JP2012248442A - 非水電解質電池用セパレータおよび非水電解質電池 - Google Patents

非水電解質電池用セパレータおよび非水電解質電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 内部短絡およびデンドライトに対する信頼性に優れ、かつ高温貯蔵時の特性低下を抑制し得る非水電解質電池を構成するためのセパレータと、該セパレータを用いた非水電解質電池を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有していることを特徴とする非水電解質電池用セパレータと、該セパレータを用いた非水電解質電池により、前記課題を解決する。
−NH(CHCHNH)R (1)
[前記一般式(1)中、nは正の整数であり、RはHまたは炭素数1〜10のアルキル基である。]
【選択図】 なし

Description

本発明は、信頼性に優れ、かつ高温貯蔵時の性能低下を抑制できる非水電解質電池を構成するためのセパレータと、該セパレータを有する非水電解質電池に関するものである。
リチウムイオン電池に代表される非水電解液を用いた非水電解質電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。こうした非水電解質電池では、携帯機器の高性能化に伴って高容量化が更に進む傾向にあり、信頼性の確保が重要となっている。また、非水電解質電池は、高エネルギー密度といった特性を生かして、自動車やバイク、自転車などの車載用途にも適用が進められており、このような用途においても、信頼性の確保が重要な課題となっている。
リチウム二次電池は、単セルあたりの電位が他の電池に比べて高いという特徴を持っている反面、金属製の混入異物などがあった場合、電池内で溶解析出が起こり、負極で析出した金属が成長してセパレータを突き破り短絡することで、信頼性が損なわれる虞がある。
また、従来から一般的に用いられているリチウム二次電池は、LiCoOに代表される層状構造のリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質に用い、グラファイト、非晶質黒鉛などの炭素材料を負極活物質に用い、LiPFなどのリチウム塩をエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル類に溶解した非水電解液を電解液に用い、ポリオレフィン製の微多孔膜を用いた構成が一般的である。ところが、近年、熱安定性を高めて安全性を確保したり、より高い電位で作動させてエネルギー密度を高めたりするために、LiMnに代表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物や、LiMnNiCo(q+r+s=1)で代表される層状化合物などが正極活物質として用いられるようになってきた。
しかしながら、これらMnを含有する複合酸化物を正極に用いた場合、特に高温状態で正極からMnイオンが溶出して正極の容量低下を招いたり、更には溶出したMnが、負極に析出して負極の劣化を招いたり、非水電解液と反応してガス発生を起こしたりして、充放電に関わる以外の副反応が生じることが知られている。
前記の金属製異物や正極活物質から溶出する金属(金属イオン)による問題の解決を図る技術も種々検討されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、置換元素を用いて正極活物質の安定化を図り、Mnなどの金属の溶出を防止する技術が提案されている。
また、特許文献3および特許文献4には、混入した金属製異物や正極から溶出した金属イオンを、負極に到達する前にトラップする技術が提案されている。
特開平11−339803号公報 特開2000−30709号公報 特開平11−121012号公報 特開2009−87929号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されているような置換元素を用いた活物質の変性は、金属溶出に対してある程度の効果があるものの、溶出を完全に抑制することができず、また、置換元素によって充放電に用いることのできる容量が減少するといったデメリットがある。
また、金属イオンを電池内でトラップする方法として、例えば特許文献3に示されているような、負極、セパレータおよび電解質の少なくともいずれかにキレート化剤を含有させる方法では、添加したキレート化剤が正極や負極における酸化還元反応によって副反応を引き起こし、電池特性を劣化させる虞がある。
更に、特許文献4に示されている酸化還元の影響を比較的受け難いセパレータに、キレート化合物を含有させる方法では、キレート化合物中のイミノジ酢酸基が、電池内のリチウムイオンをトラップしてしまう虞がある。
こうしたことから、前記のような副次的な問題の発生を抑えつつ、電池内における金属イオンによる問題を良好に回避できる技術の開発が求められる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部短絡およびデンドライトに対する信頼性に優れ、かつ高温貯蔵時の特性低下を抑制し得る非水電解質電池を構成するためのセパレータと、該セパレータを用いた非水電解質電池を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の非水電解質電池用セパレータは、下記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有していることを特徴とするものである。
−NH(CHCHNH)R (1)
[前記一般式(1)中、nは正の整数であり、RはHまたは炭素数1〜10のアルキル基である。]
また、本発明の非水電解質電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解液を有する非水電解質電池であって、前記セパレータに、本発明の非水電解質電池用セパレータを用いたことを特徴とするものである。
本発明によれば、内部短絡およびデンドライトに対する信頼性に優れ、かつ高温貯蔵時の特性低下を抑制し得る非水電解質電池を構成するためのセパレータと、該セパレータを用いた非水電解質電池を提供できる。すなわち、本発明非水電解質電池は、内部短絡およびデンドライトに対する信頼性に優れ、かつ高温貯蔵時の特性低下を抑制し得るものである。
本発明の非水電解質電池の一例を模式的に表す平面図である。 図1のA−A線断面図である。
本発明の非水電解質電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」と省略する)は、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有している。セパレータ中に存在する前記一般式(1)で表される構造部分によって、電池の有する非水電解液中に溶出した金属イオンを効果的にトラップすることが可能となる。
非水電解質電池、特に充電が可能なリチウムイオン電池などの非水電解質電池では、電池内に混入した金属製の不純物や正極活物質などから非水電解液中に溶出した金属イオンが負極表面で析出することで、電池性能の低下や内部短絡の要因になりやすい。そのため、特に、正極活物質に主成分として用いられているNi、CoおよびMnや、不純物として電池内に混入する可能性の高いFe、ZnおよびCuなどのイオンを効果的にトラップする一方で、電池の充放電に関与するLiイオンについては、できるだけトラップしないことが好ましい。
前記一般式(1)で表される構造部分は、主に、そこに含まれる第二級アミノ基の作用によって、遷移金属や重金属のトラップ能力に優れる一方で、アルカリ金属やアルカリ土類金属のトラップ能力は低い。そのため、本発明のセパレータでは、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物によって、電池の充放電反応を損なうことなく、電池性能の低下や内部短絡の要因を引き起こす非水電解液中の金属イオンを良好にトラップすることができる。よって、本発明のセパレータによれば、前記の金属イオンによって生じ得る内部短絡やデンドライトの発生を抑制して、非水電解質電池の信頼性を高めることができ、また、その安全性も高めることができる。更に、前記の通り、非水電解液中への金属イオンの溶出は、電池が高温環境下に置かれた際により生じやすいが、本発明のセパレータを用いることで、高温環境下に置かれた電池の非水電解液中に溶出した金属イオンも良好にトラップできるため、かかる金属イオンによって生じ得る電池の特性低下も抑制することができる。
