(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、哺乳動物の関節に外因性核酸を導入し、それによって、関節疾患もしくは障害を処置および/もしくは予防するための方法および組成物に関する。
一局面において、本発明は、Kras−2bもしくはそのエフェクターをコードする外因性核酸を、哺乳動物の関節における標的細胞へ導入するための組成物および方法を包含する。上記組成物は、Kras−2bもしくはそのエフェクターをコードする外因性核酸を含む合成リポソーム、少なくとも1個のリガンド、およびポリ−l−リジンポリマー足場を含み得、ここで上記ポリマー足場は、上記リガンドおよび上記核酸の両方に結合される。上記リポソームは、カチオン性リポソーム、アニオン性リポソーム、および合成脂質ミクロスフェアからなる群より選択される。上記リガンドは、任意のリガンドであり得、一局面において、上記リガンドは、トランスフェリンである。上記ポリマー足場は、正に荷電したポリマー足場、荷電されていないポリマー足場、ホモポリマー足場、およびポリ−L−リジン足場からなる群より選択される。一局面において、上記核酸は、ベクター内に含まれ、上記ベクターは、ウイルスベクターもしくは非ウイルスベクターであり得る。さらなる局面において、上記Kras−2bをコードする遺伝子は、異種構成性プロモーターおよび異種誘導性プロモーターからなる群より選択される異種プロモーターに作動可能に連結される。
別の局面において、上記ベクターを導入する前に、上記標的細胞は、リゾレシチン、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ホスファチジルコリン、ホスホリパーゼ、ストレプトリジン、エキナトキシン、メチル−β−シクロデキストリン、カプリン酸ナトリウム、デカノイルカルニチン、酒石酸、アラメチシン、サポニン、非イオン性界面活性剤(NP)、Tween(s)、超音波ショック、浸透圧ショック、および電気パルスからなる群より選択される透過化因子で処理される。
本発明はさらに、哺乳動物において、関節を分解から保護するための方法を企図し、上記方法は、ベクターを、上記哺乳動物の関節における標的細胞に送達する工程を包含し、上記ベクターは、プロモーターに作動可能に連結される、Kras−2bをコードする遺伝子もしくはそのエフェクターを含む。一局面において、上記ベクターは、滑膜内に、筋肉内に、皮下に、および/もしくは経皮的に導入される。例示的なKras−2b配列は、本明細書で表Iに提供され、以下により詳細に記載される。一局面において、上記Kras−2bをコードする遺伝子は、野生型Kras−2b遺伝子の改変体である。別の局面において、上記Kras−2bのエフェクターは、Kras−2bシグナル伝達経路を調節する任意の分子である。上記分子としては、Kras−2a、KSR、MP1、N−Ras、H−Ras、Raf、rasもしくはKrasのドミナントネガティブ変異体、rasおよびRafの短縮型、RAP、RAC、PAC、14−3−3、MAPK、MAPKK(もしくは改変体)、MAPKKK(もしくは改変体)、MEK1/2、ERK 1/2、mTOR、TOR、Tob1、P38、PI3K、Ink4、Akt、JNK、S6、S6キナーゼ、サイクリン、ならびにSmadおよび上記rasシグナル伝達カスケードの他のメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。
上記標的細胞は、哺乳動物細胞であることが企図され、上記哺乳動物細胞としては、マウス細胞、ラット細胞、ウサギ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞、ブタ細胞、ウマ細胞、非ヒト霊長類細胞、もしくはヒト細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一局面において、上記標的細胞は、ヒト細胞である。さらに、上記標的細胞は、霊長類の軟骨膜細胞、軟骨細胞、屈筋腱細胞、腱鞘細胞、腱滑車細胞、上皮皮膚細胞、皮膚、筋肉、脂肪、線維芽細胞、樹状細胞、有毛細胞、ケラチノサイト、毛幹における細胞、神経細胞、血管平滑筋細胞、血管壁、免疫細胞(B細胞、T細胞、好中球、NTK細胞、マクロファージ、単核細胞)、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、心平滑筋細胞、気管支肺胞、他の肺細胞、頬腔細胞、鼻腔細胞、単核骨髄細胞、多核骨髄細胞、脊髄、運動ニューロン、神経節、ならびにCNSの細胞からなる群より選択され得る。
本明細書で提供される方法は、変形性関節症を予防および/もしくは処置するために有用である。別の局面において、上記方法は、関節炎および炎症に関連する関節疾患および障害を処置および/もしくは予防する。他の局面において、これら方法は、関節リウマチ
(RA)、結晶沈着病、セリアック病、1型糖尿病(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、多発性硬化症(MS)、橋本甲状腺炎、グレーブス病および突発性血小板減少性紫斑病を処置もしくは予防するために有用である。特定の局面において、上記Kras−2b分子、そのエフェクターおよび調節性化合物は、上記関節の1つ以上の組織の細胞増殖指数を低下させることによって、上記関節疾患もしくは障害を処置もしくは予防する。上記細胞増殖指数における低下は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上であり得る。
本発明はさらに、インビボで、哺乳動物の関節の細胞においてKras−2bを発現するための方法を企図し、上記方法は、(a)Kras−2bをコードするベクターを提供する工程;(b)上記ベクターを、インビボで哺乳動物の関節における標的細胞に導入する工程;および(c)上記細胞においてKras−2bの発現を可能にする条件下で、上記細胞をインビボで維持する工程を包含する。変形性関節症を有する哺乳動物を処置するための方法もまた包含され、上記方法は、上記患者に、変形性関節症の1つ以上の症状を緩和するに有効な量のKras−2bが、上記哺乳動物において発現されるように、Kras−2bをコードする発現ベクターを導入する工程を包含する。本発明の組成物は、当該分野で周知の方法に従って投与される。それらは、1回で、もしくは1回より多くの回数で投与され得る。2回以上投与される場合、上記投与のタイミングは、変化し得る。例えば、上記組成物は、1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、もしくは変動可能なスケジュールで投与され得る。
本発明はさらに、(i)1種以上のKras−2bポリペプチドもしくはそのエフェクター、(ii)1種以上のKras−2bポリペプチドもしくはそのエフェクターを、哺乳動物の関節の標的細胞において発現し得る1種以上のポリヌクレオチドである治療剤を含む薬学的組成物を含むデバイスおよびキットを企図し、上記デバイスおよびキットは、上記組成物の滑膜内送達に適している。
(定義)
「ポリヌクレオチド」とは、任意の長さの、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、もしくはそのアナログのいずれかのヌクレオチドのポリマー形態に関する。この用語は、上記分子の1次構造に言及し、従って、二本鎖DNAおよび一本鎖DNA、ならびに二本鎖RNAおよび一本鎖RNAを含む。改変ポリヌクレオチド(例えば、メチル化および/もしくはキャップ化ポリヌクレオチド)もまた、含まれる。
用語「核酸」もしくは「核酸配列」とは、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、もしくはこれらのうちのいずれかのフラグメントに、一本鎖もしくは二本鎖であり得、そしてセンス鎖もしくはアンチセンス鎖を表し得るゲノム起源もしくは合成起源のDNAもしくはRNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA)に、ペプチド核酸(PNA)に、または天然起源もしくは合成起源の任意のDNA様物質もしくはRNA様物質に、言及する。上記用語は、天然ヌクレオチド、天然に存在する核酸、合成核酸、および組換え核酸の公知のアナログを含む核酸(すなわち、オリゴヌクレオチド)を包含する。上記用語はまた、合成骨格を有する核酸様構造を包含する(例えば、Mata(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.144:189−197;Strauss−Soukup(1997)Biochemistry 36:8692−8698;Samstag(1996)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153−156を参照のこと)。
本発明を実施するために使用される核酸は、RNAであろうと、iRNAであろうと、siRNAであろうと、アンチセンス核酸であろうと、cDNAであろうあと、ゲノムDNAであろうと、ベクターであろうと、ウイルスであろうと、もしくはこれらのハイブリッドであろうと、種々の供給源から単離され得、一般には、操作され得、増幅され得、そして/または発現され得/組換え生成され得る。これら核酸から生成される組換えポリペプチドは、個々に単離もしくはクローニングされ得、所望の活性について試験され得る。任意の組換え発現系が使用され得、これらとしては、細菌細胞発現系、哺乳動物細胞発現系、酵母細胞発現系、昆虫細胞発現系もしくは植物細胞発現系が挙げられる。
あるいは、これら核酸は、例えば、Adams(1983)J.Am.Chem.Soc.105:661;Belousov(1997)Nucleic Acids Res.25:3440−3444;Frenkel(1995)Free Radic.Biol.Med.19:373−380;Blommers(1994)Biochemistry 33:7886−7896;Narang(1979)Meth.Enzymol.68:90;Brown(1979)Meth.Enzymol.68:109;Beaucage(1981)Tetra.Lett.22:1859;米国特許第4,458,066号に記載されるように、周知の化学合成技術によって、インビトロで合成され得る。あるいは、核酸は、市販の供給源から得られ得る。
核酸の操作のための技術(例えば、サブクローニング、標識プローブ(例えば、クレノウポリメラーゼを使用するランダムプライマー標識、ニックトランスレーション、増幅)、配列決定、ハイブリダイゼーションなどは、科学文献および特許文献において十分に記載されている。例えば、Sambrook,編,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版),Vols.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory(1989);Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,編.John Wiley&Sons,Inc.,New York(1997);Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I.Theory and Nucleic Acid Preparation,Tijssen,編.Elsevier,N.Y.(1993)を参照のこと。
本発明の方法を実施するために使用される核酸を獲得し操作するための別の有用な手段は、ゲノムサンプルからクローニングすること、および所望される場合、例えば、ゲノムクローンもしくはcDNAクローンから単離もしくは増幅されたインサートをスクリーニングおよび再クローニングすることである。本発明の方法において使用される核酸の供給源としては、例えば、哺乳動物人工染色体(MAC)(例えば、米国特許第5,721,118号;同第6,025,155号を参照のこと);ヒト人工染色体(例えば、Rosenfeld(1997)Nat.Genet.15:333−335を参照のこと);酵母人工染色体(YAC);細菌人工染色体(BAC);P1人工染色体(例えば、Woon(1998)Genomics 50:306−316を参照のこと);P1駆動ベクター(PAC)(例えば、Kern(1997)Biotechniques 23:120−124を参照のこと);コスミド、組換えウイルス、ファージもしくはプラスミド中に含まれるゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーが挙げられる。
