JP2013058310A - 被覆活物質およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明では、電気自動車等の移動体用途あるいは電力貯蔵等の定置用途のリチウムイオン電池において、負荷特性、サイクル寿命、保存特性を改善し、長寿命な電池を提供することを目的としている。
【解決手段】リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、を有するリチウムイオン二次電池において、構造I、構造II、構造III、構造IV、で示されるように、活物質にポリエーテル部と、カルボン酸結合部とを有するポリマ化合物を結合させたリチウムイオン二次電池。
【選択図】 図1

Description

本発明は、被覆活物質およびそれを用いたリチウム二次電池に関する。
リチウムイオン電池を代表とするリチウムイオン電池は高いエネルギー密度を有し、電気自動車用や電力貯蔵用の電池として注目されている。特に、電気自動車では、エンジンを搭載しないゼロエミッション電気自動車、エンジンと二次電池の両方を搭載したハイブリッド電気自動車、さらには系統電源から直接充電させるプラグインハイブリッド電気自動車がある。また、電力を貯蔵し、電力系統が遮断された非常時に電力を供給する定置式電力貯蔵システムとしての用途も期待されている。
このような多様な用途に対し、リチウムイオン電池に大きな出力と優れた耐久性が要求されている。すなわち、移動体用電源では起動停止時に0.1時間率以上の出力性能、停電時の電力バックアップや負荷平準化を目的とした定置用途電源においても1時間率から0.2時間率の出力性能が要求されている。ここで、1時間率とはリチウムイオン電池の定格容量を1時間で使い切るときの充電または放電の速度を表す。0.2時間率では1時間率の電流の5倍、0.1時間率ではさらに10倍に相当する大電流にて充電または放電する速度である。耐久性については、6000サイクル以上、走行距離換算で20万km以上の寿命が求められている。
リチウムイオン電池の充電または放電の電流値を大きくすると、電極単位面積当たりの電流(すなわち電流密度)が増大するために、電池内部にて不均一な発熱が起こり、電極面の位置によるリチウムイオンの吸蔵放出量にばらつきが生じる場合がある。そのような場合に、充放電により大きなストレスの加わった電池は寿命劣化してしまう問題がある。
この問題を回避するために、リチウムイオン導電性ポリマを電解質またはバインダに用いる技術、あるいはカルボン酸等の添加剤に由来する被膜を電池活物質表面に形成する技術が検討されている。
特許文献1には、正極活物質または負極活物質の少なくとも一方の粒子表面を、ポリエチレンオキシド(PEO)等のリチウムイオン伝導性ポリマにより部分的に被覆する技術が開示されている。
特許文献2には、溶融塩モノマーを重合した高分子化合物を含む電解質を用いた二次電池に関する発明が開示されている。
特許文献3は、正極、負極または電解質の少なくとも1つに、第三級アルキルカルボン酸エステルを含有させて非水二次電池を構成する発明が開示されている。
特許文献4は、リチウムイオン伝導性ポリマ電解質を用いた二次電池に関する発明である。特許文献5は、金属塩を添加してイオン伝導度を向上させた高分子固体電解質を用いた二次電池の発明に関する。特許文献6は、セルロース誘導体からなる親水性結着材とポリエーテル構造を含む親電解液性結着材とを含む又はポリエーテル構造からなる親電解液性側鎖をグラフト化したセルロース誘導体からなるブロック型親水性−親電解液性結着材を用いた二次電池に関する。特許文献7は、カルボン酸無水有機化合物を含む非水電解液を用いたリチウム二次電池に関する。
特開2002−373643号公報 特開2001−199961号公報 特開2002−141111号公報 特開昭63−193954号公報 特開2002−33016号公報 特許第3960193号公報 特開2006−66320号公報
従来技術を鑑み、本発明は、以下の3つの課題を解決することとした。
第一の課題は、電極活物質が電解液と直接接触しないようにし、電極活物質表面に不活性な被膜が新たに形成されることを防止することである。活物質は、リチウムイオンの吸蔵時に体積が膨張する。粒子表面に部分的な露出がある場合、活物質粒子の膨張に伴い、露出部の面積が増大する。その結果、新たな被膜が成長してしまう。従って、活物質粒子をリチウムイオン伝導性ポリマに覆うことが重要である。
第二の課題は、前記被膜の耐久性を向上させることである。前記ポリマの末端を電極活物質の表面原子に結合させると、活物質粒子が膨張または収縮しても、ポリマが脱落することがなく、長期にわたって耐久性に優れたポリマの被膜を形成することができる。
第三の課題は、リチウムイオンを伝達させるために、陽イオンに配位する電荷を前記ポリマに付与することである。すなわち、前記ポリマに陰イオンや不対電子を有する複数個の部位があれば、リチウムイオンがその部位に結合し、異なる部位間を移動することができる。よって、前記ポリマに陽イオンがあることは不適当である。
本発明では、電気自動車等の移動体用途あるいは電力貯蔵等の定置用途のリチウムイオン電池において、負荷特性、サイクル寿命、保存特性を改善し、長寿命な電池を提供することを目的としている。
本発明の特徴は、例えば、以下の通りである。
本発明の電池活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出する活物質と、活物質に結合されたポリマ化合物とを有し、ポリマ化合物は、構造I、構造II、構造III、構造IVの少なくともいずれか一種である被覆活物質である。
1−(OCR2CR2)n−Y1−COO−Z (構造I)
1−(OCR2CR2)n−Y1−OOC−Z (構造II)
2−(OCR2)n−Y2−COO−Z (構造III)
2−(OCR2)n−Y2−OOC−Z (構造IV)
1は、水素、炭素数3n以下の炭化水素基、炭素数3n以下のハロゲン化炭化水素基、Z−OOC−Y1−、Z−COO−Y1−のいずれかである。X2は、水素、炭素数2n以下の炭化水素基、炭素数2n以下のハロゲン化炭化水素、Z−OOC−Y2−、あるいはZ−COO−Y2−のいずれかである。X2がZ−OOC−Y2−、あるいはZ−COO−Y2−のときは、2箇所のZで結合していることを意味する。またはY1は、炭素数3n以下の炭化水素基、エステル結合を含む炭素数3n以下の炭化水素基、または、単結合である。Y2は、炭素数2n以下の炭化水素基、炭素数3n以下のハロゲン化炭化水素基、または、単結合である。Rは水素、または、ハロゲンである。Zは、前記正極活物質または前記負極活物質粒子表面に存在する元素である。nは1以上の整数である。
本発明の別の形態は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、を有するリチウムイオン二次電池において、正極は正極合剤を有し、負極は負極合剤を有し、正極合剤は正極活物質を有し、負極合剤は負極活物質を有し、正極活物質または負極活物質は上記の被覆活物質であるリチウムイオン二次電池である。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の負荷特性、サイクル寿命、保存特性を改善し、長寿命な電池を提供するができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
リチウムイオン二次電池の図。 リチウムイオン二次電池を用いたモジュールの図。
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
従来、リチウムイオン電池の充電または放電の電流値を大きくすると、電極単位面積当たりの電流(すなわち電流密度)が増大するために、電池内部にて不均一な発熱が起こり、電極面の位置によるリチウムイオンの吸蔵放出量にばらつきが生じる場合がある。
充放電により大きなストレスの加わった電池活物質は、その活物質粒子が他の粒子から脱落したり、電解液の分解によって活物質表面の被膜が成長する劣化を受けてしまう。その劣化が進行すると、電池の出力が低下し、寿命が悪化する。特に、高温環境下において充放電サイクルを繰り返すことにより、電圧低下が顕著となる。充放電サイクルによって、電池活物質の粒子が膨張・収縮を繰り返し、徐々に粒子間の電子ネットワークが切断されてしまうためである。
発明者らは上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、リチウムイオン電池に用いられる正極活物質または負極活物質に、リチウムイオン導電性を持つポリマ化合物を結合させることによって、電池の長寿命化を可能にする手段を見出すに至った。
ポリマ化合物を、正極活物質または、負極活物質上に結合させる構成として、以下に示した構造I、構造II、構造III、構造IV、を用いることができる。
1−(OCR2CR2)n−Y1−COO−Z (構造I)
1−(OCR2CR2)n−Y1−OOC−Z (構造II)
2−(OCR2)n−Y2−COO−Z (構造III)
2−(OCR2)n−Y2−OOC−Z (構造IV)
1は、水素、炭素数3n以下の炭化水素基、炭素数3n以下のハロゲン化炭化水素基、Z−OOC−Y1−、Z−COO−Y1−のいずれかである。X2は、水素、炭素数2n以下の炭化水素基、炭素数2n以下のハロゲン化炭化水素、Z−OOC−Y2−、Z−COO−Y2−のいずれかである。X2がZ−OOC−Y2−、あるいはZ−COO−Y2−のときは、2箇所のZで結合していることを意味する。Y1は、炭素数3n以下の炭化水素基または、または、エステル結合を含む炭素数3n以下の炭化水素基、または、単結合である。Y2は、炭素数2n以下の炭化水素基または、炭素数3n以下のハロゲン化炭化水素基、または、単結合である。Rは水素、または、ハロゲンである。Zは、正極活物質または、負極活物質粒子表面に存在する任意の元素である。nは1以上の整数である。
