JP2013116589A - 透明遮音板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】強い衝撃を受けて破損した際にも破片が飛散しにくい耐衝撃性に加え、優れた透明性や耐候性を有する透明遮音板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の透明遮音板は、アクリル樹脂層(A)と、軟質アクリル樹脂層と、アクリル樹脂層(B)とがこの順に積層され、前記軟質アクリル樹脂層が、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび多官能単量体を重合して得られる共重合体と、有機多塩基酸エステルとを少なくとも含有し、かつ(I)および(II)の条件を満足する。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば高速道路、幹線道路などに設置される透明な遮音板に関する。
高速道路や幹線道路等に設置される遮音板には、通常、ポリカーボネート樹脂板が使用されている。近時、前記遮音板には、長期間屋外で使用しても劣化しにくい耐候性や、強い衝撃を受けて破損した際に破片が飛散しにくい耐衝撃性に加え、透明性も要求されている。
しかし、ポリカーボネート樹脂板からなる遮音板は、耐候性が十分ではない。
特許文献1には、破損時の破片飛散を防止するため、透明樹脂板内に単繊維プラスティックフィラメントを埋設したものが記載されている。しかし、このような樹脂板からなる遮音板は、単繊維プラスティックフィラメントが埋設されているため、透明性が十分ではない。
特表2002−526802号公報
本発明の課題は、強い衝撃を受けて破損した際にも破片が飛散しにくい耐衝撃性に加え、優れた透明性や耐候性を有する透明遮音板およびその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)アクリル樹脂層(A)と、軟質アクリル樹脂層と、アクリル樹脂層(B)とが、この順に積層された透明遮音板であって、
前記軟質アクリル樹脂層が、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび多官能単量体を重合して得られる共重合体と、有機多塩基酸エステルとを少なくとも含有し、かつ以下の(I)および(II)の条件を満足することを特徴とする透明遮音板:
(I)動的粘弾性測定により、周波数1Hzおよび昇温速度2℃/分の条件で測定されたガラス転移温度が−20〜20℃、
(II)JIS K6251に準拠して、ダンベル状3号形試験片にて引張速度500mm/分の条件で測定された切断時伸びが300〜1500%。
(2)前記有機多塩基酸エステルが、アセチルクエン酸トリブチルである、(1)に記載の透明遮音板。
(3)上記(1)または(2)に記載の透明遮音板の製造方法であって、
内部の一方の面に前記アクリル樹脂層(A)が設置され、このアクリル樹脂層(A)が設置された面と対向する面に前記アクリル樹脂層(B)が設置されたセル内に、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを含有する単官能単量体を重合して得られる共重合体、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルを含むシロップと、多官能単量体と、有機多塩基酸エステルとを含む重合性組成物を注液した後、重合反応を行う工程、
を含むことを特徴とする透明遮音板の製造方法。
(4)前記重合性組成物を濾過して得られた濾液を注液し、次いで重合反応を行う、(3)に記載の透明遮音板の製造方法。
(5)前記濾過が、10メッシュ以上のフィルターを用いて行われる、(4)に記載の製造方法。
(6)前記シロップにおける共重合体の含有量が、シロップ総量に対して0.1〜40質量%である、(3)〜(5)のいずれかの項に記載の透明遮音板の製造方法。
本発明の透明遮音板は、強い衝撃を受けて破損した際にも破片が飛散しにくい耐衝撃性に加え、優れた透明性や耐候性を有するという効果を奏する。
本発明の透明遮音板は、アクリル樹脂層(A)と、軟質アクリル樹脂層と、アクリル樹脂層(B)とが、この順に積層された積層構造を有する。以下、本発明の透明遮音板について、詳細に説明する。
(アクリル樹脂層)
本発明において、アクリル樹脂層を構成するアクリル樹脂は特に限定されず、例えば、アクリル酸エステル系樹脂やメタクリル酸エステル系樹脂が挙げられる。これらの中でも、長時間屋外で使用しても劣化しにくいという耐候性や、透明性および視認性の観点から、メタクリル酸エステル系樹脂が好ましく、メタクリル酸エステル系樹脂の中でも、メタクリル酸メチル系樹脂が好ましい。
なお、本発明において、アクリル樹脂層(A)および(B)は、それぞれ同一のアクリル樹脂で構成されていてもよく、異なるアクリル樹脂で構成されていてもよい。
メタクリル酸メチル系樹脂は、50質量%以上のメタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られる重合体であり、メタクリル酸メチルの単独重合体であってもよいし、50質量%以上のメタクリル酸メチルを含み、かつ50質量%以下のメタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体を含む単量体を共重合して得られる共重合体であってもよい。共重合体である場合には、メタクリル酸メチルの割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
