JP2013075980A - 粘着剤組成物、および積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水酸基含有重合性単量体を5〜40質量%含む単量体成分(a)を重合したポリマー(A)と、イソプロピルアクリルアミドを90質量%超含む単量体成分(b)を重合したポリマー(B)と、イソシアネート(C)とを含有し、前記ポリマー(A)100質量部に対して、ポリマー(B)の含有量が2質量部以上であり、イソシアネート(C)の含有量が0.2〜1.4質量部である粘着剤組成物を用いる。
【選択図】なし
Description
粘着剤層が白化することは粘着剤層中に水が存在することを意味するため、例えば金属薄膜を備えた第二の基材が第一の基材に貼着されている場合、粘着剤層が白化すると金属薄膜の腐食を招く懸念があった。金属薄膜が腐食すると導電性などの性能が低下し、電磁波シールドやタッチパネルなどの機能が低下しやすくなる。
すなわち、高温高湿の環境下において、空気中の水蒸気(気体)が第二の基材を通過して粘着剤層中に拡散する。水が気体の状態で粘着剤層中に存在している間は、白化は起こりにくい。しかし、低温低湿の環境下に移ると、雰囲気温度の低下から飽和水蒸気量が減少するため、粘着剤層中の水蒸気が凝集して水へと変化する。このように水が気体の状態から液体の状態に変化することが、粘着剤層の白化を招く。
アクリル系ポリマーを架橋させつつ、ヒドロキシル基による水分子の凝集防止効果を十分に得るには、イソシアネートとの反応に消費される量を考慮してアクリル系ポリマー中のヒドロキシル基の数や架橋剤の使用量を設定すればよいが、これらを設定することは容易ではなかった。特に、使用可能時間を長くするためにイソシアネートとヒドロキシル基の反応が穏やかに進行する架橋剤を用いる場合には、水分子の凝集防止効果を十分に発揮できる量のヒドロキシル基の量を、架橋反応に消費されることなく維持するのが困難であった。
また、本発明の積層体は、前記粘着剤組成物により、第一の基材と第二の基材とが貼り合わされたことを特徴とする。
さらに、前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が透明であることが好ましい。
なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の両方を示すものとする。また、「(メタ)アクリルアミド」とは、メタクリルアミドとアクリルアミドの両方を示すものとする。
また、本発明において「高温」とは32℃以上を意味し、「低温」とは32℃未満を意味する。また、「高湿」とは80%RH以上を意味し、「低湿」とは50%RH以下を意味する。
本発明の粘着剤組成物は、ポリマー(A)と、ポリマー(B)と、イソシアネート(C)とを含有する。
ポリマー(A)は、水酸基含有重合性単量体を5〜40質量%含む単量体成分(a)を重合してなる。
水酸基含有重合性単量体(以下、「単量体(a1)」という。)は、ポリマー(A)に水酸基を導入する目的で用いられる。単量体(a1)を単量体成分(a)の必須成分とすることで、ポリマー(A)の水酸基と後述するイソシアネート(C)と反応してウレタン結合を形成し、ポリマー(A)が架橋する。従って、粘着剤組成物の粘着性が向上するので、第一の基材と第二の基材とを貼り合わせたときに、粘着剤組成物からなる粘着剤層(後述する粘着フィルム)とこれらの界面との密着性を十分に高めることができ、ブリスターの発生を防止できる。
加えて、単量体(a1)を単量体成分(a)の必須成分とすることで、ポリマー(A)と後述するポリマー(B)との相溶性が良好となる。ポリマー(A)とポリマー(B)との相溶性が良好であれば粘着剤層の透明性も良好となり、例えばディスプレイと電磁波シールドとを貼り合わせたときの視認性を確保できる。従って、光学用途にも適した粘着剤組成物が得られる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(a3)としては、単量体(a1)および単量体(a2)と共重合可能な(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが使用できる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピルなどが挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性基含有重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有重合性単量体;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピル等のスルホン酸基含有重合性単量体などが挙げられる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が好ましい。
