JP2013031796A - 溶出低減材、溶出低減材の製造方法および溶出低減方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明にかかる溶出低減材は、炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物が軽焼されてなり、且つ前記MgCO3が脱炭酸されることで生成されるMgCxOy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)と、MgCO3と、CaCO3とを含む軽焼生成物と、水溶性硫酸塩とを含有し、 前記軽焼生成物と前記水溶性硫酸塩とが5:5〜1:9の質量比で配合されていることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
前記特許文献1に記載の溶出低減材を汚染土壌に混合した場合には、汚染土壌は高pHになるため、他の重金属の溶出は低減できても、亜ヒ酸を含む汚染土壌からのヒ素の溶出を低減することは難しいという問題があった。
前記軽焼生成物と前記水溶性硫酸塩とが5:5〜1:9の質量比で配合されていることによって、優れた溶出抑制作用を発揮させることができる。
すなわち、前記のようなピークを示す前記軽焼生成物であれば、優れた溶出抑制作用を発揮させうる状態で前記MgCxOy、MgCO3、CaCO3の各成分が含有されている軽焼生成物である。
尚、CaOを実質的に含まない、とは、前記軽焼生成物の、X線電子発光分析法(XPS)によって検出されるO1sに対応するスペクトルにおいて、CaOのピークを示さないことをいう。
尚、本発明において、ろ液のpHは、環境庁告示46号に準じた溶出試験で得られた検液のpHをいう。
さらに、特に、ヒ素の溶出を効果的に低減しうる溶出低減方法を提供することが可能となる。
本発明に係る溶出低減材の製造方法は、前記のように、炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物を650〜1000℃の条件下で軽焼するとともに、該軽焼による重量減少率が9〜20%となった時点で該軽焼を終了させて軽焼生成物とし、前記軽焼生成物と水溶性硫酸塩とが5:5〜1:9の質量比になるように混合して溶出低減材を調製するものである。
前記鉱物の具体例としては、ドロマイト等を挙げることができる。
なお、天然に産出するドロマイトは、一般に、CaO/MgOで表わされる複塩のモル比が0.70〜1.63の範囲であり、CaCO3をCaO換算で概ね9〜40質量%、MgCO3をMgO換算で概ね10〜38質量%含有するものである。
かかる軽焼の際の温度条件としては、650〜1000℃の範囲とし、好ましくは700〜900℃とし、さらに好ましくは760〜850℃とする。
また、軽焼時間は温度条件によっても変動するが、通常、10〜60分である。
すなわち、前記軽焼を行なうことにより、前記鉱物中の炭酸マグネシウム(MgCO3)の一部はそのまま残存させると同時に、炭酸マグネシウムの一部を脱炭酸してMgCxOyとし、さらに前記鉱物中の炭酸カルシウム(CaCO3)は実質的には脱炭酸させないことによって、前記MgCxOyと、炭酸マグネシウム(MgCO3)と、炭酸カルシウム(CaCO3)とを含む軽焼生成物を得ることができる。
前記鉱物を、前記軽焼よりも高温長時間焼成した場合、前記鉱物中に含まれる炭酸マグネシウム(MgCO3)が脱炭酸されると同時に、炭酸カルシウム(CaCO3)も脱炭酸されてしまい、前記のような3つの成分を実質的に含む軽焼生成物を得ることができない。
前記鉱物中の炭酸マグネシウム(MgCO3)の一部はそのまま残存させると同時に、炭酸マグネシウムの一部を脱炭酸してMgCxOyとし、さらに前記鉱物中の炭酸カルシウム(CaCO3)は実質的には脱炭酸させない状態で軽焼を停止することによって、残存するMgCO3および生成されるMgCxOyは非晶質化するものと考えられる。
このことは、前記のようなXRDによる同定結果およびXPSによる検出スペクトル解析から推測しうる。
すなわち、前記軽焼生成物を、XPSによる成分分析を行うと、MgCO3およびMgCxOyのピークが検出されるが、同時にXRDによる同定を行うと、MgCO3およびMgCxOyは検出されない。これは、XRDでは結晶質のものしか検出できないため、前記軽焼生成物中に含まれるMgCO3およびMgCxOyは非晶質化しているものと推定される。
かかる範囲の含有量であることで、溶出低減材とした場合に溶出低減効果を向上させることができる。
かかる範囲の前記CaCO3の含有量であることで、溶出低減材とした場合に、長期間溶出低減効果を維持することができる。
