JP2012241303A - 繊維複合体の製造方法及び押圧ローラ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ローラによる押圧を、従来に比べて更に効果的に行うことができる繊維複合体の方法及びその為の押圧ローラ装置を提供する。
【解決手段】補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に熱膨張性カプセルを供給する工程と、マットを押圧ローラ装置によって押圧する分散工程と、マットを構成する熱可塑性樹脂繊維を溶融する工程と、マット内に分散されたカプセルを加熱する膨張工程と、を備えた方法において、押圧ローラ装置25は、複数の回転軸を備えるとともに、回転軸は各々複数のローラ部を備え、第1回転軸251aの各ローラ部252a幅方向中央で第1回転軸に直交した第1仮想線と、第1回転軸251aに隣接した第2回転軸251bの各ローラ部252b幅方向中央で第2回転軸251bに直交した第2仮想線と、が重ならないように各ローラ部が配置されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維複合体の製造方法及び押圧ローラ装置に関する。更に詳しくは、本発明は、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法及びこの方法に用いられる押圧ローラ装置に関する。
近年、環境問題を考慮し、燃費の向上等のため、車両用部材等に対する軽量化の要望が高まっている。そのためには、例えば、繊維基材の目付を小さくする等の方法があるが、十分な剛性が得られ難いという問題がある。この問題に対して、補強繊維同士の間において熱膨張性カプセルが膨張し軽量性及び剛性に優れた繊維複合体の製造方法が知られている(特許文献1)。
特開2009−179896号公報
上記方法では、熱膨張性カプセルをマットの一面に供給したうえで、ローラを用いてその表面を押圧して、熱膨張性カプセルをマット内に分散できることが開示されている。
本発明では、このローラによる分散を、従来に比べて更に効果的に行うことができる繊維複合体の方法及びその為の押圧ローラ装置を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために、請求項1に記載の繊維複合体の製造方法は、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
前記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
前記マットの一面を、押圧ローラ装置によって押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えており、
前記押圧ローラ装置は、複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを要旨とする。
請求項2に記載の繊維複合体の製造方法は、請求項1記載において、前記第1の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第1軌跡と、前記第2の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第2軌跡と、が重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを要旨とする。
請求項3に記載の押圧ローラ装置は、補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
前記マットの一面を、押圧ローラ装置によって押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えて、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有した繊維複合体を製造する方法に用いられる前記押圧ローラ装置であって、
複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを要旨とする。
請求項4に記載の押圧ローラ装置は、請求項3において、前記第1の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第1軌跡と、前記第2の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第2軌跡と、が重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを要旨とする。
本発明の繊維複合体の製造方法によれば、押圧ローラ等によるマットの不本意な咬み込みを防止して、効率よく熱膨張性カプセルをマット内に分散させることができる。これにより、良好にマット内に分散された熱膨張性カプセルの殻壁に由来する熱可塑性樹脂によって、補強繊維同士が結着されて、優れた機械的特性を備えつつ軽量な繊維複合体を得ることができる。
本発明の繊維複合体の製造方法において、ローラ部同士の軌跡の重なりがないことによって、熱膨張性カプセルの偏在をより効果的に抑制しつつ、マット内に熱膨張性カプセルを分散できる。
本発明の押圧ローラ装置によれば、押圧ローラ等によるマットの不本意な咬み込みを防止して、効率よく熱膨張性カプセルをマット内に分散させることができる。これにより、良好にマット内に分散された熱膨張性カプセルの殻壁に由来する熱可塑性樹脂によって、補強繊維同士が結着されて、優れた機械的特性を備えつつ軽量な繊維複合体を得ることができる。
本発明の押圧ローラ装置において、ローラ部同士の軌跡の重なりがないことによって、偏在をより効果的に抑制しつつ、マット内に熱膨張性カプセルを分散できる。
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
押圧ローラ装置の回転軸及びローラ部を例示的に示す斜視図である。 回転軸及びローラ部とこれらの相関を示す説明図である。 ローラ部及びその軌跡及び仮想線を示す説明図である。 ローラ部同士の相関とこれらの仮想線を示す説明図である。 ローラ部同士の相関とこれらの仮想線を示す説明図である。 本発明の押圧ローラ装置による押圧時のマットの様子を示す説明図である。 従来のローラによる押圧時のマットの様子を示す説明図である。 繊維複合体の製造方法及びその装置の概要を示す説明図である。 図8に続く繊維複合体の製造方法及びその装置の概要を示す説明図である。 繊維複合体の製造方法の各工程を示す説明図である。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明の押圧ローラ装置、及び、本発明の繊維複合体の製造方法に用いられる押圧ローラ装置について説明する。
尚、以下では、回転軸の番号はこの番号の順に並んでいるものとして説明する。即ち、図1及び図2に例示されるように、第1の回転軸、第2の回転軸、第3の回転軸、第4の回転軸は、各々この順に配置されている。
更に、第Nの回転軸は「第N回転軸」、第N回転軸が備えるローラ部を「第Nローラ部」、第Nローラ部に設定される仮想線を「第N仮想線」、第Nローラ部の軌跡を「第N軌跡」のようにもいうものとする。
[1]押圧ローラ装置
上記「押圧ローラ装置(25)」(図1〜図6及び図9参照)は、繊維複合体の製造方法に用いられる装置であり、複数の回転軸251を備えるとともに、該回転軸251は各々複数のローラ部252を備え、
