JP2012223680A - ロッド塗工装置およびロッド塗工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ウエブに弛みがあった際の,塗布液の不均一塗布を改善するロッド塗工装置およびロッド塗工方法を提供すること。
【解決手段】ロッド塗工装置10は,ウエブ30をロッド2に対向させ,ウエブ30の走行およびロッド2の回転によって塗布液Bをウエブ30に塗布する。そして,ウエブ30の走行中,ロッド2を支持する塗布液供給槽3および塗布液供給槽3を支持する支持台4を,ウエブ30の幅方向の一方の端部と他方の端部とが互いに異なる高さとなるように,上下方向に揺動可能に支持する。
【選択図】 図4
【解決手段】ロッド塗工装置10は,ウエブ30をロッド2に対向させ,ウエブ30の走行およびロッド2の回転によって塗布液Bをウエブ30に塗布する。そして,ウエブ30の走行中,ロッド2を支持する塗布液供給槽3および塗布液供給槽3を支持する支持台4を,ウエブ30の幅方向の一方の端部と他方の端部とが互いに異なる高さとなるように,上下方向に揺動可能に支持する。
【選択図】 図4
Description
本発明は,連続走行するウエブの表面にロッドを用いて塗布液を塗布するロッド塗工装置およびロッド塗工方法に関する。
従来から,連続走行するウエブの表面に,塗布液を塗布する技術として,円柱状のバーやローラ等に代表されるロッドを利用するロッド塗工技術が知られている。このロッド塗工技術を利用したロッド塗工装置は,ウエブの表面に塗布液を供給する供給系と,供給系の下流に位置し,過剰な塗布液を掻き落として塗布膜を所定の厚さに調節する調節系とを備えている。すなわち,供給系によって塗布液を過剰に塗布し,調節系によって塗布膜の厚さを調節することで,所定の膜厚の塗布膜をウエブの表面に形成する(例えば,特許文献1)。この他,1つのロッド塗工ヘッドによって,塗布液をウエブの表面に塗布するロッド塗工装置も知られている(例えば,特許文献2)。
上記のロッド塗工技術は,例えば,2次電池に使用される電極板の製造過程で利用される。この場合,例えば,圧延加工によって作製された基材(Cu箔あるいはAl箔)に活物質ペーストを塗布する際,あるいは活物質ペーストを塗工するにあたってバインダをプレ塗工する際に利用される。
しかしながら,前記した従来のロッド塗工技術には,次のような問題があった。すなわち,圧延加工によって作製された基材には,圧延装置のロールの歪み等に起因すると考えられる部分的な弛みが存在する。この弛みが存在する部分では,ロッドの基材への圧力が変化し,塗布液が多く塗布される傾向にある。そのため,塗布液の均一塗布の妨げになっている。
本発明は,前記した従来のロッド塗工技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,ウエブに弛みがあった際の,塗布液の不均一塗布を改善するロッド塗工装置およびロッド塗工方法を提供することにある。
この課題の解決を目的としてなされたロッド塗工装置は,連続走行するウエブの表面に塗布液を塗布するロッド塗工装置であって,前記ウエブの幅方向に沿って前記ウエブと対向し,回転しながら前記塗布液を前記ウエブに塗布するロッドと,前記ロッドを支持し,前記塗布液を貯蔵し,前記ロッドに前記塗布液を供給する塗布液供給槽と,前記塗布液供給槽を,前記ウエブの幅方向の一方の端部と他方の端部とが互いに異なる高さとなるように上下方向に揺動可能に支持する支持機構とを備えることを特徴としている。
本発明のロッド塗工装置は,棒状部材であるロッドをウエブに対向させ,ウエブの走行およびロッドの回転によって塗布液をウエブに塗布する。そして,ロッドを支持する塗布液供給槽を,ウエブの幅方向の一方の端部と他方の端部とが互いに異なる高さとなるように上下方向に揺動可能に支持する。すなわち,本発明のロッド塗工装置は,ウエブの走行中,塗布液供給槽が上下方向に遥動することができる。これにより,例えばロッドのウエブへの圧力が変化した場合,より具体的にはウエブの表面に弛みがあった場合,その圧力の変化に追従して塗布液供給槽が上下移動することで,その圧力をウエブの幅方向に一定にすることができる。その結果,塗布液がウエブの幅方向に均一に塗布されることになる。
