JP2013136340A - タイヤおよびタイヤ成形用金型 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トレッド部踏面の少なくとも一部に、外径が5〜70μmの中実泡状突起部を多数形成したタイヤである。また、タイヤ成形用の金型であって、タイヤのトレッド部踏面を成形する踏面成形面を有し、踏面成形面の少なくとも一部が、外径が5〜70μmの破泡状凹部を多数有するタイヤ成形用金型である。
【選択図】図4
Description
例えば、特許文献1では、トレッド部に形成した各ブロックに複数のサイプを設けることにより、接地面内のエッジ成分を増大させると共に、雪噛み効果を向上させて、タイヤの氷雪路面(凍結路面や積雪路面)上での走行性能を向上させる技術が提案されている。
また、例えば、特許文献2では、キャップゴムとベースゴムとからなる、いわゆるキャップアンドベース構造のトレッドゴムを有するタイヤにおいて、キャップゴムとして発泡ゴムを用いることにより、除水性を大幅に向上させ、タイヤの氷上性能および雪上性能を向上させる技術が提案されている。
また、特許文献2に記載の、キャップゴムに発泡ゴムを用いる技術では、発泡ゴムの使用によりブロック全体の剛性が低下する場合があり、タイヤの耐摩耗性が必ずしも十分ではなかった。
更に、特許文献3に記載の、先端が尖った突起部をトレッド部の表面に設ける技術では、突起部の剛性が低いため、特に車両のノーズダイブによる前輪への荷重増大時など、タイヤに大きな荷重が負荷された際に、突起部が潰れて所望の性能が得られなくなる場合があった。即ち、先端が尖った突起部をトレッド部の表面に設ける技術では、図1(b)に示すように、路面Tとの接触により突起部2が潰れ、除水用の空隙3の体積が減少し、除水性が低下してしまう結果、所望の氷上性能および雪上性能が得られない場合があった。従って、特許文献3に記載の技術には、氷上性能および雪上性能をさらに向上させる余地があった。
更にまた、特許文献1〜3に記載の技術を採用したタイヤについて発明者らが検討を重ねた結果、それらの従来のタイヤには、原因は明らかではないが、特に新品時に十分な氷上性能および雪上性能が得られないという問題点があることも分かった。そのため、特許文献1〜3に記載の技術には、特にタイヤ新品時の氷上性能および雪上性能を改善する余地があった。
その結果、本発明者は、トレッド部の表面に所定の微細構造を形成すれば、ブロック剛性の低下や除水性の低下を抑制してタイヤの氷上性能および雪上性能をさらに向上させ得ること、並びに、タイヤ新品時であっても十分な氷上性能および雪上性能を発揮させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
本発明のタイヤは、トレッド部踏面の少なくとも一部に、外径が5〜70μmの中実泡状突起部を多数形成したことを特徴とする。このように、トレッド部踏面(走行時に路面と接地する面)の少なくとも一部に多数の中実泡状突起部を形成すれば、ブロック剛性の低下を抑制しつつ、タイヤ表面と路面との間の摩擦力を増大させて、タイヤの氷上性能および雪上性能を向上させることができる。また、中実泡状突起部の外径を5〜70μmの範囲内とすれば、除水性の低下を抑制することができる。
ここで、本発明において、「外径」とは、中実泡状突起部の平面視における最大径を指す。そして、「外径」は、例えば、トレッド部踏面をレーザー顕微鏡や電子顕微鏡で撮影して測定することができる。また、本発明において、「中実泡状突起部」とは、中実の泡状体よりなる突起部であり、「中実泡状」には、例えば、半球状、裁頭半球状、裁頭円錐状、裁頭角錐状、円柱状、角柱状などの形状が含まれる。
ここで、本発明において、「外径」とは、破泡状凹部の平面視における最大径を指す。そして、「外径」は、例えば、金型の踏面成形面をレーザー顕微鏡や電子顕微鏡で撮影して測定することができる。また、本発明において、「破泡状凹部」とは、泡状体が破泡した際に該泡状体が位置していた場所に形成される、泡状体の外形に対応した形状の凹部を指す。そして、「破泡状凹部」には、例えば、半球状、裁頭半球状、裁頭円錐状、裁頭角錐状、円柱状、角柱状の凹部が含まれる。
図2は、本発明のタイヤの一実施形態のタイヤ幅方向断面図である。