本発明を実施するにあたって、本発明の核酸もしくは本発明の改変された核酸は、増幅によって再生され得る。増幅はまた、本発明の核酸をクローニングもしくは改変するために使用され得る。従って、本発明は、本発明の核酸を増幅するために増幅プライマー配列対を提供する。当業者は、これら配列の任意の部分長もしくは完全長に対する増幅プライマー配列対を設計し得る。
増幅反応はまた、サンプル中の核酸の量(例えば、細胞サンプル中のメッセージの量)を定量するために、上記核酸を標識するために(例えば、これをアレイもしくはブロットに適用するために)、上記核酸を検出するために、またはサンプル中の特異的核酸の量を定量するするために、使用され得る。本発明の一局面において、細胞もしくはcDNAライブラリーから単離されたメッセージは、増幅される。
当業者は、適切なオリゴヌクレオチド増幅プライマーを選択および設計し得る。増幅法はまた、当該分野で趣致であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、PCR(例えば、PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,編.Innis,Academic Press,N.Y.(1990)およびPCR Strategies(1995),編.Innis,Academic Press,Inc.,N.Y.を参照のこと)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、Wu(1989)Genomics 4:560;Landegren(1988)Science 241:1077;Barringer(1990)Gene 89:117を参照のこと);転写物増幅(例えば、Kwoh(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173を参照のこと);および自立性配列複製(self−sustained sequence replication)(例えば、Guatelli(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874を参照のこと);Qβレプリカーゼ増幅(例えば、Smith(1997)J.Clin.Microbiol.35:1477−1491を参照のこと)、自動化Q−βレプリカーゼ増幅アッセイ(例えば、Burg(1996)Mol.Cell.Probes 10:257−271を参照のこと)および他のRNAポリメラーゼ媒介性技術(例えば、NASBA,Cangene,Mississauga,Ontario)が挙げられ;Berger(1987)Methods Enzymol.152:307−316;Sambrook;Ausubel;米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号;ならびにSooknanan(1995)Biotechnology 13:563−564もまた参照のこと。
「組換え」とは、ポリヌクレオチドに適用される場合、上記ポリヌクレオチドが、クローニング、制限酵素処理および/もしくは連結工程、ならびに天然において見いだされるポリヌクレオチドとは異なる構築物を生じる他の手順の種々の組み合わせの生成物であることを意味する。
用語「遺伝子」は、生物学的機能と関連する核酸の任意のセグメントに言及するために広く使用される。従って、遺伝子は、それらの発現に必要とされる、コード配列および/もしくは調節配列を含む。例えば、「遺伝子」とは、mRNA、機能的RNA、もしくは特異的タンパク質(調節配列を含む)を発現する核酸フラグメントをいう。「遺伝子」とはまた、例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する発現されないDNAセグメントを含む。「遺伝子」は、種々の供給源から獲得され得(目的の供給源からのクローニングまたは既知もしくは推定される配列情報からの合成を含む)、所望のパラメーターを有するように設計された配列を含み得る。用語「遺伝子」は、転写生成物(例えば、メッセージ)の生成に関与するDNAのセグメントを含む核酸配列を包含し、上記転写生成物は、続いて、翻訳されてポリペプチド鎖を生成するか、または遺伝子転写、再生もしくは安定性を調節する。遺伝子は、上記コード領域の前にある領域および後ろにある領域(例えば、リーダーおよびトレーラー(trailer)、プロモーターおよびエンハンサー、ならびに適用可能である場合には、個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在性配列(イントロン)を含み得る。
用語「ゲノム」とは、生物の完全な遺伝物質をいう。
一局面において、用語「形質転換」とは、宿主細胞のゲノムへの核酸配列の移入をいい、遺伝的に安定に受け継がれる。「宿主細胞」とは、外因性核酸分子によって、形質転換されたか、または形質転換が可能な細胞である。上記形質転換された核酸配列を含む宿主細胞は、「トランスジェニック」細胞といわれ、トランスジェニック細胞を含む生物は、「トランスジェニック生物」といわれる。用語「形質転換された」、「形質導入された」、「トランスジェニック」、および「組換えの」とは、異種核酸分子が導入された宿主細胞もしくは生物に言及する。上記核酸分子は、当該分野で一般に既知のゲノムに安定に組み込まれ得、Sambrook and Russell(前出)で開示される。PCRの公知の方法としては、対形成されるプライマー、ネスト化プライマー、単一の特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的にミスマッチのプライマーなどを使用する方法が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、「形質転換された」細胞、「形質転換」細胞および「トランスジェニック」細胞は、形質転換プロセスを介したものであり、それらのゲノムに組み込まれた外来遺伝子を含む。用語「形質転換されていない」とは、上記形質転換プロセスを介しなかった通常の細胞をいう。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」とは、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいうために、交換可能に使用される。これらの用語はまた、グリコシル化、アセチル化およびリン酸化を含む反応を介して、翻訳後修飾されるタンパク質を含む。
ペプチドおよびポリペプチドは、全ての「模倣」形態および「ペプチド模倣」形態を含む。用語「模倣物」および「ペプチド模倣物」とは、本発明のポリペプチドの実質的に同じ構造および/もしくは機能的特性を有する合成化合物に言及する。上記模倣物は、アミノ酸の合成の天然ではないアナログから全体的に構成されるか、または部分的に天然のペプチドアミノ酸およびアミノ酸の部分的に天然ではないアナログも化学分子であるかのいずれかであり得る。上記模倣物はまた、任意の量の天然のアミノ酸の保存的置換を、このような置換がまた、上記模倣物の構造および/もしくは活性を実質的に変化させない限りにおいて、組み込まれ得る。保存的改変体である本発明のポリペプチドを用いる場合、慣用的実験法は、模倣物が、本発明の範囲内にあるか否か、すなわと、その構造および/もしくは機能が、本発明の例示的ポリペプチドから実質的に変化しないことを決定する。一局面において、模倣組成物が、本発明の組成物、細胞形もしくはプロセス(例えば、本発明の少なくとも1種の酵素を発現するプラスミドを有する宿主細胞)において使用される。
本発明のポリペプチド模倣物組成物は、天然でない構造成分の任意の組み合わせを含み得る。代替の局面において、本発明の模倣物組成物は、以下の3つの構造群のうちの1つもしくは全てを含む:a)天然のアミド結合(「ペプチド結合」)連結以外の残基連結基;b)天然に存在するアミノ酸残基の代わりに天然でない残基;またはc)二次構造擬態を誘導する、すなわち、二次構造(例えば、βターン、γターン、βシート、αヘリックスコンホメーションなど)を誘導もしくは安定化する残基。例えば、本発明のポリペプチドは、その残基のうちの全てもしくはいくつかが、天然のペプチド結合以外の化学的手段によって連結される場合に、模倣物として特徴付けられ得る。個々のペプチド模倣残基は、ペプチド結合、他の化学的結合もしくはカップリング手段(例えば、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)もしくはN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC))によって結合され得る。伝統的なアミド結合(「ペプチド結合」)連結の代替であり得る連結基としては、例えば、ケトメチレン(例えば、−C(=O)−NH−の代わりに−C(=O)−CH2−)、アミノメチレン(CH2−NH)、エチレン、オレフィン(CH=CH)、エーテル(CH2−O)、チオエーテル(CH2−S)、テトラゾール(CN4−)、チアゾール、レトロアミド、チオアミド、もしくはエステル(例えば、Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins,Vol.7,pp 267−357におけるSpatola(1983)、「Peptide Backbone Modifications」,Marcell Dekker,NYを参照のこと)が挙げられる。本発明のポリペプチドの残基(例えば、アミノ酸)はまた、反対のキラリティーのアミノ酸(もしくはペプチド模倣物残基)によって置換され得る。従って、L配置(これはまた、化学的実体の構造に依存して、RもしくはSとして言及され得る)において天然に存在する任意のアミノ酸は、同じ化学構造タイプもしくはペプチド模倣物であるが、反対のキラリティーのアミノ酸(D−アミノ酸といわれる)で置換され得るが、R−形態もしくはS−形態ともいわれ得る。
本発明の方法を実施するために使用されるポリペプチド(例えば、β−ガラクトシダーゼ、Kras−2b)は、いずれかの天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシング(例えば、リン酸化、アシル化など)によって、または化学的改変技術によって改変され得、改変されたポリペプチドが得られる。改変は、上記ポリペプチド中のいずれかの場所で生じ得、上記場所としては、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端もしくはカルボキシ末端が挙げられる。同じタイプの改変が、所定のポリペプチド中のいくつかの部位において同程度もしくは種々の程度で存在し得ることが、認識される。また、所定のポリペプチドは、多くのタイプの改変を有し得る。改変としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、peg化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫化、およびタンパク質へのアミノ酸のトランスファー−RNA媒介性付加(例えば、アルギニル化)が挙げられる。例えば、Creighton,T.E.,Proteins - Structure and Molecular Properties 2nd Ed.,W.H. Freeman and Company,New York(1993);Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pp.1−12(1983)を参照のこと。