ここで、エーテルが連なる部分−(OCR2CR2)n−、−(OCR2)n−を、ポリエーテル部と呼ぶこととする。また、ポリエーテル部とZ、あるいは、YとZを結ぶ−COO−、−OOC−をカルボン酸結合部と呼ぶこととする。ポリエーテル部の酸素と、カルボン酸結合部の2種類の酸素は、ともに不対電子を有しているので、それがリチウムイオンに配位することができる。その結果、電解液中で配位していた溶媒からリチウムイオンを引き剥がし、溶媒がリチウムイオンとともに電極活物質に到達しないようにすることが可能となる。また、上記のポリマ化合物に複数の酸素があるので、リチウムイオンがその酸素に結合し、異なる酸素間を移動することができる。
構造IからIVの右端に示した電極活物質表面との結合を形成し、電極活物質表面の全体または一部を被覆させることができる。その結果、電極活物質が電解液と直接的に接触しにくくなって、リチウムイオンの吸蔵時に粒子の体積が膨張しても、新たな被膜が成長しない。
上記のポリマ化合物の末端は、電極活物質の表面原子に結合しているので、活物質粒子が膨張または収縮しても、ポリマが電極活物質より脱落することがなく、長期にわたって耐久性に優れたポリマの被膜を保持することができる。
ポリエーテル部は、上記のように−OCR2CR2−の繰り返し構造、または、−OCR2−の繰り返し構造でもよいが、−OCR2CR2−と−OCR2−とが周期性をもった繰り返し構造、または、両者がランダムに混ざった構造でもよい。さらに、リチウムイオン伝導を妨げない範囲で、ポリエーテル部にアルキル基やフェニル基などの他の官能基を含んでいても構わない。
構造I〜IVは、いずれか一種を単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いても構わない。
ポリマ化合物を正極活物質または、負極活物質上に結合させることで、活物質の膨張・収縮による、ポリマ化合物の活物質表面からの脱離が抑えられると考えられる。これにより、粒子間の電子ネットワークの切断を抑えることができる。この結果、サイクル寿命、保存特性を改善することができると考えられる。正極活物質または負極活物質にポリマ化合物が結合されたものを被覆活物質とする。
本発明のポリマ化合物は、エーテル結合を有する。エーテル結合部は、電解液中のリチウムイオンから溶媒の脱離を促進し、リチウムイオンのみが透過する経路を確保するので、溶媒が電池活物質表面で過剰に分解することを防止する機能を有する。
この結果、電極の抵抗増加を抑制し、電池の出力維持に有効である。
また、X1をZ−OOC−Y1−、Z−COO−Y1−、X2をZ−OOC−Y2−、Z−COO−Y2−とすることで、X1、X2の部分でも活物質表面上のZと結合させることができる。この構成によって、一分子のポリマ化合物が、活物質表面と2点で結合することになり、ポリマ化合物と活物質粒子の結合力を強化するメリットがある。
以上のように、ポリマ化合物が活物質表面に結合した構成をとることによって、発明者らは以下で述べる機構によって電池の長寿命化が図られると考えている。
正極活物質、負極活物質は充放電に伴うリチウムイオン貯蔵量の変化により、体積の膨張、収縮を起こす。活物質は、膨張の際、互いの粒子が押し合うことにより、位置が変わる可能性がある。位置がずれたまま、リチウムイオンを放出した活物質の体積が小さくなることで、粒子間の接触が悪くなることが考えられる。ポリマ化合物が活物質表面に結合した構成をとることによって、活物質が膨張収縮を起こしたとしても、活物質粒子間のリチウムイオン移動経路を確保することができると考えられる。ポリマ化合物が弾性を有しているからである。
また、ポリマ化合物が活物質表面に結合した構成をとることによって、電解液から活物質へのリチウムイオン拡散を容易にする効果が得られると考えられる。リチウムイオンを運ぶポリエーテル部と、活物質とが、カルボン酸結合部によって結合しているため、ポリマ化合物が単に活物質表面に被覆されているよりも、リチウムイオンが円滑に活物質中に運ばれると考えられる。すなわち、リチウムイオンの良好な固体電解質被膜が得られる。
また、前記結合の形成によって、長期間にわたって被覆の状態が保持される。
リチウムイオンが活物質に吸蔵されるときは、ポリマ化合物のXからZに向かってリチウムイオンが移動すると考えられる。エーテル結合部、−(OCH2CH2)n−または−(OCH2)n−は、電解液中で溶媒和されたリチウムイオンからリチウムイオンのみを引き抜き、エーテル部の酸素にリチウムイオンを保持させる。そのリチウムイオンは各構造の化学式の左側から右側へ移動し、カルボン酸結合部に到達した後に、Zから電池活物質に吸蔵される。
リチウムイオンが活物質から放出されるときには、構造I、構造II、構造III、構造IVの各構造においてZからXに向かってリチウムイオンが移動する。その移動の途中で、リチウムイオンの近傍に存在する電解液の溶媒へ、リチウムイオンが移動し、リチウムイオンは溶媒和される。その溶媒和されたリチウムイオンは電解液へ拡散していく。
また、本発明の構成は、固体電解質被膜(SEI;Solid Electrolyte Interface)としての効果が得られる点で優れている。電解液中の成分は、負極周辺において、還元的に分解し、炭酸リチウムやフッ化リチウム等の副反応物を生成する。このような副反応物は、多くの場合、抵抗増加の原因となる。活物質を被覆することにより、このような還元分解を防ぐことができる。ポリマ化合物が活物質表面に結合した構成をとることで、ポリマ化合物が単に活物質表面に被覆されているよりも、活物質から脱離しにくい被膜となると考えられる。
nは、1以上の整数であり、エーテル結合部の長さに関係する。nは10以上、100以下であることが望ましい。−CH2CH2O−のユニットの長さは、C−C結合の長さ(0.154nm)とC−O結合の長さ(0.143nm)の和(0.3nm)に、ユニット両端を連結させるために必要な1個分のC−C結合長さを加えた値(0.45nm)に近似される。ポリマ化合物の被覆層の厚さは、少なくとも3〜5nmよりも大きいことが良い。これ以上の厚さになれば、活物質表面の全体を覆うことが可能となる。また、被覆層の厚さは200nm以下であることが望ましい。
200nm以上に厚膜になると、リチウムイオンの拡散距離が長くなり、充電と放電が困難になるからである。さらに200nmより薄くなるほど、急速な充電と放電が容易になり、その値は50nm以下であることが望ましい。これをnに換算すると、3〜5nmはn=7〜11であり、200nmはn=440、50nmはn=110に相当する。
ポリマの分子量は平均分子量を中心としたばらつきを有している。本発明では、ポリマの数平均分子量を基準にnを定義した。測定誤差を考慮して、nは近似的に10以上、500以下の範囲が適しており、10以上100以下にするとさらに好適である。
リチウムイオン伝導度の観点から、Y1、Y2は、なるべく短いことが好ましい。特に、Y1、Y2は、ポリエーテル部とカルボン酸結合部を直接的に連結する単結合であることがより望ましい。これらの構造によると、リチウムイオンの移動のために必要な酸素原子の比率(ポリマ分子量に占める酸素原子量の合計の割合)が高いため、リチウムイオンの移動速度が速くなる、すなわち電池の出力を増大させることができる利点がある。
1、Y2が存在する構造においても、リチウムイオンは、ポリエーテル部のエーテル結合を利用しながら、拡散することができる。リチウムイオンが、ポリエーテル部と、カルボン酸部の間をより円滑に移動するためには、以下で述べる要件を満たすことが望ましい。
1、Y2の代表例として、アルキレン(−Cm2m−)がある。ここで、mは、アルキレンの炭素数を意味し、1以上の整数である。この直鎖状の炭素結合の一部を、二重結合または三重結合に置き換えても良い。炭素−炭素結合の間に、芳香族環などの炭素6員環や炭素5員環を挿入しても良いし、前記炭素−炭素結合の炭素原子に側鎖として分岐させることも可能である。これらの環構造をなす炭素を酸素や窒素に変更しても良い。さらに、直鎖状に並んだ炭素原子に結合する水素の一部またはすべてを、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素にしても良い。ハロゲンに置換することによって炭素結合が分解しにくくなる利点がある。また、水素の一部を、アルキル基等の側鎖にしても良い。
1、Y2が存在する構成においては、ポリエーテル部とカルボン酸結合部は、直接結合しておらず、Y1、Y2を介している。このため、リチウムイオンは、ポリエーテル部とカルボン酸結合部の間を移動しにくいように見える。しかし、電極活物質表面には、多数のポリマ化合物からなる層が形成され、ポリマ化合物同士が近接している。このため、リチウムイオンは、複数のポリマ化合物の間を飛び移りながら、電極活物質表面に拡散することができる。すなわち、Yの結合位置に到達したリチウムイオンは、隣接するポリマ化合物のポリエーテル結合部を乗り換えながら、電極活物質表面に到達することができる。
このように、リチウムイオンが複数のポリマ化合物間を移動することができるために、Y1、Y2の長さを制限することが好ましい。Y1、Y2が長すぎる場合、複数のポリマ化合物の間で、リチウムイオン伝導度の乏しいYの部分が重なり合う確率が高くなる。この結果、リチウムイオンの移動経路が遮断されてしまう可能性がある。
1、Y2の長さを制限する一つの指標としては、Y1、Y2の長さがポリエーテル結合部の長さ以下であることが望ましい。Y1、Y2の長さと、Y1、Y2の炭素数とは互いに比例する。仮に、炭素数m1のY1の長さをm1とする。構造I、構造IIの場合、ポリエーテル結合部は2個の炭素原子と1個の酸素原子からなるので、その結合部の長さは3nと近似される。したがって、m1は3n以下であることが望ましいと考えられる。同様の考え方から、構造III、構造IVにおいては、Y2の長さm2は2n以下であることが望ましいと考えられる。当然ながら、Y1、Y2が省略され、ポリエーテル結合部とカルボン酸結合部が直接、連結されている構造が、リチウムイオンの拡散速度を最大にする。