図2に示すように、本実施形態のタイヤ20は、一対のビード部4と、各ビード部4からそれぞれタイヤ径方向外方に延びる一対のサイドウォール部5と、該サイドウォール部5間に跨って延びるトレッド部6とを有している。
また、本実施形態のタイヤ20は、一対のビード部4に埋設された一対のビードコア4a間にトロイダル状に跨るカーカス7と、該カーカス7のタイヤ径方向外側に配設された2層のベルト層8a、8bからなるベルト8とを有している。更に、ベルト8のタイヤ径方向外側には、非発泡ゴムよりなるトレッドゴムが配設されている。
なお、図3では、中実泡状突起部9が半球状の突起部である場合を示しているが、本発明のタイヤでは、中実泡状突起部は、裁頭円錐状、裁頭角錐状といった、図7(a)に示すような断面台形状のものや、円柱状、角柱状といった、図7(b)に示すような断面矩形状のものや、図7(c)に示すような裁頭半球状のものなど、様々な形状のものとすることができる。
即ち、このタイヤ20では、多数の中実泡状突起部9を形成しているので、路面との接地時に、中実泡状突起部9間の空隙を利用して路面上の水膜を除去する(除水性を発揮する)ことができる。また、トレッド部踏面と路面との間の摩擦力を増大させて、タイヤの氷上性能および雪上性能を向上させることができる。
更に、このタイヤ20では、中実泡状突起部9の形状が中実の泡状(この実施形態では半球状)であるので、中実泡状突起部9に力が均等に加わりやすく、タイヤに大きな荷重が負荷された際であっても、中実泡状突起部9が潰れ難く、除水性を確保することができる。
また、このタイヤ20では、中実泡状突起部9の外径Dが5μm以上であるので、中実泡状突起部9の剛性を確保することができ、タイヤに大きな荷重が負荷された際であっても、中実泡状突起部9が潰れ難く、除水性を確保することができる。更に、このタイヤ20では、中実泡状突起部9の外径Dが70μm以下であるので、多数の中実泡状突起部9を形成した場合であっても、中実泡状突起部9間の空隙の体積を確保して、除水性を高めることができる。
なお、このタイヤ20では、所定の外径Dを有する微小な中実泡状突起部9の形成により除水性の低下の抑制および氷上性能および雪上性能の向上を達成しているので、過剰な数のサイプを形成したり、発泡ゴムを使用したりする必要がない。
また、このタイヤ20では、原因は明らかではないが、新品時(未使用状態)であっても十分な氷上性能および雪上性能を発揮することができる。
なお、本発明のタイヤでは、トレッド部踏面に、外径Dが5μm未満または70μm超の中実泡状突起部が形成されていても良いが、その場合、外径Dが5μm未満または70μm超の中実泡状突起部の個数は、中実泡状突起部の全個数の10%以下であることが好ましい。外径Dが5μm未満または70μm超の中実泡状突起部が全中実泡状突起部の10%以下であれば、中実泡状突起部の形成により得られる効果を十分に大きくすることができるからである。
なお、「外径Dが5μm未満または70μm超の中実泡状突起部の個数」は、トレッド部踏面を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。
なお、中実泡状突起部9の高さは、中実泡状突起部9の先端(タイヤ径方向外端)を通って延びるタイヤ径方向線に直交する第1仮想平面と、中実泡状突起部9の外輪郭線に接し且つ前記タイヤ径方向線に直交する仮想平面のうち前記第1仮想平面に最も近い第2仮想平面との間のタイヤ径方向に沿う距離をいうものとする。
なお、突起部9の高さは、SEM、マイクロスコープにより測定することができる。
また、突起部の外径Dが互いに隣接する突起部間の最短距離Lの0倍超であるので、トレッド部踏面と路面との間の摩擦力を十分に増大させることができると共に、突起部の剛性を確保して除水性を高めることができる。更に、突起部の外径Dが突起部間の最短距離Lの100倍以下であるので、突起部間の空隙の体積を確保して、除水性を高めることができる。
ここで、本発明のタイヤにあっては、突起部の外径Dが、突起部間の最短距離Lの30〜100倍であることがさらに好ましい。突起部の外径Dを最短距離Lの30倍以上とすれば、トレッド部踏面と路面との間の摩擦力をさらに十分に増大させることができると共に、突起部の剛性を確保して除水性を高めることができるからである。また、突起部の外径Dを最短距離Lの100倍以下とすれば、突起部間の空隙の体積をさらに確保して、除水性を高めることができるからである。
