図1は、本発明を適用可能なプリンターの構成を部分的に示す模式図であり、図1(a)では、プリンターの平面図が示されるとともに、図1(b)ではプリンターの側面図が示されている。このプリンター1は、リール・トゥ・リール方式により搬送されるシートS(フィルム)に対してインクジェット方式で画像を印刷するものである。概略的には、このプリンター1は、シートSを繰り出す繰出装置2と、繰出装置2から繰り出されたシートSの表面に画像を印刷するプロセス装置3と、プロセス装置3によって画像が印刷されたシートSを巻き取る巻取装置4とからなる構成を具備する。なお、図1および以後の図では、シートSの搬送方向をX軸方向とするとともにシートSの幅方向をY軸方向(X軸方向に直交)とするXY直交座標軸を適宜示す。
繰出装置2では、シートSの端部がロール状に巻き付けられた繰出リール21と、繰出リール21を駆動する繰出モーターM21とが設けられている。そして、繰出リール21が繰出モーターM21の駆動力を受けて図1(b)の時計回りに回転することで、シートSが繰出リール21からX軸方向へ繰り出される。こうして繰出装置2から繰り出されたシートSがプロセス装置3を介して巻取装置4へと巻き取られる。
一方、巻取装置4では、プロセス装置3からのシートSをロール状に巻き付けて支持する巻取リール41と、巻取リール41を駆動する巻取モーターM41とが設けられている。そして、巻取リール41が巻取モーターM41の駆動力を受けて図1(b)の時計回りに回転することで、シートSが巻取リール41に巻き取られる。
繰出装置2および巻取装置4のぞれぞれでは、シートSにテンションを付与する機構23、43が設けられている。つまり、繰出装置2では、繰出リール21から繰り出されたシートSを上下方向にV字状に屈曲させるとともに、シートSにバックテンションを付与するバッファー機構23が設けられている。一方、巻取装置4では、巻取リール41に巻き取られる前のシートSを上下方向にV字状に屈曲させるとともに、シートSにフォワードテンションを付与するバッファー機構43が設けられている。これらバッファー機構23、43によって、繰出装置2と巻取装置4との間のシートSに適切なテンションが付与されることとなる。
プロセス装置3では、X軸方向に長い直方体形状の基台51が設けられており、この基台51の上にX軸スライダー52を介してワークステージ53が取り付けられている。X軸スライダー52は、ワークステージ53を支持しながらX軸方向に移動するものである。ワークステージ53はその表面に開口する複数の吸引孔を有しており、繰出装置2から供給されたシートSの裏面をこれら吸引孔から吸引することで、シートSを吸着支持する。そして、印刷の実行時には、X軸スライダー52がX軸方向に間欠的に移動されて、ワークステージ53に吸着支持されたシートSがX軸方向に間欠的に搬送されるとともに、後述する印刷ユニット6から間欠停止中のシートSに対してインクが吐出される。この際、繰出装置2および巻取装置4は、シートSの間欠搬送に合わせて、シートSを間欠繰出および間欠巻取を実行する。
また、ワークステージ53のX軸方向の両側にはそれぞれ、送込ローラー対54と送出ローラー対55とが設けられている。これらのローラー対54、55は、ワークステージ53と一緒にX軸方向に移動しつつワークステージ53の両側からシートSを水平に引っ張って、シートSをワークステージ53の表面に沿わせるものである。これらローラー対54、55によって、シートSをワークステージ53の表面に密着させて、シートSをワークステージ53によりしっかりと吸着支持することができる。
さらに、プロセス装置3では、Y軸方向から基台51を跨ぐ2つのY軸フレーム56がX軸方向に間隔を空けて並んでいる。各Y軸フレーム56は、ワークステージ53の可動範囲をY軸方向から跨ぐY軸ガイドレール57と、Y軸ガイドレール57に対してY軸方向にスライド自在なY軸スライダー58とを有している。そして、プロセス装置3では、Y軸スライダー58に架け渡されてY軸スライダー58と一緒にY軸方向へ移動自在なブリッジプレート59の下側に、シートSへ印刷を行う印刷ユニット6が取り付けられている。したがって、印刷ユニット6は、ブリッジプレート59と一緒にY軸方向へ移動自在となっている。具体的には、例えばリニアモーター等で構成されたプレート駆動機構M59がブリッジプレート59を駆動することで、印刷ユニット6がY軸方向に移動する。