過酸化物系の重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチル−α−クミルパーオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などが挙げられる。
ポリマー(A)の質量平均分子量は、単量体成分(a)に含まれる単量体(a1)〜(a3)の種類やその含有量を調整することで制御できる。また、重合開始剤の量や重合温度を調整することでも制御できる。具体的には、重合開始剤の量を増やしたり、重合温度を上げたりすると、質量平均分子量は小さくなる傾向にあり、重合開始剤の量を減らしたり、重合温度を下げたりすると、質量平均分子量は大きくなる傾向にある。
1/(Tg+273.15)=Σ[Wn/(Tgn+273.15)] ・・・(1)
なお、Tgnはホモポリマーの特性値として広く知られており、例えば、「POLYMER HANDBOOK、THIRD EDITION」に記載されている値を用いればよい。
ポリマー(B)は、イソプロピルアクリルアミドを90質量%超含む単量体成分(b)を重合してなる。
イソプロピルアクリルアミド(以下、「単量体(b1)」という。)を単独重合してなるポリマー(ホモポリマー)は、水中で下限臨界共溶温度を有し、32℃以上の環境下ではイソプロピル基(疎水性部分)によって疎水結合が強まりポリマー鎖が凝集して、水に対して難溶性あるいは不溶性を示す。また、32℃未満の環境下ではアミド基(親水性部分)によるアミド結合と水分子とが結合して水を取り込み(水の吸収)、水に対して可溶性を示す。
なお、32℃以上の高温高湿の環境下においては、粘着剤層中のポリマー(B)は水に対して難溶性あるいは不溶性を示すため、粘着剤層中に拡散した水蒸気を取り込みにくい。
特に、単量体(b1)の含有量が100質量%であれば、すなわち、ポリマー(B)が単量体(b1)のホモポリマーであれば、高温高湿の環境下から低温低湿の環境下へ移って水蒸気が水へ変化したときに、この水をより効果的に取り込むことができる。
単量体(b2)としては、単量体(b1)と共重合可能な(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、ポリマー(A)の説明において先に例示した単量体(a1)が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、ポリマー(A)の説明において先に例示した単量体(a3)が挙げられる。
特に、単量体(b2)の含有量が少なくなるほど、高温高湿の環境下から低温低湿の環境下へ移って水蒸気が水へ変化したときに、この水をより効果的に取り込むことができる。よって、単量体(b2)の含有量は0質量%であること、すなわち、ポリマー(B)が単量体(b1)のホモポリマーであることが好ましい。
重合開始剤としては、ポリマー(A)の説明において先に例示した重合開始剤が挙げられる。また、ポリマー(A)と同様に、ポリマー(B)は、過酸化物系の重合開始剤を用いずに調製するのが好ましい。
ポリマー(B)の質量平均分子量は、重合開始剤の量や重合温度を調整することで制御できる。具体的には、重合開始剤の量を増やしたり、重合温度を上げたりすると、質量平均分子量は小さくなる傾向にあり、重合開始剤の量を減らしたり、重合温度を下げたりすると、質量平均分子量は大きくなる傾向にある。
ポリマー(B)の質量平均分子量は、ポリマー(A)と同様の方法、すなわちゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定される値である。
ただし、ポリマー(B)の含有量が多くなると、粘着剤層の透明性が低下する傾向にある。従って、本発明の粘着剤組成物を光学用途にも使用する場合には、ポリマー(B)の含有量は20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
イソシアネート(C)は、単量体(a1)に由来するポリマー(A)中の水酸基と反応し(架橋反応)、ウレタン結合を形成させる。その結果、ポリマー(A)の凝集力が向上し、粘着性に優れた粘着剤組成物が得られる。
これらの中でも、耐光性に優れる粘着剤組成物が得られる点で、脂肪族イソシアネートが好ましい。
対して本発明の粘着剤組成物は、架橋剤としてイソシアネートを含有するので優れた粘着性を有すると共に、金属薄膜を腐食させにくい。よって、例えば金属薄膜を備えた第二の基材を第一の基材に貼り合わせる場合でも、良好な粘着性を発現しつつ、金属薄膜の腐食を防止でいる。より優れた腐食防止を発揮するためには、本発明の粘着剤組成物は金属キレート系架橋剤を含有しないことが好ましい。
多価金属原子としては、Al、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Tiなどが挙げられる。
