JP2013024395A - 金属製ガスケット材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来のゴム製コーティングより熱伝導性が改良され、シール特性が従来のゴム製コーティングとほぼ同等に保たれたガスケット用コーティングを提供する。
【解決手段】 ガスケット基板の表面13にゴムからなるコーティング15を積層してなるガスケット材において、コーティング15に0.3〜10重量%のカーボンナノファイバーを含有させるとともに、カーボンナノファイバーの凝集体21の直径がコーティング15の膜厚以下である。
【選択図】 図5
【解決手段】 ガスケット基板の表面13にゴムからなるコーティング15を積層してなるガスケット材において、コーティング15に0.3〜10重量%のカーボンナノファイバーを含有させるとともに、カーボンナノファイバーの凝集体21の直径がコーティング15の膜厚以下である。
【選択図】 図5
Description
本発明は、ガスケットに関するものであり、さらに詳しく述べるならば、自動車エンジン用シリンダヘッドガスケットに用いられ、表面にシール用ゴムからなるコーティングを施してなる少なくとも1枚のガスケット基板を基本構造とするガスケットに関する。
図1は、ガスケットの一例を示す平面図であり、1は燃焼室孔、2はボルト孔、3は水孔、4はブローバイ孔であり、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持される。図2は、図1のA−A断面図であり、10はシリンダヘッド、11はシリンダブロック、12はガスケット、13a,bは金属基板、14はインナーシム、15a,b,c,dはコーティングである。シリンダヘッド10及びシリンダブロック11の表面はフライスなどにより数μmの粗さに仕上げられており、一方コーティング15a,15bはこの凹凸に密着してシール機能を実現している。
金属製ガスケットの金属板としては、ステンレス鋼やニッケル鋼が多く使用されている。また、ステンレス鋼としては厚さが0.2mm程度のSUS301圧延鋼板が多く使用されているが、最近では、燃焼室内面圧で最大20MPa程度の高燃焼圧シリンダガスケット用として微細析出物分散型SUS301系ステンレス鋼が提案されている(非特許文献1:「まてりあ」Vol.50, 2011.No.3,第120 -122頁)。このステンレス鋼では、調質圧延で変態したマルテンサイト(α´)相中に微細なCr−N化合物が、ゴムコーティングの焼成条件で析出すると説明されている。
コーティングとしてはゴムが使用されている。ゴムは、フッ素ゴム、シリコーンゴム、NBRなどが多く使用されている。一般には、ゴムコーティングと金属板の間には下地化成処理層、樹脂系プライマーなどの中間層が、密着性を高めるために、介在しており、さらに、ゴムコーティングの最表面には、アンチブロッキングを目的とする薄いトップコーティングが施されている。
シリンダヘッドガスケットに要求される基本的性能の一つは、ガスケット面圧により、ガス、水、油をシールすることである。このシール性能は、エンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドをボルトにより締付けることによりガスケットのビード部で発生する反力を利用しており、燃焼室孔周辺は高い面圧を発生させるために、ガスケットは折返しストッパ構造、インナーシム構造などを備えている。
他の基本的性能は、ガスケットがそのばね性により、エンジンの爆発に伴うシリンダヘッド・シリンダブロックの上下振動に追従することである。
別の基本的性能は、エンジンのブロックの熱をヘッド側に逃がすことにより、シリンダブロックの温度上昇を妨げる熱伝導性である。
本発明が提供しようとするガスケット材は、特にシール性能と熱伝導性に着目するものである。以下、従来技術を説明する。
他の基本的性能は、ガスケットがそのばね性により、エンジンの爆発に伴うシリンダヘッド・シリンダブロックの上下振動に追従することである。