さらに、Y1、Y2が疎水性直鎖部に6員環(例えば−C64−)を含んでいる場合には、2つの結合位置の最短直線距離に近似する。すなわち、パラ位の結合のときは1+2×cos(π/3)個の炭素原子数、メタ位の結合のときは2×cos(π/6)個の炭素原子数、オルト位の結合のときは1個の炭素原子数とする。炭素の一部が酸素に置換されていても同様である。また、5員環の場合も同じように2つの結合位置の最短直線距離で近似する。
1、X2は、鎖状または環状のアルキル基または芳香族基である。また、それを構成する水素または炭素の一部を、酸素または酸素を含む官能基(水酸基、カルボニル基、カルボン酸基など)に置換しても良い。あるいは、前記水素の一部またはすべてをフッ素等のハロゲンに置換しても良い。このようにすれば、化学的または熱的な安定性が高まり、さらに好適である。ただし、これらの置換は、本発明の効果を得るための必須要件ではなく、X1、X2は任意の構造の炭化水素から選択することができる。
1、X2がCH3−(Cm2m)−のアルキル基とすると、炭素数m+1は任意である。
炭素の一部をエーテル結合に変更したり、水素の一部をハロゲンに置換しても良い。また、炭素鎖の途中に芳香族環を挿入しても良い。
1、X2またはエーテル結合部の直鎖同士を、酸素や硫黄、あるいは−CH2−などのアルキレンにより連結させ、ポリマ分子に架橋を形成することも可能である。これによって、ポリマ化合物の構造が強固になる効果が得られる。
ポリエーテル結合部の水素をハロゲンに置換すると、結合部の化学的安定性が向上し、より望ましい。その中でもフッ素が、炭素−フッ素結合エネルギーが大きく(485kJ/mol)、特に好適である。他のハロゲンの結合エネルギーがそれぞれC−Cl(339kJ/mol)、C−Br(285kJ/mol)、C−I(213kJ/mol)であることから、フッ素に次いで、塩素、臭素、ヨウ素の順に用いることができる。
リチウムイオン伝導度の観点から、X1、X2は、なるべく短いことが好ましい。これらの構造によると、リチウムイオンの移動のために必要な酸素原子の比率(ポリマ分子量に占める酸素原子量の合計の割合)が高いため、リチウムイオンの移動速度が速くなる、すなわち電池の出力を増大させることができる利点がある。
また、X1、X2の長さは、Y1、Y2と同様、ポリエーテル結合部の長さよりも短いことが好ましい。リチウムイオンの拡散速度を高める上で好適である。例えば、X1がCH3−(Cm2m)−のアルキル基とすると、炭素数m+1は任意である。ただし、その炭素数が、ポリエーテル結合部の長さ(炭素原子2個と酸素原子1個からなる繰り返しがn回あるので、3nと計算される。)より短い方が、X1がリチウムイオンの拡散を邪魔しないので、好適である。X1の炭素数が3nよりも大きくなると、Xが隣接するポリエーテル結合部に重なり合う確率が高くなり、X1がリチウムイオンの脱溶媒を阻害する場合があるためである。X2とY2の関係も、X1とY1の関係と同様であり、X2とY2の場合は2nで考慮する。
Zは、ポリマ化合物と結合する、活物質上の任意の元素である。任意の元素は、ポリマ化合物中のカルボン酸結合部と結合を形成できればよく、陽イオンになる性質があって、酸素と結合する元素であればかまわない。任意の元素としては、酸化物を形成しうる元素、例えば炭素、ケイ素、すず、の他、Ti、Mn、V、Fe、Co、Ni、等の遷移金属元素が挙げられる。元素Zにカルボン酸結合部が化学結合を形成し、電池活物質粒子表面を本発明のポリマ化合物で被覆する。すなわち、Zが活物質粒子表面であり、Xが電解液に最も近い位置にある。
本発明では、ポリマ化合物と、活物質とが直接結合する構成を有する。本発明の効果を得るためには、ポリエーテル部と活物質とが直接的に結合していることが最良である。ただし、ポリマ化合物の一部が他のリチウムイオン導電性材料(ポリエチレンオキシドなどの高分子を含む有機材料、またはヘテロポリ酸などの無機材料であることを問わない。)を介して、間接的に活物質表面に付着していても良い。製造の観点からは、ポリマ化合物にカルボン酸結合部を設けることが望ましい。このカルボン酸と、活物質表面上の元素Z、との間に共有結合を形成させることが望ましい。
本発明のポリマ化合物を正極活物質の表面に結合させるために、活物質と結合する前のポリマ化合物は、末端にカルボン酸の無水物の構造を有していることが望ましい。末端が酸の形(−COOH)のポリマ化合物を用いた場合、その酸によって正極活物質を構成する金属が溶出し、活物質が変質する場合がある。酸無水物の構造をもつポリマ化合物を用いれば、酸による活物質表面の変質が起こらない。
無水物構造を得るために必要な2個のカルボン酸基(−COOH)は、一分子のポリマ化合物の中に含まれる2個のカルボン酸基、あるいは別々の分子に含まれる2個のカルボン酸基であっても良い。ポリマ化合物が正極活物質に添加される以前の末端の構造は、Zが水素(H)で表されるカルボン酸となっている。これを、熱処理または脱水することにより、無水物とすることができる(式1)。無水物の結合部は、(式1)における
C−O−C
‖ ‖
O O
の部分である。なお、脱水剤にはP25などの公知の材料を用いることができる。
Y−(OCH2CH2)nCOOH+HOOC(CH2CH2O)n−Y
→ Y−(OCH2CH2)nC−O−C(CH2CH2O)n−Y+H2O (式1)
‖ ‖
O O
酸無水型のポリマ化合物を電池活物質に添加することで、初期充放電の過程において活物質表面に結合が形成される。活物質、バインダ、導電剤、ポリマ化合物等を溶媒に添加したスラリを作製し、このスラリを集電体に塗布、乾燥させることで正極、負極を作製することができる。電池を組み立てた後、ポリマ化合物と活物質とを結合させるために初期充電を行う。このとき、酸無水物は正極表面で−COOと−COに分解し、前者はそのまま正極表面の金属原子に結合して−COO−Z(Zは正極活物質の金属原子である。)となり、後者は正極表面の酸素に結合して−COO−Z(Zは酸素原子である。)となる。
酸無水物の形で活物質とポリマ化合物とを結合させるこの工程は、負極、正極両方に対して用いることができる。負極にポリマ化合物を添加し、電解液中で充電を行うと、電解液の溶媒が還元分解される。その溶媒から酸素が奪われて、酸無水物が2個の−COOへ変化し、最終的に負極表面にポリマ化合物が結合した状態となる。
ポリマ化合物のカルボン酸末端を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩とした形でスラリに添加し、初期充電により活物質と結合させてもよい。これらの塩を用いる場合、水を溶媒としたスラリから電極を作製することができる。
構造I〜IVのポリマ化合物のエーテル結合部またはY1、Y2に含まれるアルキルあるいは水素を、隣接するポリマ化合物間エーテル結合、エステル結合、カルボニル結合、アルキレン結合など任意の化学結合に置換し、複数のポリマ化合物を結合させること(すなわち架橋構造にすること)が可能である。化学結合の数は少なくとも1以上であればよい。
また、化学結合は活物質表面に形成する前に形成しても良いし、活物質表面に結合した後であっても良い。一つのポリマを2箇所の結合によって活物質表面に連結されている。よって、1箇所で連結される構造I〜IVよりも、強い結合力を発現する。そのため、より耐久性に優れたポリマ被覆層が提供される。
架橋構造の形成には、ポリマ化合物を結合しようとする複数の炭素原子に、水酸基、カルボキシル基を、公知の有機合成の手法によって導入する。次いで、架橋させる分子(以下、架橋分子と記す。)、例えばグリコール(水酸基を2つ持ったアルコール)、2つのアシル結合を有する炭化水素化合物、2つのカルボン酸基を有する炭化水素化合物を、ポリマに添加し、脱水反応、脱ハロゲン反応などの公知の有機反応によって、架橋分子を複数のポリマ分子の間に挿入することができる。また、前述の炭化水素にエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合を含ませておけば、その架橋分子の酸素がリチウムイオンの拡散を促進するので、より好適である。
カルボン酸結合部に含まれる酸素のモル数に対する、ポリエーテル部に含まれる酸素のモル数の比は、10よりも大きいことが好ましい。本発明のポリマのポリエーテル結合部のnが10以上であることから説明される。
以下、上述のポリマ化合物を用いた正極、負極の例について記述する。
上述のポリマ化合物は正極活物質または負極活物質のいずれか、または両方にそれぞれ混合して、正極または負極を製造することができる。活物質とポリマ化合物を混合し、溶媒を混合して、正極または負極のスラリを調製する。用いる溶媒は、ポリマ化合物に浸透しにくいものが望ましい。
正極に本発明のポリマ化合物を用いる場合は、例えば、正極活物質粉末、本発明のポリマ化合物ならびにバインダを混合し、ついで溶媒を添加し、十分に混練または分散させて、スラリを調製することができる。
正極活物質を例示すると、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24が代表例である。
他に、LiMnO3、LiMn23、LiMnO2、Li4Mn512、LiMn2-xx2(ただし、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn、Taであって、x=0.01〜0.2)、Li2Mn3MO8(ただし、M=Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Li1-xAxMn24(ただし、A=Mg、B、Al、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Caであって、x=0.01〜0.1)、LiNi1-xMxO2(ただし、M=Co、Fe、Ga、x=0.01〜0.2)、LiFeO2、Fe2(SO4)3、LiCo1-xx2(ただし、M=Ni、Fe、Mnであって、x=0.01〜0.2)、LiNi1-xx2(ただし、M=Mn、Fe、Co、Al、Ga、Ca、Mgであって、x=0.01〜0.2)、Fe(MoO43、FeF3、LiFePO4、LiMnPO4などを列挙することができる。本実施例では、正極活物質にLiNi1/3Mn1/3Co1/32を選択した。ただし、本発明は正極材料に何ら制約を受けないので、これらの材料に限定されない。