ここで、本発明において、「突起部間の距離」とは、図3(a),(b)に示すように、互いに隣接する突起部間の最短距離を指す。そして、「突起部間の距離」は、例えば、トレッド部踏面を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。
このように、トレッド部踏面の少なくとも一部に多数の突起部を均一に形成すれば、あらゆる方向で見た場合においても、ブロック剛性の低下を抑制しつつ、タイヤ表面と路面との間の摩擦力を増大させ、さらにタイヤの氷上性能および雪上性能を向上させることができる。また、突起部の外径を70μm以下とすれば、徐水性の低下を抑制することができる。
即ち、多数の突起部を均一に形成することにより、あらゆる方向に対して、上述した除水性や摩擦力の向上を図ることができる。更に、突起部の外径を70μm以下とすることにより、上述したように、突起部間の空隙の体積を確保して、徐水性を高めることができる。
なお、「均一」とは、トレッド部踏面をどの断面で見ても突起部の個数密度が同程度であることを指す。具体的には、「均一」とは、個数密度が最大となる断面で見た場合の突起部の個数密度が、個数密度が最小となる断面で見た場合の突起部の個数密度の3倍以下であることを指す。
このように、トレッド部踏面の少なくとも一部に、多数の突起部を形成すれば、ブロック剛性の低下を抑制しつつ、タイヤ表面と路面との間の摩擦力を増大させて、タイヤの氷上性能および雪上性能を向上させることができる。また、このタイヤでは、突起部が、タイヤ径方向外側に凸な形状であり、トレッド部踏面よりタイヤ径方向内側に曲率中心を有し、さらに突起部の曲率半径が1μm以上であるので、突起部の形状が剛性の高い形状となる。一方で、突起部の曲率半径を70μm以下としているので、突起部間の空隙の体積を確保して、除水性の低下を抑制することができる。
なお、突起部9の曲率半径は、1μm以上50μm以下であることが好ましい。突起部9の曲率半径を1μm以上とすれば、突起部9の剛性を大きくして、十分な除水性を確保することができるからである。また、突起部9の曲率半径を50μm以下とすれば、多数の突起部9を形成した場合であっても、突起部9間の空隙の体積を十分に確保して、除水性を高めることができるからである。
ここで、本発明において、「曲率半径」とは、タイヤ幅方向断面視における突起部の最大径の0.5倍をいうものとする。ただし、当該曲率半径が最大となる断面で見るものとする。そして、「曲率半径」は、例えば、突起部の断面を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。なお、「タイヤ径方向に凸な形状」には、例えば、半球状、裁頭半球状などの形状が含まれる。
なお、本発明のタイヤでは、トレッド部踏面に、該トレッド部踏面よりタイヤ径方向内側に曲率中心を有し、曲率半径が1μm未満または70μm超の突起部が形成されていても良いが、その場合、トレッド部踏面よりタイヤ径方向内側に曲率中心を有し、曲率半径が1μm未満または70μm超の突起部の個数は、突起部の全個数の10%以下であることが好ましい。トレッド部踏面よりタイヤ径方向内側に曲率中心を有し、曲率半径が1μm未満または70μm超の突起部が全突起部の10%以下であれば、突起部の形成により得られる効果を十分に大きくすることができるからである。
因みに、「曲率半径が1μm未満または70μm超の突起部の個数」は、トレッド部を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。
なぜなら、Rzが1.0μm以上であることにより、除水用の空隙を確保することができ、一方で、Rzが50μm以下であることにより、路面との接触面積を確保することができるからである。これらにより、タイヤの氷上性能および雪上性能をさらに向上させることができる。
ここで、「十点平均粗さRz」とは、JIS B0601(1994)の規定に準拠して測定されるものであり、基準長さを0.8mm、評価長さを4mmとして求めたものである。
なぜなら、平均間隔Sが5.0μm以上であることにより、除水用の空隙を確保することができ、一方で、平均間隔Sが100μm以下であることにより、路面との接触面積を確保することができるからである。これらにより、タイヤの氷上性能および雪上性能をさらに向上させることができる。