別の基本的性能は、エンジンのブロックの熱をヘッド側に逃がすことにより、シリンダブロックの温度上昇を妨げる熱伝導性である。
本発明が提供しようとするガスケット材は、特にシール性能と熱伝導性に着目するものである。以下、従来技術を説明する。
熱伝導性を改良したガスケット材
特許文献1:特開2002−115761号公報は、主として熱伝導性に関係しており、SUS304、Nを添加した高Mnオーステナイト系ステンレス鋼などのストッパ板の一面側で、ボア近傍側にコーティングの欠如部を形成することにより、ボアの周りにおける抜熱を促進することを提案している。即ち、断熱効果をもっている樹脂又はゴムからなるコーティングは、ボア周りでの抜熱を妨げるので、上記欠如部を設けることを提案している。
特許文献1:特開2002−115761号公報は、主として熱伝導性に関係しており、SUS304、Nを添加した高Mnオーステナイト系ステンレス鋼などのストッパ板の一面側で、ボア近傍側にコーティングの欠如部を形成することにより、ボアの周りにおける抜熱を促進することを提案している。即ち、断熱効果をもっている樹脂又はゴムからなるコーティングは、ボア周りでの抜熱を妨げるので、上記欠如部を設けることを提案している。
特許文献2:特開2006−177345号公報は、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に介装されるシール部材の構成を、上下に配置されたシール部材とこの中間に挟持された高熱伝導性部材とし、中間の熱伝導性部材を燃焼室に面するように張出すものである。このシール部材は上下の部材によるシール性と中間の熱伝導性部材による熱伝導性を同時に達成することを意図している。
特許文献3:実開平5−90042号公報は、2枚の金属板の一方には冷却水用の大きな開口を形成し、かつ両面にゴムコーティングを施すとともに、他方には冷却水調整用小さい開口を形成し、ゴムコーティングは外面のみに施すことを提案している。
特許文献4:特開平6−50436号公報は、従来の脱アスベスト系ゴムコーティングは、アスベストの代わりに多量の無機充填剤(例えばガラス繊維)を添加していたために、放熱性が損なわれていたと従来技術を評価し、熱の放散を良好にしてシリンダヘッドとシリンダブロックの温度差を低減することを目的として、ゴムコーティングに金属粉もしくは金属繊維を混入することを提案する。金属としては、金属または合金の粉体、粒体や、金属と非金属元素(例えば酸素)との化合物も使用することができる。実施例及び比較例の共通組成は、ニトリルゴム、ゴム薬品、圧縮性無機・有機繊維(例えばガラス繊維)、芳香族ポリアミド繊維、無機充填剤である。実施例では、金属繊維(ステンレス繊維)と金属粉末(酸化アルミニウム)が上記共通成分に添加され、また、実施例は比較例と比べてガラス繊維の配合量が1/2となっている。
特許文献5:特開2007−162080号公報は、ナノカーボンとアルミニウムを複合した複合メッキ膜は熱伝導性が優れており、エンジンのガスケットに使用できると述べている。なお、ナノカーボンの配合量は1〜40%であり、アスペクト比は20以上である。
この特許文献5の明細書ではナノカーボンは、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを指している。
この特許文献5の明細書ではナノカーボンは、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを指している。
熱伝導性を改良したエンジン
特許文献6:特開2005−291013従来の両面ゴム塗装した金属板を積層した構造では、下側フランジの熱が上側に十分に伝わらないので、エンジンブロックのボア間にドリルパスによる冷却路を設けることも行われている。
特許文献6:特開2005−291013従来の両面ゴム塗装した金属板を積層した構造では、下側フランジの熱が上側に十分に伝わらないので、エンジンブロックのボア間にドリルパスによる冷却路を設けることも行われている。
カーボンナノファイバー
