JP2012072524A - 漂白パルプの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パルプ中のヘキセンウロン酸を効率良く除去することにより、白色度が高く、退色が少ないパルプを製造する方法を提供する。
【解決手段】未漂白パルプを酸素脱リグニン処理し、次いで、酸処理し、次いで、二酸化塩素処理し、次いで、アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理し、次いで、二酸化塩素処理を終pHが4.0〜5.0、好ましくは4.3〜4.7となるように行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、未漂白パルプを酸処理を含む多段漂白処理することにより、漂白パルプを製造する方法に関する。
紙パルプ工場の漂白工程から排出される物質が環境に与える影響に関心が集まる中、従来の塩素や次亜塩素酸塩を主に用いた漂白方法から、塩素や次亜塩素酸塩を使わずに、二酸化塩素や過酸化水素、酸素、オゾンなど有機塩素化合物を生成しない漂白薬品を使用するECF(Elemental Chlorine Free)漂白が全世界的に主流となりつつあり、塩素元素の入った漂白薬品を一切使わないTCF(Total Chlorine Free)漂白も一部で行われている。これらの無塩素漂白は、有害な有機塩素化合物であるダイオキシン類やクロロホルムを発生させないため、環境にやさしい漂白方法であるといえる。しかし、無塩素漂白パルプを用いて抄造した紙、特に酸性抄造した紙は、従来の塩素漂白パルプを用いて抄造した紙に比べて、退色しやすいという問題がある。この無塩素漂白パルプの退色には、パルプ中に残留するヘキセンウロン酸が関与していると考えられている。ヘキセンウロン酸は、ヘミセルロースのキシラン側鎖におけるメチルグルクロン酸が、蒸解工程において脱メチルすることにより生成する物質である。ヘキセンウロン酸を除去する方法の一つとして、漂白前のパルプを約85〜150℃の高温下、pH2〜5の酸性下で処理する方法が知られており(特許文献1)、既に実用化されている。しかしながら、この加温酸処理法により、ヘキセンウロン酸を、塩素漂白で得られるパルプと同等のレベル(例えば、1mmol/kg絶乾パルプ)にまで分解・除去しようとすると、パルプを低pH、高温下で長時間処理する必要があり、ヘキセンウロン酸のみではなくセルロースも一部加水分解され、パルプ繊維が損傷するという問題がある。
また、パルプ中のヘキセンウロン酸を除去する方法として、担子菌または糸状菌から生産される酵素グルクロニダーゼでパルプを処理する方法も開示されている(特許文献2)。しかし、酵素は一般的に高価であり実用的でない。
以上のように、現在のところ、パルプ繊維にダメージを与えずに、ヘキセンウロン酸を塩素漂白パルプと同等のレベルにまで除去できる、低コストな方法は見出されていない。
特表平10−508346号公報 特開2006−219767号公報
本発明は、パルプ中のヘキセンウロン酸を効率良く除去することにより、白色度が高く、退色が少ないパルプを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、未漂白パルプを酸素脱リグニン処理し、次いで、酸処理し、次いで、二酸化塩素処理し、次いで、アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理し、次いで、二酸化塩素処理を終pHが4.0〜5.0となるように行うことにより、未漂白化学パルプに含まれるヘキセンウロン酸を非常に効率良く除去し、白色度が高く、退色が少ない漂白パルプおよび紙を製造できることを見出し、本発明に至った。
本発明によれば、パルプ中のヘキセンウロン酸を効率良く除去することができるため、白色度が高く、退色が少ないパルプを製造することができる。また、漂白薬品の使用量を低減することができる。本発明の方法は、パルプ中のヘキセンウロン酸を充分に除去することができるため、本発明の方法により得られた漂白パルプを用いれば、白色が高く、かつ退色しにくい紙を製造することができる。
本発明では、未漂白パルプを酸素脱リグニン処理し、次いで、酸処理し、次いで、二酸化塩素処理し、次いで、アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理し、次いで、二酸化塩素処理を終pHが4.0〜5.0となるように行う。これにより、未漂白パルプから非常に効率良くヘキセンウロン酸を分解・除去し、白色度が高く、退色が少ないパルプおよび紙を製造できる。
(パルプ)