図2は、印刷ユニットと周辺部材の構成を拡大して示す模式図であり、図2(a)では側面図が示されるとともに、図2(b)では底面図が示されている。印刷ユニット6は、ブリッジプレート59の下面に固定された直方体形状の垂設フレーム61と、垂設フレーム61の下面に固定された平板状のキャリッジ62と、キャリッジ62の下面に2行千鳥状に配列された16個の印刷ヘッド64とを有する。なお、図2では、X軸方向の両端部分に配置された印刷ヘッド64のみが示されており、これらの間にある印刷ヘッド64については破線で略記されて具体的記載が省略されている。
各印刷ヘッド64の下面では、X軸方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列65が、Y軸方向に複数並んでいる。各ノズルは、UV(ultraviolet、紫外線)の照射を受けて硬化するUVインク(紫外線硬化型インク)をインクジェット方式によりシートS表面に吐出するものである。複数のノズル列65のそれぞれは、互いに異なる色のUVインクを吐出する。具体的には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、オレンジ(Or)、グリーン(Gr)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、ホワイト(W)、クリアー(CL)等のUVインクがノズル列65から吐出される。
上記構成を具備する16個の印刷ヘッド64は、X軸方向において互いに異なる位置に配置されており、X軸方向において互いに異なる領域にUVインクを吐出する。具体的には、印刷の実行時には、16個の印刷ヘッド64がY軸方向に移動しつつ間欠停止中のシートSの表面にUVインクを吐出するパスを実行する。そして、ワークステージ53によって間欠搬送されるシートSが間欠停止する度に、16個の印刷ヘッド64がパスを実行することで、シートS表面に所望の画像が印刷される。このように画像の印刷に際しては、シートSを間欠搬送することでシートSに対して16個の印刷ヘッド64を相対移動させつつ、間欠停止の度にパスが実行される。具体的には、例えば特開2011−152754号公報等に記載されている要領で複数のパスを実行すればよい。
ちなみに、キャリッジ62では、16個の印刷ヘッド64のY軸方向の両側それぞれに、紫外線をシートS表面に照射するUVランプ67が設けられている。したがって、パスの実行中には、16個の印刷ヘッド64からシートSに吐出されたUVインクは、これら印刷ヘッド64に追従して移動するUVランプ67から紫外線の照射を受けて硬化して、シートSに定着する。
以上が、プリンター1の機械的構成の概要である。続いては、プリンター1の電気的構成について説明する。図3は、図1に記載のプリンターが具備する電気的構成を模式的に示すブロック図である。図3に示すように、プリンター1は、当該プリンター1全体の制御を担うコンピューター100と、上述の16個の印刷ヘッド64が実行する印刷の制御を担うヘッドコントローラー200とを備える。
コンピューター100は、制御動作を統括するCPU(Central Processing Unit)110と、CPU110にFSB(Front Side Bus)115を介して接続されたノースブリッジ120と、ノースブリッジ120にDMI(Direct Media Interface)125を介して接続されたサウスブリッジ130とを備えている。ノースブリッジ120はグラフィックアクセレレーター機能を具備するものであり、例えばインテル社製のQ45GMCH等のチップである。一方、サウスブリッジ130は例えばインテル社製のICH10DO等のチップである。FSB115は10.6[GB/s]の転送レートを有しており、DMI125は1.25[GB/s] の転送レートを有している。また、コンピューター100は、ノースブリッジ120に接続された2個のメインメモリー121を備える。これらのメインメモリー121は、例えばDDR3−SDRUM(Double Data Rate3 Synchronous Dynamic Random Access Memory)であり、ノースブリッジ120との間に8.5[GB/s]の転送レートを有する。
