JP2012241303A - 繊維複合体の製造方法及び押圧ローラ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に熱膨張性カプセルを供給する工程と、マットを押圧ローラ装置によって押圧する分散工程と、マットを構成する熱可塑性樹脂繊維を溶融する工程と、マット内に分散されたカプセルを加熱する膨張工程と、を備えた方法において、押圧ローラ装置25は、複数の回転軸を備えるとともに、回転軸は各々複数のローラ部を備え、第1回転軸251aの各ローラ部252a幅方向中央で第1回転軸に直交した第1仮想線と、第1回転軸251aに隣接した第2回転軸251bの各ローラ部252b幅方向中央で第2回転軸251bに直交した第2仮想線と、が重ならないように各ローラ部が配置されている。
【選択図】図1
Description
本発明では、このローラによる分散を、従来に比べて更に効果的に行うことができる繊維複合体の方法及びその為の押圧ローラ装置を提供することを目的とする。
前記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
前記マットの一面を、押圧ローラ装置によって押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えており、
前記押圧ローラ装置は、複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを要旨とする。
請求項2に記載の繊維複合体の製造方法は、請求項1記載において、前記第1の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第1軌跡と、前記第2の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第2軌跡と、が重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを要旨とする。
請求項3に記載の押圧ローラ装置は、補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
前記マットの一面を、押圧ローラ装置によって押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えて、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有した繊維複合体を製造する方法に用いられる前記押圧ローラ装置であって、
複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを要旨とする。
請求項4に記載の押圧ローラ装置は、請求項3において、前記第1の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第1軌跡と、前記第2の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第2軌跡と、が重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを要旨とする。
本発明の繊維複合体の製造方法において、ローラ部同士の軌跡の重なりがないことによって、熱膨張性カプセルの偏在をより効果的に抑制しつつ、マット内に熱膨張性カプセルを分散できる。
本発明の押圧ローラ装置によれば、押圧ローラ等によるマットの不本意な咬み込みを防止して、効率よく熱膨張性カプセルをマット内に分散させることができる。これにより、良好にマット内に分散された熱膨張性カプセルの殻壁に由来する熱可塑性樹脂によって、補強繊維同士が結着されて、優れた機械的特性を備えつつ軽量な繊維複合体を得ることができる。
本発明の押圧ローラ装置において、ローラ部同士の軌跡の重なりがないことによって、偏在をより効果的に抑制しつつ、マット内に熱膨張性カプセルを分散できる。
先ず、本発明の押圧ローラ装置、及び、本発明の繊維複合体の製造方法に用いられる押圧ローラ装置について説明する。
尚、以下では、回転軸の番号はこの番号の順に並んでいるものとして説明する。即ち、図1及び図2に例示されるように、第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸は、各々この順に配置されている。
更に、第Nの回転軸は「第N回転軸」、第N回転軸が備えるローラ部を「第Nローラ部」、第Nローラ部に設定される仮想線を「第N仮想線」、第Nローラ部の軌跡を「第N軌跡」のようにもいうものとする。
上記「押圧ローラ装置(25)」(図1〜図6及び図9参照)は、繊維複合体の製造方法に用いられる装置であり、複数の回転軸251を備えるとともに、該回転軸251は各々複数のローラ部252を備え、
前記回転軸251のうち、第1の回転軸251aに備えられた各ローラ部252aの幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸251aに直交した第1仮想線Laを想定し、
前記第1の回転軸251aに隣接した第2の回転軸251bに備えられた各ローラ部252bの幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸251bに直交した第2仮想線Lbを想定した場合に、
前記第1仮想線Laと前記第2仮想線Lbとが重ならないように前記各ローラ部252が配置されている。