正極活物質の粒径は、合剤層の厚さ以下になるように規定される。正極活物質粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級、風流分級などにより粗粒を除去し、合剤層厚さ以下の粒子を作製する。
正極においては、ポリマ化合物を正極活物質に結合させることで、正極付近で起こる問題を解決することができると考えられる。正極活物質上では、電解液が酸化されることが知られている。電解液が酸化されると、正極活物質の元素Zが還元されて、充放電反応に寄与しなくなる問題が生じる。あるいは、Zが溶出して正極活物質の結晶構造が崩壊する場合がある。また、このような劣化反応が起こらなくても、電解液の酸化によって、正極にリチウムイオンが取り込まれて、正極の充電レベルが下がる、すなわち正極が自己放電をしてしまう。しかし、本発明のポリマ化合物を用いると、ポリマ化合物がZに結合し、電解液の還元反応サイトを閉塞するため、上述の電解液酸化反応を防止する効果が得られる。電解液の酸化反応は二酸化炭素などのガスの発生を伴うので、本発明のポリマ化合物を用いて電池の膨れを抑止することができる。
バインダにはポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン、ポリイミド、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリアクリル酸などの公知の材料を用いることができる。溶媒は、有機溶媒、水などであって、本発明のポリマ化合物を変質させないものであれば、任意に選択することができる。
活物質表面に結合させたポリマ化合物には、合剤中の粒子同士を結合させる機能がある。このため、ポリマ化合物を使った場合、バインダの量を低減または、省くことができる。バインダの量を低減、または、省くことで、合剤中の抵抗を低減することができ、電池の高出力化に繋がると考えられる。バインダとポリマ化合物の混合比(体積比率)を、ポリマ化合物1に対してバインダの比率は0以上1以下とすれば、活物質表面の面積の50%以上をポリマ化合物で被覆することになり、リチウムイオンの透過を可能とすることができる。バインダの比率を0以上0.75以下とすれば、急速の充電、放電が可能となり、さらに好ましい。バインダとポリマ化合物の比重(体積当たりの重量)はほぼ同程度であるため、バインダの比率は、バインダとポリマ化合物の合計重量に対するバインダの重量で表すことができる。なお、ポリマ化合物に対するバインダの比率は、正負極両方に適応できる。
導電剤には、黒鉛、非晶質炭素、易黒鉛化炭素、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの公知の材料を用いることができる。導電性繊維は、気相成長炭素、またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して製造した繊維、アクリル繊維(Polyacrylonitrile)から製造した炭素繊維などがある。また、正極の充放電電位(通常はLi金属参照極を基準に2.5〜4.3Vである。)にて酸化溶解しない材料であり、正極活物質よりも電気抵抗の低い金属材料、例えばチタン、金等の耐食性金属、SiCやWCなどのカーバイド、Si34、BNなどの窒化物からなる繊維を用いても良い。製造方法は溶融法、化学気相成長法など既存の製法を利用することができる。
ポリマ化合物とバインダと導電剤の添加量は、正極活物質、導電剤、ポリマ化合物、バインダからなる合剤の総重量に対して5〜20%にする。正極活物質量が95%より多すぎると、本発明のポリマ化合物の添加量が少なくなりすぎて、リチウムイオンの拡散経路を確保することができなくなる。同時にバインダ量も少なくなりすぎて、正極活物質粒子同士を連結させることができず、充放電サイクルによって正極の性能が低下する。また、導電剤添加量の減少は、高抵抗な正極活物質粒子の間の電子伝導を阻害する。逆に、正極活物質量が少なくなると、電池の容量が低下する問題が生じる。
本発明の導電性を十分に発揮させ、大電流の充放電を可能にするためには、ポリマ化合物とバインダの添加量は合剤の総重量に対して3〜7%、ポリマ化合物は総重量に対して1%以上であることが望ましい。また、本発明のポリマ化合物がバインダとしての結着機能を有していれば、バインダを省略することができる。導電剤を添加しても良いし、導電剤に本発明のポリマ化合物を結合させ、それを正極活物質に混合させても良い。
上述のスラリは、正極集電体に塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥することによって、正極110を製造する。正極集電体には、厚さが10〜100μmのアルミニウム箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmのアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板などが用いられ、材質もアルミニウムの他に、ステンレス、チタンなども適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法などに制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。
正極の塗布には、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などの既知の製法を採ることができ、手段に制限はない。また、正極スラリを集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって正極を加圧成形することにより、正極を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、複数の合剤層を集電体に積層化させることも可能である。
負極にポリマ化合物を用いる場合、まず、負極活物質、本発明のポリマ化合物、バインダを混合し、溶媒を混合して、負極スラリを調製する。用いる溶媒は、ポリマ化合物に浸透しにくいものが望ましい。溶媒がポリマ化合物に浸透すると、ポリマ化合物が膨潤し、負極活物質との結着性が悪くなる恐れがあるためである。この剥離の問題は、本発明のポリマ化合物に溶媒を添加し、ポリマ化合物が膨潤した後の表層の剥離の有無を確認すれば、適切な溶媒を選定することができる。
負極活物質の代表例は、グラフェン構造を有する炭素材料である。すなわち、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出可能な天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェ−ズ炭素、膨張黒鉛、炭素繊維、気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭素質材料、ニードルコークス、石油コークス、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、カーボンブラックのなどの炭素質材料、あるいは5員環または6員環の環式炭化水素または環式含酸素有機化合物を熱分解によって合成した非晶質炭素材料、などが利用可能である。黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等の材料の混合負極、または炭素材料に金属または合金の混合負極または複合負極であっても、本発明を実施する上で障害はない。
また、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリアセチレンからなる導電性高分子材料も、負極に用いることができる。これらの導電性高分子の一部に水酸基(−OH)、カルボニル基(>C=O)、カルボン酸基(−COOH)を有していると、本発明のポリマ化合物に、これらの導電性高分子材料と、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等のグラフェン構造を有する炭素材料と組み合わせて、本発明を実施することができる。
本発明で使用可能な負極活物質は、リチウムと合金化するアルミニウム、シリコン、スズなどがあり、さらにチタン酸リチウムのような酸化物負極も利用可能である。負極活物質の金属原子に本発明のポリマ化合物のカルボン酸結合部が結合するからである。本発明では負極活物質に特に制限がなく、上述の材料以外でも利用可能である。
上述で作製した負極活物質とバインダと本発明のポリマ化合物からなる混合物に溶媒を添加し、十分に混練または分散させて、スラリを調製する。バインダにはポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、カルボキシメチルセルロースなどの公知の材料を用いることができる。溶媒は、有機溶媒、水などであって、本発明のポリマ化合物を変質させないものであれば、任意に選択することができる。
負極活物質に対する本発明のポリマ化合物とバインダの合計の添加量は、負極活物質、導電剤、ポリマ化合物、バインダからなる合剤の総重量に対して重量比率で1〜10%にする。負極活物質は、正極活物質よりも電気抵抗が低いので、負極活物質の量を増加させることができる。よって、負極活物質の重量比率を99〜90%の高い値にすることができる。
負極活物質量が多すぎると、本発明のポリマ化合物の添加量が少なくなりすぎて、リチウムイオンの拡散経路を確保することができなくなる。同時にバインダ量も少なくなりすぎて、負極活物質粒子同士を連結させることができず、充放電サイクルによって負極の性能が低下する。逆に、負極活物質量が少なくなると、電池の容量が低下する問題が生じる。添加量を適正な範囲にすべき理由は、正極の場合と同様である。