塗布液供給槽を遥動可能に支持する態様としては,例えば,塗布液供給槽を支持する支持機構を備え,その支持機構は,設置面と接する底面が半円形に膨らんだ形状であり,その底面の頂部を支点としてシーソー式に上下移動するとよい。このようなシーソー式の移動機構では,ロッドのウエブへの圧力の変化に応じて自動的に上下移動することから,制御が不要である。さらに,ロッドの真直性を維持したままロッドを上下に遥動できる。
また,本発明のロッド塗工装置は,前記ロッドを回転駆動する駆動部を備え,前記駆動部は,前記支持機構に支持され,前記ロッドの上下移動に追従するとよい。このような構成にすることで,ロッドと駆動部との結合部付近であっても,ロッドのウエブへの圧力を一定にすることができ,塗布液が幅方向により均一に塗布されることになる。
また,本発明のロッド塗工装置の前記ロッドは,少なくとも表面が柔軟性を有する樹脂で形成されるとよい。ロッドの表面が柔軟に変形可能であることから,ウエブへのより密接した追従が可能になる。
また,本発明のロッド塗工装置は,前記ウエブと前記ロッドとの間に位置し,前記ウエブの非塗工部をマスクするマスク部材を備え,前記マスク部材の前記ウエブの塗工領域との境界となる側面には,前記ウエブの搬送方向に沿って切欠きが設けられているとよい。マスク部材によってウエブの幅方向の塗布を規制すると,そのマスク部材と塗布層との境界で液溜まりが生じやすい。マスク部材の側面に切欠きを設けることで,塗布液がその切欠きに流れ,塗工領域の端部の液溜まりが発生し難くなる。
切欠きの形状としては,例えば,切欠きの深さを,前記ウエブの進行方向の下流側に向かって深くするとよい。このような形状とすることで,塗布液を切欠きに流れ易くすることができる。
本発明によれば,ウエブに弛みがあった際の,塗布液の不均一塗布を改善するロッド塗工装置およびロッド塗工方法が実現される。
以下,本発明にかかるロッド塗工装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,以下の形態では,リチウムイオン二次電池の電極板を製造する塗工システムに利用されるロッド塗工装置として本発明を適用する。
本形態の塗工システムでは,リチウムイオン二次電池の電極板の製造に際して,電極活物質層を形成するための塗工材を2種類の材料に分け,順次,帯状の電極板の基材(ウエブ)上に塗工する。
具体的に,第1の塗工ステップでは,基材(正極板であれば,例えばアルミ箔,負極板であれば,例えば銅箔)に水系バインダ(例えばSBR(スチレン/ブタジエン系ポリマ)液)を塗工する。その後,第2の塗工ステップでは,そのバインダ上にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質を含む合材(正極活物質としては,例えば,ニッケル酸リチウム(LiNiO2),マンガン酸リチウム(LiMnO2),コバルト酸リチウム(LiCoO2),負極活物質としては,例えば,非晶質炭素,難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,黒鉛等の炭素系物質)を塗工する。この塗工システムでは,1層目を乾燥させることなく2層目の塗工を行うことで,塗工された2種類の材料はある程度混合する。
[塗工システムの構成]
続いて,本形態の塗工システムの全体構成について説明する。本形態の塗工システム100は,図1に示すように,第1の塗工ステップで利用されるロッド塗工装置10と,第2の塗工ステップで利用されるダイ塗工装置20とを備えている。
続いて,本形態の塗工システムの全体構成について説明する。本形態の塗工システム100は,図1に示すように,第1の塗工ステップで利用されるロッド塗工装置10と,第2の塗工ステップで利用されるダイ塗工装置20とを備えている。
被塗工材である帯状の基材(以下,「ウエブ30」とする)は,始めに,ロッド塗工装置10に搬送され,バインダが塗布されることで,その表面に薄膜のバインダ層が形成される。そして,バインダが塗布された後,ダイ塗工装置20に搬送され,活物質を含むペースト材が塗布される。そして,ペースト材が塗布された後,このペースト材がバインダと混ざり合うことで,ウエブ30上に電極活物質層が形成される。
