸で460位〜466位に相当。)、及びKIAA1967-RNAi(SI00461853))を、HyperFect reagent(Qiagen)を用いて細胞に導入した。SIRT1(Oligo ID: HSS118729, HSS177403 and HSS117404)に特異的なステルスRNAi Duplex(Invitrogen)は、Lipofectamine RNAi MAX(Invitrogen)を用いて細胞に導入した。
〔ルシフェラーゼアッセイ〕
Effectene (Qiagen)を用い、使用説明書にしたがってトランスフェクションを行った。ルシフェラーゼアッセイのために、図示された発現ベクターを、E-cad(-108)-Luc、またはE-cad(-108) Mut-Luc (38)と同時にトランスフェクトした。
トランスフェクション効率を是正するための内部コントロールとして、すべての実験において、phRL CMV-Renilla vector(Promega Co.)もトランスフェクトした。各トランスフェクションはトリプリケートで少なくとも3回繰り返した。
Effectene (Qiagen)を用い、使用説明書にしたがってトランスフェクションを行った。ルシフェラーゼアッセイのために、図示された発現ベクターを、E-cad(-108)-Luc、またはE-cad(-108) Mut-Luc (38)と同時にトランスフェクトした。
トランスフェクション効率を是正するための内部コントロールとして、すべての実験において、phRL CMV-Renilla vector(Promega Co.)もトランスフェクトした。各トランスフェクションはトリプリケートで少なくとも3回繰り返した。
〔in vitro 着床アッセイ〕
胚盤胞のモデルとなるJAR細胞のスフェロイドを作るために、JAR細胞をペトリ皿中で、2 x105 cells/mlの密度の懸濁液中で培養した。ペトリ皿は、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。インキュベーションの間に、JAR細胞は、自然な凝集により直径50−200μmのスフェロイドを形成し、着床する胚盤胞と同程度の大きさとなった。
Ishikawa細胞は24ウェルプレートにquintuplicateで播種し、単層のサブコンフルエントの状態になるまでインキュベートした。その後、新鮮な培地に交換し、Ishikawa細胞を各種化合物で処理した。アッセイの日に、Ishikawa細胞がコンフルエントに達した状態で、Ishikawa細胞とJARスフェロイドを、24時間、刺激物質を含まない新鮮な培地で共培養した(1ウェルあたり約100スフェロイドとして)。30分インキュベートした後、培地をピペットで静かに除去し、接着していないスフェロイドを除くためにPBSで2回穏やかに洗浄した。続いて光学顕微鏡で、単層細胞上のスフェロイドの数を計測した。
胚盤胞のモデルとなるJAR細胞のスフェロイドを作るために、JAR細胞をペトリ皿中で、2 x105 cells/mlの密度の懸濁液中で培養した。ペトリ皿は、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。インキュベーションの間に、JAR細胞は、自然な凝集により直径50−200μmのスフェロイドを形成し、着床する胚盤胞と同程度の大きさとなった。
Ishikawa細胞は24ウェルプレートにquintuplicateで播種し、単層のサブコンフルエントの状態になるまでインキュベートした。その後、新鮮な培地に交換し、Ishikawa細胞を各種化合物で処理した。アッセイの日に、Ishikawa細胞がコンフルエントに達した状態で、Ishikawa細胞とJARスフェロイドを、24時間、刺激物質を含まない新鮮な培地で共培養した(1ウェルあたり約100スフェロイドとして)。30分インキュベートした後、培地をピペットで静かに除去し、接着していないスフェロイドを除くためにPBSで2回穏やかに洗浄した。続いて光学顕微鏡で、単層細胞上のスフェロイドの数を計測した。
〔蛍光顕微鏡法〕