前記一般式(1)におけるnは、正の整数であるが、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、25以上であることが更に好ましい。前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物は、後記の通り、分子量が高いことが好ましいため、nの値は大きいものほどよいことになる。
前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物は、第二級アミノ基の数をある程度確保して、金属イオンのトラップ能力をより高める観点から、分子量が100以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることが更に好ましく、1万以上であることが特に好ましい。また、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物における分子量は、大きすぎると却って金属イオンのトラップ能力が低下する虞があることから、100万以下であることが好ましく、10万以下であることがより好ましい。
本明細書でいう前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の分子量は、サイズ除去クロマトグラフィー(SEC)/多重角光散乱光度法(MALS)により求めた値である。
前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の中でも、前記構造部分を多く含み、遷移金属や重金属のトラップ能力が高い一方で、アルカリ金属やアルカリ土類金属のトラップ能力が低いことから、ポリエチレンイミンが好ましい。
また、ポリエチレンイミンは反応性が高く、アルデヒド類、ケトン類、アルキルハライド、アルキルイソシアネート、アクリロニトリル、エポキシ化合物、シアナマイド類、グアニジン類、尿素、酸、酸無水物、アシルハライド類などと反応して容易に変性物を形成する。よって、前記一般式(1)で表される構造部分がある程度残るようにしつつ、このような反応により形成した変性ポリエチレンイミンも、遷移金属や重金属のトラップ能力に優れるため、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物として好ましく使用することができる。
ポリエチレンイミンとしては、例えば、日本触媒社製の「エポミン(商品名)」を用いることができる。
前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物は、非水電解液中の金属イオンをトラップする機能を良好に確保する観点から、セパレータの使用される非水電解質電池(本発明の非水電解質電池)の容量当たりの含有量が、0.05mg/Ah以上であることが好ましく、0.1mg/Ah以上であることがより好ましく、0.2mg/Ah以上であることが更に好ましい。ただし、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の電池内の量が多すぎると、電池の充放電に関与するLiイオンを吸着する虞がある。よって、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の、セパレータの使用される非水電解質電池(本発明の非水電解質電池)の容量当たりの含有量は、5mg/Ah以下であることが好ましく、10mg/Ah以下であることがより好ましく、50mg/Ah以下であることが更に好ましい。
また、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の、セパレータにおける含有量は、セパレータの単位面積当たりの量で、1mg/m以上とすることが好ましく、10mg/m以上とすることがより好ましく、50mg/m以上とすることが更に好ましく、また、1000mg/m以下とすることが好ましく、500mg/m以下とすることがより好ましく、200mg/m以下とすることが更に好ましい。前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物のセパレータにおける含有量を前記の値にすることで、非水電解質電池の容量当たりの含有量を前記の値に調整しやすくなる。
本発明のセパレータは、その本体となる多孔質膜の内部に、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有していてもよく、多孔質膜の表面に、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有していてもよい。
本発明のセパレータは、高温時に構成樹脂が軟化して空孔が閉塞するシャットダウン特性を有していることが好ましい。シャットダウン特性を有するセパレータであれば、これを用いた非水電解質電池において、内部温度が上昇した際に、空孔が閉塞することでセパレータのイオン透過性が低下し、正極−負極間を流れる電流値が減少するため、高温時における電池の安全性が向上する。
セパレータのシャットダウン温度は、低すぎると非水電解質電池の通常の使用時において電池特性の低下を引き起こす虞があることから、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、セパレータのシャットダウン温度は、高すぎると、このセパレータを用いた非水電解質電池の熱暴走にシャットダウンが追いつかなくなる虞があることから、180℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが更に好ましい。
本明細書でいうセパレータのシャットダウン温度は、以下の方法により測定される値である。直径16mmの2枚のステンレス鋼板に直径25mmとした前記セパレータを挟んだ積層体を挿入し、更にエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを体積比1:2で混合した溶媒にLiPFを1.0mol/lの濃度で溶解した電解液を注入して密閉したセルを、恒温槽に入れ、槽内の温度を1℃/minの割合で昇温し、その間に前記積層体に係る2枚のステンレス鋼板の間の抵抗値を測定し続け、前記抵抗値が40Ωになった温度を、セパレータのシャットダウン温度とする。
本発明のセパレータは、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有していればよく、その他の構成および構造については特に制限はない。
例えば、本発明のセパレータを構成し、その本体となる多孔質膜には、ポリオレフィン[低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);など]、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタンなどのように、電池の有する非水電解質に対して安定で、かつ電気化学的に安定 な材料で構成された不織布や微多孔膜などを用いることができる。
前記の微多孔膜には、例えば、従来から知られている溶剤抽出法や、乾式または湿式延伸法などにより形成された孔を多数有するイオン透過性の多孔質膜(電池のセパレータとして汎用されている微多孔膜)を用いることができる。
前記の多孔質膜を構成要素とする本発明のセパレータにおいて、シャットダウン特性を確保し、かつシャットダウン温度を前記の値に調整するには、セパレータに係る多孔質膜に、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が80℃以上(より好ましくは100℃以上)180℃以下(より好ましくは150℃以下)のポリオレフィンで構成された微多孔膜や不織布を用いることが好ましい。この場合、セパレータに係る微多孔膜や不織布は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体(例えば、PP/PE/PP3層積層体など)などであってもよい。
