本発明を説明するための実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。なお、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなく実施の形態の内容を変更することは、当業者であれば容易である。よって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定されない。
なお、各実施の形態の内容を互いに適宜組み合わせることができる。また、各実施の形態の内容を互いに置き換えることができる。
また、第1、第2などの序数は、構成要素の混同を避けるために付しており、各構成要素の数は、序数の数に限定されない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、記憶されたデータの判別が可能な記憶装置の例について説明する。
本実施の形態における記憶装置は、メモリセルと、出力信号線と、を具備する。メモリセルは、記憶されたデータ(記憶データともいう)と検索データの比較演算を行うことにより記憶されたデータを判別する機能を有し、例えばメモリセルアレイに設けられる。なお、メモリセルは、複数でもよい。また、記憶データ及び検索データのそれぞれとしては、1ビットのデータを用いることができる。また、出力信号線は、メモリセルにおける比較演算に応じて電圧値が設定される配線である。上記出力信号線の電圧が出力信号となる。
さらに、メモリセルの例について図1及び図2を用いて説明する。
図1及び図2(A)に示すように、メモリセルは、比較回路101(Comp1ともいう)と、比較回路102(Comp2ともいう)と、トランジスタ131と、を備える。なお、必ずしも比較回路102を設けなくてもよいが、例えば記憶装置が複数のメモリセルを具備する場合、比較回路102を設けることにより、複数ビットのデータの判別を行う記憶装置を構成することができる。このとき、比較回路102は、図1及び図2(A)に示すメモリセルと他のメモリセルとの導通状態を制御する。
なお、トランジスタとしては、例えば電界効果トランジスタを用いることができる。
比較回路101は、メモリセルに記憶された記憶データ(データDmともいう)と、検索データ(データDschともいう)を用いて第1の比較演算を行い、演算結果に応じて出力信号線OUTの電圧値を変化させるか否かを制御する機能を有する。例えば、比較回路101は、データDmの値がデータDschの値より小さいときに出力信号線OUTの電圧値を変化させる機能、又はデータDmの値がデータDschの値より大きいときに出力信号線OUTの電圧値を変化させる機能を有する。
比較回路101は、トランジスタを用いて構成することができる。例えば、図2(A)に示すように、比較回路101は、トランジスタ111と、トランジスタ112と、を備える。このとき、トランジスタ111は、Nチャネル型トランジスタであり、トランジスタ112は、Pチャネル型トランジスタである。トランジスタ111のソース及びドレインの一方には、電圧Vxが与えられ、トランジスタ111のゲートの電圧がデータDschとなる。また、トランジスタ112のソース及びドレインの一方は、トランジスタ111のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、トランジスタ112のソース及びドレインの他方は、出力信号線OUTに電気的に接続され、トランジスタ112のゲートの電圧がデータDmとなる。
比較回路102は、メモリセルに記憶された記憶データ(データDm)と、検索データ(データDsch)を用いて第2の比較演算を行う機能を有する。
比較回路102は、トランジスタを用いて構成することができる。例えば、図2(A)に示すように、比較回路102は、トランジスタ121と、トランジスタ122と、を備える。このとき、トランジスタ121は、Nチャネル型トランジスタであり、トランジスタ122は、Pチャネル型トランジスタである。トランジスタ121のソース及びドレインの一方には、電圧Vxが与えられ、トランジスタ121のゲートの電圧がデータDschとなる。また、トランジスタ122のソース及びドレインの一方は、トランジスタ121のソース及びドレインの一方に電気的に接続され、トランジスタ122のソース及びドレインの他方は、トランジスタ121のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、トランジスタ122のゲートの電圧がデータDmとなる。電圧Vxの値は、比較回路101及び比較回路102におけるトランジスタの極性に応じて適宜設定される。
トランジスタ131は、データDmの書き込み及び保持を制御する機能を有する。例えば、トランジスタ131のソース及びドレインの一方には、データ信号が入力され、トランジスタ131のソース及びドレインの他方は、トランジスタ112(比較回路101)のゲート及びトランジスタ122(比較回路102)のゲートに電気的に接続される。トランジスタ131を制御トランジスタともいう。なお、メモリセルに容量素子を設け、トランジスタ131のソース及びドレインの他方に容量素子の一対の電極の一方を電気的に接続させてもよい。このとき、容量素子の一対の電極の他方の電圧は、接地電位と同等の値又は任意の値の電圧となる。
トランジスタ131としては、例えばチャネルが形成される酸化物半導体層を含むトランジスタなどを用いることができる。上記酸化物半導体層は、シリコンよりバンドギャップが高く、例えば2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。
さらに、上記酸化物半導体層を含むトランジスタは、オフ電流が低く、チャネル幅1μmあたり10aA(1×10−17A)以下、好ましくはチャネル幅1μmあたり1aA(1×10−18A)以下、さらに好ましくはチャネル幅1μmあたり10zA(1×10−20A)以下、さらに好ましくはチャネル幅1μmあたり1zA(1×10−21A)以下、さらに好ましくはチャネル幅1μmあたり100yA(1×10−22A)以下である。
さらに、例えば図1及び図2(A)に示すように、本実施の形態における記憶装置は、データ線Dataと、ワード線Wordと、を具備する。
データ線Dataは、メモリセルとのデータのやりとりを行うための配線である。データ線Dataには、データ信号が入力される。例えば、図2(A)に示すデータ線Dataは、トランジスタ111のゲート、トランジスタ121のゲート、並びにトランジスタ131のソース及びドレインの一方に電気的に接続される。これにより、配線数を少なくすることができる。なお、トランジスタ131のソース及びドレインの一方を、データ線Dataの代わりに別の配線に電気的に接続させてもよい。このとき、データ線Dataには、第1のデータ信号が入力され、別の配線には、第2のデータ信号が入力される。上記別の配線をビット線ともいう。
ワード線Wordは、メモリセルにおけるデータの書き込み及び保持を制御する信号が入力される配線である。ワード線Wordは、トランジスタ131のゲートに電気的に接続される。
また、一般的に電圧とは、ある二点間における電位の差(電位差ともいう)のことをいう。しかし、電圧及び電位の値は、回路図などにおいていずれもボルト(V)で表されることがあるため、区別が困難である。そこで、本明細書では、特に指定する場合を除き、ある一点の電位と基準となる電位(基準電位ともいう)との電位差を、該一点の電圧として用いる場合がある。
次に、本実施の形態における記憶装置の駆動方法例として、図2(A)に示す記憶装置の駆動方法例について説明する。ここでは、一例としてデータ信号を、ハイレベル及びローレベルとなる2値のデジタル信号とし、電圧Vxの値がハイレベルのときにおける上記デジタル信号の電圧と同等の値とする。また、ハイレベルのときのデータ信号の電圧がデータ(1)を表し、ローレベルのときのデータ信号の電圧がデータ(0)を表すとする。なお、これに限定されず、ハイレベルのときのデータ信号の電圧がデータ(0)を表し、ローレベルのときのデータ信号の電圧がデータ(1)を表してもよい。
本実施の形態における記憶装置の駆動方法例では、まずトランジスタ131をオン状態にし、データ信号により、トランジスタ112及びトランジスタ122のゲートの電圧、つまりデータDmの値を設定する。これにより、メモリセルにデータが書き込まれる。その後、トランジスタ131をオフ状態にすることにより、トランジスタ112及びトランジスタ122のゲートの電圧(データDmの値)が保持される。よって、メモリセルにデータが記憶される。なお、このときメモリセルへの電圧Vxの供給を停止してもよい。これにより消費電力を低減することができる。例えば、スイッチなどを用いることにより電圧Vxの供給を制御することができる。
次に、データ信号により、トランジスタ111及びトランジスタ121のゲートの電圧、つまりデータDschを設定する。
このとき、データDmの値とデータDschの値によって、比較回路101及び比較回路102の状態が変化する。それぞれの状態について、図2(B)を用いて説明する。図2(B)は、データDmの値、データDschの値、比較回路101、及び比較回路102の状態を示す図である。
図2(B)に示すように、データDmの値が(0)であり、且つデータDschの値が(1)のとき、つまりデータDmの値がデータDschの値より小さいとき、トランジスタ111及びトランジスタ112がオン状態になり、比較回路101は導通状態(状態passともいう)になり、それ以外のときはトランジスタ111及びトランジスタ112の少なくとも一つがオフ状態になり、比較回路101は非導通状態(状態×ともいう)になる。比較回路101が導通状態のとき、出力信号線OUTの電圧値が変化し、電圧Vxと同等の値になる。また、比較回路101が非導通状態のとき、出力信号線OUTの電圧値は変化しない。よって、出力信号線OUTの電圧値が変化するか否かによって、データDmの値がデータDschの値より小さいか否かを判別することができる。
また、データDmの値が(1)であり、且つデータDschの値が(0)のとき、つまりデータDmの値がデータDschの値より大きいとき、トランジスタ121及びトランジスタ122がオフ状態になり、比較回路102は非導通状態になり、それ以外のときはトランジスタ121及びトランジスタ122の少なくとも一つがオン状態になり、比較回路102は導通状態になる。例えば、記憶装置が複数のメモリセルを具備する場合、比較回路102が導通状態のとき、自身が設けられたメモリセルと他のメモリセルとの間が導通状態になり、比較回路102が非導通状態のとき、自身が設けられたメモリセルと他のメモリセルとの間が非導通状態になる。
以上が本実施の形態における記憶装置の駆動方法例の説明である。
なお、メモリセルの構成は図2(A)に示す構成に限定されず、メモリセルの構成を、例えば図3(A)に示すように、トランジスタ111をPチャネル型トランジスタとし、トランジスタ112をNチャネル型トランジスタとし、トランジスタ121をPチャネル型トランジスタとし、トランジスタ122をNチャネル型トランジスタとしてもよい。このとき、図3(B)に示すように、データDmの値がデータDschの値より大きいときに比較回路101は導通状態になり、それ以外のときに非導通状態になる。また、データDmの値がデータDschの値より小さいときに比較回路102は非導通状態になり、それ以外のときに導通状態になる。よって、出力信号線OUTの電圧値が変化するか否かによって、データDmの値がデータDschの値より大きいか否かを判別することができる。なお、比較回路101及び比較回路102の構成は、図2(A)及び図3(A)に示す構成に限定されず、同等の機能を有することができるのであれば他の構成でもよい。
図1乃至図3を用いて説明したように、本実施の形態における記憶装置の例では、比較回路と、メモリセルに記憶されたデータの値の設定を制御する制御トランジスタを用いて、データの判別が可能なメモリセルを構成することにより、メモリセルにおけるトランジスタの数を少なくすることができるため、回路面積を小さくすることができる。
また、本実施の形態における記憶装置の例では、上記制御トランジスタとして、チャネルが形成される酸化物半導体層を含むトランジスタを用いることにより、オフ状態におけるトランジスタのリーク電流を低減することができる。よって、制御トランジスタがオフ状態のときの、メモリセルに記憶されたデータの変動を抑制することができる。さらに、メモリセルに記憶されたデータの変動を抑制することにより、メモリセルにデータを保持させながら電源供給を適宜停止することができるため、消費電力を低減することもできる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、複数ビットのデータの判別が可能な記憶装置の例について説明する。
本実施の形態における記憶装置の例について、図4を用いて説明する。
図4に示す記憶装置は、N段(Nは2以上の自然数)のメモリセル201(メモリセル201_1乃至メモリセル201_N)と、出力信号線OUT1と、出力信号線OUT2と、接続配線CL_1乃至CL_N−1と、電圧が与えられる配線VLと、トランジスタ202と、トランジスタ203と、バッファ204と、バッファ205と、を具備する。なお、N段のメモリセル201を用いて構成される回路を一行分の記憶回路として、該記憶回路を複数設けて複数行の記憶回路を具備する構成にしてもよい。
N段のメモリセル201のそれぞれとしては、図1に示す構成のメモリセルを適用することができ、N段のメモリセル201のそれぞれは、比較回路101、比較回路102、及びトランジスタ131と、を備える。例えば、N段のメモリセル201のそれぞれは、記憶データとして1ビットのデータを記憶する。
