JP2012165614A - 回転電機 - Google Patents
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Abstract
【課題】永久磁石からの磁束を弱めることなく強め界磁制御を行うことができる可変界磁型の回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機10は、回転可能に設けられた回転シャフト12と、回転シャフト12の外周に固設されたロータコア14と、ロータコア14の径方向外方に配置されているステータ16と、ステータ16の外周に設けられた界磁ヨーク18と、界磁ヨーク18とロータコア14との間に磁気回路MC2を形成することでロータコア14とステータコア30との間での磁束量を制御可能な界磁コイル20とを備える。ロータコア14は、N極およびS極が径方向に並ぶようにロータコア14内に配置された磁石24と、磁石24に対してロータコア14の周方向に離れて隣り合うように配置されて磁気回路MC2の一部を構成する磁性材料からなる磁極構成部材26とを周方向に交互に有する。
【選択図】図2
【解決手段】回転電機10は、回転可能に設けられた回転シャフト12と、回転シャフト12の外周に固設されたロータコア14と、ロータコア14の径方向外方に配置されているステータ16と、ステータ16の外周に設けられた界磁ヨーク18と、界磁ヨーク18とロータコア14との間に磁気回路MC2を形成することでロータコア14とステータコア30との間での磁束量を制御可能な界磁コイル20とを備える。ロータコア14は、N極およびS極が径方向に並ぶようにロータコア14内に配置された磁石24と、磁石24に対してロータコア14の周方向に離れて隣り合うように配置されて磁気回路MC2の一部を構成する磁性材料からなる磁極構成部材26とを周方向に交互に有する。
【選択図】図2
Description
本発明は、回転電機に関する。
従来、ロータに永久磁石を配置した永久磁石型モータが様々な分野で利用されており、例えば、電気自動車やハイブリット自動車の駆動源として利用されている。このような電気自動車やハイブリット自動車の駆動源は、低回転−高出力、高回転−低出力という車両の走行特性が要求される。
モータは、一般にロータからステータに流れる磁束と、ステータ巻線に流れるモータ電流によって、発生するトルクが決定される。ステータとロータ間に流れる磁束は、用いられる磁石等によって決定され、回転速度とは関係なく一定に保たれる。そして、回転速度は、モータ電流によって決定される。しかし、モータ電流は、インバータ等の電源からの電圧によって決まるため、ステータコイルの電圧と電源電圧の最大電圧とが一致したときの回転数が最大回転数となる。
このような永久磁石型モータにおいて、電源電圧を一定として定出力運転を行う場合、低回転数における出力を向上させると共に、最高回転数をさらに上昇させて走行特性を広げるために、いわゆる「強め界磁」、「弱め界磁」について、各種提案されている。
例えば、特開2010−68596号公報(特許文献1)には、電機子マニホールド規制鎖交磁束量の可変制御が可能な電動機が開示されている。この電動機は、回転可能な回転シャフトと、回転シャフトに固設された表面永久磁石型のロータコアと、ロータコアの周囲にギャップを介して配置されたステータと、ステータの外周に固設された界磁ヨークと、界磁ヨークの内周部である突部の周囲に巻回された界磁巻線とを備える。上記ロータは、回転シャフトの外周に固定された粉末成形磁性体である円筒状の圧粉ロータコアと、圧粉ロータコアの外周に固定された電磁鋼板積層体である積層ロータコアとからなっている。そして、界磁巻線に電流を流して生成される磁力線を界磁ヨークとロータコアとの間に形成される磁気回路に流すことにより、上記ギャップを介してロータからステータへ又はこの逆へと渡る磁束密度を調整することで強め界磁制御および弱め界磁制御を行うことが記載されている。
上記特許文献1の電動機では、上記磁気回路を形成するための圧粉ロータコアが永久磁石に対して径方向内方に位置しているため、強め界磁制御を行ったときに永久磁石の着磁方向とは反対方向に界磁磁束が作用することにより永久磁石からの磁束を弱めるように働いてしまうおそれがあり、その結果、強め界磁制御を行ったときのトルク発生ロスが生じる可能性がある。