回転軸251を複数備えることにより、マットを押圧する過程で加振を行うのと同様の効果を得ることができ、熱膨張性カプセルをマット内に効果的に分散させることができる。
尚、(1)回転軸251とローラ部252とは一体とされ、回転軸251の回転に伴ってローラ部252も同じ回転数で共に回転してもよい。また、(2)回転軸251とローラ部252とは別体とされ、回転軸251は回転することなく、マットに押圧された状態のローラ部252のみが前後運動に伴って回転する構造であってもよい。
第1仮想線Laは、図2に示されるように、第1の回転軸251aに備えられた各ローラ部252aの幅方向の中央に位置するとともに、第1の回転軸251aに直交した仮想線である(図2参照)。同様に、第2仮想線Lbは、第2の回転軸251bに備えられた各ローラ部252bの幅方向の中央に位置するとともに、第2の回転軸251bに直交した仮想線である(図2参照)。
同様に、3本以上の回転軸有する場合においても、第N仮想線と第N+1仮想線と、は重ならない配置とされている。但し、隣接しない回転軸のローラ部に設定される仮想線同士は重なってもよい。即ち、例えば、第N仮想線と第N+2仮想線とは重なってもよい(図2参照)。
このことは、3本以上の回転軸を備える場合においても同様であり、第N+1ローラ部は、第N仮想線と重ならないように配置されることが好ましい。但し、3本以上の回転軸を備える場合において、第N+2ローラ部は、第N仮想線と重なるように配置されてもよい。即ち、第N仮想線は、第N+2軌跡上に位置してもよい。
即ち、隣接した回転軸が各々備えるローラ部の軌跡は重複することなく、且つ、すべてのローラ部間に軌跡の欠損を生じないことが好ましい。これにより、満遍ない押圧ができ、熱膨張性カプセルのより良好な分散を得ることができる。
但し、第1軌跡と、第1回転軸に隣接しない回転軸が有するローラ部よる軌跡とは、重なってもよい。即ち、例えば、第N軌跡と第N+2軌跡とは重なってもよい。
更に、ローラ部252は、少なくとも直径20mm以上(通常、100mm以下)のものを用いることが好ましい。ローラの直径が20mm以上であれば、熱膨張性カプセルをマット内に押し込む作用が特に効果的に得られるからである。
本発明の押圧ローラ装置を利用する繊維複合体の製造方法は、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、供給工程と、分散工程と、溶融工程と、膨張工程と、を備えており、
前記押圧ローラ装置は、複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを特徴とする。
本方法ではマットを湿式法(抄紙法等)で形成してもよく、乾式法で形成してもよいが、湿式法を用いた場合には高度な乾燥工程を要することになるため乾式法が好ましい。特に補強繊維として植物性繊維を用いる場合には、植物性繊維が吸水性を有するためにとりわけ乾式法が好ましい。
また、マットの厚さは10mm以上(通常50mm以下、更には10〜30mm、特に15〜25mm)とすることができる。
この植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等の各種植物体から得られた植物性繊維が挙げられる。この植物性繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフ(即ち、植物性繊維としてはケナフ繊維)が好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
また、上記植物性繊維として用いる植物体の部位は、特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
また、上記ジュートは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
上記植物性繊維は単用してもよく併用してもよい。
更に、植物性繊維及び無機繊維は、いずれか一方のみを単用してもよく、植物性繊維と無機繊維とを併用してもよい。これらのうちでは補強効果に優れること及び取扱い性が良いことから植物性繊維が好ましく、無機繊維のなかではガラス繊維が好ましい。更に、これらのうちでも環境的観点から植物性繊維のうちのケナフ繊維が特に好ましい。
また、その繊維径は1mm以下が好ましく、0.01〜1mmがより好ましく、0.02〜0.7mmが更に好ましく、0.03〜0.5mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、特に高い強度を有する繊維複合体を得ることができる。補強繊維として、上記の繊維長及び繊維径を外れるものを含んでもよいが、その繊維の含有量は、補強繊維の全体に対して0.5〜10質量%(特に0.5〜3質量%)であることが好ましい。これにより得られる繊維複合体の強度を高く維持できる。
尚、上記繊維長は平均繊維長を意味し(以下同様)、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。更に、上記繊維径は平均繊維径を意味し(以下同様)、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を、光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂等が挙げられる。このうち、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、並びに、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。アクリル樹脂はメタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂である。これらの熱可塑性樹脂は、補強繊維(特に補強繊維の表面)に対する親和性を高めるために変性された樹脂であってもよい。また、上記熱可塑性樹脂は単用してもよく併用してもよい。