本発明の導電性を十分に発揮させ、大電流の充放電を可能にするために、ポリマ化合物とバインダの添加量は合剤の総重量に対して2〜7%、ポリマ化合物は総重量に対して1%以上であることが望ましい。また、本発明のポリマ化合物にバインダとしての機能を有していれば、バインダを省略することができる。導電剤を添加しても良いし、本発明のポリマを結合させた導電剤を用いても良い。
上述のスラリは、負極集電体に塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥することによって、負極112を製造する。負極集電体には、厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板などが用いられ、材質も銅の他に、ステンレス、チタンなども適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法などに制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。
次に、負極スラリをドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などによって集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって負極を加圧成形することにより、負極を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、多層合剤層を集電体に形成させることも可能である。
本発明では、負極は従来の方法で製作し、正極のみに本発明のポリマ化合物を用いることも可能である。負極の製造に従来の方法を適用するときには、負極活物質とフッ素系やゴム系の従来のバインダの混合物に、溶媒を添加して、負極スラリを調製する。このスラリは負極集電体に塗布し、乾燥することによって負極を製造する。負極集電体に用いることのできる材料は、本発明の負極を製造するときと同様の材質を選択することができる。
本発明では、材質、形状、製造方法などに制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。負極スラリの製造には、上述の既知の製法を採ることができ、手段に制限はない。
ここまで、ポリマ化合物と、ポリマ化合物を用いた正極、負極について述べた。次に図1を用いて、一般的なリチウムイオン二次電池の説明をする。
図1は、リチウムイオン電池101の内部構造を模式的に示している。リチウムイオン電池101とは、非水電解質中における電極へのリチウムイオンの吸蔵・放出により、電気エネルギーを貯蔵または利用可能とする電気化学デバイスである。
図1の110は正極、111はセパレータ、112は負極、113は電池缶、114は正極集電タブ、115は負極集電タブ、116は内蓋、117は内圧開放弁、118はガスケット、119は正温度係数(PTC;Positive temperature coefficient)抵抗素子、120は電池蓋である。電池蓋120は、内蓋116、内圧開放弁117、ガスケット118、PTC抵抗素子119からなる一体化部品である。本実施例における電池缶113への電池蓋120の取り付けはかしめによるが、電池蓋120の形状に応じて溶接、接着などの他の方法を採ることができる。
図1の電池に用いられる容器は、底のあるタイプであるため、電池缶113と記述した。底面がない円筒形容器を用い、図1の電池蓋120を底面に取り付けて、その電池蓋120に負極112を接続して用いることも可能である。端子の取り付け方法に応じて、任意の形状の電池容器を用いても、本発明の効果に何ら影響を与えない。
電極群の上部には正極集電体に溶接された正極集電タブ114を配し、それは内蓋116に溶接されている。内蓋116は、内圧開放弁117から電池蓋120まで導通されている。電極群の下方には負極集電体に溶接された負極集電タブ115があり、それは電池缶113の低面に溶接されている。このような構成によって、内蓋116の凸部と電池缶113の底面に通電することによって、正極110と負極112を充電または放電をさせることが可能となる。
電極群の構造は、図1に示した捲回による円筒形構造の他に、捲回によるが扁平状の構造を有するもの、さらには短冊状電極の積層した角型形状のものなど、任意の形状とすることができる。それに応じて、電池容器の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒型、偏平長円形状、角型などの形状を選択してもよい。
電池缶113の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼製など、非水電解質に対し耐食性のある材料から選択される。また、図1の電池において、電池缶113は負極集電タブ115に接続されているが、逆に正極集電タブ114を電池缶113へ、負極集電タブ115を内蓋116に接続してもよい。非水電解質と接触している電池缶113の内壁、集電タブが、腐食やリチウムイオンとの合金化によって、変化しないように、それらの材料を選定する。
正極110と負極112を製造し、それらの電極の間にセパレータ111を挿入し、正極110と負極112の短絡を防止する。正極110、負極112、セパレータ111を捲回し、円筒状の電極群を製作する。セパレータ111は、電極群の最外周まで巻きつけられて、電極群と電池缶113との間の絶縁が確保される。セパレータ111と各電極の表面および細孔内部に、電解質と非水溶媒からなる電解液が保持されている。
セパレータ111は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるポリオレフィン系高分子シート、あるいはポリオレフィン系高分子と4フッ化ポリエチレンを代表とするフッ素系高分子シートを溶着させた多層フィルムなどを使用することが可能である。電池温度が高くなったときにセパレータ111が収縮しないように、セパレータ111の表面にセラミックスとバインダの混合物を薄層状に形成しても良い。これらのセパレータ111は、電池の充放電時にリチウムイオンを透過させる必要があるため、一般に細孔径が0.01〜10μm、気孔率が20〜90%であれば、リチウムイオン電池101に使用可能である。
本発明で使用可能な電解液の代表例として、エチレンカーボネートにジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどを混合した溶媒に、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、あるいはホウフッ化リチウム(LiBF4)を溶解させた溶液がある。本発明は、溶媒や電解質の種類、溶媒の混合比に制限されることなく、他の電解液も利用可能である。電解質は、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイドなどのイオン伝導性高分子に含有させた状態で使用することも可能である。
この場合は前記セパレータが不要となる。なお、電解液に使用可能な溶媒は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1、2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1、3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、1、2−ジエトキシエタン、クロルエチレンカーボネート、クロルプロピレンカーボネートなどの非水溶媒がある。本発明の電池に内蔵される正極あるいは負極上で分解しなければ、これ以外の溶媒を用いても良い。
また、電解質には、化学式でLiPF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6あるいはリチウムトリフルオロメタンスルホンイミドで代表されるリチウムのイミド塩などの多種類のリチウム塩がある。これらの塩を、上述の溶媒に溶解してできた非水電解液を電池用電解液として使用することができる。本発明の電池に内蔵される正極あるいは負極上で分解しなければ、これ以外の電解質を用いても良い。
固体高分子電解質(ポリマ電解質)を用いる場合には、エチレンオキシド、アクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、メタクリル酸メチル、ヘキサフルオロプロピレンのポリエチレンオキサイドなどのイオン導電性ポリマを電解質に用いることができる。これらの固体高分子電解質を用いた場合、前記セパレータ111を省略することができる利点がある。
さらに、イオン性液体を用いることができる。例えば、1−ethyl−3−methylimidazolium tetrafluoroborate(EMI−BF4)、リチウム塩LiN(SO2CF32(LiTFSI)とトリグライムとテトラグライム)の混合錯体、環状四級アンモニウム系陽イオン(N−methyl−N−propylpyrrolidiniumが例示される。)とイミド系陰イオン(bis(fluorosulfonyl)imideが例示される。)より正極と負極にて分解しない組み合わせを選択して、本発明のリチウムイオン電池に用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれにより限定されるものではない。
(実施例1)
〈正極の作製〉
平均粒径10μmの正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/32と、カーボンブラックを導電剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)をバインダに用いて製作した正極を用いて、以下の試験を行った。正極活物質、導電剤、バインダの重量組成は、88:7:5とした。正極スラリを塗布した電極面積は400cm×5cm、合剤厚さは50μmとした。なお、正極には本発明のポリマ化合物を用いなかった。
〈負極の作製〉