コンピューター100は、サウスブリッジ130に接続された4個のUSB(Universal Serial Bus)ホスト140a〜140dを備えている。具体的には、2個のUSBホスト140a、140bはサウスブリッジ130に内蔵されている一方、2個のUSBホスト140c、140dはサウスブリッジ130の外部に設けられており、ケーブル135によってサウスブリッジ130に接続されている。ケーブル135は、PCIあるいはPCI Express等であり、133[MB/s]以上の転送レートを有する。また、コンピューター100は、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)155を介してサウスブリッジ130に接続された第1HDD(Hard Disk Drive)150と、SATA165を介してサウスブリッジ130に接続された第2HDDとを備えている。これらSATA155、165のそれぞれは300[MB/s]の転送レートを有する。
そして、サウスブリッジ130は、HDD150からシリアル通信により読み出したデータを、USBホスト140a〜140dを介して出力する処理や、第2HDD160からシリアル通信により読み出したデータを、第1HDD150にシリアル通信で転送する処理を実行する。なお、第1・第2HDD150、160に対しては、読み出しと書き込みを同時に実行することはできない。したがって、第1HDD150へのデータの転送(書き込み)は、第1HDD150からのデータの転送(読み出し)が実行されていない期間(書込可能期間)に実行される。また、第2HDD160へのデータの転送(書き込み)は、第2HDD160からのデータの転送(読み出し)が実行されていない期間(書込可能期間)に実行される。
また、コンピューター100では、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USBメモリー等のメディア300に記録されたプログラム400を読み出すドライバー190が具備されている。そして、コンピューター100では、ドライバー190を介して読み出されたプログラム400に基づいて、プリンター1で実行される各種動作が制御される。
以上のように構成されたコンピューター100では、作業者からの印刷開始指示が入力されると、当該指示に含まれる画像データを印刷データに変換する画像変換がCPU110によって実行される。具体的には、画像変換では、画像変換処理、パス分割処理、ハーフトーン処理および二値化処理等が実行される。ここで、解像度変換処理は、画像データの解像度をプリンター1での印刷解像度に変換する処理であり、パス分割処理は、例えばページサイズのデータを1パス分のサイズ毎に分割する処理であり、二値化処理はデータをラスタライズする処理である。この際の印刷データのフォーマットとしては、例えばESC/P(Epson Standard Code for Printer)を用いることができる。こうして、画像変換によって生成された印刷データは、第1HDD150に記憶される。そして、印刷を行う際には、サウスブリッジ130が第1HDD150に記憶された印刷データを4個のUSBホスト140a〜140dを介してヘッドコントローラー200に転送する。ちなみに、この際の印刷データの転送は、印刷ヘッド64による印刷の進捗に応じて、例えば1パス分ずつ実行される。
一方、ヘッドコントローラー200には、4枚のヘッド制御基板210a〜210dが設けられている。ヘッド制御基板210a〜210dのそれぞれは4個の印刷ヘッド64の制御を担当する。こうして4枚のヘッド制御基板210a〜210dによって16個の印刷ヘッド64の制御が実行される。これら4枚のヘッド制御基板210a〜210dに対しては、上述の4個のUSBホスト140a〜140dが一対一で対応している。そして、互いに対応するヘッド制御基板210a〜210dとUSBホスト140a〜140dとが、USBケーブル500a〜500dによって接続されている。USBケーブル500a〜500dは、USB2.0の規格に準拠したものであり、60[MB/s]の転送レートを有する。そして、ヘッド制御基板210a〜210dのそれぞれは、対応するUSBホスト140a〜140dからUSBケーブル500a〜500dを介して受信した印刷データをバッファーした後、当該印刷データに基づいて担当する4個の印刷ヘッド64による印刷を制御する。