ここで、「局部山頂の平均間隔」は、JIS B0601(1994)に準拠して計測されるものであり、基準長さを0.8mm、評価長さを4mmとして求めるものとする。
このようにすれば、突起部を密に配設することができ、これにより接地面積を増大させて、タイヤの氷上性能および雪上性能を向上させることができるからである。
なお、外径5μm未満又は70μm超の突起部が含まれていてもよいが、全体の個数の10%以下であることが好ましい。
図5は、本発明のタイヤを成形するのに用いるタイヤ成形用金型の一部を示す概略部分斜視図である。
図5に示すように、この金型10は、タイヤを加硫成形する成形面11を有する。
この成形面11は、トレッド部踏面を形成する踏面成形面11aを有し、図示例では、サイドウォール部の外表面を成形するサイドウォール成形面11bおよびビード部の外表面を成形するビード部成形面11cも有する。
この成形面11は、特には限定しないが、例えばアルミニウムで形成することができる。
本発明のタイヤの、上述した表面性状を有するトレッド部踏面は、当該表面性状に対応した表面性状を有する踏面成形面11aを備えるタイヤ成形用金型10によって形成することができる。具体的には、図6(a)に踏面成形面11aの拡大平面図を示し、図6(b)に金型10の踏面成形面11a側の幅方向に沿う拡大断面図を示すように、本実施形態にかかるタイヤ成形用金型10は、金型10の踏面成形面11aの全体に、外径dが5〜70μmの微小な破泡状凹部12(以下、単に「凹部」と称することがある。)を多数有している。
なお、図6では、破泡状凹部12が半球状の凹部である場合を示しているが、本発明の金型では、破泡状凹部12は、裁頭半球状、裁頭円錐状、裁頭角錐状、円柱状または角柱状の凹部であっても良い。
すなわち、この金型10を用いたタイヤの加硫工程では、金型10の踏面成形面11aの半球状の凹部形状が、タイヤのトレッド部踏面の突起部形状として転写される。そして、製造されたタイヤのトレッド部踏面には、半球状で外径Dが5〜70μmの中実泡状突起部9が形成される。従って、氷上性能および雪上性能に優れたタイヤを成形することができる。
なお、本発明の金型では、踏面成形面に、外径dが5μm未満または70μm超の破泡状凹部が形成されていても良いが、その場合、外径dが5μm未満または70μm超の破泡状凹部の個数は、破泡状凹部の全個数の10%以下であることが好ましい。外径dが5μm未満または70μm超の破泡状凹部が全破泡状凹部の10%以下であれば、タイヤのトレッド部踏面に十分な数の中実泡状突起部を形成することができるからである。
因みに、「外径dが5μm未満または70μm超の破泡状凹部の個数」は、踏面成形面を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。
以下、金型10の踏面成形面11aを形成する方法について説明する。
ここで、この投射材投射工程において、上記踏面成形面11a(全面または一部)は、真球度15μm以下の球形の投射材を投射して衝突させることにより形成することが好ましい。
なぜなら、投射材の真球度を15μm以下とすることにより、金型の踏面成形面に、所望の性状の凹部を多数形成することができるからであり、この金型を用いて成形するタイヤのトレッド部踏面を所望の表面形状とすることができるからである。
投射材の真球度を10μm以下とすれば、金型の踏面成形面に、所望の性状の凹部を容易に多数形成することができるので、その金型を用いて形成したタイヤのトレッド部踏面に所望の形状の突起部を多数形成して、氷上性能および雪上性能にさらに優れたタイヤを成形することができるからである。
また、投射材の真球度は、5μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、金型の踏面成形面に、所望の性状の凹部をより容易に形成することができるからである。
なぜなら、投射材の平均粒径を10μm以上とすることにより、踏面成形面に所望の凹部形状を有する金型がより得やすくなり、また、投射材投射工程において、高圧下での投射の際に、投射材が周囲に飛散するのを抑制することができるからである。一方、投射材の平均粒径を1mm以下とすることにより、金型表面を早期に摩耗させるのを抑制することができるからである。