上記ポリエステル樹脂としては、生分解性を有するポリエステル樹脂(以下、単に「生分解性樹脂」ともいう)が好ましい。この生分解性樹脂は、以下に例示される。
(1)乳酸、リンゴ酸、グルコース酸、3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体;これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル。
(2)ポリカプロラクトン、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体等のカプロラクトン系脂肪族ポリエステル。
(3)ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル。
これらのうち、ポリ乳酸、乳酸と、乳酸以外の他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体が好ましく、ポリ乳酸が特に好ましい。これらの生分解性樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、上記乳酸は、L−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
また、その繊維径は0.001〜1.5mmが好ましく、0.005〜0.7mmがより好ましく、0.008〜0.5mmが更に好ましく、0.01〜0.3mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂繊維を切断させず、補強繊維と分散性よく交絡できる。なかでも補強繊維が植物性繊維である場合に特に適する。
特に補強繊維が植物性繊維である場合にあっては、植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維との合計量を100質量%とした場合に、植物性繊維は10〜95質量%とすることが好ましく、20〜90質量%とすることがより好ましく、30〜80質量%とすることが特に好ましい。
尚、マットには、補強繊維及び熱可塑性樹脂繊維以外にも、又は、熱可塑性樹脂繊維内に添加剤(酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、着色剤等)が含まれてもよい。
この熱膨張性カプセルの形状は特に限定されないが、通常、略球形である。尚、この熱膨張性カプセルは膨張した後、破泡して殻壁は不定形化してもよく、破泡することなく殻壁がカプセル形状を維持してもよい。更に、発泡剤を用いる場合、その発泡剤は、殻壁の外部に放出されてもよく、膨張後の殻壁内に一部又は全部が残存されてもよい。
この熱膨張性カプセルの膨張倍率(膨張後平均粒径/膨張前平均粒径)は特に限定されないが、例えば、1.2〜5倍とすることができる。
一方、上記(2)の場合、即ち、溶融工程と膨張工程と同時に行う場合には、熱膨張性カプセルの膨張開始温度は、熱可塑性樹脂繊維の軟化温度に対して−30〜+60℃(より好ましくは−10〜+40℃)の範囲とすることが好ましい。
押圧ローラ装置25により押圧をする際には、押圧ローラ装置25をマット14に対して押し付けて押圧してもよく、マット14を押圧ローラ装置25に対して押し付けて押圧してもよい。更に、ローラ部252の回転は、押圧ローラ装置25をマット14に対して移動させることでローラ部252を回転させてもよく、マット14を押圧ローラ装置25に対して移動させることでローラ部252を回転させてもよい。マット14を移動する場合には、マット14を載置した固定台やコンベアを移動させることでこれらの移動を行うことができる。
これら2つの工程は、順不同で行うことができる。即ち、(1)溶融工程を先に行い、次いで、膨張行程を後に行ってもよく、(2)溶融工程と膨張工程とを同時に行ってもよく、(3)膨張工程を先に行い、次いで、溶融工程を後に行ってもよい。これらのなかでは、上記(1)又は(2)が好ましい。
また、膨張工程では、得られる繊維複合体の成形を同時に行うことができる。即ち、厚さ及び形状を制御することができる。例えば、膨張前成形体を膨張工程において十分に膨張させた上で、膨張後成形体を加圧圧縮して所望の厚さの繊維複合体を得ることもできる(即ち、成形工程を備える)が、膨張工程において、熱膨張性カプセルを膨張させる際に所望厚さのクリアランスを維持できる金型を用いて膨らみを適度に拘束しつつ、熱可塑性樹脂の温度を低下させることで、所望の厚さの繊維複合体を得ることができる。更に、金型に所望の凹凸形状を付与することで、凹凸形状を有する繊維複合体を得ることもできる。
[1]実施形態1