特許文献7:特開2007−126637号公報は、液状もしくは固形ゴム、硬化剤及びカーボンナノファイバー(CNF)からなる樹脂強化材料を開示しており、カーボンナノファイバーの最大凝集サイズが10μm以下であると規定している。この特許文献の記載を次に引用する(引用1〜6)。
特許文献7:特開2007−126637号公報は、液状もしくは固形ゴム、硬化剤及びカーボンナノファイバー(CNF)からなる樹脂強化材料を開示しており、カーボンナノファイバーの最大凝集サイズが10μm以下であると規定している。この特許文献の記載を次に引用する(引用1〜6)。
引用1:黒鉛層が平行に規則的に配列した部分と乱れて不規則に配列した部分とからなる炭素繊維では、不規則な炭素原子配列からなる層が厚いと繊維強度が弱くなりやすく、不規則な炭素原子配列からなる層が薄いと樹脂との界面強度が弱くなりやすい。繊維強度を強く、かつ樹脂との界面強度を強くするためには、不規則な炭素原子配列からなる層(不規則な黒鉛層)が適当な厚さで存在しているか、もしくは1本の繊維の中に厚い不規則な黒鉛層と薄い不規則な黒鉛層とが混在(分布)しているものが良い。
引用2:本発明の炭素繊維凝集体は、そのBET法比表面積が通常20〜400m2/g、好ましくは30〜350m2/g、より好ましくは40〜350m2/gである。
なお本明細書において、比表面積の値は窒素吸着によるBET法で求めたものである。
本発明の一次炭素繊維の形態は、繊維のほぼ全領域に亘って、くねくねと曲がった非直線状の繊維であることが特徴である。このようにくねくねと曲がっているために、二次凝集繊維の中では、比較的強い凝集力を有しているものと推定される。また、このくねくねした構造を有することにより、樹脂中に少量分散した場合でも繊維同士のネットワークが途切れず、従来技術の直線に近い繊維では発現しない低添加量の領域において導電性が発現する一因となっているものと考えられる。
なお本明細書において、比表面積の値は窒素吸着によるBET法で求めたものである。
本発明の一次炭素繊維の形態は、繊維のほぼ全領域に亘って、くねくねと曲がった非直線状の繊維であることが特徴である。このようにくねくねと曲がっているために、二次凝集繊維の中では、比較的強い凝集力を有しているものと推定される。また、このくねくねした構造を有することにより、樹脂中に少量分散した場合でも繊維同士のネットワークが途切れず、従来技術の直線に近い繊維では発現しない低添加量の領域において導電性が発現する一因となっているものと考えられる。
引用3:本発明の好ましい実施態様における炭素繊維凝集体は、上述のように一次炭素繊維が凝集した二次凝集繊維を形成していることが特徴である。電子顕微鏡写真を用いて観察することによりこのような炭素繊維凝集体の構造を特定することが可能である。繊維径、繊維長さなどは、電子顕微鏡写真を用いて観察される数十〜百の検体の平均値として特定される。
引用4:上述のくねくねとした一次炭素繊維は二次凝集繊維中では比較的ランダムに凝集していることが特徴である。また、二次凝集繊維自身も直線状ではなく、湾曲していたり、各々の炭素繊維と同様にくねくねと曲がっている。この二次凝集繊維の径は通常1〜100μmであり、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがさらに好ましい。二次凝集繊維はさらに凝集し、凝集塊中にその末端が取り込まれている場合が多いため、その長さを正確に測定することは困難な場合が多い。電子顕微鏡観察で確認できる凝集繊維の長さは、通常5〜500μm、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは、20〜200μmである。
引用5:すなわち、本発明の炭素繊維凝集体は、二次凝集繊維がさらに凝集して繭状の凝集塊を形成している。繭状の凝集塊は電子顕微鏡写真による観察で、長径と短径の比を規定して特定することができる。本発明の炭素繊維凝集体は実際には繭状以外の無定形やほぼ球形などの凝集塊との混合物として得られたり、電子顕微鏡撮影のための試料調整段階などで凝集塊が壊れてばらばらになり、長径が短くなったりするので定量的に把握することは困難なケースが多い。好ましい態様では、長径と短径の比が少なくとも3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは7以上の繭状の凝集塊を含む。また、繭状の凝集塊の短径は50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。