前記回転軸251のうち、第1の回転軸251aに備えられた各ローラ部252aの幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸251aに直交した第1仮想線Laを想定し、
前記第1の回転軸251aに隣接した第2の回転軸251bに備えられた各ローラ部252bの幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸251bに直交した第2仮想線Lbを想定した場合に、
前記第1仮想線Laと前記第2仮想線Lbとが重ならないように前記各ローラ部252が配置されている。
上記「回転軸(251)」は、ローラ部252に対してより小さい直径を有するとともに、1つの回転軸251が備える複数のローラ部252に対して共通した軸となる部分である。そして、押圧ローラ装置25は、この回転軸251を複数備える。更に、押圧ローラ装置25が備える回転軸251は、通常、互いに平行に配置されている。
回転軸251を複数備えることにより、マットを押圧する過程で加振を行うのと同様の効果を得ることができ、熱膨張性カプセルをマット内に効果的に分散させることができる。
尚、(1)回転軸251とローラ部252とは一体とされ、回転軸251の回転に伴ってローラ部252も同じ回転数で共に回転してもよい。また、(2)回転軸251とローラ部252とは別体とされ、回転軸251は回転することなく、マットに押圧された状態のローラ部252のみが前後運動に伴って回転する構造であってもよい。
上記「ローラ部(252)」は、マット14に接してマット14を押圧する表面を有する。このローラ部252は、1つの回転軸に複数備えられている。1つの回転軸251が備えるローラ部252の数は限定されず、例えば、2〜20とすることができる。また、1つの回転軸251に備えられた各ローラ部252は、回転軸251の回転に伴って、互いに同軸で回転する構造となっている。
更に、1つの回転軸251に対してローラ部252を複数有するとともに、第1仮想線Laと第2仮想線Lbとが重ならない配置とされている。
第1仮想線Laは、図2に示されるように、第1の回転軸251aに備えられた各ローラ部252aの幅方向の中央に位置するとともに、第1の回転軸251aに直交した仮想線である(図2参照)。同様に、第2仮想線Lbは、第2の回転軸251bに備えられた各ローラ部252bの幅方向の中央に位置するとともに、第2の回転軸251bに直交した仮想線である(図2参照)。
このように仮想線LaとLbとが重ならないよう各ローラ部が配置さることにより、隣接した回転軸同士が有する各々ローラ部間でのマットの咬み込みを防止できる。
同様に、3本以上の回転軸有する場合においても、第N仮想線と第N+1仮想線と、は重ならない配置とされている。但し、隣接しない回転軸のローラ部に設定される仮想線同士は重なってもよい。即ち、例えば、第N仮想線と第N+2仮想線とは重なってもよい(図2参照)。
更に、通常、第2ローラ部252bは、第1仮想線Laに重ならないように配置される(図2参照)。換言すれば、第1仮想線Laは、第2ローラ部252bによるマット上での第2軌跡Tb上に位置しない(図3参照、図3中の矢印はローラ部の進行方向)。即ち、ある回転軸のローラ部は、隣接した回転軸のローラ部に設定される仮想線と重ならないように配置される。これにより、より確実に、隣接した回転軸同士が有する各々ローラ部間でのマットの咬み込みを防止できる。
このことは、3本以上の回転軸を備える場合においても同様であり、第N+1ローラ部は、第N仮想線と重ならないように配置されることが好ましい。但し、3本以上の回転軸を備える場合において、第N+2ローラ部は、第N仮想線と重なるように配置されてもよい。即ち、第N仮想線は、第N+2軌跡上に位置してもよい。
また、第1ローラ部252aによるマット上での第1軌跡Taと、第2ローラ部によるマット上での第2軌跡Tbと、が重ならないように各ローラ部が配置されていることが好ましい(図3参照)。即ち、隣接した回転軸が各々備えるローラ部の軌跡が重複しないことが好ましい。また、これらの軌跡の間には隙間を生じないことが好ましい(例えば、第1軌跡Tbと第2軌跡Tbとの間に隙間を生じない)。
即ち、隣接した回転軸が各々備えるローラ部の軌跡は重複することなく、且つ、すべてのローラ部間に軌跡の欠損を生じないことが好ましい。これにより、満遍ない押圧ができ、熱膨張性カプセルのより良好な分散を得ることができる。
但し、第1軌跡と、第1回転軸に隣接しない回転軸が有するローラ部よる軌跡とは、重なってもよい。即ち、例えば、第N軌跡と第N+2軌跡とは重なってもよい。
また、隣接した回転軸251に備えられたローラ部252同士は、進行方向に対して隙間無く且つオーバーラップすることなく配置できる(図4においてD=0であることを意味する)他、隣接した回転軸251同士が備えるローラ部252は、その進行方向に離間されていてもよく(図4においてD>0であることを意味する)、オーバーラップしていてもよい(図5参照、図4におけるD<0であることを意味する)。このうちでは、離間されていることが好ましい。オーバーラップしている場合に比べて、離間されている場合には、熱膨張性カプセルを分散させる効果が高いからである。但し、この離間距離は、この隙間D(図4参照)にマットが侵入しない程度であることが好ましく、具体的には、マットの厚さの200%以下であることが好ましい。
また、ローラ部252の半径は特に限定されないが、回転軸251の半径とローラ部252の半径との差が、押圧するマットの平均厚さの50%以上(通常200%以下)であることが好ましい。この値が50%以上であることにより、より効果的に加振を行う作用が得られ、熱膨張性カプセルのマット内への分散性を向上させることができる。
更に、ローラ部252は、少なくとも直径20mm以上(通常、100mm以下)のものを用いることが好ましい。ローラの直径が20mm以上であれば、熱膨張性カプセルをマット内に押し込む作用が特に効果的に得られるからである。
上記押圧ローラ装置25は、ローラ部252がマットに対して結果的に回転すればよく、(1)マットが移動することなくローラ部252が移動してローラ部252が回転されてもよく、(2)ローラ部252が移動することなくマットが移動してローラ部252が回転されてもよく、更には(3)これらの両方が移動してもよい。これらのうちでは、特に(2)を選択することができる。
上記(2)の形態にあっては、回転軸251及びローラ部252以外にも他部を備えることができる。他部としては、図9に例示されるように、可動式台253とこれを可動する可動手段とを備えることができる。可動手段としては、例えば、モータ256とボールネジ254と可動式台253とを備えることができる。モータ256はボールネジ254を回転させて、このボールネジ254に連動された可動式台253がボールネジ254の回転に伴って移動させることができる。一方、回転軸251及びローラ部252は、押圧する際に過度な圧力の負荷を抑制する緩衝手段を備えることができる。緩衝手段としては、例えば、ローラ部252を回転可能に支持する支持部257を備えるとともに、支持部257の上方(支持部257を介してローラ部252を備える側と反対側)に緩衝装置(エアシリンダー等)258を備えることができる。
従来のローラ(全幅のローラ)1本のみ用いて押圧を行った場合には、上記咬み込みの問題を生じないものの、押圧して分散させる効率を向上させようと2本以上のローラを並列に用いると、図7(図中の矢印はマット14の排出方向)に示すように、2本のローラの間にマット14を咬み込んでしまう場合がある。このような場合には、2本目のローラ252bでマット14を押圧することができない。これは1本目のローラ252aで押圧した際にマット14の後端が上方へめくれ上がり、2本目のローラ252bの前でローラ間に咬み込んでしまうために生じるものと考えられる。