また,塗工システム100は,ウエブ30をロッド塗工装置10に送り出す巻出しロール50と,ダイ塗工装置20から送り出されたウエブ30を巻き取る巻取りロール60とを備えている。巻出しロール50に巻回されているウエブ30は,圧延で作製されている。そのため,ウエブ30の表面には,圧延ロールの偏心や歪みに起因する弛みが生じていることが多い。
第1の塗工ステップで利用されるロッド塗工装置10は,リチウムイオン二次電池の電極板の製造に利用される装置であり,ウエブ30上に極薄のバインダ層を形成するものである。ロッド塗工装置10の詳細については後述する。
第2の塗工ステップで利用されるダイ塗工装置20は,リチウムイオン二次電池の電極板の製造に利用される一般的な装置であればよい。ダイ塗工装置20では,バックアップローラによってウエブ30を張架することから,ウエブ30表面の弛みは殆ど消失する。そのため,ウエブ30表面の弛みに起因する問題は生じ難い。なお,第2の塗工ステップに利用する塗工装置は,活物質を含むペースト材を塗工できればよく,ダイ塗工に限るものではない。例えば,グラビア塗工装置であっても,塗工システム100に適用可能である。
[ロッド塗工装置]
続いて,第1の塗工ステップで利用されるロッド塗工装置10の詳細について説明する。図2は,ロッド塗工装置10を上面から見た概略構成を示すものである。また,図3は,図2に示したロッド塗工装置10のA−A断面の構成を示すものである。また,図4は,図2に示したロッド塗工装置10についてウエブ30の搬送方向から見た構成を示すものである。なお,図2では,ウエブ30が通過する位置を2点鎖線で示している。
続いて,第1の塗工ステップで利用されるロッド塗工装置10の詳細について説明する。図2は,ロッド塗工装置10を上面から見た概略構成を示すものである。また,図3は,図2に示したロッド塗工装置10のA−A断面の構成を示すものである。また,図4は,図2に示したロッド塗工装置10についてウエブ30の搬送方向から見た構成を示すものである。なお,図2では,ウエブ30が通過する位置を2点鎖線で示している。
ロッド塗工装置10は,図3に示すように,上面が開口し,その開口部がウエブ30と対向し,ウエブ30の下面にバインダBを供給するロッド塗布ヘッド1と,ウエブ30を張架してそのウエブ30をロッド塗布ヘッド1にガイドするガイドローラ11,12とを備えている。ロッド塗布ヘッド1は,ウエブ30の搬送方向において,ガイドローラ11の下流であって,ガイドローラ12の上流に位置する。
また,ロッド塗布ヘッド1は,図2ないし図3に示すように,ウエブ30の幅方向に沿ってウエブ30と対向配置されたロッド2と,ロッド2の下方に位置し,バインダBを収容する塗布液供給槽3と,塗布液供給槽3から溢れ出たバインダBを回収する塗布液回収槽5と,塗布液供給槽3および塗布液回収槽5を下方から支持する支持台4と,ロッド2の回転駆動源となるモータ8とを備えている。
ロッド塗布ヘッド1のロッド2は,柔軟性を有する樹脂(例えば,ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP))からなり,表層にはフッ素樹脂によるコーティングがなされている。また,ロッド2の表面には,図5に示すように螺旋状の溝21が形成されている。この溝21にバインダBを保持し,ウエブ30にそのバインダBを供給する。ロッド2を柔軟性を有する樹脂で構成することで,ロッド2のウエブ30への圧力の変化に対してロッド2表面がその変化に追従して変形することができる。
また,ロッド2の両端は,一対の軸受121,122によって回転自在に支持される。ロッド2の一方の端部は,カップリング部材123を介してモータ8と連結される。これにより,モータ8の回転駆動力がロッド2に伝達される。
ロッド塗布ヘッド1の塗布液供給槽3は,ロッド2の下方に位置し,支持台4によって支持される。塗布液供給槽3は,上方が開放し,その開放口の上方をウエブ30が走行する。
また,塗布液供給槽3の内部には,ロッド2を支持する支持ブロック31が設けられている。具体的に支持ブロック31には,上端面に半円状あるいはV字上の溝32が形成され,この溝32にロッド2を配置することでロッド2を支持する。すなわち,ロッド塗布ヘッド1は,ロッド2の両端を,軸受121,122によって支持し,さらに中央を支持ブロック31によって支持する。これにより,ロッド2の撓みを抑制し,真直性を確保する。
