JP2012214431A - プロスタグランジン含有脂肪乳剤 - Google Patents
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Abstract
た保存期限の長い脂肪乳剤を提供する。
【解決手段】プロスタグランジン類、油成分、レシチン、及び水を含む脂肪乳剤であって
、前記レシチンの含有量が前記プロスタグランジン類の含有量の500〜5000質量倍
であり、前記レシチンの含有量が前記油成分の含有量の0.5〜10質量倍であり、かつ
高級脂肪酸の含有量が前記レシチンの含有量の0.06質量倍以下であることを特徴とす
る、プロスタグランジン含有脂肪乳剤。
【選択図】なし
Description
しかしながら、上記のプロスタグランジンE1脂肪乳剤は有効成分であるプロスタグランジンE1が分解しやすいため、5℃以下の遮光下に保存する必要があり、有効期間は通常の製剤よりも短い1年間と定められている。このような製剤は流通段階や臨床現場における薬剤管理コストの増大を招く事から、有効期間の長い製剤の開発が切望されている。
これまで、プロスタグランジンE1の安定性を高める検討が種々なされてきた。例えば、精製したリン脂質を使用する(特許文献1参照)、高級脂肪酸を実質的に含有しない(特許文献2参照)、等によりプロスタグランジンの安定性向上が認められている。しかしながら、上記公報に記載された方法では、プロスタグランジンの安定性向上効果が十分とは言えず、さらには脂肪乳剤の乳化安定性が低下してしまうことがあるために、製剤の有効期間の延長が求められていた。
また、特許文献3には特定の乳化剤/油比において、プロスタグランジンの安定性が向上することが認められている。
[1]
プロスタグランジン類、油成分、レシチン、及び水を含んでなる脂肪乳剤であって、
前記レシチンの含有量が前記プロスタグランジン類の含有量の500〜5000質量倍であり、
前記レシチンの含有量が前記油成分の含有量の0.3〜10質量倍であり、かつ、
高級脂肪酸の含有量が前記レシチンの含有量の0.06質量倍以下であることを特徴とする、プロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[2]
前記レシチンの含有量が脂肪乳剤全量に対して0.4〜2質量%であることを特徴とする[1]に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[3]
前記脂肪乳剤におけるプロスタグランジン類中、水相中に遊離しているプロスタグランジン類の比率が10%以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のプロスタグランジンン含有脂肪乳剤。
[4]
前記油成分の含有量が脂肪乳剤全量に対して0.2〜5質量%であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[5]
前記脂肪乳剤がさらにpKaが4〜6の解離基を有する水溶性の酸またはその塩を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[6]
前記脂肪乳剤における前記水溶性の酸またはその塩の含有量が、0.01mmol/L〜5mmol/Lであることを特徴とする[5]に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[7]
光散乱法により測定した平均粒径が30〜150nmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[8]
前記レシチンが、ホスファチジルコリンを98質量%以上含有する卵黄レシチンであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[9]
前記油成分が、ダイズ油であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[10]
前記脂肪乳剤のpHが4.5〜6.0の範囲であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[11]
前記プロスタグランジン含有脂肪乳剤が、濾過滅菌されたプロスタグランジン含有脂肪乳剤であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
[12]
[1]〜[11]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤を含む注射用製剤。
[13]
[1]〜[11]のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤又は[12]の注射用製剤がシリンジに充填されていることを特徴とするプレフィルドシリンジ製剤。
[14]