しかし、図6(図中の矢印はマット14の排出方向)に例示される本発明の構成では、第1ローラ部252aによって押圧された際に、第2回転軸251bのローラ部252bの存在しない部分ではマット14の後端がめくれ上がるが、第2ローラ部252bが存在する部分においてめくれが抑えられて、第1ローラ部252aと第2ローラ部252bとのローラ間にマット14が侵入することがない。更に加えて、図6に示すように互い違いのローラ部252が配置されている場合には、第1ローラ部252aで押圧されたマット14の部位は、次の第2回転軸251bの下では押圧されず、その後、第3ローラ部252cで押圧されることとなる。このように、互い違いにローラ部252が配置されている場合には、ローラ部252で抑えられ、次いで、押圧から開放されるという繰り返しにより、マット14を波打たせつつ、リズムよく押圧とその開放を繰り返すことができ、熱膨張性カプセルの分散性をとりわけよく向上させることができる。
[2]繊維複合体の製造方法
本発明の押圧ローラ装置を利用する繊維複合体の製造方法は、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、供給工程と、分散工程と、溶融工程と、膨張工程と、を備えており、
前記押圧ローラ装置は、複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを特徴とする。
即ち、本方法は、図10に示すように「供給工程」と、「分散工程」と、「溶融工程」と、「膨張工程」と、を備えてなり、その他、例えば、「成形工程」を備えることができる。尚、これらの工程のうちの供給工程及び分散工程はこの順に行う。溶融工程及び膨張工程は分散工程の後に行う。更に、溶融工程と膨張工程とは同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
上記「供給工程」は、補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する工程である。
上記「マット」は、補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とをマット状(不織布状)に混綿した成形体であり、通常、不織布を製造する乾式の各種混綿法を用いて得られる。混綿法としては、エアレイ法及びカード法等が挙げられるが、エアレイ法が好ましい。エアレイ法は補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とを空気流によってコンベア面上等に分散、投射して補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが相互に分散された堆積物を得る方法である。尚、上記マットには、上記堆積物、上記堆積物を2層又は3層以上積層し、交絡(ニードリング)した積層交絡物、及びこれらを圧縮してなる圧縮物等が含まれる。
本方法ではマットを湿式法(抄紙法等)で形成してもよく、乾式法で形成してもよいが、湿式法を用いた場合には高度な乾燥工程を要することになるため乾式法が好ましい。特に補強繊維として植物性繊維を用いる場合には、植物性繊維が吸水性を有するためにとりわけ乾式法が好ましい。
マットの目付及び厚さ等は特に限定されず、補強繊維の種類及び配合割合により種々のものとすることができる。例えば、補強繊維が植物性繊維である場合には、目付は400〜3000g/mが好ましく、600〜2000g/mがより好ましい。一方、補強繊維がガラス繊維である場合には、目付は300〜1000g/mが好ましく、350〜500g/mがより好ましい。
また、マットの厚さは10mm以上(通常50mm以下、更には10〜30mm、特に15〜25mm)とすることができる。
上記「補強繊維」は、得られる繊維複合体において補強材として機能する繊維材料である。この補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有することで、繊維複合体全体の強度を確保できる。この補強繊維の材質は特に限定されず、植物性繊維及び無機繊維が含まれる。
上記「植物性繊維」は、植物に由来する繊維である。植物から取りだした繊維及び植物から取りだした繊維を各種処理に供した繊維等が含まれる。
この植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等の各種植物体から得られた植物性繊維が挙げられる。この植物性繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフ(即ち、植物性繊維としてはケナフ繊維)が好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
また、上記植物性繊維として用いる植物体の部位は、特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
上記ケナフは、木質茎を有し、アオイ科に分類される植物である。このケナフには、学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
また、上記ジュートは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
上記植物性繊維は単用してもよく併用してもよい。
上記「無機繊維」としては、ガラス繊維(グラスウール等)及びカーボン繊維等が挙げられる。これらの無機繊維は単用してもよく併用してもよい。
更に、植物性繊維及び無機繊維は、いずれか一方のみを単用してもよく、植物性繊維と無機繊維とを併用してもよい。これらのうちでは補強効果に優れること及び取扱い性が良いことから植物性繊維が好ましく、無機繊維のなかではガラス繊維が好ましい。更に、これらのうちでも環境的観点から植物性繊維のうちのケナフ繊維が特に好ましい。
補強繊維の形状及び大きさは特に限定されないが、その繊維長は10mm以上であることが好ましい。これにより得られる繊維複合体に高い強度(曲げ強さ及び曲げ弾性率等、以下同様)を付与できる。この繊維長は10〜150mmがより好ましく、20〜100mmが更に好ましく、30〜80mmが特に好ましい。
また、その繊維径は1mm以下が好ましく、0.01〜1mmがより好ましく、0.02〜0.7mmが更に好ましく、0.03〜0.5mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、特に高い強度を有する繊維複合体を得ることができる。補強繊維として、上記の繊維長及び繊維径を外れるものを含んでもよいが、その繊維の含有量は、補強繊維の全体に対して0.5〜10質量%(特に0.5〜3質量%)であることが好ましい。これにより得られる繊維複合体の強度を高く維持できる。
尚、上記繊維長は平均繊維長を意味し(以下同様)、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。更に、上記繊維径は平均繊維径を意味し(以下同様)、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を、光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
上記「熱可塑性樹脂繊維」は、上記マットに熱可塑性樹脂繊維として含有され、溶融工程において溶融されて、補強繊維同士を結着させることができる成分である。
熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂等が挙げられる。このうち、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、並びに、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。アクリル樹脂はメタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂である。これらの熱可塑性樹脂は、補強繊維(特に補強繊維の表面)に対する親和性を高めるために変性された樹脂であってもよい。また、上記熱可塑性樹脂は単用してもよく併用してもよい。
上記変性された樹脂としては、例えば、補強繊維(補強繊維を構成する材料)に対する親和性を高めたポリオレフィンが挙げられる。より具体的には、補強繊維が植物性繊維である場合には、カルボキシル基又はその誘導体(無水物基等)を有する化合物により酸変性されたポリオレフィンを用いることが好ましい。更には、未変性のポリオレフィンと無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを併用することがより好ましく、未変性のポリプロピレンと無水マレイン酸変性ポリプロピレンとを併用することが特に好ましい。
また、この無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしては、低分子量タイプが好ましい。具体的には、例えば、重量平均分子量(GPC法による)が25000〜45000であることが好ましい。また、酸価(JIS K0070による)は20〜60であることが好ましい。本方法では、特に重量平均分子量25000〜45000且つ酸価20〜60である無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いることが好ましく、この無水マレイン酸変性ポリプロピレンを未変性のポリプロピレンと併用することがとりわけ好ましい。この併用においては変性ポリプロピレンと未変性ポリプロピレンとの合計を100質量%とした場合に、変性ポリプロピレンは1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%がより好ましい。この範囲ではとりわけ高い機械的特性を得ることができる。
これらの熱可塑性樹脂のなかでは、ポリオレフィン及びポリエステル樹脂が好ましい。 上記ポリオレフィンのなかでは、ポリプロピレンが好ましい。
上記ポリエステル樹脂としては、生分解性を有するポリエステル樹脂(以下、単に「生分解性樹脂」ともいう)が好ましい。この生分解性樹脂は、以下に例示される。
(1)乳酸、リンゴ酸、グルコース酸、3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体;これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル。
(2)ポリカプロラクトン、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体等のカプロラクトン系脂肪族ポリエステル。
(3)ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル。
これらのうち、ポリ乳酸、乳酸と、乳酸以外の他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体が好ましく、ポリ乳酸が特に好ましい。これらの生分解性樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、上記乳酸は、L−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
熱可塑性樹脂繊維の形状及び大きさは特に限定されないが、その繊維長は10mm以上であることが好ましい。これにより得られる繊維複合体に高い強度(曲げ強さ及び曲げ弾性率等、以下同様)を付与できる。この繊維長は10〜150mmがより好ましく、20〜100mmが更に好ましく、30〜80mmが特に好ましい。
また、その繊維径は0.001〜1.5mmが好ましく、0.005〜0.7mmがより好ましく、0.008〜0.5mmが更に好ましく、0.01〜0.3mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂繊維を切断させず、補強繊維と分散性よく交絡できる。なかでも補強繊維が植物性繊維である場合に特に適する。
マットを構成する補強繊維と熱可塑性樹脂繊維との割合は特に限定されないが、補強繊維と熱可塑性樹脂繊維との合計を100体積%とした場合に、補強繊維は10〜95体積%(好ましくは20〜90体積%、より好ましくは30〜80体積%)とすることが好ましい。この範囲では本方法による優れた軽量性と高強度性とを両立させやすいからである。
特に補強繊維が植物性繊維である場合にあっては、植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維との合計量を100質量%とした場合に、植物性繊維は10〜95質量%とすることが好ましく、20〜90質量%とすることがより好ましく、30〜80質量%とすることが特に好ましい。
尚、マットには、補強繊維及び熱可塑性樹脂繊維以外にも、又は、熱可塑性樹脂繊維内に添加剤(酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、着色剤等)が含まれてもよい。
上記「熱膨張性カプセル」は、熱可塑性樹脂からなる殻壁(カプセル)を有し、加熱により体積が膨張するものである。熱膨張性カプセルは、通常、殻壁内に収容された発泡剤(膨張成分)を有する。そして、熱膨張性カプセルが加熱されると発泡剤が所定の温度で膨張し始め、更に、殻壁が軟化されることにより、熱膨張性カプセル全体の体積が増加する仕組みを有する。
この熱膨張性カプセルの形状は特に限定されないが、通常、略球形である。尚、この熱膨張性カプセルは膨張した後、破泡して殻壁は不定形化してもよく、破泡することなく殻壁がカプセル形状を維持してもよい。更に、発泡剤を用いる場合、その発泡剤は、殻壁の外部に放出されてもよく、膨張後の殻壁内に一部又は全部が残存されてもよい。
また、上記熱膨張性カプセルの殻壁を構成する熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず、上記熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂と同じであってもよく異なっていてもよい。即ち、上記熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂として前述した各種樹脂を用いることができる。その他にも、不飽和ニトリル化合物に由来する構成単位を有する共重合体及び単独重合体(以下、単に「アクリロニトリル系樹脂」ともいう)を用いることができる。この不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられる。アクリロニトリル系樹脂を構成する不飽和ニトリル化合物に由来する構成単位以外の他の構成単位は、どのような化合物に由来してもよいが、例えば、不飽和酸(アクリル酸等)、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、脂肪族ビニル化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン及び架橋性単量体等が挙げられる。これらの単量体は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。具体的な共重合体としては、例えば、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体等が挙げられる。
