工事現場における仮設足場には、主としてビルの施工時などに用いられる枠組足場、主として住宅の施工時などに用いられる単管足場やくさび緊結式足場などがあり、また、システム支保工(「型枠支保工」ともいう。)、ローリングタワーなども仮設足場の一態様である。
このうち、枠組足場は縦柱(「建地材」ともいう。)と横桟(「横地材」ともいう。)から構成されるH形状や鳥居形状等の建枠を使用するタイプであり、また、くさび緊結式足場はコマ等の連結金具を側面に設けた支柱部材と短尺の水平材(「つなぎ材」ともいう。また、短尺の水平材のことを特に「腕木材」ということがある。)を使用するタイプであり、いずれも対面する横桟の間又は水平材(腕木材)の間に床付き布枠(「布板」ともいう。)が架け渡されて、作業床や作業員の通路などとして使用される。
また、システム支保工はコマ等の連結金具を側面に設けた支柱部材を縦方向に連結してなる支柱を行列状に配置し、これらの支柱部材の連結金具の間を長短2種の水平材(「つなぎ材」ともいう。同じ長さでもよい。)で水平2方向に連結することによって形成される緊結構造物であって、対面する水平材(つなぎ材)の間に床付き布枠を適宜架け渡すことで作業床や作業員の通路などとして使用することができる。なお、支柱部材、水平材、建枠等には、鋼製やアルミニウム製などの管が用いられることが多い。
ここで、支柱部材の側面に設けられる連結金具としては、支柱部材の側面に複数個設けられるコマや、支柱部材の側面に環状に設けられるフランジ等を用いることができる。そして、水平部材の端部に設けられるクサビ金具をコマやフランジなどの連結金具に取付け、クサビで緊結することができる。
このように、これらの仮設足場には、通常、足場板として床付き布枠が架け渡されて、作業床や作業員の通路などとして使用される。
床付き布枠は、通常、長尺の主材の1本又は2本以上と、主材の長手方向の両端部に取付けられる掴み金具と断面コの字形の梁材から構成されている。主材は水平面の床材部とその両縁側面を折り曲げてなる布材部とからなる。長尺の主材の両端部に断面コの字形の梁材が取付けられ、そして、長尺の主材の両端部の四隅に掴み金具がリベット等で固定されて取付けられる。なお、床付き布枠上を歩行する際に作業員が床付き布枠上で滑るのを防止するために、床材部の上面にはエンボス加工が施されることがある。また、床材部が幅方向に撓るのを防止するため、床材部の中央部の下側に桟木が設けられることがある。
このようにして形成された床付き布枠は、対面する横桟の間又は水平材の間に架け渡されて、仮設足場の足場板として使用される。このとき、床付き布枠は、仮設足場の作業床や通路の幅に応じて、1枚又は2枚以上並べて架け渡されることによって、作業床又は通路が形成される。
以下に、枠組足場、クサビ緊結式足場、システム支保工の順に、図面を用いて、その構造と組み立て方を説明する。
まず、図1に、鳥居形状の建枠(以下、「鳥居枠」という。)を用いて枠組足場を形成する一例を示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
まず3個の鳥居枠24を建物14とは直角に等間隔に並べ、隣接する鳥居枠24との間に、建物とは反対側に筋違25をロック金具28bに取付け、そして建物側にも筋違25をロック金具28aに取付けて、1段目の鳥居枠24を自立させることによって、1段目の足場を形成する。なお、連結ピンタイプのホゾ材12は予め鳥居枠24の縦柱22の上端部に内嵌されている。その後、1段目の隣接する鳥居枠24の上部の横桟23の間に2段目の足場板となる床付き布枠9を架け渡した後、既に立設した1段目の鳥居枠24の縦柱22に、予めその上端部に内嵌されている連結ピンタイプのホゾ材12を介して、別途用意した鳥居枠24の縦柱22の下部を載置して固定することによって、2段目の鳥居枠24を立設する。その後、1段目と同様にして、建物とは反対側に筋違25をロック金具28bに取付け、そして、建物側にも筋違25をロック金具28aに取付けて、2段目の鳥居枠24を自立させることによって、2段目の足場を形成する。その後、2段目の隣接する鳥居枠24の上部の横桟23の間に3段目の足場板となる床付き布枠9を架け渡した後、既に立設した2段目の鳥居枠24の縦柱22に、予めその上端部に内嵌されている連結ピンタイプのホゾ材12を介して、別途用意した鳥居枠24の縦柱22の下部を連結することによって、3段目の鳥居枠24を立設する。その後、2段目と同様にして、建物とは反対側に筋違25をロック金具28bに取付け、そして、建物側にも筋違25をロック金具28aに取付けて、3段目の鳥居枠24を自立させることによって、3段目の足場を形成する。このようにして、必要な段数になるまで枠組足場を形成する。なお、ここでは筋違を用いることによって各段の枠組を自立させる手順を説明したが、筋違の一部を手摺枠に置き換えて各段の枠組を自立させてもよい。
次に、図2に、くさび緊結式足場の構造の一例を示す。(a)はくさび緊結式足場の正面図、(b)は(a)において円で示されたコマの周辺の拡大図、そして、(c)はくさび緊結式足場の右側面図である。
ここでは、くさび緊結式足場の支柱1が建物14の側とその反対側に各3本が立設されている。各々の支柱1は、複数のコマ4を有する支柱部材3を、予めその上端部に接合された埋め込みタイプのホゾ材11を介して縦方向に継ぎ足すことによって形成されている。建物側の支柱1と建物とは反対側の支柱1の間には、コマ4を介して水平材2が取付けられ、コマ4においてクサビ2aで緊結されている。建物側の隣接する支柱1の間には、コマ4を介してブレース材21が斜めに取付けられ、また、建物とは反対側の隣接する支柱1の間には、コマ4を介して手摺部材20が取付けられ、それぞれ、コマ4においてクサビで緊結されている。そして、隣接する水平材2の間に、床付き布枠9を1枚又は2枚以上架け渡すことで、1段目の足場が形成される。なお、ブレース材21は建物とは反対側の支柱1の間に取付ける場合もある。