負極活物質として平均粒径15μmの天然黒鉛を、ポリマ化合物として[CH3−(OCH2CH2)nCO]2O(構造Iにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはH、nは200〜300)のカルボン酸無水物を、バインダとしてスチレン−ブタジエンゴム、増粘剤にとしてカルボキシメチルセルロースを用いた。天然黒鉛とポリマ化合物とバインダと増粘剤の重量組成は、95:2:1.5:1.5とした。負極スラリを塗布した電極面積は500cm×5.2cm、合剤厚さは30μmとした。
なお、ポリマ化合物のn値に範囲がある理由は、ポリエーテル結合を形成する重合度反応合いが、製造ロット単位でばらつくためである。ポリエーテル結合部は、酸化ポリエチレンの開環重合反応により形成した。他の方法であっても良い。そのばらつきの範囲にあり、異なるnを持つ複数のポリマ化合物を用いて、複数の負極を製造し、それぞれの負極を用いて別々の電池を製作した。電池性能評価は、nが異なる電池ごとに行った。後述の実施例においてもnにばらつきがあるが、実施例1と同様である。
負極活物質粉末とポリマ化合物を混合し、水を溶媒として滴下して、スラリを調製した。分散処理には、プラネタリーミキサーとディスパーを用いた。そのスラリを厚さ10μmの銅箔に塗布し、溶媒を蒸発させ乾燥させた。さらに、ロールプレス機を用いて、合剤層が1.4〜1.5g/cm3の密度になるまで圧縮した。
〈電池の作製〉
捲回電極群を電池容器113に収納した後、電解液を添加した。電解液にはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を体積比1:2の混合溶媒に1M LiPF6を溶解させた溶液を用いた。微量の添加剤として、電解液の総体積に対し、1%のビニレンカーボネートを添加した。
電池蓋120と電池缶113にかしめにより取りつけて、図1に示す円筒型リチウムイオン電池を5個、製作した。
〈電池の評価方法、および結果〉
これらの電池を4.2Vの5時間率の充電(電流値として0.4A)を行った後に、1時間率の電流(2A)で3.0Vまで放電させた。そのときの電池の容量は2±0.1Ahであった。容量ばらつきは、nが200〜300にばらついているためである。初回充電の過程で、負極上でポリマ化合物が化学反応を起こすための還元電流が流れ、固定化が終了する。この反応過程では、電解液の溶媒が還元分解され、その溶媒から脱離した酸素が酸無水物に取り込まれて、2個の−COOへ変化し、最終的に負極表面にポリマ化合物が結合した状態となる。固定化に要する電気量は、初回の充電容量から初回の放電容量の差分として見積もることができる。これらの電池を50℃の恒温槽に設定し、上述の充電・放電の条件にてサイクル試験を行った。500サイクルの試験を終えた後に、電池温度を室温に戻して同一の条件に充電・放電試験を行った。その結果は、表1の実施例1の欄に記入した。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、93±2%であった。直流抵抗は初期値に対して140±10%の増加であった。なお、容量維持率と直流抵抗のばらつきは、nが200〜300にばらついているためである。
(実施例2)
〈負極の作製〉
実施例1において、ポリマ化合物のnを600〜700に増大させ、その他の条件を実施例1と同じとした負極を製造した。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、1.8±0.1Ahであった。初期容量が実施例1よりも低下した理由は、初期の直流抵抗が20〜30%も増大したためであった。50℃における500サイクル経過後の容量維持率は93±2%であった。容量維持率は実施例1の結果とほぼ同じであるが、初期容量が低いため、500サイクル経過時点での容量も小さくなっている。
(実施例3)
〈負極の作製〉
実施例1において、負極に用いたバインダ(スチレン−ブタジエンゴム)を省き、替わりに負極活物質添加量を増加させた負極を製作した。すなわち、天然黒鉛と、ポリマ化合物と、バインダと、増粘剤の重量組成は、96.5:2:0:1.5とした。
その他の条件は実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、91±2%であった。直流抵抗は初期値に対して160±10%の増加であった。
(実施例4)
〈負極の作製〉
実施例1において、負極に用いたポリマ化合物を[CH3−(OCH2CH2)n(CH2)mCO]2Oのカルボン酸無水物(構造Iにおいて、XはCH3−、Yは−(CH2)m−、RはH)とした。なお、実施例1と異なる点はn=10〜100である。mは50〜300とした。その他の条件は実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、94±2%であった。また、直流抵抗も初期値に対し、140±10%の増加であった。
(実施例5)
〈負極の作製〉
実施例1において、負極に用いたポリマ化合物を[CH3−(OCH2)nCO]2Oのカルボン酸無水物(構造IIIにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはH、nは400〜500)とした。
その他の条件は実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、94±2%であった。また、50℃充放電試験後の直流抵抗増加率は145±10%であった。
(実施例6)
〈負極の作製〉
実施例1において、負極に用いたポリマ化合物を[CH3−(OCF2)nCO]2Oのカルボン酸無水物(構造IIIにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはF、nは400〜500)とした。
その他の条件は実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、96±2%であった。50℃充放電試験後の直流抵抗増加率は、130±10%であった。
(実施例7)
〈負極の作製〉
実施例1において、負極に用いたポリマ化合物を[CH3−(OCF2CF2)nCO]2O(構造Iにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはF、nは、400〜500)とし、さらに、ポリマ化合物同士が架橋構造を有する構造とした。
ポリマ化合物[CH3−(OCF2CF2)nCO]2O(構造Iにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはF、nは、500〜600)を原料となるポリマAとする。ポリマAの−(OCF2CF2)−の繰り返し構造のフッ素の一部を、ランダムにアシル結合部、−CClOに変更した。置換量は一分子当たり3〜5とした。これをポリマBとする。次に、ポリマAの−(OCF2CF2)−の繰り返し構造のフッ素の一部を、ランダムに水酸基、−OHに置換した。置換量は一分子当たり3〜5とした。これをポリマCとする。ポリマBとポリマCを等量、負極活物質に添加、混合し、本発明のポリマ化合物を被覆した負極活物質を製作した。アシル結合−CClOと水酸基−OHが結合し、ポリマBとポリマCの間に−C(=O)−O−の架橋が形成されている。この反応の副生成物であるHClは、処理した負極活物質を水洗、真空乾燥などによって、負極活物質表面から除去させることができる。
その他の条件は実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、96±2%であった。50℃充放電試験後の直流抵抗増加率も120±10%であり、実施例1のポリマ化合物よりも耐久性が向上した。
(実施例8)
〈負極の作製〉
実施例1において、ポリマ化合物をCH3−(OCF2)nCOOLi(構造IIIにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはF、nは400〜500)とした。
その他の条件は実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、95±2%であった。50℃充放電試験後の直流抵抗増加率は、130±10%であった。
(実施例9)
〈正極の作製〉
平均粒径10μmの正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/32と、カーボンブラックを導電剤と、実施例4で用いたポリマ化合物[CH3−(OCH2)nCO]2Oのカルボン酸無水物(構造IIIにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはH、nは400〜500)を用いて、正極を製作した。バインダはポリフッ化ビニリデンを用いた。正極活物質、導電剤、バインダ、ポリマ化合物の重量組成は、88:7:4:1とした。正極スラリを塗布した電極面積は400cm×5cm、合剤厚さは50μmとした。
〈負極の作製〉
実施例1と同様に作製した。
その他の条件は、実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、95±2%であった。50℃充放電試験後の直流抵抗増加率は、135±10%であった。
(実施例10)
〈負極の作製〉
実施例2において、負極活物質として、Si金属粉末と黒鉛の混合物として負極を製作した。Si金属の平均粒径は10μmであった。負極組成は、天然黒鉛とSi金属とポリマ化合物と増粘剤の重量組成は、75:20:2:3とした。負極スラリ調製時に用いた溶媒は1−メチル−2−ピロリドンとし、スラリを作製した。正極の製作条件などの他の条件を変更しないで、図1の円筒形リチウムイオン電池を製作した。
その他の条件は、実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2.2±0.1Ahであった。その電池を50℃の恒温槽に設定し、上述の充電・放電の条件にてサイクル試験を行った。500サイクルの試験を終えた後に、電池温度を室温に戻して同一の条件に充電・放電試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2.2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、88±2%であった。直流抵抗は初期値に対して190±10%の増加であった。