N段のメモリセル201のそれぞれにおいて、比較回路101は、1ビットの記憶データ(データDm)と、1ビットの検索データ(データDsch)の第1の比較演算を行い、演算結果に応じて出力信号線OUT1の電圧値を変化させるか否かを制御する機能を有する。例えば、比較回路101は、データDmの値がデータDschの値よりも小さいときに導通状態になり、データDmの値がデータDschの値と一致するとき、又はデータDmの値がデータDschの値よりも大きいときに非導通状態になる機能を有する。なお、これに限定されず、比較回路101が、データDmの値がデータDschの値よりも大きいときに導通状態になり、データDmの値がデータDschの値と一致するとき、又はデータDmの値がデータDschの値よりも小さいときに非導通状態になる機能を有していてもよい。また、比較回路101(トランジスタ112のソース及びドレインの他方)は、出力信号線OUT1に電気的に接続される。
また、N段のメモリセル201のそれぞれにおいて、比較回路102は、1ビットの記憶データ(データDm)と、1ビットの検索データ(データDsch)の第2の比較演算を行う機能を有する。例えば、K段目(Kは2以上N−1以下の自然数)のメモリセル201_Kにおいて、比較回路102は、データDmの値がデータDschの値より小さいときにK−1段目のメモリセル201_K−1とK+1段目のメモリセル201_K+1の間を非導通状態にする機能、又はデータDmの値がデータDschの値より大きいときにK−1段目のメモリセル201_K−1とK+1段目のメモリセル201_K+1の間を非導通状態にする機能を有する。例えば、比較回路102は、データDmの値がデータDschの値よりも小さいとき、又はデータDmの値がデータDschの値と一致するときに導通状態になり、データDmの値がデータDschの値よりも大きいときに非導通状態になる機能を有する。なお、これに限定されず、比較回路102が、データDmの値がデータDschの値よりも大きいとき、又はデータDmの値がデータDschの値と一致するときに導通状態になり、データDmの値がデータDschの値よりも小さいときに非導通状態になる機能を有していてもよい。また、K段目のメモリセル201_Kにおける比較回路102は、K−1段目のメモリセル201_K−1における比較回路102及びK+1段目のメモリセル201_K+1における比較回路102に接続される。
また、1段目のメモリセル201_1の比較回路101は、導通状態又は非導通状態になることにより、配線VLと出力信号線OUT1との電気的接続を制御する機能を有する。
また、1段目のメモリセル201_1の比較回路102は、導通状態又は非導通状態になることにより、配線VLと第1の接続配線CL_1との電気的接続を制御する機能を有する。
また、K段目のメモリセル201_Kの比較回路101は、導通状態又は非導通状態になることにより、第K−1の接続配線CL_K−1と出力信号線OUT1との電気的接続を制御する機能を有する。
また、K段目のメモリセル201_Kの比較回路102は、導通状態又は非導通状態になることにより、第K−1の接続配線CL_K−1と第Kの接続配線CL_Kとの電気的接続を制御する機能を有する。
また、N段目のメモリセル201_Nの比較回路101は、導通状態又は非導通状態になることにより、第N−1の接続配線CL_N−1と出力信号線OUT1との電気的接続を制御する機能を有する。
また、N段目のメモリセル201_Nの比較回路102は、導通状態又は非導通状態になることにより、第N−1の接続配線CL_N−1と出力信号線OUT2との電気的接続を制御する機能を有する。
N段のメモリセル201のそれぞれにおいて、トランジスタ131のソース及びドレインの一方は、互いに異なるデータ線Dataに電気的に接続され、互いに異なるデータ線を介して互いに異なるデータ信号が入力される。トランジスタ131のゲートは、共通のワード線Wordに電気的に接続される。
また、1段目のメモリセル201_1において、比較回路101(トランジスタ111のソース及びドレインの一方)及び比較回路102(トランジスタ121のソース及びドレインの一方、並びにトランジスタ122のソース及びドレインの一方)には、配線VLを介して電圧Vaが与えられる。よって、出力信号線OUT2は、N段のメモリセル201のそれぞれにおける比較回路102を介して電圧Vaが与えられる配線に接続される。電圧Vaは、メモリセル201を構成するトランジスタの極性に応じて適宜設定される。
また、出力信号線OUT1及び出力信号線OUT2は、N段のメモリセル201のそれぞれにおける比較演算に応じて電圧値が設定される配線である。出力信号線OUT2は、N段目のメモリセル201_N(トランジスタ121のソース及びドレインの他方、並びにトランジスタ122のソース及びドレインの他方)に電気的に接続される。
なお、その他の構成要素の説明は、実施の形態1における説明を適宜援用する。
トランジスタ202は、出力信号線OUT1の電圧を基準電圧に設定するか否かを制御する機能を有する。例えば、トランジスタ202のソース及びドレインの一方には、基準電圧が与えられ、トランジスタ202のソース及びドレインの他方が出力信号線OUT1に電気的に接続され、トランジスタ202のゲートには、制御信号が入力される。なお、基準電圧の値は、例えば記憶装置におけるトランジスタの極性に応じて適宜設定される。
トランジスタ203は、出力信号線OUT2の電圧を基準電圧に設定するか否かを制御する機能を有する。例えば、トランジスタ203のソース及びドレインの一方には、基準電圧が与えられ、トランジスタ203のソース及びドレインの他方が出力信号線OUT2に電気的に接続され、トランジスタ203のゲートには、制御信号が入力される。なお、制御信号及び基準電圧は、トランジスタ202と同じでもよい。
バッファ204は、出力信号線OUT1における電圧値を調整し、調整した電圧を出力信号として出力する機能を有する。なお、必ずしもバッファ204を設けなくてもよい。
バッファ205は、出力信号線OUT2における電圧値を調整し、調整した電圧を出力信号として出力する機能を有する。なお、必ずしもバッファ205を設けなくてもよい。
次に、本実施の形態における記憶装置の駆動方法例として、図4に示す記憶装置の駆動方法例について説明する。ここでは、一例としてデータ信号を、ハイレベル及びローレベルとなる2値(1ビット)のデジタル信号とし、ハイレベルのときのデータ信号の電圧がデータ(1)を表し、ローレベルのときのデータ信号の電圧がデータ(0)を表すとする。
まず、第1のデータ信号乃至第Nデータ信号により、メモリセル201_1乃至メモリセル201_Nのそれぞれにデータを書き込み、それぞれのメモリセル201に記憶されるデータDmの値を設定する。ここでは、各メモリセル201に1ビット毎のデータを書き込むことにより、メモリセル201_1乃至メモリセル201_NにNビットのデータを書き込む。なお、このとき1段目のメモリセル201_1への電圧Vaの供給を停止してもよい。これにより消費電力を低減することができる。例えば、スイッチなどを用いることにより電圧Vaの供給を制御することができる。
次に、トランジスタ202をオン状態にして出力信号線OUT1及び出力信号線OUT2の電圧を基準電圧に設定する。
次に、第1のデータ信号乃至第Nのデータ信号により、メモリセル201_1乃至メモリセル201_NのそれぞれにおけるデータDschを設定する。各メモリセル201のデータDschを1ビット毎のデータに設定することにより、メモリセル201_1乃至メモリセル201_Nにおいて、Nビットの検索データを設定することができる。
このとき、各メモリセル201において、データDmの値とデータDschの値によって、比較回路101及び比較回路102の状態が変化する。
例えば、データDmの値がデータDschの値より小さいとき、比較回路101は導通状態になり、それ以外のときには、比較回路101は非導通状態になる。比較回路101が導通状態のとき、出力信号線OUT1の電圧値が変化する。また、比較回路101が非導通状態のとき、出力信号線OUT1の電圧値は変化しない。
また、データDmの値がデータDschの値より大きいとき、比較回路102は非導通状態になり、それ以外のときは、比較回路102は導通状態になる。例えば、K段目のメモリセル201_Kにおける比較回路102が導通状態のとき、K段目のメモリセル201_KとK+1段目のメモリセル201_K+1の間が導通状態になり、K段目のメモリセル201_Kにおける比較回路102が非導通状態のとき、K段目のメモリセル201_KとK+1段目のメモリセル201_K+1の間が非導通状態になる。
上記動作を一例として示すように、各メモリセル201に記憶された記憶データDmからなるNビットのデータの値が各メモリセル201において設定されたデータDschからなるNビットのデータの値より大きいとき、又は小さいときには、出力信号線OUT1の電圧値が変化し、それ以外のときには、出力信号線OUT1の電圧値は変化しない。
また、各メモリセル201に記憶されたデータDmからなるNビットのデータの値が各メモリセル201において設定されたデータDschからなるNビットのデータの値より小さいとき、又は大きいときには、隣り合う段のメモリセル201の間が非導通状態になり、N段のメモリセル201のそれぞれにおいて、各メモリセル201に記憶されたデータDmからなるNビットのデータの値が各メモリセル201において設定されたデータDschからなるNビットのデータの値が等しいときには、出力信号線OUT2の電圧値が変化する。
さらに、各メモリセル201における比較演算によって、出力信号線OUT1及び出力信号線OUT2の電圧値がそれぞれ設定されることにより、各メモリセル201に記憶されたデータDmからなるNビットのデータが判別される。
例えば、出力信号線OUT1の電圧値がデータ(1)を表す値であり、出力信号線OUT2の電圧値がデータ(1)又はデータ(0)を表す値であるとき、各メモリセル201に記憶されたデータDmからなるNビットのデータは、検索データとなるNビットのデータより小さいと判定される。
また、出力信号線OUT1の電圧値がデータ(0)を表す値であり、出力信号線OUT2の電圧値がデータ(1)を表す値であるとき、各メモリセル201に記憶されたデータDmからなるNビットのデータは、検索データとなるNビットのデータと等しいと判定される。例えば、N段のメモリセル201のそれぞれにおいて、データDmの値がデータDschの値と等しいときに、出力信号線OUT2の電圧値がデータ(1)を表す値となる。
また、出力信号線OUT1の電圧値がデータ(0)を表す値であり、出力信号線OUT2の電圧値がデータ(0)を表す値であるとき、各メモリセル201に記憶されたデータDmからなるNビットのデータは、検索データとなるNビットのデータより大きいと判定される。
なお、実施の形態1に示す記憶装置と同様に各メモリセル201において、比較回路101及び比較回路102におけるトランジスタの極性を逆にし、電圧Vaの値を変えれば出力信号線OUT1及び出力信号線OUT2の電圧値と判定結果の大小関係は逆になる。
以上のように、出力信号線OUT1及び出力信号線OUT2の電圧値が変化するか否かによって、各メモリセル201に記憶されたデータDmからなるNビットのデータを判別することができる。
なお、N段のメモリセル201を用いて構成される記憶回路を複数具備する場合、全てのメモリセル201のそれぞれにおけるデータDschの設定動作は、同時に行われてもよい。
以上が本実施の形態における記憶装置の駆動方法例の説明である。
図4を用いて説明したように、実施の形態1に示す構成のメモリセルを用いて複数段のメモリセルを備える記憶装置を構成することにより、複数ビットのデータの判別が可能な記憶装置を提供することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態に示す記憶装置のトランジスタに適用可能な酸化物半導体層を含むトランジスタの例について説明する。
上記酸化物半導体層を含むトランジスタの構造例について、図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態におけるトランジスタの構造例を示す断面模式図である。
図5(A)に示すトランジスタは、導電層601_aと、絶縁層602_aと、半導体層603_aと、導電層605a_aと、導電層605b_aと、絶縁層606_aと、導電層608_aと、を含む。
導電層601_aは、被素子形成層600_aの上に設けられる。
絶縁層602_aは、導電層601_aの上に設けられる。
半導体層603_aは、絶縁層602_aを介して導電層601_aに重畳する。
導電層605a_a及び導電層605b_aのそれぞれは、半導体層603_aの上に設けられ、半導体層603_aに電気的に接続される。
絶縁層606_aは、半導体層603_a、導電層605a_a、及び導電層605b_aの上に設けられる。
導電層608_aは、絶縁層606_aを介して半導体層603_aに重畳する。
なお、必ずしも導電層601_a及び導電層608_aの一方を設けなくてもよい。また、導電層608_aを設けない場合には、絶縁層606_aを設けなくてもよい。
図5(B)に示すトランジスタは、導電層601_bと、絶縁層602_bと、半導体層603_bと、導電層605a_bと、導電層605b_bと、絶縁層606_bと、導電層608_bと、を含む。
導電層601_bは、被素子形成層600_bの上に設けられる。
絶縁層602_bは、導電層601_bの上に設けられる。
導電層605a_b及び導電層605b_bのそれぞれは、絶縁層602_bの一部の上に設けられる。
半導体層603_bは、導電層605a_b及び導電層605b_bの上に設けられ、導電層605a_b及び導電層605b_bに電気的に接続される。また、半導体層603_bは、絶縁層602_bを介して導電層601_bに重畳する。
絶縁層606_bは、半導体層603_b、導電層605a_b、及び導電層605b_bの上に設けられる。
導電層608_bは、絶縁層606_bを介して半導体層603_bに重畳する。
なお、必ずしも導電層601_b及び導電層608_bの一方を設けなくてもよい。導電層608_bを設けない場合には、絶縁層606_bを設けなくてもよい。
図5(C)に示すトランジスタは、導電層601_cと、絶縁層602_cと、半導体層603_cと、導電層605a_cと、導電層605b_cと、を含む。
