JP2012116573A - 避難用エレベータシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】火災時には基準階以外の階から基準階へのエレベータでの避難のための交通も担当する建物に設置される避難用エレベータシステムであって、前記建物の基準階以外の階には火災発生の信号を受信した場合に天井から降下する防火シャッターで区画される一時避難場所が前記エレベータに面している廊下部分に設置されており、前記エレベータの制御装置には火災発生時に予め定められた優先順序で基準階と優先された基準階以外の階との間を当該階の避難者の避難が終了するまで往復運転を繰り返し、当該階の避難終了後は基準階以外の全ての階の避難者の避難が終了するまで該往復運転を繰り返すために次順の階へと移行する火災時避難運転が組み込まれている。
【選択図】図1
Description
しかし、過去の火災において、特に火災初期には、エレベータを用いて避難を行ったケースが少なくない。ましてや高齢者の全人口に占める割合が急速に増加しつつある現在、障害者等の歩行困難な人々の一般のビルや都市施設における利便性(アクセシビリティ)が改善され、バリアフリー化が進んできている。一般のビルにおける火災などの緊急避難時においても、年々増えている階段利用が困難な人々の利便性を、より図る必要性が増している。
例えば、特許文献1には、エレベータの乗降扉や建物内の通路などに設置し、火災時に煙やガスの漏洩拡散を遮り、かつ容易に避難脱出可能な遮煙シャッターが開示されている。特許文献2には、火災発生時に収納部から引き出して降下させた耐火スクリーンにより、エレベータの昇降路と乗降場とを区画し、エレベータの乗降口を遮断するものが開示されている。この耐火スクリーンには、人が容易に通過できる避難用開閉扉が形成されている。特許文献3には、火災発生により扉などの隙間から侵入または噴き出す大量の高熱煙を、扉に沿って防火防煙シートを下降させ隙間を覆い密閉遮断すると共に防火防煙シートの適所に耐熱ガラス等の透明材を用いた覗き窓を設けて、避難や消火活動を容易にする効果を期待できると共に、新築、既存いずれの建造物にも簡単に設置することができる防火防煙装置が開示されている。ちなみに、遮煙スクリーンが設置されている階に停止した場合、乗客は遮煙スクリーンを手で押し上げるかスクリーンに設けられた扉を通ってかご内から乗り場に脱出する。
しかし、これらの発明では、火災時にエレベータ利用禁止の前提があるために、火災発生時にエレベータを利用する人の安全を確保しながら待機できるようにするための対策は一切行われていない。また、国交省の官庁施設の基本的性能基準(平成18年版)では、エレベータでは避難ができないため、消防士などの救出者が到着するまでの間、避難経路上または避難経路に隣接して、車椅子利用者の一時避難場所(車椅子1台分程度が例示されている)を設けることになっているが、この場合もエレベータの利用禁止の前提があるために、エレベータに乗車するための待機場所にはなっていない。
避難の際にエレベータを利用する発明としては、例えば、特許文献4には、建物内に複数階床毎に脱出階(救出階)を設け、居住階から避難者は階段で一旦、脱出階(救出階)に移動して待機し、脱出階(救出階)からは避難用エレベータで避難階へ避難用エレベータで避難者を輸送するエレベータ制御システムが開示されている。しかし、この避難用エレベータでは複数階床毎に設置される脱出階(救出階)までは階段で移動しなければならず、階段での避難が困難な車椅子利用者や高齢者などは利用が困難である。
また、特許文献5には、昇降路の上部に設置し、風を送る第1の送風装置と、昇降路の下部に設置し、風を送る第2の送風装置と、ビル内のいずれかの場所で煙感知器が動作し、かつ避難階の煙感知器が動作していない場合には、前記避難階へのエレベータかごの火災時避難運転を実施するとともに、前記第1及び第2の送風装置を送風運転させる制御盤とを備えたことを特徴とする火災時避難エレベータが開示されている。
火災時にエレベータを利用する場合、エレベータの昇降路に煙が侵入しないように乗り場扉は遮煙されるが、さらに車椅子利用者などの待ち客の安全のために乗り場に防火対策をした待機場所を設けなければならない。しかし、特許文献4及び5には、防火対策をした待機場所については記載されていない。防火対策をした待機場所が設けられていない場合は、避難用エレベータの車椅子利用者などの待ち客が待っている間に、有害な煙が乗り場に充満する恐れがあり、待ち客は危険に晒されることになる。さらに、待機場所が設けられているとしても特許文献4に記載の発明では、脱出階(救出階)に1階床分ではなく複数階床分の居住者の広い待機場所が必要なために、レンタブル比が悪化する。
このセレコレ方式は、乗り合いする乗客数が多いほど乗客一人当たりに必要なサービス時間が短くなって効率的になるという特長がある。そして、高層ビルでは、サービス階10〜15階床を1ゾーンとして、ゾーン毎に呼び釦に応答する4〜8台のエレベータが設置されている。その理由は、多くの乗客が乗り合いして高層ビルをサービスすると、平均一周時間が長くなるので、平均待ち時間を短くするために多くのエレベータが必要になるためである。ところで、台数が多くなると、乗客は押し釦を押して待っている位置から、自分が乗るべきエレベータが到着した時に、そのエレベータに乗るために移動する距離が長くなる。その移動距離の制限から、一列に設置できるエレベータは4台が限界とされている。そのために、4台ずつ対面設置した8台が呼びに応答する1群のエレベータの台数の上限になっている。
また、押し釦を押すと、どのエレベータが応答するか予報するものもあり、応答予定のエレベータのところまで余裕を持って移動できるようになっている。しかし、エレベータが到着するのは、数10秒先であるため、その間にいくつかの呼びが新規に発生して、予報していたエレベータの到着が想定外に大幅に遅れる場合などに、応答かごの割り当ての変更が少なからず発生し、その時は、新しく予報され直したエレベータまで急いで移動し直す必要がある。このように、従来の群管理システムは、台数が多くなると、車椅子利用者・老人・身体の不自由な人達にとっては、利用が困難なものである。また、台数が多くなるとエレベータが対面設置となり、呼びに応答する台数が多い場合はエレベータ乗車時に廊下を横切ることになり、エレベータの待ち客ではない通行人と交錯して危険なので廊下に沿ってエレベータを設置することができないという問題がある。