「異種」成分とは、天然に位置する異なる実体内に導入されるかもしくは上記実体内で生成される成分をいう。例えば、ある生物に由来し、異なる生物への遺伝子操作技術によって導入されるポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドであり、このポリペプチドは、発現される場合、異種ポリペプチドをコードし得る。そのネイティブコード配列から除去され、異なるコード配列に作動可能に連結される同様に、プロモーターもしくはエンハンサーは、異種のプロモーターもしくはエンハンサーである。
用語「外因性の」とは、核酸分子に言及して使用される場合、上記核酸分子が、上記標的細胞以外の供給源に由来し、上記細胞に上記核酸分子が導入される予定であることを意味する。しかし、上記外因性核酸分子が、上記標的細胞と同じタイプの生物の他の細胞に由来し得ることが認識されるべきである。
「プロモーター」とは、本明細書で使用される場合、これに作動可能に連結される遺伝子もしくは核酸配列の転写を制御もしくは調節するポリヌクレオチド配列をいう。種々の異なる供給源に由来する多数のプロモーター(構成性プロモーター、誘導性プロモーター、および抑制性プロモーターが挙げられる)が、当該分野で周知であり、クローニングされたポリヌクレオチド配列(例えば、寄託物(例えば、ATCCおよび他の市販のもしくは個人の供給源)に由来する)として利用可能であるか、または上記ポリヌクレオチド配列内にある。
従って、本発明の構築物において使用されるプロモーターは、遺伝子の転写のタイミングおよび/もしくは速度を調整もしくは調節することに関与する、シス作用性転写制御エレメントおよび調節配列を含む。例えば、プロモーターは、シス作用性転写制御エレメント(エンハンサー、プロモーター、転写集結因子、複製起点、染色体組み込み配列、5’および3’非翻訳領域、もしくはイントロン配列が挙げられ、これらは、転写調節に関与する)であり得る。これらシス作用性配列は、代表的には、転写を行う(スイッチを入れる/スイッチを切る、調整する、調節するなど)タンパク質もしくは他の生体分子と相互作用し得る。「構成性」プロモーターは、大部分の環境的条件および発生もしくは細胞分化の状態の下で連続的に発現を駆動するものである。「誘導性」もしくは「調節可能な」プロモーターとは、環境的条件もしくは発生条件の影響の下で、本発明の核酸の発現を駆動する。誘導性プロモーターによる転写に影響を及ぼし得る環境的条件の例としては、嫌気的条件、高温、欠乏、もしくは光の存在が挙げられる。
「作動可能に連結される」とは、近接した並置(juxtaposition)に言及し、ここでそのように記載される成分は、それらの意図された様式で機能させることを可能にする関係にある。プロモーターは、上記プロモーターが、コード配列の転写を制御する場合に、上記コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたプロモーターは、上記コード配列の上流に位置した遺伝子であるが、必ずしも上記コード配列と連続している必要はない。エンハンサーは、上記エンハンサーが、コード配列の転写を増大させる場合に、上記コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたエンハンサーは、コード配列の上流に、コード配列内に、もしくはコード配列の下流に位置し得る。他の局面において、エンハンサーは、必ずしも物理的に連続する必要はないか、または上記コード配列に近接して位置する必要はなく、上記コード配列の転写は、上記エンハンサーが増強する。ポリアデニル化配列は、転写が、コード配列を通じて、上記ポリアデニル化配列へと移るように、上記ポリアデニル化配列が上記コード配列の下流末端に位置する場合、上記コード配列に作動可能に連結されている。
「レプリコン」とは、適切な宿主細胞におけるポリヌクレオチドの複製を可能にする複製起点を含むポリヌクレオチドをいう。例としては、標的細胞のレプリコン(上記レプリコンの中に、異種核酸が組み込まれ得る(例えば、各染色体もしくはミトコンドリア染色体))、および染色体外レプリコン(例えば、複製するプラスミドおよびエピソーム)を含む。
「遺伝子送達」、「遺伝子移入」などは、本明細書で使用される場合、導入に使用される方法とは無関係に、宿主細胞への外因性ポリヌクレオチド(ときおり、「導入遺伝子」といわれる)の導入をいう用語である。このような方法は、種々の周知の技術(例えば、ベクター媒介性遺伝子移入(例えば、ウイルス感染/トランスフェクション)、または種々の他のタンパク質ベースのもしくは脂質ベースの遺伝子送達複合体、ならびに「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技術(例えば、エレクトロポレーション)、「遺伝子銃」送達およびポリヌクレオチドの導入のために使用される種々の他の技術による)が挙げられる。上記導入されたポリヌクレオチドは、上記宿主細胞中に安定にもしくは一過性維持され得る。安定な維持は、代表的には、上記導入されたポリヌクレオチドが、上記宿主細胞と適合性の複製起点を含むか、または上記宿主細胞のレプリコン(例えば、染色体外レプリコン(例えば、プラスミド))または各染色体もしくはミトコンドリア染色体に組み込まれるかのいずれかを要する。多くのベクターは、当該分野で公知でありかつ本明細書で記載されるように、哺乳動物細胞への遺伝子の移入を媒介し得ることが公知である。
「インビボ」での遺伝子送達、遺伝子移入、遺伝子治療などは、本明細書で使用される場合、生物(例えば、ヒトもしくは非ヒト哺乳動物)の身体へ直接、外因性ポリヌクレオチドを含むベクターの導入をいう用語である。それによって、上記外因性ポリヌクレオチドは、このような生物の細胞へインビボで導入される。
「ベクター」(ときおり、遺伝子送達「ビヒクル」もしくは遺伝子移入「ビヒクル」といわれる)とは、インビトロもしくはインビボのいずれかで、宿主細胞に送達されるべきポリヌクレオチドを含む大分子もしくは分子の複合体をいう。上記送達されるべきポリヌクレオチドは、遺伝子治療において目的のコード配列を含み得る。ベクターとしては、例えば、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス(「Ad」)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、およびレトロウイルス)、リポソームおよび他の脂質含有複合体、ならびに宿主細胞へのポリヌクレオチドの宗達を媒介し得る他の高分子複合体が挙げられる。ベクターはまた、遺伝子送達および/もしくは遺伝子発現をさらに調節するか、または別の方法で、上記標的とされた細胞に有益な特性を提供する他の成分もしくは機能性を含み得る。このような他の成分としては、例えば、細胞への結合もしくは標的化に影響を与える成分(細胞タイプ特異的もしくは組織特異的結合を媒介する成分を含む);上記細胞による上記ベクター核酸の取り込みに影響を与える成分;取り込み後の上記細胞内の上記ポリヌクレオチドの位置に影響を与える成分(例えば、核局在化に影響を及ぼす薬剤);および上記ポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼす成分が挙げられる。このような成分はまた、マーカー(例えば、上記ベクターによって送達された上記核酸を取り込んで、発現している細胞を検出もしくは選択するために使用され得る、検出マーカーおよび/もしくは選択マーカー)が挙げられ得る。このような成分は、上記ベクターの天然の特徴として提供され得る(例えば、結合および取り込みを媒介する成分もしくは機能性を有する特定のウイルスベクターの使用)か、またはベクターは、このような機能性を提供するように改変され得る。非常に種々のこのようなベクターは、当該分野で公知であり、一般に利用可能である(例えば、以下に引用される種々の参考文献を参照のこと)。
「組換えウイルスベクター」とは、1種以上の異種の遺伝子もしくは配列を含むウイルスベクターをいう。多くのウイルスベクターが、パッケージングと関連するサイズ制約を示すので、上記異種遺伝子もしくは配列は、代表的には、上記ウイルスゲノムの1種以上のタンパク質を置換することによって、導入される。このようなウイルスは、複製欠損になり得、このことは、上記傑出された機能がウイルス複製およびキャプシド形成の間にトランスで提供されることを要する(例えば、複製および/もしくはキャプシド形成に必須の遺伝子を有する、ヘルパーウイルスもしくはパッケージング細胞株を使用することによって)(例えば、以下の参考文献および例示を参照のこと)。送達されるべきポリヌクレオチドが上記ウイルス粒子の外側に保持される改変ウイルスベクターもまた、記載されてきた(例えば、Curiel,DTら PNAS 88:8850−8854,1991を参照のこと)。
ウイルス「パッケージング」は、本明細書で使用される場合、ウイルスベクターの合成およびアセンブリを生じる一連の細胞内事象をいう。パッケージングは、代表的には、「プロウイルスゲノム」の複製、または「ベクタープラスミド」(これは、ウイルスゲノムに類似の様式において、代表的には、適切なウイルス「パッケージング配列」が隣接している結果として、パッケージングされ得る組換えポリヌクレオチドである)と代表的にはいわれる組換えプロベクター、続いて、上記核酸のキャプシド形成もしくは他のコーティングを要する。従って、適切なベクタープラスミドが、適切な条件下でパッケージング細胞株に導入される場合、これは、複製され得、そしてウイルス粒子へとアセンブルされ得る。ウイルス「rep」および「cap」遺伝子は、多くのウイルスゲノムにおいて見いだされ、それぞれ、複製およびキャプシド形成タンパク質をコードしている遺伝子である。「複製欠損」もしくは「複製インコンピテント」ウイルスベクターは、複製および/もしくはパッケージングに必須の1種以上の機能が、失われているもしくは変化し、上記ウイルスベクターが、宿主細胞による取り込み後にウイルス複製を開始できないようにするウイルスベクターをいう。このような複製欠損ウイルスベクターのストックを生成するために、上記ウイルスもしくはプロウイルス核酸は、トランスで供給され得る、失われている機能をコードする遺伝子を含むように改変された「パッケージ細胞株」に導入され得る。例えば、このようなパッケージング遺伝子は、上記パッケージング細胞株のレプリコンに安定に組み込まれ得るか、または失われている機能をコードする遺伝子を有する「パッケージングプラスミド」もしくはヘルパーウイルスでのトランスフェクションによって導入され得る。
用語「過剰発現」とは、通常のもしくは形質転換されていない細胞もしくは生物における発現のレベルを超える、トランスジェニック細胞もしくはトランスジェニック細胞生物における発現レベルをいう。
「検出マーカー遺伝子」とは、上記遺伝子を有する細胞が、特異的に検出される(例えば、上記マーカー遺伝子を有さない細胞から区別される)ことを可能にする遺伝子である。多くの種々のこのようなマーカー遺伝子は、当該分野で公知である。その例としては、細胞表面上に出現するタンパク質をコードし、それによって、単純化されかつ迅速な検出および/もしくは細胞ソーティングを容易にする検出マーカー遺伝子が挙げられる。例示によって、β−ガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子は、検出マーカーとして使用され得、このことは、上記lacZ遺伝子を有するベクターで形質導入された細胞が、以下に記載されるように、染色によって検出されることを可能にする。
「選択マーカー遺伝子」とは、上記遺伝子を有する細胞が、対応する選択薬剤の存在下で、上記薬剤についてもしくは上記薬剤に対して特異的に選択されることを可能にする遺伝子である。例示によって、抗生物質耐性遺伝子は、宿主細胞が、対応する抗生物質の存在下で、上記抗生物質について陽性選択されることを可能にする陽性選択マーカー遺伝子として使用され得る。選択マーカーは、陽性、陰性もしくは二機能性であり得る。陽性選択マーカーは、上記マーカーを有する細胞についての選択を可能にするのに対して、陰性選択マーカーは、上記マーカーを有する細胞が選択的に排除されることを可能にする。種々のこのようなマーカー遺伝子が記載されてきており、これらマーカーとしては、二機能性(すなわち、陽性/陰性)マーカー(例えば、WO 92/08796(1992年5月29日公開)およびWO 94/28143(1994年12月8日公開)を参照のこと)が挙げられる。このようなマーカー遺伝子は、遺伝子治療の状況において有利であり得る、制御のさらなる手段を提供し得る。