上記他の単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数2〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル;メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、アクリルアミド、スチレン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸アダマンチル、メタクリル酸アダマンチル、N−t−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド、N−ジメチルフェニルマレイミド、α−メチルスチレンなどが挙げられる。これらの他の単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂は、アクリル樹脂を構成する単量体を、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、注型重合法(キャスト重合法)などの重合方法に供することによって得られる。重合反応は、光照射や重合開始剤を用いて行われ、好ましくは重合開始剤を用いて行われる。また、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよく、各単量体の添加や重合温度などの条件を、必要に応じて多段階としてもよい。
重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)などのアゾ系開始剤;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどの過酸化物系開始剤;有機過酸化物とアミン類とを組み合わせたレドックス系の重合開始剤などが挙げられる。重合開始剤の添加量は、アクリル樹脂を構成する単量体の100質量部に対して、通常0.01〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。
アクリル樹脂層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その製造時に一般的に用いられる各種の添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、例えば、耐候性向上のための紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物など)、変色や黄変防止のための酸化防止剤(フェノール系化合物、リン系化合物など)、分子量制御のための連鎖移動剤(メチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンのような直鎖または分岐したアルキルメルカプタン化合物など)、耐衝撃性付与のためのゴム状重合体、難燃性付与のための難燃剤、架橋剤や着色剤などが挙げられる。これらの添加剤は、例えば、市販されているものが用いられる。
ゴム状重合体としては、アクリル樹脂のゴム状重合体以外の部分と屈折率が略同等のものが用いられ、アクリルゴム粒子が特に好ましい。アクリルゴム粒子は、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体からなる層(弾性重合体層)を有するものであり、弾性重合体のみからなる単層の粒子であってもよいし、弾性重合体層と硬質重合体からなる層(硬質重合体層)とによって構成される多層構造(例えば、2〜4層構造)の粒子であってもよい。アクリルゴム粒子における弾性重合体部は、好ましくは40〜800nmの平均粒子径を有する。
ゴム状重合体としては、例えば、特開2011−137312号公報や特開2011−140774号公報などに記載のアクリルゴム粒子が挙げられる。ゴム状重合体は、アクリル樹脂を構成する単量体およびゴム状重合体の総量に対して、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは5〜25質量%の割合で含有される。ゴム状重合体は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、難燃性が付与できる点で難燃剤を用いることが好ましい。難燃剤としては、合成樹脂用として公知のもののうち、アクリル樹脂層の透明性を阻害しないものであればよく、例えば、リン酸エステル、シリコーン、ハロゲン系化合物、無機化合物などが挙げられる。リン酸エステルを透明遮音板の両面のうち少なくとも1層のアクリル樹脂層に含有することが好ましい。リン酸エステルは、特にアクリル樹脂との相溶性に優れるので、アクリル樹脂層の透明性を維持しつつ、難燃性を付与することが出来る。また、難燃剤によっては、アクリル樹脂層が硬化する恐れがあるが、リン酸エステルを採用することで、アクリル樹脂の硬化も抑制できる。
リン酸エステルとしては、例えば、ハロゲン化リン酸エステル、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、芳香族ポリホスフェートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、ハロゲン化リン酸エステルが好ましく、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)オクチルホスフェートなどのハロゲン原子を含有するリン酸エステル;ハロゲン化アルキルポリホスフェートなどのハロゲン原子を含有するポリリン酸エステル(含ハロゲン縮合リン酸エステル)などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、特にハロゲン原子が塩素である塩素化アルキルポリホスフェートが好ましい。
これらのハロゲン化リン酸エステルとしては、例えば、「TMCPP」、「CRP」、「CR−504L」、「CR−570」、「DAIGUARD−540」(いずれも大八化学工業(株)製)などが市販されている。