そして、特許文献6においては、M1+M2、M3+M4+M5、M6+M7+M8+M9の各M方式を開示している。
ここで、M1+M2の方式では、基準階(L)を除くサービス階を2セクター(セクター1,セクター2)に分割して、セクター1→セクター1、セクター2→セクター2、L→セクター1、セクター1→Lの各呼びをM1の2台の群に分担させ、セクター1→セクター2、セクター2→セクター1、L→セクター2、セクター2→Lの各呼びをM2の2台の群に分担させている。
M3+M4+M5の方式では、基準階(L)を除くサービス階を3セクター(セクター1,セクター2,セクター3)に分割して、セクター1→セクター1、セクター1→セクター2、セクター2→セクター1、L→セクター1、セクター1→Lの各呼びをM3の2台の群に分担させ、セクター2→セクター2、セクター2→セクター3、セクター3→セクター2、L→セクター2,セクター2→Lの各呼びをM4の2台の群に分担させ、セクター3→セクター3、セクター1→セクター3、セクター3→セクター1、L→セクター3とセクター3→Lの各呼びをM5の2台の群に分担させている。
M6+M7+M8+M9の方式では、基準階(L)を除くサービス階を4セクター(セクター1,セクター2,セクター3,セクター4)に分割して、セクター1→セクター1、セクター2→セクター2、セクター1→セクター2、セクター2→セクター1、L→セクター1,セクター1→Lの各呼びをM6の2台の群に分担させ、セクター3→セクター3、セクター4→セクター4、セクター3→セクター4,セクター4→セクター3、L→セクター3、セクター3→Lの各呼びをM7の2台の群に分担させ、セクター1→セクター3、セクター2→セクター3、セクター3→セクター1、セクター3→セクター2、L→セクター2、セクター2→Lの各呼びをM8の2台の群に分担させ、セクター1→セクター4,セクター2→セクター4、セクター4→セクター1、セクター4→セクター2、L→セクター4、セクター4→Lの各呼びをM9の2台の群に分担させている。
このM方式では、各群が分担する呼びに応答するエレベータは呼び釦の左右の2台だけなので、呼び釦を押して2台の間で待っている乗客が各群の2台が廊下に沿って設置されても廊下を横切ることはなく、廊下の通行人と交錯することがなく安全である。
特許文献7におけるLシステムとしては、L1+L2、L3+L4+L5、L6+L7+L8+L9を開示している。
ここで、L1+L2の方式では、基準階(L)を除くサービス階を2セクター(セクター1,セクター2)に分割して、セクター1→セクター1、セクター2→セクター2の各呼びをL1の2台の群に分担させ、セクター1→セクター2、セクター2→セクター1の各呼びをL2の2台の群に分担させている。
L3+L4+L5の方式では、基準階(L)を除くサービス階を3セクター(セクター1,セクター2,セクター3)に分割して、セクター1→セクター1、セクター1→セクター2、セクター2→セクター1の各呼びをL3の2台の群に分担させ、セクター2→セクター2、セクター2→セクター3、セクター3→セクター2の各呼びをL4の2台の群に分担させ、セクター3→セクター3、セクター1→セクター3、セクター3→セクター1の各呼びをL5の2台の群に分担させている。
L6+L7+L8+L9の方式では、基準階(L)を除くサービス階を4セクター(セクター1,セクター2,セクター3,セクター4)に分割して、セクター1→セクター1、セクター2→セクター2、セクター1→セクター2、セクター2→セクター1の各呼びをL6の2台の群に分担させ、セクター3→セクター3、セクター4→セクター4、セクター3→セクター4,セクター4→セクター3の各呼びをL7の2台の群に分担させ、セクター1→セクター3、セクター2→セクター3、セクター3→セクター1、セクター3→セクター2の各呼びをL8の2台の群に分担させ、セクター1→セクター4,セクター2→セクター4、セクター4→セクター1、セクター4→セクター2の各呼びをL9の2台の群に分担させている。
L+A方式の場合も、各群が分担する呼びに応答するエレベータは呼び釦の左右の2台だけなので、呼び釦を押して2台の間で待っている乗客が各群の2台が廊下に沿って設置されても廊下を横切ることはなく、廊下の通行人と交錯することがなく安全である。
このエレベータシステムの特長としては、第1にエレベータシステムのトータルの電動機容量が従来のセレコレの群管理システムと同等になる。第2にRTTが従来の半分になるので、交通を輸送するために必要な消費電力量[kWh]が半減できる。第3にLシステムとAシステムが独立しており、必要な輸送能力をAシステムの群数だけを増加することで実現できる。第4に超高層ビルでも、スカイロビー方式よりもレンタブル比が向上でき、スカイロビー方式の問題点(乗り換えの不便さ、スカイロビーでの乗客が溢れる)を回避できる。第5に超高層ビルでも、乗り換えなしで避難階に直行できる。平均待ち時間が従来のセレコレの群管理システムよりも短くなる。第6に輸送能力が高いので、昼食時においても利便性が向上するなどがあげられる。
Aシステムにおいては、1〜4階床のセクター毎に、セクターと基準階の間を運転する2台の、特許文献8において開示されている、ポストセレコレを等間隔制御する群管理システムが設置されている。ポストセレコレは、乗り場に行き先階登録釦を設置して、個々の乗客の行き先階を予め把握した上で、サービス階床を上方階床と下方階床の2層に分割して逆方向の乗客も乗り合いさせることで、平均一周時間(RTT)がセレコレと等しいとしても、セレコレと比較して、平均待ち時間を短縮し、乗客が乗り場に到着してから目的階で降車するまでの時間である平均サービス完了時間を短縮するものである。
一方、従来の火災時の運転は、火災管制運転がついている時は、火災時に避難階に呼び戻して休止するが、火災管制運転がついていない時は、通常のセレコレで呼び応答するので、輸送能力が不足して満員通過を多発するという問題があった。
従って、本発明の目的は、火災発生時に、高齢者、妊婦、子供、車椅子利用者を含む全館の居住者が、階段を使用せずに、エレベータを利用して短時間に安全に避難できる避難用エレベータシステムを提供することである。