本発明の目的は、永久磁石からの磁束を弱めることなく強め界磁制御を行うことができる可変界磁型の回転電機を提供することにある。
本発明に係る回転電機は、回転可能に設けられた回転シャフトと、前記回転シャフトの外周に固設されたロータコアと、前記ロータコアの径方向外方にギャップを隔てて配置され、内周部にステータコイルが巻回されている筒状のステータと、前記ステータの外周に設けられた界磁ヨークと、前記界磁ヨークと前記ロータコアとの間に磁気回路を形成することで、前記ロータコアと前記ステータコアとの間での磁束量を制御可能な界磁巻線と、を備え、前記ロータコアは、異なる磁性の一組の磁極が前記ロータコアの径方向に並ぶように前記ロータコアに配置された磁石と、前記磁石に対して周方向に離れて隣り合うように配置されて前記磁気回路の一部を構成する磁性材料からなる非磁石部材とを、前記ロータコアの周方向に交互に有するものである。
本発明に係る回転電機において、前記非磁性部材は、一体成形された磁性材料から構成されており、前記ロータコアの軸方向に亘って延在する前記非磁性部材の軸方向端部が、前記界磁コイルによって生成される磁力線を前記界磁ヨークの内周部との間で受け渡し可能なように前記ロータコアの軸方向端面から突出して前記界磁ヨークの内周部に近接していることが好ましい。
また、本発明に係る回転電機において、前記非磁石部材は、一体成形された磁性材料から構成されており、前記磁石と同じ断面形状を有していてもよい。
本発明に係る回転電機によれば、強め界磁制御を行うときに界磁磁束が流れる磁気回路の一部を構成する磁性材料からなる非磁石部材が、ロータコアに設けられた磁石に対して周方向に離れて隣り合うように配置されていることで、ロータコアおよびステータとの間に形成される上記磁気回路を流れる界磁磁束が磁石に対して反磁界方向に流れるのを抑制できる。これにより、強め界磁制御のときに磁石磁束が界磁磁束によって弱められるのを防止でき、その結果、磁石磁束を弱めることなく強め界磁制御によるトルク出力向上を図ることができる。
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
図1は、本実施の形態に係る回転電機10の径方向断面図であり、図2は、図1のA−A線に沿った軸方向断面図である。図1および図2に示されるように、回転電機10は、回転可能な回転シャフト12と、この回転シャフト12の外周に固設されたロータコア14と、ロータコア14の径方向外方にエアギャップGを介して配置された筒状のステータ16と、ステータ16の外周に固設された界磁ヨーク18と、界磁ヨーク18に巻回して設けられている界磁コイル(界磁巻線)20と備えている。
回転シャフト12は、金属製の軸部材であり、その両端部分において軸受22を介して界磁ヨーク18に回転可能に設けられている。回転シャフト12とロータコア14とによりロータ15が構成されている。
ロータコア14は、複数の電磁鋼板13を軸方向に積層して一体に構成される円筒状の積層体である。このようにロータコア14は複数の電磁鋼板を積層して構成されて鋼板間には隙間があるため、軸方向の磁気抵抗が、径方向および周方向の磁気抵抗より大きくなっている。このため、ロータコア14内においては、磁石からの磁力線は、軸方向に流れ難く、径方向および周方向に流れやすくなっている。
ロータコア14の内部には、磁石24と、非磁石部材である磁極構成部材26とが埋設されている。磁石24および磁極構成部材26は、ロータコア14の外周面近傍の内部に軸方向に延伸して形成されている穴25内に挿入されて配置されており、穴25の周方向両側に形成されるポケット部27に樹脂を充填して硬化させることによりロータコア14内に固定されている。また、ポケット部27は、磁石24の周方向端部における磁束の漏れまたは短絡を抑制する機能も有する。