そして、前記の多孔質膜に、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有させるには、例えば、前記化合物を含有する塗液を、前記の多孔質膜の表面(片面または両面)に塗布し乾燥するなどして、前記の多孔質膜の表面に前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を付着させる方法などが採用できる。
また、本発明のセパレータを構成し、その本体となる多孔質膜には、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜と、耐熱性微粒子を主体として含む耐熱多孔質層とを少なくとも有する多層多孔質膜を用いることもできる。
前記多層多孔質膜を用いた本発明のセパレータの場合、基材となるポリオレフィンを主体とする多孔質膜が正極と負極との短絡を防止しつつ、イオンを透過するセパレータ本来の機能を有する層となる。また、前記多層多孔質膜を用いた本発明のセパレータに係る耐熱性微粒子を主体として含む耐熱多孔質層は、基材となるポリオレフィンを主体とする多孔質膜の収縮および破膜を防止する役割を担う。よって、前記多層多孔質膜を用いた本発明のセパレータの場合、これを用いた電池内の温度が上昇しても、耐熱多孔質層の作用によってセパレータの収縮が抑えられて正極と負極との接触を抑制することができ、かつポリオレフィンを主体とする多孔質膜に係るポリオレフィンの溶融によって、シャットダウンが良好に起こる。そのため、前記多層多孔質膜を用いた本発明のセパレータによれば、非水電解質電池の安全性を更に高めることができる。
前記多層多孔質膜に、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有させるには、例えば、耐熱性微粒子を主体として含む耐熱多孔質層に含有させる方法が採用できる。耐熱多孔質層においては、後述するように、耐熱性微粒子同士や、耐熱多孔質層とポリオレフィンを主体とする多孔質膜とを接着するために、バインダを含有させることが好ましいが、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物はバインダとしても機能し得る。そのため、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を耐熱多孔質層に含有させることで、他のバインダの使用量を減らすことができ、電池特性向上にも資する。
また、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有する塗液を、前記多層多孔質膜の表面(片面または両面)に塗布し乾燥するなどして、前記多層多孔質膜の表面に前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を付着させる方法によっても、前記多層多孔質膜に前記化合物を含有させることができる。
前記多層多孔質膜に係る耐熱多孔質層の含有する耐熱性微粒子における「耐熱性」とは、少なくとも200℃において変形などの形状変化が目視で確認されないことを意味している。耐熱性微粒子の有する耐熱性(耐熱温度)は、300℃以上であることがより好ましい。このような耐熱性微粒子を含有する耐熱多孔質層を有するセパレータとすることで、例えば100℃〜150℃といった高温下においても、セパレータの形態を維持することができる。
耐熱性微粒子としては、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後述する非水電解液や、耐熱多孔質層形成用組成物(水や有機溶媒といった媒体を含む組成物)に用いる媒体に安定であり、高温状態で非水電解液に溶解しないものであれば、特に制限はなく、用いる微粒子としては、無機微粒子ないし樹脂微粒子から選択される少なくとも1種であることとが望ましい。
このような耐熱性微粒子の具体例としては、例えば、酸化鉄、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、TiO、BaTiO、ZrOなどの酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイトなどの鉱物資源由来物質またはそれらの人造物;などの無機微粒子が挙げられる。また、金属微粒子;SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の電気絶縁性の耐熱性微粒子を構成する材料など)で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。
樹脂微粒子としては、耐熱性および電気絶縁性を有しており、非水電解液に対して安定であり、更に、電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定な材料が好ましく、そのような材料としては、例えば、樹脂架橋体が挙げられる。より具体的には、スチレン樹脂〔ポリスチレン(PS)など〕、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂〔ポリメチルメタクリレート(PMMA)など〕、ポリアルキレンオキシド〔ポリエチレンオキシド(PEO)など〕、フッ素樹脂〔ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など〕およびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂の架橋体;尿素樹脂;ポリウレタン;などが例示できる。樹脂微粒子には、前記例示の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂微粒子は、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤などを含有していても構わない。前記の構成材料の中でも、スチレン樹脂架橋体、アクリル樹脂架橋体およびフッ素樹脂架橋体が好ましく、架橋PMMAが特に好ましく用いられる。
耐熱性微粒子には、前記例示の無機微粒子および有機微粒子のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記例示の各種耐熱性微粒子の中でも、シリカ、アルミナ、ベーマイトがより好ましく、ベーマイトが特に好ましい。
耐熱性微粒子は、粒径が大きすぎると、耐熱多孔質層を薄く形成することが難しくなり、また、リチウムイオンの運動の障害となって電池の出力密度の向上効果が小さくなる虞があることから、その平均粒子径が、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。一方、耐熱性微粒子が小さすぎると、その表面積が大きくなるため、耐熱多孔質層中での微粒子の分散性が低下し、微粒子の付着水が増加して、電池内の水分量の制御が困難となる。電池内の水分量が多くなると、電池特性が低下する虞がある。よって、こうした問題の発生を抑えて、良好な特性の電池を構成し得るようにする観点から、耐熱性微粒子の平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましい。
本明細書でいう耐熱性微粒子の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、微粒子を膨潤させたり溶解させたりしない媒体(例えば水)に分散させて測定した体積基準の積算分率における50%での粒径(D50)である。
耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の含有量は、耐熱多孔質層の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積。耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の含有量について、以下同じ。)中、50体積%以上であり、セパレータ全体の熱収縮を抑制する作用をより高める観点から、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましい。また、耐熱多孔質層は、前記の通り、耐熱性微粒子をバインダで結着することで構成することが好ましく、耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の含有量は、バインダおよび一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を除く全量とすることもでき、具体的には、耐熱多孔質層の構成成分の全体積中、99体積%以下とすることが好ましい。