リン酸エステルは、アクリル樹脂を構成する単量体およびリン酸エステルの総量に対して、0.1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の割合で含有される。リン酸エステルの含有量が少なすぎると、十分な難燃性が得られない場合がある。また、リン酸エステルの含有量が多すぎると、耐熱性が低下する場合がある。
また、難燃剤を用いる代わりに、アクリル樹脂の合成の際に、難燃性の単量体を使用してもよい。このような難燃性の単量体としては、例えば、ハロゲン化フェニルモノ(メタ)アクリレート、ハロゲン化スチレンなどが挙げられる。難燃性の単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤としては、分子中に複数の重合性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。架橋剤を用いることによって、アクリル樹脂層の表面硬度、耐溶剤性および難燃性が向上する。架橋剤は、アクリル樹脂を構成する単量体100質量部に対して、好ましくは20質量部以下の割合で用いられる。なお、アクリル樹脂における架橋の度合いは、例えば、クロロホルムに対する膨潤度で示すことができる。架橋剤としては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
膨潤度は、試料をクロロホルムに所定時間浸漬し、吸収したクロロホルムと浸漬前の試料との体積比(吸収したクロロホルム/浸漬前の試料)で示される。好ましくは、膨潤度は2〜8である。
(軟質アクリル樹脂層)
本発明において、軟質アクリル樹脂層は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび多官能単量体を重合して得られる共重合体(以下、軟質重合体と記載する場合がある)と、有機多塩基酸エステルとを少なくとも含有し、かつ以下の(I)および(II)の条件を満足するものである。
(I)動的粘弾性測定により、周波数1Hzおよび昇温速度2℃/分の条件で測定されたガラス転移温度が−20〜20℃。
(II)JIS K6251に準拠して、ダンベル状3号形試験片にて引張速度500mm/分の条件で測定された切断時伸びが300〜1500%。
軟質重合体における単量体組成は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび多官能単量体の総量に対して、アクリル酸エステル30〜85質量%、メタクリル酸エステル10〜69.99質量%、および多官能単量体0.01〜5質量%であり、好ましくはアクリル酸エステル50〜80質量%、メタクリル酸エステル15〜49.99質量%、および多官能単量体0.01〜5質量%であり、さらに好ましくはアクリル酸エステル50〜70質量%、メタクリル酸エステル25〜49.99質量%、および多官能単量体0.01〜5質量%であるのがよい。軟質重合体における単量体組成を、上記範囲内とすることにより、得られる透明遮音板の耐衝撃性をより高めることができる。
アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルとしては、上述のアクリル樹脂層で説明したアクリル酸アルキルやメタクリル酸アルキルが挙げられる。
多官能単量体は、分子内にラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する化合物であり、架橋剤として機能する。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルなどの不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの多塩基酸のポリアルケニルエステル;ジビニルベンゼンなどの芳香族ポリアルケニル化合物などが挙げられる。これらの多官能単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
さらに、軟質重合体を構成する単量体成分として、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル以外の単官能単量体が、必要に応じて含まれていてもよい。単官能単量体としては、例えば、分子内にアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルと共重合可能な二重結合を1個有する化合物が挙げられる。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアルケニルシアン化合物;無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどが挙げられる。これらの単官能単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単官能単量体を用いる場合、軟質重合体を構成する単量体成分総量に対して、50質量%未満であることが好ましい。
軟質重合体は、例えば、上述のアクリル樹脂と同様の重合方法によって得られる。
(有機多塩基酸エステル)
有機多塩基酸エステルとしては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの芳香族多塩基酸エステル;ジオクチルアジペート、アセチルクエン酸トリブチルなどの脂肪族多塩基酸エステルなどが挙げられ、アセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
有機多塩基酸エステルの含有量は、軟質アクリル樹脂層の総量に対して、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは4〜12質量%である。有機多塩基酸エステルが含まれない場合、得られる透明遮音板の耐衝撃性が不十分となる傾向にある。
軟質アクリル樹脂層には、上述のアクリル樹脂層に含まれる添加剤が含まれていてもよい。