磁石24は、異なる磁性の一組の磁極がロータコア14の径方向に並ぶように配置されている。具体的には、本実施形態では、磁石24の径方向外側の表面極性がS極で、径方向内側の表面極性がN極とされている。ただし、これとは反対の極性の向きで磁石がロータコア内に配置されてもよい。また、磁石24は、扁平な長方形状の断面を有するとともにロータコア14の軸方向に亘って延在している。磁石24の軸方向端面は、ロータコア14の端面と略面一に構成されている。
磁極構成部材26は、一体成形された磁性材料から構成されており、具体的には粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から構成されている。磁極構成部材26は、磁石24とともに磁極対を構成する。具体的には、本実施形態では磁石24が径方向外側にS極の表面を有することで、磁極構成部材26は磁石ではないもののN極の磁極を構成するように機能する。
磁極構成部材26は一体成形された粉末成形磁性体からなるため、磁極構成部材26の軸方向の磁気抵抗は、ロータコア14の軸方向の磁気抵抗より小さくされている。したがって、磁極構成部材26では、ロータコア14内よりも軸方向に磁力線が流れやすくなっている。そして、磁極構成部材26はロータコア14よりも軸方向長さが長く形成されており、その軸方向両端部がロータコア14の軸方向端面から突出している。
また、磁極構成部材26は、ロータコア14の周方向に関して、磁石24から離れて隣り合う位置に配置されている。具体的には、本実施形態のロータコア14は、磁石24および磁極構成部材26からなる磁極対を周方向に均等な配置で二対含んでいることから、磁極構成部材26の周方向中心は、ロータコア14の回転中心(すなわち回転シャフトの回転中心)Xに関して磁石24の周方向中心から90度だけ離れている。すなわち、本実施形態では、磁石24と磁極構成部材26とがロータコア14の周方向に90度間隔で交互に2つずつ配置されている。
また、磁極構成部材26の径方向位置は、ロータ回転時の振れ等を抑制するために、磁石24の径方向位置と同じにされている。ただし、これに限定されるものではなく、磁石24と磁極構成部材26との径方向位置が異なるように構成されてもよい。
ここで、磁石24と磁極構成部材26とは、同じ断面形状に形成されるのが好ましい。本実施形態では、磁石24および磁極構成部材26は、このようにすることで、ロータコア14に形成される穴25の形状を同じにすることができ、ロータコア14の製造を容易にすることができる。
ただし、磁石24の磁束発生性能等を考慮して、磁石24と磁極構成部材26の断面形状を異ならせてもよい。例えば、上記と同様の扁平長方形状であるが、磁石24の断面の径方向厚みを磁極構成部材26のそれよりも大きく形成してもよい。この場合、磁石24および磁極構成部材26の各挿入穴が異なった大きさに形成されることになるため、磁石24と磁極構成部材26との組付け間違いを防ぐことができるという利点がある。
ステータ16は、中空円筒状に形成されたステータコア30と、このステータコア30の内周部に形成されてステータコア30の径方向内方に向けて突出する複数のステータティース32と、このステータティース32に巻き付けられたステータコイル34とを備えている。ステータティース32は、周方向に等間隔に隔てて形成されている。
ステータコイル34の一部はU相コイルを構成し、残りの一部のステータコイル34はV相コイルを構成し、残りのステータコイル34はW層コイルを構成する。ステータコイル34の一方端が、端子とされ、他方端が中性点とされ、端子には図示されないインバータの三相ケーブルのU相ケーブル、V相ケーブル、W相ケーブルのいずれかが接続される。また、中性点は、1点に共通接続される。
ステータコイル34には、回転電機10が出力すべきトルク指令値に応じた交流電流が上記の三相ケーブルを介して供給される。これにより、ステータ16の内周に回転磁界が形成され、その回転磁界の作用によってロータ15が回転駆動される。その結果、上記トルク指令値によって指定されたトルクが回転電機10によって出力されるようになっている。
ステータコア30は、電磁鋼板を複数積層して形成されており、電磁鋼板間には、エアギャップが形成されている。このため、ステータコア30の径方向および周方向の磁気抵抗は、軸方向の磁気抵抗より小さくなっている。これにより、ステータコア30内に入り込んだ磁力線は、ステータコア30内においてステータコア30の周方向および径方向に流れやすく、軸方向に流れることが抑制されている。