第2に、避難者は避難用エレベータに乗車するために居住階にある防火対策をした一時避難場所内で待つため、有毒な煙に晒されることもなく、避難用エレベータに乗車した後も居住階から避難階へ乗り継ぎすることなく1回の乗車で避難階に避難できるので、避難時の安全性が高い。また、全館の居住者が階段を一切使用せずにエレベータを利用して避難できるので、高齢者、妊婦、子供、車椅子利用者の全階からのスムーズな避難が可能になるという効果もある。
第3に、防火シャッターの防炎・防煙性能は約1時間であるが、設置計画が適切であれば、火災時避難運転を行うことにより、高層ビルでも1時間未満で全館の居住者が避難完了できるという効果もある。
第4に、避難用エレベータの火災時避難運転は回生運転であるので、停電で閉じ込めが起こることはなく安全であるという効果もある。
第5に、一時避難場所は共用部分である廊下に設置できるので、複数階床毎に脱出階(救出階)を設ける方式の避難用エレベータでは必要であった複数階床分の居住者のための防火対策をした広い待機場所が不要になり、居室が設置できるレンタブルスペースを生み出せるので、レンタブル比が向上するという効果もある。
第6に、火災時避難運転により乗り合いが最小限に抑えられるので、乗り合いによる混乱を最小限に抑えることができるという効果もある。
記憶部15は、行先階入力部11によって入力された行先階呼びを、入力された階床及び入力された時刻と関連付けて記憶する。行先階呼びは、発生時刻順に、発生時刻と、出発階、未応答や応答中などの応答状態、乗車や降車などの乗降状態、出発階が属するセクター、行先階が属するセクター、などに関する情報が、リストとして記憶部15に記憶される。そして、乗客が降車後は、リストから削除される。
また記憶部15又は28に記憶される情報には、制御部14又は27によって実行されるプログラム、かごが停止している時間が予め定める時間を越えた時にかごを移動させる基準階を表す基準階情報、予め定める時間である復帰時間を表す復帰時間情報、保守のために用いられる保守情報、及び建物を複数のセクターに分割するためのセクター分割情報なども含む。基準階は、当該建物の複数の階床のうち基準となる基準階床が予め1つ設定される。このような基準階は、かごの交通パターンに合わせて設定される。計時部16又は29は、時間を計時して、制御部14又は27からの指令に基づいて、現在時間に基づく情報を制御部14又は27に出力する。
例えば、かごが2階から出発し、出発階床が2階で行先階床が3階である行先階呼び、出発階床が4階で行先階床が5階である行先階呼び、出発階床が4階で行先階床が2階である行先階呼びに応答して、3階、4階、5階、2階の順に停止して走行する場合、2階出発時に案内音声出力手段が出力する音声として、「次は、3階、4階、5階、2階の順に止まります。」と出力し、3階到着時に、「3階に止まります」と出力し、3階出発時に、「次は、4階、5階、2階の順に止まります。」と出力し、4階到着時に、「4階に止まります」と出力し、4階出発時に、「次は、5階、2階の順に止まります。」と出力し、5階到着時に、「5階に止まります」と出力し、5階出発時に、「次は、2階に止まります。」と出力し、2階到着時に、「2階に止まります。」と出力する。このように4階で、出発階床が4階で行先階床が2階である逆方向の乗客も乗車させた場合でも、到着順序、即ち停止順序を出力することによって、乗客の不安を緩和することができる。
このように、情報出力部32は、制御部27によって決定される行先階呼びに対する停止順序に基づく情報を出力する。これによってかごに乗車した乗客は、停止順序を認識することができる。従って、従来のセレコレのような方向に従った停止順序ではなく、逆方向の乗客も乗車させる場合もあるので、乗車かごの停止順序を出力することによって、乗客は自分がいつ降車するのかを前もって認識することができる。これによって、ポストセレコレのように停止順序が適宜決定される構成であっても、乗客は安心してエレベータを利用することができる。
実施の開始後(ステップS101)、かご位置検出部21、かご方向検出部22、かご速度検出部23によってかごの位置・方向・速度を検出する(ステップS102)。
次に、検出したかごの位置・方向・速度の情報を元にかごの運転フェーズを確認する(ステップS103)。
次に、通信部26を介して群管理制御装置の通信部13と通信を行う(ステップS104)。
そして、群管理制御装置の記憶部15に記憶されている行先階呼びの未応答の呼びの内、当該運転フェーズに該当する呼びを読み出し(ステップS105)、次に、記憶部28に記憶されている行先階呼びの応答中の呼びの内、当該運転フェーズに該当する呼びを読み出す(ステップS106)。
次に、火災情報受信部33が、通信部26を介して建物内に設置されている火災報知器から火災情報を受信しているかどうかを判断する(ステップS107)。
もし、火災情報受信部33が火災情報を受信していた場合は、判断結果は「YES」となり、火災時避難運転を行うため、予め定められた優先順序に従って、制御部27によって避難時停止順序を決定する(ステップS108)。
なお、各階には基準階の行き先階登録釦が設置されているので、かごが出発してから一定時間以内にそれが登録されていない時には、その階の避難者がいなくなったと判定し、次の階床へと移行する。定員オーバーになって満員で出発した時は自動登録する。また、登録釦が故障して入りっぱなしになった場合は、テレビモニターで中央監視室から一時避難場所内をモニターしているので、一時避難場所に誰も残っていないことを確認した後に、登録釦をリセットする。一時避難場所内で釦を操作できない状態の人がいる場合は、中央監視室からエレベータを利用して救出に向かう。同時に、中央監視室のオペレータは、火災時には各階の一時避難場所内にいる避難者に冷静になるように呼びかける。
一方、火災情報受信部33が火災情報を受信していない場合は、判断結果は「NO」となり、通常時運転を行うため、制御部27によって火災時ではない通常の場合の停止順序である通常時停止順序を決定する(ステップS109)。
最後に、決定された停止順序に基づいて、制御部27から駆動部30又は制動部31へ駆動信号又は制動信号を出力して(ステップS110)、終了となる(ステップS111)。