耐熱多孔質層には、前記の通り、耐熱性微粒子同士を結着したり、耐熱多孔質層とポリオレフィンを主体とする多孔質膜とを接着したりする目的で、バインダを含有させることが好ましい。バインダとしては、耐熱多孔質層の構成成分同士を良好に接着でき、電気化学的に安定で、更に非水電解液に対して安定であれば特に制限はない。具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35mol%のもの)、アクリレート共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアセトアミド(PNVA)、ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアセタールなどの樹脂が挙げられ、また、これらの樹脂の一部に、非水電解液への溶解を防止するために架橋構造を導入したものも用いることができる。これらのバインダは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記の通り、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物もバインダとして機能し得るため、耐熱多孔質層用のバインダとしても使用できる。
耐熱多孔質層におけるバインダの量は、バインダの使用による耐熱多孔質層とポリオレフィンを主体とする多孔質膜との接着性向上効果や、耐熱微粒子同士の接着性向上効果をより良好に確保する観点から、耐熱性微粒子100体積%に対して、1体積%以上であることが好ましく、2体積%以上であることがより好ましい。ただし、耐熱多孔質層中のバインダの量が多すぎると、多孔質層の空孔が塞がれて、負荷特性に代表される電池特性が低下する虞がある。よって、耐熱多孔質層におけるバインダの量は、耐熱性微粒子100体積%に対して、20体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましい。
前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を、耐熱多孔質層に含有させる場合には、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の、セパレータにおける前記の好適含有量を満足させつつ、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物も含めたバインダの総量が、前記の好適含有量となるように調整することが好ましい。
前記多層多孔質膜に係るポリオレフィンを主体とする多孔質膜を構成するポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのPE;PP;などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのポリオレフィンは、前記の通り、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、DSCを用いて測定される融解温度が80℃以上(より好ましくは100℃以上)180℃以下(より好ましくは150℃以下)であるため、セパレータが、このようなポリオレフィンで構成された多孔質膜を有していることで、シャットダウン温度を前記の値に調整することができる。
ポリオレフィンを主体とする多孔質膜は、具体的には、PEのみを使用した微多孔膜やPPのみを使用した微多孔膜であってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体(例えば、PP/PE/PP3層積層体など)であってもよい。これらの微多孔膜には、例えば、従来から知られている溶剤抽出法や、乾式または湿式延伸法などにより形成された孔を多数有するイオン透過性の多孔質膜(電池のセパレータとして汎用されている微多孔膜)を用いることができる。
ポリオレフィンを主体とする多孔質膜は、フィラーなどを含有していてもよい。このようなフィラーとしては、例えば、耐熱多孔質層用の耐熱性微粒子として例示した前記の各種微粒子が挙げられる。
前記多層多孔質膜に係るポリオレフィンを主体とする多孔質膜においては、その主体となるポリオレフィンの含有量が、多孔質膜の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)のうち、50体積%以上である。
また、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜に係るポリオレフィンの含有量は、セパレータのシャットダウン特性を良好に確保する観点から、例えば、下記のようであることが好ましい。セパレータの構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中におけるポリオレフィンの体積が、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましい。更に、ポリオレフィンの体積が、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の構成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、70体積%以上であることがより好ましく、80体積%以上であることが更に好ましい(ポリオレフィンが100体積%であってもよい。)。更に、耐熱多孔質層の空孔率が30〜70%であり、かつポリオレフィンの体積が、耐熱多孔質層の空孔体積の50%以上であることが好ましい。
前記多層多孔質膜において、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜、および耐熱多孔質層は、それぞれ1層ずつであってもよく、いずれか一方または両方が複数であってもよい。すなわち、前記多層多孔質膜は、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の片面に耐熱多孔質層を有する構造の他に、例えば、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の両面に耐熱多孔質層を有する構造や、耐熱多孔質層の両面にポリオレフィンを主体とする多孔質膜を有する構造などを有していてもよい。ただし、前記多層多孔質膜を構成する層の総数は、あまり多すぎると、セパレータの全厚みを増やして電池の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるため、5層以下であることが好ましい。
本発明のセパレータの全厚みは、十分な強度を確保する観点から、12μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。ただし、セパレータが厚すぎると、電池の高出力化の効果が小さくなる虞があることから、本発明のセパレータの全厚みは、40μm以下であることが好ましく30μm以下がより好ましい。
また、前記多層多孔質膜を用いた本発明のセパレータの場合、前記多層多孔質膜に係る耐熱多孔質層の厚み(前記多層多孔質膜が耐熱多孔質層を複数有する場合は、その合計厚み。耐熱多孔質層の厚みについて、以下同じ。)は、セパレータ全体の熱収縮を制御したり、耐熱多孔質層に前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有させる場合には、金属イオンを良好に吸着して内部短絡などを防止したりして、電池の信頼性や安全性を良好に高め、高温貯蔵時の特性低下を良好に抑制する観点から、3μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましい。ただし、耐熱多孔質層の厚みが厚すぎると、セパレータの全厚みが大きくなってしまい、電池の負荷特性の低下が引き起こされたり、電池容量の向上が困難となったりする虞がある。よって、前記多層多孔質膜に係る耐熱多孔質層の厚みは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