Ishikawa細胞を、6ウェルプレート内で、12mmのBD BioCoat (BD Bioschiences) glass coverslip上で培養した。単層の細胞がコンフルエントに達した後、JAR細胞のスフェロイドをIshikawa細胞の単層上に播き、1時間または24時間一緒にインキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、4%のパラホルムアミドを含むPBSで固定した後、0.2% (v/v) Triton X-100(PBS中)で15分処理して透過性にした。
6%BSAを含むPBSで30分ブロッキングした後、Ishikawa細胞とスフェロイドを、順に抗E-カドヘリン抗体と抗グリコデリン抗体と共にインキュベートした。二次抗体として、Alexa fluor 488を接合したロバ抗マウスIgG、及びAlexa fluor 555を接合したヤギ抗ウサギIgGを用いた。続いて、スライドを短時間対比染色し、共焦点蛍光顕微鏡(Carl-Zeiss Micro Imaging Inc., Oberkochen, Germany)で観察した。
Ishikawa細胞を、6ウェルプレート内で、12mmのBD BioCoat (BD Bioschiences) glass coverslip上で培養した。単層の細胞がコンフルエントに達した後、JAR細胞のスフェロイドをIshikawa細胞の単層上に播き、1時間または24時間一緒にインキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、4%のパラホルムアミドを含むPBSで固定した後、0.2% (v/v) Triton X-100(PBS中)で15分処理して透過性にした。
6%BSAを含むPBSで30分ブロッキングした後、Ishikawa細胞とスフェロイドを、順に抗E-カドヘリン抗体と抗グリコデリン抗体と共にインキュベートした。二次抗体として、Alexa fluor 488を接合したロバ抗マウスIgG、及びAlexa fluor 555を接合したヤギ抗ウサギIgGを用いた。続いて、スライドを短時間対比染色し、共焦点蛍光顕微鏡(Carl-Zeiss Micro Imaging Inc., Oberkochen, Germany)で観察した。
〔クロマチン免疫沈降アッセイ〕
常法にしたがい、PCR用にIshikawa細胞の可溶性クロマチンを調製した。サブコンフルエントなIshikawa細胞を、1.5%ホルムアルデヒドと15分室温で反応させて架橋し、氷冷したBPSで2回洗浄した。続いて、細胞のペレットを0.2mlの可溶化バッファーに懸濁し、Bioruptor UCD-250(Cosmo Bio, Co., Ltd., Tokyo, Japan)で超音波破砕した。
得られた可溶性クロマチンを、特異的な抗体、プロテインGセファロース及びサケ精子DNA(Millipore, Upstate, Billerica, MA)を用いた免疫沈降に供した。
よく洗浄した後、ビーズを溶出させた。溶出液を65℃で6時間インキュベートし、ホルムアルデヒドの架橋を除いた。抽出したDNAはQIAquick PCR purification kit(Qiagen)により精製した。3つのE-boxドメインを含むE-カドヘリンプロモーター領域の増幅には、以下のプライマーを用いた。
Forward:5'-GTGAACCCTCAGCCAATCAG-3'
Reverse:5'-TCACAGGTGCTTTGCAGTTC-3'
常法にしたがい、PCR用にIshikawa細胞の可溶性クロマチンを調製した。サブコンフルエントなIshikawa細胞を、1.5%ホルムアルデヒドと15分室温で反応させて架橋し、氷冷したBPSで2回洗浄した。続いて、細胞のペレットを0.2mlの可溶化バッファーに懸濁し、Bioruptor UCD-250(Cosmo Bio, Co., Ltd., Tokyo, Japan)で超音波破砕した。
得られた可溶性クロマチンを、特異的な抗体、プロテインGセファロース及びサケ精子DNA(Millipore, Upstate, Billerica, MA)を用いた免疫沈降に供した。
