以下に図面を用いて本発明の固着具100を説明する。図1は、本発明の固着具を用いた落下防止具の取り付け図である。図2は、本発明の固着具を用いた落下防止具の正面図及び側面図である。図3は、本発明の固着具を用いた落下防止具のスライド受け部を示す図である。図4は、本発明の固着具を用いた落下防止具のスライド部を示す図である。図5は、本発明の固着具を用いた落下防止具のバネ部を示す図である。図6は、本発明の固着具を示す図である。
図1には、本発明の固着具を用いた落下防止具100が取り付けられた収納棚300が示されている。この収納棚300は、例えば、鋼材製のL型アングル材・コの字型アングル材や角パイプ材等からなる床面に立設される複数本の支柱312、314等と、支柱312、314等に任意の上下間隔をもって架け渡されて各種物品が載置される鋼板や角パイプ材等からなる棚板322、324等とから構成されている。なお、支柱312、314等や棚板322、324等は磁着可能な材質であることが多い。
また、収納棚300において、棚板322へ物品を出し入れする側となる前側支柱312、314と棚板322、324とで囲まれる収納開口342には、落下防止具100の張架部としてのベルト120が、収納開口342を横断する落下防止位置となるように張架されている。
図1及び図2によれば、落下防止具100は、収納開口342を横断するように張架されたベルト120と、前側支柱312、314に固着され、ベルト120の両端部分が取り付けられる本発明の2個の取り付け部140、141とを概略具備している。
また、ベルト120は、一方端部分121が前側支柱312に固着される取り付け部140に取り付けられ、他方端部分122が前側支柱314に固着される取り付け部141に取り付けられている。また、一方端部分121は、長さ方向(ベルトの長手方向)に長さ調整可能とするための、スライド部とスライド受け部及び付勢手段としてのバネ部とからなる伸縮手段を備えている。また、他方端部分122は、ベルト120を取り付け部141に巻き付けて折り返し、折り返して重ねたベルト120をバックル123に通して止める構成となっている。なお、このバックル123は、ベルト120の長さを調整する長さ調整部を兼ねている。また、124は、折り返したベルト120の先端部が垂れるのを防止するためのベルト止め環である。
なお、一方端部分121には、スライド受け部に設けられた取り付け部140へ掛止するための掛止部が、該取り付け部140へ取り付け・取り外し可能に設けられている。
本発明の固着具としての取り付け部140、141は共通の構成となっている。図6は、この取り付け部140を示す図で、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図、図6(c)は上面図となっている。図6によれば、取り付け部140は、一方面が前側支柱312に固着される固着部としてのベース部142と、ベース部142の他方面の側に立設され、ベルト120の一方端部分121(他方端部分122)が取り付けられる取り付け穴部144を有する接続部としての立設部143とを備えている。
なお、本発明の落下防止具では、取り付け部140は、立設部143が略矩形のベース部142の4片のうちの一辺に立設されたL字状の形状となっているが、後述する機能を満たすものであれば、この形状に限定されるものではなく、例えば、立設部143をベース部142の他方面の4辺以外の箇所に設けてT字状としてもよい。
取り付け穴部144は、ベース部142の一方面と他方面を貫通する穴と、立設部143の一方面(ベース部に対して垂直な面のうち、ベース部の側と反対の側の面)と他方面(ベース部の側の面)を貫通する穴とが、立設部143がベース部142に立設する角部分で連続する穴部なっている。この形状により、取り付け部140を前側支柱312の正面に固着する場合においても使用可能となっている。
また、取り付け部140を前側支柱312に固着するために、取り付け部140の一方面に磁着部としての磁石146が固着され、該磁石146の取り付け部140の一方面の側と反対の面となる一方に接着部としての両面接着テープ147が設けられている。
両面接着テープ147として、例えば、アクリルフォーム基材にアクリル系粘着材を用いた両面接着テープを使用した場合、アクリルフォーム基材が有する応力緩和特性により、外部からの応力に対して高い保持力を発揮するとともに、瞬間的な衝撃力にも強い特性を有している。このため、棚板322に載置された物品が、地震等で収納開口342から飛び出し、ベルト120に衝突した場合においても、取り付け部140の両面接着テープ147が、ベルト120への物品衝突の衝撃力を受け止め、確実に落下防止することが可能となる。なお、ベルト120にポリプロピレン織物ベルトのような衝撃吸収機能を有するベルトを用いることで、より確実に物品の落下や飛び出しを防止することが可能となる。