共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子などが挙げられ、有機化合物としては、アルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物などが挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、質量平均分子量が2000〜6000であり、ガラス転移点が65〜105℃であるアクリル系ポリマー(D)を含有するのが好ましい。アクリル系ポリマー(D)は粘着付与剤(タッキファイヤ)として作用するので、粘着剤組成物がアクリル系ポリマー(D)を含有することで粘着剤組成物の凝集力が増し、粘着性がより向上する。よって、ポリカーボネート(PC)基材や、アウトガスが発生しやすいとされるアクリル基材などの各種基材に対して良好に密着する粘着剤組成物が得られる。その結果、特に高温高湿の環境下においてブリスターの発生をより効果的に抑制できる。
アクリル系ポリマー(D)の質量平均分子量は、後述する単量体成分(d)に含まれる単量体の種類やその含有量を調整することで制御できる。また、重合開始剤の量や重合温度を調整することでも制御できる。具体的には、重合開始剤の量を増やしたり、重合温度を上げたりすると、質量平均分子量は小さくなる傾向にあり、重合開始剤の量を減らしたり、重合温度を下げたりすると、質量平均分子量は大きくなる傾向にある。
アクリル系ポリマー(D)の質量平均分子量は、ポリマー(A)と同様の方法、すなわちゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定される値である。
アクリル系ポリマー(D)のガラス転移点は、アクリル系ポリマー(D)を構成する各単量体の種類やその配合量によって調整できる。また、アクリル系ポリマー(D)のガラス転移点は、ポリマー(A)と同様の方法、すなわち上記式(1)に示されるFoxの式から求められる値である。
メタクリル酸メチルを使用する場合、その含有量は、単量体成分(d)100質量%中、25〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
環状構造を有する単量体の含有量は、単量体成分(d)100質量%中、10〜75質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。
三級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド単量体の含有量は、単量体成分(d)100質量%中、0.1〜2.0質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましい。三級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド単量体の含有量が0.1質量%以上であれば、アクリル系ポリマー(D)とイソシアネート(C)との反応促進効果が十分に得られるので、粘着性により優れる粘着剤組成物が得られる。加えて、例えば金属薄膜を備えた第二の基材を第一の基材に貼り合わせる場合、金属薄膜の腐食防止効果も得られやすくなる。一方、三級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド単量体の含有量が2.0質量%以下であれば、アクリル系ポリマー(D)が黄変するのを抑制できるので、粘着剤組成物の透明性が向上する。従って、光学用途にも適した粘着剤組成物が得られる。
重合開始剤としては、ポリマー(A)の説明において先に例示したアゾ化合物が好ましい。
なお、本発明においては、もう一方の剥離フィルムを剥がした後の粘着フィルムの表面を平滑に保持できる性能を「二次剥離性」という。
また、粘着剤組成物は、通常、ポリマー(A)やアクリル系ポリマー(D)の調製工程に由来した溶媒を含有するが、さらに適当な溶媒が加えられ、後述する粘着フィルムを形成するのに適した粘度となるように希釈されたものであってもよい。
加えて、本発明の粘着剤組成物は、ポリマー(A)と特定量のイソシアネート(C)とを含有するので、粘着性に優れる。
特に、粘着剤組成物中のポリマー(B)の含有量が、ポリマー(A)100質量部に対して20質量部以下であれば、透明性にも優れるため、光学用途にも好適な粘着剤組成物となる。
本発明の粘着剤組成物の使用方法としては特に制限されないが、通常は、粘着フィルムの形態にして用いられる。
以下、本発明の粘着剤組成物からなる粘着フィルムの一例について、具体的に説明する。
本発明により得られる粘着フィルムは、例えば図1に示すように、粘着剤組成物からなる粘着フィルム(粘着剤層)11の両面に、表面が剥離処理された剥離フィルム12、13が設けられたノンキャリアタイプでフィルム状の粘着体10の形態として使用される。この例のノンキャリアタイプの粘着体10は、第二の基材を予め具備したものではないため、需要に応じて、貼着させる第二の基材の種類をその都度選択できる。よって、在庫管理などの点で非常にメリットがある。