よく洗浄した後、ビーズを溶出させた。溶出液を65℃で6時間インキュベートし、ホルムアルデヒドの架橋を除いた。抽出したDNAはQIAquick PCR purification kit(Qiagen)により精製した。3つのE-boxドメインを含むE-カドヘリンプロモーター領域の増幅には、以下のプライマーを用いた。
Forward:5'-GTGAACCCTCAGCCAATCAG-3'
Reverse:5'-TCACAGGTGCTTTGCAGTTC-3'
〔統計〕
データは、少なくとも3つの独立した実験に基づき、平均±SDで示した。統計解析は、StatView software(SAS Institute Inc., Cary, NC)を使用し、one-way ANOVAと多重比較のpost-hock検定により行った。P<0.05の場合、統計学的有意差があるとみなした。
データは、少なくとも3つの独立した実験に基づき、平均±SDで示した。統計解析は、StatView software(SAS Institute Inc., Cary, NC)を使用し、one-way ANOVAと多重比較のpost-hock検定により行った。P<0.05の場合、統計学的有意差があるとみなした。
2.結果
2-1.SIRT1脱アセチル酵素によるE-カドヘリン発現の制御
SIRT1の発現がE-カドヘリンの発現に及ぼす効果を調べるために、内因性SIRT1の発現を特異的に抑制するsiRNA(siRNA No.1及びsiRNA No.2)で、非極性のIshikawa細胞とRL95-2細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を回収し、ウェスタンブロッティングに供した。結果を図1A及び1Cに示す。
2種類のsiRNAで実験し、内因性SIRT1の発現が低下することが確認された。
乳癌細胞株MDA-MB-231を用いた非特許文献4の報告と異なり、RNAiによるSIRT1のノックダウンにより、子宮内膜癌細胞株においてE-カドヘリンの発現が減少することが確認された。ローディングコントロールと特異性コントロールとしてβ-アクチンの発現を調べたが、β-アクチンの発現は、実験条件によって変化しなかった。
2-1.SIRT1脱アセチル酵素によるE-カドヘリン発現の制御
SIRT1の発現がE-カドヘリンの発現に及ぼす効果を調べるために、内因性SIRT1の発現を特異的に抑制するsiRNA(siRNA No.1及びsiRNA No.2)で、非極性のIshikawa細胞とRL95-2細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を回収し、ウェスタンブロッティングに供した。結果を図1A及び1Cに示す。
2種類のsiRNAで実験し、内因性SIRT1の発現が低下することが確認された。
乳癌細胞株MDA-MB-231を用いた非特許文献4の報告と異なり、RNAiによるSIRT1のノックダウンにより、子宮内膜癌細胞株においてE-カドヘリンの発現が減少することが確認された。ローディングコントロールと特異性コントロールとしてβ-アクチンの発現を調べたが、β-アクチンの発現は、実験条件によって変化しなかった。
また、SIRT1によるE-カドヘリンの発現制御に、SIRT1の脱アセチル化機能を負に制御することが知られるDBC1が影響している可能性を調べるため、SIRT1のノックダウンによるDBC1の発現の変化も調べた。本発明者らのこれまでの研究によれば、DBC1はin vivoでBRCA1の下流遺伝子(SIRT1及びp21)発現の制御において重要な役割を果たしている(Hiraike H. et al. 2010 Br J Cancer 102:1061-1067)。しかしながら、siRNAによってSIRT1をノックダウンしても、DBC1の発現は変化しなかった。
次に、SIRT1発現ベクター(pcDNA Flag SIRT1)を用いて、SIRT1の強制発現を行った。発現ベクターのトランスフェクションから24時間後、細胞を回収し、イムノブロッティングに供した。各遺伝子について3回の独立した実験を行った結果の代表例を図1B及び1Dに示す。SIRT1の発現が増加すると、E-カドヘリンの発現も増加することが確認された。