また,塗布液供給槽3は,ロッド2の軸方向に平行する側面に位置する堰止め板33,34と,ロッド2の軸方向と直交する側面に位置する側板35,36と,底面に位置する底板37とによって,バインダBを収容する槽を構成している。堰止め板33には,バインダBを供給する塗布液供給管331が貫通しており,塗布液供給管331を介してバインダBが塗布液供給槽3内に供給される。
また,塗布液供給槽3では,バインダBの液面が堰止め板33,34よりも高くなると,バインダBが塗布液供給槽3から外側に溢れ出る。すなわち,堰止め板33,34の高さによって,塗布液供給槽3内のバインダBの液面の高さが規定される。具体的には,塗布液供給槽3内のバインダBの液面の高さは,ロッド2が支持ブロック31の溝32に支持された状態で,ロッド2の下部がバインダBに浸漬し,ロッド2の上部が浸漬しないように規定される。
ロッド塗布ヘッド1では,塗布液供給槽3内に塗布液Bが満たされた状態で,ロッド2がモータ8によって回転駆動されると,塗布液供給槽3内のバインダBがロッド2によって汲み上げられる。そして,ロッド2とウエブ30とが対向する位置で,バインダBの液溜まりを形成する。この液溜まりをウエブ30が走行することで,ウエブ30の表面にバインダBが塗布される。
また,ロッド塗布ヘッド1は,塗布液供給槽3の外側に塗布液回収槽5を有している。塗布液回収槽5は,塗布液供給槽3の外側に位置する側板51,52と,側板51,52の一方の端部に位置し,側板51,52を支持する支持ブロック53と,側板51,52の他方の端部に位置し,側板51,52を支持する支持ブロック54とによって構成される。側板51,52および支持ブロック53,54は,支持台4に支持される。すなわち,支持台4は,塗布液回収槽5の底面を兼ねる。また,支持ブロック53は,軸受け121を支持する。一方,支持ブロック54は,軸受け122およびモータ8を支持する。
塗布液回収槽5は,塗布液供給槽3の堰止め板33,34から溢れ出したバインダBを収容する。側板52には,バインダBを塗布液回収槽5から排出する塗布液排出管521が貫通しており,塗布液排出管521を介してバインダBが塗布液回収槽5から排出される。
支持台4は,塗布液供給槽3や塗布液回収槽5を支持する平板状の支持板41と,支持板41の下側の面と接合し,支持台4の下側の面となる下面ブロック42とを有している。下面ブロック42は,図4に示すようにその下側の面が略半円状となっており,高さ方向の厚さTがロッド2の軸方向(図4中のX方向。以下,「幅方向」とする)の中心部で広く端部で狭い。すなわち,底面ブロック42は,幅方向の中心部に位置する頂部43で設置台9と接しており,支持台4全体が頂部43を支点として上下方向に遥動する。具体的に支持台4は,支持台4の幅方向の一方の端部が上側に移動すると他方の端部が下側に移動し,一方の端部が下側に移動すると他方の端部が上側に移動するように,シーソー式に上下に傾き,ロッド2の真直性を維持しながら遥動する。
また,支持台4は塗布液供給槽3を支持しており,塗布液供給槽3内の支持ブロック31はロッド2を支持している。したがって,支持台4の上下移動に伴ってロッド2も上下移動することになる。換言すると,ロッド2のウエブ30への圧力が弱くなると,ロッド2が上方に移動することになり,その圧力が強くなると,ロッド2を下方に押圧することになる。すなわち,支持台4は,ロッド2のウエブ30への圧力が幅方向で均一となるように上下移動する。
また,ロッド2に接続するモータ8は,支持台4に支持される支持ブロック54に固定されている。そのため,ロッド2が上下方向に移動すると,その移動に追従してモータ8も上下方向に移動する。そのため,ロッド2の軸方向のモータ8側の端部において,上側に移動し難いといった問題や,下側に移動した際にロッド2と支持ブロック3との間に隙間が生じるといった問題は起こり難い。
なお,支持ブロック54がモータ8を支持することで,反対側端部との重さの釣合がとれない場合には,支持ブロック53に支持ブロック54側との重さの釣合がとれる錘(例えばモータ8と同等の重さの錘)を載置してもよい。