なお、本発明の固着具としての取り付け部140を用いた落下防止具100において、取り付け部140の固着面は支柱や壁面等の床面に対して垂直(重力に対して水平ではない面)に取り付けられる。このため、両面接着テープ147の貼り付け固着直後、貼り付け固着後の所定期間やその他において、剥がれや固着位置のずれが発生する可能性がある。取り付け部140の一方面と両面接着テープ147との間に設けられた磁石146は、このような剥がれやずれを防止するためのものであり、磁着可能な支柱312、314等や棚板322、324等に対して、取り付け部140がより効果的に固着可能となる。
また、図1における落下防止具では、取り付け部140は、収納開口342に対して垂直な方向となる前側支柱312の内側(収納開口側)側面に固着されている。前述のとおり、取り付け部140は、その構造により、収納開口342に対する垂直な方向と水平な方向のどちらの前側支柱312の側面に固着可能となっている。このように、本発明の取り付け部140を利用した落下防止具は、収納開口342に垂直な面の支柱側面の向かい合った一組を使用するので、収納棚が複数連続して接続され、1本の支柱の左右方向に複数の棚板が取り付けられる収納棚においても、取り付けが可能となっている。
ベルト120の一方端部分121は、長さ方向(ベルトの長手方向)に長さ調整可能とするための、スライド部125とスライド受け部131及び付勢手段としてのバネ部139とから構成される伸縮手段を備えている。
図4は、スライド部125を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は正面図のY−Y断面での側面図となっている。スライド部125は、略矩形板状のスライドベース部126と、スライドベース部126の一方面の側であって、長手方向の向かい合った辺に各々立設されるスライド立設部127と、スライドベース部126の短手方向の向かい合った辺のうちの、一方端部分121における一端側(図4における紙面左側)の辺に立設されるスライドバネ受け部128と、スライドベース部126の短手方向の向かい合った辺のうちの、スライドバネ受け部128と反対の辺に設けられるスライドベルト止め部129と、後述するスライド受け部131をスライドする際のガイド軸受けとなるガイド長穴130とから構成されている。
スライド立設部127に関して、その高さ(スライドベース部126の一方面とスライド立設部127の先端部との間の長さ)はバネ部139の収納が可能となるように設定されており、該先端部がスライド受け部131に当接し摺動可能な構成となっている。
スライドバネ受け部128は、スライドベース部126の一方面の側に立設するスライドバネ受け立設部128aと、スライドバネ受け立設部128aの先端部にスライドベース部126の一方面と平行となる方向に突出するスライドバネ受け突起128bとで構成されている。なお、スライドバネ受け突起128bはスライドベルト止め部129の側に向かって突出している。
スライドベルト止め部129は、図4によれば、ベルトを止める所謂バックルの形状となっており、ベルト120の長さ方向(ベルトの長手方向)に垂直な方向が長手となる3個のベルト受け長穴129aが設けられている。この3個のベルト受け長穴129aにベルト120を挿通して止める。
なお、3個のベルト受け長穴129aは、図2のように、例えば熱収縮チューブ129bで被覆してもよい。また、このスライドベルト止め部129の部分に磁石を設けて、ベルト120の一方端部分121を取り付け部140から取り外しをした際に、磁着可能な支柱312、314等や棚板322、324等の収納棚へ磁着により仮置き可能とすることができる。
ガイド長穴131は、後述するスライド受け部131のガイド軸が移動する長穴であるとともに、スライド部125とスライド受け部131とが分離不可能とするための受け部ともなっている。
図3は、スライド部受け部131を示す図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は正面図のX−X断面での側面図、図3(c)は上面図となっている。スライド受け部131は、略矩形板状のスライド受けベース部132と、スライド受けベース部132の一方面の側であって、長手方向の向かい合った辺に各々立設されるスライド受け立設部133と、スライド受けベース部132の短手方向の向かい合った辺のうちの、一方端部分121における一端側(図3における紙面左側)の辺に立設され、取り付け部140へ掛止される掛止部134と、スライド受けベース部131の短手方向の向かい合った辺のうちの、掛止部134と反対の辺に設けられるスライド受けバネ受け部135と、スライド部125がスライドする際のガイドとなるガイド軸136が挿通されるガイド軸挿通部137とから構成されている。
スライド受け立設部133に関して、その高さ(スライド受けベース部132の一方面とスライド受け立設部133の先端部との間の長さ)はスライド立設部127とほぼ同じ高さに設定されている。なお、スライド受け立設部133は、スライド立設部127の外側に配置されている。