[12]又は[13]に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤を濾過滅菌する工程を含むことを特徴とする[12]又は[13]に記載の注射用製剤の製造方法。
本発明のプロスタグランジン含有脂肪乳剤は静脈内投与可能であり、プロスタグランジン類、油成分、レシチン、及び水の組成比が特定の範囲に限定されたものである。これらの成分の組成比が特定の範囲にあることで、プロスタグランジンの安定性、乳化安定性、脂肪乳剤の透明性、さらには薬効を満足させることのできる製剤を提供することができる。
ここで、「質量倍」とは質量で何倍となるかを表すものとする。
本発明の脂肪乳剤を構成する成分のうち、プロスタグランジン類としては、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンA2(PGA2)、プロスタグランジンD2(PGD2)、プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンF1α(PGF1α)、プロスタグランジンI2(PGI2)及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、本発明は脂肪乳剤としての需要が大きいプロスタグランジンE1(PGE1)が好ましく、PGE1において特に有効である。
プロスタグランジンは、複数種類を併用しても良い。
本発明のプロスタグランジン含有脂肪乳剤は、プロスタグランジン類を含有する。さらに具体的には、本発明の脂肪乳剤におけるプロスタグランジン類の含有量は0.00001〜0.01質量%であることが好ましく、0.0001〜0.005質量%であることがより好ましく、0.0003〜0.001質量%であることが更に好ましい。
本発明の脂肪乳剤は油成分を含有する。
本発明で用いられる油成分としては、脂肪酸グリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、及びこれらのうち複数の混合物)が好ましく使用することができる。
脂肪酸グリセリドとしては、中鎖脂肪酸グリセリド、長鎖脂肪酸グリセリドいずれも使用することができる。
ここで中鎖脂肪酸グリセリドとは、炭素数6〜12の脂肪酸とグリセリンとの縮合物であり、例えば、TCG−M(高級アルコール工業)、クロダモルGTCC(クローダジャパン)、ココナードMK(花王)、ココナードRK(花王)、サンファットMCT−7(太陽化学)、デリオス(コグニスジャパン)、パナセート(日本油脂)、ミグリオール810(ミツバ貿易)、ミグリオール812(ミツバ貿易)、ミリトール318(コグニスジャパン)、パナセート810(油化産業)を挙げることができる。
長鎖脂肪酸グリセリドとは炭素数14以上の脂肪酸とグリセリンとの縮合物であり、例えば、ダイズ油、オリーブ油、ゴマ油、ナタネ油、ラッカセイ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、サフラワー油、綿実油等が挙げられる。これらのうち、ダイズ油、オリーブ油、ゴマ油が好ましく、ダイズ油が特に好ましい。
これらの脂肪酸グリセリドは、さらに水蒸気蒸留等により精製して使用してもよい。
本発明の脂肪乳剤はレシチンを含有する。
ここで、レシチンとはホスファチジルコリン自体、又は、少なくともホスファチジルコリンを含む混合物である。
ホスファチジルコリンを含む混合物とは、一般的に、ホスファチジルコリンの他に、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、N−アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、スフィンゴエタノールアミン等を含みうる混合物である。
レシチンは合成品でも天然物由来でもよいが、一般的には卵黄レシチン(卵黄由来のレシチン、以下同様)、大豆レシチン、綿実レシチン、なたねレシチン、トウモロコシレシチン等が挙げられる。本発明におけるレシチンとしては、卵黄レシチン及び大豆レシチンが好ましく、卵黄レシチンがより好ましい。卵黄レシチンを精製して得られる精製卵黄レシチンが好ましく、高度精製卵黄レシチンがより好ましい。本発明におけるレシチンは、ホスファチジルコリンを含有し、ホスファチジルコリンの含有量が96質量%以上の卵黄レシチンが特に好ましく、ホスファチジルコリンの含有量が98質量%以上の卵黄レシチンが最も好ましく、静脈注射用脂肪乳剤に好適に使用することができる。
尚、ホスファチジルコリンの含有量が98%以上の卵黄レシチンとしては「高度精製卵黄レシチン」の名称で医薬品添加物事典2007(薬事日報社)に掲載されているものを使用することができ、具体的にはPC−98N(キューピー(株)製)が挙げられる。