火災時避難運転では予め定められた優先順序に従って避難時停止順序を決定するが、例えば、最上階を最優先とし上から下に順に避難時停止順序を決定する場合、まず最上階と基準階の間でエレベータの往復運転を行い、最上階の居住者の避難終了後に1階下の階と基準階の間で往復運転を行ない、以下、全ての階の居住者が全員避難するまで階を移動するというように避難時停止順序を決定する。ここで最上階を最優先とするのは、火災が発生した場合は初期消火や消防署への通報と同様に、速やかな避難が火災による負傷者、焼死者を出さないために重要であるが、最近の火災時避難では、新建材やプラスチック製品の増加に伴い、炎との戦いというよりも煙との戦いになっているからである。この煙の中には、塩化水素、シアン化水素、アンモニアなどの有害物質が多く含まれている。中でも、最も発生量が多く、どんなものが燃えても共通して発生するのが一酸化炭素(CO)である。焼死者を見てみると、その大半は火傷のために死亡したのではなく、煙を吸って意識不明になったところを炎に襲われた人が多い。一酸化炭素中毒の恐ろしさは、ごく微量の濃度でも頭痛やけいれんなどの症状を引き起こし、火災からの避難を妨げ、短時間で死に至ることである。従って、火災から避難する場合、煙を吸わないことが重要である。ところで、煙の上昇速度は毎秒3〜5mにもなり、これは階段などで人が上がる速さ(毎秒0.5m)をはるかに上回るものであり、1秒間に1階床程度上昇するほど高速である。因みに、煙の水平方向の伝播速度は毎秒0.3〜0.8mである。
煙は、階段室やエレベータの昇降路を通って上昇し、上方階に充満し、その後、充満している煙の下端が下降してくる。その下端が床面から1.8mの高さに達する前にその階からは避難していなければならない。このように、火災時には、煙の被害を考慮すると、上方階の居住者から優先して避難させる必要がある。
具体的には、4階建てビルで基準階が1階の場合であれば、まず、最上階である4階と1階の間でエレベータの往復運転を行い、4階の居住者が全員避難した後に、3階と1階の間での往復運転へと移行し、3階の居住者が全員避難した後に、2階と1階の間での往復運転へと移行し、2階の居住者が全員避難した後に運転終了となる火災時避難運転を行う。
ただし、予め定められた優先順序は最上階を最優先とする場合に限られるものではなく、火災が発生した階床を最優先とする場合であっても良い。具体的には、4階建てビルで基準階が1階の場合で火災が発生した階床が3階の場合であれば、まず、火災が発生した3階と1階の間で往復運転を行い、3階の居住者が全員避難した後に、4階と1階の間での往復運転へと移行し、3階の居住者全員が全員避難した後に、2階と1階の間での往復運転へと移行し、2階の居住者が全員避難した後に運転終了となる火災時避難運転を行なっても良い。
このように火災時避難運転をすることで、エレベータによる輸送能力を最大化して避難完了時間を短縮でき、また一時避難場所の防火性能から1時間以内で建物の居住者全員の避難を完了することができる。
図4は、基準階である避難階のレイアウト図の一例を示したものであり、避難階の防火シャッターは鋼製のものを用いる。ただし、避難階が火災階でない場合は防火シャッターを使用せずに、避難階で降車した避難者は、そのまま建物の外へと避難する。一方、避難階が火災階である場合は防火シャッターを下ろして、両側の防火シャッターで区切られた廊下部分を避難者が退避する場所として使用し、鎮火後に防火シャッターを上げて避難者は建物の外へと避難する。
図5は、避難階以外の一般階のレイアウト図の一例を示したものであり、一般階の防火シャッターは、鋼製の防火シャッターではなく、耐火スクリーンである。そして、火災発生時に収納部から引き出して降下させ、一時避難場所とそれ以外とを区切るものである。耐火スクリーンの材料としては、シリカクロス製など様々なものが使用可能であり、鋼製の防火シャッターと比較するとかなり安価である。
一時避難場所の廊下は、図5に示したように、火災時に耐火スクリーン及び避難用開閉扉が設置された壁によって遮断される。避難用開閉扉が設置された壁は、通常時も廊下に張り出しているが、避難用開閉扉は火災時のみ使用され、避難者は本扉を開閉して一時避難場所に入ることになる。なお、車椅子の避難者も一時避難場所に楽に入れるように、本扉が開閉する床部分は、バリアフリーになっているものとする。このように、耐火スクリーンには避難用開閉扉は設けられておらず、避難者は耐火スクリーンに隣接する壁に設置された避難用開閉扉を使って、一時避難場所へと避難する。そして、該壁は、略避難用開閉扉の幅の分だけ、通常時も廊下に張り出している。
ところで、直通階段は、通常、居室からの歩行距離50メートル以内のところに設置され、その途中に直通階段を妨害するものを設置することができないことになっている。従って、一時避難場所は、居室から見て階段と同じ方向に設置される場合は、階段の向こう側で、かつ居室からの歩行距離50メートル以内のところに設置される。そして、居室から見て階段と逆の方向に設置される場合は、居室からの歩行距離50メートル以内のところに設置される。
このように、乗り場に一時避難場所を設置することで、第1にエレベータの到着まで安全に待機でき、第2に昇降路に煙が侵入するのを防止でき、第3に万一、火災階でエレベータが停止して戸開しても、かご内に炎や煙が吹きこまないようにすることができる。従って、非常用エレベータと同じように火災時に運転することが可能になる。
つまり、一時避難場所は、建物火災時の避難における水平避難の安全性を確保する役割を果たすものである。そして、建物の外へ避難するためには、次に建物の基準階への移動を行うという垂直避難が必要となり、その垂直避難の安全性を確保する役割を果たすのが火災時避難運転が組み込まれた避難用エレベータである。
本実施例における避難用エレベータと非常用エレベータを比較すると、第1に昇降路については同一の仕様であり、第2に乗り場についても一時避難場所が防火設備の役割を果たすので同一の仕様であり、第3にかごについては避難用エレベータは消火活動には使用しないので、かごサイズは通常のエレベータのままで良い。また、通常のかごは難燃材料で造られているが、非常用エレベータは消火活動のために長時間火災階で停止するために不燃材料で造られている。不燃材料は通常の火災の火炎に晒されても20分間破損せず、有毒ガスを発生せず、燃焼しない。難燃材料はこの時間が5分間である点が異なる。ただし、火災時避難運転により、火災階が途中階の場合は火災階を約10秒以内で通過すること、及び火災階が脱出階の場合は乗車のために停止するが戸開後30秒で強制戸閉して出発するので、非常用エレベータと同等以上の防火性能があると考えられる。