掛止部134は、ベルト120の一方端部分における一端側に配置されており、スライド受けベース部132から延出する掛止延出部134aと、掛止延出部134aの、スライド受けベース部132の一方面の側に立設する掛止立設部134bと、掛止立設部134bの先端部にスライド受けベース部132の一方面と平行となる方向に突出する掛止突起134cとで構成されている。なお、掛止突起134bは、掛止延出部134aがスライド受けベース部132から延出する側と反対の側に向かって突出している。
スライド受けバネ受け部135は、スライド受けベース部132の一方面の側に立設するスライド受けバネ受け立設部135aと、スライド受けバネ受け立設部135aの先端部にスライド受けベース部132の一方面と平行となる方向に突出するスライド受けバネ受け突起135bとで構成されている。なお、スライド受けバネ受け突起135bは掛止部134の側に向かって突出している。
ガイド軸挿通部137は、2個のスライド受け立設部133の各々で外側と内側とを貫通する2個の貫通穴で、該貫通穴にはガイド軸136が挿通される。ガイド軸136は、図2においてはネジが用いられており、ガイド軸挿通部137には該ネジを螺合するための雌ネジが螺設されている。ガイド軸136は、該雌ネジに螺合され、2個のスライド受け立設部133の内側に突出し、が突出した箇所がガイド長穴131に挿通される。
なお、ガイド軸136に関して、ガイド軸挿通部137に雌ネジを螺設せずに、2個の該ガイド軸挿通部137と2個のガイド長穴131とに掛け渡すように配置しても良い。
また、ガイド軸挿通部137へ挿通するガイド軸136に関して、例えば図2であれば、ガイド軸136のガイド軸挿通部137への螺合により、ガイド軸136の突出のガイド長穴130への挿通が解除不能となるので、スライド部125とスライド受け部131とが分離不可能となる。
また、このような構成により、ガイド軸136がガイド長穴130を移動可能となるので、スライド部125がスライド受け部131に対してベルト120の長さ方向に進退可能となる。
図5は、スライド部125とスライド受け部131との間、具体的には、スライドベース部126・スライド立設部127とスライド受けベース部132・スライド受け立設部133で形成される空間に配置される付勢部材としてのバネ部139を示す図である。
バネ部139は所謂コイルバネで、コイルバネの軸方向(図5の紙面左右方向)に付勢力を有し、軸方向の圧縮に抗する方向(軸の外向き)に付勢力を発生させる。なお、この落下防止具100では、付勢部材としてコイルバネで説明したが、圧縮に抗する方向に付勢力を発生させる部材であれば、例えばゴム等を使用してもよい。
以上のような、スライド部125、スライド受け部131、バネ部139で構成される伸縮手段について、簡単に説明する。ベルト120の一方端部分121の掛止部134は、取り付け部140の立設部143に設けられた取り付け穴部144に掛け止められている。具体的には、掛止延出部134aの先端で立設する掛止立設部134bが取り付け穴部144に挿通され、掛止突起134cが立設部143のベース部142側に当接されることで掛け止めされている。
また、スライド受け部131の一方面に対してスライド部125の一方面が対向し、2個のスライド受け立設部133の間に2個のスライド立設部127が収納され、スライド立設部127の先端部がスライド受け部131に当接し摺動可能な構成となっている。
スライド受け立設部133とスライド立設部127は、ベルト120の長さ方向(ベルトの長手方向)と平行となるように配置されているので、スライド部125は、ベルト120の長手方向に移動可能となっている。
また、スライド部125のスライドバネ受け部128とスライド受け部131のスライド受けバネ受け部135は、スライドベース部126、スライド受けベース部132及びスライド立設部127で囲まれる空間において、向かい合う位置に配置されている。具体的には、該空間内でスライドバネ受け突起128bとスライド受けバネ受け突起135bが向かい合うように配置されている。
バネ部139は、この2個のバネ受け突起の間に配置されることで、スライド部125を一方端部分121の一端側となる外側(ベルト120の長手方向における掛止部134に向かう側)へ付勢することになる。このため、ベルト120は、収納開口342に張架された状態で、バネ部139の付勢力により、ベルト120がその重みで緩まない、見栄えの良い状態となっている。
また、バネ部139の、スライド部125を一方端部分121の一端側となる外側への付勢力の反作用で、スライド受け部131は一方端部分121の他端側となる内側へ付勢されるため、掛止部134は常に確実に取り付け部140の取り付け穴部144へ掛け止めされることになる。