「被験体」とは、生物であって、移植される細胞のドナーもしくはレシピエント、または彼ら自身の細胞もしくは組織である生物を意味する。「被験体」とはまた、本発明の核酸分子が投与され得る生物(哺乳動物もしくはヒトが挙げられる)をいう。一実施形態において、被験体は、哺乳動物もしくは哺乳動物細胞である。用語「哺乳動物」とは、哺乳動物として分類される任意の生物(マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、サル、およびヒトが挙げられる)をいう。本発明の一実施形態において、上記哺乳動物は、ウサギである。本発明の別の実施形態において、上記哺乳動物は、ヒトである。別の実施形態において、被験体は、ヒト被験体もしくはヒト細胞である。
「処置」もしくは「治療」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物に、上記個体において予防的、治癒的、もしくは他の有益な効果を誘発し得る薬剤を投与することをいう。
「遺伝子治療」とは、本明細書において使用される場合、哺乳動物に、治療的遺伝子を含むベクターを投与するこうとをいう。
「治療的ポリヌクレオチド」もしくは「治療的遺伝子」とは、哺乳動物に移入される場合に、上記哺乳動物において予防的、治癒的もしくは他の有益な効果を誘発し得るヌクレオチド配列をいう。
本明細書で使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」は、別段示されなければ、複数への言及を含む。例えば、「1つの(ある)」標的細胞は、1つ以上の標的細胞を含む。
(参考文献)
本発明の実施は、別段示されなければ、当該分野の技術範囲内である、分子生物学などの従来の知識を使用する。このような技術は、文献中で十分に説明されている。例えば、以下を参照のこと:Molecular Cloning: A Laboratory Manual,(J.Sambrookら,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989);Current Protocols in Molecular Biology(F.Ausubelら編,1987および最新版);Essential Molecular Biology(T.Brown編,IRL Press 1991);遺伝子発現 Technology(Goeddel編,Academic Press 1991);Methods for Cloning and Analysis of Eukaryotic Genes(A.Bothwellら編,Bartlett Publ.1990);Gene Transfer and Expression(M.Kriegler,Stockton Press 1990);Recombinant DNA Methodology(R.Wuら編,Academic Press 1989);PCR:A Practical Approach(M.McPhersonら,IRL Press at Oxford University Press 1991);Cell Culture for Biochemists(R.Adams編,Elsevier Science Publishers 1990);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.Miller&M.Calos編,1987);Mammalian Cell Biotechnology(M.Butler編,1991);Animal Cell Culture(J.Pollardら編,Humana Press 1990);Culture of Animal Cells,第2版(R.Freshneyら編,Alan R.Liss 1987);Flow Cytometry and Sorting(M.Melamedら編,Wiley−Liss 1990);Methods in Enzymologyのシリーズ(Academic Press,Inc.);Techniques in Immunocytochemistry(G.Bullock&P.Petrusz編,Academic Press 1982,1983,1985,1989);Handbook of Experimental Immunology(D.Weir&C.Blackwell編);Cellular and Molecular Immunology(A.Abbasら,W.B.Saunders Co.1991,1994);Current Protocols in Immunology(J.Coliganら編.1991);Annual Review of Immunologyのシリーズ;Advances in Immunologyのシリーズ;Oligonucleotide Synthesis(M.Gait編,1984);およびAnimal Cell Culture(R.Freshney編,IRL Press 1987)。
援用の表示
本願内で引用される参考文献(GenBankアクセッション番号、特許、公開特許出願および他の刊行物を含む)は、本明細書に参考として援用される。
(本発明の種々の実施形態の説明)
本発明の種々の局面は、以下にまとめられ、以下の詳細な説明および実施例においてさらに記載されかつ例示される。
(Kras−2bペプチド)
用語、Kras−2bとは、本明細書で使用される場合、ネイティブKras−2bの生物学的活性を保持し、好ましくは、胚発生の間に発現されるKras−2bの活性を保持するKras−2bペプチドの任意の形態もしくはアナログをいうことが理解される。Krasノックアウトマウスは、他のrasホモログ(例えば、N−rasもしくはH−ras)を欠いているものとは異なり、胚性致死であった。
本発明の方法および組成物において使用されるKras−2bは、表Iにおいて示され、アクセッション番号によって同定される配列と同一であり得るか、またはその配列を含み得る。Kras−2bはまた、表Iにおいて同定されたものとは変動するアミノ酸配列を有する改変ポリペプチドをいう。あるいは、Kras−2bは、化学的に改変され得る。
Kras−2bの改変体は、天然に存在する改変体(例えば、非ヒト種によって発現される改変体)であってもよい。また、Kras−2bの改変体は、開示される配列から変動する配列を含み得るが、必ず天然に存在するわけではない。上記天然に存在するアミノ酸配列の全体の長さにわたって、改変体は、好ましくは、アミノ酸同一性に基づいて、その配列に対して少なくとも80%相同である。より好ましくは、上記タンパク質は、配列全体にわたって上記天然に存在するアミノ酸配列に対するアミノ酸同一性に基づいて、少なくとも85%もしくは90%であり、より好ましくは、少なくとも95%、97%もしくは99%相同である。40以上の(例えば、60、80、100、120、140もしくは160、またはそれ以上の)連続するアミノ酸のストレッチにわたって少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、90%もしくは95%のアミノ酸同一性(「厳しい相同性」)が存在する。
相同性は、当該分野で公知の任意の方法を使用して決定され得る。相同性もしくは配列同一性は、配列分析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group(University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,WI 53705)の配列分析ソフトウェアパッケージ)を用いて測定され得る。このようなソフトウェアは、種々の欠失、置換および他の改変に対してホモロジーの程度を割り当てることによって、類似の配列をマッチさせる。用語「相同性」および「同一性」は、2個以上の核酸もしくはポリペプチド配列の状況において、任意の数の配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アラインメントおよび視覚的検査によって測定される場合に、比較ウィンドウもしくは指定された領域にわたって最大対応について比較および整列されるときに、同じであるか、または同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの特定のパーセンテージを有する2つ以上の配列もしくは部分配列に言及する。配列比較のために、ある配列は、参照配列として例えば、本発明の配列(これに対して試験配列が比較される)が作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列は、コンピューターに入力され、部分配列座標が指定され、必要であれば、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。デフォルトプログラムパラメーターが使用されても良いし、代替のパラメーターが指定されてもよい。次いで、上記配列比較アルゴリズムは、上記プログラムパラメーターに基づいて、上記参照配列に対する試験配列の%配列同一性を計算する。
アミノ酸置換は、配列番号2のアミノ酸配列に対してなされ得る(例えば、1個、2個、3個、4個もしくは5個〜10個、20個もしくは30個の置換)。保存的置換が行われ得る。保存的アミノ酸置換は、例えば、1個のアミノ酸を、同じクラスの別のアミノ酸で置換する(例えば、ある疎水性アミノ酸(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニン)を、別の疎水性アミノ酸で置換、またはある極性アミノ酸を別の極性アミノ酸で置換する(例えば、アルギニンをリジンで置換、グルタミン酸をアスパラギン酸で置換、もしくはグルタミンをアスパラギンで置換)。1種以上のアミノ酸は、例えば、ポリペプチドから欠失され得、その生物学的活性を顕著に変化させることなく、上記ポリペプチドの構造の改変を生じる。
配列番号2のアミノ酸配列の1種以上のアミノ酸残基は、代わりにもしくはさらに、欠失され得る。1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個もしくは30個またはそれ以上の残基が、欠失され得る。
Kras−2bはまた、上記の配列のフラグメントを含む。このようなフラグメントは、Kras−2b活性を保持する。フラグメントは、少なくとも長さが120個から、もしくは140個のアミノ酸であり得る。このようなフラグメントは、以下により詳細に記載されるように、キメラ因子を生成するために使用され得る。
Kras−2bは、表Iに記載される内因性配列のフラグメントもしくは一部を含むキメラタンパク質、またはその改変体もしくはホモログを含む。1種以上のアミノ酸は、代わりにもしくはさらに、上記のポリペプチドに添加され得る。発現は、上記天然に存在するアミノ酸配列またはそのポリペプチド改変体もしくはフラグメントのアミノ酸配列のN末端もしくはC末端において提供され得る。伸長は、極めて短くてもよい(例えば、長さが1〜10アミノ酸)。あるいは、上記伸長は、より長くてもよい。キャリアタンパク質は、上記のアミノ酸配列に融合され得る。上記ポリペプチドのうちの1つの組み込む融合タンパク質は、よって本発明において使用され得る。
Kras−2bはまた、天然に存在するアミノ酸配列、または化学的に改変されたその改変体もしくはホモログを含む。多くの側鎖改変は、当該分野で公知であり、上記で議論されるタンパク質もしくはペプチドの側鎖に対して行われ得る。このような改変としては、例えば、グリコシル化、リン酸化、アルデヒドとの反応による還元的アルキル化、続いて、NaBH4での還元によるアミノ酸の改変、メチルアセトイミデートでのアミド化もしくは酢酸無水物でのアシル化が挙げられる。上記改変は、好ましくは、グリコシル化である。
上記Kras−2bポリペプチドは、合成によって、または当該分野で公知の方法を使用して組換え手段によって、作製され得る。タンパク質およびポリペプチドのアミノ酸配列は、天然に存在しないアミノ酸を含むように、または上記化合物の安定性を増すために、改変され得る。上記タンパク質もしくはペプチドが合成手段によって生成される場合、このようなアミノ酸は、生成の間に導入され得る。上記タンパク質もしくはペプチドはまた、合成もしくは組換え生成のいずれかの後に改変され得る。