軟質アクリル樹脂層に任意に含まれる紫外線吸収剤としては、例えば、チバガイギ社製の「チヌビンP」、住化ケムテックス(株)製の「スミソーブ340」、「スミソーブ200」などのベンゾトリアゾール系化合物;シプロ化成(株)製の「シーソーブ101S」、住化ケムテックス(株)製の「スミソーブ110」などのベンゾフェノン系化合物;チバガイギ社製の「チヌビン770」、三共(株)製の「サノールLS2626」などのヒンダートアミン系化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤の添加量は、通常、軟質アクリル樹脂層の総量に対して0.5質量%以下、好ましくは0.0001〜0.25質量%である。
軟質アクリル樹脂層に任意に含まれる酸化防止剤としては、例えば、いずれも住化ケムテックス(株)製の「スミライザーBP101」、「スミライザーGM」などのフェノール系化合物;いずれもアデカ社製の「マークPEP−8」、「マークPEP−24」などのリン系化合物などが挙げられる。
軟質アクリル樹脂層に任意に含まれる着色剤としては、例えば、いずれも住化ケムテックス(株)製の「スミプラストGreenG」、「スミプラストBlueOR」などのアントラキノン系染料;住化ケムテックス(株)製の「スミプラストOrangeHRP」などのペリノン系染料などが挙げられる。
軟質重合体および有機多塩基酸エステルの合計含有量は、軟質アクリル樹脂層の総量に対して、80質量%以上であるのが好ましく、85〜99.999質量%であるのがより好ましい。
本発明において、軟質アクリル樹脂層は、上記条件(I)および(II)を満足する必要がある。
条件(I)は、動的粘弾性測定により、周波数1Hzおよび昇温速度2℃/分の条件で測定されたガラス転移温度が−20〜20℃である。動的粘弾性測定装置では、弾性に相当する動的貯蔵弾性率(E’)、粘性に相当する動的損失弾性率(E’’)、およびE’’とE’との比(E’’/E’)であって振動吸収性を反映する損失正接(tanδ)の温度依存性や周波数依存性などが測定できる。本明細書において、ガラス転移温度とは、周波数1Hzおよび昇温速度2℃/分の条件で測定した際の損失正接(tanδ)が極大値を示す温度(主分散のピーク)のことをいう。
動的粘弾性測定装置としては、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の粘弾性スペクトロメータ(EXSTAR DMS6100)、(株)ユービーエム社製のRheogel E4000などが挙げられる。
ガラス転移温度が−20℃未満の場合、常温での耐衝撃性能が低下する傾向にある。一方、ガラス転移温度が20℃を超える場合、低温(例えば、10℃以下)における耐衝撃性能が低下する傾向にある。
ガラス転移温度は、好ましくは7〜17℃である。また、このガラス転移温度は、軟質アクリル樹脂層に含まれるアクリル酸エステル単量体成分量の増加、有機多塩基酸エステル量の増加、および多官能単量体成分量の減少によって、低くなる傾向にある。したがって、ガラス転移温度は、これらの成分の割合を増減することで、調整できる。
条件(II)は、JIS K6251に準拠して、ダンベル状3号形試験片にて引張速度500mm/分の条件で測定された切断時伸びが300〜1500%である。すなわち、ダンベル状3号形試験片を引張試験機(例えば、インストロン社製「万能試験機5965」など)にセットして、500mm/分の速度で引っ張り、切断時の伸びを測定する。
切断時伸びを300〜1500%とすることにより、得られる透明樹脂板の耐衝撃性能を高くすることができる。
切断時伸びは、好ましくは400〜1200%である。また、この切断時伸びは、軟質アクリル樹脂層に含まれる有機多塩基酸エステル量の増加および多官能単量体成分量の増加によって、低下する傾向にある。したがって、切断時伸びは、これらの成分の割合を増減することで、調整できる。これらの成分の割合を調整し、切断時伸びを好ましくは400〜1200%、より好ましくは850〜1200%とすることにより、得られる透明遮音板を長時間使用しても耐候性に優れるものとすることができ、特に、変色(イエローインデックスの増加)を抑えることができる。
(透明遮音板の製造方法)
透明遮音板の製造方法は、特に限定されず、例えば、セルキャスト重合法;押出成形による方法;各種の公知の接着剤を用いてアクリル樹脂層(A)と、軟質アクリル樹脂層と、アクリル樹脂層(B)とをこの順で積層接着する方法などが挙げられ、これらの中でも、セルキャスト重合法による製造方法が好ましい。
セルキャスト重合法としては、例えば、内部の一方の面にアクリル樹脂板(A)が設置され、該アクリル樹脂板(A)が設置された面と対向する面にアクリル樹脂板(B)が設置されたセルの内に、軟質アクリル樹脂層原料を注液した後、重合反応を行う方法などが挙げられる。なお、重合反応終了後、アクリル樹脂板(A)は透明遮音板におけるアクリル樹脂層(A)となり、アクリル樹脂板(B)は透明遮音板におけるアクリル樹脂層(B)となる。
(アクリル樹脂板)
アクリル樹脂板(A)および(B)の製造方法としては、例えば、上述のアクリル樹脂を構成する単量体を重合反応させた後、押出機などにより成形する方法;上述のアクリル樹脂を構成する単量体を公知のキャスト重合法により重合する方法などが挙げられる。重合の際には、上述のアクリル樹脂の重合反応に用いられる重合開始剤、各種添加剤などを添加してもよい。
アクリル樹脂板を製造するキャスト重合法としては、例えば、2枚のガラス板の周辺を軟質ポリ塩化ビニルなどの樹脂からなるガスケットでシールしたガラスセル、またはステンレススチールなどの金属製の2枚のエンドレスベルトをガスケットでシールしてなる連続スチールセルなどを用い、セルに上述のアクリル樹脂を構成する単量体と添加剤とを混合させた混合物、または混合物を予備重合させた部分重合体を注入して重合を行う周知の方法が採用可能である。なお、部分重合体における重合体含有率としては、1〜10質量%程度が適当である。