2段目の足場は、1段目の足場と同様にして形成される。1段目の足場の支柱部材3の上部に接合された埋め込みタイプのホゾ材11を介して、別途用意した支柱部材3を縦方向に継ぎ足した上で、水平材2、ブレース材21、手摺部材20の足場構成部材をコマ4を介して取付け、そして、コマ4においてクサビ2aによってこれらの足場構成部材を緊結した後、隣接する水平材2の間に、床付き布枠9を1枚又は2枚以上架け渡すことによって、形成される。これを順次繰り返すことによって、複数段のくさび緊結式足場が組み立てられる。
そして、図3は、システム支保工の一例を示す正面図であり、図4は図3のシステム支保工の右側面図である。
この例では、このシステム支保工100は、コンクリート構造物(スラブともいう。)101の上部の型枠102の下面を支えるように、地上から数m〜十数mの高さで設置されている。
システム支保工100は、所定の間隔で複数の支柱1を行列状に配置し、そして、隣接する支柱1の間を複数の水平材2で水平2方向に連結することによって形成される。各支柱1は、埋め込みタイプのホゾ材11を介して縦方向に連結された複数の支柱部材3からなる。各支柱1の下端は、ジャッキベース5によって支持されている。各支柱1の上端には、大引受ジャッキ6が取付けられ、大引受ジャッキ6上に複数の大引材7が載置されている。また、複数の大引材7に直交するように、複数の大引材7上に複数の根太材8が載置され、複数の根太材8上に型枠102が載置されている。
支柱1の側面には、所定の間隔で4つのコマ4が十字状に形成されている。水平材2は、水平材2の両端部に接合されたクサビ部を介してコマ4に連結され、クサビ2aによって緊結されている。なお、ここでは、各支柱部材3の中央部のコマ4には水平材2が取付けられていないが、各支柱部材3の中央部のコマ4にも水平材2を取付けてもよい。
そして、対面する水平材2の間に床付き布枠9を架け渡す。同様にして、他の個所にも床付き布枠9を架け渡すことで、適宜必要な個所に作業床や作業員の通路などとして使用する足場を形成することができる。ここでは、対面する短尺の水平材2の間に2枚の床付き布枠が並べて架け渡されることによって1つの足場板が形成されていて、作業床又は通路として使用される。
このように、床付き布枠は対面する横桟の間又は水平材の間に、1枚又は2枚以上並べて架け渡されて、仮設足場の足場板として形成され、作業床や通路として使用される。
このとき、仮設足場においては、たとえば特許文献1および2にみるごとく、枠組足場、クサビ緊結式足場、システム支保工などを問わず、床付き布枠が架け渡されて形成される足場板の片側または両側の縁部に沿って幅木が設置される場合がある。
幅木の設置は、幅木本体を縦にして床付き布枠の縁部に取付けるか、または、幅木本体を縦にして縦柱もしくは支柱部材に取付け、その後、幅木本体を固定することによってなされる。この幅木本体は、足場板の全長にわたってその縁部に設置されるので、作業者が仮設足場内を移動中に又は仮設足場を組立・解体する作業中に転倒したり、仮設足場の隙間から転落したりすることを防止するという機能を有している。また、幅木本体は仮設足場の隙間から工具や建築材等が落下するのを防止するという機能も有している。
図5に、建枠を用いる枠組足場に幅木(従来例)を設置したときの一例を示す。(a)が平面図であり、(b)は正面図、そして、(c)は(a)のA−A線矢視断面図(右側面図)である。
ここでは、1枚の床付き布枠9は、水平面の床材部とその両縁側面を折り曲げてなる布材部とからなる長尺の主材の2本と、主材の長手方向の両端部に取付けられる掴み金具10と断面コの字形の梁材13から構成されている。そして、この床付き布枠9が2枚、対面する横桟23の間に並行に架け渡されて、仮設足場の足場板を形成し、作業床や通路として用いられる。
幅木30は、長尺の幅木本体31と、この幅木本体の両端部に取付けられた取付金具32からなる。長尺の幅木本体31は、厚さ0.8〜1.2mm程度の長尺の鋼板を折り曲げて、平らな面の幅が10〜15cm程度になるように成形したものである。そして、幅木30の長さは、対面する横桟23の間に架け渡される床付き布板9の長さに対応しており、通常、180〜183cm程度である。この幅木本体31は、上記の床付き布枠9の2枚を並べて形成された足場板の両縁部に、縦に設置される。そして、幅木本体31の両端部に取付けられた取付金具32を隣接する横桟23の上に架け渡し、その後、固定金具(図示せず)によって幅木本体を縦柱もしくは支柱部材に近接して固定することになる。
このように、幅木本体31が足場板の縁部に沿って縦に設置されるので、幅木本体31の設置後の高さは10〜15cm程度となる。したがって、作業者が足場板の上で足を滑らしても、幅木本体31に足の先が当たるので、作業者の転倒が防止されるし、もし転倒しても作業者が足場板の外に転落することが防止される。また、足場板の上に工具等が置かれていた場合に、作業者が誤ってつま先で蹴ってしまうおそれがあるが、これも幅木本体31によってガードされているので、工具等が落下することが防止される。
また、このような幅木30は、建枠を用いる枠組足場だけでなく、くさび緊結式足場やシステム支保工においても設置することができ、作業者の転倒・転落の防止とともに、工具や建築材等の落下防止を図ることができる。
また、図5では、幅木本体を縦にして床付き布枠の縁部に取付けた例を示したが、幅木本体を縦にして縦柱もしくは支柱部材に取付けてもよい。なお、幅木本体を縦柱もしくは支柱部材に取付ける場合、幅木本体の両端部に取付けられた取付金具を隣接する横桟もしくは水平材の上に架け渡し、その後、固定金具によって幅木本体を縦柱もしくは支柱部材に固定すればよい。