以上がプリンター1の構成の概要である。続いては、プリンター1で実行される動作の詳細について説明する。図4は、プリンターの動作状態の遷移を例示する状態遷移図である。図5は、印刷動作の一例を模式的に示す平面図であり、具体的には、複数のジョブJ(1)、…J(n)、J(n+1)、…を実行する印刷動作が例示されている。ジョブJ(1)、…J(n)、J(n+1)、…のそれぞれにおける印刷動作は同様であるので、ここではジョブJ(n)での印刷動作について詳述することとし、他のジョブでの印刷動作については適宜説明を省略する。このジョブJ(n)では、例えば特許2011−152754号公報等に記載の印刷動作と同様にして、複数の版を重ね合わせてなる画像IMが複数の頁Pそれぞれに対して形成される。なお、図5に示す例では、1つの頁Pに対して8個の画像IM(ラベル画像)が形成される。
図4に示すように、電源がOFFの状態から電源がONされると、プリンター1は「起動中」の状態に遷移する。続いて、プリンター1はこの起動を完了すると、「待機中」の状態に遷移して印刷開始指示を待つ。そして、「待機中」の状態から終了指示があると、プリンター1は「終了中」の状態に遷移する。続いて、プリンター1はこの終了動作を完了すると、電源をOFFして「電源OFF」の状態に遷移する。一方、「待機中」の状態から印刷開始指示が入力されると、プリンター1は印刷を実行する。
つまり、ジョブJ(n)印刷開始指示が入力されると、プリンター1は「給紙状態」に遷移する。これによって、シートSがX軸方向に搬送されて、プロセス装置3に新たな頁P(図5)が給紙される。この給紙が完了すると、プリンター1は「印刷中」の状態に遷移して、印刷を実行する。具体的には、プリンター1は、プロセス装置3に給紙された頁PをX軸方向に間欠搬送しつつ、頁Pの間欠停止の度に印刷ヘッド64にパスを実行させて、1枚の版を頁Pに形成する(「印刷中」の状態)。このように、プリンター1は頁Pを間欠搬送することで、頁Pに対して印刷ヘッド64を相対移動させて、頁Pの略全面に8個の画像IMの版を形成する。そして、一の版の形成が完了すると、プリンター1は「頭出し中」の状態に遷移して、間欠搬送時の搬送方向の逆方向に頁Pを搬送する。これによって、頁Pに対して次の版の形成を開始する位置に印刷ヘッド64が相対移動して、頭出しが完了する。そして、頭出しが完了すると、プリンター1は再び「印刷中」の状態に遷移して、頁Pに形成済みの版に新たな版を重ねて形成する。
この要領で版の形成と頭出しとが繰り返し実行されて、全ての版が頁P表面で重ね合わされると、頁Pに対する8個の画像IMの形成が完了する。さらに、頁Pに対する画像の形成が完了すると、プリンター1は「給紙中」の状態に遷移して、新たな頁Pをプロセス装置3に給紙する。この給紙が完了すると、プリンター1は「印刷中」の状態に遷移して、新たな頁Pに対して画像IMを形成する。このような動作が繰り返し実行されて、ジョブJ(n)で印刷を予定する全ての頁Pに画像IMが形成されると、ジョブJ(n)の印刷が完了する。こうしてジョブJ(n)の印刷が完了すると、プリンター1は「待機中」の状態に遷移する。そして、「待機中」の状態から次のジョブJ(n+1)の印刷開始指示が入力されると、プリンター1は、ジョブJ(n)と同様にしてジョブJ(n+1)を実行する。このようにして、プリンター1は、複数のジョブJ(1)、…J(n)、J(n+1)、…の印刷を順次実行する。この際、プリンター1は、一のジョブJ(n)の印刷と並行して、次のジョブJ(n+1)の印刷データの生成を実行する。続いては、この印刷データの生成動作について図6を用いて詳述する。
図6は、プリンターで実行される印刷データの生成動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは上記プログラム400に組み込まれており、コンピューター100がプログラム400に従ってプリンター1の各部を制御することで、当該フローチャートの動作が実行される。また、ここでは一連のジョブJ(1)、…J(n)、J(n+1)、…の印刷がユーザーより指示された場合を例示して説明を行う。
コンピューター100は印刷開始指示の入力を確認すると、ジョブの順番を示す変数「n」が「1」であるか否かを判断して、この印刷開始指示で実行すべきジョブJ(n)が最初のジョブであるか否かを判断する(ステップS101)。そして、ジョブJ(n)が最初のジョブであった場合(n=1であって、ステップS101で「YES」の場合)には、CPU110が画像変換を行ってジョブJ(n)の印刷データを生成して、第1HDD150に記憶させる(ステップS102)。そして、ジョブJ(n)の印刷データの第1HDD150への記憶が完了してからステップS103が実行される。一方、ジョブJ(n)が最初のジョブでない場合(n≧2であって、ステップS101で「NO」の場合)には、ジョブJ(n)の印刷データは前回のジョブJ(n+1)に並行して生成されて第1HDD150に記憶済みであるので、そのままステップS103が実行される。