前記MgCO3および前記MgCxOyの合計含有量、前記CaCO3の含有量の測定は、例えば、JIS R2212−4に規定するマグネシア及びドロマイト質耐火物の成分分析方法、または、X線回析法(XRD)による同定結果およびX線光電子分光法(XPS)による成分分析により、測定することが可能である。
前記軽焼による質量減少率をこのような数値範囲内とすることにより、炭酸マグネシウム等からの脱炭酸反応を適切に生じさせ、前記鉱物中の炭酸マグネシウムの一部を残存させると同時に、炭酸マグネシウムの一部を脱炭酸してMgCxOyとし、かかる脱炭酸によって生じる前記MgCxOyと、炭酸マグネシウム(MgCO3)と、炭酸カルシウム(CaCO3)とを含む軽焼生成物を適切に生成させることができるものと考えられる。
特に、前記水溶性硫酸塩として硫酸第一鉄を混合する場合には、前記軽焼生成物と硫酸 第一鉄との質量比が、5:5〜1:9、好ましくは、4:6〜3:7とすることが好ましい。
本実施形態の溶出低減材は、例えば上記のような方法によって、炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物が軽焼されてなり、且つ前記MgCO3が脱炭酸されることで生成されるMgCxOy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)と、MgCO3と、CaCO3とを含む軽焼生成物と、水溶性硫酸塩とを含有し、前記軽焼生成物と前記水溶性硫酸塩とが5:5〜1:9の質量比で配合されているものである。
本実施形態では、例えば、X線光電子分光装置 Sigma Probe(VGサイエンティフィック社製)を用いて、前記軽焼生成物を試料ペレットに埋めて表面をエッチング処理等適宜前処理した試料を分析し、検出されるXPSスペクトルのO1sに対応するスペクトルにおけるピークを調べることで、前記軽焼生成物が前記のような3つの成分を含む場合には、各成分のピークが現れる。
前記鉱物を軽焼した場合には、前記鉱物中のMgCO3の一部を脱炭酸させるが、CaCO3を実質的には脱炭酸する温度での焼成ではないため、前記軽焼生成物中には、実質的にCaOは含まれていない。
本実施形態の溶出低減方法においては、前記溶出低減材を、記載の溶出低減材を、ヒ素含有土壌に混合し、前記ヒ素含有土壌と前記溶出低減材との混合物のろ液のpHが8.0未満となるように調整して、前記ヒ素含有土壌からのヒ素の溶出を低減させる。
鉱山等において産生されるヒ素含有土壌には、亜ヒ酸(As(OH)3)の形でヒ素が含まれている場合があり、かかる亜ヒ酸はpHが9以上になると溶出が促進される。よって、高pHの状態では、他の重金属の溶出は抑制できても、ヒ素の溶出を低減することが難しい場合がある。
本実施形態の溶出低減方法においては、前記溶出低減材をヒ素含有土壌に混合した場合、そのろ液のpHが、pH8.0未満になるように調整し、好ましくは、pH4.0〜7.6程度になるように調整する。
前記ろ液のpHを前記範囲に調整する方法としては、前記溶出低減材を前記混合量でヒ素含有土壌に混合することで調整しうる。
尚、前記pHの範囲になるように前記溶出低減材を混合する方法としては、予めヒ素含有土壌のサンプルを用いて、前記pHの範囲になるように溶出低減材の混合量を決めておくことで、所望のpHの範囲になるように前記溶出低減材を混合しうる。
栃木県葛生地方産出のドロマイト(住友大阪セメント株式会社 唐沢鉱業所産)を準備して、800℃の電気炉で30分間加熱したものを準備した。
上記軽焼生成物を、X線光電子分光装置:Sigma Probe(VGサイエンティフィック社製)を用いて分析した。
測定条件は以下の通りである。
《測定条件》
X線源: AlKα線(1486.6eV)
検出角度:約45°
ビーム径:100W/400μm
パスエネルギー(ワイドスキャン):100eV、 Ar(30),C(20),O(3 0),Mg(10),Ca(10)、(カッコ内は積算回数)
パスエネルギー(元素ナロースキャン):20eV
測定元素:Ar,C,O,Mg,Ca
Ar+ イオンスパッタ速度:約2nm/min (Ta2O5膜に換算)
測定は各試料とも300秒、Arイオンでスパッタによるエッチング処理後、測定した。
すなわち、前記軽焼生成物は、ドロマイト中のMgCO3の一部が脱炭酸されたMgCxOyを含み、且つ、MgCO3およびCaCO3も含むことを示している。
一方、CaOの位置にはピークが見られないことから、前記軽焼生成物では、ドロマイト中の成分であるCaCO3が脱炭酸されたCaOを含んでいないことを示している。
cal社製)を用いてXRD回析を行った。
測定条件は以下の通りである。
《測定条件》
手法:粉末X線回折、スピンなし
管球:Cu
出力設定:45kV,40mA
2θ:30〜85°
ステップサイズ:0.05°2Th.