Kras−2bはまた、D−アミノ酸を使用して生成され得る。このような場合において、上記アミノ酸は、CからNの配向において、逆方向の配列に連結され得る。このことは、このようなタンパク質もしくはペプチドを生成することについて、当該分野において従来からのものである。
Kras−2bは、組換え発現ベクターからの上記ポリペプチドのインサイチュ発現によって、細胞において生成され得る。上記発現ベクターは、必要に応じて、上記ポリペプチドの発現を制御するために、誘導性プロモーターを有する。Kras−2bもしくはそのアナログは、組換え発現後の任意のタンパク質液体クロマトグラフィーシステムによる精製後に、大規模で生成され得る。好ましいタンパク質液体クロマトグラフィーシステムとしては、FPLC、AKTAシステム、Bio−Cadシステム、Bio−Rad BioLogicシステムおよびGilson HPLCシステムが挙げられる。
Kras−2bの市販の形態もしくはそのアナログは、本発明において使用され得る。
Kras−2bポリペプチドの「フラグメント」もしくは「改変体」の生物学的活性は、以前に記載されるように(Jamesら,(2003)Mol.Cancer.Res.,1:820−825;Schimanskiら,(1999)Cancer Research,59:5169−5175)、例えば、RFLP分析を測定することによって、決定され得る。
用語「実質的に同じ活性もしくはより高い活性」とは、上記内因性Kras−2bポリペプチドの生物学的活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%もしくはそれ以上を有するKras−2bポリペプチドの「フラグメント」もしくは「改変体」を含む。
(Kras−2bポリヌクレオチド)
本発明はまた、哺乳動物関節において、および/もしくは軟骨細胞においてKras−2bを発現し得るポリヌクレオチドを使用することを包含し得る。このようなポリヌクレオチドは、軟骨膜(perichondium)におけるKras−2bの発現を指向し得るベクターの形態で存在し得る。得られたKras−2bは、次いで、治療効果を有し得る(「遺伝子治療」)。上記ポリヌクレオチドは、上記で議論されたKras−2bの形態(その改変体、フラグメントおよびキメラタンパク質を含む)のうちのいずれかをコードし得る。
上記Kras−2bをコードするポリヌクレオチドは、ヒトフラグメントもしくは天然に存在する配列改変体(例えば、非ヒト種によって発現される改変体)を含み得る。また、Kras−2bをコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するフラグメントから変化するが、必ずしも天然に存在するわけではない配列を含む。表Iに開示される天然に存在する配列のアミノ酸配列の全長にわたって、改変体は、好ましくは、ヌクレオチド同一性に基づいて、その配列に対して少なくとも80%相同である。より好ましくは、上記ポリヌクレオチドは配列全体にわたって、表Iに開示される天然に存在する配列のヌクレオチドに対するヌクレオチド同一性に基づいて、少なくとも85%もしくは90%、およびより好ましくは、少なくとも95%、97%もしくは99%相同である。40個以上(例えば、60個、80個、100個、120個、140個もしくは160個以上)の連続するヌクレオチド(「厳しい相同性」)のストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、90%もしくは95%のヌクレオチド同一性が存在し得る。相同性は、上記で議論されるように決定され得る。
上記ポリヌクレオチドは、DNAもしくはRNAを含み得る。上記ポリヌクレオチドは、合成ヌクレオチドもしくは改変ヌクレオチドを含み得る。ポリヌクレオチドに対する多くの異なるタイプの改変は、当該分野で公知である。これらは、メチルホスフェート骨格およびホスホロチオエート骨格、上記分子の3’末端および/もしくは5’末端においてアクリジンもしくはポリリジン鎖の付加を含む。本発明の目的で、本明細書で記載されるポリヌクレオチドが、当該分野で利用可能な任意の方法によって改変され得ることは、理解されるべきである。
ポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチド)は、組換えによって、合成によって、もしくは当業者に利用可能な任意の手段によって生成され得る。これらはまた、標準的な技術によってクローニングされ得る。上記ポリヌクレオチドは、代表的には、単離されたおよび/もしくは精製された形態で提供される。
ポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段(例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を使用して、生成される。このことは、クローニングされることが望ましい、必要とされる遺伝子のある領域に対する1対のプライマー(例えば、約15〜30ヌクレオチドの)を作製し、上記プライマーを、適切な細胞から得られたDNAと接触した状態にし、ポリメラーゼ連鎖反応を、上記望ましい領域の増幅をもたらす条件下で行う工程、上記増幅されたフラグメントを単離する工程(例えば、アガロースゲルで反応混合物を精製することによって)、および上記増幅されたDNAを回収する工程を包含する。上記プライマーは、上記増幅されたDNAが、適切なクローニングベクターにクローニングされ得るように、適切な制限酵素認識部位を含むように設計され得る。
一般に、本明細書で言及される技術は、当該分野で周知であるが、言及は、特に、Sambrookら,1989に対してなされ得る。
本明細書中上記で示される場合、好ましくは、上記ポリヌクレオチドは、発現ベクターにおいて使用され、ここで哺乳動物の関節において(例えば、軟骨膜において)上記コード配列の発現を提供し得る制御配列に作動可能に連結されている。
(治療適用)
Kras−2bタンパク質、Kras−2bポリヌクレオチド、krasのエフェクター、もしくは調節性化合物(本明細書中以降、「治療剤」)の投与は、本明細書で議論されるように、予防目的もしくは治療目的のいずれかのためであり得る。予防的に提供される場合、上記治療剤は、任意の症状に先だって提供される。上記治療剤の予防的投与は、任意の症状を予防もしくは和らげるように働く。治療的に提供される場合、上記治療剤は、上記関節疾患もしくは障害の症状の始まりにおいて(もしくはその直後に)提供される。上記治療剤の治療的投与は、上記症状の任意の実際の増悪を和らげるように働く。処置される個体は、任意の哺乳動物であり得る。一局面において、上記哺乳動物はヒトである。別の局面において、上記ヒトは、変形性関節症もしくは変形性関節疾患を有する。他の局面において、上記関節疾患および障害は、関節炎病態および自己免疫疾患を含み、これらとしては、変形性関節症(OA)、関節リウマチ(RA)、結晶沈着病、セリアック病、1型糖尿病(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、多発性硬化症(MS)、橋本甲状腺炎、グレーブス病および突発性血小板減少性紫斑病が挙げられるが、これらに限定されない。
上記治療剤は、上記関節への送達に適した医薬もしくは薬学的組成物において投与され得る。上記薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。このような「賦形剤」とは、一般に、非毒性であり、かつ有害な様式で上記組成物の他の成分と相互作用しない実質的に不活性な物質をいう。
薬学的に受容可能な賦形剤としては、液体(例えば、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノール)が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能な塩は、そこに含まれ得、例えば、無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など);および有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩など)である。
上記治療剤を含む組成物もしくは医薬が、特に、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドもしくは他の同様の薬剤のための安定化剤として働く薬学的に受容可能なキャリアを含み得ることもまた、企図される。ペプチドのための安定化剤としても作用する適切なキャリアの例としては、製薬グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なキャリアとしては、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、繰り返すと、これらに限定されない。荷電した脂質および/もしくは界面活性剤を使用することはまた、有用であり得る。適切な荷電した脂質としては、ホスファチジルコリン(レシチン)などが挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤は、代表的には、非イオン性、アニオン性、カチオン性、もしくは両性界面活性剤である。適切な界面活性剤の例としては、例えば、Tergitol(登録商標)およびTriton(登録商標)界面活性剤(Union Carbide Chemicals and Plastics,Danbury,CT)、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、TWEEN(登録商標)界面活性剤(Atlas Chemical Industries,Wilmington,DE))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、Brij)、薬学的に受容可能な脂肪酸エステル(例えば、ラウリル硫酸塩およびその塩(SDS))、ならびに類似の物質が挙げられる。薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、安定化剤および他の補助的物質の完全な議論は、Remingtons Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,N.J.1991)において入手可能である。
予防状有効な量の、もしくは治療上有効な量の、本明細書で記載される治療剤を含む組成物は、簡便には、滑膜内注射によって、上記哺乳動物の関節に送達され得る。適切な有効な量は、適切な臨床試験によって決定され得、そして例えば、投与される上記治療剤の活性または誘導されるヌクレオチドもしくはタンパク質のレベルを変化させる。例えば、Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドは、マイクログラム量で投与され得る。それらは、投与処方物と適合性の様式で、かつ所望の効果をもやらすに有効な量で処置されるべき被験体に投与される。一局面において、Kras−2bポリヌクレオチドは送達され、送達されるべき量は、処置されるべき被験体に依存して、1μg〜5mg(例えば、1〜50μg)であり得る。必要な正確な量は、処置される個体の年齢および全般的な状態、ならびに選択される薬剤、ならびに他の要因に依存して、変化する。上記Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドは、1回で、もしくは1回より多い回数で投与され得る。例えば、これらは、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、もしくは必要に応じた基準で投与され得る。