図2に示すように、界磁ヨーク18は、ステータ16およびロータ15の両端部から軸方向に離れた位置に配置された端板部18aと、この端板部18aの周縁部に連なって形成された円筒状の側壁部18bとを備え、その内部にロータ15およびステータ16が収容されている。
端板部18aの中央部には、貫通孔23が形成されており、貫通孔23内には、軸受22を介して、回転シャフト12が挿入されている。側壁部18bは、ステータコア30の外表面に固設されている。
界磁ヨーク18は、一体成形された磁性材料から構成されており、具体的には、3次元完全等方材料である粉末成形磁性体(SMC)から構成されている。このため、界磁ヨーク18の軸方向の磁気抵抗は、ステータコア30の軸方向の磁気抵抗よりも小さくされている。
端板部18aは、ロータコア14に向かって円板状または円環状に突出した突部19を有する。そして、突部19とロータコア14に設けた磁極構成部材26との間で、磁力線が途切れなることなく受け渡し可能な程度に、突部19と磁極構成部材26の端部とが近接している。
これにより、磁力線が磁極構成部材26内を軸方向に流れてロータコア14の電磁鋼板に入り込み、電磁鋼板を径方向に流れた磁力線がエアギャップGを介してステータコア30を通って界磁ヨーク18に達し、それから界磁ヨーク18内を軸方向および径方向に流れ、そして、突部19から磁極構成部材26内に戻るという磁気回路(第2磁気回路)MC2を形成することができる。したがって、磁極構成部材26は、この磁気回路MC2の一部を構成する。
この磁気回路MC2において、ステータコア30の径方向の磁気抵抗は小さく抑えられており、界磁ヨーク18内の磁気抵抗も小さく抑えられており、さらに、粉末成形磁性体からなる磁極構成部材26の磁気抵抗も小さく抑えられているため、磁気エネルギーのロスを小さく抑えることができる。
界磁コイル20は、突部19の外周面に巻き付けられている。この界磁コイル20に電流を流すことにより、突部19の端部側、すなわち磁極構成部材26の端部に近接した表面側に例えばN極の磁性を持たせると共に側壁部18bにS極の磁性を持たせたり、あるいは、突部19の端部側にS極の磁性を持たせると共に側壁部18bにN極の磁性を持たせたりすることができる。
なお、本実施形態においては、界磁コイル20は、界磁ヨーク18の突部19に設けられているが、この位置に限られず、界磁ヨーク18に設けられていればよい。ここで、界磁コイル20が界磁ヨーク18に設けられているとは、界磁コイル20が界磁ヨーク18の表面に当接している場合に限られず、界磁ヨーク18内の磁力線の流れを制御可能な程度であれば、界磁ヨーク18の表面から離なれて配置されている場合も含む。
続いて、上記のように構成される回転電機10の動作について、図3から図8を用いて説明する。図3は、図2に示す界磁コイル20に電流が供給されていない状態における磁石24からの磁力線の流れを示す一部断面図であるが、磁力線を分かりやすくするために断面ハッチングが省略されると共に、ステータコイルの図示が省略されている。また、図3においては、磁石24から周方向両側の磁極構成部材26への磁束の流れのうち回転方向前方側に位置する磁極構成部材26への流れだけを示して他方の図示を省略している。
この図3に示す例においては、回転しているロータコア14に埋設された磁石24における回転方向(矢印R方向)前方側の端部がステータコア30のステータティース32aに対向し、同じくロータコア14に埋設された磁極構成部材26の回転方向前方側の端部が上記ステータティース32aから回転方向前方側に離れたステータティース32cに対向している状態を示す。このとき、ステータティース32aの内径側の端面がN極とされ、ステータティース32cの内径側の端面がS極とされている。
磁石24においてN極である内周側表面から出た磁力線m1〜m3は、ロータコア14を構成する電磁鋼板13中を回転方向前方側へ周方向に進んで磁極構成部材26を貫通して通る。そして、磁力線m1〜3は、ロータコア14の外周面からエアギャップGを介してステータティース32cに入り込む際に回転方向前方側に向かうように傾斜し、ステータティース32cの端面に達する。