引用6:繭状の凝集塊中での二次凝集繊維同士の凝集度合いは二次凝集繊維内の各々の一次炭素繊維の凝集度合いよりも粗である。従って、この繭状の凝集塊を樹脂中に添加し混練すると、二次凝集繊維は比較的容易に分散するが、二次凝集繊維を形成している各々の一次炭素繊維はお互いに強固に絡み合っているため、樹脂複合体中で完全に分散せずに(ばらばらにはならずに)、ネットワーク構造が維持されると考えられる。繭状の凝集塊の長径と短径の比が大きい場合には、二次凝集繊維同士は配向性を有していると推定されるが、二次凝集繊維の長さが短いと配向しにくいので、二次繊維の長さはある程度長いことが配向するためには必要であると考えられる。二次凝集繊維は複合材料中に添加、混練された場合に、上述のような高分散状態を容易に形成するものと考えられる。このとき、二次凝集繊維が長いと二次凝集繊維間でもネットワーク構造が維持されやすく、このことが少量の添加で複合材料に導電性を付加できる要因であると考えられる。
特許文献5、7及び非特許文献2(「熱物性」(2005), vol. 19, no. 3, pp.185-191.)などから得られる従来のカーボンナノファイバー技術の知見は次のようにまとめられる。カーボンナノファイバーは熱特性、機械特性、電気的特性で非常に優れた性質を有しており、スポーツ用品、熱伝導材料など種々の用途に適用されてきている。カーボンナノチューブの場合、単層ナノチューブの単体は直径1〜2.5nm、長さ方向で5〜10nmであり、多層ナノチューブで直径10〜40nm、長さ方向で10nm前後と非常に小さい。以下、この寸法をもっているカーボンナノファイバーを本明細書では「単体」という。カーボンナノファイバーは繊維形状をしており繊維の縦方向に優れた熱伝導性を有している。特に熱伝導率は軸方向では3000〜5500W/mkと非常に優れた特性であり、例えば金属としては熱伝導性の優れる銅に比べても約10倍優れている。
カーボンナノファイバーを配合したゴムを金属板にコーティングした材料の場合、カーボンナノファイバーを厚さ方向に繊維を規則的に配列させることは難しく、一般的な製法においては厚さ方向に対して平行に配列され気味となりやすい傾向にある。本願明細書に記載されるカーボンナノファイバーは、結晶性黒鉛ナノ繊維を意味し、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンを含むが、フラーレン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどは除く。即ち、本発明のカーボンナノファイバーは、共通して、優れた熱伝導性及び凝集性を有しており、単体としては熱伝導性の異方性を有している。
カーボンナノファイバーを配合したゴムを金属板にコーティングした材料の場合、カーボンナノファイバーを厚さ方向に繊維を規則的に配列させることは難しく、一般的な製法においては厚さ方向に対して平行に配列され気味となりやすい傾向にある。本願明細書に記載されるカーボンナノファイバーは、結晶性黒鉛ナノ繊維を意味し、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンを含むが、フラーレン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどは除く。即ち、本発明のカーボンナノファイバーは、共通して、優れた熱伝導性及び凝集性を有しており、単体としては熱伝導性の異方性を有している。
「まてりあ」Vol.50, 2011.No.3,第120 -122頁)。
「熱物性」(2005), vol. 19, no. 3, pp. 185-191.創立25周年記念特集「計算熱物性25年の歩み」、「単層ナノチューブの熱伝導」