ステップS103では、ジョブJ(n)の後に実行予定の次のジョブJ(n+1)が存在するか否かが判断される。そして、次のジョブJ(n+1)が存在しない場合(ステップS103で「NO」の場合)には、ステップS104でジョブJ(n)の印刷が実行された後に、図6のフローチャートが終了する。一方、次のジョブJ(n+1)が存在する場合(ステップS103で「YES」の場合)には、ステップS105〜S112を実行して、ジョブJ(n+1)の印刷データを生成して第1HDD150に記憶させるといったジョブJ(n+1)の印刷準備が、ジョブJ(n)と並行して実行される。
つまり、ステップS105では、CPU110が画像変換を行って次のジョブJ(n+1)の印刷データを生成して、第2HDD160にスプールする(記憶させる)。ここで、第1HDD150ではなくて第2HDD160にジョブJ(n+1)の印刷データをスプールするのは、続いて開始されるジョブJ(n)の印刷の間は、第1HDD150からジョブJ(n)の印刷データが読み出されるため、第1HDD150への書き込みができないことに対応したものである。そして、第2HDD160にジョブJ(n+1)の印刷データをスプールするのと並行して、ステップS106においてジョブJ(n)の印刷が開始されると、当該印刷が完了するまでステップS107〜S110が繰り返し実行される。
ステップS107では、ジョブJ(n)の印刷が完了したか否かが判断される。ジョブJ(n)の印刷が完了しておらず実行中である場合(ステップS107で「NO」の場合)には、ステップS108において、ジョブJ(n+1)の印刷データの第2HDD160へのスプールが完了したか否かが判断される。このスプールが完了していない場合(ステップS108で「NO」の場合)には、ステップS107へ戻る一方、このスプールが完了している場合(ステップS108で「YES」の場合)には、ステップS109に進む。このステップS109は、第1HDD150からジョブJ(n)の印刷データの転送が実行されておらず、第1HDD150へジョブJ(n+1)の印刷データの転送が可能となる書込可能期間が発生しているか否かが判断される。書込可能期間が発生していない場合はステップS107へ戻る一方、書込可能期間が発生している場合はステップS110へと進む。
図7は、書込可能期間が発生するタイミングを例示したタイミングチャートである。同図では、2つの版を重ねて1枚の頁Pの画像を形成する場合におけるプリンター1の状態と第1HDDの状態とが例示されている。同図に示すように、ジョブJ(n)の印刷中は、第1HDD150からジョブJ(n)の印刷データが読み出されて、ヘッドコントローラー200へと転送される。したがって、プリンター1がジョブJ(n)の印刷中の状態にある期間は、第1HDD150への書き込みは実行できず、ジョブJ(n+1)の印刷データを第2HDD160から第1HDD150へ転送することはできない。一方、プリンター1が給紙中、頭出し中あるいは待機中といった印刷中以外の状態にある期間は、第1HDD150からの読み出しは実行されておらず、第1HDD150への書き込みが可能な書込可能期間となっている。そこで、この書込可能期間に、ジョブJ(n+1)の印刷データが第2HDD160から第1HDD150へ転送される(ステップS110)。
こうしてステップS107〜S110がジョブJ(n)の印刷が完了するまで実行される。そして、ステップS107でジョブJ(n)の印刷が完了した(ステップS107で「NO」)と判断されると、プリンター1は待機中の状態に移るとともに、ステップS111に進む。ステップS111では、次のジョブJ(n+1)の印刷データの第1HDD150への転送が完了したか否かが判断される。そして、このデータ転送が完了している場合(ステップS111で「YES」の場合)には、そのまま図6のフローチャートが終了する一方、このデータ転送が完了していない場合(ステップS111で「NO」の場合)には、ステップS112に進んで、ジョブJ(n+1)のデータ転送が実行される。つまり、プリンター1は待機中の状態にあり、第1HDD150への書き込みが可能な書込可能期間にある。そこで、ステップS112では、プリンター1は、この書込可能期間にジョブJ(n+1)の印刷データの第1HDD150への転送を完了させる。