同様の理由により、投射材の平均粒径は、20μm〜0.7mmとするのがより好ましく、30μm〜0.5mmとするのがさらに好ましい。
ここで、「平均粒径」とは、SEMにより投射材の写真を撮影し、投射材を任意に10個取り出し、それぞれの投射材に接する内接円の直径と外接円の直径との平均を求め、これらを当該10個の投射材で平均した値をいうものとする。
なぜなら、投射材のモース硬度を2以上とすることにより、踏面成形面に所望の凹部形状を有する金型がより得やすくなるからである。一方、投射材のモース硬度を10以下とすることにより、金型が早期に傷むのを軽減することができるからである。
同様の理由により、投射材のモース硬度は、3.0〜9.0とするのがより好ましく、5.0〜9.0とするのがさらに好ましい。
また、タイヤ成形用金型の踏面成形面のモース硬度は、2.0〜5.0であることが好ましく、タイヤ成形用金型の踏面成形面と、投射材とのモース硬度の差は、3.0〜5.0であることが好ましい。
なぜなら、投射材の比重を0.5以上とすることにより、投射工程における投射材の飛散を抑制して作業性を向上させることができるからである。一方、投射材の比重を20以下とすることにより、投射材を加速するためのエネルギーを低減することができ、また、金型の早期の摩耗を抑制することができるからである。
同様の理由により、投射材の比重は、0.8〜18とするのがより好ましく、1.2〜15とするのがさらに好ましい。
なぜなら、投射材を100kPa以上で、30秒以上投射することにより、踏面成形面を満遍なく、上記した所望の形状にすることができ、一方で、投射材を1000kPa以下で、10分以下投射することにより、踏面成形面を損傷させるのを抑制することができるからである。
なお、投射材の比重や投射圧力を調整して、投射材の投射速度を0.3〜10(m/s)とするのが好ましく、0.5〜7(m/s)とするのがより好ましい。
このとき、投射材の投射用のノズルと、タイヤ成形用金型との距離を、50〜200(mm)とすることが好ましい。
ここで、上記投射材の投射時間とは、金型1個当たりの投射時間をいい、例えば金型を9個用いてタイヤを成形する場合には、1個のタイヤを成形する9個の金型の踏面成形面に、投射材を合計270秒間〜90分間投射することが好ましい。
なお、金型1個の踏面成形面への投射材の投射は、金型の形状等を考慮しながら、作業者が投射する位置をずらしつつ行うことができる。このようにすれば、投射材をより均一に投射することができる。
ここで、凹部12の深さは、凹部12の最深部(径方向外端)を通って延びる径方向線に直交する第3仮想平面と、凹部12の外輪郭線に接し且つ前記径方向線に直交する仮想平面のうち前記第3仮想平面に最も近い第4仮想平面との間の径方向に沿う距離をいうものとする。因みに、「径方向」とは、円環状の踏面成形面の径方向、即ち、金型10を用いて成形されるタイヤのタイヤ径方向に対応する方向を指す。
なお、凹部12の深さは、SEM、マイクロスコープにより測定することができる。
このように、踏面成形面の少なくとも一部に複数の凹部を形成し、更に、該凹部の外径dを、5〜70μmの範囲内、且つ、凹部間の距離lの0倍超100倍以下とすれば、トレッド部踏面の少なくとも一部に所定の外径の突起部を多数有する、氷上性能および雪上性能に優れるタイヤを成形することができるからである。即ち、この金型を用いたタイヤの加硫工程では、金型の踏面成形面の凹部形状が、タイヤのトレッド部踏面の突起部形状として転写される。そして、製造されたタイヤのトレッド部踏面には、外径Dが、5〜70μm、且つ、互いに隣接する突起部間の距離Lの0倍超100倍以下である突起部が形成される。
なお、本発明の金型では、踏面成形面に、外径dが5μm未満または70μm超の凹部が形成されていても良いが、その場合、外径dが5μm未満または70μm超の凹部の個数は、凹部の全個数の10%以下であることが好ましい。外径dが5μm未満または70μm超の凹部が全凹部の10%以下であれば、タイヤのトレッド部踏面に十分な数の突起部を形成することができるからである。因みに、本発明のタイヤでは、踏面成形面に、外径dが5μm未満または70μm超の凹部が形成されている場合、全ての凹部において、外径dが、凹部間の最短距離lの0倍超100倍以下であることが好ましい。全ての凹部において外径dを最短距離lの0倍超100倍以下とすれば、タイヤのトレッド部踏面に突起部を適切な間隔で形成することができるからである。