更に、前記多層多孔質膜に係るポリオレフィンを主体とする多孔質膜の厚み(前記多層多孔質膜に係るポリオレフィンを主体とする多孔質膜を複数有する場合には、その合計厚み。ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の厚みについて、以下同じ。)は、電池のシャットダウン特性を良好に確保する観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、セパレータの全厚みを小さくして、電池の容量や出力密度をより向上させる観点から、前記多層多孔質膜に係るポリオレフィンを主体とする多孔質膜の厚みは、35μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
セパレータの空孔率としては、非水電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。セセパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(2)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P ={1−(m/t)/(Σa・ρ)}×100 (2)
ここで、前記式中、a:全体の質量を1としたときの成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)、t:セパレータの厚み(cm)である。
また、前記多層多孔質膜を用いた本発明のセパレータに関しては、前記(2)式において、mを、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の厚み(cm)とし、aを、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜全体の質量を1としたときの成分iの比率とすることで、前記(2)式を用いてポリオレフィンを主体とする多孔質膜の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められるポリオレフィンを主体とする多孔質膜の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
更に、前記多層多孔質膜を用いた本発明のセパレータに関しては、前記(2)式において、mを、耐熱多孔質層の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを、耐熱多孔質層の厚み(cm)とし、aを、耐熱多孔質層全体の質量を1としたときの成分iの比率とすることで、前記(2)式を用いて耐熱多孔質層の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる耐熱多孔質層の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
本発明のセパレータは、150℃の温度雰囲気下に静置したときの熱収縮率が、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。セパレータが前記のような熱収縮率を有する場合には、電池内に導電性異物が混入することによる内部短絡の発生時における問題をより良好に回避でき、また、仮に内部短絡が発生し電池内の温度が上昇し始めても、セパレータの形状が良好に維持されるため、更なる問題の発生を抑えることができ、より安全性に高い電池とすることが可能となる。セパレータの前記熱収縮率は、例えば、前記多層多孔質膜を用いてセパレータを構成とすることで確保することができる。
本明細書でいう「150℃の温度雰囲気下に静置したときのセパレータの熱収縮率」は、具体的には、後述する実施例で用いた方法により測定する。
本発明のセパレータに前記多層多孔質膜を使用する場合、前記多層多孔質膜は、例えば、耐熱多孔質層を構成する耐熱性微粒子およびバインダなどを、水や有機溶媒といった媒体に分散させてスラリー状やペースト状の耐熱多孔質層形成用組成物(バインダは、媒体に溶解していてもよい)を調製し、これを、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の表面に塗布し、乾燥する方法により製造することができる。
ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の表面への耐熱多孔質層形成用組成物の塗布は、例えば、多孔質層形成用組成物を公知の塗工装置により塗布する方法によって実施することができ、塗布する際に使用できる塗工装置としては、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、リバースロールコーター、ダイコーターなどが挙げられる。
耐熱多孔質層形成用組成物に用いられる媒体は、耐熱性微粒子などを均一に分散でき、また、バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般的な有機溶媒が好適に用いられる。尚、これらの媒体に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、前記の通り水を媒体としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)や各種界面活性剤を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
耐熱多孔質層形成用組成物は、その固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
また、前記多層多孔質膜の耐熱多孔質層に、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有させる場合には、耐熱性微粒子および他のバインダ(必要な場合のみ)と共に、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を媒体に分散させて調製した耐熱多孔質層形成用組成物を用いて、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜の表面に耐熱多孔質層を形成すればよい。
一方、セパレータの本体となる多孔質膜(耐熱多孔質層を有する前記多層多孔質膜、およびそれ以外の多孔質膜)の表面に前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を付着させることで、セパレータに前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有させる場合には、前記の通り、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を媒体に分散または溶解させて塗液を調製し、この塗液を、セパレータの本体となる多孔質膜の表面に塗布し、乾燥する方法が採用できる。
前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有する塗液に係る媒体には、水や有機溶媒(例えば、耐熱多孔質層形成用組成物用の媒体として先に例示した各種有機溶媒)を用いることができる。
本発明の非水電解質電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解液を有しており、セパレータが本発明のセパレータであればよく、その他の構成および構造については、従来から知られている非水電解質電池(リチウム二次電池など)で採用されている各種構成および構造を適用することができる。なお、以下には、非水電解質電池の代表的な態様であるリチウム二次電池を例に挙げて説明する。