重合条件は、使用する重合開始剤の種類などによって適宜設定される。例えば、反応温度は、常温〜150℃が好ましい。また、必要に応じて、多段階の温度条件で重合を行ってもよい。
アクリル樹脂板(A)および(B)の各々の厚さは、通常1〜30mmであり、好ましくは2〜15mmである。アクリル樹脂板(A)および(B)の厚さは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アクリル樹脂板(A)および(B)同士は、組成が互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。さらに、厚さの大きいアクリル樹脂板(A)および(B)は、複数のアクリル樹脂板を積層することによって構成してもよい。
アクリル樹脂板(A)および(B)は、熱成型加工することにより所望の形状に加工したり、熱プレスして表面に模様を形成したりして使用することも可能である。また、その表面には、必要に応じて、例えば、ハードコート、撥水加工、親水加工、光触媒加工などの表面加工を施してもよく、さらに鳥衝突防止用の表示などを設けてもよい。
(セル)
透明遮音板をセルキャスト重合法により製造する際に用いるセルは、アクリル樹脂板(A)と、面がアクリル樹脂板(A)に対向するように設置されたアクリル樹脂板(B)と、対向するアクリル樹脂板(A)および(B)の間に設置されたガスケットとから少なくとも構成される。ガスケットの材質としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニルなどの樹脂からなるものが挙げられる。その形状は特に限定されず、紐状、シート状、チューブ状、ホース状、テープ状などが挙げられる。その断面の形状としては、特に制限されず、例えば、四角形、円形、半円形、L字形などが挙げられる。
セル内の空間の厚み、すなわち軟質アクリル樹脂層原料の重合により形成される軟質アクリル樹脂層の厚みは、通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.5〜5mm程度である。軟質アクリル樹脂層の厚さは、アクリル樹脂層(A)および(B)の両方の面の間に挟まれたガスケットの厚さにより調整することが可能である。
(軟質アクリル樹脂層原料(重合性組成物))
本発明に用いられる軟質アクリル樹脂層原料(重合性組成物)は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを含有する単官能単量体を重合して得られる共重合体、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルを含むシロップと、多官能単量体と、有機多塩基酸エステルとを含む。なお、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、多官能単量体および有機多塩基酸エステルは、上述の通りである。
アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを含有する単官能単量体を重合して得られる共重合体、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルを含むシロップは、予め合成した共重合体と、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルとを混合して調製してもよく、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを含有する単官能単量体を完全に重合させず、共重合体とアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルとが共存する反応物(部分重合物)をそのまま用いてもよい。
部分重合に用いる重合開始剤としては、上述の重合開始剤が挙げられ、その使用量は、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む単官能単量体の総量に対して、通常1〜1000ppmであり、好ましくは10〜200ppmである。また、部分重合の条件は特に限定されず、反応温度は、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む単官能単量体や重合開始剤の種類や量などにより適宜設定され、例えば60〜90℃程度である。
シロップ中の共重合体の含有量は特に限定されず、シロップ総量に対して、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜25質量%であるのがよい。共重合体の含有量が0.1質量%未満の場合、重合性組成物の重合反応が不安定となる傾向や、重合性組成物のセルからの漏れが生じやすくなる傾向があり、共重合体の含有量が40質量%を越える場合、重合性組成物のセル内への注液が困難になる傾向にある。
重合性組成物を調製する際、シロップ、多官能単量体および有機多塩基酸エステルの混合順序や混合方法は、特に制限されない。例えば、撹拌しながらシロップ、多官能単量体および有機多塩基酸エステルを混合すればよい。
(重合反応)
透明遮音板を製造する際の重合反応は、特に限定されず、例えば、上述のセル内に重合開始剤と重合性組成物とを注液した後、室温で重合を行ってもよく、水または空気を熱媒とする重合槽中にて温度を調整して重合を行ってもよい。重合反応の際には、上述の軟質アクリル樹脂層における単量体成分を重合させる際に任意に用いられる連鎖移動剤を用いてもよい。
重合性組成物は、そのままセル内に注液してもよく、重合性組成物を濾過して得られた濾液をセル内に注液してもよい。濾液を注液すれば、透明遮音板への異物混入を防止することができ、長時間使用しても、アクリル樹脂層と軟質アクリル樹脂層との剥離を防止することができる。