なお、「外径dが5μm未満または70μm超の破泡状凹部の個数」は、踏面成形面を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。
ここで、この金型では、凹部の外径dが10〜20μmであることが好ましい。凹部の外径dを10〜20μmとすれば、タイヤのトレッド部踏面に外径Dが10〜20μmの突起部を形成することができるからである。なお、凹部の外径dは、投射材の粒径などを調整することにより、制御することができる。具体的には、投射材の粒径を大きくすると、外径dを大きくすることができる。
更に、この金型では、凹部の外径dが、凹部間の最短距離lの30〜100倍であることが好ましい。凹部の外径dを最短距離lの30〜100倍とすれば、タイヤのトレッド部踏面に、外径Dが突起部間の最短距離Lの30〜100倍の突起部を形成することができるからである。なお、凹部間の最短距離lは投射材の粒径などを調整することにより、制御することができる。具体的には、投射材の粒径を大きくすると、距離lを小さくすることができる。
ここで、本発明において、「外径」とは、平面視における凹部の最大径を指す。また、本発明において、「凹部間の距離」とは、互いに隣接する凹部間の最短距離を指す。そして、「外径」および「凹部間の距離」は、例えば、踏面成形面を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。
このように、踏面成形面の少なくとも一部に外径が70μm以下の凹部を均一に多数形成すれば、トレッド部踏面の少なくとも一部に外径が70μm以下の突起部を均一に多数有する、氷上性能および雪上性能に優れるタイヤを成形することができるからである。
ここで、金型の踏面成形面は、踏面成形面の少なくとも一部に、外径が20μm以下の凹部を多数有することが好ましい。このようにすれば、形成したタイヤのトレッド部踏面の少なくとも一部に、外径が20μm以下の突起部を均一に多数成形することができ、氷上性能および雪上性能に優れたタイヤを成形することができるからである。
ここで、本発明において、「均一」とは、踏面成形面をどの断面で見ても凹部の個数密度が同程度であることを指す。具体的には、「均一」とは、凹部の個数密度が最大となる断面で見た場合の個数密度が、個数密度が最小となる断面で見た場合の個数密度の3倍以下であることをいうものとする。
凹部12の外径dは、投射材の粒径を調整することにより、制御することができる。具体的には、投射材の粒径を大きくすると、外径dを大きくすることができる。
また、踏面成形面に凹部を均一に形成するのは、投射材の粒径を小さくすることにより達成することができる。
このように、踏面成形面の少なくとも一部に、金型の外部に曲率中心を有し、曲率半径が、1μm以上70μm以下の凹部を多数形成することにより、トレッド部踏面の少なくとも一部に、トレッド部踏面よりタイヤ径方向内側に曲率中心を有し、曲率半径が、1μm以上70μm以下の突起部を多数有する、氷上性能および雪上性能に優れるタイヤを成形することができるからである。
なお、金型の踏面成形面は、踏面成形面の少なくとも一部に、金型の外部に曲率中心を有し、曲率半径が1μm以上50μm以下の凹部を多数形成することがさらに好ましい。形成したタイヤのトレッド部踏面の少なくとも一部が、トレッド部踏面よりタイヤ径方向内側に曲率中心を有し、曲率半径が、1μm以上50μm以下である、タイヤ径方向外側に凸な形状の突起部を多数有するようにタイヤを成形することができ、タイヤの氷上性能および雪上性能にさらに優れたタイヤを成形することができるからである。
ここで、本発明において、「曲率半径」とは、タイヤ幅方向断面視における凹部の最大径の0.5倍をいうものとする。ただし、当該曲率半径が最大となる断面で見るものとする。そして、「曲率半径」は、例えば、凹部の断面を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。なお、ここでいう「凹部」には、例えば、半球状、裁頭半球状などの形状が含まれる。