以上より、SIRT1の発現とE-カドヘリンの発現は正の相関を示すことが示された。
以上より、SIRT1の発現とE-カドヘリンの発現は正の相関を示すことが示された。
そこで、SIRT1がE-カドヘリンのプロモーターを活性化している可能性を、ルシフェラーゼアッセイで調べた。結果を図1Eに示す。
E-カドヘリンの発現に必要な最小限のプロモーター領域(-108 to +125 bp)を含む、E-box-wild type luciferase [E-cad(-108)-Luc]またはE-box-mutated [E-cad(-108)19 Mut-Luc]のレポータープラスミドを用いて、一過性トランスフェクションアッセイを行った。
E-boxエレメントは、最初、E-カドへリン駆動性レポーター遺伝子構築物を抑制するSLUGやSNAILなどのジンクフィンガー転写因子の結合領域として見出された。これまでに、プロモーター内の3つのE-box領域が、E-カドヘリンの発現を駆動することが示されている(Hajra KM. et al. 2002 Cancer Res 62:1613-1618)。E-cad(-108) Mut-Lucは、E-カドヘリンプロモーターの近位に、センス鎖のコンセンサス配列5'-CANNTG-3'が、5'-AANNTA-3'となる変異を有する3つのE-boxエレメントを有するものである。
293T細胞を、レポータープラスミド、及び、図中に示された量のSIRT1発現プラスミド(pcDNA Flag SIRT1)でコトランスフェクトし、トランスフェクションから24時間後に細胞を回収した。全細胞溶解液について、レポータープラスミドから産生されたルシフェラーゼ活性を測定した。
その結果、SIRT1は、293T細胞においてレポータープラスミドのプロモーター活性を用量依存的に著しく上昇させたが、E-boxドメインに変異を有するE-cad(-108) Mut-Lucでは、SIRT1によるトランス活性化は見られなかった。
Ishikawa細胞とRL95-2細胞を用いて同様のトランスフェクションアッセイを行ったが、これらのレポーター構築物のトランスフェクション効率は極めて低かった(データ示さず)。
E-カドヘリンの発現に必要な最小限のプロモーター領域(-108 to +125 bp)を含む、E-box-wild type luciferase [E-cad(-108)-Luc]またはE-box-mutated [E-cad(-108)19 Mut-Luc]のレポータープラスミドを用いて、一過性トランスフェクションアッセイを行った。
E-boxエレメントは、最初、E-カドへリン駆動性レポーター遺伝子構築物を抑制するSLUGやSNAILなどのジンクフィンガー転写因子の結合領域として見出された。これまでに、プロモーター内の3つのE-box領域が、E-カドヘリンの発現を駆動することが示されている(Hajra KM. et al. 2002 Cancer Res 62:1613-1618)。E-cad(-108) Mut-Lucは、E-カドヘリンプロモーターの近位に、センス鎖のコンセンサス配列5'-CANNTG-3'が、5'-AANNTA-3'となる変異を有する3つのE-boxエレメントを有するものである。
293T細胞を、レポータープラスミド、及び、図中に示された量のSIRT1発現プラスミド(pcDNA Flag SIRT1)でコトランスフェクトし、トランスフェクションから24時間後に細胞を回収した。全細胞溶解液について、レポータープラスミドから産生されたルシフェラーゼ活性を測定した。
その結果、SIRT1は、293T細胞においてレポータープラスミドのプロモーター活性を用量依存的に著しく上昇させたが、E-boxドメインに変異を有するE-cad(-108) Mut-Lucでは、SIRT1によるトランス活性化は見られなかった。
Ishikawa細胞とRL95-2細胞を用いて同様のトランスフェクションアッセイを行ったが、これらのレポーター構築物のトランスフェクション効率は極めて低かった(データ示さず)。