半導体層603_cは、領域604a_c及び領域604b_cを含む。領域604a_c及び領域604b_cは、互いに離間し、それぞれドーパントが添加された領域である。なお、領域604a_c及び領域604b_cの間の領域がチャネル形成領域になる。半導体層603_cは、被素子形成層600_cの上に設けられる。なお、必ずしも領域604a_c及び領域604b_cを設けなくてもよい。
導電層605a_c及び導電層605b_cは、半導体層603_cの上に設けられ、半導体層603_cに電気的に接続される。また、導電層605a_c及び導電層605b_cの側面は、テーパ状である。
また、導電層605a_cは、領域604a_cの一部に重畳するが、必ずしもこれに限定されない。導電層605a_cを領域604a_cの一部に重畳させることにより、導電層605a_c及び領域604a_cの間の抵抗値を小さくすることができる。また、導電層605a_cに重畳する半導体層603_cの領域の全てが領域604a_cでもよい。
また、導電層605b_cは、領域604b_cの一部に重畳するが、必ずしもこれに限定されない。導電層605b_cを領域604b_cの一部に重畳させることにより、導電層605b_c及び領域604b_cの間の抵抗を小さくすることができる。また、導電層605b_cに重畳する半導体層603_cの領域の全てが領域604b_cでもよい。
絶縁層602_cは、半導体層603_c、導電層605a_c、及び導電層605b_cの上に設けられる。
導電層601_cは、絶縁層602_cを介して半導体層603_cに重畳する。絶縁層602_cを介して導電層601_cと重畳する半導体層603_cの領域がチャネル形成領域になる。
また、図5(D)に示すトランジスタは、導電層601_dと、絶縁層602_dと、半導体層603_dと、導電層605a_dと、導電層605b_dと、を含む。
導電層605a_d及び導電層605b_dは、被素子形成層600_dの上に設けられる。また、導電層605a_d及び導電層605b_dの側面は、テーパ状である。
半導体層603_dは、領域604a_d及び領域604b_dと、を含む。領域604a_d及び領域604b_dは、互いに離間し、それぞれドーパントが添加された領域である。また、領域604a_d及び領域604b_dの間の領域がチャネル形成領域になる。半導体層603_dは、例えば導電層605a_d、導電層605b_d、及び被素子形成層600_dの上に設けられ、導電層605a_d及び導電層605b_dに電気的に接続される。なお、必ずしも領域604a_d及び領域604b_dを設けなくてもよい。
領域604a_dは、導電層605a_dに電気的に接続される。
領域604b_dは、導電層605b_dに電気的に接続される。
絶縁層602_dは、半導体層603_dの上に設けられる。
導電層601_dは、絶縁層602_dを介して半導体層603_dに重畳する。絶縁層602_dを介して導電層601_dと重畳する半導体層603_dの領域がチャネル形成領域になる。
さらに、図5(A)乃至図5(D)に示す各構成要素について説明する。
被素子形成層600_a乃至被素子形成層600_dとしては、例えば絶縁層、又は絶縁表面を有する基板などを用いることができる。また、予め素子が形成された層を被素子形成層600_a乃至被素子形成層600_dとして用いることもできる。
導電層601_a乃至導電層601_dのそれぞれは、トランジスタのゲートとしての機能を有する。なお、トランジスタのゲートとしての機能を有する層をゲート電極又はゲート配線ともいう。
導電層601_a乃至導電層601_dとしては、例えばモリブデン、マグネシウム、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、若しくはスカンジウムなどの金属材料、又はこれらを主成分とする合金材料の層を用いることができる。また、導電層601_a乃至導電層601_dの形成に適用可能な材料の層の積層により、導電層601_a乃至導電層601_dを構成することもできる。
絶縁層602_a乃至絶縁層602_dのそれぞれは、トランジスタのゲート絶縁層としての機能を有する。
絶縁層602_a乃至絶縁層602_dとしては、例えば酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、酸化窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層、酸化ハフニウム層、又は酸化ランタン層を用いることができる。また、絶縁層602_a乃至絶縁層602_dに適用可能な材料の層の積層により絶縁層602_a乃至絶縁層602_dを構成することもできる。
また、絶縁層602_a乃至絶縁層602_dとしては、例えば元素周期表における第13族元素及び酸素元素を含む材料の絶縁層を用いることもできる。例えば、半導体層603_a乃至半導体層603_dが第13族元素を含む場合に、半導体層603_a乃至半導体層603_dに接する絶縁層として第13族元素を含む絶縁層を用いることにより、該絶縁層と酸化物半導体層との界面の状態を良好にすることができる。
第13族元素及び酸素元素を含む材料としては、例えば酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどが挙げられる。なお、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多い物質のことをいい、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上の物質のことをいう。例えば、Al2Ox(x=3+α、αは0より大きく1より小さい値)、Ga2Ox(x=3+α、αは0より大きく1より小さい値)、又はGaxAl2−xO3+α(xは0より大きく2より小さい値、αは0より大きく1より小さい値)で表記される材料を用いることもできる。
また、絶縁層602_a乃至絶縁層602_dに適用可能な材料の層の積層により絶縁層602_a乃至絶縁層602_dを構成することもできる。例えば、複数のGa2Oxで表記される酸化ガリウムを含む層の積層により絶縁層602_a乃至絶縁層602_dを構成してもよい。また、Ga2Oxで表記される酸化ガリウムを含む絶縁層及びAl2Oxで表記される酸化アルミニウムを含む絶縁層の積層により絶縁層602_a乃至絶縁層602_dを構成してもよい。
半導体層603_a乃至半導体層603_dのそれぞれは、トランジスタのチャネルが形成される層としての機能を有する。半導体層603_a乃至半導体層603_dに適用可能な酸化物半導体としては、例えば四元系金属酸化物、三元系金属酸化物、二元系金属酸化物、又は単元系金属酸化物などを用いることができる。
酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
四元系金属酸化物としては、例えばIn−Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物、In−Hf−Ga−Zn−O系金属酸化物、In−Al−Ga−Zn−O系金属酸化物、In−Sn−Al−Zn−O系金属酸化物、In−Sn−Hf−Zn−O系金属酸化物、In−Hf−Al−Zn−O系金属酸化物などを用いることができる。
三元系金属酸化物としては、例えばIn−Ga−Zn−O系金属酸化物、In−Sn−Zn−O系金属酸化物、In−Al−Zn−O系金属酸化物、Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物、Al−Ga−Zn−O系金属酸化物、又はSn−Al−Zn−O系金属酸化物、In−Hf−Zn−O系金属酸化物、In−La−Zn−O系金属酸化物、In−Ce−Zn−O系金属酸化物、In−Pr−Zn−O系金属酸化物、In−Nd−Zn−O系金属酸化物、In−Sm−Zn−O系金属酸化物、In−Eu−Zn−O系金属酸化物、In−Gd−Zn−O系金属酸化物、In−Tb−Zn−O系金属酸化物、In−Dy−Zn−O系金属酸化物、In−Ho−Zn−O系金属酸化物、In−Er−Zn−O系金属酸化物、In−Tm−Zn−O系金属酸化物、In−Yb−Zn−O系金属酸化物、In−Lu−Zn−O系金属酸化物などを用いることができる。
二元系金属酸化物としては、例えばIn−Zn−O系金属酸化物、Sn−Zn−O系金属酸化物、Al−Zn−O系金属酸化物、Zn−Mg−O系金属酸化物、Sn−Mg−O系金属酸化物、In−Mg−O系金属酸化物、In−Sn−O系金属酸化物、又はIn−Ga−O系金属酸化物などを用いることができる。
単元系金属酸化物としては、例えばIn−O系金属酸化物、Sn−O系金属酸化物、又はZn−O系金属酸化物などを用いることもできる。また、上記酸化物半導体として適用可能な金属酸化物は、酸化シリコンを含んでいてもよい。
なお、In−Ga−Zn−O系金属酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する金属酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
In−Zn−O系金属酸化物を用いる場合、例えば、In:Zn=50:1乃至In:Zn=1:2(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=25:1乃至In2O3:ZnO=1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1乃至In:Zn=1:1(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=10:1乃至In2O3:ZnO=1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1乃至In:Zn=1.5:1(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=15:2乃至In2O3:ZnO=3:4)の組成比である酸化物ターゲットを用いてIn−Zn−O系金属酸化物の半導体層を形成することができる。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=S:U:Rのとき、R>1.5S+Uとする。Inの量を多くすることにより、トランジスタの移動度を向上させることができる。
また、In−Sn−Zn−O系金属酸化物に用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1、又はIn:Sn:Zn=20:45:35などとなる酸化物ターゲットを用いる。
また、酸化物半導体としては、InLO3(ZnO)m(mは0より大きい数、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いることもできる。InLO3(ZnO)mのLは、Ga、Fe、Al、Mn、及びCoから選ばれた一つ又は複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In3SnO5(ZnO)n(nは0より大きい数、且つ、nは整数)で表記される材料を用いることもできる。
また、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn−O系金属酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn−O系金属酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつきなど)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度などを適切なものとすることが好ましい。
例えば、In−Sn−Zn−O系金属酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn−O系金属酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a―A)2+(b―B)2+(c―C)2≦r2を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
なお、上記において、S0は、測定面(座標(x1,y1)(x1,y2)(x2,y1)(x2,y2)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Z0は測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。なお、測定面とは、全測定データの示す面であり、三つのパラメータ(x,y,z)から成り立っており、z=F(x,y)で表される。なお、xの(及びy)の範囲は0乃至xMAX(及びyMAX)であり、zの範囲はzMIN乃至zMAXである。
また、半導体層603_a乃至半導体層603_dの少なくともチャネルが形成される領域は、結晶性を有し、非単結晶であって、ab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、又は正六角形の原子配列を有し、且つ、c軸方向に垂直な方向から見て金属原子が層状に配列した相、又はc軸方向に垂直な方向から見て金属原子と酸素原子が層状に配列した相を有してもよい。上記相を有する材料をCAAC(c axis aligned crystalともいう)ともいう。
また、トランジスタのチャネル長30nmとしたとき、半導体層603_a乃至半導体層603_dの厚さを例えば5nm程度にしてもよい。このとき、半導体層603_a乃至半導体層603_dがCAACの酸化物半導体層であれば、トランジスタにおける短チャネル効果を抑制することができる。
領域604a_c、領域604b_c、領域604a_d、及び領域604b_dは、N型又はP型の導電型を付与するドーパントが添加され、トランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。ドーパントとしては、例えば元素周期表における13族の元素(例えば硼素など)、元素周期表における15族の元素(例えば窒素、リン、及び砒素の一つ又は複数)、及び希ガス元素(例えばヘリウム、アルゴン、及びキセノンの一つ又は複数)の一つ又は複数を用いることができる。なお、トランジスタのソースとしての機能を有する領域をソース領域ともいい、トランジスタのドレインとしての機能を有する領域をドレイン領域ともいう。領域604a_c、領域604b_c、領域604a_d、及び領域604b_dにドーパントを添加することにより導電層との接続抵抗を小さくすることができるため、トランジスタを微細化することができる。