なお、凹部12の曲率半径は、投射材の粒径、投射角度などを調整することにより、制御することができる。具体的には、投射材の粒径を大きくすると、曲率半径を大きくすることができる。
因みに、本発明の金型では、該金型の外部に曲率中心を有し、曲率半径が1μm未満または70μm超の凹部が形成されていても良いが、その場合、金型の外部に曲率中心を有し、曲率半径が1μm未満または70μm超の凹部の個数は、凹部の全個数の10%以下であることが好ましい。金型の外部に曲率中心を有し、曲率半径が1μm未満または70μm超の凹部が全凹部の10%以下であれば、タイヤのトレッド部踏面に十分な数の突起部を形成することができるからである。
因みに、「曲率半径が1μm未満または70μm超の凹部の個数」は、踏面成形面を電子顕微鏡で撮影して測定することができる。
なお、投射材投射工程において用いる投射材の平均粒径を50〜400μmとすることにより、上記の範囲の十点平均粗さRzを有する踏面成形面を備えるタイヤ成形用金型を得ることができる。
なお、投射材投射工程において用いる投射材の平均粒径を50〜400μmとすることにより、上記の範囲の平均間隔Sを有する踏面成形面を備えるタイヤ成形用金型を得ることができる。
突起部の外径の分布が、外径5μm以上30μm未満の突起部が50〜60%、外径30μm以上50μm未満の突起部が15〜20%、外径50μm以上70μm以下の突起部が10〜20%となるようなタイヤを成形することができるからである。
なお、投射材投射工程において用いる投射材の粒径の分布を、個数基準で、50μm以上200μm未満の投射材を10〜20%、200μm以上300μm未満の投射材を50〜60%、300μm以上400μm以下の投射材を10〜20%とすることにより、上記の範囲の外径分布の凹部を有する踏面成形面を備えるタイヤ成形用金型を得ることができる。なお、粒径が、50μm未満、400μm超の投射材を含んでいても良い。
アルミニウム製のタイヤ成形用金型の踏面成形面に対し、投射条件(投射圧力、投射速度など)を変更して投射材(セラミック系)を投射し、表1に示す表面性状の踏面成形面を有するタイヤ成形用金型1〜5を製造した。なお、作製した金型の踏面成形面の表面性状は、SEMおよびマイクロスコープを用いて測定した。
作製したタイヤ成形用金型1〜5をそれぞれ用いて、常法に従いタイヤサイズ205/55R16のタイヤ1〜5をそれぞれ製造した。そして、作製したタイヤのトレッド部踏面の表面性状をSEMおよびマイクロスコープを用いて測定した。結果を表2に示す。
また、作製した各タイヤの氷上性能および雪上性能を下記の評価方法で評価した。結果を表2に示す。
作製直後のタイヤを適用リムに組み込み、JATMAに規定の正規内圧を充填して車両に装着した。そして、前輪1輪当たりの荷重を4.3kNとして、凍結路において、速度30km/hの条件下で氷上摩擦係数を測定した。タイヤ1の氷上摩擦係数を100として各タイヤの氷上摩擦係数を指数評価した。表2に結果を示す。表2中、数値が大きいほど氷上摩擦係数が大きく、氷上性能が優れていることを示す。
<雪上性能>
作製直後のタイヤを適用リムに組み込み、JATMAに規定の正規内圧を充填して車両に装着した。そして、前輪1輪当たりの荷重を4.3kNとして、積雪路において、速度30km/hの条件下で雪上摩擦係数を測定した。タイヤ1の雪上摩擦係数を100として各タイヤの雪上摩擦係数を指数評価した。表2に結果を示す。表2中、数値が大きいほど雪上摩擦係数が大きく、雪上性能が優れていることを示す。
2 突起部
3 空隙
4 ビード部
4a ビードコア
5 サイドウォール部
6 トレッド部
6a 踏面
7 カーカス
8 ベルト
8a、8b ベルト層
9 突起部
10 金型
11 成形面
11a 踏面成形面
11b サイドウォール部成形面
11c ビード部成形面
12 凹部
20 タイヤ
T 路面
Claims (2)
- トレッド部踏面の少なくとも一部に、外径が5〜70μmの中実泡状突起部を多数形成したことを特徴とする、タイヤ。
- タイヤ成形用の金型であって、
タイヤのトレッド部踏面を成形する踏面成形面を有し、
前記踏面成形面の少なくとも一部が、外径が5〜70μmの破泡状凹部を多数有することを特徴とする、タイヤ成形用金型。
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