なお、本発明の粘着剤組成物は、粘着フィルムの片面には第二の基材が予め貼着され、他面には剥離フィルムが設けられた、第二の基材と一体型の粘着体の粘着フィルムにも使用できる。
ついで、形成された粘着フィルム11の上に、表面13aが剥離処理された別の剥離フィルム13を表面13aが粘着フィルム11に接するように配置し、貼り合わせることにより、ノンキャリアタイプでフィルム状の粘着体10を製造することができる。
本発明の積層体は、例えば図2(b)に示すように、粘着剤組成物からなる粘着フィルム11により、第一の基材20と第二の基材30とが貼り合わせてなるものである。この例の積層体100は、第二の基材30が基材本体31と該基材本体31上に設けられた金属薄膜32とからなり、金属薄膜32を内側にして、第一の基材20と第二の基材30とが粘着フィルム11により貼り合わされている。
ここで、「透明」とは、全光線透過率が50%以上であり、ヘイズ値が5.0%以下であることを意味する。
第一の基材20の材質としては、透明性などの点から、PCが使用される場合が多いが、例えば、PETなどのポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの(メタ)アクリル樹脂、トリアセチルセルロールなどのセルロース樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ガラスなどでもよく、制限はない。
基材本体31の材質としては、第一の基材20の説明において先に例示した材質が挙げられる。
金属薄膜32は、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、銅、銀、亜鉛、スズ、インジウム、マグネシウム、およびこれらの合金からなる透明な連続膜や不連続膜、あるいは酸化インジウムスズ(ITO)など導電性金属酸化物からなる透明導電膜である。
金属薄膜32が連続膜や不連続の場合は、蒸着法やスパッタリング法により形成される。
一方、金属薄膜32が透明導電膜の場合は、導電性金属酸化物の溶液を基材本体31上に塗布し、乾燥することで形成される。
まず、図1に示す粘着体10の粘着フィルム11の片面側の剥離フィルム12を剥がし、露出した粘着フィルム11上に、図2(a)に示すように、金属薄膜32が内側(粘着フィルム側)になるように第二の基材30を貼着する。その後、もう一方の剥離フィルム13を剥がし、露出した粘着フィルム11上に、図2(b)に示すように、第一の基材20の表面を密着させる。
また、上述した各方法において、第一の基材と第二の基材とを入れ替えて各工程を行い、積層体を製造してもよい。
また、この積層体を高温高湿の環境下から低温低湿の環境下へ移しても、粘着フィルムの白化を抑制できる。これは、高温高湿の環境下において第二の基材を通過して粘着フィルムに拡散した水蒸気が、低温低湿の環境下に移動することで凝集して水へと変化したときに、この水を粘着フィルム中のポリマー(B)が取り込むためである。
さらに、粘着フィルム中の水がポリマー(B)に取り込まれるため、例えば図2に示すように、第二の基材が金属薄膜を備える場合でも、水による金属薄膜の腐食をも防止できる。
[ポリマー(A)]
表1、2に示す各単量体成分(a)を以下のように重合して、ポリマー(A1)〜(A19)を製造した。
単量体(a1)としてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル5質量部と、単量体(a2)としてN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド1質量部と、単量体(a3)としてメタクリル酸メチル10質量部、メタクリル酸ブチル5質量部、アクリル酸ブチル59質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル20質量部とからなる単量体成分(a)と、該単量体成分(a)100質量部に対して、溶媒として酢酸エチル150質量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.05質量部とを反応容器に投入した。ついで、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換し、窒素雰囲気中、攪拌下で、反応容器内の反応溶液を75℃まで昇温し、12時間反応させた。
反応後、反応容器内の液を酢酸エチルで希釈し、固形分25質量%に調整し、質量平均分子量100万、ガラス転移点−45℃のポリマー(A1)の溶液を得た。
なお、質重量平均分子量は、移動相としてTHFを用い、流速1.0mL/分の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定を行い、ポリスチレン換算での数値とした。