本発明の脂肪乳剤において、前記レシチンの含有量は、前記油成分の含有量の0.3〜10質量倍であることを特徴とする。前記油成分に対するレシチンの質量比は0.7〜8質量倍であることがより好ましく、1〜5質量倍の範囲であることが特に好ましい。レシチンの含有量がこの範囲であることで、レシチンの加水分解を抑制でき、乳化安定性が高く、かつ、脂肪乳剤中で水中に遊離するプロスタグランジンが減り、高い薬効が得られるので好ましい。一方、静脈注射可能な範囲で発生する粗大粒子を更に低減するという観点においては、前記油性分の含有量は脂肪乳剤中0.3〜10質量%が好ましく、0.3〜1質量%がより好ましく、0.3〜0.7質量%であることが特に好ましい。
本発明の脂肪乳剤において、乳化安定性を向上させる目的で高級脂肪酸を配合してもよいが、その含有量はレシチンの含有量の0.06質量倍以下であり、0.0001〜0.06質量倍であることが好ましい。高級脂肪酸の質量比が0.06を越えると、乳化安定性が向上するもののプロスタグランジンの安定性が低下してしまう。すなわち、保存期間の拡大を得ることができなくなる。
レシチンに対する高級脂肪酸の質量比は、プロスタグランジンの分解を抑制する観点で0.0001〜0.03であることがより好ましく、0.0001〜0.01であることが特に好ましく、実質的に添加しないことが最も好ましい。ここで実質的に添加しないとは、あくまでも配合目的で添加されることがないことをいい、例えば、油成分又はレシチンの分解により生じた遊離高級脂肪酸や、意図しない混入により含有される遊離高級脂肪酸を除くものとする。
本発明の脂肪乳剤において水溶性の酸が含まれることが好ましい。水溶性の酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸も用いることができるが、有機酸が好ましく、炭素数2〜10のカルボン酸類がより好ましい。水溶性の酸としては、例えば酢酸、酪酸、乳酸、ピルビン酸、グルコン酸、安息香酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、リン酸等が挙げられる。これらの内、pKaが4〜6の解離基を有する水溶性の酸が好ましく、クエン酸が特に好ましい。ここで、酸解離定数pKaは25℃の水中におけるものである。また、多官能の酸の場合、複数ある酸解離定数のいずれかが上記範囲内であればよい。
水溶性の酸は、塩の形で含有されていてもよく、緩衝系となっていてもよい。塩の種類は特に限定されないが、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属との塩などが挙げられ、ナトリウム、カリウム、又はカルシウムとの塩が好ましい。
本発明の脂肪乳剤においては、乳化安定性を向上させる目的で、さらに乳化剤もしくは分散剤を添加してもよい。乳化剤としては、ポロキサマー(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体)、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル60水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、12−ヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンエステル、d−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコールスクシナート、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステルが挙げられる。分散剤としては、ヒト血清アルブミン、精製ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ウルソデスオキシコール酸、ウルソデスオキシコール酸塩、デスオキシコール酸、デスオキシコール酸塩等が挙げられる。
本発明に脂肪乳剤では必要に応じて、等張化剤(例えば、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸及びその塩、ジブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、α−トコフェロール、D−ソルビトール)、を含有していてもよい。
動的光散乱法により測定した本発明の脂肪乳剤の(乳化直後の)平均粒径は30〜150nmであることが好ましく、30〜120nmであることがより好ましく、30〜100nmであることが特に好ましい。前記範囲の粒子径とすることで、脂肪乳剤の透明性が向上するため、異物混入や微生物汚染の発見が容易となり、臨床現場において使用上の問題が生じた製剤を容易に発見することが可能となる。さらには、濾過滅菌が可能となるため分解物の低減の観点でも好ましい。また、本発明の脂肪乳剤を濾過滅菌する場合、脂肪乳剤の粒径が上記の範囲内であれば濾過滅菌用のフィルターを目詰まり無く通過できる。