本発明の方法には、未漂白パルプを使用する。未漂白パルプとしては、蒸解工程を経てヘキセンウロン酸が生成されたパルプ、すなわち化学パルプであればいずれも用いることができる。特にクラフトパルプ(KP)が好ましい。パルプ原料としては、いずれの原料も使用することができ、広葉樹木材あるいは針葉樹木材の他、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物も用いることができる。中でも、広葉樹木材は、ヘキセンウロン酸の前駆物質であるメチルグルクロン酸を多く含有するので、本発明の方法で処理するパルプの原料として好適である。特に、広葉樹木材の中でもアカシアから製造されるパルプは、漂白後にもヘキセンウロン酸が多く残存する傾向があるため、本発明の方法で処理するのに最適である。未漂白パルプのカッパー価は14〜22にすることが好ましく、15〜20がより好ましい。
(酸素脱リグニン処理)
本発明では、多段漂白処理に先立ち、未漂白パルプを酸素脱リグニン処理する。酸素脱リグニン処理の反応条件は従来から実施されている条件であれば良く、特に限定はないが、例えば、パルプ濃度は1〜30固形分質量%、より好ましくは8〜15固形分質量%、温度は80〜120℃、より好ましくは85〜105℃、酸素圧は3〜9kg/cm、より好ましくは4〜7kg/cm、処理時間は30〜180分、より好ましくは60〜90分で実施される。酸素脱リグニンにおけるアルカリ薬剤添加量も従来から実施されている量であれば良く、特に限定はないが、例えば、アルカリ溶液のpHは11〜14、より好ましくは12.0〜13.5である。使用されるアルカリ薬剤は水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられるが、好適には水酸化ナトリウムである。酸素脱リグニン後のパルプのカッパー価は、5〜15の範囲が良く、好ましくは7〜15、更に好ましくは8〜12である。
(多段漂白処理)
次いで、酸素脱リグニン後のパルプを多段漂白処理する。パルプの漂白は、慣用される通常の方法で行なうことができ、その種類や方法は特に限定されない。しかし、パルプ中にヘキセンウロン酸が残留しやすいECF漂白といった無塩素漂白を行なったパルプは、本発明の方法に特に好適であるといえる。
無塩素漂白とは、塩素(Cl2)を用いずに行なう漂白方法である。無塩素漂白の種類としては、塩素(Cl2)を用いずに、二酸化塩素(ClO2)、過酸化水素、酸素、オゾンなどを用いて漂白を行なうECF(Elemental Chlorine Free)漂白が挙げられる。
ECF漂白は、酸による漂白処理(酸処理)、オゾンによる漂白処理(オゾン処理)、アルカリによる抽出処理(アルカリ抽出処理)、過酸化水素(及び場合により酸素)による漂白処理、二酸化塩素による漂白処理(二酸化塩素処理)を適宜組み合わせて行なうことができる。なお、アルカリ抽出処理と過酸化水素(及び場合により酸素)による漂白処理を組み合わせた処理を、アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理という。本発明では、酸処理、二酸化塩素処理、アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理、二酸化塩素処理の順で漂白処理を行い、これに他の漂白処理を適宜組み合わせて行なうことができる。ECF漂白シーケンスとしては、特に限定されず、例えば、酸処理段(A)−二酸化塩素処理段(D)−アルカリ過酸化水素処理段(Ep)−二酸化塩素処理段(D)、A−オゾン処理段(Z)−D−Ep−D、A−Z/D−Ep−D、A−Z/D−Ep−D−P、A−D−Ep−D−P、A−D−Ep−P−D、A−D−アルカリ過酸化水素・酸素処理段(Eop)−D、A−Z−D−Eop−D、A−Z/D−Eop−D、A−Z/D−Eop−D−P、A−Z/D−Eop−P−D、A−Z/D−Eop−D−E−Dなど、上記の漂白処理を様々に組み合わせて用いることができる。なお、シーケンス中の「/」は、「/」の前後の処理を洗浄なしで連続して行なうことを意味する。
(酸処理)
本発明の多段漂白処理ではまず、パルプを酸処理して、パルプ中の金属類を除去する。金属類を除去することにより、後の漂白の効率を高めることができる。酸処理の条件は、金属類を除去できる条件であればよく、特に限定されないが、金属の除去の程度と、パルプへのダメージの程度とを考慮すれば、一般には、pH2〜3、好ましくはpH2〜2.5程度の酸性下で、60〜150℃、好ましくは70〜110℃、さらに好ましくは70〜95℃、さらにより好ましくは85〜95℃程度の温度で、0.5〜50質量%、好ましくは8〜15質量%程度の濃度のパルプスラリーを、20分〜5時間程度処理するのがよい。また、pH2〜3、温度40〜70℃で、15〜30分間程度処理することもできる。処理後のパルプのカッパー価は、好ましくは3〜10、好ましくは5〜10程度である。ここで、カッパー価(Kappa number)とは、パルプが消費する過マンガン酸カリウムの量に相当し、パルプの蒸解度を示す指標の1つである。カッパー価は、JIS P 8211に準じて測定することができる。酸処理に使用できる酸の種類としては、硫酸、塩酸、硝酸、亜硫酸、亜硝酸や、二酸化塩素発生装置の残留酸などの鉱酸が挙げられる。好適には硫酸である。
(アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理)
アルカリによる抽出処理は、0.5〜50質量%、好ましくは8〜15質量%の濃度のパルプスラリーに、パルプ絶乾質量に対して0.5〜3.0質量%のアルカリを添加して、60〜120℃程度の温度下で、pH10〜12程度のアルカリ性条件下とすることにより行なうことができる。この際、パルプ絶乾質量に対して0.05〜2.0質量%の過酸化水素、及び0〜3質量%の酸素ガスを、15〜120分間程度吹き込むことにより、過酸化水素(及び場合により酸素)による漂白処理を行なうことができる。
(二酸化塩素処理)
二酸化塩素による漂白処理は、0.5〜50質量%、好ましくは2〜15質量%の濃度のパルプスラリーに、30〜80℃程度の温度下で、pH2〜6程度の酸性条件下で、パルプ絶乾質量に対して0.1〜3質量%の二酸化塩素を、5〜180分間程度吹き込むことにより、行なうことができる。特に、本発明では、アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理し後の二酸化塩素処理(D)を終pHが4.0〜5.0、好ましくは4.3〜4.7となるように行う。
(オゾン処理)
オゾンによる漂白処理は、0.5〜50質量%、好ましくは8〜15質量%の濃度のパルプスラリーに、20〜100℃、好ましく40〜80℃程度の温度下で、pH1〜5、好ましくは2〜4の酸性条件下で、パルプ絶乾質量に対して0.1〜1質量%のオゾンを0.1秒〜1時間程度、好ましくは1秒〜10分程度吹き込むことにより、行なうことができる。この処理により、パルプのカッパー価が2.0〜5.0、好ましくは2.5〜4.5程度となる。
(漂白パルプ)
本発明の方法で製造された漂白済みのパルプは、ヘキセンウロン酸が効率的に分解・除去されている。漂白済みのパルプ中に含まれるヘキセンウロン酸の含有量としては、絶乾パルプ1kgあたり1.0mmol以下、好ましくは0.6mmol以下であれば、退色しにくく、かつ白色度が高い紙を製造することができる傾向にある。パルプ中のヘキセンウロン酸の含有量は、パルプスラリーをろ過し、ろ過液中の2−フランカルボン酸(2-furan carboxylic acid)及び5−ホルミル−2−フランカルボン酸(5-formyl-2-furan carboxylic acid)(ともに、ヘキセンウロン酸の酸加水分解物である。)の量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて測定し、そのモル量の合計から漂白前のヘキセンウロン酸量を求めることができる。また、ヘキセンウロン酸はカッパー価とも相関があるため、パルプ中のヘキセンウロン酸の含有量は、カッパー価を指標とすることができる。漂白済みのパルプ中のカッパー価としては、1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。カッパー価が1.5以下であれば、退色しにくく、かつ白色度が高い紙を製造することができる傾向にある。
本発明の方法で製造された漂白済みのパルプのISO白色度は、好ましくは78〜90%程度、特に好ましくは83〜87%程度がよい。
(抄紙)
本発明においては、上記で得られた漂白パルプスラリーに、必要に応じて、前記パルプ以外のパルプスラリー、填料および/またはペーパースラッジを焼却して得る再生填料、並びに製紙薬品等を混合して紙料を調成した後、抄紙機で抄紙する。特に、酸性紙において、パルプ中に多くヘキセンウロン酸が残存していると、湿度や温度が高い条件下で退色し易い傾向にあるため、本発明により得られた漂白パルプを酸性紙に適用すると高い効果が得られるため好ましい。
本発明において、本発明の方法により得られた漂白パルプ以外に添加することができるパルプとしては、針葉樹または広葉樹の砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の機械パルプ、再生パルプ、脱墨パルプ(DIP)、塗工紙や塗工原紙、その他の紙を含む損紙を離解してなるコートブローク、および、これらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