正極としては、従来から知られている非水電解質電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、正極活物質としては、LiMMn2−x(ただし、Mは、Li、B、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Sn、Sb、In、Nb、Mo、W、Y、RuおよびRhよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.01≦x≦0.5)で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物、LiMn(1−y−x)Ni(2−k)(ただし、Mは、Co、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Mo、Sn、Ca、SrおよびWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.8≦x≦1.2、0<y<0.5、0≦z≦0.5、k+l<1、−0.1≦k≦0.2、0≦l≦0.1)で表される層状化合物、LiCo1−x(ただし、Mは、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNi1−x(ただし、Mは、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるリチウムニッケル複合酸化物、LiM1−x(ただし、Mは、Fe、MnおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、Nは、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるオリビン型複合酸化物などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の電池は、正極から溶出し、負極に析出することで電池特性を低下させたり短絡を引き起こしたりする金属イオンを、セパレータの有する前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の作用によって効果的にトラップすることができる。そのため、本発明の電池においては、Mnの溶出が生じやすい前記のスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質に用いた場合に、その効果が特に顕著となる。
正極には、前記の正極活物質と、導電助剤やバインダとを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に形成した構造のものを使用することができる。
正極のバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などフッ素樹脂などが、また、正極の導電助剤としては、例えば、カーボンブラックなどの炭素材料などが使用される。
また、正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
負極としては、従来から知られている非水電解質電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金、更にはLiTi12で表されるようなTi酸化物も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたもの、または前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体上に負極剤層として積層したものなどが用いられる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、下限は5μmであることが望ましい。また、負極側のリード部は、正極側のリード部と同様にして形成すればよい。
前記の正極と前記の負極とは、前記のセパレータを介して積層した積層電極体や、更にこれを巻回した巻回電極体の形態で用いることができる。
本発明の非水電解質電池には、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液を使用することができる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLiイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こしにくいものであれば特に制限は無い。例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF 、LiSbF などの無機リチウム塩;LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(ROSO〔ここでRはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩;などを用いることができる。
非水電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンなどの環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。
このリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
本発明の非水電解質電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
本発明の非水電解質電池は、従来から知られている非水電解質電池が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<セパレータの作製>
セパレータの本体となる多孔質膜として、PP層とPE層とを、PP/PE/PPの順に3層積層した微多孔膜(厚み:16μm、空孔率:45%、各層の厚み;PP層:5μm/PE層:6μm/PP層:5μm)を用意し、その片面にコロナ放電処理を施した。
前記3層構造の微多孔膜のコロナ放電処理面に、ポリエチレンイミン水溶液[日本触媒社製「エポミンP−1000(商品名)」(ポリエチレンイミンの分子量:7万)を、固形分濃度が10質量%となるように水で希釈した溶液]を、ダイコーターを用いて、乾燥後の量が1000mg/mになるように均一に塗布し、乾燥してセパレータを得た。
<正極の作製>
正極活物質であるLiMn:92質量%と、導電助剤であるアセチレンブラック:4質量%と、分散剤であるポリビニルピロリドン:0.3質量%とを混合し、ここに、正極合剤中において3.7質量%となる量のPVDF(バインダ)を含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を加え、よく混練して正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚みが10μmのアルミニウム箔の片面に、乾燥後の正極合剤層の質量が、正極集電体の片面あたり18.3mg/cmとなる量で前記のスラリーを均一に塗布し、その後80℃で乾燥し、更にロールプレス機で圧縮成形して正極を得た。なお、正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するようにした。前記正極の正極合剤層の厚みは、集電体(アルミニウム箔)の片面あたり、70μmであった。
前記の正極を、正極合剤層の大きさが41mm×25.5mmで、かつアルミニウム箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのアルミニウム製リード片を、アルミニウム箔の露出部に溶接した。
<負極の作製>
負極活物質である天然黒鉛:97.8質量%と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース:1.2質量%とを混合し、ここに、負極合剤中において1質量%となる量のSBR(バインダ)を含むNMP溶液を加え、よく混練して負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚み10μmの圧延銅箔の片面に、乾燥後の負極合剤層の質量が、負極集電体の片面あたり6.2mg/cmとなる量で前記のスラリーを均一に塗布し、その後80℃で乾燥し、更にロールプレス機で圧縮成形して負極を得た。なお、負極合剤含有スラリーを圧延銅箔に塗布する際には、圧延銅箔の一部が露出するようにした。前記負極の負極合剤層の厚みは、集電体(圧延銅箔)の片面あたり、50μmであった。
前記の負極を、負極合剤層の大きさが42mm×27mmで、かつ圧延銅箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのニッケル製リード片を、圧延銅箔の露出部に溶接した。
<電池の組み立て>