また,ロッド塗布ヘッド1は,ロッド2の両端部上に,ウエブ30への塗工幅を調整するマスキングシート61,62を有している。マスキングシート61,62は,高さ方向(図4中のY方向)において,ウエブ30とロッド2との間に配置される。具体的に,マスキングシート61は,ロッド2の軸方向の一方の端部側に位置し,マスキングシート62は,ロッド2の軸方向の他方の端部側に位置する。そして,マスキングシート61,62は,バインダBの幅方向への移動を規制する。すなわち,塗工範囲がマスキングシート61,62間に制限され,マスキングシート61,62の間隔がウエブ30上に形成される塗工層の幅になる。つまり,マスキングシート61,62は,ウエブ30の非塗工領域に配置し,バインダBをウエブ30の塗工領域のみに塗布する。
マスキングシート61,62は,図6および図7に示すように,互いに対向する側面,すなわちバインダBと接する側の側面部に複数の切欠き60が連続して形成されている。切欠き60は,ウエブ30の進行方向に向かって深くなるように直角三角形状に形成され,バインダBの種類,ウエブ30の走行速度,塗工層の厚さ等に基づいて角度θを調整する。本形態では,例えば,30度〜70度の範囲で切欠き60の角度を調整する。
また,マスキングシート61,62の表面張力は,バインダBの表面張力よりも小さい。そのため,バインダBは,マスキングシート61,62と接触する箇所でマスキングシート61,62側に掃き入れられる。これにより,バインダBには,マスキングシート61,62の切欠き60に誘い込まれる流れが形成される。
[実施例]
続いて,本形態のロッド塗工装置10を利用して,塗布液を塗布した実施例について説明する。
続いて,本形態のロッド塗工装置10を利用して,塗布液を塗布した実施例について説明する。
本形態では,ウエブ30の基材を,厚さが約10μmの銅箔とする。この銅箔は,圧延加工によって形成されたものであり,所々に弛みが生じている。この銅箔上に,SBR(重量パーセントが約10%)を含むバインダを塗布し,塗布直後で約4μmのバインダ層を形成するものとする。また,マスキングシート61,62としては,その表面張力がバインダ液の表面張力よりも小さい材料であればよく,本形態ではポリエチレンを使用した。また,マスキングシート61,62の切欠き60の角度は45度とした。
本実施例のウエブ30の走行を開始すると,ロッド塗工装置10を通過する際,ウエブ30の表面にバインダ層が形成される。ウエブ30には,所々に弛みがあることから,ウエブ30とロッド2との間隔にはばらつきがある。そのため,その間隔が大きい部分ではロッド2のウエブ30への圧力が変化し,その隙間の大きさの変化に追従して,ロッド2が上下方向に遥動する。
具体的には,ウエブ30はロッド2に僅かに張架されており,ウエブ30とロッド2との隙間が大きいと,ロッド2がウエブ30に近づくように移動する。つまり,ウエブ30とロッド2との隙間を小さくし,ロッド2のウエブ30への圧力が幅方向に均一になるように上下移動する。例えば,ウエブ30の幅方向の右側に弛みがあると,幅方向の右側でバインダの塗布量が多くなることを抑制するため,幅方向の右側を上げてロッド2をウエブ30に近づけ,ウエブ30とロッド2との隙間を小さくする。これにより,ウエブ30の幅方向の一方の側に弛みがあったとしても,その弛みに追従してロッド2が上下移動することから,幅方向の左右でロッド2のウエブ30への圧力が均一に近づき,その結果として均一の層厚のバインダ層が形成される。
図8は,本形態のロッド塗工装置10による,銅箔の幅方向の位置と,バインダ層の目付け量(乾燥後のバインダ層の層厚)との関係を示している。一方,図9は,従来のロッド塗工装置,すなわちロッドを支持する支持台が上下移動しないように固定されたロッド塗工装置による,銅箔の幅方向の位置と,バインダ層の目付け量との関係を示している。
両図を比較すると,従来のロッド塗工装置では,幅方向の層厚にムラがあることがわかる。特に,図9中,幅方向の左側(箔位置で左端から約60mm〜300mm)で膜厚が厚く,右側(箔位置で左端から約300mm〜540mm)で膜厚が薄いことがわかる。これは,銅箔の左側に弛みがあり,ウエブとなる銅箔にロッドが幅方向に均一に接触しないためと考えられる。一方,図8では,そのような層厚のムラはなく,幅方向に概ね均一の膜厚となっていることがわかる。これは,ロッドが銅箔の弛みに追従して上下移動し,ロッドのウエブへの圧力を幅方向に均一にすることができたためと考えられる。