導電層605a_a乃至導電層605a_d、及び導電層605b_a乃至導電層605b_dのそれぞれは、トランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。なお、トランジスタのソースとしての機能を有する層をソース電極又はソース配線ともいい、トランジスタのドレインとしての機能を有する層をドレイン電極又はドレイン配線ともいう。
導電層605a_a乃至導電層605a_d、及び導電層605b_a乃至導電層605b_dとしては、例えばアルミニウム、マグネシウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、若しくはタングステンなどの金属材料、又はこれらの金属材料を主成分とする合金材料の層を用いることができる。例えば、銅、マグネシウム、及びアルミニウムを含む合金材料の層により、導電層605a_a乃至導電層605a_d、及び導電層605b_a乃至導電層605b_dを構成することができる。また、導電層605a_a乃至導電層605a_d、及び導電層605b_a乃至導電層605b_dに適用可能な材料の層の積層により、導電層605a_a乃至導電層605a_d、及び導電層605b_a乃至導電層605b_dを構成することもできる。例えば、銅、マグネシウム、及びアルミニウムを含む合金材料の層と銅を含む層の積層により、導電層605a_a乃至導電層605a_d、及び導電層605b_a乃至導電層605b_dを構成することができる。
また、導電層605a_a乃至導電層605a_d、及び導電層605b_a乃至導電層605b_dとしては、導電性の金属酸化物を含む層を用いることもできる。導電性の金属酸化物としては、例えば酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、又は酸化インジウム酸化亜鉛を用いることができる。なお、導電層605a_a乃至導電層605a_d、及び導電層605b_a乃至導電層605b_dに適用可能な導電性の金属酸化物は、酸化シリコンを含んでいてもよい。
絶縁層606_a及び絶縁層606_bとしては、絶縁層602_a乃至絶縁層602_dに適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層606_a及び絶縁層606_bに適用可能な材料の積層により、絶縁層606_a及び絶縁層606_bを構成してもよい。例えば、酸化シリコン層、酸化アルミニウム層などにより絶縁層606_a及び絶縁層606_bを構成してもよい。例えば、酸化アルミニウム層を用いることにより、半導体層603_a及び半導体層603_bへの不純物の侵入抑制効果をより高めることができ、また、半導体層603_a及び半導体層603_b中の酸素の脱離抑制効果を高めることができる。
導電層608_a及び導電層608_bのそれぞれは、トランジスタのゲートとしての機能を有する。なお、トランジスタが導電層601_a及び導電層608_aの両方、又は導電層601_b及び導電層608_bの両方を含む構造である場合、導電層601_a及び導電層608_aの一方、又は導電層601_b及び導電層608_bの一方を、バックゲート、バックゲート電極、又はバックゲート配線ともいう。ゲートとしての機能を有する導電層を、チャネル形成層を介して複数設けることにより、トランジスタの閾値電圧を制御しやすくすることができる。
導電層608_a及び導電層608_bとしては、例えば導電層601_a乃至導電層601_dに適用可能な材料の層を用いることができる。また、導電層608_a及び導電層608_bに適用可能な材料の層の積層により導電層608_a及び導電層608_bを構成してもよい。
なお、本実施の形態のトランジスタを、チャネル形成層としての機能を有する酸化物半導体層の一部の上に絶縁層を含み、該絶縁層を介して酸化物半導体層に重畳するように、ソース又はドレインとしての機能を有する導電層を含む構造としてもよい。上記構造である場合、絶縁層は、トランジスタのチャネル形成層を保護する層(チャネル保護層ともいう)としての機能を有する。チャネル保護層としての機能を有する絶縁層としては、例えば絶縁層602_a乃至絶縁層602_dに適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層602_a乃至絶縁層602_dに適用可能な材料の積層によりチャネル保護層としての機能を有する絶縁層を構成してもよい。
また、被素子形成層600_a乃至被素子形成層600_dの上に下地層を形成し、該下地層の上にトランジスタを形成してもよい。このとき、下地層としては、例えば絶縁層602_a乃至絶縁層602_dに適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層602_a乃至絶縁層602_dに適用可能な材料の積層により下地層を構成してもよい。例えば、酸化アルミニウム層及び酸化シリコン層の積層により下地層を構成することにより、下地層に含まれる酸素が半導体層603_a乃至半導体層603_dを介して脱離するのを抑制することができる。
さらに、本実施の形態におけるトランジスタの作製方法例として、図5(A)に示すトランジスタの作製方法例について、図6を用いて説明する。図6は、図5(A)に示すトランジスタの作製方法例を説明するための断面模式図である。
まず、図6(A)に示すように、被素子形成層600_aを準備し、被素子形成層600_aの上に第1の導電膜を形成し、第1の導電膜の一部をエッチングすることにより導電層601_aを形成する。
例えば、スパッタリング法を用いて導電層601_aに適用可能な材料の膜を形成することにより第1の導電膜を形成することができる。また、第1の導電膜に適用可能な材料の膜を積層させ、第1の導電膜を形成することもできる。
なお、スパッタリングガスとして、例えば水素、水、水酸基、又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることにより、形成される膜の上記不純物濃度を低減することができる。
なお、スパッタリング法を用いて膜を形成する前に、スパッタリング装置の予備加熱室において予備加熱処理を行ってもよい。上記予備加熱処理を行うことにより、水素、水分などの不純物を脱離することができる。
また、スパッタリング法を用いて膜を形成する前に、例えばアルゴン、窒素、ヘリウム、又は酸素雰囲気下で、ターゲット側に電圧を印加せずに、基板側にRF電源を用いて電圧を印加し、プラズマを形成して被形成面を改質する処理(逆スパッタともいう)を行ってもよい。逆スパッタを行うことにより、被形成面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
また、スパッタリング法を用いて膜を形成する場合、吸着型の真空ポンプなどを用いて、膜を形成する成膜室内の残留水分を除去することができる。吸着型の真空ポンプとしては、例えばクライオポンプ、イオンポンプ、又はチタンサブリメーションポンプなどを用いることができる。また、コールドトラップを設けたターボ分子ポンプを用いて成膜室内の残留水分を除去することもできる。上記真空ポンプを用いることにより、不純物を含む排気の逆流を低減することができる。
また、上記導電層601_aの形成方法のように、本実施の形態におけるトランジスタの作製方法例において、膜の一部をエッチングして層を形成する場合、例えば、フォトリソグラフィ工程により膜の一部の上にレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いて膜をエッチングすることにより、層を形成することができる。なお、この場合、層の形成後にレジストマスクを除去する。
また、インクジェット法を用いてレジストマスクを形成してもよい。インクジェット法を用いることにより、フォトマスクが不要になるため、製造コストを低減することができる。また、透過率の異なる複数の領域を有する露光マスク(多階調マスクともいう)を用いてレジストマスクを形成してもよい。多階調マスクを用いることにより、異なる厚さの領域を有するレジストマスクを形成することができ、トランジスタの作製に使用するレジストマスクの数を低減することができる。
次に、図6(B)に示すように、導電層601_aの上に第1の絶縁膜を形成することにより絶縁層602_aを形成する。
例えば、スパッタリング法やプラズマCVD法などを用いて絶縁層602_aに適用可能な材料の膜を形成することにより第1の絶縁膜を形成することができる。また、絶縁層602_aに適用可能な材料の膜を積層させることにより第1の絶縁膜を形成することもできる。また、高密度プラズマCVD法(例えばμ波(例えば、周波数2.45GHzのμ波)を用いた高密度プラズマCVD法)を用いて絶縁層602_aに適用可能な材料の膜を形成することにより、絶縁層602_aを緻密にすることができ、絶縁層602_aの絶縁耐圧を向上させることができる。
次に、図6(C)に示すように、絶縁層602_aの上に酸化物半導体膜を形成し、その後酸化物半導体膜の一部をエッチングすることにより半導体層603_aを形成する。
例えば、スパッタリング法を用いて半導体層603_aに適用可能な酸化物半導体材料の膜を形成することにより酸化物半導体膜を形成することができる。なお、希ガス雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下で酸化物半導体膜を形成してもよい。また、半導体層603_aとしてCAACである酸化物半導体層を形成する場合、スパッタリング法を用い、酸化物半導体膜が形成される被素子形成層の温度を100℃以上500℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下にして酸化物半導体膜を形成する。このとき、スパッタリング装置内の水素又は水などの不純物の濃度が極めて低いことが好ましい。例えば、酸化物半導体膜の形成前に熱処理を行うことにより、スパッタリング装置内の水素又は水などの不純物の濃度を低くすることができる。また、このとき、絶縁層602_aは平坦であることが好ましい。例えば、絶縁層602_aの平均面粗さは、0.5nm未満、さらには0.1nm以下であることが好ましい。
また、スパッタリングターゲットとして、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比である酸化物ターゲットを用いて酸化物半導体膜を形成することができる。また、例えば、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比である酸化物ターゲットを用いて酸化物半導体膜を形成してもよい。
また、スパッタリング法を用いる場合、例えば、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下で半導体層603_aを形成する。このとき、希ガスと酸素の混合雰囲気下で半導体層603_aを形成する場合には、希ガスの量に対して酸素の量が多い方が好ましい。
次に、図6(D)に示すように、絶縁層602_a及び半導体層603_aの上に第2の導電膜を形成し、第2の導電膜の一部をエッチングすることにより導電層605a_a及び導電層605b_aを形成する。
例えば、スパッタリング法などを用いて導電層605a_a及び導電層605b_aに適用可能な材料の膜を形成することにより第2の導電膜を形成することができる。また、導電層605a_a及び導電層605b_aに適用可能な材料の膜を積層させることにより第2の導電膜を形成することもできる。
次に、図6(E)に示すように、半導体層603_aに接するように絶縁層606_aを形成する。
例えば、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下で、スパッタリング法を用いて絶縁層606_aに適用可能な膜を形成することにより、絶縁層606_aを形成することができる。スパッタリング法を用いて絶縁層606_aを形成することにより、トランジスタのバックチャネルとしての機能を有する半導体層603_aの部分における抵抗の低下を抑制することができる。また、絶縁層606_aを形成する際の基板温度は、室温以上300℃以下であることが好ましい。
また、絶縁層606_aを形成する前にN2O、N2、又はArなどのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している半導体層603_aの表面に付着した吸着水などを除去してもよい。プラズマ処理を行った場合、その後、大気に触れることなく、絶縁層606_aを形成することが好ましい。
さらに、図5(A)に示すトランジスタの作製方法の一例では、例えば600℃以上750℃以下、又は600℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行う。例えば、酸化物半導体膜を形成した後、酸化物半導体膜の一部をエッチングした後、第2の導電膜を形成した後、第2の導電膜の一部をエッチングした後、又は絶縁層606_aを形成した後に上記加熱処理を行う。
なお、上記加熱処理を行う加熱処理装置としては、電気炉、又は抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射により被処理物を加熱する装置を用いることができ、例えばGRTA(Gas Rapid Thermal Annealing)装置又はLRTA(Lamp Rapid Thermal Annealing)装置などのRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いることができる。LRTA装置は、例えばハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、又は高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。また、GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスとしては、例えば希ガス、又は加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体(例えば窒素)を用いることができる。