このように、磁極構成部材26を通り抜けた磁力線m1〜m3がステータティース32cに達するまでの磁気経路が傾斜し長くなっているので、磁気経路が最短となるようにロータ15に応力が加えられる。すなわち、N極磁極を構成するように機能する磁極構成部材26が、ステータティース32cに向けて引っ張られることになる。
ステータティース32cに入り込んだ磁力線m1〜m3は、ステータコア30を構成する電磁鋼板中を径方向および周方向に沿って回転方向後方側へ流れる。この際、ステータコア30内の磁気抵抗は小さいため、磁力線のエネルギーのロスが低減されている。なお、ステータコア30から界磁ヨーク18の側壁部18bへと漏れる磁力線量は僅かであるため、これによる磁気エネルギーのロスは無視できる程度に小さい。
磁力線m1〜m3がステータコア30内の周方向に流れるとき、磁気経路の中間に位置するステータティース32bの内径側の端面はS極とされる一方でステータティース32bの径方向外側の基端部がN極とされているため、磁気反発力によって磁力線m1〜m3がステータティース32bへ向かうのが抑制される。
そして、磁力線m1〜m3は、ステータティース32aからギャップGを介してロータコア14内の磁石24の径方向外側の表面磁極であるS極に戻る。このとき、エアギャップGを渡る磁力線m1〜m3は、ステータティース32aに対して回転方向後方側に位置する磁石24に戻るに際して、回転方向後方側へ傾斜して経路長が長くなっている。そのため、その経路長が最短となるように、磁石24がステータティース32aに向けて良好に引き寄せられる。
上記のように、磁力線m1〜m3は、磁石24からロータコア14内を流れて磁極構成部材26を貫通し、エアギャップGを介してステータティース32c内に達し、ステータコア30内を周方向に通り、その後、ステータティース32aからエアギャップGを介してロータコア14内に達し、再び磁石24に戻る磁気回路(第1磁気回路)MC1を形成する。そして、この磁気回路MC1を磁石磁束が流れることによって、ロータ15に回転トルクを発生させることができる。
次に、図4,5を参照して、回転電機10において強め界磁制御が行われたときの動作について説明する。図4は、回転電機10において強め界磁制御が実行されているときの軸方向断面図であり、図5は、図4におけるC−C線に沿った一部断面図である。
図4に示すように、強め界磁制御が実行されるとき、外部から給電することによって界磁コイル20に電流を流すと、界磁コイル20により磁力線m4が生成される。この磁力線m4は、主として磁気回路MC2を通って流れる。なお、図5に示すように、磁石24から出た磁力線m1〜m3の磁気回路MC1における流れは上述したのと同様である。
磁力線m4は、界磁ヨーク18の端板部18aを通り、近接する端部から磁極構成部材26内に入り込む。そして、磁力線m4は、磁極構成部材26中を軸方向に通って、ロータコア14を構成する電磁鋼板13内に流れ込み、ロータコア14の外周面側へ流れる。それから、磁力線m4は、図5に示すように、エアギャップGを介してステータコア30のステータティース32cへと渡る。このとき、上述した磁力線m1〜3と同様に磁力線m4もまた、回転方向前方側へ傾斜して経路長が長くなっている。そのため、磁気経路が最短となるようにロータ15に引っ張り力が作用する。すなわち、磁力線m4も、ロータ15に対するトルクの発生に寄与することができる。
ステータティース32cからステータコア30内に入り込んだ磁力線m4は、界磁ヨーク18に入り込んで側壁部18bを軸方向に流れる。そして、磁力線m4は、側壁部18bから端板部18aへと流れて、界磁コイル20が設けられている突部19へと戻る。
このような磁気回路MC2を流れる磁力線m4の量、すなわち磁束量は、界磁コイル20に流れる電流を制御することによって調整することができる。このような磁力線m4によるトルク発生作用を磁石磁束だけによる場合に加えて上乗せすることにより、回転電機10のトルク出力を向上させることができるのである。