また、幅木本体を縦柱又は支柱部材に取付ける際には、床付き布枠9が架け渡されて足場板が形成されるときの足場板の幅と、その床付き布枠9が架け渡される横桟23または水平材の長さとのギャップによって、縦柱又は支柱部材に取付けた幅木本体と、足場板の縁部との間に隙間が生じることがある。この隙間に、作業者が足を踏み込んだり、あるいは、工具を落としたりするというおそれがある。また、この隙間が生じる分だけ、設置できる足場板の幅が狭くなるため、縦柱又は支柱部材の内側に形成される空間のすべてを足場として使用することができないという問題が生じる。このため、たとえば、特許文献1にも示されているように、幅木本体に、長尺の塞ぎ板を足場板側に設けてなるL型幅木を用いることで、隙間が形成しないようにすることが提案されている。さらに、このL型幅木は幅木本体と塞ぎ板が90度程度の固定角をなしているので、L型幅木の運搬時や保管時には嵩張るという問題点を解決するために、さらに、この幅広の塞ぎ板を幅木本体側に回転できるようにした折り畳み可能なL型幅木が提案されている。
図6に、建枠を用いる枠組足場にL型幅木(従来例)を設置したときの一例を示す。(a)が平面図であり、(b)は正面図、そして、(c)は(a)のB−B線矢視断面図(右側面図)である。
このL型幅木34は、幅木本体31を足場板の縁部に設置するのではなく、縦柱22の足場側に内接して設置されている。ここでは、幅木本体31の両端部に取付けられた取付金具32を隣接する横桟23の間に架け渡し、その後、固定金具(図示せず)によって幅木本体31を縦柱22に内接して固定される。そして、長尺の塞ぎ板36はその縁部を床付き布枠9の縁部の上に載置するので、幅木本体31と床付き布枠9の間には隙間が生じない。ここでは、縦柱22の内側に形成される空間を足場として広く使用することができるので、足場板の幅を狭めることはない。
次に、図7に、建枠を用いる枠組足場に折り畳み可能なL型幅木(従来例)を組み込んだときの一例を示す。(a)が平面図であり、(b)は正面図、そして、(c)は(a)のC−C線矢視断面図(右側面図)である。
この折り畳み可能なL型幅木34は、長尺の幅木本体31と、この幅木本体の両端部に取付けられた取付金具32と、長尺の幅木本体に設けてなる長尺の塞ぎ板36からなる。長尺の塞ぎ板36は蝶番(図示せず)を介して、95度の角度で開閉可能に取付けられている。長尺の幅木本体31は、厚さ0.8〜1.2mm程度の長尺の鋼板を折り曲げて、平らな面の幅は10〜15cm程度になるように成形したものである。そして、幅木本体31の長さは、仮設足場で使用する床付き布板9の長さに対応しており、通常、180〜183cm程度である。この折り畳み可能なL型幅木34は、縦柱22の足場側に内接して設置されている。ここでは、幅木本体31の両端部に取付けられた取付金具32を隣接する横桟23の間に架け渡し、その後、固定金具(図示せず)によって幅木本体31を縦柱22に内接して固定される。
この折り畳み可能なL型幅木34は、足場への設置時には、長尺の塞ぎ板36を開いて、その縁部を床付き布枠9の縁部の上に乗せ掛けることによって、幅木本体31と床付き布枠9の間の隙間を塞ぐことで、作業者の転倒・転落の防止とともに、工具や建築材等の落下防止を図ることができる。また、この折り畳み可能なL型幅木34は、運搬時や保管時には嵩張らないように、長尺の塞ぎ板36を幅木本体31側に折り畳んで、その分、占有容積を小さくすることができる。
このように、幅木を設置することによって、作業者が足場板の上で足を滑らしても、幅木本体に足の先が当たるので、作業者の転倒が防止されるし、もし転倒しても作業者が足場板の外に転落することが防止される。また、足場板の上に工具等が置かれていた場合に、作業者が誤ってつま先で蹴ってしまうおそれがあるが、これも幅木本体によってガードされているので、工具等が落下することが防止される。
上述したように、幅木本体を縦柱もしくは支柱部材に取付ける場合、幅木本体の両端部に取付けられた取付金具によって隣接する横桟もしくは水平材の間に架け渡され、その後、固定金具によって幅木本体を縦柱もしくは支柱部材の足場側に内接して固定することになる。しかしながら、その幅木本体を固定するための固定金具は、次のとおり、幅木本体の裏面に設置されているので、この取付け作業には、次のとおり、危険が伴うし、その作業効率が悪い。
たとえば、幅木本体の端部中央の裏側にスライド式の固定金具を設けて、この固定金具を幅木本体の端部の裏面に沿ってスライドさせることによって、この固定金具と幅木本体の端部とで縦柱もしくは支柱部材を抱き込むことにより、幅木を取付ける方式の固定金具の場合には、その固定金具と幅木本体の端部とで確実に縦柱もしくは支柱部材を抱き込んでいるかどうかを、幅木の表側より確認することができない。したがって、作業者は、確認のために、足場板の上から身を乗り出して幅木の裏面を目視するか、または、手探りで固定金具に触れる必要がある。このような身を乗り出すことは危険行動となり、また手探りの場合は各々の縦柱もしくは支柱部材について行うことになるため、その作業効率が悪い。
なお、上記特許文献1には、仮設足場の支柱部材に幅木本体を取付ける際に、表側から目視確認可能な固定金具の例が示されている。ここには、いずれも支柱部材を抱き込む形状を有するがその形状の異なる固定型の固定金具を、それぞれ幅木本体の両端部に設けて、一方の端部に設けられた固定型の固定金具を一方の支柱部材に抱かせ、この支柱部材の軸回りに幅木全体を水平面上で足場の外側から回転させ、その後、他方の端部に設けられた形状の異なる固定型の固定金具を他方の支柱部材に抱かせることによって、幅木を支柱部材間に取付ける方式が開示されている。
この方式によると、固定金具は幅木本体の両端部に設けてあるので、幅木の表側から固定金具の操作をすることが可能である。しかしながら、幅木本体の設置の際に、幅木本体全体をいったん支柱部材の外側に出す必要があり、その際に作業者は足場の外側に身を乗り出すような姿勢となる。また、幅木を足場の外へ誤って落下させる可能性もある。
また、上記の特許文献2には、仮設足場の支柱部材に幅木本体を取付ける際に、固定金具が確実に支柱部材に取付けられているかどうかを、幅木本体の表側より確認することができる例が示されている。ここには、支柱部材を抱き込む形状の固定型の固定金具を幅木本体の両端部に設けて、幅木本体の端部を片方ずつ上方から下方へスライドさせて、幅木本体を支柱部材間に嵌合して取付ける方式が開示されている。