上記Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドは、それ自体で投与されてもよいし、別の治療用化合物と組み合わせて投与されてもよい。特に、上記Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドは、上記哺乳動物における変形性関節症を処置するために使用される治療用化合物とともに投与され得る。上記Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドおよびさらなる治療用化合物は、同じ組成物もしくは異なる組成物中に処方され得る。一実施形態において、上記Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドは、抗炎症剤、疼痛緩和剤、および軟骨保護剤(chondroprotective agent)(例えば、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸)からなる群より選択されるさらなる治療用化合物と組み合わせて、変形性関節症を有する個体に投与される。上記Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドは、上記さらなる治療用化合物と同時に、逐次的に、もしくはそれとは別個に投与され得る。
従って、本発明のさらなる局面において、同時、別個の、もしくは逐次的投与のために、(i)(a)Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチド、および(b)抗炎症剤、疼痛緩和剤、軟骨保護剤(例えば、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸)からなる群より選択されるさらなる治療用化合物、から選択される第1の薬剤を含む、変形性関節症の処置のための生成物が提供される。上記2つの治療用化合物は、同じ経路もしくは異なる経路を使用して投与され得る。例えば、上記Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドは、滑膜内に投与され得る一方で、他の治療用化合物(例えば、抗炎症剤)は、経口投与もしくは非経口投与され得る。好ましくは、このような生成物は、Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bポリヌクレオチドおよび上記他の治療用化合物の同時の、別個の、もしくは逐次的な投与を提供する。
上記で定義される第1の薬剤および別の治療用化合物は、例えば、上記関節への送達に適した単一の薬学的組成物の形態で提供され得る。
本明細書で記載されるように、多くの異なるベクターが、本発明に遵って、インビボもしくはエキソビボで、上記Kras−2b導入遺伝子を送達するために使用され得る。
本発明の組成物もしくは生成物は、簡便には、上記関節(例えば、滑膜腔(synovial space)中)への投与に適した処方物の形態で提供され得る。適切な投与形式は、各患者に対する医療従事者によって、標準的な手順に従って、個々に決定され得る。適切な薬学的に受容可能なキャリアおよびそれらの処方としては、標準的な処方取り決め(例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceuticals Sciencesを参照のこと)に記載される。Wang,Y.J. and Hanson,M.A.「Parental Formulations of Proteins and Peptides: Stability and Stabilizers」,Journals of Parental Sciences and Technology,Technical Report No.10,Supp.42:2S(1988)もまた参照のこと。一局面において、本発明のベクターは、中性pH(例えば、約pH6.5〜約pH8.5、より好ましくは、約pH7〜8)の溶液中に、上記溶液をほぼ等張性にする賦形剤(例えば、4.5% マンニトールもしくは0.9% 塩化ナトリウム)、当該分野で公知の一般に安全であるとみなされる緩衝化溶液(例えば、リン酸ナトリウム)でのpH緩衝化と、受け入れられている保存剤(例えば、メタクレゾール 0.1%〜0.75%、より好ましくは、0.15%〜0.4% メタクレゾール)と一緒に、処方される。所望の等張性を得ることは、塩化ナトリウム、ならびに他の薬学的に受容可能な薬剤(例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(例えば、マンニトールおよびソルビトール))、または他の無機溶質もしくは有機溶質を使用して、達成され得る。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含む緩衝化剤のために特に好ましい。望ましい場合、上記組成物の溶液はまた、貯蔵寿命および安定性を高めるために調製され得る。本発明の治療上有用な組成物は、一般に、受容された手順の後に成分を混合することによって調製され得る。例えば、上記選択された成分は、濃縮混合物を生成するために混合され得、これは、pHもしくはさらなる溶質を制御して、張度を制御するための水および/もしくは緩衝化剤の添加によって、最終濃度および粘性に調節され得る。
医師による使用のために、上記組成物は、ある量の本発明のベクターを含む投与形態で提供され得、この投与形態は、Kras−2b導入遺伝子送達/発現を、所望のレベルで誘導するために、1用量もしくは複数用量で有効である。当業者によって認識されるように、治療剤の有効量は、多くの要因とともに変化し、上記要因としては、患者の年齢および体重、患者の物理的な状態、望ましい心機能の増強のレベル、および他の要因が挙げられる。
核酸ベクターについては、本発明の化合物の有効用量は、代表的には、少なくとも約107核酸粒子、好ましくは、約109核酸粒子、およびより好ましくは、約1011核酸粒子の範囲中である。核酸粒子の数は、好ましくは、1014を超えないかもしれない。注意されるように、投与されるべき正確な用量は、主治医によって決定されるが、好ましくは、1ml リン酸緩衝化生理食塩水中に存在する。
変性性関節疾患の場合における投与の現在最も好ましい様式は、滑膜内注射によるものである。
(哺乳動物軟骨膜細胞のリポソームによるトランスフェクション)
本発明は、核酸分子の、細胞への高効率レセプター/リポソーム媒介性送達のための組成物を提供する。本明細書で開示されるように、本発明の組成物は、本発明の組成物は、エキソビボもしくはインビボで、約50%以上の効率で、細胞へ核酸分子を導入するために有用である。特に、本発明の組成物は、核酸分子を、初代細胞(例えば、初代哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)に導入するために有用である。一局面において、上記初代哺乳動物細胞は、関節における細胞であり、例えば、軟骨膜細胞であるが、これに限定されない。
用語「トランスフェクション効率」とは、標的細胞の集団内の、導入された外因性核酸分子を含む標的細胞のパーセンテージをいう。トランスフェクション効率は、レポーター遺伝子(例えば、β−ガラクトシダーゼ)をコードする核酸分子を、標的細胞の集団にトランスフェクトし、β−ガラクトシダーゼ活性を有する細胞のパーセンテージを決定することによって、決定され得る。従って、トランスフェクション効率は、上記導入された核酸分子によってコードされる遺伝子産物についてアッセイすることによって、決定され得る。本明細書で、「高トランスフェクション効率」などへの言及は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のトランスフェクション効率に言及する。
本発明は、外因性核酸分子(例えば、Kras−2bコード核酸配列)を、高効率で標的細胞に導入するために有用な組成物を提供する。本発明の特定の組成物は、核酸分子、カチオン性リポソーム、および上記標的細胞によって発現される細胞表面レセプターに結合し得るリガンドを含み、ここで上記リガンドは、正に荷電したポリマー足場に結合される。
本明細書で使用される場合、外因性核酸分子屁の言及において使用される場合に用語「導入する」とは、上記核酸分子が、標的細胞に送達される;すなわち、上記核酸分子が上記標的細胞にトランスフェクトされることを意味する。用語「標的細胞」とは、外因性核酸分子が導入されるべき任意の細胞を意味するために、本明細書で使用される。しかし、特に、標的細胞は、特定の細胞表面レセプター(これは、本発明の組成物のリガンド成分を結合し得る)を発現するという点において特徴付けられる。
望ましい場合、標的細胞に導入されるべき核酸分子は、ベクター中に含まれ得、上記ベクターは、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、または植物ウイルスもしくは動物ウイルスに由来し得る。このようなベクターは、適切な宿主細胞によって認識される複製起点を含み得、発現ベクターの場合には、プロモーター、または特定の宿主細胞もしくは標的細胞において有用な他の調節領域を含み得る。例えば、アンピシリン耐性の遺伝子についての発現カセットを有するプラスミド中に、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター/エンハンサー配列の下流に連結されたβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の活性な形態のオープンリーディングフレームを含むベクターは、本発明の組成物および方法を用いて得られたトランスフェクション効率を決定するために使用され得る。当業者は、他のベクターをどのように作製し、そして使用するか、または別の方法で得るかを知っている(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press;Cold Spring Harbor,N.Y.;1989)(これは、本明細書で参考として援用される)を参照のこと)。
本発明の特定の組成物はまた、リポソーム(カチオン性、アニオン性および合成のリポソームが挙げられる)を含む。本明細書で使用される場合、用語「リポソーム」とは、脂質二重層によって境界が引かれた小胞をいう。「カチオン性リポソーム」は、正味の正の荷電を有する。リポソーム(カチオン性リポソームを含む)は、当該分野で周知であり、慣用的な方法を使用して(例えば、Brantら,Am.Fed.Med.Res.45(1):159A(1997)(これは、本明細書で参考として援用される);Feignerら(前出(1987));およびWheelerら(前出(1996))を参照のこと)、または市販のキット(例えば、DOTAP(Avanti Polar Lipids,Alabaster,Ala.);DOSPA(Life Technologies,Inc.,Gaithersburg,Md.);およびDDAB(Kodak,Rochester,N.Y.))を使用して、調製され得る。アニオン性リポソームおよび合成脂質ミクロスフェアはまた、本発明において使用され得る(例えば、Lasic,American Scientist 80:20−31(1992)(これは、本明細書で参考として援用される)を参照のこと)。
本明細書で使用される場合、用語「リガンド」とは、標的細胞の表面に発現されるレセプターに、または逆に、標的細胞の表面に発現される分子を結合し得るレセプターに結合し得る分子をいうために本明細書で広く使用される。例えば、上記「リガンド」は、標的細胞(例えば、軟骨膜細胞)の表面に発現されるトランスフェリンレセプターに結合し得る、トランスフェリンであり得る。他の局面において、上記「リガンド」は、標的細胞(例えば、T細胞)に発現されるCD4に結合する、例えば、抗CD4抗体であり得る。
本発明の一局面において、上記リガンドは、共有結合もしくは生理学的条件(インビボもしくは組織培養における条件を含む)下で比較的安定な他の結合によって、正に荷電したポリマー足場に結合されている。従って、上記リンが度は、上記正に荷電したポリマー足場と上記リガンドとの間の非共有結合相互作用もしくはイオン性相互作用によって結合され得るが、ただし、上記リガンドは、上記相互作用が、生理学的条件下で維持されるように、十分にアニオン性である。つなぎ分子(tether)の使用は、結合を促進し得、そして上記足場 対 上記リガンドの比を最適化し得る。つなぎ分子は、例えば、ビオチンであり得、ビオチンは、上記足場に結合され、アビジンを結合し、アビジンは、上記リガンドに結合され得る。