填料としては、一般に使用されている填料を使用することができ、特に限定されるものではない。例えば、タルク、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛などの無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂及び微小中空微粒子等の有機填料、古紙を再生する工程や紙を製造する工程で発生したスラッジを焼却して得られる再生填料を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。この中では炭酸カルシウムが好ましい。
製紙薬品としては、一般に使用されている製紙用助剤を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、AKD(アルキルケテンダイマー)、ASA(アルケニル無水コハク酸)、石油系サイズ剤、硫酸バンド、ロジンサイズ剤など各種内添サイズ剤や、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウムアルミナゾル等のアルミニウム化合物;硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物;及びシリカゾル等の内添助剤、紫外線防止剤、退色防止剤、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチエンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物、及びこれらの誘導体あるいは変性物等の各種化合物も使用できる。また、染料、蛍光増白剤、消泡剤、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等を必要に応じて適宜添加することもできる。
本発明の紙の製造方法を適用できる抄紙機には特に限定は無く、長網型、オントップツインワイヤー型、ギャップフォーマー型、円網型、多層型などが挙げられる。表面強度の向上や吸水抵抗性を付与する目的で、表面処理剤を塗布しても良い。表面処理剤を塗布する場合、表面処理剤の成分には特に限定はなく、またサイズプレスの型式も限定はなく、2ロールサイズプレスや、ゲートロールサイズプレス、シムサイザーのような液膜転写方式サイズプレスなどを適宜用いることができる。抄紙機プレドライヤー、アフタードライヤーも公用の装置を用いることができ、乾燥条件も特に限定はなく、通常の操業範囲で適宜設定できる。また、紙の表面を平滑にする目的で、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、高温ソフトニップカレンダーなどの公知のカレンダー装置を用いて処理を行っても良い。更に炭酸カルシウムなどの顔料や澱粉または澱粉誘導体、ラテックスなどからなる塗料を塗布しても良い。
(紙)
本発明によって得られる紙は、紙の種類、坪量には限定はなく、更に各種の原紙や板紙を含む。また、紙中灰分の限定もない。また、1層の紙の他、2層以上の多層紙であっても良い。
(本発明の作用)
未漂白化学パルプを酸素脱リグニン処理し、次いで、酸処理し、次いで、二酸化塩素処理し、次いで、アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理し、次いで、二酸化塩素処理を終pHが4.0〜5.0となるように行うことにより、ヘキセンウロン酸が効率良く除去できる理由は、明白ではないが、以下のように推測される。
二酸化塩素処理時のpHが高い場合、漂白に不活性なクロライト(ClO−)が生成し、一方pHが低い場合、漂白に不活性なクロレート(ClO−)が生成し易い傾向にある。アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理後の二酸化塩素処理を終pH4.0〜5.0となるように行うことによって、漂白に不活性なクロライトやクロレートの生成を抑制することができ、これによって、二酸化塩素による漂白効率が高まり、ヘキセンウロン酸が効率良く除去できるものと推察される。
次に実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
手抄きシートの作成:JIS P 8209に従って坪量60g/m2のシートを作製した。
白色度の測定:手抄きシートを用い、JIS P 8148:2001に準じて(白色度計:株式会社色彩技術研究所製、CMS−35SPX)ISO白色度を測定した。
カッパー価の測定:JIS P 8211に準じて測定した。
退色性評価(Δb値):手抄きシートを温度80℃、湿度50%で1時間静置し、処理前後のb値をJIS Z 8701に準じて(白色度計:株式会社色彩技術研究所製、CMS−35SPX)測定した。
[実施例1、比較例1〜3]
広葉樹クラフトパルプを酸素脱リグニン処理し(処理後のパルプのカッパー価10.5)、以下の条件でECF漂白し、二酸化塩素処理(D)前後のパルプの白色度、カッパー価を測定した。また、得られた漂白パルプを用いて手抄きシートを作成し、退色性の評価を行った。結果を表1に示す。