前記のセパレータ、前記の正極および前記の負極を、80×80mmのラミネートフィルム上に、負極、セパレータ、正極の順に重ねて積層し、ポリイミドテープで仮止めして積層電極体とした。その後、積層電極体の上に80×80mmのラミネートフィルムを重ね、積層電極体の上下に配置した両ラミネートフィルムの3辺を熱封止し、60℃で1日真空乾燥を行った後に、両ラミネートフィルムの残りの1辺から非水電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとを2:4:4の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1mol/lの濃度で溶解させた溶液)を注入した。その後、両ラミネートフィルムの前記残りの1辺を真空熱封止して、図1に示す外観で、図2に示す断面構造の非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた電池の定格容量は15mAhである(後記の各実施例および比較例の非水電解質電池も、定格容量は全て実施例1の電池と同じである)。また、得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、38mg/Ahである。
ここで、図1および図2について説明すると、図1は非水電解質電池を模式的に表す平面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。非水電解質電池1は、2枚のラミネートフィルムで構成したラミネートフィルム外装体2内に、正極5と負極6とをセパレータ7を介して積層して構成した積層電極体と、非水電解液(図示しない)とを収容しており、ラミネートフィルム外装体2は、その外周部において、上下のラミネートフィルムを熱融着することにより封止されている。なお、図2では、図面が煩雑になることを避けるために、ラミネートフィルム外装体2を構成している各層や、正極5および負極6の各層を区別して示していない。
正極5は、電池1内でリード片を介して正極外部端子3と接続しており、また、図示していないが、負極6も、電池1内でリード片を介して負極外部端子4と接続している。そして、正極外部端子3および負極外部端子4は、外部の機器などと接続可能なように、片端側がラミネートフィルム外装体2の外側に引き出されている。
実施例2
容器に入れた水600g中に、耐熱性微粒子であるベーマイト(二次粒子のD50=1.0μm、比表面積8m/g)500gと、バインダであるアクリレート共重合体(モノマー成分としてブチルアクリレートを主成分とする市販のアクリレート共重合体)7.5gと、ポリエチレンイミンが5gとなる量(ベーマイト100質量部に対して1質量部)のポリエチレンイミン水溶液[日本触媒社製「エポミンP−1000(商品名)」(ポリエチレンイミンの分子量:7万)]とを投入し、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌させて分散させて、均一な耐熱多孔質層形成用組成物を調製した。
実施例1でセパレータの本体に用いたものと同じ3層構造の微多孔膜の片面にコロナ放電処理を施し、その処理面に前記の耐熱多孔質層形成用組成物を、ダイコーターを用いて、乾燥後の厚みが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥して、前記3層構造の微多孔膜の片面に、ベーマイトを含有する耐熱多孔質層を有するセパレータを得た。得られたセパレータの単位面積当たりのポリエチレンイミンの量は、65mg/mである。また、得られたセパレータの、耐熱多孔質層におけるベーマイトの含有量は、耐熱多孔質層の構成成分の全体積中、89体積%であり、ポリエチレンイミンも含めたバインダの含有量は、ベーマイト100体積%に対して、11体積%である。
前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。なお、この電池では、セパレータを、その耐熱多孔質層が正極と対向するように配置した。得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、2.5mg/Ahである。
実施例3
前記のポリエチレンイミン水溶液に代えて、分子量が1500のポリエチレンイミン[日本触媒社製「エポミンSP−012(商品名)」]5gを用いた以外は、実施例2と同様にして耐熱多孔質層形成用組成物を調製し、この耐熱性多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。得られたセパレータの単位面積当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池に用いたセパレータと同じである。
そして、前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池と同じである。
実施例4
耐熱性微粒子であるベーマイトを、二次粒子のD50が0.4μmのものに変更した以外は、実施例2と同様にして耐熱多孔質層形成用組成物を調製し、この耐熱性多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。得られたセパレータの単位面積当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池に用いたセパレータと同じである。
そして、前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池と同じである。
実施例5
耐熱性微粒子であるベーマイトを、二次粒子のD50が0.1μmのものに変更した以外は、実施例2と同様にして耐熱多孔質層形成用組成物を調製し、この耐熱性多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。得られたセパレータの単位面積当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池に用いたセパレータと同じである。
そして、前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池と同じである。
実施例6
耐熱性微粒子であるベーマイトを、二次粒子のD50が5μmのものに変更した以外は、実施例2と同様にして耐熱多孔質層形成用組成物を調製し、この耐熱性多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。得られたセパレータの単位面積当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池に用いたセパレータと同じである。
そして、前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池と同じである。
実施例7
ポリエチレンイミン水溶液の添加量を、ポリエチレンイミンが0.2g(ベーマイト100質量部に対して0.02質量部)となる量に変更した以外は、実施例2と同様にして耐熱多孔質層形成用組成物を調製し、この耐熱性多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。得られたセパレータの単位面積当たりのポリエチレンイミンの量は、1.3mg/mである。また、得られたセパレータの、耐熱多孔質層におけるベーマイトの含有量は、耐熱多孔質層の構成成分の全体積中、91体積%であり、ポリエチレンイミンも含めたバインダの含有量は、ベーマイト100体積%に対して、10体積%である。
そして、前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、0.05mg/Ahである。
実施例8
耐熱性微粒子であるベーマイトを、二次粒子のD50が0.02μmのものに変更した以外は、実施例2と同様にして耐熱多孔質層形成用組成物を調製し、この耐熱性多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。得られたセパレータの単位面積当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池に用いたセパレータと同じである。
そして、前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、実施例2の電池と同じである。
実施例9