以上に説明したように、この実施形態では、第1HDD150および第2HDD160が設けられている。そして、実行中のジョブJ(n)の印刷に用いられる印刷データは、第1HDD150に記憶されており、ジョブJ(n)の実行状況に応じて第1HDDからヘッドコントローラー200へと転送される。一方、ジョブJ(n)の印刷と並行して生成された、次のジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データは第2HDD160に記憶される。そして、第1HDD150からヘッドコントローラー200への印刷データの転送が行われていない書込可能期間に、次のジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データが第2HDD160から第1HDD150へ転送される。
つまり、この実施形態では、予め生成されて第2HDD160に記憶された印刷データが、書込可能期間に第1HDD150へ転送される。したがって、書込可能期間では、次のジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データの生成は行われず、予め生成された当該印刷データが第1HDD150へ転送されるのみであるため、書込可能期間内に比較的多くの当該印刷データを第1HDD150に記憶させることができる。その結果、次のジョブJ(n+1)の印刷用の印刷データを早期に準備して、次のジョブJ(n+1)の印刷を速やかに開始することが可能となっている。
また、この実施形態では、ジョブJ(n)の印刷が完了してから次のジョブJ(n+1)の印刷を開始する間で発生する書込可能期間(待機中の期間)において、次のジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データを第2HDD160から第1HDD150へ転送している。つまり、このようなプリンター1では、ジョブJ(n)の印刷が完了してから次のジョブJ(n+1)の印刷を開始する間は印刷が実行されないため、当該間やその前後のタイミングでは、第1HDD150からの印刷データの送信が実行されず、第1HDDへの書込可能期間(ここでは待機中の期間)が発生する。そこで、このタイミングで発生した書込可能期間を有効利用して、次のジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データを第2HDD160から第1HDD150へ転送することで、次のジョブJ(n+1)の印刷用の印刷データを早期に準備して、次の印刷の速やかな開始を図ることができる。
また、この実施形態では、一の頁Pへの画像形成が完了してから次の頁Pへの画像形成を開始する間に発生する書込可能期間(つまり給紙中の期間)において、次のジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データを第2HDD160から第1HDD150へ転送している。つまり、このようなプリンター1では、一の頁Pへの画像形成が完了してから次の頁Pへの画像形成を開始する間は印刷が実行されないため、当該間やその前後のタイミングでは、第1HDD150からの印刷データの送信が実行されず、第1HDD150への書込可能期間(ここでは給紙中の期間)が発生する。そこで、このタイミングで発生した書込可能期間を有効利用して、次のジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データを第2HDD160から第1HDD150へ転送することで、次のジョブJ(n+1)の印刷用の印刷データを早期に準備して、次のジョブJ(n+1)の印刷の速やかな開始を図ることができる。