(実施例11)
(正極の作製)
実施例1と同じ仕様にて正極を製作した。
〈負極の作製〉
実施例1において、ポリマ化合物を[CH3−(OCH2CH2)nCO]2O(構造Iにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはH、nは10〜100)とした。負極の製造方法ならびに寸法や密度などの仕様は、実施例1と同じとした。すなわち、負極活物質として平均粒径15μmの天然黒鉛を、前記ポリマ化合物と、バインダとしてスチレン−ブタジエンゴム、増粘剤にとしてカルボキシメチルセルロースを用いて、負極を製造した。天然黒鉛とポリマ化合物とバインダと増粘剤の重量組成は、95:2:1.5:1.5とした。負極スラリを塗布した電極面積は500cm×5.2cm、合剤厚さは30μmとした。
〈電池の作製〉
実施例1と同一の手順で、図1に示す円筒型リチウムイオン電池を5個、製作した。
〈電池の評価方法、および結果〉
これらの電池を4.2Vの5時間率の充電(電流値として0.4A)を行った後に、1時間率の電流(2A)で3.0Vまで放電させた。そのときの電池の容量は2±0.1Ahであった。これらの電池を50℃の恒温槽に設定し、上述の充電・放電の条件にてサイクル試験を行った。500サイクルの試験を終えた後に、電池温度を室温に戻して同一の条件に充電・放電試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、94±1%であった。直流抵抗は初期値に対して120±10%の増加であった。
(実施例12)
実施例4で製作した負極と実施例7で製作した正極を用いて、図1の円筒形リチウムイオン電池を約5倍に大きくした電池を製作した。定格容量は10Ahである。これを8直列に接続し、図2のモジュール(組電池)を組み立てた。このモジュール201に充電回路210、演算処理部209、外部電源211を電力線212、信号線213、外部電力ケーブル214を用いて接続し、図2に示した構成とした。負極は実施例1と同一であり、正極は実施例8と同一仕様である。
なお、本実施例では本発明の有効性を確認するための試験であったので、外部電源または外部負荷を取り付けるところを、電力の供給と消費の両方の機能を兼ね備えた外部電源211を用いた。これを用いることは、電気自動車等の電気車両や工作機械、あるいは分散型電力貯蔵システムやバックアップ電源システムなどの実使用時と比較して、本発明の効果に相違をもたらすものでない。
本システム組み立て直後の充電試験は、充電回路210より正極外部端子207と負極外部端子208へ1時間率相当の電流値(10A)の充電電流を流し、33.6Vの定電圧にて1時間の充電を行った。ここで設定した定電圧値は、先に述べた単電池の定電圧値4.2Vの8倍の値である。モジュールの充放電に必要な電力は外部電源211より供給した。外気温は40℃とした。
放電試験は、正極外部端子207と負極外部端子208から逆向きの電流を充電回路210に流して、外部電源211にて電力を消費させた。放電電流は、2時間率の条件(放電電流として5A)とし、正極外部端子207と負極外部端子208の端子間電圧が24Vに達するまで放電させた。外気温は40℃とした。
このような充放電試験条件にて、充電容量10.0Ah、放電容量9.95〜9.98Ahの初期性能を得た。さらに500サイクルの充放電サイクル試験を実施したところ、容量維持率92±2%を得た。
(実施例13)
〈正極の作製〉
実施例1と同じ仕様にて正極を製作した。
〈負極の作製〉
実施例1の黒鉛粉末を硝酸水溶液中にて酸化処理を行い、カルボキシ基を導入した。その後、黒鉛粉末を水洗し、ポリマ化合物として、CH3−(OCH2CH2)n−OHを添加し、黒鉛表面のカルボキシル基とポリマ化合物の水酸基を反応させ、ポリマ化合物を黒鉛表面に固定した(CH3−(OCH2CH2)n−OOC−Z(構造IIにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはH、nは200〜300))。下式に、この反応を示した。この黒鉛粉末を真空中で乾燥して、吸着水を除去して、負極に用いた。その他の条件は、実施例1と同様に作製、評価を行った。
CH3−(OCH2CH2)n−OH+HOOC−Z
→ CH3−(OCH2CH2)n−OOC−Z
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、94±2%であった。50℃充放電試験後の直流抵抗増加率は、130±10%であった。
(実施例14)
〈正極の作製〉
実施例1と同じ仕様にて正極を製作した。
〈負極の作製〉
実施例13において、ポリマ化合物のnを、400〜500とした(CH3−(OCH2CH2)n−OOC−Z(構造IIにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはH、nは400〜500))。その他の条件は、実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
電池の初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。50℃の恒温槽中にて充放電サイクル試験を行った結果、500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、96±1%であった。50℃充放電試験後の直流抵抗増加率は、115±10%であった。
(実施例15)
〈正極の作製〉
実施例1と同じ仕様にて正極を製作した。
〈負極の作製〉
実施例1の黒鉛粉末を硝酸水溶液中にて酸化処理を行い、カルボキシ基を導入した。その後、黒鉛粉末を水洗し、ポリマ化合物として、CH3−(OCH2)n−OHを添加し、黒鉛表面のカルボキシル基とポリマ化合物の水酸基を反応させ、ポリマ化合物を黒鉛表面に固定した(CH3−(OCH2)n−OOC−Z(構造IVにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはH、nは200〜300))。下式に、この反応を示した。この黒鉛粉末を真空中で乾燥して、吸着水を除去して、負極に用いた。その他の条件は、実施例1と同様に作製、評価を行った。
CH3−(OCH2)nOH+HOOC−Z
→ CH3−(OCH2)n−OOC−Z
〈電池の評価方法、および結果〉
電池の初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、95±1%であった。50℃充放電試験後の直流抵抗増加率は、125±10%であった。
(実施例16)
〈正極の作製〉
実施例1と同じ仕様にて正極を製作した。
〈負極の作製〉
実施例15において、ポリマ化合物のnを、400〜500とした(CH3−(OCH2)n−OOC−Z(構造IVにおいて、XはCH3−、Yは単結合、RはH、nは400〜500))。その他の条件は、実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。50℃の恒温槽中にて充放電サイクル試験を行った結果、500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、97±1%であった。50℃充放電試験後の直流抵抗増加率は、115±10%であった。
(比較例1)
〈負極の作製〉
実施例1において、ポリマ化合物の代わりに、その分をバインダに置き換えた。すなわち、天然黒鉛とバインダと増粘剤の重量組成を、95:2.5:2.5とした。その他の条件は、実施例1と同様に作製、評価を行った。
〈電池の評価方法、および結果〉
初期エージングの後の初期容量は、2±0.1Ahであった。その後、50℃の恒温槽中にて、充放電サイクル試験を行った。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、82±2%まで低下した。また、500サイクルの充放電経過後の直流抵抗は、初期値に対して240%増大した。直流抵抗増大に伴い、出力特性も実施例1よりも低下した。
(比較例2)
実施例1のポリマ化合物の末端を水素に置換し、カルボン酸結合部を省いたポリエーテルを用い、ポリマ化合物以外の構成を実施例1と同じ仕様とした電池を製作した。その電池を4.2Vの5時間率の充電(電流値として0.4A)を行った後に、1時間率の電流(2A)で3.0Vまで放電させた。そのときの電池の容量は1.6±0.1Ahに低下した。500サイクルの充放電経過後の直流抵抗は、初期値に対して300±20%増大した。充放電サイクル試験の容量維持率は50サイクル経過時点で65%を下回ったので、電池を解体した。その結果、負極の一部の面から黒鉛が脱落していることを発見した。電解液を抽出し、溶媒を蒸発させた電解液の核磁気共鳴スペクトルを測定し、ポリエーテルが電解液に溶解していることを確認した。
ポリマ化合物を用いた実施例1〜16は、ポリマ化合物を用いなかった比較例1、および、ポリマ化合物を活物質に結合させなかった比較例2よりも、直流抵抗増加率は低かった。実施例1、3〜16は比較例1、2よりも容量維持率が高く、直流抵抗増加率は低かった。このことから、ポリマ化合物を活物質に結合させることで、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命、保存特性を改善できることがわかる。
構造IIIのポリマ化合物において、Rが水素である実施例5と、Rがフッ素である実施例6を比較したところ、実施例6のほうが、抵抗増加率が低いことが分かる。このことから、ポリエーテル部にハロゲンを用いることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命、保存特性を改善できることがわかる。