SIRT1が実際にE-カドヘリンプロモーターに結合するか否かを調べるために、3つのE-boxエレメントを含むE-カドヘリン遺伝子プロモーターを用いてクロマチン免疫沈降アッセイを行った。その結果、Ishikawa細胞において、内因性SIRT1が、E-カドへリンプロモーターの標的配列に結合するのが観察された(図1F)。
これらの結果から、SIRT1がE-カドヘリン発現において重要な役割を果たすこと、及び、E-boxドメインがSIRT1仲介性E-カドヘリン発現に必須であることが示唆された。
これらの結果から、SIRT1がE-カドヘリン発現において重要な役割を果たすこと、及び、E-boxドメインがSIRT1仲介性E-カドヘリン発現に必須であることが示唆された。
2-2.SIRT1機能の刺激によるSIRT1及びE-カドヘリン発現レベルの増加
SIRT1の機能を制御する低分子化合物によって、E-カドヘリンの発現も制御されるか否かを調べるために、E-カドヘリンプロモーターの機能のリガンド誘導性トランス活性化をルシフェラーゼアッセイで調べた。結果を図2Aに示す。293T細胞を、E-cad(-108)-Lucプラスミドでトランスフェクトし、様々な濃度のレスベラトロールで処理した。トランスフェクションから24時間後、細胞を回収し、全細胞溶解液についてレポータープラスミドから産生されたルシフェラーゼ活性を測定した。
レスベラトロールは、用量依存的にE-カドヘリンプロモーターをトランス活性化し、EC50は、約10μMであった。
SIRT1の機能を制御する低分子化合物によって、E-カドヘリンの発現も制御されるか否かを調べるために、E-カドヘリンプロモーターの機能のリガンド誘導性トランス活性化をルシフェラーゼアッセイで調べた。結果を図2Aに示す。293T細胞を、E-cad(-108)-Lucプラスミドでトランスフェクトし、様々な濃度のレスベラトロールで処理した。トランスフェクションから24時間後、細胞を回収し、全細胞溶解液についてレポータープラスミドから産生されたルシフェラーゼ活性を測定した。
レスベラトロールは、用量依存的にE-カドヘリンプロモーターをトランス活性化し、EC50は、約10μMであった。
また、E-cad(-108)-Lucプラスミドによるトランスフェクションに先立って、siRNAによりSIRT1のノックダウンを行った。293T細胞は、siRNAのトランスフェクションの24時間後にトランスフェクトし、その後様々な濃度のレスベラトロールで処理した。それから24時間後に細胞を回収し、全細胞溶解液についてレポータープラスミドから産生されたルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図2Bに示す。
レスベラトロールは、SIRT1の存否に関わらず、E-カドヘリンプロモーターを用量依存的に活性化した。
レスベラトロールは、SIRT1の存否に関わらず、E-カドヘリンプロモーターを用量依存的に活性化した。
次に、SIRT1の機能を活性化する化合物と、阻害する化合物によるE-カドヘリン発現への影響を調べた。結果を図3に示す。
Ishikawa細胞(図3A、C、D及びE)とRL95-2細胞(同B及びF)細胞を、様々な濃度のビヒクル、SIRT1活性化剤(レスベラトロール及びAICAR)とSIRT1阻害剤(サーチノールとNAM)で処理した。
24時間後、細胞を回収して可溶性タンパク質を抽出した。E-カドヘリンとSIRT1の発現はウェスタンブロッティングで検出した。
E-カドヘリンのタンパク質レベルの発現は、SIRT1活性化剤によって用量依存的に誘導され(図3A、B、E及びF)、SIRT1阻害剤によって用量依存的に抑制された(図3C及び3D)。
Ishikawa細胞(図3A、C、D及びE)とRL95-2細胞(同B及びF)細胞を、様々な濃度のビヒクル、SIRT1活性化剤(レスベラトロール及びAICAR)とSIRT1阻害剤(サーチノールとNAM)で処理した。
24時間後、細胞を回収して可溶性タンパク質を抽出した。E-カドヘリンとSIRT1の発現はウェスタンブロッティングで検出した。
E-カドヘリンのタンパク質レベルの発現は、SIRT1活性化剤によって用量依存的に誘導され(図3A、B、E及びF)、SIRT1阻害剤によって用量依存的に抑制された(図3C及び3D)。