この方式では、幅木本体を取付ける際に、幅木本体の固定金具が必ず支柱部材の下部にセットされることとなるので、固定金具が確実に支柱部材に取付けられているかどうかを確認する必要がない。しかしながら、この方式は固定型の固定金具を備える幅木本体の端部を片方ずつ上方から下方へスライドさせて取付けているだけであるから、幅木本体の片端部を上げるだけでも幅木本体全体が外れることになる。したがって、幅木本体に下方からの力が掛かると、固定金具が支柱部材から外れるおそれがある。特に、塞ぎ板を備えるL型幅木あるいは折り畳み式のL型幅木の場合には、強風により幅木が浮き上がる恐れがあるので、固定金具が支柱部材から外れるおそれがある。したがって、この方式では安全確実に幅木本体を設置できるとは言えない。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、幅木本体の表側より幅木本体の設置作業が可能であり、かつ、設置後に幅木本体の表側より目視によって取付状態が確認できる固定金具を備えてなる幅木ならびにこの幅木を組み込んでなる仮設足場を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような問題点を解決するために種々の検討を重ねた。その結果、次の(a)〜(e)に示す知見を得た。
(a) 幅木本体を縦柱又は支柱部材に取付ける際に、作業者が足場の外側に身を乗り出すことなく、幅木本体の表側より幅木本体を安全に設置することを可能とするためには、幅木本体の両端部の裏面に固定金具を設けておいて、隣接する縦柱又は支柱部材の間に足場側に内接させてこの幅木本体を足場内から設置し、そして、幅木本体の両端部近傍の裏面に設けた固定金具を足場内から手作業で操作することによって、この固定金具と幅木本体の端部とで縦柱又は支柱部材を挟めばよいことを着想した。また、幅木本体の表側より幅木本体の設置後に、幅木本体の表側より目視によって取付状態が確認できるようにするためには、この固定金具と幅木本体の端部とで縦柱又は支柱部材を挟んでいるか否かを作業者が幅木本体の表側から判断できるようにすればよいことを着想した。
(b) 隣接する縦柱又は支柱部材の間の足場側に幅木本体を、縦柱又は支柱部材に内接させてこの幅木本体を足場内から設置するためには、隣接する横桟または水平材の間に幅木本体を架け渡し、その後、幅木本体の端部近傍に設ける固定金具と幅木本体の端部とで、縦柱もしくは支柱部材を挟めばよい。これで、幅木本体の端部を縦柱又は支柱部材に固定することができる。
そして、幅木本体の端部近傍に設ける固定金具は、幅木本体の両端部近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能に設置するものであって、固定金具が横方向に位置するときに足場を構成する縦柱又は支柱部材に外接する先端部を有しており、上記先端部と上記幅木本体の端部とで上記縦柱又は支柱部材を挟むことができる構造とすればよい。ここで、固定金具は、たとえば横方向と上方向の2個所で固定金具の回転を止めて保持できる構造とすればよい。そして、固定金具が横方向に寝かせたとき、縦柱又は支柱部材を幅木本体の端部とで挟むことができるようにすればよい。このようにすれば、固定金具が上方向に立ち上がっているときは、縦柱又は支柱部材から外れていることになるので、幅木本体の端部は固定金具によって縦柱又は支柱部材に固定されていないことが判る。一方、固定金具が横方向に寝ているときは、固定金具と幅木本体の端部とで縦柱又は支柱部材を挟んでいることになるので、幅木本体の端部は固定金具によって縦柱又は支柱部材に固定されていることが判る。
そして、固定金具は横方向に寝かせてあるか、または上方向に立ち上がっているかのいずれかの位置に保持されるのであるから、この固定金具が上方向に立ち上がったときに、幅木本体の表側よりその立ち上げ部分が突出するように固定金具の設置位置と回転半径を調節すれば、固定金具は横方向に寝かせてあるか、または上方向に立ち上がっているかの判断を作業者は幅木本体の表側より判断できるのである。したがって、幅木本体の設置後に、この固定金具と幅木本体の端部とで縦柱又は支柱部材を挟んでいるか否かを作業者が幅木本体の表側から判断できるから、作業者は幅木本体の表側より目視によって幅木本体の取付状態を確認することができるようになる。
なお、固定金具は幅木本体の両端部近傍の裏面に並行に垂直面で回転できるものである。したがって、その回転可能角度は360度でもよいが、横方向と上方向の2個所で固定金具の回転を止めて保持できる構造を採用する際には、その回転可能角度は固定金具が横方向に寝ているときを角度0度とした場合、固定金具が上方向に立ち上がっているときの角度は90〜120度とするのが好ましい。したがって、固定金具の回転可能な角度としては90〜120度とするのが好ましい。なお、固定金具を上方向と横方向の間で90〜120度の角度で回転できるものとするには、固定金具の基部に位置決め機構を備えればよい。
(c) このようにすれば、作業員は隣接する縦柱又は支柱部材の間の足場側に幅木本体を内接させた後、幅木本体の両端部近傍の裏面に設けた固定金具を足場内から手作業で操作して、幅木本体を安全に隣接する縦柱又は支柱部材の足場側に内接させて設置することができる。このとき、作業者が足場の外側に身を乗り出す必要はないので、幅木本体の表側より幅木本体を安全に設置することができる。
また、幅木本体の設置後においては、作業者はこの固定金具が上方向に立ち上がっているか否かを幅木本体の表側より目視によって確認するだけで、幅木本体の縦柱又は支柱部材への取付状態を確認することができる。
(d) なお、幅木本体の両端部の裏側に設ける固定金具の設置位置は、幅木本体の左右で上下に異ならせると、隣接する幅木本体の固定金具同士が干渉せずに設置可能かつ回転可能となることから、好ましい。