また、本実施形態の回転電機10では、磁気回路MC2の一部を構成する磁極構成部材26が、ロータコア14に埋設された磁石24に対して周方向に離れて隣り合って配置されている。そのため、ロータコア14およびステータ16との間に形成される磁気回路MC2を流れる磁力線m4が磁石24に対して反磁界方向、すなわちN極表面からS極表面へと通り抜ける方向に流れるのを抑制できる。これにより、強め界磁制御のときに磁石24による磁束が弱められるのを防止でき、その結果、強め界磁制御によるトルク出力向上を効果的に図ることができる。
次に、図6,7を参照して、回転電機10において弱め界磁制御が行われたときの動作について説明する。図6は、回転電機10において弱め界磁制御が実行されているときの軸方向断面図であり、図7は、図6におけるD−D線に沿った一部断面図である。
図6に示すように、弱め界磁制御が実行されるとき、外部から給電することによって界磁コイル20に強め界磁制御時とは逆方向に電流を流す。これにより、磁気回路MC2上に生成される磁力線m4は、界磁ヨーク18の端板部18aから側壁部18bへと流れ、そこからステータコア30内に入り込んでステータティースの端面からエアギャップGを介してロータコア14に渡る。そして、磁力線m4は、ロータコア14内の磁極構成部材26の中を軸方向に通ってロータコア14の端面から突出する端部へと達し、そこから近接して位置する界磁コイル20の端板部18aに戻る。なお、図7に示すように、磁石24から出た磁力線m1〜m3の磁気回路MC1における流れは上述したのと同様である。
このように弱め界磁制御のとき磁気回路MC2を流れる磁力線m4は、図7中に点線矢印で示す磁気回路MC2上において界磁ヨーク18から磁極構成部材26へ向かう方向の起磁力を発生させることになり、磁石24による磁束が弱められる結果となる。したがって、ロータ15とステータ16の間に生じる磁束を低減することにより、高回転領域においても、図1に示すステータコイル34に生じる誘導起電力を弱めることができる。このように誘導起電力を低減することができるので、インバータ等の電源の最大電圧とが釣り合う回転数を高めることができる。このため、この回転電機10は、高回転領域においても、比較的低電圧で回転駆動することができる。また、ロータコア14中を通る磁束が減るため、いわゆる鉄損も低減できる。
このように弱め界磁制御が行われる場合にも、非磁石部材である磁極構成部材26が磁石24に対して周方向に離れて隣り合って配置されていて磁気回路MC2を流れる磁束m4は磁極構成部材26だけを通るため、磁気回路MC2による起磁力が磁石24に対して反磁界方向にかかるのを抑制できる。したがって、弱め界磁によって磁石24を減磁させるということもない。
図8は、回転電機10のトルク(T)と回転数(N)との関係を示すグラフである。図8において、低回転で高トルクの領域T2では上記の強め界磁制御を好適に用いることができ、高回転で低トルクの領域T3では上記の弱め界磁を好適に用いることができる。そして、領域T2,T3以外の運転領域T1では、界磁コイルへの電力供給を停止して磁気回路MC2に界磁磁束を積極的に流すことを行わない。これにより、電力消費量を低減することができ、使用電力量が制限される車両等に回転電機10が動力源として搭載された場合に、燃費向上を図ることができる。なお、回転電機10が図8中の符号T4で示す領域(領域T3を含む)で運転される場合、すなわち、低トルクで駆動される場合には、回転数に拘わらず上記の弱め界磁制御を実行してもよい。この場合、ロータコア14中を通る磁束を減少させて鉄損の低減を図り、回転電機10の高効率化した運転が可能になる。
上述したように本実施形態の回転電機10によれば、強め界磁制御および弱め界磁制御が実行される場合に、界磁磁束がロータコア14に設けた磁石に反磁界方向にかかるのを防止できる。その結果、磁石24の減磁対策として磁石厚みを大きくしておく必要がなく、磁石使用量を低減できてコスト削減を図れる。