上記発泡剤は、加熱により体積膨張する成分である。この発泡剤としては、低沸点(−50〜150℃程度)の炭化水素類が挙げられる。具体的には、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの発泡剤のなかでは、脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数が4〜10である脂肪族炭化水素が特に好ましい。尚、発泡剤量は限定されないものの、例えば、熱膨張性カプセル全体に対して5〜60質量%(好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜30質量%)とすることができる。
この熱膨張性カプセルの膨張倍率(膨張後平均粒径/膨張前平均粒径)は特に限定されないが、例えば、1.2〜5倍とすることができる。
また、上記熱膨張性カプセルの膨張開始温度は特に限定されず、殻壁を構成する熱可塑性樹脂の種類により選択できる。また、熱膨張性カプセルの膨張開始温度と、マットの熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の軟化温度とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。この膨張開始温度の高低は、例えば、本方法の工程順により選択することができる。即ち、(1)熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程を先に行い、熱膨張性カプセルを膨張する膨張工程を後に行う場合には、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の軟化温度を、熱膨張性カプセルの膨張開始温度よりも低くすることが好ましい。一方、(2)熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、熱膨張性カプセルを膨張する膨張工程と、を同時に行う場合には、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の軟化温度と熱膨張性カプセルの膨張開始温度とを同じにすることができる。
例えば、上記(1)の場合、即ち、溶融工程と膨張工程とをこの順で行う場合には、熱膨張性カプセルの膨張開始温度は、熱可塑性樹脂繊維の軟化温度に対して0〜+60℃(より好ましくは+10〜+40℃)の範囲とすることが好ましい。より具体的には、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のプロピレン系重合体である場合、その軟化温度は140〜170℃である。この場合、熱膨張性カプセルの膨張開始温度は、上記温度差を有した上で110〜230℃が好ましく、140〜210℃がより好ましい。更に、最大膨張温度は170〜235℃が好ましく、190〜210℃がより好ましい。
一方、上記(2)の場合、即ち、溶融工程と膨張工程と同時に行う場合には、熱膨張性カプセルの膨張開始温度は、熱可塑性樹脂繊維の軟化温度に対して−30〜+60℃(より好ましくは−10〜+40℃)の範囲とすることが好ましい。
本発明においては、熱膨張性カプセルを用いることで軽量化と高強度化とを同時に極めて効果的に達することができる。その理由は定かではないが以下のように考えることができる。即ち、分散工程においてマットの補強繊維同士で形成された間隙に均一に分散して配置された熱膨張性カプセルは、膨張工程で加熱されて内包された発泡剤が膨張すると共に、殻壁が軟化されて上記間隙内で押し広げられる。そして、殻壁は間隙を構成している補強繊維に押し付けられ、加熱温度が上昇されて殻壁を構成する熱可塑性樹脂が溶融することで補強繊維同士を間隙の内側から広範囲に結着する。即ち、熱可塑性樹脂繊維が溶融されると補強繊維との交絡点で結着されるのに対して、熱膨張性カプセルは複数の補強繊維同士を殻壁により面状に一気に結着できる。従って、少量の熱可塑性樹脂を効率よく補強繊維の結着に利用でき、補強繊維の結着に寄与される熱可塑性樹脂量を減少させつつ、補強繊維同士の結着量が増加されて高強度化されるものと考えられる。
上記供給工程では、各熱膨張性カプセルは、マットの表裏いずれか一面に供給される。この供給方法は、マット表面に対して熱膨張性カプセルを供給できればよく、どのような方法を用いてもよい。例えば、(1)静電塗布法を用いて、熱膨張性カプセルとマットの供給面とを各々異なる極性に帯電させることで、熱膨張性カプセルをマットの供給面に対して供給してもよく、(2)マットの供給面を下方に配置し、熱膨張性カプセルを上方から落下させて供給してもよく、(3)気流に熱膨張性カプセルを乗せてマットの供給面に付着させることで供給してもよく、(4)更にその他の方法で供給してもよい。また、これらの(1)〜(4)の方法は併用してもよい。
これらの方法のなかでは、上記(1)又は(2)が好ましく、更には、供給ロスを減らすことができるために上記(1)が特に好ましい。また、特にマットの補強繊維として植物性繊維を用いる場合にはとりわけ上記(1)の方法が好ましい。植物性繊維は無機繊維と異なり、平均10%程度の水分率を有することから、より容易に帯電させることができ、熱膨張性カプセルをより確実に付着させることができるからである。
上記(1)の供給方法では、静電塗布する前の熱膨張性カプセルは、陽極及び陰極のいずれに帯電させてもよいが、陽極に帯電させた場合、マットは対極である陰極に帯電させる。なかでも、直流電圧により帯電させた熱膨張性カプセルを、接地したマットの供給面に対して吐出し、静電引力により付着させることが好ましい。
また、静電塗布を行う場合に用いる静電塗布装置の形態は特に限定されないが、例えば、(1)熱膨張性カプセルを帯電させるための帯電手段と、帯電された熱膨張性カプセルをマットに対して吐出するための吐出手段と、を備えた装置を用いることができる。また、(2)帯電されていない熱膨張性カプセルを吐出するための吐出手段と、吐出された熱膨張性カプセルに、上記吐出手段の外部に設けられて熱膨張性カプセルを帯電させる帯電手段とを備えた装置を用いることができる。これらの装置はいずれを用いてもよく、一方のみを用いてもよく併用してもよい。また、上記帯電手段としては、コロナ帯電装置、摩擦帯電装置等が挙げられる。これらについても単用しても併用してもよい。
更に、各熱膨張性カプセルの塗布に際して、その吐出量、上記マットへのエア流量、塗布時間等は、適宜、調整される。なかでも、静電塗布を行う際のエア流量は、1〜10m/時間とすることが好ましく、3〜6m/時間とすることがより好ましい。エア流量が上記範囲にあると、上記熱膨張性カプセルを、ロスを低減させつつマットに効率よく保持させることができ、最終的に得られる繊維複合体が軽量性に優れるとともに、剛性にも優れる。
上記(2)の方法としては、いわゆるシンター機を用いる供給方法が挙げられる。即ち、シンター機とは、表面にローレット加工等による凹凸加工が施されたローラの上方から熱膨張性カプセルを落下させると、熱膨張性カプセルはローラ表面の上記凹部に捉えられ、ローラが回転して当該凹部が下方に向くことで落下される仕組みを有する機械である。このシンター機では凹部の大きさと密度により供給量を調整することができる。