また、幅木本体の長さを支柱間距離より長くすれば、隣接する幅木本体の端部同士を縦柱又は支柱部材の足場側に内接させて重ねて設置する事が可能となる。この場合、幅木本体の端部が強固に縦柱又は支柱部材の足場側に設置することができる。したがって、幅木本体同士がお互いに浮き上がりを防止することによって、塞ぎ板を備えるL型幅木あるいは折り畳み式のL型幅木の場合であっても、強風により幅木が浮き上がるおそれは少ない。なお、幅木本体の端部同士を重ねて設置するためには、幅木本体を薄板で作製するのが好ましい。
さらに、幅木本体の長さを支柱間距離より長くすれば、幅木本体の両端部を直接に隣接する横桟または水平材の上に架け渡すことができるから、従来、幅木を隣接する横桟または水平材の上に架け渡す際に用いていた、幅木本体の端部に取り付ける取付金具が不要となるという利点もある。なお、幅木本体の両端部の下方にはその強度を向上するために折り曲げ部を設けるのが好ましい。
(e) なお、固定金具を幅木本体の両端部の上端の裏側に取付けた場合、幅木本体に対し上方向からの荷重が作用すると、固定金具を横方向に寝かせることで、この固定金具と幅木本体の端部とで縦柱又は支柱部材を挟んでいても、幅木本体が捩れて幅木本体が縦柱又は支柱部材から外れるおそれがある。これを防止するために、固定金具が横方向に位置するときの上下方向から見て、縦柱又は支柱部材に外接する固定金具の先端部が下方に延長された部分を有するのが好ましい。これにより、幅木本体に荷重が作用した際に固定金具の先端部の延長部分が幅木本体の捩れを抑える効果を有する。あるいは、幅木本体の両端部が上方に延長された部分を有することにより、幅木本体に荷重が作用した際に幅木本体の両端部の上方延長部分が、同様に幅木本体の捩れを抑える効果を有する。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであって、その要旨は下記の(1)〜(8)の幅木および(9)〜(10)の仮設足場にある。以下、(1)〜(10)にかかる発明を総称して本発明ということがある。
(1) 幅木本体の両端部近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能な固定金具を設けてなる幅木であって、上記固定金具は横方向に位置するときに足場を構成する縦柱又は支柱部材に外接する先端部を有しており、上記先端部と上記幅木本体の端部とで上記縦柱又は支柱部材を挟むことができることを特徴とする幅木。
(2) 固定金具の回転可能な角度が上方向と横方向の間の90〜120度であることを特徴とする、上記(1)の幅木。
(3) 固定金具の設置位置を幅木本体の左右で上下に異ならせることによって、隣接する幅木本体の固定金具同士が干渉せずに設置可能かつ回転可能であることを特徴とする、上記(1)または(2)の幅木。
(4) 幅木本体の両端部の下方に折り曲げ部が設けられていることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかの幅木。
(5) 固定金具が横方向に位置するときの上下方向から見て、固定金具の先端部が下方に延長された部分を有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかの幅木。
(6) 幅木本体の両端部が上方に延長された部分を有することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかの幅木。
(7) 幅木が、塞ぎ板を設けてなるL型幅木であることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかの幅木。
(8) 幅木が、塞ぎ板を設けてなる折り畳み可能なL型幅木であることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかの幅木。
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかの幅木を組み込んでなる仮設足場。
(10) 隣接する幅木本体の端部同士が縦柱又は支柱部材の足場側に内接させて重ねて設置されていることを特徴とする上記(9)の仮設足場。
本発明によれば、幅木本体の表側より幅木本体の設置作業が可能であり、かつ、設置後に幅木本体の表側より目視によって取付状態が確認できる固定金具を備えてなる幅木ならびにこの幅木を組み込んでなる仮設足場を提供することができる。
本発明に係る幅木及びこの幅木が組み込まれている仮設足場について、以下に、図面を用いて、説明する。
図8は、本発明に係る幅木の一例である。(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が(a)の矢視A−A断面図、(d)が(a)の矢視B−B断面図である。
この幅木はL型幅木であって、長尺の幅木本体31と、長尺の幅木本体に設けてなる長尺の塞ぎ板36からなり、枠組足場、くさび緊結式足場、システム支保工などの足場に用いることができるものであり、幅木本体31の両端部の近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能な固定金具50が設けられている。この固定金具50が設けられていることにより、幅木本体の表側より幅木本体の設置作業が可能であり、かつ、設置後に幅木本体の表側より目視によって取付状態が確認できることを、順に説明する。
この固定金具50は、クランク形状を有していて、幅木本体の両端部近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能に設置されている。そして、固定金具50が横方向に位置するときに縦柱又は支柱部材に外接する先端部50aを有しており、この先端部50aと幅木本体の端部31aとでその縦柱又は支柱部材を挟むことができる。なお、ここでは、この固定金具50は、これが横方向に位置して縦柱又は支柱部材に外接するときの上下方向から見て、縦柱又は支柱部材に外接する固定金具の先端部50aが下方に延長された部分50bを有している。この固定金具の先端部50aが延長部分50bを有していることにより、幅木本体31に上方向から荷重が作用した際に固定金具の先端部の延長部分が幅木本体の捩れを抑える効果を有する。