本発明において有用なリガンドは、上記標的細胞の表面に発現されるレセプターに結合し得る任意のリガンド;または上記標的細胞の表面に発現される分子に結合し得る任意のレセプターもしくは他の結合分子であり得る。例えば、上記リガンドは、トランスフェリンであり得る。上記トランスフェリンは、ポリ−L−リジンに共有結合される。本発明の特定の組成物において有用な他のリガンドとしては、例えば、金子リン、葉酸もしくはコレラ毒素(Cheng,(1996) Human Gene Ther.,7:275−282;Lee and Huang,J.Biol.Chem.271(14):8481−8487(1996)(これらは、本明細書で参考として援用される)を参照のこと)が挙げられる。さらに、他のリガンド(これは、それらのレセプターへの結合の際に、インターナライズされ得る)は、当業者に公知であり、例えば、トランスフェクトされる特定の標的細胞に依存する。従って、上記リガンドの選択は、所望の標的細胞に基づく。
本発明の利点は、上記組成物の調製の容易さである。なぜなら、上記成分の全てが、市販されているからである。試薬(例えば、トランスフェリンおよびポリ−L−リジン)は、例えば、Sigma Chemical Co.(St.Louis,Mo.)から購入され得る。さらに、本発明の組成物は、宿主免疫応答の生成リスクはごくわずかである。例えば、特定の動物供給源から調製されるリガンドは、上記リガンドに対して宿主免疫応答を発生させるという懸念なしに、その同じ動物種の細胞をトランスフェクトするために使用され得る。やはり、上記リポソームに対する免疫応答の最小限のリスクしかない。なぜなら、リポソーム毒性研究は、上記リポソームが、宿主の炎症応答もしくは免疫応答をほとんどもしくは全く引き起こさないことを示したからである(Striblingら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 89:11277−11281(1992);Altonら,Nature Genet.5:135−142(1993))。従って、本発明の組成物は、例えば、有害な免疫応答の可能性が最小化されるという点において、上記ウイルスベクターの使用を上回る利点を提供する。
本発明の組成物は、正に荷電したポリマー足場を含む。本明細書で使用される場合、用語「ポリマー足場」とは、上記足場が、相互作用し得かつ負に荷電した核酸分子と複合体を形成し得るように、正味の正電荷もしくは中性電荷を有するポリマーを意味する。ポリマー足場が、負電荷を有する1個以上のユニットを含み得るが、ただし、上記ポリマーが、正味の正電荷もしくは中性電荷を有することは、理解されるべきである。
正に荷電したポリマー足場は、ポリ−L−リジンによって、本明細書で例示される。他の本発明の足場は、ホモ−ポリマーアミノ酸、ヘテロ−ポリマーアミノ酸、互いに共有結合されないアミノ酸、正に荷電した部分(例えば、アミノ基)を含むポリマー、ポリ−スペルミンもしくはポリ−スペルミジンであり得る。用語「ホモ−ポリマーアミノ酸」とは、荷電したもしくは荷電していない同じアミノ酸の共有結合したポリマー(これは、上記核酸分子と特異的にもしくは非特異的に相互作用し得る)を意味する。逆に、用語「ヘテロ−ポリマーアミノ酸」とは、荷電したもしくは荷電していない異なるアミノ酸の共有結合したポリマー(これは、上記核酸分子と特異的にもしくは非特異的に相互作用し得る)を意味する。長さに対して改変もしくはバリエーションを有する正に荷電したポリマー足場は、本発明の中で企図されるが、ただし、上記足場は、本明細書で定義されるように、高トランスフェクション効率を可能にする。例えば、ポリ−L−リジンの分子量は、15kDa〜150kDaであり得る。上記正に荷電したポリマー足場の長さにおける改変および/もしくはバリエーションが行われ得、それらがトランスフェクション効率に対して有する効果は、本明細書で開示される方法もしくは当該分野で公知の別の方法を使用して、決定され得る。
本発明の一局面において、本発明の方法は、上記標的細胞を透過性にし、上記細胞と、外因性核酸分子、カチオン性リポソーム、および上記標的細胞の表面に発現されるレセプターに結合するリガンドを含む組成物とを接触させることによって行われ、ここで上記リガンドは、正に荷電したポリマー足場に結合される。上記標的細胞は、例えば、リゾレシチン、TWEENおよびその誘導体、NP−40、TRITON X−100、ホスファチジルコリンもしくはホスホリパーゼ、リゾリン脂質(エタノールアミン、コリン、セリンもしくはスレオニンの1−アシル−sn−グリセロ−3−ホスフェートエステルを含む)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルセリン、もしくはリゾホスファチジルスレオニンのラウロイル誘導体およびミリストイル誘導体、またはドデシルホスホコリンのイミダゾール誘導体、NP−40およびその誘導体、SDSおよびSLS、ならびにそれらの誘導体を使用して透過性にされ得る。標的細胞はまた、浸透圧ショックもしくは高電圧電気パルスによって透過性にされ得る。
本発明の方法は、インビボもしくはエキソビボで行われ得る。エキソビボトランスフェクションについては、上記標的細胞は、被験体から、例えば、生検手順によって取り出される。適切なリガンドは、細胞表面レセプター(例えば、上記標的細胞によって発現される)の知見に基づいて選択される。上記標的細胞は、透過性にされ得、望ましい場合、外因性核酸分子、リポソーム、リガンドおよびポリマー足場を含む組成物と接触させられる。ここで上記リガンドは、細胞表面レセプターに結合し得る。次いで、上記トランスフェクトされた細胞は、被験体(一般に、上記細胞が本来得られた被験体)に移植され得る。従って、本発明は、エキソビボ遺伝子治療を可能にする手段を提供する。
本発明の方法は、タンパク質(例えば、β−ガラクトシダーゼもしくはKras−2b)をコードする外因性核酸分子を、初代軟骨膜細胞にインビボもしくはエキソビボで導入することによって例示される。一局面において、約70%以上という高トランスフェクション効率が得られる。本発明はまた、上記外因性核酸分子を含む本発明の組成物を、被験体における所望の部位に直接注射することによる、外因性核酸分子をインビボで標的細胞に導入するための方法を提供する。例えば、本発明の組成物は、骨軟骨欠損を有する膝関節の関節領域に直接注射され得、望ましいああ胃、細胞透過化因子もまた、投与され得る。細胞は、リガンド−正に荷電したポリマー足場複合体につなげられる界面活性剤を使用して、インビボで透過性にされ得る。上記細胞の透過化を生じる特異的酵素(例えば、ホスホリパーゼ)がまた、使用され得る。上記膜を破壊する毒素はまた、上記細胞膜中に穴を選択的に作り出すために使用され得る。上記インビボの方法は、外因性核酸分子が被験体における特定の細胞に対して高いトランスフェクション効率をもたらすために有用である得る。特に、上記選択された標的細胞が特有の細胞表面レセプターを発現する場合、上記リガンドは、上記所望の標的細胞のみがトランスフェクトされるように、選択され得る。従って、本発明の組成物および方法は、初代細胞への外因性核酸分子の高トランスフェクション効率のための手段を提供し、従って、インビボおよびエキソビボでの遺伝子治療に有用である。
(ウイルス遺伝子治療)
種々のウイルス送達ベクターを記載する参考文献は、当該分野で公知である。そのうちのいくつかは、本明細書で引用されている。このようなベクターとしては、例えば、ウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV))、リポソームおよび他の脂質含有複合体、ならびに宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介し得る他の高分子複合体が挙げられる。上記で記載され、かつ引用文献において記載されるように、ベクターはまた、遺伝子送達および/もしくは遺伝子発現をさらに調節するか、または上記標的とされた細胞に有益な特性を別の方法で提供する他の成分もしくは機能性を含み得る。このような他の成分としては、例えば、上記細胞への結合および標的化に影響を及ぼす成分(細胞タイプもしくは組織特異的結合を媒介する成分を含む);上記細胞による上記ベクター核酸の取り込みに影響を及ぼす成分;取り込み後の上記細胞内の上記ポリヌクレオチドの位置に影響を及ぼす成分(例えば、核局在化を媒介する薬剤);および上記ポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼす成分が挙げられる。このような成分はまた、マーカー(例えば、上記ベクターによって送達される上記核酸を取り込みかつ発現している細胞を検出するかまたはこの細胞について選択するために使用され得る、検出マーカーおよび/もしくは選択マーカー)を含み得る。このような成分は、ベクターの天然の特徴(結合および取り込みを媒介する成分もしくは機能を有する特定のウイルスベクターの使用)として提供され得るか、またはベクターは、このような機能性を提供するために改変され得る。選択マーカーは、陽性であってもよいし、陰性であってよいし、二機能性であってもよい。陽性選択マーカーは、上記マーカーを有する細胞についての選択を可能にするのに対して、陰性選択マーカーは、上記マーカーを有する細胞が、選択的に排除されることを可能にする。種々のこのようなマーカー遺伝子が記載されてきた(以下を含む:二機能性(すなわち、陽性/陰性)マーカー(例えば、Lupton,S.,WO 92/08796(1992年5月29日公開);およびLupton,S.,WO 94/28143(1994年12月8日公開)を参照のこと)。このようなマーカー遺伝子は、遺伝子治療の状況において有利であり得るさらなる制御尺度を提供し得る。非常に種々のこのようなベクターが当該分野で公知であり、一般に、利用可能である(例えば、上記で引用される種々の文献を参照のこと)。
本発明の方法において使用され得るアデノウイルスベクターおよび他のウイルスベクターを記載しているさらなる文献としては、以下が挙げられる:Horwitz,M.S.,Adenoviridae and Their Replication,in Fields,B.ら(編) Virology,Vol.2,Raven Press New York,pp.1679−1721,1990);Graham,F.ら,pp.109−128 in Methods in Molecular Biology,Vol.7:Gene Transfer and Expression Protocols,Murray,E.(編),Humana Press,Clifton,N.J.(1991);Miller,N.ら,FASEB Journal 9:190−199,1995;Schreier,H,Pharmaceutica Acta Helvetiae 68:145−159,1994;Schneider and French,Circulation 88:1937−1942,1993;Curiel D.T.ら,Human Gene Therapy 3:147−154,1992;Graham,F.L.ら,WO 95/00655(5 January 1995);Falck−Pedersen,E.S.,WO 95/16772(22 June 1995);Denefle,P.ら,WO 95/23867(8 September 1995);Haddada,H.ら,WO 94/26914(24 November 1994);Perricaudet,M.ら,WO 95/02697(26 January 1995);Zhang,W.,ら,WO 95/25071(12 October 1995)。種々のアデノウイルスプラスミドはまた、市販の供給源から入手可能である(例えば、Microbix Biosystems of Toronto,Ontario(例えば、Microbix Product Information Sheet:Plasmids for Adenovirus Vector Construction,1996を参照のこと)を含む)。