ここで、脂肪乳剤の粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
特に本発明における脂肪乳剤の粒子径は、FPAR−1000を用いて測定した値であり、具体的にはContin法より得られる散乱強度分布のメジアン径を粒子径とした。
本発明の脂肪乳剤のpHは4.5〜6.0の範囲にあることが好ましく、pH4.8〜5.8の範囲であることがより好ましく、pH5.0〜5.5であることが特に好ましい。pHがこの範囲にあることで、プロスタグランジンの安定性をさらに高くすることが可能である。pH4.5を下回ると、プロスタグランジンの安定性が低下するだけでなく、脂肪乳剤の乳化安定性も低下することがある。一方で、pH6.0を越えてもpHの上昇に従ってプロスタグランジンの安定性が低下する。
尚、水素イオン指数pHは25℃におけるものである。
本発明の脂肪乳剤は、例えば、プロスタグランジン類、油成分、レシチンの混合物に、必要に応じて水を加えて乳化させることで製造できる。本発明の脂肪乳剤の製造方法は、とくに制限されないが、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等の剪断作用を利用する通常の乳化装置を用いて乳化をした後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることが出来る。
チャンバー型高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
本発明はプロスタグランジン含有脂肪乳剤を含む注射用製剤にも関する。
本脂肪乳剤の製剤形態としては、注射用製剤として適したものであれば特に限定されない。具体的にはアンプル管、バイアル瓶、プレフィルドシリンジ、バッグ等の容器に充填した製剤が挙げられる。
容器の容量、材質および形状は、プロスタグランジン含有脂肪乳剤の充填量と使い易さの観点で適宜選択できる。また、充填時に空隙の気体を少なくする、あるいは窒素置換するとさらに安定性が改善されるため好ましい。
さらにこれらの容器内部はシリコート処理等の表面処理がなされていることが好ましい。
本発明はプロスタグランジン含有脂肪乳剤又は注射用製剤がシリンジに充填されているプレフィルドシリンジ製剤にも関する。
プレフィルドシリンジ製剤は、調製時の希釈ミスや薬剤取り違えのミス、分割使用・保存による細菌汚染や活性の低下等を防ぐために、使用濃度・量であらかじめシリンジに充填されており、感染の危険の低減、医療従事者の労働生産性向上等の観点においても好ましい。
本発明の注射器は、シリンジ(注射筒)およびガスケット等から構成することができる。該シリンジは一端(基端開放部)側の開口にガスケットがはめ込まれ、他端(先端開放部)側にガスケットの押し込みによりプロスタグランジン含有脂肪乳剤を排出する排出口を有する筒状体であることが好ましい。排出口には、使用前には通常、キャップがはめ込まれ、上記ガスケットとともに薬液を保持することができる。また、該ガスケットには、プランジャーロッドが連結されていてもよい。シリンジの基端からキャップ先端までの長さ、およびシリンジの内径は充填する薬液(プロスタグランジン含有脂肪乳剤)の容量によって適宜決定することができる。
ガラス製またはプラスチック製のシリンジを必要に応じて、焼き付けまたは塗布によりシリコン等で処理して、ガスケットの摺動抵抗を小さくし、シリンジ内でのガスケットの移動を容易にすることができる。排出口の形成される先端開放部は、接続する器具の形状に対応するルアーチップ形状になっていることが、注射針または血管カテーテルとの接続の容易さの観点から好ましい。
本発明において使用されるキャップは特に限定されないが、好ましくはゴム製または熱可塑性エラストマーなどの弾性体キャップである。該ガスケットには、好ましくはプランジャーロッドが結合する手段、例えば螺子部が設けられていてもよい。また、プランジャーロッドとガスケットとは一体に成形されていてもよい。
また、本製剤の投与においては、本発明の脂肪乳剤をそのまま注射用製剤として静脈注射してもよく、生理食塩水等の輸液にて適宜希釈したのち点滴投与しても良い。
濾過滅菌は通常、プロスタグランジン含有脂肪乳剤を調整後に行うことができる。
濾過滅菌に用いるフィルターとしては、孔径0.01〜0.22μmのフィルターが好ましく、より好ましくは0.1〜0.22μmの濾過滅菌用のフィルターである。濾過滅菌用のフィルターは市販品を利用することもできる。濾過滅菌用のフィルターとして具体的には、ザルトポア2、ザルトブラン(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社)、デュラポア(日本ミリポア社)、フロロダインII、スーポア、フロロダインEX、ウルチポアN66、ポジダイン(日本ポール社)などが挙げられる。