また、上記加熱処理を行った後、その加熱温度を維持しながら又はその加熱温度から降温する過程で該加熱処理を行った炉と同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度のN2Oガス、又は超乾燥エア(露点が−40℃以下、好ましくは−60℃以下の雰囲気)を導入してもよい。このとき、酸素ガス又はN2Oガスは、水、水素などを含まないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する酸素ガス又はN2Oガスの純度を、6N以上、好ましくは7N以上、すなわち、酸素ガス又はN2Oガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下とすることが好ましい。酸素ガス又はN2Oガスの作用により、半導体層603_aに酸素が供給され、半導体層603_a中の酸素欠乏に起因する欠陥を低減することができる。なお、上記高純度の酸素ガス、高純度のN2Oガス、又は超乾燥エアの導入は、上記加熱処理時に行ってもよい。
また、絶縁層602_a形成後、酸化物半導体膜形成後、ソース電極又はドレイン電極となる導電層形成後、ソース電極又はドレイン電極となる導電層の上の絶縁層形成後、又は加熱処理後に酸素プラズマによる酸素ドーピング処理を行ってもよい。例えば2.45GHzの高密度プラズマにより酸素ドーピング処理を行ってもよい。また、イオン注入法を用いて酸素ドーピング処理を行ってもよい。酸素ドーピング処理を行うことにより、作製されるトランジスタの電気特性のばらつきを低減することができる。例えば、酸素ドーピング処理を行い、絶縁層602_a及び絶縁層606_aの一方又は両方を、化学量論的組成比より酸素が多い状態にする。
半導体層603_aに接する絶縁層中の酸素を過剰にすることにより、半導体層603_aに供給されやすくなる。よって、半導体層603_a中、又は絶縁層602_a及び絶縁層606_aの一方又は両方と、半導体層603_aとの界面における酸素欠陥を低減することができるため、半導体層603_aのキャリア濃度をより低減することができる。また、これに限定されず、製造過程により半導体層603_aに含まれる酸素を過剰にした場合であっても、半導体層603_aに接する上記絶縁層により、半導体層603_aからの酸素の脱離を抑制することができる。
例えば、絶縁層602_a及び絶縁層606_aの一方又は両方として、酸化ガリウムを含む絶縁層を形成する場合、該絶縁層に酸素を供給し、酸化ガリウムの組成をGa2Oxにすることができる。
また、絶縁層602_a及び絶縁層606_aの一方又は両方として、酸化アルミニウムを含む絶縁層を形成する場合、該絶縁層に酸素を供給し、酸化アルミニウムの組成をAl2Oxにすることができる。
また、絶縁層602_a及び絶縁層606_aの一方又は両方として、酸化ガリウムアルミニウム又は酸化アルミニウムガリウムを含む絶縁層を形成する場合、該絶縁層に酸素を供給し、酸化ガリウムアルミニウム又は酸化アルミニウムガリウムの組成をGaxAl2−xO3+αとすることができる。
以上の工程により、半導体層603_aから、水素、水、水酸基、又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を排除し、且つ半導体層603_aに酸素を供給することにより、酸化物半導体層を高純度化させることができる。
さらに、上記加熱処理とは別に、絶縁層606_aを形成した後に、不活性ガス雰囲気下、又は酸素ガス雰囲気下で加熱処理(好ましくは200℃以上600℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行ってもよい。
さらに、図6(E)に示すように、絶縁層606_aの上に第3の導電膜を形成し、第3の導電膜の一部をエッチングすることにより導電層608_aを形成する。
例えば、スパッタリング法を用いて導電層608_aに適用可能な材料の膜を形成することにより第3の導電膜を形成することができる。また、第3の導電膜に適用可能な材料の膜を積層させ、第3の導電膜を形成することもできる。
なお、図5(A)に示すトランジスタの作製方法例を示したが、これに限定されず、例えば図5(B)乃至図5(D)に示す各構成要素において、名称が図5(A)に示す各構成要素と同じであり且つ機能の少なくとも一部が図5(A)に示す各構成要素と同じであれば、図5(A)に示すトランジスタの作製方法例の説明を適宜援用することができる。
また、図5(C)及び図5(D)に示すように、領域604a_c及び領域604a_d、又は領域604b_c乃至領域604b_dを形成する場合には、ゲートとしての機能を有する導電層が形成される側からゲート絶縁層としての機能を有する絶縁層を介して半導体層にドーパントを添加することにより、自己整合で領域604a_c及び領域604a_d、及び領域604b_c及び領域604b_dを形成する。
例えば、イオンドーピング装置又はイオン注入装置を用いてドーパントを添加することができる。
図5及び図6を用いて説明したように、本実施の形態におけるトランジスタの一例は、ゲートとしての機能を有する導電層と、ゲート絶縁層としての機能を有する絶縁層と、ゲート絶縁層としての機能を有する絶縁層を介してゲートとしての機能を有する導電層に重畳し、チャネルが形成される酸化物半導体層と、酸化物半導体層に電気的に接続され、ソース及びドレインの一方としての機能を有する導電層と、酸化物半導体層に電気的に接続され、ソース及びドレインの他方としての機能を有する導電層と、を含む構造である。
上記チャネルが形成される酸化物半導体層は、高純度化させることによりI型又は実質的にI型となった酸化物半導体層である。酸化物半導体層を高純度化させることにより、酸化物半導体層のキャリア濃度を1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、さらに好ましくは1×1011/cm3未満にすることができる。また、上記構造にすることにより、チャネル幅1μmあたりのオフ電流を10aA(1×10−17A)以下にすること、さらにはチャネル幅1μmあたりのオフ電流を1aA(1×10−18A)以下、さらにはチャネル幅1μmあたりのオフ電流を10zA(1×10−20A)以下、さらにはチャネル幅1μmあたりのオフ電流を1zA(1×10−21A)以下、さらにはチャネル幅1μmあたりのオフ電流を100yA(1×10−22A)以下にすることができる。トランジスタのオフ電流は、低ければ低いほどよいが、本実施の形態におけるトランジスタのオフ電流の下限値は、約10−30A/μmであると見積もられる。
本実施の形態の酸化物半導体層を含むトランジスタを、例えば上記実施の形態における記憶装置における制御トランジスタに用いることにより、メモリセルにおけるデータの保持期間を長くすることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態における記憶装置の構造例について説明する。
本実施の形態における記憶装置は、チャネルが形成され、元素周期表における第14族の半導体(シリコンなど)を含有する半導体層を含むトランジスタと、チャネルが形成される酸化物半導体層を含むトランジスタを用いて構成される。このとき、チャネルが形成される酸化物半導体層を含むトランジスタは、元素周期表における第14族の半導体(シリコンなど)を含有する半導体層を含むトランジスタの上に積層させることができる。元素周期表における第14族の半導体(シリコンなど)を含有する半導体層を含むトランジスタは、例えば図1における比較回路101及び比較回路102におけるトランジスタに適用される。
元素周期表における第14族の半導体(シリコンなど)を含有する半導体層を含むトランジスタの上にチャネルが形成される酸化物半導体層を含むトランジスタを積層する例について、図7に示す。なお、図7では、実際の寸法と異なる構成要素を含む。
図7では、半導体層780と、絶縁層784aと、絶縁層784bと、導電層785aと、導電層785bと、絶縁層786aと、絶縁層786bと、絶縁層786cと、絶縁層786dと、絶縁層788と、半導体層753と、導電層754aと、導電層754bと、絶縁層755と、導電層756と、絶縁層757aと、絶縁層757bと、絶縁層758と、絶縁層759と、導電層760aと、導電層760bと、により元素周期表における第14族の半導体(シリコンなど)を含有する半導体層を含むPチャネル型トランジスタ(例えば図2(A)に示すトランジスタ112に相当)及びNチャネル型トランジスタ(例えば図2(A)に示すトランジスタ111に相当)とチャネルが形成される酸化物半導体層を含むトランジスタ(例えば図2(A)に示すトランジスタ131に相当)が構成される。
さらに、半導体層780は、領域782a、領域782b、領域782c、及び領域782dを有する。また、半導体層780は、絶縁領域781a乃至絶縁領域781cにより、各トランジスタが電気的に分離されている。
半導体層780としては、例えば半導体基板を用いることができる。また、別の基板の上に設けられた半導体層を半導体層780として用いることもできる。
なお、半導体層780において、複数のメモリセル間の領域に絶縁分離領域を設けてもよい。
領域782a及び領域782bは、互いに離間して設けられ、P型の導電型を付与するドーパントが添加された領域である。領域782a及び領域782bは、上記Pチャネル型トランジスタのソース領域又はドレイン領域としての機能を有する。例えば、領域782a及び領域782bのそれぞれは、別途設けられた導電層に電気的に接続されてもよい。
領域782c及び領域782dは、互いに離間して設けられ、N型の導電型を付与するドーパントが添加された領域である。領域782c及び領域782dは、上記Nチャネル型トランジスタのソース領域又はドレイン領域としての機能を有する。例えば、領域782c及び領域782dのそれぞれは、別途設けられた導電層(例えばデータ線としての機能を有する導電層)に電気的に接続されてもよい。
なお、領域782a乃至領域782dの一部に低濃度領域を設けてもよい。このとき低濃度領域の深さは、それ以外の領域782a乃至領域782dの領域の深さより小さくてもよいが、これに限定されない。
絶縁層784aは、絶縁領域781a及び絶縁領域781bに挟まれた半導体層780の領域の上に設けられる。絶縁層784aは、上記Pチャネル型トランジスタのゲート絶縁層としての機能を有する。
絶縁層784bは、絶縁領域781b及び絶縁領域781cに挟まれた半導体層780の領域の上に設けられる。絶縁層784bは、上記Nチャネル型トランジスタのゲート絶縁層としての機能を有する。
絶縁層784a及び絶縁層784bとしては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、有機絶縁材料(例えばポリイミド又はアクリルなど)などの材料の層を用いることができる。また、絶縁層784a及び絶縁層784bに適用可能な材料の積層により絶縁層784a及び絶縁層784bを構成してもよい。
導電層785aは、絶縁層784aを介して半導体層780に重畳する。導電層785aに重畳する半導体層780の領域が上記Pチャネル型トランジスタのチャネル形成領域になる。導電層785aは、上記Pチャネル型トランジスタのゲートとしての機能を有する。
導電層785bは、絶縁層784bを介して半導体層780に重畳する。導電層785bに重畳する半導体層780の領域が上記Nチャネル型トランジスタのチャネル形成領域になる。導電層785bは、上記Nチャネル型トランジスタのゲートとしての機能を有する。
導電層785a及び導電層785bとしては、例えばモリブデン、マグネシウム、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、若しくはスカンジウムなどの金属材料、又はこれらを主成分とする合金材料の層を用いることができる。また、導電層785a及び導電層785bに適用可能な材料の積層により、導電層785a及び導電層785bを構成することもできる。
絶縁層786aは、絶縁層784aの上に設けられ、導電層785aにおける、互いに対向する一対の側面の一方に接する。
絶縁層786bは、絶縁層784aの上に設けられ、導電層785aにおける、互いに対向する上記一対の側面の他方に接する。
絶縁層786cは、絶縁層784bの上に設けられ、導電層785bにおける、互いに対向する一対の側面の一方に接する。
絶縁層786dは、絶縁層784bの上に設けられ、導電層785bにおける、互いに対向する上記一対の側面の他方に接する。
絶縁層788は、絶縁層786a、絶縁層786b、絶縁層786c、及び絶縁層786dの上に設けられる。
絶縁層786a乃至絶縁層786d、及び絶縁層788としては、絶縁層784a及び絶縁層784bに適用可能な材料のうち、絶縁層784a及び絶縁層784bに適用した材料と同じ材料の層又は異なる材料の層を用いることができる。また、絶縁層786a乃至絶縁層786d、及び絶縁層788に適用可能な材料の積層により、絶縁層786a乃至絶縁層786d、及び絶縁層788を構成することもできる。
半導体層753は、絶縁層788の上に設けられる。半導体層753は、領域752a及び領域752bを含む。領域752a及び領域752bはドーパントが添加された領域であり、ソース領域又はドレイン領域としての機能を有する。ドーパントとしては、上記実施の形態における酸化物半導体層を含むトランジスタに適用可能なドーパントを適宜用いることができる。
半導体層753としては、例えば図5(A)に示す半導体層603_aに適用可能な材料の層を用いることができる。
絶縁層755は、半導体層753の上に設けられる。
絶縁層755は、トランジスタのゲート絶縁層としての機能を有する。