さらに、非常用電源については、かご1台毎にバッテリーを備えて火災時避難運転の回生電力を蓄電するので、非常用エレベータ以上に安心である。
避難用エレベータは、非常用エレベータとは異なり、火災階で長時間停止して消火活動に使用されることはないので、通常のかごサイズで、通常のかごと同じ難燃材料で造られたかごを使用する点で非常用エレベータと仕様が異なる。ただし、火災階を走行するので、乗り場と昇降路については非常用エレベータと同一の仕様である。
また、避難用エレベータはバッテリー駆動タイプで、火災時避難運転の上昇時はノーロードであり、下降時はフルロードで回生電力がバッテリーに蓄電され扉の駆動などに使用される。従って、停電しても閉じ込められることは無く、安全に避難できる。
さらに、2カーで良好な待ち時間性能を得るためには、ポストセレコレの群管理が必要である。従って、特許文献6に記載のM方式又は特許文献7に記載のL+A方式のエレベータシステムが、避難用エレベータシステムとして適している。
また、各階の居住者が避難用エレベータを待ち合わせる間に避難できる一時避難場所を1組の防火シャッターを用いて各階の廊下に設置することができるので、複数階床毎に脱出階(救出階)を設ける方式の避難用エレベータでは必要であった広い待機場所はいらず、その分、レンタブルスペースになりレンタブル比が向上する。
M方式のエレベータの各階は乗り場扉がないか、ある場合は防火シャッターで遮煙・遮炎されている。これにより、乗り場扉の隙間から昇降路に煙が侵入することはない。また、M0〜M9を構成するそれぞれのエレベータは、非常用エレベータに準ずる防火性能を備えている。
第1に、M方式のM0の場合について説明する。図4は、基準階である避難階のレイアウト図である。避難階の防火シャッターは鋼製であり、避難階が火災階の場合にのみ使用する。避難階が火災階でない場合は、防火シャッターを使用せずに、避難階で降車した避難者は、そのまま外に避難することになる。
図5は、避難階以外の一般階のレイアウト図である。このように、エレベータが設置されている廊下の部分のみを、耐火スクリーンで区切った一時避難場所として使用する。耐火スクリーンの材料としては、シリカクロス製など様々なものが使用可能であり、鋼製の防火シャッターと比較するとかなり安価である。そして、2台の各エレベータは、火災発生時に予め定められた優先順序で基準階と優先された基準階以外の階との間を当該階の避難者の避難が終了するまで往復運転を繰り返し、当該階の避難終了後は基準階と次順の階との間の往復運転へと移行し、基準階以外の全ての階の避難者の避難が終了するまで該往復運転を繰り返す。
一時避難場所の廊下は、火災時、図5に示したように耐火スクリーン及び避難用開閉扉が設置された壁によって遮断される。避難用開閉扉が設置された壁は、通常時も廊下に張り出しているが、避難用開閉扉は火災時のみ使用され、避難者は本扉を使用して一時避難場所に入ることになる。なお、車椅子の避難者も一時避難場所に楽に入れるように、扉が開閉する床部分は、バリアフリーになっているものとする。
図6は、基準階である避難階のレイアウト図であり、避難階が火災の場合は、横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の防火シャッターで区切る。図6では、右側の2台のエレベータが基準階とセクター1との間の交通を担当し、左側の2台のエレベータが基準階とセクター2との間の交通を担当する。
図7は、避難階以外の一般階であるセクター1のレイアウト図であり、火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図7では、矢印で示されている基準階とセクター1との間の交通を担当する右側の2台のエレベータに乗車して避難する。
図8は、一般階であるセクター2のレイアウト図であり、セクター1の場合と同様に、火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図8では、矢印で示されている基準階とセクター2との間の交通を担当する左側の2台のエレベータに乗車して避難する。
図9は、基準階である避難階のレイアウト図であり、廊下を挟んで横に2台と4台のエレベータが設置されており、避難階が火災の場合は、横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の防火シャッターで区切る。図9では、左上の2台のエレベータが基準階とセクター1との間の交通を担当し、左下の2台のエレベータが基準階とセクター2との間の交通を担当し、右下の2台のエレベータが基準階とセクター3との間の交通を担当する。
図10は、避難階以外の一般階であるセクター1のレイアウト図であり、廊下を挟んで横に2台と4台のエレベータが設置されているが、その中の2台部分にはエレベータが停止しないために、エレベータ用の出入口ではなく壁が形成されている。火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図10では、矢印で示されている基準階とセクター1との間の交通を担当する左上の2台のエレベータに乗車して避難する。
図11は、一般階であるセクター2のレイアウト図であり、セクター1の場合と同様に、火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図11では、矢印で示されている基準階とセクター2との間の交通を担当する左下の2台のエレベータに乗車して避難する。
図12は、一般階であるセクター3のレイアウト図であり、セクター1の場合と同様に、火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図12では、矢印で示されている基準階とセクター3との間の交通を担当する右下の2台のエレベータに乗車して避難する。なお、図12では、図9・図10・図11に示されている左上の2台のエレベータは設置されていない。なぜなら、左上の2台のエレベータはセクター3に関係する交通を担当しておらず、かつ、セクター3は基準階・セクター1・セクター2よりも上方に位置しているため、セクター3の階床に左上の2台のエレベータ用の昇降路を設置する必要がないからである。