以下の実施形態1の押圧ローラ装置を用意した。直径30mm且つ幅1400mmである回転軸251が軸中心間距離45mmで4本の平行に配置されている。そして、各回転軸251には直径40mm且つ幅100mmのローラ部252が7ヶ所設けられている(即ち、同軸の各ローラ部252の間には幅100mm以上の間隙が形成されている)。更に、第1ローラ部252aと第2ローラ部252bと、第2ローラ部252bと第3ローラ部252cと、第3ローラ部252cと第4ローラ部252dと、の各間には5mm(図4におけるD=5mm)の隙間が形成されている。
また、ローラ部252のうち、第1ローラ部252aの第1仮想線Laと、第2ローラ部252bの第2仮想線Lbとは、重ならないように配置されている。同様に、第2仮想線Lbと第3仮想線Lcと、第3仮想線Lcと第4仮想線Ldと、も各々重ならない配置である。更に、第1ローラ部252aによるマット上での第1軌跡Taと、第2ローラ部252bによるマット上での第2軌跡Tbと、が重ならないように配置されている。
各回転軸251に直径40mm且つ幅200mmのローラ部252が3又は4ヶ所設けられている(即ち、同軸の各ローラ部252の間には幅200mmづつの間隙が形成されている)以外は、実施形態1と同じである実施形態2の押圧ローラ装置を用意した。
各回転軸251に直径40mm且つ幅50mmのローラ部252が14ヶ所設けられている(即ち、同軸の各ローラ部252の間には幅50mmづつの間隙が形成されている)以外は、実施形態1と同じである実施形態2の押圧ローラ装置を用意した。
以下の比較形態1として、直径40mm且つ幅1400mmの1本のローラからなる押圧ローラ装置を用意した。
繊維複合体を以下のようにして製造した(図8〜図10参照)。
〈1〉実施例1の繊維複合体の製造(実施形態1の押圧ローラ装置を使用)
(1)マットの製造
補強繊維として植物性繊維(ケナフ繊維)を用いたマットを、図8に示すマット製造装置を用いて製造した。このマット製造装置では、植物性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混合繊維1及び4を2機のエアレイ装置(第1エアレイ装置3及び第2エアレイ装置6)を用いて2つのウェブ(第1ウェブ7及び第2ウェブ8)を調製し、これらのウェブを積層した後、ニードルパンチ(第1交絡手段11及び第2交絡手段12)を行って2層のウェブ同士を交絡させて1層化した後、裁断装置13において裁断してマット14を製造する装置である。
また、このマット製造装置には、更に、図9に示すように、熱膨張性カプセル23を供給する熱膨張性カプセル供給装置22が接続され、その後、この熱膨張性カプセル23をマット14内に分散させる押圧ローラ装置25が連結されて、熱膨張性カプセル23が内部に分散されたマット15を得ることができる。
次いで、第1交絡手段(ニードルパンチ加工装置)11を用いて、搬送される積層ウェブ9の上方から、即ち、第2ウェブ8の側(上面側)から、針密度70本/cm2、針深度10mmの条件でニードリングした。そして、同条件にて、第2交絡手段(ニードルパンチ加工装置)12を用いて、積層ウェブ9の下方から、即ち、第1ウェブ7の側(底面側)から同条件でニードリングし、厚さ約8mm、目付1000g/m2の繊維マットを作製した。その後、カッター13により繊維マットを裁断し、マット14(1300×800×8mm)を得た。
上記(1)で得られたマット14は、マット製造装置に連結された熱膨張性カプセル供給装置22へ引き続いて搬送される(図9及び図10参照)。この熱膨張性カプセル供給装置22では、マット14の上面に対して熱膨張性カプセル23が供給する。
本実施例では、熱膨張性カプセル供給装置22として静電塗布装置が用いられており、直流高電圧により帯電された熱膨張性カプセル23をスプレー(吐出)して、静電引力によりマット14の一面に供給・付着させることができる。具体的には、マット14の上面に熱膨張性カプセル(平均粒径50μm、発泡開始温度200〜210℃)を、静電塗装装置{(ランズバーグ・ゲマ社製、品名「オプティフレックス1S(撹拌式)ハンドガンユニット」}を用いて静電塗布した。
塗布条件は、ガンヘッド先端部(図示省略)からマット14までの距離を約30cmとし、塗布ガン印可電圧を−100kV、電流値を22μA、エア流量を4.0m3/時間、吐出量を40%、リンスエアーを0.1m3/時間、搬送コンベア21の搬送速度3m/分とした。この熱膨張性カプセル23の塗布量は、マット14に対して6質量%である。
上記(2)で熱膨張性カプセル23が供給されたマット14を、上記[1]実施形態1の押圧ローラ装置25を用いて分散工程に供した。具体的には、押圧ローラ装置25により、マット14の厚みが50%にまで圧縮される圧力(0.4MPa)で押圧する。更に、その間、マット14は、ボールネジ254に連動されて水平移動が可能な可動式台253に固定された状態で、モータ256を動力とするボールネジ254の回転に伴って速度6m/分で10往復分の往復運動(水平移動)がなされる。この往復運動に伴いローラ部252が回転しながら押圧することとなり、マット14内に熱膨張性カプセルが分散される。尚、回転軸251及びローラ部252は、支持台257に回転可能に支持されるとともに、支持台の上方には緩衝装置としてエアシリンダ258を備え、過度な押圧負荷を抑制している。
上記(3)で得られた熱膨張性カプセル23が分散されたマット15をテフロンシート(厚さ;0.3mm)に挟み、加熱プレス装置61の平板金型内で溶融工程に供した。この加熱プレスは、型温度210℃、プレス圧力1MPa、加熱時間60秒の条件にて行った。尚、この際、被加熱プレス物の内部温度は210℃まで上昇させた。