ガスケットの熱伝導性向上に関する従来技術は次のように分類することができる。
(1)ガスケットの構造
(イ)多層コーティング構造により熱伝導性とシール性を両立する技術:特許
文献2。
(ロ)コーティング層の一部もしくは全部を欠如することにより、熱伝導性を良好に するもの:特許文献1,3
(2)金属添加
特許文献4
(3)カーボンナノファイバーの配合
特許文献5
(4)エンジンブロックの改良
特許文献6
(1)ガスケットの構造
(イ)多層コーティング構造により熱伝導性とシール性を両立する技術:特許
文献2。
(ロ)コーティング層の一部もしくは全部を欠如することにより、熱伝導性を良好に するもの:特許文献1,3
(2)金属添加
特許文献4
(3)カーボンナノファイバーの配合
特許文献5
(4)エンジンブロックの改良
特許文献6
前掲(1)(イ)として分類されるガスケットでは、一つの層が熱伝導性を確保し、他の層がシール性を確保する機能分担を図っている。しかし、コーティング構造が複雑になるという問題がある。さらに、熱伝導性が良好な層内で層の表面と平行方向には熱は伝わり易いが、シール性能が良好な層は熱伝導性が不良であるから、縦方向には熱が伝わり難い。
次に、(1)(ロ)の対策ではコーティングの欠如部ではシール性能は低下することは避けられない。
続いて、前掲(2)に分類される特許文献4は、シール性は圧縮性有機・無機繊維で確保し、また金属もしくは金属化合物により伝熱性を確保することを意図している。したがって、それぞれの性能を良好にしようとすると、各物質の合計添加量が多くなり、ゴムのもっている柔軟性が損なわれる。
(3)で採用されているめっき技術ではカーボンナノファイバーの単体をめっき層中に分散する可能性はあるが、アルミニウムとナノカーボンの複合材であるために、ゴムや黒鉛がもっているシール性能には及ばない。
最後に前掲(4)に分類される技術ではエンジンの構造を変える必要がある。
次に、(1)(ロ)の対策ではコーティングの欠如部ではシール性能は低下することは避けられない。
続いて、前掲(2)に分類される特許文献4は、シール性は圧縮性有機・無機繊維で確保し、また金属もしくは金属化合物により伝熱性を確保することを意図している。したがって、それぞれの性能を良好にしようとすると、各物質の合計添加量が多くなり、ゴムのもっている柔軟性が損なわれる。
(3)で採用されているめっき技術ではカーボンナノファイバーの単体をめっき層中に分散する可能性はあるが、アルミニウムとナノカーボンの複合材であるために、ゴムや黒鉛がもっているシール性能には及ばない。
最後に前掲(4)に分類される技術ではエンジンの構造を変える必要がある。
上述のように、従来の熱伝導性向上対策はコーティングの構造を変えるものが多く、コーティングの材料を変える対策もあるが、熱伝導性とシール性能を兼備する添加剤は見出されていなかったので、本発明は、熱伝導性が改良され、シール特性が従来とほぼ同等に保たれたコーティングを提供することを目的とする。特に、カーボンナノファイバー単体については、軸方向の熱伝導性は優れているが、コーティング材料などに分散された凝集体の熱伝導性が等方的になっていることについては従来知られていなかったので、本発明はかかる新な知見を基に上記目的を達成するものである。
本発明は、ガスケット基板の表面にゴムからなるコーティングを積層してなるガスケット材において、前記コーティングに0.3〜10重量%のカーボンナノファイバーを含有させるとともに、該カーボンナノファイバーの凝集体を含み、その直径が前記コーティングの膜厚以下であることを特徴とする金属製ガスケット材に関する。
以下、本発明を詳しく説明する。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明においては、熱伝導性が悪いゴムに熱伝導性が良好なカーボンナノファイバーを混合すると、カーボンナノファイバーが均一分散せずに凝集体として分散することにより、コーティングの熱伝導性を良好にする。カーボンナノファイバーの単体の熱伝導性は軸方向とこれと直交方向では著しくことなる異方性を有するが、凝集体では、ファイバー同士が絡み合い、ファイバーが一方向に揃っていず、ややランダムに配向したものが集まっている。このために得られた凝集体は球状、塊状などの形状異方性がない塊となる。かかる塊内での熱の流れは方向性が弱められ、この結果、ゴムシートのように薄い層中にカーボンナノファイバーが分散されると、熱伝導性の異方性が弱められ、コーティングの厚さ方向での熱伝導性が良好になる。