絶縁層755としては、例えば図5(A)に示す絶縁層602_aに適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層755に適用可能な材料の積層により絶縁層755を構成してもよい。
導電層756は、絶縁層755を介して半導体層753に重畳する。導電層756は、トランジスタのゲートとしての機能を有する。
導電層756としては、例えば図5(A)に示す導電層601_aに適用可能な材料の層を用いることができる。また、導電層756に適用可能な材料の積層により導電層756を構成してもよい。
絶縁層757a及び絶縁層757bは、導電層756の側面に接して絶縁層755の上に設けられる。
導電層754aは、半導体層753に接して電気的に接続される。また、導電層754aは、導電層785aに電気的に接続される。導電層754aは、上記酸化物半導体層を含むトランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。
導電層754bは、半導体層753に接して電気的に接続される。また、導電層754bは、導電層785bに電気的に接続される。導電層754bは、上記酸化物半導体層を含むトランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。
導電層754a及び導電層754bとしては、例えば図5(A)に示す導電層605a_a及び導電層605b_aに適用可能な材料の層を用いることができる。また、導電層754a及び導電層754bに適用可能な材料の積層により導電層754a及び導電層754bを構成してもよい。
絶縁層758は、導電層756、絶縁層757a、絶縁層757b、導電層754a、及び導電層754bの上に設けられる。
絶縁層758としては、例えば図5(A)に示す絶縁層602_aに適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層758に適用可能な材料の積層により絶縁層758を構成してもよい。絶縁層758は、不純物の侵入を抑制する保護層としての機能を有する。
絶縁層759は、絶縁層758の上に設けられる。
絶縁層759としては、例えば図5(A)に示す絶縁層602_aに適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層759に適用可能な材料の積層により絶縁層759を構成してもよい。
導電層760aは、絶縁層758及び絶縁層759に設けられた開口部を介して導電層754aに電気的に接続される。導電層760aは、酸化物半導体層を含むトランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。
導電層760bは、絶縁層758及び絶縁層759に設けられた開口部を介して導電層754bに電気的に接続される。導電層760bは、酸化物半導体層を含むトランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。
導電層760a及び導電層760bとしては、例えば図5(A)に示す導電層605a_a及び導電層605b_aに適用可能な材料の層を用いることができる。また、導電層760a及び導電層760bに適用可能な材料の積層により導電層760a及び導電層760bを構成してもよい。
以上が図7に示す記憶装置の構造例の説明である。
図7を用いて説明したように、本実施の形態における記憶装置の構造例では、異なる材料の半導体層を用いたトランジスタを積層させて記憶装置を構成することにより、回路面積を小さくすることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、CPUなどの演算処理装置の例について説明する。
本実施の形態における演算処理装置の例について、図8を用いて説明する。
図8に示す演算処理装置は、バスインターフェース(IFともいう)801と、制御装置(CTLともいう)802と、キャッシュメモリ(CACHともいう)803と、M個(Mは3以上の自然数)のレジスタ(Regiともいう)804(レジスタ804_1乃至レジスタ804_M)と、命令デコーダ(IDecoderともいう)805と、演算論理ユニット(ALUともいう)806と、を具備する。
バスインターフェース801は、外部との信号のやりとり、及び演算処理装置内の各回路との信号のやりとりなどを行う機能を有する。
制御装置802は、演算処理装置内の各回路の動作を制御する機能を有する。
キャッシュメモリ803は、制御装置802により制御され、演算処理装置における動作時のデータを一時的に保持する機能を有する。なお、例えば、1次キャッシュ及び2次キャッシュとして、演算処理装置にキャッシュメモリ803を複数設けてもよい。例えば、上記実施の形態における記憶装置を連想メモリとしてキャッシュメモリ803に用いることができる。
M個のレジスタ804は、制御装置802により制御され、演算処理に用いられるデータを記憶する機能を有する。例えばあるレジスタ804を演算論理ユニット806用のレジスタとし、別のレジスタ804を命令デコーダ805用のレジスタとしてもよい。
命令デコーダ805は、読み込んだ命令信号を翻訳する機能を有する。翻訳された命令信号は、制御装置802に入力され、制御装置802は命令信号に応じた制御信号を演算論理ユニット806に出力する。
演算論理ユニット806は、制御装置802により制御され、入力された命令信号に応じて演算処理を行う機能を有する。
図8を用いて説明したように、本実施の形態における演算処理装置では、キャッシュメモリの面積を小さくすることにより演算処理装置の面積を小さくすることができる。
また、本実施の形態における演算処理装置の一例では、キャッシュメモリに上記実施の形態の記憶装置を用いることにより、検索データに応じてキャッシュメモリに記憶されたデータを出力するか否かを選択する機能を該キャッシュメモリに付加させることができる。
また、本実施の形態における演算処理装置では、電源電圧の供給を停止した場合であっても、キャッシュメモリにおいて、電源電圧の供給を停止する直前の内部データの一部を保持することができ、電源電圧の供給を再開したときに演算処理装置の状態を電源電圧の供給を停止する直前の状態に戻すことができる。よって、電源電圧の供給を選択的に停止して消費電力を低減させた場合であっても、電源電圧の供給を再開してから通常動作を開始するまでの時間を短くすることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、c軸配向し、かつab面、表面又は界面の方向から見て三角形状又は六角形状の原子配列を有し、c軸においては金属原子が層状又は金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面においてはa軸又はb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)相を含む酸化物(CAACを含む酸化物)について説明する。
CAACを含む酸化物とは、広義に、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形又は正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向に垂直な方向から見て、金属原子が層状、又は金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む酸化物をいう。
CAACは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAACは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
CAACに酸素が含まれる場合、酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAACを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAACが形成される基板面、CAACの表面などに垂直な方向)に揃っていてもよい。又は、CAACを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、CAACが形成される基板面、CAACの表面などに垂直な方向)を向いていてもよい。
CAACは、その組成などに応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成などに応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
このようなCAACの例として、膜状に形成され、膜表面又は支持する基板面に垂直な方向から観察すると三角形又は六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子又は金属原子及び酸素原子(又は窒素原子)の層状配列が認められる結晶を挙げることもできる。
CAACに含まれる結晶構造の一例について図10乃至図12を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図10乃至図12は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図10において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
図10(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図10(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図10(A)の上半分及び下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図10(A)に示す小グループは電荷が0である。
図10(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図10(B)の上半分及び下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図10(B)に示す構造をとりうる。図10(B)に示す小グループは電荷が0である。
図10(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図10(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。また、図10(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図10(C)に示す小グループは電荷が0である。
図10(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図10(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図10(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
図10(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図10(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図10(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図10(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。このように、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(In又はSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(Ga又はIn)又は4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
図11(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図11(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図11(C)は、図11(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
図11(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分及び下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図11(A)において、Inの上半分及び下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図11(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
図11(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
ここで、3配位のO及び4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位又は5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位又は6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図10(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
具体的には、図11(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(In2SnZn3O8)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、In2SnZn2O7(ZnO)m(mは0又は自然数。)とする組成式で表すことができる。