また、濾過滅菌に際しては加圧濾過器にて差圧をかけることができ、差圧としては0.01MPa〜1MPaが好ましく、0.05MPa〜0.3MPaがより好ましい。ここで差圧とは、濾過の一次側(入口側)と二次側(出口側)の圧力の差のことをいう。二次側の圧力は通常大気圧である。
これらの条件は使用するプロスタグランジン類、油成分、及びレシチンの濃度や含み得る添加剤の種類及び濃度などによって適宜選択することができる。
尚、本明細書において、別記がない場合は%は質量%である。
プロスタグランジンE1(アルプロスタジル、第一ファインケミカル(株)製)をエタノールに10mg/mlの濃度で溶解した。このうち42μl(プロスタグランジンE1として420μg)と、ダイズ油(カネダ(株)製)0.252g、及び、高度精製卵黄レシチンPC−98N(キューピー(株)製)0.504gとを混合した。この混合物に対し、別途、日本薬局方濃グリセリン(花王(株)製)と精製水を混合して得た2.5%グリセリン水溶液を、合計60mlになるように加え、撹拌した。これをホモミキサー(15000rpm、12min)にて粗分散し、さらにチャンバー型高圧ホモジナイザーにて乳化した。乳化液に終濃度0.5mMとなるクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液を添加し、pHを5.0に調整することで分散液1を得た。
実施例1と同様にして、表1の組成にて分散液2〜14を得た。尚、実施例8、比較例3,4の塩酸の量は、上記のように表に記載のpHとなるように添加した量である。
(比較例5)
実施例1と同様とするが、表1の通りにダイズ油、高度精製卵黄レシチンの量を変えて、かつオレイン酸を分散液に対して0.24%となる様に添加して乳化し、pHをクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液の代わりに水酸化ナトリウムにて5.3に調整することで分散液15を得た。尚、分散液15は既存薬相当の分散液となる。
<粒径測定>
表1に記載の実施例、比較例にて調製した分散液(脂肪乳剤)について、乳化直後に精製水を用いて10〜100倍に希釈し、光散乱粒度分布測定装置(FPAR−1000、大塚電子製)にて測定し、Contin法より得られる散乱強度分布のメジアン径を、粒径として記録した。
表1に記載の実施例、比較例にて調製した分散液について、原液のまま、コンパクトpHメーター(HORIBA製)にてpHを測定し、pHとして記録した。
表1に記載の実施例、比較例にて調製した分散液について、2mlずつ、シリコートバイアル瓶(CS−10、不二硝子製)に分注し、ゴム栓、アルミシールをした。40℃にて7日間、及び14日間保存した。それぞれの分散液について、以下の試験を実施した。
それぞれの分散液の調製直後、40℃にて7日間又は14日間保存後の分散液について、高速液体クロマトグラフィーによりプロスタグランジンE1を定量した。尚、この時、1−ナフトールを内部標準として使用し、定量を行った。PGE1の残存率を以下の式にて算出した。
PGE1残存率%=経時後のPGE1濃度/初期のPGE1濃度×100
分散液1mlを20mLバイアル瓶に採取する。これに2−プロパノール/ヘプタン/0.5M硫酸=40/10/1(容量比)の混合液5mLを加え、攪拌混合する。10分後、さらにヘプタン3mL及び精製水3mLを加え、転倒混合する。15分静置した後、上層液3mLを10mLバイアル瓶に採取する。これに0.02質量%ナイルブルー水溶液/エタノール=1/9(容量比)の混合液1mLを加え、攪拌混合する。この混合液に対して、0.02M水酸化ナトリウムにて滴定を行い、下式にて遊離脂肪酸を算出する。これをオレイン酸濃度に換算して脂肪乳剤全量に対する質量%を算出し、40℃14日間保存前後の分散液についての濃度(質量%)の差を表1に記載した。
尚、標準液として15mmol/Lのオレイン酸ヘプタン溶液を使用し、Vは滴定量を表す。
遊離脂肪酸量(meq/L)=V(試料)/V(標準液)×15
<遊離プロスタグランジン量の測定>
分散液1、6及び比較用の分散液11について、それぞれ40mlをバイアル瓶に採取し、これにpH5.0の0.1Mクエン酸緩衝液0.2mlを添加する。透析チューブSpectra/Por2(分画分子量12〜14K)を精製水にて水和処理した後、2.5質量%グリセリン水を分散液20gに対して1mlの割合で透析チューブ内に封入する。このチューブを前記分散液に浸漬し、室温にて100rpmで24時間攪拌を行う。
透析前後の分散液に含まれるプロスタグランジンE1の濃度をHPLCにより定量し、透析前後の濃度変化から水相に遊離しているPGE1濃度を算出した。結果を表2に記す。
12週齢の高血圧自然発症ラットにイナクチンを投与し、麻酔を施す。麻酔後、ラットを保温プレート上に保定した上で、カニュレーションを大腿動脈に挿入し、糸で縫合する。大腿動脈カニュレーションは圧トランスデューサーに接続し、5秒間の平均血圧の連続モニタリングを開始する。