重合性組成物の濾過に使用されるフィルターは、ステンレス製、セラミック製、プラスチック製などの網(篩)が挙げられ、好ましくは10メッシュ以上、より好ましくは50メッシュ以上のものが用いられる。10メッシュとは、1インチの長さに10個の網目が存在することを示し、50メッシュとは、1インチの長さに50個の網目が存在することを示し、メッシュ数が多くなるほど、網目が細かいことを示す。
重合開始剤は上述の通りであり、その使用量は、軟質アクリル樹脂層原料100質量部に対して、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。その際、生産性や未反応単量体を減らすという観点から、まず初期重合として、0〜50℃で第1重合を行い、次いで最終重合として、50〜130℃で第2重合を行うのが好ましい。第1重合の重合時間は通常30分〜40時間であり、好ましくは1〜30時間である。第2重合の重合時間は通常20分〜10時間であり、好ましくは30分〜8時間である。重合は、常圧、加圧および減圧のいずれの雰囲気下で行ってもよい。
(透明遮音板)
以上のようにして、強い衝撃を受けて破損した際にも破片が飛散しにくい耐衝撃性に加え、優れた透明性や耐候性を有する透明遮音板を製造することができる。透明遮音板全体の厚みは特に限定されず、通常2〜50mm、好ましくは3〜30mmである。
この透明遮音板の層構成は、アクリル樹脂層(A)、軟質アクリル樹脂層、およびアクリル樹脂層(B)から構成される3層構成であってもよいし、さらにアクリル樹脂層(A)および/またはアクリル樹脂層(B)の外側に、前記と同様の軟質アクリル樹脂層を介して、上記と同様のアクリル樹脂層を積層して5層以上で構成される層構成であってもよい。
後者の例としては、アクリル樹脂層(A)/軟質アクリル樹脂層/アクリル樹脂層(B)/軟質アクリル樹脂層/アクリル樹脂層からなる5層構造、アクリル樹脂層/軟質アクリル樹脂層/アクリル樹脂層(A)/軟質アクリル樹脂層/アクリル樹脂層(B)からなる5層構造、アクリル樹脂層/軟質アクリル樹脂層/アクリル樹脂層(A)/軟質アクリル樹脂層/アクリル樹脂層(B)/軟質アクリル樹脂層/アクリル樹脂層からなる7層構造などが挙げられる。
透明遮音板の形状は特に限定されず、平板や円盤以外にも、例えば、予め任意の曲率半径に熱成形した2枚の対向するアクリル樹脂板(A)および(B)の間に、軟質アクリル樹脂層原料を注入して重合するキャスト重合法により製造された曲面板などの種々の形状のものが挙げられる。また、本発明の透明遮音板は、JIS K7361−1に準拠して測定された全光線透過率が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
さらに、透明遮音板の両面または片面には、例えば、硬度処理、防曇処理、防汚処理等の通常用いられる一般的な処理を施してもよく、表面に衝撃を受けた際に、該透明遮音板の飛散を防止する目的で、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムを貼合する等の処理を施してもよい。また、透明遮音板を構成するアクリル樹脂層(A)および(B)と軟質アクリル樹脂層との接触面にプライマー処理を施すことによっても透明遮音板の飛散を防止することができる。
本発明の透明遮音板は、高速道路や幹線道路などに設置される透明な遮音板の他、鉄道高架に設置される防風パネルなどにも利用することができる。また、本発明の透明遮音板は透明性に優れるため、軟質アクリル樹脂層に太陽電池を包理して上記用途に利用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(アクリル樹脂層の形成)
87.9質量部のメタクリル酸メチル部分重合体シロップ(約5質量%のポリメタクリル酸メチルを含有)、0.1質量部のネオペンチルグリコールジメタクリレート、難燃剤として12質量部の塩素化アルキルポリホスフェート(CR−570、大八化学工業(株)製)、および重合開始剤として0.07質量部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを添加し、混合物を得た。
この混合物を、2枚のガラス板(2000mm×4000mm)および軟質ポリ塩化ビニル製ガスケットから構成される空隙の間隔が6mmのセルに流し込んだ。次いで、空気を熱媒とする重合槽中で、60℃で8時間、その後110℃で1時間加熱して重合反応を行い、アクリル樹脂層(ポリメタクリル酸メチル系樹脂板(2000mm×4000mm×6mm))を形成した。
(軟質アクリル樹脂層を形成するための重合性組成物の調製)
45質量%のメタクリル酸メチルと55質量%のアクリル酸2−エチルヘキシルとを含む混合物100質量部に、0.005質量部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを添加し、80℃で予備重合して粘稠なシロップ状物(約5質量%の重合体を含有)を得た。得られたシロップ83.3質量部に、15.0質量部のアセチルクエン酸トリブチル(ATBC、田岡化学工業(株)製)、1.5質量部のトリエチレングリコールジメタクリレート、および紫外線吸収剤として0.2質量部のスミソーブ200(住化ケムテックス(株)製)を添加して、重合性組成物を得た。この重合性組成物を調製するのに使用した単量体の割合は、メタクリル酸メチルが44.2質量%、アクリル酸2−エチルヘキシルが54.0質量%、およびトリエチレングリコールジメタクリレートが1.8質量%である。
得られた重合性組成物100質量部に、1.6質量部の重合開始剤(化薬アクゾ(株)製の「パーカドックス16」(約95質量%のビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを含有))を添加して混合した。この混合物を、2枚のPETフィルム間に軟質ポリ塩化ビニル製ガスケットを挟むとともに、PETフィルムの外側に予めガラス板(200mm四方)を設置した空隙の間隔が2mmまたは3mmのセルに流し込んだ。次いで、空気を熱媒とする重合槽中で、30℃で8時間、その後70℃で5時間加熱して重合反応を行い、軟質アクリル樹脂層の試験片(厚さ2mmまたは3mm)を製造した。得られた軟質アクリル樹脂層の試験片について、ガラス転移温度および切断時伸びを測定した。