また、ガラス転移点は、上記式(1)に示すFoxの式から求めた。
単量体成分(a)の組成、溶媒および重合開始剤の量を表1、2に示すように変更した以外は、ポリマー(A1)と同様にして、表1、2に示す質量平均分子量およびガラス転移点のポリマー(A2)〜(A19)の溶液を得た。
「HEMA」:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(Tg:55℃)、
「4−HBA」:アクリル酸4−ヒドロキシブチル(Tg:−80℃)、
「DMAPAA」:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(Tg:134℃)、
「MMA」:メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、
「n−BMA」:メタクリル酸ブチル(Tg:20℃)、
「BA」:アクリル酸ブチル(Tg:−54℃)、
「2−EHA」:アクリル酸2−エチルヘキシル(Tg:−70℃)、
「IPAA」:イソプロピルアクリルアミド(Tg:134℃)、
「AIBN」:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル。
表3に示す各単量体成分(b)を以下のように共重合して、ポリマー(B1)〜(B8)を製造した。
単量体(b1)としてイソプロピルアクリルアミド100質量部からなる単量体成分(b)と、該単量体成分(b)100質量部に対して、溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)230質量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル12質量部とを反応容器に入れた。ついで、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換し、窒素雰囲気中、攪拌下で、反応容器内の反応溶液を75℃まで昇温し、12時間反応させた。
反応後、反応容器内の液をMIBKで希釈し、固形分25質量%に調整し、質量平均分子量1000のポリマー(B1)の溶液を得た。
なお、質重量平均分子量は、移動相としてTHFを用い、流速1.0mL/分の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定を行い、ポリスチレン換算での数値とした。
単量体成分(b)の組成、溶媒および重合開始剤の量を表3に示すように変更した以外は、ポリマー(B1)と同様にして、表3に示す質量平均分子量のポリマー(B2)〜(B8)の溶液を得た。
「IPAA」:イソプロピルアクリルアミド、
「HEMA」:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、
「n−BMA」:メタクリル酸ブチル、
「AIBN」:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル。
表4に示す各単量体成分(d)を以下のように共重合して、アクリル系ポリマー(D1)〜(D6)を製造した。
メタクリル酸メチル24.5質量部と、メタクリル酸シクロヘキシル75質量部と、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド0.5質量部とからなる単量体成分(d)と、該単量体成分(d)100質量部に対して、溶媒としてトルエン230質量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8質量部とを反応容器に入れた。ついで、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換し、窒素雰囲気中、攪拌下で、反応容器内の反応溶液を100℃まで昇温し、5時間反応させた。
反応後、反応容器内の液をトルエンで希釈し、固形分30質量%に調整し、質量平均分子量4000、ガラス転移点65℃のアクリル系ポリマー(D1)の溶液を得た。
なお、質量平均分子量およびガラス転移点は、ポリマー(A1)と同様にして求めた。
単量体成分(d)の組成、溶媒および重合開始剤の量を表4に示すように変更した以外は、アクリル系ポリマー(D1)と同様にして、表4に示す質量平均分子量およびガラス転移点のアクリル系ポリマー(D2)〜(D6)の溶液を得た。
「MMA」:メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、
「CHMA」:メタクリル酸シクロヘキシル(Tg:56℃)、
「IBXMA」:メタクリル酸イソボルニル(Tg:155℃)、
「MA」:アクリル酸メチル(Tg:8℃)、