さらに、コーティングのゴムがエンジンの動きに伴ってシリンダブロック及びヘッドが振動する際に、カーボンナノファイバーの凝集体では、ファイバーがさらに絡み合い、次には絡みが解ける過程が繰返される。同様にファイバーの配向もランダムから一方向配向へあるいは逆への過程が繰返される。このようにコーティングのゴムの振動に凝集体は追従するので、シール特性が保たれる。
ゴムシートの厚みは25μm以下が好ましく、より好ましくは10μm〜25μmである。
さらに、コーティングのゴムがエンジンの動きに伴ってシリンダブロック及びヘッドが振動する際に、カーボンナノファイバーの凝集体では、ファイバーがさらに絡み合い、次には絡みが解ける過程が繰返される。同様にファイバーの配向もランダムから一方向配向へあるいは逆への過程が繰返される。このようにコーティングのゴムの振動に凝集体は追従するので、シール特性が保たれる。
ゴムシートの厚みは25μm以下が好ましく、より好ましくは10μm〜25μmである。
カーボンナノファイバーの含有量は0.3重量%未満であると熱伝導性向上の効果がなく、10重量%より多いと金属板との密着性が悪くなる。カーボンナノファイバー凝集体直径は前掲引用3,4の方法により測定して、直径がシートの厚み以下である必要がある。この理由は、カーボンナノファイバー凝集体の直径が任意の断面でシートの膜厚を超えると、シート表面の凹凸が大きくなり、また、ガスケット製造直後からあるいはエンジンに組込んだ状態で、カーボンナノファイバーが直接ブロックと接触することとなり、特にエンジンの爆発に伴ってシリンダヘッド・ブロック間が開いたときにシール特性が劣化する恐れがあるためである。従ってカーボンナノファイバー凝集体の直径はコーティング膜厚を上限とする。
図3はゴムコーティングのシール性能を評価した結果を示すグラフであり、図中、「黒ダイアモンドマーク」は従来のカーボンナノファイバーを添加しないゴムシートを示し、「○」は従来のゴムシートにカーボンナノファイバーを添加した材料を示す。横軸は、ガスケットにかかる面圧であり、縦軸はガス漏れ圧力であり、カーボンナノファイバーの添加により、ゴムシートのみの場合とほぼ同様のシール性能が得られた。
本発明に係るゴムコーティングを製造するに際して、従来のシール用ゴム塗料、カーボンナノファイバー粉末、酢酸ブチルなどの溶剤をボールミルにおいて十分に混合した後、金属基材に塗布し、塗膜を80〜120℃で乾燥後に200〜230℃で焼成する。上記混合後の塗料は必要に応じて所定の金属メッシュに通してカーボンナノファイバー凝集体の大きさを揃える。
図4及び図5はカーボンナノファイバーによる熱流の伝わり方を説明する模式図であり、図4はカーボンナノファイバー単体21の均一分散された状態を表すものであり、図5はカーボンナノファイバー凝集体22であり、両図において23はゴム又は膨張黒鉛を指す。一般にゴムの熱伝導率は0.2−0.25W ・m-1・K-1であり、カーボンナノファイバーの熱伝導率は3000−5000W ・m-1・K-1である。カーボンナノファイバーとゴムを混合すると、カーボンナノファイバー単体21は繊維状が積重なるように配向して異方性をもつために、太線で示す熱流はゴム層の横方向に流れ易い。一方、カーボンナノファイバー凝集体22はゴム層内で特定の方向に配向しておらず等方性であるので、熱流は特定の方向に優先的に流れない。また、カーボンナノファイバー凝集体大きさがゴムコーティング層の厚さに近いとカーボンナノファイバー凝集体自身の熱伝導率とほぼ同じ効果がある。また、カーボンナノファイバー凝集体に加えて単体ファイバーがゴムに分散されると、単体ファイバーは軸方向に近接の凝集体の近傍まで優先的に熱を伝導し、次に熱は凝集体に伝えられるので、単体ファイバーもシート全体の熱伝導性向上に寄与する。