図13は、基準階である避難階のレイアウト図であり、廊下を挟んで横に4台と4台のエレベータが設置されており、避難階が火災の場合は、横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の防火シャッターで区切る。図13では、左下の2台のエレベータが基準階とセクター1との間の交通を担当し、右下の2台のエレベータが基準階とセクター2との間の交通を担当し、左上の2台のエレベータが基準階とセクター3との間の交通を担当し、右上の2台のエレベータが基準階とセクター4との間の交通を担当する。
図14は、避難階以外の一般階であるセクター1のレイアウト図であり、火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図14では、矢印で示されている基準階とセクター1との間の交通を担当する左下の2台のエレベータに乗車して避難する。
図15は、一般階であるセクター2のレイアウト図であり、セクター1の場合と同様に、火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図15では、矢印で示されている基準階とセクター2との間の交通を担当する右下の2台のエレベータに乗車して避難する。
図16は、一般階であるセクター3のレイアウト図であり、セクター1の場合と同様に、火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図16では、矢印で示されている基準階とセクター3との間の交通を担当する左上の2台のエレベータに乗車して避難する。なお、図16では、図13・図14・図15に示されている左下の2台のエレベータは設置されていない。なぜなら、左下の2台のエレベータはセクター3に関係する交通を担当しておらず、かつ、セクター3は基準階・セクター1・セクター2よりも上方に位置しているため、セクター3の階床に左下の2台のエレベータ用の昇降路を設置する必要がないからである。
図17は、一般階であるセクター4のレイアウト図であり、セクター4においては、廊下の片側だけに横に4台のエレベータが設置されており、反対側は壁となっている。火災時は横に4台並んでいるエレベータの廊下の部分を2枚の耐火スクリーンで区切って一時避難場所を形成する。図17では、矢印で示されている基準階とセクター4との間の交通を担当する右上の2台のエレベータに乗車して避難する。なお、図17では、図13・図14・図15に示されている左下の2台のエレベータ及び図13・図14・図15・図16に示されている右下の2台のエレベータは設置されていない。なぜなら、左下の2台のエレベータ及び右下の2台のエレベータは、セクター4に関係する交通を担当しておらず、かつ、セクター4は基準階・セクター1・セクター2・セクター3よりも上方に位置しているため、セクター4の階床に左下の2台のエレベータ及び右下の2台のエレベータ用の昇降路を設置する必要がないからである。
L+A方式のエレベータシステムは、基準階と一般階の間の交通を分担するサブシステム(Aシステム:アクセスシステム)と一般階間の交通を分担するサブシステム(Lシステム:ローカルシステム)から構成されている。なお、Lシステムの構成は、サービス階を分割しない場合にはL0、サービス階を2セクター(セクター1、セクター2)に分割する場合はL1+L2、3セクター(セクター1、セクター2、セクター3)に分割する場合はL3+L4+L5、4セクター(セクター1、セクター2、セクター3、セクター4)に分割する場合はL6+L7+L8+L9となる。なお、火災時の避難用エレベータとして使用されるのは、M方式の場合は全エレベータであるが、L+A方式の場合は避難階である基準階と一般階の間の交通を担当しているAシステムのエレベータだけである。
例えば、L+A方式を10階建てのビルに適用すると、エレベータの仕様は13人乗り2台1群のエレベータ4群8台となる。ここで、Aシステムのエレベータは、火災時、避難に利用されるので、非常用エレベータに準ずる防火性能があるものとする。各階の廊下には、防火シャッターで区画された一時避難場所を設置する。
Aシステムのエレベータの各階は乗り場扉がないか、ある場合は防火シャッターで遮煙・遮炎されている。これにより、乗り場扉の隙間から昇降路に煙が侵入することはない。
Aシステムのエレベータは、予め定められた優先順序に従って、1階床ずつの待ち客を避難階にピストン輸送する火災時避難運転を行う。一時避難場所は、1時間の防火性能があるが、全館避難は1時間未満で完了する。
そして、Aシステムのエレベータの各階は乗り場扉がないか、ある場合は防火シャッターで遮煙・遮炎されている。これにより、乗り場扉の隙間から昇降路に煙が侵入することはない。また、M0〜M9を構成するエレベータと同様に、非常用エレベータに準ずる防火性能を備えている。
図18は、L+A方式の場合の基準階である避難階のレイアウト図である。避難階の防火シャッターは鋼製であり、避難階が火災階の場合にのみ使用する。避難階が火災階でない場合は、防火シャッターを使用せずに、避難階で降車した避難者は、そのまま外に避難することになる。図18では、左側の2台のエレベータが基準階と2階ないし4階との間の交通を担当し、中央の2台のエレベータが基準階と5階ないし7階との間の交通を担当し、右側の2台のエレベータが基準階と8階ないし10階との間の交通を担当する。なお、基準階にLシステムのエレベータは停止しないため、Lシステムは図示されていない。
図19は、避難階以外の一般階である2階から4階のレイアウト図である。図19では、矢印で示されている基準階と2階ないし4階との間の交通を担当する2台のエレベータを利用して基準階へ避難することになる。なお、この2台の右側に設置されている次の2台は基準階と5階ないし7階との間の交通を担当し、さらに次の2台は基準階と8階ないし10階との間の交通を担当するエレベータであるため、2階ないし4階には停止しないことから開閉扉は設置されていない。L+A方式の場合は、Aシステムだけが一時避難場所に横付けする。そして、図19の一番右側の2台は避難用エレベータとして使用しないLシステムであるため、一時避難場所から外れた位置に昇降路がある。そして、A方式のエレベータの前の部分のみを、耐火スクリーンで区切った一時避難場所として使用する。耐火スクリーンの材料としては、シリカクロス製など様々なものが使用可能であり、鋼製の防火シャッターと比較するとかなり安価である。