この供給工程における各熱膨張性カプセルの供給量は特に限定されず、目的により適宜の量とすればよいが、通常、マット全体を100質量%とした場合に、各熱膨張性カプセルを合計で1〜15質量%供給することが好ましい。ここでいう供給量とは実際にマットに保持された量であり、供給後に飛散したり、マットを透過して下方に落下したり、回収された熱膨張性カプセルは含まれていない。この供給量は3〜12質量%とすることがより好ましく、更に好ましくは5〜10質量%である。
更に、熱膨張性カプセルの供給を行うマットの上記一面は、マットの厚み方向を上下に配置した場合に、通常、上面である。即ち、各熱膨張性カプセルはマットの上面に供給することが好ましい。これにより熱膨張性カプセルの供給方法に関わらず供給し易くなり、更に供給された後に熱膨張性カプセルが飛散することを抑制でき、結果として熱膨張性カプセルのロスを抑えることができる。
尚、上記熱膨張性カプセルの供給は、複数種類の熱膨張性カプセルを混合して熱膨張性カプセル混合体としたものを供給してもよいし、熱膨張性カプセルの種類毎に分けて供給してもよい。
上記「分散工程」は、マット14の一面を、押圧ローラ装置25によって押圧することにより、マットの一面に供給された熱膨張性カプセルをマットの他面側へ向かって分散させる工程である。即ち、例えば、マット14の上面に熱膨張性カプセルを供給した場合には、マット14の上面を押圧ローラ装置25によって押圧して、熱膨張性カプセルをマットの下面側へ向かって分散させる工程である。
上記「押圧」は、押圧ローラ装置25が備えるローラ部252をマット14の一面に当接するとともにローラ部を回転させながら、マット14の一面を押さえつけることである。マットを一面から押圧することで、マットの一面に供給された熱膨張性カプセルがマット内に押し込まれる。
押圧ローラ装置25により押圧をする際には、押圧ローラ装置25をマット14に対して押し付けて押圧してもよく、マット14を押圧ローラ装置25に対して押し付けて押圧してもよい。更に、ローラ部252の回転は、押圧ローラ装置25をマット14に対して移動させることでローラ部252を回転させてもよく、マット14を押圧ローラ装置25に対して移動させることでローラ部252を回転させてもよい。マット14を移動する場合には、マット14を載置した固定台やコンベアを移動させることでこれらの移動を行うことができる。
更に、押圧を行う際には、同時にマット14に対して加振を行うことができる。この加振は、押圧ローラ装置25自体を振動させてマット14を加振してもよく、マット14を載置した固定台又はコンベア等を振動させてマット14を加振してもよい。
押圧ローラ装置25による押圧の条件は特に限定されないが、ローラ部252直下におけるマット厚が、マット全体の厚さの5〜80%(より好ましくは10〜70%、更に好ましくは20〜50%)となるように押圧を行うことが好ましい。上記範囲では、熱膨張性カプセルをマット内に押し込む効果がとりわけ高い。
上記「溶融工程」は、マットを構成する熱可塑性樹脂繊維を溶融する工程である。また、上記「膨張工程」は、マット内に分散された熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる工程である。
これら2つの工程は、順不同で行うことができる。即ち、(1)溶融工程を先に行い、次いで、膨張行程を後に行ってもよく、(2)溶融工程と膨張工程とを同時に行ってもよく、(3)膨張工程を先に行い、次いで、溶融工程を後に行ってもよい。これらのなかでは、上記(1)又は(2)が好ましい。
更に、上記(1)の場合であって、且つ、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の軟化点が、熱膨張性カプセルの膨張開始温度よりも低い場合には、溶融工程は、加圧して熱膨張性カプセルの膨張を抑制しつつ、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の軟化点以上且つ熱膨張性カプセルの膨張開始温度を超えない温度に加熱して行うことで、熱膨張性カプセルを膨張させずにマット内に残存させながら、補強繊維が熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂により結着されてなる成形体(マット及びボード等)を得ることができる。即ち、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂により結着された補強繊維の間隙に熱膨張性カプセルが分散して含有された成形体(以下、「膨張前成形体」という)を得ることができる。この膨張前成形体は、膨張させた状態の膨張後成形体に比べると体積が小さいために、輸送コスト及び保存コスト等を低減できる。更に、この膨張前成形体を、その後、膨張工程に供した場合は、上記(2)の場合に比べるとより厚さ及び密度等をコントロールし易い。
この溶融工程では、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂を溶融することができればよく、通常、少なくとも加熱を行う。更に、溶融工程では、加熱と併せて加圧を行うこともできる。加圧を行うことで、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂と補強繊維との結着性をより向上させると共に、得られる繊維複合体の厚さを自在に制御することができる。また、上記(1)のように溶融工程を先に行い、次いで、膨張行程を後に行う場合には、熱膨張性カプセルの膨張をより確実に抑止できる。加熱の際の加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の種類により適宜の温度(少なくとも熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の軟化点以上)とすることができる。更に、加圧を行う際には、加熱及び加圧のいずれを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。また、加圧を行う際の加圧圧力は、例えば、1〜10MPaとすることができ、1〜5MPaが好ましい。
上記膨張工程では、熱膨張性カプセルを膨張させることができればよく、加熱条件等は特に限定されない。
また、膨張工程では、得られる繊維複合体の成形を同時に行うことができる。即ち、厚さ及び形状を制御することができる。例えば、膨張前成形体を膨張工程において十分に膨張させた上で、膨張後成形体を加圧圧縮して所望の厚さの繊維複合体を得ることもできる(即ち、成形工程を備える)が、膨張工程において、熱膨張性カプセルを膨張させる際に所望厚さのクリアランスを維持できる金型を用いて膨らみを適度に拘束しつつ、熱可塑性樹脂の温度を低下させることで、所望の厚さの繊維複合体を得ることができる。更に、金型に所望の凹凸形状を付与することで、凹凸形状を有する繊維複合体を得ることもできる。
本発明の製造方法により得られる繊維複合体の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も特に限定されない。この繊維複合体は、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]実施形態1