ポリエチレンイミン水溶液の添加量を、ポリエチレンイミンが35g(ベーマイト100質量部に対して7質量部)となる量に変更した以外は、実施例2と同様にして耐熱多孔質層形成用組成物を調製し、この耐熱性多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。得られたセパレータの単位面積当たりのポリエチレンイミンの量は、455mg/mである。また、得られたセパレータの、耐熱多孔質層におけるベーマイトの含有量は、耐熱多孔質層の構成成分の全体積中、75体積%であり、ポリエチレンイミンも含めたバインダの含有量は、ベーマイト100体積%に対して、33体積%である。
そして、前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた電池の容量当たりのポリエチレンイミンの量は、17.5mg/Ahである。
比較例1
実施例1でセパレータの本体に用いたものと同じ3層構造の微多孔膜を、そのままセパレータに用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
比較例2
ポリエチレンイミン水溶液を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして耐熱多孔質層形成用組成物を調製し、この耐熱性多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にしてセパレータを作製した。そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
実施例および比較例の非水電解質電池、並びに、これらの電池に用いたセパレータについて、以下の各評価を行った。
<セパレータの熱収縮率測定>
実施例および比較例の各電池に用いたものと同じセパレータを縦5cm、横10cmの長方形に切り取り、黒インクで縦方向に平行に3cm、横方向に平行に3cmの十字線を描いて測定試料を作製した。なお、セパレータを長方形に切り取るに当たっては、その縦方向が、セパレータの微多孔膜の機械方向MD:Machine Directionとなるようにし、前記十字線は、その交点が、セパレータ片の中心となるようにした。前記の各測定試料を150℃に設定した恒温槽中に吊るし、1時間経過後に各測定試料の縦方向および横方向の直線の長さを測定して、恒温槽中に吊るす前の直線の長さからの変化量を求め、これらの変化量の、恒温槽中に吊るす前の直線の長さに対する比率を百分率で表して、縦方向および横方向の熱収縮率とした。そして、各測定試料の縦方向の熱収縮率と横方向の熱収縮率のうち、より値の大きい方を、各セパレータの熱収縮率とした。
<電池の信頼性測定>
実施例および比較例の各電池について、定格容量に対して1/2Cの電流値で4.2Vまで充電し、0.5Cの電流地で3Vになるまで放電する操作を2回繰り返し、2サイクル目の放電容量を求めて、各電池の初期容量とした。
また、初期容量測定後の各電池について、前記と同じ条件で充電を行い、その後、各電池の劣化診断するため、80℃恒温状態で24時間貯蔵し、自己放電状態を確認した。
自己放電状態の評価は、前記恒温貯蔵後の各電池を、0.5Cの電流値で3Vになるまで放電して求めた放電容量と、恒温貯蔵前の充電容量とを比較し、下記式を用いて容量維持率を求めることにより行った。
容量維持率 = 100×(恒温貯蔵後の放電容量)/(恒温貯蔵前の充電容量)
恒温貯蔵後の放電容量を求めた各電池について、恒温貯蔵前の充電と同じ条件で充電を行い、更に恒温貯蔵後の放電と同じ条件で放電を行う充放電サイクルを2回繰り返し、サイクル2回目での放電容量を求めた。そして、このサイクル2回目の放電容量と、前記初期容量(恒温貯蔵前の2サイクル目の放電容量)とから、下記式に従って回復率(%)を求め、これにより各電池の回復特性を評価した。電池の劣化が小さいときには、数回の充放電で容量が回復するため、この回復率が大きいほど、電池の劣化が小さいことを意味している。
回復率 = 100×(サイクル2回目の放電容量)/(初期容量)
実施例および比較例の非水電解質電池に用いたセパレータの構成を表1に示し、前記の各評価結果を表2に示す。
Figure 2012248442
Figure 2012248442
表2に示すように、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物(ポリエチレンイミン)を含有するセパレータを用いた実施例の非水電解質電池は、前記化合物を含有していないセパレータを用いた比較例の電池に比べて、恒温貯蔵における容量維持率および恒温貯蔵後の回復率が高く、信頼性が良好で、高温貯蔵時の特性低下が良好に抑制できている。実施例の各電池では、セパレータの含有する前記化合物によって、高温貯蔵時に非水電解液中に溶出した金属イオンがトラップされることで、電池特性の低下が抑えられ、信頼性が向上したと考えられる。
なお、実施例8の電池は、恒温貯蔵における容量維持率および恒温貯蔵後の回復率が、例えば、実施例2の電池に比べて劣っているが、これは、セパレータの耐熱多孔質層に用いた耐熱性微粒子(ベーマイト)の粒径が小さいことで、耐熱性微粒子に吸着した水分の影響が出ていると考えられる。また、実施例9の電池は、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の量が多いため、例えば、実施例2の電池に比べて電池容量が低下しているが、この化合物による電池の信頼性向上は認められる。
1 非水電解質電池
2 ラミネートフィルム外装体
5 正極
6 負極
7 セパレータ

Claims (9)

  1. 非水電解質電池に用いられるセパレータであって、下記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有していることを特徴とする非水電解質電池用セパレータ。
    −NH(CHCHNH)R (1)
    [前記一般式(1)中、nは正の整数であり、RはHまたは炭素数1〜10のアルキル基である。]
  2. 前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物は、分子量が100以上である請求項1に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  3. 前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物は、ポリエチレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンである請求項1または2に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  4. 前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の、単位面積当たりの含有量が、1〜1000mg/mである請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質電池用セパレータ。
  5. ポリオレフィンを主体とする多孔質膜と、耐熱性微粒子を主体として含む耐熱多孔質層とを少なくとも有する多層多孔質膜により構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質電池用セパレータ。
  6. 耐熱多孔質層が、前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物を含有している請求項5に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  7. シャットダウン温度が80〜180℃である請求項5または6に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  8. 正極、負極、セパレータおよび非水電解液を有する非水電解質電池であって、
    前記セパレータに、請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解質電池用セパレータを用いたことを特徴とする非水電解質電池。
  9. 前記一般式(1)で表される構造部分を有する化合物の電池容量当たりの含有量が、0.05〜50mg/Ahである請求項8に記載の非水電解質電池。
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