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系金属酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系金属酸化物、Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物、Al−Ga−Zn−O系金属酸化物、Sn−Al−Zn−O系金属酸化物や、In−Hf−Zn−O系金属酸化物、In−La−Zn−O系金属酸化物、In−Ce−Zn−O系金属酸化物、In−Pr−Zn−O系金属酸化物、In−Nd−Zn−O系金属酸化物、In−Sm−Zn−O系金属酸化物、In−Eu−Zn−O系金属酸化物、In−Gd−Zn−O系金属酸化物、In−Tb−Zn−O系金属酸化物、In−Dy−Zn−O系金属酸化物、In−Ho−Zn−O系金属酸化物、In−Er−Zn−O系金属酸化物、In−Tm−Zn−O系金属酸化物、In−Yb−Zn−O系金属酸化物、In−Lu−Zn−O系金属酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系金属酸化物、Sn−Zn−O系金属酸化物、Al−Zn−O系金属酸化物、Zn−Mg−O系金属酸化物、Sn−Mg−O系金属酸化物、In−Mg−O系金属酸化物や、In−Ga−O系金属酸化物、一元系金属の酸化物であるIn−O系金属酸化物、Sn−O系金属酸化物、Zn−O系金属酸化物などを用いた場合も同様である。
例えば、図12(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
図12(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分及び下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
図12(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図12(C)は、図12(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
ここで、In(6配位又は5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、Zn及びGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図12(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、トランジスタの電界効果移動度に関して説明する。
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
半導体本来の移動度をμ0、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界など)が存在すると仮定すると、以下の式で表現できる。
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、以下の式で表される。
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。線形領域におけるドレイン電流Idは、以下の式となる。
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vdはドレイン電圧である。上式の両辺をVgで割り、さらに両辺の対数を取ると、以下のようになる。
数5の右辺はVgの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとする直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのId―Vg特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm2程度である。
このようにして求めた欠陥密度などをもとに数2及び数3よりμ0=120cm2/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は35cm2/Vs程度である。しかし、半導体内部及び半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の移動度μ0は120cm2/Vsとなると予想できる。
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁層との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、チャネルとゲート絶縁層との界面からxだけ離れた場所における移動度μ1は、以下の式で表される。
ここで、Dはゲート方向の電界、B、Gは定数である。B及びGは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×107cm/s、G=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数6の第2項が増加するため、移動度μ1は低下することがわかる。
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μ2を計算した結果を図13に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁層の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長及びチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vdは0.1Vである。
図13で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm2/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図14乃至図16に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図17に示す。図17に示すトランジスタは酸化物半導体層にn+の導電型を呈する半導体領域2103a及び半導体領域2103cを有する。半導体領域2103a及び半導体領域2103cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
図17(A)に示すトランジスタは、下地絶縁層2101と、下地絶縁層2101に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物2102の上に形成される。トランジスタは半導体領域2103a、半導体領域2103cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域2103bと、ゲート2105を有する。ゲート2105の幅を33nmとする。
ゲート2105と半導体領域2103bの間には、ゲート絶縁層2104を有し、また、ゲート2105の両側面には側壁絶縁物2106a及び側壁絶縁物2106b、ゲート2105の上部には、ゲート2105と他の配線との短絡を防止するための絶縁物2107を有する。側壁絶縁物の幅は5nmとする。また、半導体領域2103a及び半導体領域2103cに接して、ソース2108a及びドレイン2108bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
図17(B)に示すトランジスタは、下地絶縁層2101と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物2102の上に形成され、半導体領域2103a、半導体領域2103cと、それらに挟まれた真性の半導体領域2103bと、幅33nmのゲート2105とゲート絶縁層2104と側壁絶縁物2106a及び側壁絶縁物2106bと絶縁物2107とソース2108a及びドレイン2108bを有する点で図17(A)に示すトランジスタと同じである。
図17(A)に示すトランジスタと図17(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁物2106a及び側壁絶縁物2106bの下の半導体領域の導電型である。図17(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁物2106a及び側壁絶縁物2106bの下の半導体領域はn+の導電型を呈する半導体領域2103a及び半導体領域2103cであるが、図17(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域2103bである。すなわち、半導体領域2103a(半導体領域2103c)とゲート2105がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁物2106a(側壁絶縁物2106b)の幅と同じである。
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図14は、図17(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(Id、実線)及び移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
図14(A)はゲート絶縁層の厚さを15nmとしたものであり、図14(B)は10nmとしたものであり、図14(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁層が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流は10μAを超えることが示された。
図15は、図17(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)及び移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図15(A)はゲート絶縁層の厚さを15nmとしたものであり、図15(B)は10nmとしたものであり、図15(C)は5nmとしたものである。
また、図16は、図17(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)及び移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図16(A)はゲート絶縁層の厚さを15nmとしたものであり、図16(B)は10nmとしたものであり、図16(C)は5nmとしたものである。
いずれもゲート絶縁層が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
なお、移動度μのピークは、図14では80cm2/Vs程度であるが、図15では60cm2/Vs程度、図16では40cm2/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流は10μAを超えることが示された。
(実施の形態8)
本実施の形態では、酸化物半導体としてIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体を用いたトランジスタについて説明する。
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体を形成する際に基板を加熱して成膜すること、あるいは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
例えば、図18(A)〜(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体膜と、厚さ100nmのゲート絶縁層を用いたトランジスタの特性である。なお、Vdは10Vとした。
図18(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm2/Vsecが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図18(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm2/Vsecが得られている。
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図18(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm2/Vsecが得られている。
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm2/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時に又はその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/又は成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体膜を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図18(A)と図18(B)の対比からも確認することができる。
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜しあるいは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/又は成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは1.0V未満を得ることができる。
実際に、酸化物半導体膜成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT試験を行った。