血圧安定後、大腿静脈カニュレーションより分散液1、6、及び比較用の分散液11を投与し、血圧の変化を測定する。投与前の血圧から、分散液投与後の最大血圧降下量測定した。結果を表2に記す。
表2の結果が示す様に、レシチン量が0.4質量%を下回る分散液11においては、水相に遊離しているプロスタグランジンE1の量が多い。そして、分散液11においては血圧降下効果が小さく、薬効が低下している。プロスタグランジンE1含有脂肪乳剤においては、プロスタグランジンが分散質である油粒子に存在することで高い薬効を示すためと考えられる。
分散液1、7、9、10をそれぞれ5mlバイアル瓶(無色透明)中に適量採取し、精製水にて1〜6倍に希釈した。1m以上離れた蛍光灯と肉眼との間にバイアル瓶を置き、バイアル瓶の側面から上記の希釈液を目視観察した。このとき、液中に目視可能な粒子が見える程度について、以下の基準にて評価を行い、結果を表3に示す。
× 沈殿がはっきりと見える
△ 微細な粒子が少し見える
○ 微細な粒子がごく僅かに見える
◎ 目視可能な粒子はない
実施例17〜21
分散液9について、充填する容器を表4に記載の容器とする以外は実施例9と同様にして、40℃7日間保存し、PGE1残存率を求めた。結果を表4に示す。
分散液9 10mLをシリコートバイアル瓶(CS−10、不二硝子製)に分注し、ゴム栓、アルミシールをした。これをオートクレーブ(オートクレーブSP200、ヤマト科学社)を用いて121℃での保持時間を1分として高圧蒸気滅菌した。この液の外観を観察したところ、油滴の分離が見られた。
分散液9 500mlを、滅菌フィルターとしてザルトポア2(直径47mm、孔径0.2μm、ザルトリウス・ステディム・ジャパン社)を用い、加圧濾過器にて0.2MPaの差圧をかけ、濾過滅菌を行った。分散液全量を閉塞なく濾過滅菌できた。外観、粒径、pH、PGE1量を上記と同様に測定したところ、濾過前後で有意な変化は見られなかった。
Claims (14)
- プロスタグランジン類、油成分、レシチン、及び水を含んでなる脂肪乳剤であって、
前記レシチンの含有量が前記プロスタグランジン類の含有量の500〜5000質量倍であり、
前記レシチンの含有量が前記油成分の含有量の0.3〜10質量倍であり、かつ、
高級脂肪酸の含有量が前記レシチンの含有量の0.06質量倍以下であることを特徴とする、プロスタグランジン含有脂肪乳剤。 - 前記レシチンの含有量が脂肪乳剤全量に対して0.4〜2質量%であることを特徴とする請求項1に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤におけるプロスタグランジン類中、水相中に遊離しているプロスタグランジン類の比率が10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロスタグランジンン含有脂肪乳剤。
- 前記油成分の含有量が脂肪乳剤全量に対して0.2〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤がさらにpKaが4〜6の解離基を有する水溶性の酸またはその塩を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤における前記水溶性の酸またはその塩の含有量が、0.01mmol/L〜5mmol/Lであることを特徴とする請求項5に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 光散乱法により測定した平均粒径が30〜150nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記レシチンが、ホスファチジルコリンを98質量%以上含有する卵黄レシチンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記油成分が、ダイズ油であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記脂肪乳剤のpHが4.5〜6.0の範囲であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 前記プロスタグランジン含有脂肪乳剤が、濾過滅菌されたプロスタグランジン含有脂肪乳剤であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤を含む注射用製剤。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤又は請求項12の注射用製剤がシリンジに充填されていることを特徴とするプレフィルドシリンジ製剤。
- 請求項12又は13に記載のプロスタグランジン含有脂肪乳剤を濾過滅菌する工程を含むことを特徴とする請求項12又は13に記載の注射用製剤の製造方法。
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