また、従来例の回転電機では、強め界磁制御等を行うための円筒状の粉末成形磁性体が回転シャフトの外周に固設されて積層ロータコアをその外周面で支持する構成であったが、本実施形態の回転電機10では粉末成形磁性体からなる磁極構成部材26はロータコア14内に磁石24と周方向に離れて並ぶように配置されているため鋼板積層体であるロータコア14を回転シャフト12上に直に固定することができる。したがって、磁極構成部材26について高い強度および精度を求められることがなくなり、その結果として粉末成形磁性体からなる磁極構成部材の製造コストを低減できる。
さらに、本実施形態では、磁極構成部材26が磁石24と略同程度の大きさの部材として形成されるため、比較的大きな部材である円筒状の粉末成形磁性体を成形する場合に比べて、成形圧力が低い加圧成形設備で製造可能であり、これによっても製造コスト低減効果が見込める。さらにまた、低圧成形でよいことから磁極構成部材26中での鉄損(ヒステリシス損)を低減することも期待できる。
なお、上記において本実施形態の回転電機10について説明してきたが、本発明は上述した構成に限定されるものではなく、種々の変更や改良が可能である。
例えば、上記実施形態では、ロータコア14において磁石24および磁極構成部材26からなる磁極対を二対設けた例について説明したが、三対以上の磁極対をロータコア14の周方向に均等配置で設けてもよい。また、上記実施形態では磁石を埋設したIPM(Interior Permanent Magnet)型ロータを例示したが、磁石の表面がロータコアの外周面に露出したSPM(Surface Permanent Magnet)型ロータであってもよい。
また、図9に示すように、磁石24と磁極構成部材26との間に対応するロータコア14の外周に凹部14aを軸方向に亘って形成してもよい。これにより、磁石24からの磁束が凹部14aを形成した部分からロータ外へ漏れるのを抑制できる。
さらに、本発明に係る回転電機は、ハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車等の電動車両の動力源として搭載される場合に限られず、産業機械、空調機械、環境機器等の様々な機器に搭載される回転電機に対しても適用可能である。
10 回転電機、12 回転シャフト、13 電磁鋼板、14 ロータコア、15 ロータ、16 ステータ、18 界磁ヨーク、18a 端板部、18b 側壁部、19 突部、20 界磁コイル、22 軸受、23 貫通孔、24 磁石、25 穴、26 磁極構成部材、26 磁極構成部材、27 ポケット部、30 ステータコア、32,32a,32b,32c ステータティース、34 ステータコイル、G エアギャップ、GP エアギャップ、m1,m3,m3 磁力線、MC1,MC2 磁気回路。
Claims (3)
- 回転可能に設けられた回転シャフトと、
前記回転シャフトの外周に固設されたロータコアと、
前記ロータコアの径方向外方にギャップを隔てて配置され、内周部にステータコイルが巻回されている筒状のステータと、
前記ステータの外周に設けられた界磁ヨークと、
前記界磁ヨークと前記ロータコアとの間に磁気回路を形成することで、前記ロータコアと前記ステータコアとの間での磁束量を制御可能な界磁巻線と、を備え、
前記ロータコアは、異なる磁性の一組の磁極が前記ロータコアの径方向に並ぶように前記ロータコアに配置された磁石と、前記磁石に対して周方向に離れて隣り合うように配置されて前記磁気回路の一部を構成する磁性材料からなる非磁石部材とを、前記ロータコアの周方向に交互に有する、
回転電機。 - 請求項1に記載の回転電機において、
前記非磁性部材は、一体成形された磁性材料から構成されており、前記ロータコアの軸方向に亘って延在する前記非磁性部材の軸方向端部が、前記界磁コイルによって生成される磁力線を前記界磁ヨークの内周部との間で受け渡し可能なように前記ロータコアの軸方向端面から突出して前記界磁ヨークの内周部に近接していることを特徴とする回転電機。 - 請求項1または2に記載の回転電機において、
前記非磁石部材は、一体成形された磁性材料から構成されており、前記磁石と同じ断面形状を有していることを特徴とする回転電機。
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