このような構成を有する本発明の固着具を用いた落下防止具100の収納開口342への設置方法と、物品の出し入れの際の掛け止めの解除について図2を用いて説明する。なお、設置方法は種々の方法が可能であるので、より簡単な設置方法を説明する。
落下防止具100は図2(a)のように、既に組み立てられた状態となっているとする。この状態で、バックル123を用いて、収納開口342へ張架するために必要なベルト120の長さを設定する。この長さの調整のために、取り付け部140、141の各々に設けられた磁石146を利用して、前側支柱312、314に磁着することで取り付け部140、141を仮止めしても良い。
次に、ベルト120の両端部分が取り付けられている取り付け部140、141を各々前側支柱312、314の内側側面(前側支柱312、314の向かい合う側面であり、収納開口342に垂直な面)に貼り付け固着する。その後、ベルト120がその重みで緩まないように、バックル123で最終的な長さ調整を行う。
このような一連の作業で、本発明の落下防止具100は収納開口342に張架される。なお、取り付け部140、141の両面接着テープ147は、地震時に棚板322に載置された物品がベルト120へ衝突した際の衝突力に充分耐えられるものを使用しているので、確実に落下防止が可能となる。
この落下防止具100の収納開口342への設置後、棚板322から物品を取り出す場合や、棚板322へ物品を置く場合には、以下の手順で取り付け部140に掛け止めされた掛止部134を取り外す。
最初に、スライド受け部131を手で持ち、ベルト120の一方端部分121の一端側となる外側(ベルト120の長手方向における掛止部134に向かう側)に向かって引っ張る。この引っ張りにより、スライド部125がスライド受け部131を一方端部分121の他端側に向かってスライド(摺動)し、ベルト120の全体の長さが長くなる。
この結果、掛止部134が取り付け穴部144から取り外し可能となるので、掛け止め状態を解除する。取り外したベルト120の一方端部分121は、棚板322の上側の棚板324に置いておいたり、前述した一方端部分121に設けられた磁石で支柱や棚板に磁着しておけば、自由に棚板上の物品を出し入れ可能となる。もちろん、一方端部分121を手にもったまま、出し入れの作業をしても良い。このように、この落下防止具100は、伸縮手段を有することにより、掛止部を取り付け部から片手で簡単に取り外すことが可能であり、取り付け後の荷物の出し入れが容易となっている。
物品の出し入れ作業が完了した後は、手に持ったスライド受け部131をそのままベルト120の長さが長くなる方向(ベルト120の長手方向における掛止部134に向かう側)に向かって引っ張ることで、ベルト120の長さ全体が長くなるので、その状態を維持しながら、掛止部134を取り付け穴部144へ掛け止めを行うことで、ベルト120が収納開口342を横断する落下防止位置に戻すことが可能である。
なお、この落下防止具100においては、伸縮手段はベルト120の一方端部分121にのみ設けるように説明したが、他方端部分122も一方端部分と同様の構成として、両方に伸縮手段を設ける構成としても良い。
また、この落下防止具100においては、伸縮手段はベルト120の一方端部分121に設ける構成として説明したが、他方端部分122の構成である、ベルト120の取り付け部141への巻き付け部分に、例えば、該巻き付け部分の内側(折り返したベルト120が取り付け穴部144に接する側)と、取り付け穴部144の内側(該取り付け穴部144の内部でベルト120に接する側)との間に付勢手段としてのコイルバネやゴム等を配置し、ベルト120を他方端部分122の側へ付勢する構成を伸縮手段としても良い。
なお、この付勢手段は、ゴムベルト120の一方端部分と他方端部分の間で、ゴムベルト120の長手方向で収縮する方向に付勢するものであれば、例えばベルト120自身をゴムベルト等とする方法や、ベルト120の一部にバネ等を用いる方法等、どのような方法を用いても良い。
以上のように、本発明の固着具としての取り付け部141、141は、両面接着テープを用いるので、収納棚の支柱の形状によらずに簡単確実に取り付けが可能である。
一般に、接着部として、画面接着テープ147やその他の接着剤を使用した場合、外部からの応力に対して高い保持力を発揮し、また、瞬間的な衝撃力にも強い特性を有するが、その貼り付け固着直後、貼り付け固着後の所定期間やその他において本来の保持力を発揮できず、重力に対して水平でない固着面に接着した場合には、剥がれや固着位置のずれが発生する可能性がある。
本発明の固着具では、取り付け部140の一方面と両面接着テープ147との間に設けられた磁石146により、このような剥がれやずれを防止することが可能であり、鉄製の支柱312、314等や棚板322、324等のように、磁着可能な部材に対して、取り付け部140がより効果的に固着することが可能となる効果を有している。
さらには、固着に接着部を利用するので、ネジ止め不可能な箇所にでも取り付け可能という効果も有している。