また、この実施形態では、一の版の形成が完了してから次の版の形成を開始する間で発生する書込可能期間(頭出し中の期間)において、次のジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データを第2HDD160から第1HDD150へ転送している。このようなプリンター1では、一の版の形成が完了してから次の版の形成を開始する間は印刷が実行されないため、当該間やその前後のタイミングでは、第1HDD150からの印刷データの送信が実行されず、第1HDD150への書込可能期間が発生する。そこで、このタイミングで発生した書込可能期間(ここでは頭出し中の期間)を有効利用して、次のジョブJ(n+1)印刷に用いられる印刷データを第2HDD160から第1HDD150へ転送することで、次のジョブJ(n+1)の印刷用の印刷データを早期に準備して、次のジョブJ(n+1)の印刷の速やかな開始を図ることができる。
ところで、上述したように2台のHDDを具備することで、次のジョブJ(n+1)の印刷の速やかな開始を図ることができる。この点について具体例を示しつつ説明すると次の通りである。図8は、2台のHDDを用いた印刷データの準備動作の一例をグラフで示した図である。図8では、時刻t1〜t4をかけて実行されるジョブJ(n)の印刷と並行して、ジョブJ(n+1)の印刷データを準備する動作が例示されており、未準備の印刷データの量が縦軸にとられるとともに、時間が横軸にとられている。具体的には、図8において、実線が2台のHDDを用いた印刷データの準備の進捗を表し、一点鎖線が2台のHDDを用いた印刷データの生成の進捗を表し、二点鎖線が1台のHDDを用いた印刷データの準備の進捗を表す。ここで、印刷データの生成とは、第2HDD160に印刷データを生成する処理を指し、印刷データの準備とは、第2HDD160から第1HDD150への転送を行って第1HDD150に印刷データをスプールする処理を指す。
また、図8は次のような前提条件での動作を示したものである。つまり、プリンター1が待機中の状態にある時間(初期待機)は5[分]である。また、ジョブJ(n+1)の印刷データのサイズは80[GB]であり、画像変換に要する速度は45[MB/s]であり、第2HDD160から第1HDD150へ印刷データを転送する速度(コピー速度)は90[MB/s]である。また、給紙に要する時間(給紙時間)は0.2[分]であり、頭出しに要する時間(版切換時間)は0.1[分]であり、印刷時間は2.8[分/版]である。また、版数は5版であり、ジョブJ(n)が有するジョブサイズは22[頁]である、ジョブJ(n)の印刷に要する時間は308[分]である。
HDDが2台の場合および1台の場合のいずれにおいても、印刷データの準備は、頁の印刷が実行される度に急峻に進んでおり、当該準備の進捗を示す各線は階段形状を有する。これは、続けて実行される頁の印刷の間に発生する書込可能期間(つまり給紙の期間)に、第2HDD160から第1HDD150への印刷データの転送が実行されることを示している。また、頁の印刷中に発生する書込可能期間(つまり頭出しの期間)にも第2HDD160から第1HDD150への印刷データの転送が実行される。そのため、HDDが2台の場合および1台の場合のいずれにおいても、印刷データの準備は、頁の印刷の実行期間中も進んでおり、当該準備の進捗を示す各線は緩やかに下降している。
ここで注目すべきは、HDDが2台の場合の方が、HDDが1台の場合と比べて、印刷データの準備の進むレートが速い点である。これは、HDDが2台の場合には、第2HDD160に予め生成した印刷データを第1HDD150に転送するといった動作が実行されるからである。つまり、HDDが2台の場合には、時刻「0」から開始された、ジョブJ(n+1)の印刷データの生成が、時刻t1にジョブJ(n)の印刷が開始された後にも継続される。こうして、時刻0〜t2をかけて、ジョブJ(n+1)の印刷データが第2HDD160にスプールされる。そして、この印刷データのスプールが完了した時刻t2の後に発生する書込可能期間に、こうして予め生成されて第2HDD160に記憶された印刷データが第1HDD150へ転送される。したがって、書込可能期間では、ジョブJ(n+1)の印刷に用いられる印刷データの生成は行われず、予め生成された当該印刷データが第1HDD150へ転送されるのみであるため、書込可能期間内に比較的多くの当該印刷データを第1HDD150に記憶させることができる。その結果、HDDが2台の場合の方が、ジョブJ(n+1)印刷データの準備の進むレートが速くなる。