その後、冷却プレスにより、2MPaの圧力で25℃になるまで60秒間冷却して、板厚2.3mm、目付1.0kg/m2の膨張前繊維複合体16を得た。即ち、この膨張前繊維複合体内部では、熱可塑性樹脂繊維は溶融されて補強繊維同士を結着した状態にあるものの、加圧により熱膨張性カプセル23は膨張されていない状態にある。
上記(4)で得られた膨張前繊維複合体16を、235℃に設定されたオーブン62で加熱して(加熱時間;120秒)、熱膨張性カプセル23を膨張させた後、冷却プレス63により、2MPaの圧力で25℃になるまで60秒間冷却して、板厚4mm、目付1.0kg/m2の実施例1の繊維複合体17を得た。
上記〈1〉(3)分散工程において、上記[2]実施形態2の押圧ローラ装置25を用いたこと以外は、上記〈1〉と同様にして実施例2の繊維複合体17を製造した。
上記〈1〉(3)分散工程において、上記[3]実施形態3の押圧ローラ装置25を用いたこと以外は、上記〈1〉と同様にして実施例3の繊維複合体17を製造した。
上記〈1〉(3)分散工程において、上記[4]比較形態1の押圧ローラ装置25を用いるとともに、マット14の往復運動を20往復分としたこと以外は、上記〈1〉と同様にして比較例1の繊維複合体17を製造した。
JIS K7171に準じて、最大曲げ荷重を測定した。この測定に際しては、含水率約10%の状態における試験片(長さ150mm、幅50mm及び厚さ4mm)を用いた。そして、試験片を支点間距離(L)100mmとした2つの支点(曲率半径5.0mm)で支持しながら、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分にて荷重の負荷を行って特性の測定を行った。その結果を下記に示す。
実施例1;50.1N (往復数10回、ローラ部幅100mm、回転軸数4本)
実施例2;49.2N (往復数10回、ローラ部幅200mm、回転軸数4本)
実施例3;49.9N (往復数10回、ローラ部幅 50mm、回転軸数4本)
比較例1;48.7N (往復数20回、ローラ部幅500mm、回転軸数1本)
実施例1〜3及び比較例1において、いずれもローラ部252によるマット14上の軌跡の総距離は同じとなり、実施例1〜3及び比較例1の最大曲げ荷重は同等となった。しかし、押圧ローラ装置25による往復回数は実施例1〜3において10回であるのに対して、比較例1では20回と多い。即ち、同じ最大曲げ荷重を得るために要する往復回数は、実施例1〜3では比較例1の半分で済むことが分かる。このことから、本発明の押圧ローラ装置25を用いた場合には、より短時間で従来と同等に熱膨張性カプセル23をマット14内に分散させることができることが分かる。即ち、本発明の押圧ローラ装置25は、熱膨張性カプセル23のマット14内への分散効率に優れ、より短時間で高効率に熱膨張性カプセル23の分散を行うことができる。更に、押圧工程中におけるマット14の咬み込みを防止できる。
25;押圧ローラ装置、
251、251a、251b、251c、251d;回転軸、
252、252a、252b、252c、252d;ローラ部、
253;可動式台、254、ボールネジ、256;モータ、257;支持台、258;エアシリンダ、
61;溶融手段、62;膨張手段、63;成形手段。
Claims (4)
- 補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
前記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
前記マットの一面を、押圧ローラ装置によって押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えており、
前記押圧ローラ装置は、複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを特徴とする繊維複合体の製造方法。 - 前記第1の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第1軌跡と、前記第2の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第2軌跡と、が重ならないように前記各ローラ部が配置されている請求項1に記載の繊維複合体の製造方法。
- 補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
前記マットの一面を、押圧ローラ装置によって押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えて、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有した繊維複合体を製造する方法に用いられる前記押圧ローラ装置であって、
複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを特徴とする押圧ローラ装置。 - 前記第1の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第1軌跡と、前記第2の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第2軌跡と、が重ならないように前記各ローラ部が配置されている請求項3に記載の押圧ローラ装置。
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