<ガラス転移温度の測定>
得られた軟質アクリル樹脂層の試験片(厚さ3mm)について、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製粘弾性スペクトロメータ(EXSTAR DMS6100)を用いて、−50〜50℃における粘弾性−温度曲線を測定した。測定時の昇温速度は、2℃/分、周波数は1Hz、チャック間距離は20mmとした。測定された動的貯蔵弾性率(E’)、動的損失弾性率(E’’)、および「tanδ=E’’/E’」で定義される損失正接から、縦軸をtanδ、横軸を温度(℃)として動的粘弾性を示すグラフを得、そのピーク温度をガラス転移温度とした。結果を表1に示す。
<切断時伸びの測定>
まず、JIS K6251−2010に準拠して、得られた軟質アクリル樹脂層の試験片(厚さ2mm)からダンベル状3号形試験片を作成した。次いで、引張試験機(インストロン社製万能試験機5965)を用いて、23℃、相対湿度55%、引張速度500mm/分の条件で、軟質アクリル樹脂層の切断時伸びを測定した。結果を表1に示す。
(透明遮音板の製造)
得られた上記重合性組成物100質量部に、1.6質量部の重合開始剤(化薬アクゾ(株)製の「パーカドックス16」(約95質量%のビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを含有))を添加して混合した。この混合物を、上記メチルメタクリレート系樹脂板(2000mm×4000mm×6mm)および軟質ポリ塩化ビニル製ガスケットから構成される空隙の間隔が3mmのセルに流し込んだ。次いで、空気を熱媒とする重合槽中で、30℃で8時間、その後70℃で5時間加熱して重合反応を行い、アクリル樹脂層(厚さ6mm)と軟質アクリル樹脂層(厚さ3mm)とアクリル樹脂層(厚さ6mm)とが順次積層された透明遮音板を得た。なお、混合物のセルへの注液は、セルの注液口にステンレス製の金網(60メッシュ)を設置して濾過しながら行った。
(実施例2)
表1に示すように、軟質アクリル樹脂層を構成する重合性組成物におけるシロップを84.05質量部およびトリエチレングリコールジメタクリレートを0.75質量部としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、軟質アクリル樹脂層の試験片および透明遮音板を得た。この重合性組成物を調製するのに使用した単量体の割合は、メタクリル酸メチルが44.6質量%、アクリル酸2−エチルヘキシルが54.5質量%、およびトリエチレングリコールジメタクリレートが0.9質量%である。なお、得られた軟質アクリル樹脂層の試験片について、実施例1と同様にガラス転移温度および切断時伸びを測定した。
(実施例3)
表1に示すように、軟質アクリル樹脂層を構成する重合性組成物調製時のシロップにおけるメタクリル酸メチルを35質量%、2−エチルヘキシルアクリレートを65質量%とし、軟質アクリル樹脂層を構成する重合性組成物におけるシロップを94.05質量部、アセチルクエン酸トリブチルを5.0質量部、トリエチレングリコールジメタクリレートを0.75質量部とした以外は、実施例1と同様の手順で、軟質アクリル樹脂層の試験片および透明遮音板を得た。この重合性組成物を調製するのに使用した単量体の割合は、メタクリル酸メチルが34.7質量%、アクリル酸2−エチルヘキシルが64.5質量%、およびトリエチレングリコールジメタクリレートが0.8質量%である。なお、得られた軟質アクリル樹脂層の試験片について、実施例1と同様にガラス転移温度および切断時伸びを測定した。
(実施例4)
表1に示すように、軟質アクリル樹脂層を構成する重合性組成物におけるシロップを96.8質量部、アセチルクエン酸トリブチルを2.5質量部およびトリエチレングリコールジメタクリレートを0.5質量部としたこと以外は、実施例3と同様の手順で、軟質アクリル樹脂層の試験片および透明遮音板を得た。この重合性組成物を調製するのに使用した単量体の割合は、メタクリル酸メチルが34.8質量%、アクリル酸2−エチルヘキシルが64.7質量%、およびトリエチレングリコールジメタクリレートが0.5質量%である。なお、得られた軟質アクリル樹脂層の試験片について、実施例1と同様にガラス転移温度および切断時伸びを測定した。
(比較例1)
表1に示すように、軟質アクリル樹脂層を構成する重合性組成物におけるシロップを76.8質量部、アセチルクエン酸トリブチルを20.0質量部およびトリエチレングリコールジメタクリレートを3.0質量部としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、軟質アクリル樹脂層の試験片および透明遮音板を得た。この重合性組成物を調製するのに使用した単量体の割合は、メタクリル酸メチルが43.3質量%、アクリル酸2−エチルヘキシルが52.9質量%、およびトリエチレングリコールジメタクリレートが3.8質量%である。なお、得られた軟質アクリル樹脂層の試験片について、実施例1と同様にガラス転移温度および切断時伸びを測定した。
実施例1〜4および比較例1で得られた透明遮音板について、耐衝撃性(耐衝撃性試験(1)および(2))、透明性(全光線透過率、ヘーズおよびイエローインデックスの測定)および耐候性の評価を行った。
<耐衝撃性試験(1)>