「DMAPAA」:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(Tg:134℃)、
「AIBN」:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル。
表5に示す組成により、粘着剤組成物を製造した。なお、表中の数値は、固形分の質量部である。
ついで、シリコーン樹脂を含む剥離成分により剥離処理された軽剥離タイプの剥離PETフィルム(厚さ38μm)の剥離面に、製造された粘着剤組成物を乾燥後の厚み(形成された粘着フィルムとしての厚み)が50μmとなるようにアプリケータで塗布し、100℃で溶媒を除去して乾燥するとともに架橋反応させ、粘着フィルムを形成した。
ついで、この粘着フィルム上に、シリコーン樹脂を含む剥離成分により剥離処理された重剥離タイプの剥離PETフィルム(厚み38μm)を剥離面側が粘着フィルムに接するように貼り合わせ、23℃、50%RHで7日間放置し、粘着フィルムの両面に、表面(剥離面)が剥離処理された剥離フィルムが設けられたノンキャリアタイプでフィルム状の粘着体を得た。なお、軽剥離、重剥離とは、剥離しやすさの程度であり、軽剥離は、重剥離よりも剥離しやすいことを意味する。
(1)耐白化性の評価
粘着体を幅50mm×長さ50mmに裁断した後、軽剥離タイプの剥離PETフィルムを剥がし、光学用のPET製表面フィルムを貼着した。その後、これを23℃、50%RHで24時間放置した。その後、重剥離タイプの剥離PETフィルムを剥がし、厚さ1mmのPC基材に貼り合わせ、JIS Z 0237に準拠してロール圧着した。これを24時間静置し粘着フィルムを介してPC基材表面に光学用のPET製表面フィルムが貼着された積層体を得た。
この積層体を80℃、95%RHの高温高湿の環境下にて48時間放置した後、23℃、50%RHの低温低湿の環境下に移して1分経過後の積層体の外観を目視にて観察し、以下の評価基準にて耐白化性を評価した。2以上を合格とする。
4:粘着フィルムが白化せず、透明性に優れる。
3:粘着フィルムの一部がやや白化したが、実用上問題なし。
2:粘着フィルムの全体がやや白化したが、実用上問題なし。
1:粘着フィルムの一部または全体が白化し、不透明な部分がある。
(1)の耐白化性の評価と同様にして、粘着フィルムを介してPC基材表面に光学用のPET製表面フィルムが貼着された積層体を得た。
この積層体を80℃、95%RHの高温高湿の環境下にて48時間放置した後、23℃、50%RHの低温低湿の環境下に移して24時間経過後の積層体の表面における気泡生成の様子をルーペで観察し、以下の評価基準にて耐ブリスター性を評価した。2以上を合格とする。なお、耐ブリスター性は粘着性の指標であり、耐ブリスター性に優れるほど、粘着性に優れることを意味する。
4:気泡が全く観察されず、ブリスターが発生していない。
3:部分的に微細な気泡が観察されるが、大きな気泡は観察されず、実用上問題なし。
2:全体的に微細な気泡が観察されるが、大きな気泡は観察されず、実用上問題なし。
1:大きな気泡が観察される。
まず、ブランク試験として、以下の測定を行った。
幅50mm×長さ130mmのITO−PETフィルムの中央部の2点間(2点間の距離:60mm)の抵抗値をデジタルマルチメーター(アドバンスト社製、「R6581D」)を用いて測定した。これを初期抵抗値(X1)とする。ついで、ITO−PETフィルムを高温高湿の環境下(80℃、95%RH)で1000時間放置して曝露処理を行った。曝露処理後のITO−PETフィルムの抵抗値を初期抵抗値(X1)と同様にして測定した。これを曝露処理後の抵抗値(Y1)とする。初期抵抗値(X1)および曝露処理後の抵抗値(Y1)の結果より、抵抗値の変化(X1−Y1)を求めたところ、51であった。
この試験片について、粘着フィルムを挟んだ2点間(2点間の距離:60mm)の抵抗値を、デジタルマルチメーターを用いて測定した。これを初期抵抗値(X2)とする。ついで、試験片を高温高湿の環境下(80℃、95%RH)で1000時間放置して曝露処理を行った。曝露処理後の試験片の抵抗値を初期抵抗値(X2)と同様にして測定した。これを曝露処理後の抵抗値(Y2)とする。
初期抵抗値(X2)および曝露処理後の抵抗値(Y2)の結果より、抵抗値の変化(X2−Y2)を求めた。先に求めたブランク試験における抵抗値の変化(X1−Y1)の値を基に、以下の評価基準にて耐腐食性を評価した。2以上を合格とする。
4:抵抗値の変化(X2−Y2)が51未満。
3:抵抗値の変化(X2−Y2)が51〜55。
2:抵抗値の変化(X2−Y2)が55を超え、58未満。
1:抵抗値の変化(X2−Y2)が58以上。
粘着体を幅50mm×長さ50mmに裁断した後、軽剥離タイプの剥離PETフィルムを剥がし、光学用のPET製表面フィルムを貼着した。その後、これを23℃、50%RHで24時間放置した。その後、重剥離タイプの剥離PETフィルムを剥がし、厚さ2mmのガラス板に貼り合わせ、JIS Z 0237に準拠してロール圧着した。これを24時間静置し、透明性評価用の積層体を得た。