一時避難場所の廊下は、火災時、図19に示したように耐火スクリーン及び避難用開閉扉が設置された壁によって遮断される。避難用開閉扉が設置された壁は、通常時も廊下に張り出しているが、避難用開閉扉は火災時のみ使用され、避難者は本扉を使用して一時避難場所に入ることになる。なお、車椅子の避難者も一時避難場所に楽に入れるように、扉が開閉する床部分は、バリアフリーになっているものとする。
図20は、一般階である5階から7階のレイアウト図である。図20では、矢印で示されている基準階と5階ないし7階との間の交通を担当する2台のエレベータを利用して基準階へ避難することになる。なお、図20の場合では、基準階と2階ないし4階との間の交通を担当する2台のエレベータは停止も通過もしないので昇降路が不要であるために、設置されていない。
図21は、一般階である8階から10階のレイアウト図である。図21では、矢印で示されている基準階と8階ないし10階との間の交通を担当する2台のエレベータを利用して基準階へ避難することになる。なお、図21の場合では、基準階と2階ないし4階との間の交通を担当する2台及び基準階と5階ないし7階との間の交通を担当する2台のエレベータは停止も通過もしないので昇降路が不要であるために、設置されていない。
さらに、ダブルデッキの場合は、1階と2階の間の交通を担当するエレベータを設置するものとする。ダブルデッキの上かごに乗車して2階に到着した車椅子の乗客などは、このエレベータに乗り換えることにより、一般階である2階から避難階である1階へと階段を使用せずに移動して避難することが可能となる。
まず、一時避難場所に避難する人数を計算すると、建築基準法の令120条で主要構造物が耐火構造、準耐火構造、不燃材料で造られたものでは居室から直通階段までの歩行距離を50メートル以下にしなければいけないと定められている。一時避難場所までの歩行距離もこの基準に従うとすると、略40m×40mの居室空間当たり一箇所の一時避難場所を設ける必要がある。他の用途の建物に比べて居住密度の高い事務所ビルの場合の居住密度は1人/8平方メートルである。従って、一時避難場所に避難する人数は高々200人程度である。
火災時避難運転の一周時間を計算すると、通常、基準階からの直行時間は30秒以下の機種が選択されて設置されるので、1周分の走行時間は60秒程度である。そして、定員13人のかごに満員が乗車する場合の平均一周時間(RTT)は、乗降時間が1.6×13=20.8秒であるから、RTT=30×2+20.8=80.8秒となる。
200人を輸送するのに1台では200/13=15.4周必要になるので、2台の場合は各々が7.7周することになる。従って、1階床当たりの輸送時間は、8周分の走行時間とそれぞれのかごに乗車する100人分の乗降時間の和で、8×60+100×1.6=640秒となる。
次に、M0以外のM方式の場合の1群(2台)当たりの分担階は5階床なので避難完了時間は5×640=3200秒となる。M0の場合は分担階が多いが、一時避難場所当たりの避難人数が半分程度(半分程度であるのでM0が適用されているのであり、通常はM1+M2が適用される)であるから、1階床当たりの輸送時間が半分になる。従って、M1+M2と同様に、1時間未満で避難が完了できる。防火シャッターの防炎・防煙性能は1時間であるので、設置計画が適切であれば、火災時避難運転を行うことにより1時間未満で全館の居住者が安全に避難を完了することができる。
図22は1カーの場合の基準階である避難階のレイアウト図であり、避難階の防火シャッターは鋼製のものを用いる。ただし、避難階が火災階でない場合は防火シャッターを使用せずに、避難階で降車した避難者は、そのまま建物の外へと避難する。一方、避難階が火災階である場合は防火シャッターを下ろして、両側の防火シャッターで区切られた廊下部分を避難者が退避する場所として使用し、鎮火後に避難者は建物の外へと避難する。
図23は1カーの場合の避難階以外の一般階のレイアウト図であり、避難階以外の一般階の防火シャッターは耐火スクリーンである。そして、火災発生時に収納部から引き出して降下させ、一時避難場所とそれ以外とを区切るものである。耐火スクリーンの材料としては、シリカクロス製など様々なものが使用可能であり、鋼製の防火シャッターと比較するとかなり安価である。
一時避難場所の廊下は、図23に示したように、火災時に耐火スクリーン及び避難用開閉扉が設置された壁によって遮断される。避難用開閉扉が設置された壁は、通常時も廊下に張り出しているが、避難用開閉扉は火災時のみ使用され、避難者は本扉を開閉して一時避難場所に入ることになる。なお、車椅子の避難者も一時避難場所に楽に入れるように、本扉が開閉する床部分は、バリアフリーになっているものとする。このように、耐火スクリーンには避難用開閉扉は設けられておらず、避難者は耐火スクリーンに隣接する壁に設置された避難用開閉扉を使って、一時避難場所へと避難する。そして、該壁は、略避難用開閉扉の幅の分だけ、通常時も廊下に張り出している。
なお、1カーの場合は、エレベータ1台のために、各階に設置されている行き先階登録釦で利用者から指定された呼びを、群管理の際に必要な各エレベータに割り当てることは不要であることから、図1に示すような群管理制御装置は必要ない。ただし、呼びの信号を全て受信して、エレベータの運転方向を決定したり、次に停まる階を決定するための信号回路が必要となる。
50人を輸送するのに1台では50/13=3.85周必要になる。従って、1階床当たりの輸送時間は、4周分の走行時間とかごに乗車する50人分の乗降時間の和で、4×40+50×1.6=240秒となる。
そして、6階建ての建物の場合であれば5階床分の避難者を避難用エレベータで避難させればよいから、避難完了時間は5×240=1200秒となる。
従って、防火シャッターの防炎・防煙性能は1時間であるので、設置計画が適切であれば、火災時避難運転を行うことにより、余裕を持って全館の居住者が安全に避難を完了することができる。
また、複数の階床間を就役する2台のエレベータを1組として1組ないし複数組のエレベータを制御する既設のエレベータシステムの場合も、昇降路の改造が必要となるL+A方式以外の場合であれば、改造することは困難ではない。