ECF漂白シーケンス:酸処理(A)−二酸化塩素処理(D)−アルカリ抽出/過酸化水素処理(Ep)−二酸化塩素処理(D
酸処理(A):パルプ濃度10質量%、硫酸添加量9.5kg/BDT、pH2〜3、温度95℃、120分間
二酸化塩素処理(D):パルプ濃度10質量%、二酸化塩素添加量6.0kg/BDT、pH2〜3、温度65℃、60分間
アルカリ抽出/過酸化水素処理(Ep):パルプ濃度10質量%、水酸化ナトリウム添加量11.0kg/BDT、過酸化水素添加量1.7kg/BDT、pH11〜12、温度70℃、80分間
二酸化塩素処理(D):表1の条件で行った。なお、pHの調整は、硫酸の添加量を調整することにより行った。
Figure 2012072524
表1の結果より、D段の終pHを4.0〜5.0でパルプをECF漂白した本発明の方法(実施例1)は、D段の終pHが5.0より高い比較例1、2に比べて、漂白パルプのカッパー価が低いことから、ヘキセンウロン酸の除去率が顕著に高いと考えられる。また、本発明の方法により得られた漂白パルプまたはこれを用いた紙(実施例1)は、比較例1、2やD段の終pHが4.0より低い比較例3に比べて、白色度が高く、退色性が良好である。したがって、本発明の方法により得られたパルプは、ヘキセンウロン酸量が充分に少なく、白色度が高く、本発明の方法により得られたパルプを用いて作製した紙は、退色しにくいことがわかる。
[実施例2〜5、比較例4]
酸素脱リグニン処理後のパルプ(カッパー価9.3)を用い、二酸化塩素処理(D)を表2の条件で行った以外は実施例1と同様にして二酸化塩素処理(D)前後のパルプの白色度、カッパー価を測定し、得られた漂白パルプを用いて手抄きシートを作成し、退色性の評価を行った。また、二酸化塩素処理(D)後のパルプのヘキセンウロン酸量を測定した。結果を表2に示す。
ヘキセンウロン酸の定量方法:完全洗浄したパルプにより調製したpH1.8(希硫酸により調整)、10質量%の濃度のパルプスラリー50gを、耐熱性プラスチックバッグに入れ、95℃にて4時間、酸加水分解処理した。処理後、パルプスラリーをろ過し、ろ過液中の2−フランカルボン酸(2-furan carboxylic acid)及び5−ホルミル−2−フランカルボン酸(5-formyl-2-furan carboxylic acid)(ともに、ヘキセンウロン酸の酸加水分解物である。)の量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー、株式会社島津製作所製、LC−10シリーズ)にて測定し、そのモル量の合計から元のヘキセンウロン酸量を求めた。また、ヘキセンウロン酸の除去率を下記の式より求めた。
100−(反応後のヘキセンウロン酸量/反応前のヘキセンウロン酸量)×100(%)
Figure 2012072524
表2の結果から、D段の終pHを4.0〜5.0でパルプをECF漂白した本発明の方法(実施例2)は、D段の終pHが5.0より高い比較例4に比べて、漂白パルプのカッパー価が低く、ヘキセンウロン酸量が少ないことから、ヘキセンウロン酸の除去率が顕著に高いことがわかる。また、二酸化塩素添加量を減らして製造した漂白パルプ(実施例3〜5)も、比較例4に比べて、カッパー価が低く、退色性が良好である。したがって、本発明の方法によれば、漂白薬品を低減することができることがわかる。

Claims (8)

  1. 未漂白パルプを酸素脱リグニン処理すること、次いで、
    酸処理すること、次いで、
    二酸化塩素処理すること、次いで、
    アルカリ抽出/過酸化水素処理またはアルカリ抽出/過酸化水素/酸素処理しすること、次いで、
    二酸化塩素処理を終pHが4.0〜5.0となるように行うこと、
    を含む、漂白パルプの製造方法。
  2. 未漂白パルプが未漂白クラフトパルプである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記酸処理を、pH2〜3、温度70〜95℃で行う、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記酸処理を、pH2〜3、温度40〜70℃で、15〜30分間行う、請求項1または2に記載の方法。
  5. 後段の二酸化塩素処理を、終pHが4.3〜4.7となるように行う、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 後段の二酸化塩素処理後の、漂白パルプのカッパー価が1.5以下である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載された方法で得られた漂白パルプを含有する紙。
  8. 前記紙が酸性紙である、請求項7に記載の紙。
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