以下の実施形態1の押圧ローラ装置を用意した。直径30mm且つ幅1400mmである回転軸251が軸中心間距離45mmで4本の平行に配置されている。そして、各回転軸251には直径40mm且つ幅100mmのローラ部252が7ヶ所設けられている(即ち、同軸の各ローラ部252の間には幅100mm以上の間隙が形成されている)。更に、第1ローラ部252aと第2ローラ部252bと、第2ローラ部252bと第3ローラ部252cと、第3ローラ部252cと第4ローラ部252dと、の各間には5mm(図4におけるD=5mm)の隙間が形成されている。
また、ローラ部252のうち、第1ローラ部252aの第1仮想線Laと、第2ローラ部252bの第2仮想線Lbとは、重ならないように配置されている。同様に、第2仮想線Lbと第3仮想線Lcと、第3仮想線Lcと第4仮想線Ldと、も各々重ならない配置である。更に、第1ローラ部252aによるマット上での第1軌跡Taと、第2ローラ部252bによるマット上での第2軌跡Tbと、が重ならないように配置されている。
[2]実施形態2
各回転軸251に直径40mm且つ幅200mmのローラ部252が3又は4ヶ所設けられている(即ち、同軸の各ローラ部252の間には幅200mmづつの間隙が形成されている)以外は、実施形態1と同じである実施形態2の押圧ローラ装置を用意した。
[3]実施形態3
各回転軸251に直径40mm且つ幅50mmのローラ部252が14ヶ所設けられている(即ち、同軸の各ローラ部252の間には幅50mmづつの間隙が形成されている)以外は、実施形態1と同じである実施形態2の押圧ローラ装置を用意した。
[4]比較形態1
以下の比較形態1として、直径40mm且つ幅1400mmの1本のローラからなる押圧ローラ装置を用意した。
[5]繊維複合体の製造
繊維複合体を以下のようにして製造した(図8〜図10参照)。
〈1〉実施例1の繊維複合体の製造(実施形態1の押圧ローラ装置を使用)
(1)マットの製造
補強繊維として植物性繊維(ケナフ繊維)を用いたマットを、図8に示すマット製造装置を用いて製造した。このマット製造装置では、植物性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混合繊維1及び4を2機のエアレイ装置(第1エアレイ装置3及び第2エアレイ装置6)を用いて2つのウェブ(第1ウェブ7及び第2ウェブ8)を調製し、これらのウェブを積層した後、ニードルパンチ(第1交絡手段11及び第2交絡手段12)を行って2層のウェブ同士を交絡させて1層化した後、裁断装置13において裁断してマット14を製造する装置である。
また、このマット製造装置には、更に、図9に示すように、熱膨張性カプセル23を供給する熱膨張性カプセル供給装置22が接続され、その後、この熱膨張性カプセル23をマット14内に分散させる押圧ローラ装置25が連結されて、熱膨張性カプセル23が内部に分散されたマット15を得ることができる。
具体的には、補強繊維として、植物性繊維(ケナフ繊維、平均径0.09mm、平均繊維長70mm)を用い、熱可塑性樹脂繊維として、ポリプロピレン繊維(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックSA01」、平均径0.02mm、平均繊維長51mm)を用い、これらを質量比40:60で混合し、得られた混合物(ケナフ繊維・ポリプロピレン繊維混合物)1、4を第1貯蔵部(図示せず)及び第2貯蔵部(図示せず)に収容した。次いで、収容された混合物1、4を、第1貯蔵部及び第2貯蔵部に接続された第1繊維供給部2及び第2繊維供給部5から、第1エアレイ装置3及び第2エアレイ装置6に一定の供給量で連続的に供給し、その後、3.2m/秒の速度で回動する搬送コンベア10上に堆積させ、各々の厚さが約75mmの第1ウェブ7(下層側ウェブ)と第2ウェブ8(上層側ウェブ)とが積層されてなる厚さ約150mmの積層ウェブ9を形成した。
次いで、第1交絡手段(ニードルパンチ加工装置)11を用いて、搬送される積層ウェブ9の上方から、即ち、第2ウェブ8の側(上面側)から、針密度70本/cm、針深度10mmの条件でニードリングした。そして、同条件にて、第2交絡手段(ニードルパンチ加工装置)12を用いて、積層ウェブ9の下方から、即ち、第1ウェブ7の側(底面側)から同条件でニードリングし、厚さ約8mm、目付1000g/mの繊維マットを作製した。その後、カッター13により繊維マットを裁断し、マット14(1300×800×8mm)を得た。
(2)供給工程
上記(1)で得られたマット14は、マット製造装置に連結された熱膨張性カプセル供給装置22へ引き続いて搬送される(図9及び図10参照)。この熱膨張性カプセル供給装置22では、マット14の上面に対して熱膨張性カプセル23が供給する。
本実施例では、熱膨張性カプセル供給装置22として静電塗布装置が用いられており、直流高電圧により帯電された熱膨張性カプセル23をスプレー(吐出)して、静電引力によりマット14の一面に供給・付着させることができる。具体的には、マット14の上面に熱膨張性カプセル(平均粒径50μm、発泡開始温度200〜210℃)を、静電塗装装置{(ランズバーグ・ゲマ社製、品名「オプティフレックス1S(撹拌式)ハンドガンユニット」}を用いて静電塗布した。
塗布条件は、ガンヘッド先端部(図示省略)からマット14までの距離を約30cmとし、塗布ガン印可電圧を−100kV、電流値を22μA、エア流量を4.0m/時間、吐出量を40%、リンスエアーを0.1m/時間、搬送コンベア21の搬送速度3m/分とした。この熱膨張性カプセル23の塗布量は、マット14に対して6質量%である。
(3)分散工程
上記(2)で熱膨張性カプセル23が供給されたマット14を、上記[1]実施形態1の押圧ローラ装置25を用いて分散工程に供した。具体的には、押圧ローラ装置25により、マット14の厚みが50%にまで圧縮される圧力(0.4MPa)で押圧する。更に、その間、マット14は、ボールネジ254に連動されて水平移動が可能な可動式台253に固定された状態で、モータ256を動力とするボールネジ254の回転に伴って速度6m/分で10往復分の往復運動(水平移動)がなされる。この往復運動に伴いローラ部252が回転しながら押圧することとなり、マット14内に熱膨張性カプセルが分散される。尚、回転軸251及びローラ部252は、支持台257に回転可能に支持されるとともに、支持台の上方には緩衝装置としてエアシリンダ258を備え、過度な押圧負荷を抑制している。
(4)溶融工程
上記(3)で得られた熱膨張性カプセル23が分散されたマット15をテフロンシート(厚さ;0.3mm)に挟み、加熱プレス装置61の平板金型内で溶融工程に供した。この加熱プレスは、型温度210℃、プレス圧力1MPa、加熱時間60秒の条件にて行った。尚、この際、被加熱プレス物の内部温度は210℃まで上昇させた。
その後、冷却プレスにより、2MPaの圧力で25℃になるまで60秒間冷却して、板厚2.3mm、目付1.0kg/mの膨張前繊維複合体16を得た。即ち、この膨張前繊維複合体内部では、熱可塑性樹脂繊維は溶融されて補強繊維同士を結着した状態にあるものの、加圧により熱膨張性カプセル23は膨張されていない状態にある。
(5)膨張工程及び成形工程
上記(4)で得られた膨張前繊維複合体16を、235℃に設定されたオーブン62で加熱して(加熱時間;120秒)、熱膨張性カプセル23を膨張させた後、冷却プレス63により、2MPaの圧力で25℃になるまで60秒間冷却して、板厚4mm、目付1.0kg/mの実施例1の繊維複合体17を得た。
〈2〉実施例2の繊維複合体の製造(実施形態2の押圧ローラ装置を使用)
上記〈1〉(3)分散工程において、上記[2]実施形態2の押圧ローラ装置25を用いたこと以外は、上記〈1〉と同様にして実施例2の繊維複合体17を製造した。
〈3〉実施例3の繊維複合体の製造(実施形態3の押圧ローラ装置を使用)