なお、HDDが2台の場合は、ジョブJ(n+1)の印刷データを第2HDD160にスプールしている時刻t2までの期間は、第2HDD160から第1HDD150への印刷データの転送は実行されない。そのため、初期においては、HDDが1台の場合と比べてHDDが2台の場合の方が準備すべき印刷データの残量は多い。しかしながら、上述のとおり、HDDが1台の場合と比べてHDDが2台の場合の方が印刷データの準備の進むレートが速い。そのため、HDDが2台の場合の準備すべき印刷データの残量は、時刻t3において、HDDが1台の場合のそれと等しくなるとともに、ジョブJ(n)の印刷が完了する時刻において、HDDが1台の場合のそれより少なくなっている。さらに、ジョブJ(n)の印刷が完了した後においても、HDDが2台の場合は、HDDが1台の場合と比較して速いレートで印刷データの準備が進む。その結果、HDDが2台の場合における印刷データの準備は、HDDが1台の場合における印刷データの準備よりも時間Δtだけ速く完了する。こうして、次のジョブJ(n+1)の印刷用の印刷データを早期に準備して、次のジョブJ(n+1)の印刷を速やかに開始することが可能となっている。
ところで、図8に示した例では、印刷データを生成するレート(45[MB/s])が、第1HDDに印刷データを転送するレート(90[MB/s])より低い。このように、印刷データの生成レートが低いプリンター1に対しては、この実施形態で説明したように構成することが特に好適である。つまり、従来のように書込可能期間に印刷データを生成する構成では、印刷データの生成レートが低いと、書込可能期間にHDD等の記憶部に記憶させられる印刷データの量が減少して、次の印刷の開始が遅れてしまうおそれが大きい。これに対してこの実施形態では、書込可能期間においては、次の印刷に用いられる印刷データの生成は行われず、予め生成された当該印刷データが第1HDDへ転送されるのみである。そのため、印刷データの生成レートが低い場合であっても、書込可能期間に第1HDDに記憶させられる印刷データの量の減少を抑えて、次の印刷を速やかに開始することが可能となる。
以上のように、上記実施形態では、プリンター1が本発明の「プリンター」に相当し、メディア300が本発明の「プログラム記録媒体」に相当し、プログラム400が本発明の「プログラム」に相当する。また、ヘッドコントローラー200およびプロセス装置3が協同して本発明の「印刷部」として機能し、第1HDD150が本発明の「第1記憶部」に相当し、第2HDD160が本発明の「第2記憶部」に相当し、CPU110が本発明の「データ生成部」に相当し、CPU110およびサウスブリッジ130が協同して本発明の「通信制御部」に相当し、ジョブJ(n)の印刷が本発明の「一の印刷」に相当し、ジョブJ(n+1)が本発明の「次の印刷」に相当し、頁Pが本発明の「部」に相当する。また、印刷ヘッド64が本発明の「ヘッド」に相当し、ワークステージ53が本発明の「移動機構」に相当している。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、ジョブJ(n)の印刷が本発明の「一の印刷」に相当し、ジョブJ(n+1)が本発明の「次の印刷」に相当していたが、本発明の「一の印刷」「次の印刷」の単位をどのようにとるかについては適宜変更が可能である。したがって例えば、「一の印刷」「次の印刷」の単位を頁P毎にとって、実行中の頁Pへの印刷と並行して、次の頁Pへの印刷データを準備するように構成しても良い。
また、図6に示したフローチャートに対しても適宜変更が可能である。そこで、例えば、ステップS105とステップS106の順序を入れ換えて、ジョブJ(n+1)の印刷を開始してから、ジョブJ(n+1)の印刷データの第2HDD160へのスプールを開始しても良い。
また、上記実施形態では、4枚のヘッド制御基板210a〜210dが設けられていた。しかしながら、ヘッド制御基板の枚数はこれに限られず、必要に応じて増減することができる。
また、上記実施形態では、ヘッド制御基板210a〜210dのそれぞれは、4個の印刷ヘッド64の制御を担当していた。しかしながら、ヘッド制御基板210a〜210dのそれぞれが制御を担当する印刷ヘッド64の個数は4個に限られず、必要に応じて増減することができる。
また、コンピューター100内部の具体的な構成についても、図3に示したものに限られず、種々の変更が可能である。また、図3に示した電気的構成で用いられる各通信ケーブルの種類についても種々の変更が可能である。
また、上記実施形態では、印刷データを記憶する「第1・第2記憶部」として、第1・第2HDD150、160が機能していた。しかしながら、HDD以外の記憶素子を、印刷データを記憶する「第1・第2記憶部」として用いることもできる。