そして、固定金具50は横方向と上方向の2つの位置で固定金具の回転を止めて保持できる構造となっている。ここでは、固定金具50が上方向に立ち上がった位置で止まっているから、固定金具50は縦柱22から外れていることになり、幅木本体の端部31aは固定金具50によって縦柱22には固定されていないことが、幅木本体の表側より目視で判断できる。
また、この幅木本体の両端部の下方にはその強度を向上するために折り曲げ部31bが設けられている。また、幅木本体31は従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、隣接する幅木本体の端部を重ねて設置する事が可能となる。さらに、この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、取付金具を用いることなく、幅木本体31の両端部を直接に隣接する横桟23の上に架け渡すことができる。
なお、ここでは固定金具50が上方向に立ち上がった位置で止まっているが、その回転可能な角度は横方向と上方向の間の115度である。この固定金具50は横方向になるまで回転させると、その先端部50aと幅木本体の端部31aとでその縦柱又は支柱部材を挟むことになる。したがって、固定金具50が横方向に寝ているときは、固定金具と幅木本体の端部とで縦柱又は支柱部材を挟んでいることになるので、幅木本体の端部は固定金具によって縦柱又は支柱部材に固定されていることが判る。
図9は、図8に示す幅木の幅木本体の左右に設けられた固定金具を上方向から横方向へ回転する際の動きの説明図(正面図)である。
ここでは、幅木本体の左右に設けられた固定金具50を上方向に立ち上がった位置から、側方へ115度回転させて、横方向に位置させることができる。このとき、その先端部50aが縦柱又は支柱部材(図示せず)に外接するとともに、その先端部50aと幅木本体の端部31aとで縦柱又は支柱部材を挟むので、幅木本体の端部31aを縦柱又は支柱部材に固定することになる。なお、固定金具の設置位置が幅木本体の左右で上下に異ならせてあるので、隣接する幅木本体の固定金具同士が干渉せずに設置可能かつ回転可能とすることができる。
図10は、図8に示す幅木を枠組足場に組み込んだ後に固定金具を横方向に回転させたときの一例を示す。(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が(a)の矢視A−A断面図、(d)が(a)の矢視B−B断面図である。
図8に示す幅木を、隣接する横桟23の間に幅木本体31を架け渡し、その後、幅木本体の端部近傍に設けられた固定金具50を、固定金具固定ボルト51を回転軸として、上方向から横方向に115度回転させることによって、先端部50aと幅木本体の端部31aとで縦柱22を挟み、もって、幅木本体の端部31aを縦柱22に固定したところである。この幅木はL型幅木であるから、幅木本体31の足場側には塞ぎ板36が存在するので、幅木本体31と足場板(図示せず)との間には隙間は生じていない。
この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、取付金具を用いることなく、幅木本体31の両端部を直接に隣接する横桟23の上に架け渡すことができる。また、この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、隣接する幅木本体の端部を縦柱22の足場側に内接させて重ねて設置する事が可能となる。この場合、幅木本体の端部31aが縦柱22の足場側に強固に設置されるので、幅木本体同士がお互いに浮き上がりを防止することによって、塞ぎ板36を備えるL型幅木であっても、強風により幅木が浮き上がるおそれは少ない。
ここで、固定金具50は横方向に位置しており、その先端部50aが縦柱22に外接するとともに、その先端部50aと幅木本体の端部31aとで縦柱22を挟んでいる。したがって、幅木本体の端部は固定金具によって縦柱又は支柱部材に固定されている。なお、ここでは、この固定金具50は、これが横方向に位置するときの上下方向から見て、縦柱22に外接する固定金具の先端部50aが下方に延長された部分50bを有している。これにより、幅木本体に上方向から荷重が作用して幅木本体が捩れることを防止することができるので、幅木本体が縦柱又は支柱部材から外れるおそれは小さくなる。
図11は、図10における幅木本体の隣接する端部との重ね部分の拡大図を示す。(a)が正面図、そして、(b)が(a)のA−A矢視左側面図である。
この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、隣接する幅木本体の端部を縦柱22の足場側に内接させて重ねて設置されている。したがって、幅木本体の端部31aが縦柱22の足場側に強固に設置されるので、幅木本体同士がお互いに浮き上がりを防止することになる。
また、固定金具50の設置位置が幅木本体31の左右で上下に異ならせてあるので、隣接する幅木本体31の固定金具50とは干渉せずに設置可能かつ回転可能とすることができる。そして、固定金具の先端部50aもまた、隣接する幅木本体31の固定金具の先端部50aとは干渉せずに縦柱22に外接するとともに、その先端部50aと幅木本体の端部31aとで縦柱22を挟んでいる。したがって、隣接する幅木本体31の端部はいずれも固定金具50によって縦柱22に固定することができる。
図12は、本発明に係る幅木の他の例である。(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が(a)の矢視A−A断面図、(d)が(a)の矢視B−B断面図である。