スキャンステップ時間:0.5s
スキャン種類:連続
すなわち、前記軽焼生成物のXPSスペクトルにおいてはMgCO3およびMgCxOyのピークを示しているにもかかわらず、XRD同定ではこれらのマグネシウム化合物は検出されなかったことから、前記軽焼生成物に含まれるMgCO3およびMgCxOyはXRDで検出されない非晶質化したものであると推定される。
前記軽焼生成物、硫酸第一鉄一水塩(堺化学工業社製)および、無水石膏(住友大阪セメント株式会社赤穂工場製)を準備し、表2に示す配合で混合した試験例1乃至6の溶出低減材を調製した。
汚染土として、鉱山系ヒ素汚染土壌(九州産の硫化鉱物系(硫砒鉄鉱))を用いた。
前記各試験例として調製した溶出低減材を用い、上記汚染土に対し、質量比で1%(18kg/m3)の割合で添加し撹拌混合した。
そして、溶出低減材を混合していない原土(比較例1)及び各試験例を混合した汚染土を各実施例および各比較例として、環境庁告示46号に準じて溶出試験を実施し、溶出液中のヒ素の濃度について下記装置を用いて測定した。
同時に、各溶出液のpH、および酸化還元電位(ORP)を測定した。
結果を下記表3に示す。
ヒ素溶出量:水素化物原子吸光法(日立製作所社製、装置名「Z−5000型偏光ゼーマン原子吸光光度計」)
ORP:ORP計(アズワン株式会社製、装置名:ラコムスターORP計)
pH:pHメータ(堀場製作所社製)
そして、溶出低減材を混合していない原土(比較例5)及び各試験例を混合した実施例4〜5、比較例6〜10の汚染土を環境庁告示46号に準じて溶出試験を実施し、溶出液中のヒ素の濃度、pH、および酸化還元電位(ORP)について前記の装置を用いて測定した。
尚、各実施例および比較例6〜10については、各溶出低減材を汚染土に混合してから、1日、7日および28日経過後に各数値を測定した。
結果を下記表5に示す。
また、7日経過後(材齢7日)の各実施例、比較例7,8および9におけるヒ素溶出量、各実施例および比較例6乃至9における溶出液のpHを示すグラフを図2に示す。
尚、実施例4および5のヒ素の溶出量は、いずれの材齢においても環境基準値である0.01mg/lを下回っていることが認められる。
Claims (6)
- 炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物が軽焼されてなり、且つ前記MgCO3が脱炭酸されることで生成されるMgCxOy(但し、0<x≦1、0<y<3を満たす。)と、MgCO3と、CaCO3とを含む軽焼生成物と、
水溶性硫酸塩とを含有し、
前記軽焼生成物と前記水溶性硫酸塩とが5:5〜1:9の質量比で配合されていることを特徴とする溶出低減材。 - 前記水溶性硫酸塩が、硫酸第一鉄である請求項1に記載の溶出低減材。
- 前記軽焼生成物は、X線電子発光分析法(XPS)によって検出されるO1sに対応するスペクトルにおいて、前記MgCxOyのピークが、MgCO3およびCaCO3の各ピークの中間領域に示される請求項1または2に記載の溶出低減材。
- 前記軽焼生成物は、酸化カルシウム(CaO)を実質的に含まない請求項1乃至3のいずれか一項に記載の溶出低減材。
- 炭酸マグネシウム(MgCO3)と炭酸カルシウム(CaCO3)とを主成分として含む鉱物を650〜1000℃の条件下で軽焼するとともに、該軽焼による重量減少率が9〜20%となった時点で該軽焼を終了させて軽焼生成物とし、
前記軽焼生成物と水溶性硫酸塩とを5:5〜1:9の質量比になるように混合して溶出低減材を調製することを特徴とする溶出低減材の製造方法。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の溶出低減材を、ヒ素含有土壌に混合し、前記ヒ素含有土壌と前記溶出低減材との混合物のろ液のpHが8.0未満となるように調整して、前記ヒ素含有土壌からのヒ素の溶出を低減させることを特徴とする溶出低減方法。
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