まず基板温度を25℃とし、Vdを10Vとし、トランジスタのVg−Id特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vdを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁層に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVgに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vgを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdを10Vとし、トランジスタのVg−Id測定を行った。これをプラスBT試験と呼ぶ。
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vdを10Vとし、トランジスタのVg−Id特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vdを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁層に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVgに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vgを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdを10Vとし、トランジスタのVg−Id測定を行った。これをマイナスBT試験と呼ぶ。
試料1のプラスBT試験の結果を図19(A)に、マイナスBT試験の結果を図19(B)に示す。また、試料2のプラスBT試験の結果を図20(A)に、マイナスBT試験の結果を図20(B)に示す。
試料1のプラスBT試験及びマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80V及び−0.42Vであった。また、試料2のプラスBT試験及びマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79V及び0.76Vであった。試料1及び試料2のいずれも、BT試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、又は減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用しても良い。
酸化物半導体中及び積層される膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm3以上2×1020/cm3以下とすれば、結晶に歪みなどを与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
XRD分析を行った試料として、試料A及び試料Bを用意した。以下に試料A及び試料Bの作製方法を説明する。
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
図23に試料A及び試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍及び37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素や水酸基を膜中に含ませないようにすること、あるいは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
図24に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
具体的には、図24に示すように、基板温度が125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。これらのオフ電流値は、Siを半導体膜として用いたトランジスタに比べて、極めて低いものであることは明らかである。
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素や水分が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素や水分などの不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
また、酸化物半導体膜成膜後に650℃の加熱処理を行った試料のトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが0μm、dWが0μmである。なお、Vdは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃及び150℃で行った。ここで、トランジスタにおいて、ゲート電極と一対の電極との重畳する幅をLovと呼び、酸化物半導体膜に対する一対の電極のはみ出しをdWと呼ぶ。
図21に、Id(実線)及び電界効果移動度(点線)のVg依存性を示す。また、図22(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図22(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
図22(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
また、図22(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm2/Vs〜32cm2/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm2/Vsec以上、好ましくは40cm2/Vsec以上、より好ましくは60cm2/Vsec以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、Si半導体で作られる集積回路の中に酸化物半導体で形成されるトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
以下に、In−Sn−Zn−O膜を酸化物半導体膜に用いたトランジスタの一例について説明する。
図25は、コプラナー型であるトップゲート・トップコンタクト構造のトランジスタの上面図及び断面図である。図25(A)にトランジスタの上面図を示す。また、図25(B)に図25(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面A−Bを示す。
図25(B)に示すトランジスタは、基板1200と、基板1200上に設けられた下地絶縁層1202と、下地絶縁層1202の周辺に設けられた保護絶縁膜1204と、下地絶縁層1202及び保護絶縁膜1204上に設けられた高抵抗領域1206a及び低抵抗領域1206bを有する酸化物半導体膜1206と、酸化物半導体膜1206上に設けられたゲート絶縁層1208と、ゲート絶縁層1208を介して酸化物半導体膜1206と重畳して設けられたゲート電極1210と、ゲート電極1210の側面と接して設けられた側壁絶縁膜1212と、少なくとも低抵抗領域1206bと接して設けられた一対の電極1214と、少なくとも酸化物半導体膜1206、ゲート電極1210及び一対の電極1214を覆って設けられた層間絶縁膜1216と、層間絶縁膜1216に設けられた開口部を介して少なくとも一対の電極1214の一方と接続して設けられた配線1218と、を有する。
なお、図示しないが、層間絶縁膜1216及び配線1218を覆って設けられた保護膜を有していても構わない。該保護膜を設けることで、層間絶縁膜1216の表面伝導に起因して生じる微小リーク電流を低減することができ、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
また、上記とは異なるIn−Sn−Zn−O膜を酸化物半導体膜に用いたトランジスタの他の一例について示す。
図26は、トランジスタの構造を示す上面図及び断面図である。図26(A)はトランジスタの上面図である。また、図26(B)は図26(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面図である。
図26(B)に示すトランジスタは、基板1600と、基板1600上に設けられた下地絶縁層1602と、下地絶縁層1602上に設けられた酸化物半導体膜1606と、酸化物半導体膜1606と接する一対の電極1614と、酸化物半導体膜1606及び一対の電極1614上に設けられたゲート絶縁層1608と、ゲート絶縁層1608を介して酸化物半導体膜1606と重畳して設けられたゲート電極1610と、ゲート絶縁層1608及びゲート電極1610を覆って設けられた層間絶縁膜1616と、層間絶縁膜1616に設けられた開口部を介して一対の電極1614と接続する配線1618と、層間絶縁膜1616及び配線1618を覆って設けられた保護膜1620と、を有する。
基板1600としてはガラス基板を、下地絶縁層1602としては酸化シリコン膜を、酸化物半導体膜1606としてはIn−Sn−Zn−O膜を、一対の電極1614としてはタングステン膜を、ゲート絶縁層1608としては酸化シリコン膜を、ゲート電極1610としては窒化タンタル膜とタングステン膜との積層構造を、層間絶縁膜1616としては酸化窒化シリコン膜とポリイミド膜との積層構造を、配線1618としてはチタン膜、アルミニウム膜、チタン膜がこの順で形成された積層構造を、保護膜1620としてはポリイミド膜を、それぞれ用いた。
なお、図26(A)に示す構造のトランジスタにおいて、ゲート電極1610と一対の電極1614との重畳する幅をLovと呼ぶ。同様に、酸化物半導体膜1606に対する一対の電極1614のはみ出しをdWと呼ぶ。
(実施の形態9)
本実施の形態では、上記実施の形態における演算処理装置を備えた電子機器の例について説明する。
本実施の形態における電子機器の構成例について、図9(A)乃至図9(D)を用いて説明する。
図9(A)に示す電子機器は、携帯型情報端末の例である。図9(A)に示す携帯型情報端末は、筐体1001aと、筐体1001aに設けられた表示部1002aと、を具備する。
なお、筐体1001aの側面1003aに外部機器に接続させるための接続端子、図9(A)に示す携帯型情報端末を操作するためのボタンのうち、一つ又は複数を設けてもよい。
図9(A)に示す携帯型情報端末は、筐体1001aの中に、CPUと、記憶回路と、外部機器とCPU及び記憶回路との信号の送受信を行うインターフェースと、外部機器との信号の送受信を行うアンテナと、を備える。
図9(A)に示す携帯型情報端末は、例えば電話機、電子書籍、パーソナルコンピュータ、及び遊技機の一つ又は複数としての機能を有する。
図9(B)に示す電子機器は、折り畳み式の携帯型情報端末の例である。図9(B)に示す携帯型情報端末は、筐体1001bと、筐体1001bに設けられた表示部1002bと、筐体1004と、筐体1004に設けられた表示部1005と、筐体1001b及び筐体1004を接続する軸部1006と、を具備する。
また、図9(B)に示す携帯型情報端末では、軸部1006により筐体1001b又は筐体1004を動かすことにより、筐体1001bを筐体1004に重畳させることができる。
なお、筐体1001bの側面1003b又は筐体1004の側面1007に外部機器に接続させるための接続端子、図9(B)に示す携帯型情報端末を操作するためのボタンのうち、一つ又は複数を設けてもよい。
また、表示部1002b及び表示部1005に、互いに異なる画像又は一続きの画像を表示させてもよい。なお、表示部1005を必ずしも設けなくてもよく、表示部1005の代わりに、入力装置であるキーボードを設けてもよい。
図9(B)に示す携帯型情報端末は、筐体1001b又は筐体1004の中に、CPUと、記憶回路と、外部機器とCPU及び記憶回路との信号の送受信を行うインターフェースと、を備える。なお、図9(B)に示す携帯型情報端末に、外部との信号の送受信を行うアンテナを設けてもよい。
図9(B)に示す携帯型情報端末は、例えば電話機、電子書籍、パーソナルコンピュータ、及び遊技機の一つ又は複数としての機能を有する。
図9(C)に示す電子機器は、設置型情報端末の例である。図9(C)に示す設置型情報端末は、筐体1001cと、筐体1001cに設けられた表示部1002cと、を具備する。
なお、表示部1002cを、筐体1001cにおける甲板部1008に設けることもできる。
また、図9(C)に示す設置型情報端末は、筐体1001cの中に、CPUと、記憶回路と、外部機器とCPU及び記憶回路との信号の送受信を行うインターフェースと、を備える。なお、図9(C)に示す設置型情報端末に、外部との信号の送受信を行うアンテナを設けてもよい。
さらに、図9(C)に示す設置型情報端末における筐体1001cの側面1003cに券などを出力する券出力部、硬貨投入部、及び紙幣挿入部の一つ又は複数を設けてもよい。
図9(C)に示す設置型情報端末は、例えば現金自動預け払い機、券などの注文をするための情報通信端末(マルチメディアステーションともいう)、又は遊技機としての機能を有する。
図9(D)は、設置型情報端末の例である。図9(D)に示す設置型情報端末は、筐体1001dと、筐体1001dに設けられた表示部1002dと、を具備する。なお、筐体1001dを支持する支持台を設けてもよい。
なお、筐体1001dの側面1003dに外部機器に接続させるための接続端子、図9(D)に示す設置型情報端末を操作するためのボタンのうち、一つ又は複数を設けてもよい。
また、図9(D)に示す設置型情報端末は、筐体1001dの中に、CPUと、記憶回路と、外部機器とCPU及び記憶回路との信号の送受信を行うインターフェースと、を備えてもよい。なお、図9(D)に示す設置型情報端末に、外部との信号の送受信を行うアンテナを設けてもよい。
図9(D)に示す設置型情報端末は、例えばデジタルフォトフレーム、モニタ、又はテレビジョン装置としての機能を有する。
上記実施の形態の演算処理装置は、図9(A)乃至図9(D)に示す電子機器のCPUとして用いられる。
図9を用いて説明したように、本実施の形態における電子機器の一例は、CPUとして上記実施の形態における演算処理装置を具備する構成である。
上記構成にすることにより、電源を供給しない場合であっても電子機器内の情報を一定期間保持することができるため、電源を供給してから通常動作を開始するまでの時間が速くなり、また、消費電力を低減することができる。