また,ウエブ30の走行中,幅方向の端部では,バインダBがマスキングシート61,62の切欠き60に誘い込まれる。これにより,バインダ層の端部の高さについても,均一性が高まる。すなわち,バインダ層とマスキングシート61,62との境界では,マスキングシート61,62の厚みによってロッド2とウエブ30との間に隙間が生じる。このことから,バインダ層の幅方向の端部では,バインダBの液溜まりが生じやすい。そのため,バインダ層は,その幅方向の端部で厚さが厚くなる傾向にある。
そこで,マスキングシート61,62の端部に切欠き60を設け,バインダ層の端部に供給されたバインダBを切欠き60に誘い込む。これにより,ウエブ30の塗布領域にバインダ液の液溜まりが生じることが抑制される。
図10は,実施例と従来例とで,電極活物質層(ダイ塗工装置20後の合材層)の幅方向の端部の高さ(端高高さ)を計測した結果を示している。ここでいう端高高さは,乾燥後後の高さであって,幅方向の中央部では約2.0μmの高さになっている。従来例,すなわちマスキングシートの端部に切欠きが無く,端部がストレート形状になっているマスキングシートを使用した場合には,端高高さが5.9μmにもなった。つまり,中央部との差は,約3.9μmにもなった。一方,本形態のロッド塗工装置10のマスキングシート61,62を使用した場合には,端高高さが0.2μmになった。すなわち,中央部との差は,約1.8μmにまで改善された。なお,電極活物質層の高さが中央部よりも端部で低くなったのは,バインダBがマスキングシート61,62の切欠き60に引き込まれたためと考えられる。
以上詳細に説明したように本形態の塗工システム100を構成するロッド塗工装置10では,ウエブ30の走行中,ロッド2を支持する塗布液供給槽3が,幅方向の一方の端部と他方の端部とが互いに異なる高さとなるように上下方向に遥動することができる。これにより,ウエブ30に弛みがあったとしても,その弛みに追従して塗布液供給槽3が上下移動することで,ロッド2のウエブ30への圧力を幅方向に均一に近付けることができる。特に,ロッド2は半円状の底面を有する支持台4によって支持されることで,特別な制御を行うことなくウエブ30の弛みに合わせて自己でバランスをとることができる。その結果,バインダB(塗布液の一例)がウエブ30の幅方向に均一に塗布されることになる。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,製造対象となる電池はリチウムイオン二次電池に限るものではない。すなわち,一般的な電池であれば適用可能であり,例えばニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池でも本発明を適用できる。また,正極,負極,およびバインダについても実施の形態は一例であり,これらを構成する各要素についても電池に一般的に利用されるものであれば本発明に適用できる。
また,実施の形態では,1本のロッド2によって,塗布液Bをウエブ30の表面に塗布しているが,これに限るものではない。例えば,ロッドを2本備え,1本目のロッドによって塗布液を過剰に塗布し,2本目のロッドによって塗布膜の厚さを調節することで,所定の膜厚の塗布膜をウエブ30の表面に形成するものであってもよい。この場合,2本目のロッドおよびそのロッドを支持する構成に本発明が好適である。
また,実施の形態では,支持台4の底面を半円状にして,ロッド2の上下方向の移動を可能にしているが,移動手段はこれに限るものではない。例えば,支持台4の底面の幅方向の両端にスプリング等の弾性部材を設置してもよい。
また,実施の形態では,ロッド2の表面に螺旋状の溝21によるパターニングが施されているが,パターニングの種類は螺旋状に限るものではない。すなわち,バインダBを搬送できるパターンであればよい。また,パターニングは,溝に限らず,突起部を形成してもよい。
また,実施の形態では,ロッド2を樹脂で構成しているが,これに限るものではない。例えば,金属製の丸棒部材に柔軟性を有する樹脂をコーティングしたものであってもよい。すなわち,少なくともロッド2の表面が柔軟性を有する樹脂で構成されることで,ウエブ30の弛みに追従することができる。