以上説明したようにカーボンナノファイバーは熱伝導性及びシール特性を兼備するので、従来法のようにコーティング層を複層にする、コーティング層に欠如部を設ける、あるいはエンジンブロックの構造を変えるなどの大きな設計変更をしなくとも、ゴム本来の性能と相俟って熱伝導性及びシール特性を同時に達成することができる。さらに、ガスケットの熱伝導性を改良したために、エンジンのボア温度を下げ、エンジンのオイル消費を低減し、耐ノック性を向上することができる。さらに、エンジンの熱変形を抑制してフリクションを低減することができる。
コーティング用フッ素ゴム単体並びにこの材料にカーボンナノチューブを配合した本発明実施例のコーティングにつき単体伝熱試験を行った。試験装置は図6に示すとおりであり、図中、30はオートグラフに固定された上金属板、31はオートグラフに固定された下金属板であり、その上面に断熱シート31aを被着してありこれらの中間に以下の部材を介在させて試験片40を挟持した。32は内部に温度10℃冷却水33が4.3L/分の流量で流す冷却用治具、34は上治具、35は下治具、36はバンドヒータを固定した熱板、37はシールである。上治具34、下治具35の内部に設けられた熱電対により温度差を測定した。その結果を図7に示す。
図7はゴムにカーボンナノチューブを0.3重量%、2.6重量%、5重量%、7.5重量%配合した材料の熱伝導特性を評価した結果を示すグラフである。比較としてゴム材料のみシートとの熱伝導特性の結果を示した。カーボンナノファイバーをゴムに配合すると上下治具の温度差が12℃から6℃弱〜約4℃に低下するので、大幅な伝熱性向上が実現される。
高燃焼圧エンジンにおいては、燃焼による熱量増大に伴いブロックの温度上昇が大きくなっているので、ガスケットの熱伝導性向上が要請される。本発明の金属ガスケットは、かかる要請に応え、気密性を確保しつつ、熱伝導性が高い構造を実現する。
1−燃焼室孔
2−ボルト孔
3−水孔
4−ブローバイ孔
10−シリンダヘッド
11−シリンダブロック
12−ガスケット
13a,b−金属基板、
14−インナーシム、
15a,b,c,d−コーティング
2−ボルト孔
3−水孔
4−ブローバイ孔
10−シリンダヘッド
11−シリンダブロック
12−ガスケット
13a,b−金属基板、
14−インナーシム、
15a,b,c,d−コーティング
Claims (2)
- ガスケット基板の表面にゴムからなるコーティングを積層してなるガスケット材において、前記コーティングに0.3〜10重量%のカーボンナノファイバーを含有させるとともに、該カーボンナノファイバーの凝集体を含み、その直径が前記コーティングの膜厚以下であることを特徴とする金属製ガスケット材。
- 前記コーティングの厚さが25μm以下であることを特徴とする請求項1記載の金属製ガスケット材。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020128020A (ja) * | 2019-02-07 | 2020-08-27 | 日鉄日新製鋼株式会社 | 複合体およびその製造方法、ならびに塗装金属板 |
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2011
- 2011-07-26 JP JP2011162853A patent/JP2013024395A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020128020A (ja) * | 2019-02-07 | 2020-08-27 | 日鉄日新製鋼株式会社 | 複合体およびその製造方法、ならびに塗装金属板 |
JP7284379B2 (ja) | 2019-02-07 | 2023-05-31 | 日本製鉄株式会社 | 複合体およびその製造方法、ならびに塗装金属板 |
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