ポリエーテル部が−(OCR2)n−である実施例13とポリエーテル部が−(OCR2CR2)n−である実施例15を比較すると、実施例15のほうが容量維持率が高く、直流抵抗増加率は低かった。このことから、容量維持率、直流抵抗の観点からは、ポリエーテル部の酸素含有率は高いことが好ましことがわかった。
実施例2、実施例11の結果より、nは、600になると初期容量が低下することがわかった。ポリエーテル部が長くなりすぎると、リチウムイオンの拡散経路が増大し、負極活物質へのリチウムイオンの供給速度が遅くなるためである。また、実施例1と実施例11との比較により、nが低い場合、容量維持率の改善に有効であることがわかる。
実施例3はバインダを用いなかった実施例である。この結果から、バインダを用いなくても、リチウムイオン二次電池として機能するだけでなく、比較例1と比べ、優れた性質を得ることがわかった。
実施例4の結果より、ポリエーテル部とカルボン酸結合部の間に結合を導入しても良いことが判った。特に、ポリエーテル部の結合長さと同じもしくはそれ以下の長さのYを導入しても高い容量維持率が得られた。これは、隣接するポリマ化合物同士の重なり合いによって、異なるポリマ化合物の間でポリエーテル部の連続したリチウムイオンの拡散ルートが確保されたためと考えられる。
実施例7は、活物質に結合している複数のポリマ化合物に架橋構造を設けた実施例である。実施例1と比較してアシル結合とOH結合の架橋結合の形成によって、容量維持率が向上したことが分かる。本実施例ではポリマ化合物の分子同士を架橋で連結したので、負極上のポリマ化合物層の強度は向上している。その結果、実施例6に比較して、本実施例の抵抗増加率が低減されたと考えられる。
実施例9は、正極活物質に、ポリマ化合物を用いた実施例である。500サイクル経過後の容量維持率(初期の容量2±0.1Ahに対する放電容量の比率)は、95±2%と向上し、実施例1よりもさらに優れた寿命特性が得られた。また、直流抵抗も初期値は実施例1の80%と小さく、出力特性に優れていることがわかった。また、50℃充放電試験後の直流抵抗増加率も135〜145%であり、実施例4の値よりも耐久性が向上した。これらの効果は、本発明のポリマ化合物が正極活物質中のNi、MnまたはCoに結合し、電解液の酸化反応を抑止した作用によると考えられる。
実施例8は、ポリマ化合物の酸無水物を、電解液に添加し、ポリマ化合物を、活物質に結合させる方法を用いた実施例である。この実施例から、ポリマ化合物の結合方法として、ポリマ化合物の酸無水物を、電解液に添加する方法を用いることができることがわかった。
実施例10は負極活物質として、Siを混ぜた実施例である。この結果より、負極活物質をSiに変更しても、ポリマ化合物は機能することが分かる。また、Siはリチウムとの合金形成により、負極の高容量化に寄与し、実施例1の電池よりも初期容量を高めた点で、本実施例の電池は優れていた。
実施例14は、実施例13と比較して、エーテル結合部を長くしたポリマ化合物を用いた例である。エーテル結合部が長いので、リチウムイオンが溶媒から完全に脱離し、リチウムイオンだけが負極活物質表面に到達するようになるからと考えられる。これに対し、エーテル結合部が短いと、溶媒和したリチウムイオンの一部が負極活物質表面に到達し、溶媒が還元分解され、被膜(Solid-Electrolyte Interface)が成長しやすいと推定される。
実施例15は、実施例13に用いたポリマ化合物と比較すると、ポリエーテル部の酸素の数は同じであるが、長さの短いポリマ化合物を用いた例である。実施例15のポリマ化合物の方が、長寿命になる傾向があった。ポリエーテル部の酸素−酸素間の距離が短くなり、リチウムイオンからの溶媒脱離が促進され、かつ、リチウムイオンの拡散速度が速くなったためと推定される。
実施例16は実施例15と比較して、エーテル結合部を長くしたポリマ化合物を用いた例である。エーテル結合部の延長によって、リチウムイオンが溶媒から完全に脱離し、リチウムイオンだけが負極活物質表面に到達するようになるから、容量維持率が向上し、抵抗上昇が抑制されたと考えられる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、特に屋外の高温環境にて使用される用途に有効である。例えば、電気自動車や、無人移動車、電動式建設機械、バックアップ電源などの産業用機器の電源、再生可能エネルギーの電力貯蔵用蓄電池が列挙される。そのほかに、携帯用電子機器、携帯電話、電動工具などの民生用品の他、電気掃除機、介護機器などの屋内電気機器の電源に用いることも可能である。さらに、本発明のリチウムイオン電池は、月や火星等の探索のためのロジステック列車の電源に適用可能である。また、宇宙服、宇宙ステーション、地球上またはその他の天体上の建造物あるいは生活空間(密閉、開放状態を問わない。)、惑星間移動用の宇宙船、惑星ローバー(land rover)、水中または海中の密閉空間、潜水艦、魚類観測用設備などの各種空間の空調、温調、汚水や空気の浄化、動力等の各種電源に用いることが可能である。
101 リチウムイオン電池
110 正極
111 セパレータ
112 負極
113、205 電池缶
114 正極集電タブ
115 負極集電タブ
116 内蓋
117 内圧開放弁
118 ガスケット
119 正温度係数(PTC;Positive temperature coefficient)抵抗素子
120 電池蓋
201 組電池(モジュール)
202 リチウムイオン電池(単電池)
203 正極端子
204 ブスバー
206 支持部品
207 正極外部端子
208 負極外部端子
209 演算処理部
210 充電回路
211 外部電源
212 電力線
213 信号線
214 外部電力ケーブル

Claims (12)

  1. リチウムイオンを吸蔵および放出する活物質と、
    前記活物質に結合されたポリマ化合物と、有し、
    前記ポリマ化合物は、構造I、構造II、構造III、構造IVの少なくともいずれか一種である被覆活物質。
    1−(OCR2CR2)n−Y1−COO−Z (構造I)
    1−(OCR2CR2)n−Y1−OOC−Z (構造II)
    2−(OCR2)n−Y2−COO−Z (構造III)
    2−(OCR2)n−Y2−OOC−Z (構造IV)
    1は、水素、炭素数3n以下の炭化水素基、炭素数3n以下のハロゲン化炭化水素基、Z−OOC−Y1−、Z−COO−Y1−のいずれかである。
    2は、水素、炭素数2n以下の炭化水素基、炭素数2n以下のハロゲン化炭化水素、Z−OOC−Y2−、Z−COO−Y2−のいずれかである。
    1は、炭素数3n以下の炭化水素基、エステル結合を含む炭素数3n以下の炭化水素基、または、単結合である。
    2は、炭素数2n以下の炭化水素基、炭素数3n以下のハロゲン化炭化水素基、または、単結合である。
    Rは水素、または、ハロゲンである。
    Zは、前記活物質表面に存在する元素である。
    nは1以上の整数である。
  2. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極と、
    リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、
    を有するリチウムイオン二次電池において、
    前記正極は、正極合剤を有し、
    前記負極は、負極合剤を有し、
    前記正極合剤は、正極活物質を有し、
    前記負極合剤は、負極活物質を有し、
    前記正極活物質、または、前記負極活物質は、請求項1に記載した前記被覆活物質であるリチウムイオン二次電池。
  3. 請求項2において、
    前記Zは、カルボン酸塩と結合することができる元素であるリチウムイオン二次電池。
  4. 請求項2または請求項3において、
    前記Zは、C、Si、Sn、Ti、Mn、Fe、Co、Niの少なくともいずれか一種であるリチウムイオン二次電池。
  5. 請求項2ないし請求項4のいずれかにおいて、
    前記nは、10以上、500以下であるリチウムイオン二次電池。
  6. 請求項2ないし請求項5のいずれかにおいて、
    複数の前記ポリマ化合物は、互いに架橋構造を形成しているリチウムイオン二次電池。
  7. 請求項2ないし請求項6のいずれかにおいて、
    前記負極合剤は、バインダを有し、
    前記バインダと、前記ポリマ化合物との合計重量は、前記負極合剤の総重量に対して、1重量%以上、10重量%以下であるリチウムイオン二次電池。
  8. 請求項2ないし請求項7のいずれかにおいて、
    前記正極合剤は、バインダを有し、
    前記バインダと、前記ポリマ化合物との合計重量は、前記正極合剤の総重量に対して、5重量%以上、20重量%以下であるリチウムイオン二次電池。
  9. 請求項2ないし請求項8のいずれかにおいて、
    前記バインダに対する、前記ポリマ化合物の比の値は、0以上0.75以下であるリチウムイオン二次電池。
  10. 請求項2ないし請求項9のいずれかにおいて、
    前記リチウムイオン二次電池は、電解液を有し、
    前記ポリマ化合物により、前記電解液の分解を抑制したリチウムイオン二次電池。
  11. 前記被覆活物質と、前記ポリマ化合物の酸無水物と、を含むスラリを作製する工程と、 前記被覆活物質と、前記酸無水物とを反応させ、結合を形成させる工程と、
    を有する請求項2ないし請求項10のいずれかに記載されたリチウムイオン二次電池の製造方法。
  12. 前記被覆活物質と、前記ポリマ化合物のカルボン酸末端をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩とした前記ポリマ化合物の塩と、を含むスラリを作製する工程と、
    前記被覆活物質と、前記ポリマ化合物との結合を形成させる工程と、
    を有する請求項2ないし請求項10のいずれかに記載されたリチウムイオン二次電池の製造方法。
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