2-3.単層Ishikawa細胞へのスフェロイド接着に対するSIRT1発現の影響
Ishikawa細胞の着床能にSIRT1活性が影響するか否か、胚接着のin vitro 着床アッセイで調べた。Ishikawa細胞は、受容性を有する子宮内膜上皮モデルとして広く使用されていることから、この細胞株で細胞の単層を作製して子宮内膜の上皮層モデルとし、JAR絨毛癌細胞による絨毛性スフェロイドを胚モデルとして、胚の子宮内膜上皮への接着をシミュレーションした。
Ishikawa細胞の単層に接着したJARスフェロイドを位相差顕微鏡で観察した結果を図4Aに示し、接着したスフェロイドの数を数えた結果を図4Bに示す。
Ishikawa細胞にSIRT1を強制発現させると、Ishikawa細胞の単層に接着するスフェロイドの数が有意に増加した。比較対象コントロール群に対して、接着したスフェロイドの数、すなわち受容性は1.3倍であった。
一方、Ishikawa細胞の内在性SIRT1をsiRNAでノックダウンした場合、スフェロイドの接着は、比較対象コントロール群に対して2分の1に減少した。
以上より、SIRT1は、ヒトの子宮内膜の受容性をE-カドヘリン発現を介して胚の初期接着能を向上させるものと考えられた。
Ishikawa細胞の着床能にSIRT1活性が影響するか否か、胚接着のin vitro 着床アッセイで調べた。Ishikawa細胞は、受容性を有する子宮内膜上皮モデルとして広く使用されていることから、この細胞株で細胞の単層を作製して子宮内膜の上皮層モデルとし、JAR絨毛癌細胞による絨毛性スフェロイドを胚モデルとして、胚の子宮内膜上皮への接着をシミュレーションした。
Ishikawa細胞の単層に接着したJARスフェロイドを位相差顕微鏡で観察した結果を図4Aに示し、接着したスフェロイドの数を数えた結果を図4Bに示す。
Ishikawa細胞にSIRT1を強制発現させると、Ishikawa細胞の単層に接着するスフェロイドの数が有意に増加した。比較対象コントロール群に対して、接着したスフェロイドの数、すなわち受容性は1.3倍であった。
一方、Ishikawa細胞の内在性SIRT1をsiRNAでノックダウンした場合、スフェロイドの接着は、比較対象コントロール群に対して2分の1に減少した。
以上より、SIRT1は、ヒトの子宮内膜の受容性をE-カドヘリン発現を介して胚の初期接着能を向上させるものと考えられた。
2-4.単層Ishikawa細胞へのスフェロイド接着に対するレスベラトロールとサーチノールの影響
Ishikawa細胞の着床能にSIRT1の活性化剤または非活性化剤が影響するか否か、胚接着のin vitro 着床アッセイで調べた。
Ishikawa細胞の単層に接着したJARスフェロイドを位相差顕微鏡で観察した結果を図5Aに示し、接着したスフェロイドの数を数えた結果を図5Bに示す。
レスベラトロールまたはAICARで処理すると、Ishikawa細胞の単層に接着するスフェロイドの数が有意に増加した。レスベラトロールの場合、ビヒクルで処理した場合に比較して、接着したスフェロイドの数、すなわち受容性は3.5倍であった。
一方、Ishikawa細胞の単層を10μMのサーチノールで処理した場合、スフェロイドの接着は、サーチノールで処理しない場合に比較して2分の1に減少した。
以上より、レスベラトロールは、ヒトの子宮内膜の受容性を増大させることによって、胚の初期接着能を向上させ、サーチノール処理は、胚の初期接着能を弱めるものと考えられた。
Ishikawa細胞の着床能にSIRT1の活性化剤または非活性化剤が影響するか否か、胚接着のin vitro 着床アッセイで調べた。
Ishikawa細胞の単層に接着したJARスフェロイドを位相差顕微鏡で観察した結果を図5Aに示し、接着したスフェロイドの数を数えた結果を図5Bに示す。
レスベラトロールまたはAICARで処理すると、Ishikawa細胞の単層に接着するスフェロイドの数が有意に増加した。レスベラトロールの場合、ビヒクルで処理した場合に比較して、接着したスフェロイドの数、すなわち受容性は3.5倍であった。