得られた透明遮音板を、150mm×150mmの大きさに切断して試験片を作製した。試験片の2辺を固定した状態で、試験片の上方0.85mから3kgの鋼球を3回続けて自由落下させた。その際の試験片の状態を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:3回連続して鋼球を落下させても、試験片表裏のメタクリル酸メチル系樹脂板の飛散が認められなかった。
○:3回連続して鋼球を落下させた後、試験片表裏のメタクリル酸メチル系樹脂板の飛散が初めて認められた。
△:2回連続して鋼球を落下させた後、試験片表裏のメタクリル酸メチル系樹脂板の飛散が初めて認められた。
×:1回鋼球を落下させた後、試験片表裏のメタクリル酸メチル系樹脂板の飛散が認められた。
<耐衝撃性試験(2)>
(株)高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)NEXCO試験方法第9編、環境関係試験方法の「試験法902 2009 遮音壁の耐衝撃性試験方法」(発行者:(株)高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)、発行年:平成21年7月)に準拠して耐衝撃を評価した。まず、得られた透明遮音板を、2m×2mの大きさに切断して試験片を作製した。試験片の4辺を固定した状態で、10℃および常温で評価した。衝撃試験後の破片の水平距離が5m以内で、下記式で定義される飛散防止率(R)が99%以上、かつ飛散した破片のうち質量が最大である破片において、その質量が1g以下の場合を〇、上記基準を満足できなかった場合を×と評価した。結果を表1に示す。
R=((W−w)/W)×100(%)
W:試験片の質量
w:飛散した破片の合計質量
<全光線透過率の測定>
得られた透明遮音板について、透過率計((株)村上色彩技術研究所製の「HR−100」)を用い、JIS K7361−1に準拠して、全光線透過率Tt(a)を測定した。この数値が大きいほど光線の透過が大きい、すなわち透明性が高いことを示す。結果を表1に示す。
<ヘーズの測定>
得られた透明遮音板について、上記のHR−100を用い、ヘーズH(a)をJIS K7136に準拠して測定した。この数値が小さいほど、透明性が高いことを示す。結果を表1に示す。
<イエローインデックス(YI)の測定>
得られた透明遮音板について、分光光度計(U−4000、(株)日立製作所製)を用い、波長300〜800nmの範囲で、5nm間隔で板厚方向の透過率を測定した。得られた測定値から、JIS Z 8722に準拠してXYZ値を求め、JIS K 7105に準拠してYI(a)を算出した。結果を表1に示す。
<耐候性試験>
JIS K7350−4に準拠して、サンシャインウェザーメーター(WEL−SUN−HCH−B型、スガ試験機(株)製)に1000時間供し、透明遮音板の劣化を促進させた。劣化させた透明遮音板について、全光線透過率Tt(b)、ヘーズH(b)およびイエローインデックスYI(b)を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2013116589
表1に示すように、実施例1〜4で得られた透明遮音板は、優れた耐衝撃性および透明性を有していることがわかる。また、透明遮音板を劣化させた後に、全光線透過率、ヘーズおよびイエローインデックスを測定したところ、劣化前とほとんど変化しておらず、耐候性にも優れていることがわかる。
一方、比較例1で得られた透明遮音板は、NEXCO試験方法(耐衝撃性試験(2))による耐衝撃性が劣ることがわかった。なお、耐衝撃性試験(2)において、常温での評価が基準を満足しなかったため、10℃での試験は実施しなかった。また、耐衝撃性試験(2)の基準を満足しなかったため、耐候性試験は実施しなかった。

Claims (6)

  1. アクリル樹脂層(A)と、軟質アクリル樹脂層と、アクリル樹脂層(B)とが、この順に積層された透明遮音板であって、
    前記軟質アクリル樹脂層が、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび多官能単量体を重合して得られる共重合体と、有機多塩基酸エステルとを少なくとも含有し、かつ以下の(I)および(II)の条件を満足することを特徴とする透明遮音板:
    (I)動的粘弾性測定により、周波数1Hzおよび昇温速度2℃/分の条件で測定されたガラス転移温度が−20〜20℃、
    (II)JIS K6251に準拠して、ダンベル状3号形試験片にて引張速度500mm/分の条件で測定された切断時伸びが300〜1500%。
  2. 前記有機多塩基酸エステルが、アセチルクエン酸トリブチルである、請求項1に記載の透明遮音板。
  3. 請求項1または2に記載の透明遮音板の製造方法であって、
    内部の一方の面に前記アクリル樹脂層(A)が設置され、このアクリル樹脂層(A)が設置された面と対向する面に前記アクリル樹脂層(B)が設置されたセル内に、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを含有する単官能単量体を重合して得られる共重合体、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルを含むシロップと、多官能単量体と、有機多塩基酸エステルとを含む重合性組成物を注液した後、重合反応を行う工程、
    を含むことを特徴とする透明遮音板の製造方法。
  4. 前記重合性組成物を濾過して得られた濾液を注液し、次いで重合反応を行う、請求項3に記載の透明遮音板の製造方法。
  5. 前記濾過が、10メッシュ以上のフィルターを用いて行われる、請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記シロップにおける共重合体の含有量が、シロップ総量に対して0.1〜40質量%である、請求項3〜5のいずれかの項に記載の透明遮音板の製造方法。
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