この幅木はL型幅木であって、長尺の幅木本体31と、長尺の幅木本体に設けてなる長尺の塞ぎ板36からなり、枠組足場、くさび緊結式足場、システム支保工などの足場に用いることができるものであり、幅木本体31の両端部の近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能な固定金具50が設けられている。この幅木も、実施例1に係る幅木と同様に、固定金具50が設けられていることにより、幅木本体の表側より幅木本体の設置作業が可能であり、かつ、設置後に幅木本体の表側より目視によって取付状態が確認できる。
この固定金具50は、クランク形状を有していて、幅木本体の両端部近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能に設置されている。そして、固定金具50が横方向に位置するときに縦柱又は支柱部材に外接する先端部50aを有しており、この先端部50aと幅木本体の端部31aとでその縦柱又は支柱部材を挟むことができる。そして、固定金具50は横方向と上方向の2つの位置で固定金具の回転を止めて保持できる構造となっている。ここでは、固定金具50が上方向に立ち上がった位置で止まっているから、固定金具50は縦柱22から外れていることになり、幅木本体の端部31aは固定金具50によって縦柱22には固定されていないことが、幅木本体の表側より目視で判断できる。また、この幅木本体の両端部の下方にはその強度を向上するために折り曲げ部31bが設けられている。また、幅木本体31は従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、隣接する幅木本体の端部を重ねて設置する事が可能となる。さらに、この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、取付金具を用いることなく、幅木本体31の両端部を直接に隣接する横桟23の上に架け渡すことができる。そして、ここでも固定金具50が上方向に立ち上がった位置で止まっているが、その回転可能な角度は横方向と上方向の間の115度である。この固定金具50は横方向になるまで回転させると、その先端部50aと幅木本体の端部31aとでその縦柱又は支柱部材を挟むことになる。したがって、固定金具50が横方向に寝ているときは、固定金具と幅木本体の端部とで縦柱又は支柱部材を挟んでいることになるので、幅木本体の端部は固定金具によって縦柱又は支柱部材に固定されていることが判る。
以上述べた点は、実施例1に係る幅木と全く同じである。実施例2に係る幅木が実施例1と異なる点は、幅木本体31に上方向から荷重が作用した際に固定金具50の先端部50aの延長部分50bが幅木本体の捩れを抑える効果を得る構造ではなく、縦柱又は支柱部材に外接する固定金具の先端部が下方に延長された部分を有する構造によって、幅木本体の両端部31cが上方に延長された部分を有する構造を採用した点にある。この幅木本体31の両端部が上方に延長された部分31cを有していることにより、幅木本体31に上方向から荷重が作用した際に、幅木本体の両端部が上方に延長された部分31cが幅木本体の捩れを抑える効果を有する。
図13は、図12に示す幅木を枠組足場に組み込んだ後に固定金具を横方向に回転させたときの一例を示す。(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が(a)の矢視A−A断面図、(d)が(a)の矢視B−B断面図である。
図12に示す幅木を、隣接する横桟23の間に幅木本体31を架け渡し、その後、幅木本体の端部近傍に設けられた固定金具50を、固定金具固定ボルト51を回転軸として、上方向から横方向に115度回転させることによって、先端部50aと幅木本体の端部31aとで縦柱22を挟み、もって、幅木本体の端部31aを縦柱22に固定したところである。この幅木はL型幅木であるから、幅木本体31の足場側には塞ぎ板36が存在するので、幅木本体31と足場板(図示せず)との間には隙間は生じていない。
この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、取付金具を用いることなく、幅木本体31の両端部を直接に隣接する横桟23の上に架け渡すことができる。また、この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、隣接する幅木本体の端部を縦柱22の足場側に内接させて重ねて設置する事が可能となる。この場合、幅木本体の端部31aが縦柱22の足場側に強固に設置されるので、幅木本体同士がお互いに浮き上がりを防止することによって、塞ぎ板36を備えるL型幅木であっても、強風により幅木が浮き上がるおそれは少ない。
ここで、固定金具50は横方向に位置しており、その先端部50aが縦柱22に外接するとともに、その先端部50aと幅木本体の端部31aとで縦柱22を挟んでいる。したがって、幅木本体の端部は固定金具によって縦柱22に固定されている。なお、ここでは、この幅木本体の両端部31aが上方に延長された部分31bを有している。これにより、幅木本体に上方向から荷重が作用して幅木本体が捩れることを防止することができるので、幅木本体が縦柱22から外れるおそれは小さくなる。
以上は、幅木がL型幅木の場合でもって説明したが、実施例1と同様に、折り畳み可能なL型幅木の場合であっても、あるいは幅木が幅木本体だけで塞ぎ板を有しない場合であっても、幅木本体の両端部近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能な固定金具を設けることによって、幅木本体の表側より幅木本体の設置作業が可能であり、かつ、設置後に幅木本体の表側より目視によって取付状態が確認できることに変わりはない。また、以上は、幅木を枠組足場の縦柱に固定する場合でもって説明したが、くさび緊結式足場あるいはシステム支保工にも適用できることは言うまでもない。
図14は、本発明に係る幅木の他の例である。(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が(a)の矢視A−A断面図、(d)が(a)の矢視B−B断面図である。