このように、本発明にかかる避難用エレベータシステムによれば、新規に設置する場合だけでなく、既設のエレベータを改造して、火災発生時に、高齢者、妊婦、子供、車椅子利用者を含む全館の居住者が、階段を使用せずにエレベータを利用して短時間に安全に避難できる避難用エレベータシステムを構築することが可能である。
12、24 運転休止検出部
13、26 通信部
14、27 制御部
15、28 記憶部
16、29 計時部
17 割り当て部
18、32 情報出力部
21 かご位置検出部
22 かご方向検出部
23 かご速度検出部
25 空かご検出部
30 駆動部
31 制動部
33 火災情報受信部
前記各群は群管理制御装置と複数の階床間を就役するそれぞれに号機制御装置が設置されている2台の号機のエレベータで構成されており、
前記建物の基準階と基準階以外の階との間のエレベータの交通を担当する前記群管理制御装置、並びに、前記建物の基準階以外の階間のエレベータの交通を担当し、建物の基準階以外のサービス階床を分割しない場合は、全ての呼びを分担し、2セクターに分割する場合は全ての呼びを2分割して2群に分担させ、3セクターに分割する場合は全ての呼びを3分割して3群に分担させ、4セクターに分割する場合は全ての呼びを4分割して4群に分担させ、それぞれの群が分担する基準階への呼びを含まない呼びに応答しながら運転する2台のエレベータを群管理制御するための群管理制御装置が設置されているタイプの異なる群のエレベータを制御するシステムであり、
前記のそれぞれの群が分担する呼びには基準階への呼びが含まれず、
前記一時避難場所は前記の通常時は建物の基準階と基準階以外の階との間の交通を担当するエレベータに面している廊下部分に設置されており、前記建物の基準階と基準階以外の階との間の交通を担当するエレベータが前記火災時避難運転を行うことを特徴とする。
Claims (7)
- 通常時のエレベータの交通以外に、火災時には基準階以外の階から基準階へのエレベータでの避難のための交通も担当する建物に設置される避難用エレベータシステムであって、
前記建物の基準階以外の階には火災発生の信号を受信した場合に天井から降下する防火シャッターで区画される一時避難場所が前記エレベータに面している廊下部分に設置されており、
前記エレベータの制御装置には火災発生時に予め定められた優先順序で基準階と優先された基準階以外の階との間を当該階の避難者の避難が終了するまで往復運転を繰り返し、当該階の避難終了後は基準階以外の全ての階の避難者の避難が終了するまで該往復運転を繰り返すために次順の階へと移行する火災時避難運転が組み込まれ、
前記火災時避難運転の際に前記エレベータは前記一時避難場所に横付けして避難者を乗車させて基準階まで輸送することを特徴とする避難用エレベータシステム。 - 複数の階床間を就役する隣り合う2台のエレベータを1組として、前記エレベータの制御装置は前記の1組ないし複数組のエレベータを制御することを特徴とする請求項1に記載の避難用エレベータシステム。
- 前記避難用エレベータシステムは、通常時は建物の基準階と基準階以外の階との間のエレベータの交通と基準階以外の階間のエレベータの交通とを担当する群管理制御システムであって、
前記各群は群管理制御装置と複数の階床間を就役するそれぞれに号機制御装置が設置されている2台の号機のエレベータで構成されており、
建物の基準階以外のサービス階床を分割しない場合は全ての呼びを分担させ、2セクターに分割する場合は全ての呼びを2分割して2群に分担させ、3セクターに分割する場合は全ての呼びを3分割して3群に分担させ、4セクターに分割する場合は全ての呼びを4分割して4群に分担させ、それぞれの群が分担する呼びに応答しながら運転する2台のエレベータを群管理制御するための群管理制御装置が設置されているタイプの異なる群のエレベータを制御するシステムであり、
前記のそれぞれの群が分担する呼びには基準階への呼びが含まれることを特徴とする請求項1ないし2のいずれかに記載の避難用エレベータシステム。 - 前記避難用エレベータシステムは、通常時は建物の基準階以外の階間のエレベータの交通を担当する群管理制御システム及び前記建物の基準階と基準階以外の階との間のエレベータの交通を担当する群管理制御システムであって、
前記各群は群管理制御装置と複数の階床間を就役するそれぞれに号機制御装置が設置されている2台の号機のエレベータで構成されており、
前記建物の基準階と基準階以外の階との間のエレベータの交通を担当する前記群管理制御装置、並びに、前記建物の基準階以外の階間のエレベータの交通を担当し、建物の基準階以外のサービス階床を分割しない場合は、全ての呼びを分担し、2セクターに分割する場合は全ての呼びを2分割して2群に分担させ、3セクターに分割する場合は全ての呼びを3分割して3群に分担させ、4セクターに分割する場合は全ての呼びを4分割して4群に分担させ、それぞれの群が分担する基準階への呼びを含まない呼びに応答しながら運転する2台のエレベータを群管理制御するための群管理制御装置が設置されているタイプの異なる群のエレベータを制御するシステムであり、
前記のそれぞれの群が分担する呼びには基準階への呼びが含まれず、
前記一時避難場所は前記の通常時は建物の基準階と基準階以外の階との間の交通を担当するエレベータに面している廊下部分に設置されており、前記建物の基準階と基準階以外の階との間の交通を担当するエレベータが前記火災時避難運転を行うことを特徴とする請求項1ないし2のいずれかに記載の避難用エレベータシステム。 - 前記の通常時は建物の基準階と基準階以外の階との間の交通を担当するエレベータは、ダブルデッキエレベータであることを特徴とする請求項4に記載の避難用エレベータシステム。
- 基準階以外の階に設置された前記防火シャッターは、耐火スクリーンであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の避難用エレベータシステム。
- 前記エレベータは前記火災時避難運転で発生する回生電力を蓄電するバッテリーを備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の避難用エレベータシステム。
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