一方、Ishikawa細胞の単層を10μMのサーチノールで処理した場合、スフェロイドの接着は、サーチノールで処理しない場合に比較して2分の1に減少した。
以上より、レスベラトロールは、ヒトの子宮内膜の受容性を増大させることによって、胚の初期接着能を向上させ、サーチノール処理は、胚の初期接着能を弱めるものと考えられた。
2-5.細胞間接着分子制御と、着床に関与する他の因子に対するSIRT1の役割
SIRT1が、E-カドヘリンに結合する細胞間接着分子の発現に与える影響と、着床に関連する他の因子に与える影響を子宮内膜癌細胞において調べるために、様々な濃度のビヒクル、レスベラトロール、またはNAMでIshikawa細胞及びRL95-2細胞を処理し、αE-カテニン、β-カテニン、サバイビン(Survivin)及びグリコデリンの発現を調べた。各化合物で処理してから24時間後、細胞を回収し、可溶性タンパク質を抽出し、タンパク質発現をウェスタンブロッティングで検出した。結果を図6に示す。
αE-カテニンの発現は、NAM処理によって増加し、β-カテニンの発現はレスベラトロール処理によって促進されることがわかった(図6AはIshikawa細胞、図6BはRL95-2細胞)。
グリコデリンは、プロゲステロンに誘導される糖蛋白質で、子宮内膜腺から子宮腔に分泌される。グリコデリンは、HDAC阻害剤処理された細胞で細胞の運動性を促進することが知られている。また、サバイビンは、乳房組織におけるSIRT1の下流因子として知られており、妊娠初期にアップレギュレートされる。
レスベラトロール処理後のIshikawa細胞において、グリコデリンタンパク質は有意に増加するが、サバイビンは増加しないことを確認した(図6C)。
SIRT1が、E-カドヘリンに結合する細胞間接着分子の発現に与える影響と、着床に関連する他の因子に与える影響を子宮内膜癌細胞において調べるために、様々な濃度のビヒクル、レスベラトロール、またはNAMでIshikawa細胞及びRL95-2細胞を処理し、αE-カテニン、β-カテニン、サバイビン(Survivin)及びグリコデリンの発現を調べた。各化合物で処理してから24時間後、細胞を回収し、可溶性タンパク質を抽出し、タンパク質発現をウェスタンブロッティングで検出した。結果を図6に示す。
αE-カテニンの発現は、NAM処理によって増加し、β-カテニンの発現はレスベラトロール処理によって促進されることがわかった(図6AはIshikawa細胞、図6BはRL95-2細胞)。
グリコデリンは、プロゲステロンに誘導される糖蛋白質で、子宮内膜腺から子宮腔に分泌される。グリコデリンは、HDAC阻害剤処理された細胞で細胞の運動性を促進することが知られている。また、サバイビンは、乳房組織におけるSIRT1の下流因子として知られており、妊娠初期にアップレギュレートされる。
レスベラトロール処理後のIshikawa細胞において、グリコデリンタンパク質は有意に増加するが、サバイビンは増加しないことを確認した(図6C)。
また、Ishikawa細胞をsiRNAでトランスフェクトし、48時間後に細胞を回収し、ウェスタンブロッティングを行った結果を図6D左に示す。また、Ishikawa細胞を発現ベクター(pcDNA Flag SIRT1)でトランスフェクトして外因性SIRT1を強制発現させ、24時間後に細胞を回収してイムノブロッティングでグリコデリンとβ-カテニンの発現を測定した結果を図6D右に示す。
E-カドヘリンの場合と同様に、グリコデリンとβ-カテニンの発現にはSIRT1の発現と正の相関性が見られた。
E-カドヘリンの場合と同様に、グリコデリンとβ-カテニンの発現にはSIRT1の発現と正の相関性が見られた。
2-6.初期接着における、E-カドヘリンとグリコデリンの細胞間接触部位への局在の重要性
in vitroスフェロイドアッセイにおいて、蛍光顕微鏡法により、E-カドヘリンとグリコデリンの細胞間接触部位における発現を、共焦点顕微鏡で観察した。特に、着床の過程におけるE-カドヘリンとグリコデリンの細胞内分布の変化を調べた。結果を図7に示す。
E-カドヘリン(図7A左下)と、グリコデリン(図7A右上)は、細胞同士が接触する部位に発現していたが、1時間インキュベーション後のスフェロイド細胞における共局在(colocalization)シグナルは、大きくなかった(図7A右下)。