上記〈1〉(3)分散工程において、上記[3]実施形態3の押圧ローラ装置25を用いたこと以外は、上記〈1〉と同様にして実施例3の繊維複合体17を製造した。
〈4〉比較例1の繊維複合体の製造(比較形態1の押圧ローラ装置を使用)
上記〈1〉(3)分散工程において、上記[4]比較形態1の押圧ローラ装置25を用いるとともに、マット14の往復運動を20往復分としたこと以外は、上記〈1〉と同様にして比較例1の繊維複合体17を製造した。
[6]実施例1〜3及び比較例1の繊維複合体の機械的特性
JIS K7171に準じて、最大曲げ荷重を測定した。この測定に際しては、含水率約10%の状態における試験片(長さ150mm、幅50mm及び厚さ4mm)を用いた。そして、試験片を支点間距離(L)100mmとした2つの支点(曲率半径5.0mm)で支持しながら、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分にて荷重の負荷を行って特性の測定を行った。その結果を下記に示す。
「最大曲げ荷重」
実施例1;50.1N (往復数10回、ローラ部幅100mm、回転軸数4本)
実施例2;49.2N (往復数10回、ローラ部幅200mm、回転軸数4本)
実施例3;49.9N (往復数10回、ローラ部幅 50mm、回転軸数4本)
比較例1;48.7N (往復数20回、ローラ部幅500mm、回転軸数1本)
[7]実施例及び比較例の効果
実施例1〜3及び比較例1において、いずれもローラ部252によるマット14上の軌跡の総距離は同じとなり、実施例1〜3及び比較例1の最大曲げ荷重は同等となった。しかし、押圧ローラ装置25による往復回数は実施例1〜3において10回であるのに対して、比較例1では20回と多い。即ち、同じ最大曲げ荷重を得るために要する往復回数は、実施例1〜3では比較例1の半分で済むことが分かる。このことから、本発明の押圧ローラ装置25を用いた場合には、より短時間で従来と同等に熱膨張性カプセル23をマット14内に分散させることができることが分かる。即ち、本発明の押圧ローラ装置25は、熱膨張性カプセル23のマット14内への分散効率に優れ、より短時間で高効率に熱膨張性カプセル23の分散を行うことができる。更に、押圧工程中におけるマット14の咬み込みを防止できる。
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本発明をここに掲げる開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
本発明の繊維複合体の製造方法及び押圧ローラ装置は、自動車等の車両関連分野、船舶関連分野、航空機関連分野、建築関連分野等において広く利用される。本発明の方法及び本発明の装置から得られた繊維複合体は、上記分野における内装材、外装材、構造材等として好適である。このうち上記車両関連分野のなかでも、自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥等)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
1;混合物、2;第1繊維供給部、3;第1エアレイ装置、4;混合物、5;第2繊維供給部、6;第2エアレイ装置、7;第1ウェブ、8;第2ウェブ、9;積層ウェブ、10;搬送コンベア、11;第1交絡手段(第1ニードリング装置)、12;第2交絡手段(第2ニードリング装置)、13;カッター、14;マット、15;熱膨張性カプセル分散マット、16;膨張前繊維複合体、17;繊維複合体(膨張後繊維複合体)、21;搬送コンベア、22;粉体塗布手段(熱膨張性カプセル供給装置)、23;熱膨張性カプセル、
25;押圧ローラ装置、
251、251a、251b、251c、251d;回転軸、
252、252a、252b、252c、252d;ローラ部、
253;可動式台、254、ボールネジ、256;モータ、257;支持台、258;エアシリンダ、
61;溶融手段、62;膨張手段、63;成形手段。

Claims (4)

  1. 補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
    前記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
    前記マットの一面を、押圧ローラ装置によって押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
    前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
    前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えており、
    前記押圧ローラ装置は、複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
    前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
    前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
    前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを特徴とする繊維複合体の製造方法。
  2. 前記第1の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第1軌跡と、前記第2の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第2軌跡と、が重ならないように前記各ローラ部が配置されている請求項1に記載の繊維複合体の製造方法。
  3. 補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
    前記マットの一面を、押圧ローラ装置によって押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
    前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
    前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えて、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有した繊維複合体を製造する方法に用いられる前記押圧ローラ装置であって、
    複数の回転軸を備えるとともに、該回転軸は各々複数のローラ部を備え、
    前記回転軸のうち、第1の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第1の回転軸に直交した第1仮想線を想定し、
    前記第1の回転軸に隣接した第2の回転軸に備えられた各ローラ部の幅方向の中央に位置するとともに、前記第2の回転軸に直交した第2仮想線を想定した場合に、
    前記第1仮想線と前記第2仮想線とが重ならないように前記各ローラ部が配置されていることを特徴とする押圧ローラ装置。
  4. 前記第1の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第1軌跡と、前記第2の回転軸に備えられた各ローラ部による前記マット上での第2軌跡と、が重ならないように前記各ローラ部が配置されている請求項3に記載の押圧ローラ装置。
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