1 ロッド塗布ヘッド
2 ロッド
3 塗布液供給槽
4 支持台
5 塗布液回収槽
8 モータ
10 ロッド塗工装置
20 ダイ塗工装置
30 ウエブ
60 切欠き
61,62 マスキングシート
100 塗工システム
2 ロッド
3 塗布液供給槽
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10 ロッド塗工装置
20 ダイ塗工装置
30 ウエブ
60 切欠き
61,62 マスキングシート
100 塗工システム
Claims (9)
- 連続走行するウエブの表面に塗布液を塗布するロッド塗工装置において,
前記ウエブの幅方向に沿って前記ウエブと対向し,回転しながら前記塗布液を前記ウエブに塗布するロッドと,
前記ロッドを支持し,前記塗布液を貯蔵し,前記ロッドに前記塗布液を供給する塗布液供給槽と,
前記塗布液供給槽を,前記ウエブの幅方向の一方の端部と他方の端部とが互いに異なる高さとなるように上下方向に揺動可能に支持する支持機構と,
を備えることを特徴とするロッド塗工装置。 - 請求項1に記載するロッド塗工装置において,
前記支持機構は,設置面と接する底面が半円形に膨らんだ形状であり,前記底面の頂部を支点としてシーソー式に上下移動することを特徴とするロッド塗工装置。 - 請求項1または請求項2に記載するロッド塗工装置において,
前記ロッドを回転駆動する駆動部を備え,
前記駆動部は,前記支持機構に支持され,前記ロッドの上下移動に追従することを特徴とするロッド塗工装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載するロッド塗工装置において,
前記ロッドは,少なくとも表面が柔軟性を有する樹脂で形成されることを特徴とするロッド塗工装置。 - 請求項1から請求項4のいずれか1つに記載するロッド塗工装置において,
前記ウエブと前記ロッドとの間に位置し,前記ウエブの非塗工部をマスクするマスク部材を備え,
前記マスク部材の前記ウエブの塗工領域との境界となる側面には,前記ウエブの搬送方向に沿って切欠きが設けられていることを特徴とするロッド塗工装置。 - 請求項5に記載するロッド塗工装置において,
前記切欠きの深さは,前記ウエブの進行方向の下流側に向かって深くなることを特徴とするロッド塗工装置。 - 連続走行するウエブの表面に,塗布液を塗布するロッド塗工方法において,
ロッドを前記ウエブの幅方向に沿って前記ウエブに対向させ,前記ロッドの回転によって前記塗布液を前記ウエブに塗布し,
前記ロッドを支持し,前記ロッドに供給する前記塗布液を貯蔵する塗布液供給槽を,前記ウエブの幅方向の一方の端部と他方の端部とが互いに異なる高さとなるように上下方向に揺動可能に支持することを特徴とするロッド塗工方法。 - 請求項7に記載するロッド塗工方法において,
前記ロッドを回転駆動する駆動部を,前記塗布液供給槽の遥動に連動して上下移動させることを特徴とするロッド塗工方法。 - 請求項7または請求項8に記載するロッド塗工方法において,
前記ウエブと前記ロッドとの間に,前記塗布液の前記ウエブの非塗工部への移動を規制し,前記ウエブの塗工部との境界となる側面に切欠きを有するマスク部材を配置し,
前記マスク部材を配置した状態で,前記ウエブの走行および前記ロッドの回転によって前記塗布液を前記ウエブに塗布することを特徴とするロッド塗工方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011091711A JP2012223680A (ja) | 2011-04-18 | 2011-04-18 | ロッド塗工装置およびロッド塗工方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018061936A1 (ja) * | 2016-09-29 | 2018-04-05 | 富士フイルム株式会社 | 塗布装置および塗布方法 |
-
2011
- 2011-04-18 JP JP2011091711A patent/JP2012223680A/ja not_active Withdrawn
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