しかしながら、24時間インキュベーション後、分散性の形態変化を示した細胞においては、E-カドヘリン、グリコデリン共に、強く発現し(それぞれ図7B左下、右上)、共局在シグナル(同右下)の程度も有意に上昇した(図7B)。このことは、E-カドヘリンはスフェロイド接着の最初のステップを促進し、グリコデリンはスフェロイドが子宮内膜に侵入するのを助けることを示唆する。
実際、三次元画像で示したところ、E-カドヘリンとグリコデリンの発現は、JARスフェロイドと、Ishikawa細胞で形成された子宮内膜とが接触する部位において上昇していることが確認された(図7C及び7D)。化合物によるSIRT1発現及びSIRT1刺激が、E-カドヘリンとグリコデリンの発現を増加させたことから、これらのデータは、SIRT1が着床の初期段階において重要な役割を果たすことを示したといえる。
in vitroスフェロイドアッセイにおいて、蛍光顕微鏡法により、E-カドヘリンとグリコデリンの細胞間接触部位における発現を、共焦点顕微鏡で観察した。特に、着床の過程におけるE-カドヘリンとグリコデリンの細胞内分布の変化を調べた。結果を図7に示す。
E-カドヘリン(図7A左下)と、グリコデリン(図7A右上)は、細胞同士が接触する部位に発現していたが、1時間インキュベーション後のスフェロイド細胞における共局在(colocalization)シグナルは、大きくなかった(図7A右下)。
しかしながら、24時間インキュベーション後、分散性の形態変化を示した細胞においては、E-カドヘリン、グリコデリン共に、強く発現し(それぞれ図7B左下、右上)、共局在シグナル(同右下)の程度も有意に上昇した(図7B)。このことは、E-カドヘリンはスフェロイド接着の最初のステップを促進し、グリコデリンはスフェロイドが子宮内膜に侵入するのを助けることを示唆する。
実際、三次元画像で示したところ、E-カドヘリンとグリコデリンの発現は、JARスフェロイドと、Ishikawa細胞で形成された子宮内膜とが接触する部位において上昇していることが確認された(図7C及び7D)。化合物によるSIRT1発現及びSIRT1刺激が、E-カドヘリンとグリコデリンの発現を増加させたことから、これらのデータは、SIRT1が着床の初期段階において重要な役割を果たすことを示したといえる。
Claims (6)
- SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質を含む着床能改善用組成物。
- 前記SIRT1及び/またはE-カドヘリンの機能もしくは発現を亢進させる物質が、レスベラトロールまたはSRT1720である、請求項1に記載の着床能改善用組成物。
- 請求項1または2に記載の着床能改善用組成物を含む医薬。
- 請求項1または2に記載の着床能改善用組成物を含む医薬部外品。
- 請求項1または2に記載の着床能改善用組成物を含む食品。
- 請求項1または2に記載の着床能改善用組成物を含む飲料。
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JP2012026187A JP2013163646A (ja) | 2012-02-09 | 2012-02-09 | 着床能改善用組成物、及びこれを含む医薬、食品または飲料 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023021591A1 (ja) * | 2021-08-18 | 2023-02-23 | 国立大学法人東北大学 | 子宮内膜モデル、子宮内膜モデルの作製方法、及び子宮内膜着床モデル |
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2012
- 2012-02-09 JP JP2012026187A patent/JP2013163646A/ja active Pending
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