この幅木はL型幅木であって、長尺の幅木本体31と、長尺の幅木本体に設けてなる長尺の塞ぎ板36からなり、枠組足場、くさび緊結式足場、システム支保工などの足場に用いることができるものであり、幅木本体31の両端部の近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能な固定金具50が設けられている。この幅木も、実施例1に係る幅木と同様に、固定金具50が設けられていることにより、幅木本体の表側より幅木本体の設置作業が可能であり、かつ、設置後に幅木本体の表側より目視によって取付状態が確認できる。
この固定金具50は、クランク形状を有していて、幅木本体の両端部近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能に設置されている。そして、固定金具50が横方向に位置するときに縦柱又は支柱部材に外接する先端部50aを有しており、この先端部50aと幅木本体の端部31aとでその縦柱又は支柱部材を挟むことができる。そして、固定金具50は横方向と上方向の2つの位置で固定金具の回転を止めて保持できる構造となっている。ここでは、固定金具50が上方向に立ち上がった位置で止まっているから、固定金具50は縦柱22から外れていることになり、幅木本体の端部31aは固定金具50によって縦柱22には固定されていないことが、幅木本体の表側より目視で判断できる。また、この幅木本体の両端部の下方にはその強度を向上するために折り曲げ部31bが設けられている。また、幅木本体31は従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、隣接する幅木本体の端部を重ねて設置する事が可能となる。さらに、この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、取付金具を用いることなく、幅木本体31の両端部を直接に隣接する横桟23の上に架け渡すことができる。そして、ここでも固定金具50が上方向に立ち上がった位置で止まっているが、その回転可能な角度は横方向と上方向の間の115度である。この固定金具50は横方向になるまで回転させると、その先端部50aと幅木本体の端部31aとでその縦柱又は支柱部材を挟むことになる。したがって、固定金具50が横方向に寝ているときは、固定金具と幅木本体の端部とで縦柱又は支柱部材を挟んでいることになるので、幅木本体の端部は固定金具によって縦柱又は支柱部材に固定されていることが判る。
以上述べた点は、実施例1に係る幅木と全く同じである。実施例3に係る幅木が実施例1と異なる点は、幅木本体31に上方向から荷重が作用した際に固定金具50の先端部50aの延長部分50bが幅木本体の捩れを抑える効果をさらに得るために、縦柱又は支柱部材に外接する固定金具の先端部が下方に延長された部分を有する構造に加えて、幅木本体の両端部31cが上方に延長された部分を有する構造をも採用した点にある。この固定金具50の先端部50aが下方に延長された部分50bを有するだけでなく、幅木本体31の両端部が上方に延長された部分31cを有していることにより、幅木本体31に上方向から荷重が作用した際に、固定金具の先端部の延長部分50bと幅木本体の両端部が上方に延長された部分31cが幅木本体の捩れをさらに抑える効果を有する。
図15は、図14に示す幅木を枠組足場に組み込んだ後に固定金具を横方向に回転させたときの一例を示す。(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が(a)の矢視A−A断面図、(d)が(a)の矢視B−B断面図である。
図14に示す幅木を、隣接する横桟23の間に幅木本体31を架け渡し、その後、幅木本体の端部近傍に設けられた固定金具50を、固定金具固定ボルト51を回転軸として、上方向から横方向に115度回転させることによって、先端部50aと幅木本体の端部31aとで縦柱22を挟み、もって、幅木本体の端部31aを縦柱22に固定したところである。この幅木はL型幅木であるから、幅木本体31の足場側には塞ぎ板36が存在するので、幅木本体31と足場板(図示せず)との間には隙間は生じていない。
この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、取付金具を用いることなく、幅木本体31の両端部を直接に隣接する横桟23の上に架け渡すことができる。また、この幅木本体31は、従来の幅木のものより長手方向に延長されていて、支柱間距離よりも長いので、隣接する幅木本体の端部を縦柱22の足場側に内接させて重ねて設置する事が可能となる。この場合、幅木本体の端部31aが縦柱22の足場側に強固に設置されるので、幅木本体同士がお互いに浮き上がりを防止することによって、塞ぎ板36を備えるL型幅木であっても、強風により幅木が浮き上がるおそれは少ない。
ここで、固定金具50は横方向に位置しており、その先端部50aが縦柱22に外接するとともに、その先端部50aと幅木本体の端部31aとで縦柱22を挟んでいる。したがって、幅木本体の端部は固定金具によって縦柱22に固定されている。なお、ここでは、この固定金具50は、先端部50aが下方に延長された部分50bを有するだけでなく、両端部31aが上方に延長された部分31bを有している。これにより、幅木本体に上方向から荷重が作用して幅木本体が捩れることをさらに防止することができるので、幅木本体が縦柱22から外れるおそれはさらに小さくなる。
以上は、幅木がL型幅木の場合でもって説明したが、実施例1と同様に、折り畳み可能なL型幅木の場合であっても、あるいは幅木が幅木本体だけで塞ぎ板を有しない場合であっても、幅木本体の両端部近傍の裏面に並行に垂直面で回転可能な固定金具を設けることによって、幅木本体の表側より幅木本体の設置作業が可能であり、かつ、設置後に幅木本体の表側より目視によって取付状態が確認できることに変わりはない。また、以上は、幅木を枠組足場の縦柱に固定する場合でもって説明したが、くさび緊結式足場あるいはシステム支保工にも適用できることは言うまでもない。