ついで、光学用のPET製表面フィルム、ガラス板および透明性評価用の積層体について、ヘイズメーター(村上色彩研究所製、「HM−65W」)でヘイズ値(曇り度)を測定し、下記式(2)より粘着フィルムのヘイズ値を算出した。
粘着フィルムのヘイズ値=(透明性評価用の積層体のヘイズ値)−(光学用のPET製表面フィルムのヘイズ値+ガラス板のヘイズ値) ・・・(2)
得られた粘着フィルムのヘイズ値を基に、以下の評価基準にて透明性を評価した。ヘイズ値が低いほど透明性に優れることを意味し、2以上を合格とする。なお、表中の「*」は、粘着フィルムが黄変した場合を示す。
4:ヘイズ値が0.5未満。
3:ヘイズ値が0.5以上、1.0未満。
2:ヘイズ値が1.0以上、2.0未満。
1:ヘイズ値が2.0以上。
粘着体の製造において、軽剥離タイプの剥離PETフィルムの剥離面に粘着剤組成物を塗布したときの塗膜の状態について目視にて観察し、以下の評価基準にて塗工性を評価した。2以上を合格とする。
4:ムラが見られず、塗工性に優れる。
3:部分的に弱いムラが見られるが、塗工性に問題はなし。
2:全体的に弱いムラが見られ、やや塗工性に劣るが、実用上問題なし。
1:ムラが見られ、塗工性に問題あり。
表5、6に示す配合により、粘着剤組成物を製造した。
そして、実施例1と同様にしてフィルム状の粘着体、積層体、および試験片を製造し、同様に評価した。結果を表5、6に示す。
「HMDI−1」:旭化成ケミカルズ株式会社製の「デュラネート24A−100」(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体)、NCO%=23.5%、
「HMDI−2」:住化バイエルウレタン株式会社製の「スミジュールN3300」(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)、NCO%=21.8%。
特に、アクリル系ポリマー(D)を含有する実施例5〜12、18で得られた粘着剤組成物は、他の実施例で得られた粘着剤組成物に比べて粘着性に優れていた。
また、ポリマー(B)の含有量がポリマー(A)100質量部に対して2〜20質量部である実施例1〜16、18で得られた粘着剤組成物は、透明性にも優れていた。
なお、実施例12で得られた粘着剤組成物は、DMAPAAを含有しないため、他の実施例で得られた粘着剤組成物に比べて耐腐食性に若干劣っていた。
また、実施例17で得られた粘着剤組成物は、ポリマー(B)の含有量がポリマー(A)100質量部に対して30質量部であったため、他の実施例で得られた粘着剤組成物に比べて透明性に劣るものであった。
ポリマー(B2)の含有量がポリマー(A)100質量部に対して1質量部と少ない比較例3で得られた粘着剤組成物は、耐白化性に劣り、高温高湿の環境下から低温低湿の環境下へ外的環境が急激に変化したときに、粘着フィルムが白化した。なお、比較例3の粘着剤組成物はDMAPAAを含有しているため、耐腐食性は合格レベルであったものの、耐白化性に劣るため、実施例7の粘着剤組成物に比べると耐腐食性は劣るものであった。
単量体(a1)の含有量が2質量%、または50質量%である単量体成分(a)を重合して得られたポリマー(A17)、(A18)を用いた比較例4、5の粘着剤組成物は、粘着性に劣っていた。特に、単量体(a1)の含有量が少ないポリマー(A17)を用いた比較例4の粘着剤組成物の場合、ポリマー(B1)との相溶性が悪く、透明性にも劣っていた。
ポリマー(B)を含有せず、その代わりに、イソプロピルアクリルアミドと、単量体(a1)〜(a3)とを共重合させたポリマー(A19)を用いた比較例6の粘着剤組成物は、耐白化性に劣り、高温高湿の環境下から低温低湿の環境下へ外的環境が急激に変化したときに、粘着フィルムが白化した。なお、比較例6の粘着剤組成物はDMAPAAを含有しないため、耐腐食性にも劣っていた。
Claims (3)
- 水酸基含有重合性単量体を5〜40質量%含む単量体成分(a)を重合したポリマー(A)と、イソプロピルアクリルアミドを90質量%超含む単量体成分(b)を重合したポリマー(B)と、イソシアネート(C)とを含有し、
前記ポリマー(A)100質量部に対して、ポリマー(B)の含有量が2質量部以上であり、イソシアネート(C)の含有量が0.2〜1.4質量部であることを特徴とする粘着剤組成物。 - 請求項1に記載の粘着剤組成物により、第一の基材と第二の基材とが貼り合わされたことを特徴とする積層体。
- 前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が透明である、請求項2に記載の積層体。
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