本発明の方法において使用され得るAAVベクターを記載しているさらなる文献としては、以下が挙げられる:Carter,B.,Handbook of Parvoviruses,vol.I,pp.169−228,1990;Berns,Virology,pp.1743−1764(Raven Press 1990);Carter,B.,Curr.Opin.Biotechnol.,3:533−539,1992;Muzyczka,N.,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:92−129,1992;Flotte,T.R.ら,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.7:349−356,1992;Chatterjeeら,Ann.NY Acad.Sci.,770:79−90,1995;Flotte,T.R.ら,WO 95/13365(18 May 1995);Trempe,J.P.ら,WO 95/13392(18 May 1995);Kotin,R.,Human Gene Therapy,5:793−801,1994;Flotte,T.R.,ら,Gene Therapy 2:357−362,1995;Allen,J.M.,WO 96/17947(13 June 1996);およびDuら,Gene Therapy 3:254−261,1996。
本発明の方法において使用され得る非ウイルスベクターを記載しているさらなる文献としては、以下が挙げられる:Ledley,FD,Human Gene Therapy 6:1129−1144,1995;Miller,N.ら,FASEB Journal 9:190−199,1995;Chonn,A.ら,Curr.Opin.in Biotech.6:698−708,1995;Schofield,JP,ら,British Med.Bull.51:56−71,1995;Brigham,K.L.ら,J.Liposome Res.3:31−49,1993;Brigham,K.L.,WO 91/06309(16 May 1991);Felgner,P.L.ら, WO 91/17424(14 November 1991);Solodinら,Biochemistry 34:13537−13544,1995;WO 93/19768(14 October 1993);Debsら,WO 93/25673;Felgner,P.L.ら,米国特許第5,264,618号(November 23, 1993);Epand,R.M.ら,米国特許第5,283,185号(February 1,1994);Gebeyehuら,米国特許第5,334,761号(August 2,1994);Felgner,P.L.ら,米国特許第5,459,127号(October 17,1995);Overell,R.W.ら,WO 95/28494(26 October 1995);Jessee,WO 95/02698(26 January 1995);Haces and Ciccarone,WO 95/17373(29 June 1995);Linら,WO 96/01840(25 January 1996)。
上記関節の組織へのKras−2bのベクター媒介性遺伝子送達を例示する目的で、アデノウイルスベクターは、McGrory WJら,Virology 163:614−617,1988に記載されるように、救出組換え技術(rescue recombination technique)によって構築され得る。簡潔には、上記目的の導入遺伝子は、プロモーター、ポリリンカー、およびE1A/E1B遺伝子が欠失された部分隣接アデノウイルス配列を含むシャトルベクターにクローニングされる。
例示的なシャトルベクターとしては、例えば、上記ヒトアデノウイルス5ゲノムの左側末端の一部をコードするが、ウイルス複製に必須なE1A配列およびE1B配列を含む初期タンパク質領域を欠いているプラスミド「pAC1」(Virology 163:614−617,1988)(もしくはアナログ);およびポリリンカー、CMVプロモーター、およびE1A/E1B遺伝子が欠失された部分アデノウイルス配列が隣接したSV40ポリアデニル化シグナルを含むプラスミド「ACCMVPLPA」(J Biol Chem 267:25129−25134,1992)が挙げられる。プラスミド(例えば、pAC1もしくはACCMVPLA)の使用は、従って、クローニングプロセスを容易にし得る。
次いで、上記シャトルベクターは、全ヒトアデノウイルス5ゲノムを含むプラスミド(しかし、被包されるには大きすぎる長さを有する)とともに、適切な宿主細胞(例えば、ヒト293細胞)へと同時トランスフェクトされ得る。同時トランスフェクションは、リン酸カルシウム沈降もしくはリポフェクションによって行われ得る(例えば、Biotechniques 15:868−872,1993を参照のこと)。
同時トランスフェクションのための例示的なプラスミドとして、プラスミド「JM17」は、全ヒトアデノウイルス5ゲノム+ベクターpBR322の一部をコードし、アンピシリン耐性の遺伝子(4.3kb)を含む(Giordanoら Nature Medicine 2:534−539,1996)。JM17は、成熟ウイルス粒子を作製するために必須の上記アデノウイルスタンパク質の全てをコードするが、これは、被包されるには大きすぎる(野生型の36kbに対して40kb)。
同時トランスフェクトされた細胞の小さな部分集合において、「救出組換え」は、導入遺伝子含有シャトルベクター(例えば、プラスミドpAC1)と、全アデノウイルス5ゲノムを有するプラスミド(例えば、プラスミドpJM17)(これは、上記目的の導入遺伝子を、欠失されたE1A/E1B配列の代わりに含み、かつ組換えの間にさらなる配列(例えば、pBR322配列)を二次的に失い、それによって、被包されるに十分小さい組換えゲノムを生成する)との間で起こる(例えば、Giordanoら Nature Medicine 2:534−539,1996を参照のこと)。アデノウイルスHCMVSP1lacZ中の上記CMV駆動β−ガラクトシダーゼ遺伝子(Nature Medicine 2:534−539,1996)は、X−gal処理を使用して、遺伝子移入の効率を評価するために使用され得る。
インビボ遺伝子治療に適した種々の他のベクターはまた、本発明に遵ってKras−2b導入遺伝子を送達するために容易に使用され得る。このような他のベクターとしては、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;非ウイルス性のタンパク質ベースの送達プラットフォーム);ならびに脂質ベースのベクター(例えば、カチオン性リポソームおよび類似の遺伝子送達複合体が挙げられる)のような他のウイルスベクターが挙げられる。これらおよび他のベクターの調製および使用は、当該分野で記載されている(例えば、上記で引用された遺伝子送達ベクターに関する文献を参照のこと)。
本発明は、哺乳動物の関節への上記導入遺伝子の送達によってのみならず、例えば、特定の宿主細胞もしくは宿主細胞タイプ(例えば、軟骨膜)の遺伝子送達および/もしくは遺伝子発現を標的とする傾向がある特徴を有する標的化ベクター構築物の使用によっても、細胞標的化の使用を企図する。このような標的化ベクター構築物は、従って、以下により詳細にかつ公開された技術において記載されるように、標的化送達ベクターおよび/もしくは標的化ベクターを含む。送達および/もしくは発現の制限は、遺伝子治療の潜在的効果にさらに焦点を合わせる手段として有益であり得る。さらなる送達/発現の制限の潜在的な有用性は、使用されているベクターのタイプおよびこのようなベクターの導入の方法および位置に、大部分依存する。本明細書で記載されるように、上記関節への滑膜内注射を介する得区ターの送達は、本質的に、高度に標的化された遺伝子送達を提供することが観察された(以下の実施例を参照のこと)。さらに、上記宿主細胞のレプリコンへの導入遺伝子組み込みを生じないベクター(例えば、アデノウイルスおよび多くの他のベクター)を使用して、軟骨膜細胞は、比較的長い導入遺伝子発現を示すことが予測される。なぜなら、特定の細胞(例えば、軟骨細胞(chrondrocyte)が迅速なターンオーバーを経験しないからである。対照的に、より迅速に分裂している細胞における発現は、細胞分裂およびターンオーバーによって減少する傾向にある。しかし、送達および/もしくは発現を制限する他の手段はまた、本明細書で記載されるように、例示された送達方法に加えて、もしくはこの方法の代わりに使用され得る。
標的化された送達ベクターとしては、例えば、表面成分(例えば、リガンド−レセプター対のメンバー、そのうちの他方は、宿主細胞上で標的化されることが見いだされる)または特定の宿主細胞もしくは宿主細胞タイプへの優先的な結合および/もしくは遺伝子送達を媒介する他の特徴を有するベクター(例えば、ウイルス、非ウイルスタンパク質ベースのベクター、および脂質ベースのベクター)が挙げられる。当該分野で公知であるように、ウイルスベクター起源および非ウイルスベクター起源の両方の多くのベクターは、このような優先的な結合を容易にする本来の特性を有し、そして/または優先的な標的化をもたらすために改変された(例えば、Miller,N.ら,FASEB Journal 9:190−199,1995;Chonn,A.ら,Curr.Opin.in Biotech.6:698−708,1995;Schofield,JPら,British Med.Bull.51:56−71,1995;Schreier,H,Pharmaceutica Acta Helvetiae 68:145−159,1994;Ledley,FD,Human Gene Therapy 6:1129−1144,1995;Conary,J.T.ら,WO 95/34647(21 December 1995);Overell,R.W.ら,WO 95/28494(26 October 1995);およびTruong,V.L.ら,WO 96/00295(4 January 1996)を参照のこと)。
標的化ベクターとしては、ベクター(例えば、ウイルス、非ウイルスタンパク質ベースのベクターおよび脂質ベースのベクター)が挙げられ、ここで送達は、特定の宿主細胞もしくは宿主細胞タイプに比較的制限される導入遺伝子発現を生じる。例えば、本発明に遵って送達されるべきKras−2b導入遺伝子は、異種組織特異的プロモーターに作動可能に連結され得、それによってその特定の組織における細胞に発現を制限する。
組換えウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター)は、本発明に遵ってプラーク精製され得る。例えば、組換えアデノウイルスウイルスベクターは、約1010〜1012ウイルス粒子/mlの好ましい範囲の力価へとヒト293細胞において増殖させられ得る(これは、トランスでE1AおよびE1B機能を提供する)。
増殖技術および精製技術は、本発明とともに使用され得る種々のウイルスベクターについて記載されてきた。アデノウイルスベクターが本明細書で例示されるが、他のウイルスベクター(例えば、AAV)はまた、使用され得る。アデノウイルスについて、細胞に、約80%コンフルエントで感染させ得、48時間後に採取され得る。3回の凍結−融解サイクルの後に、細胞砕片は、遠心分離によって集められ得、上記ウイルスは、CsCl勾配超遠心分離によって精製され得る(二重CsCl勾配超遠心分離が好ましい)。
インビボ注射の前に、上記ウイルスストックは、セファロースカラム(例えば、G25セファデックス)を介してゲル濾過によって脱塩され得る。次いで、上記生成物は、30ミクロンフィルタを通して濾過され得、それによって、濾過されていないウイルスの注射と関連する有害な効果についての可能性を低下させ得る。上記得られたウイルスストックは、好ましくは、少なくとも約1010〜1012ウイルス粒子/mlである最終ウイルス力価を有する。
好ましくは、上記組換えアデノウイルスは、高度に精製され、野生型(潜在的に複製可能な)ウイルスを実質的に含まない。これらの理由が原因で、増殖および精製は、夾雑物および野生型ウイルスを、例えば、適切なプライマーを使用して、PCRで成功裏の組換えを同定し、2ラウンドのプラーク精製、および二重CsCl勾配超遠心分離を行うことによって排除するために行われ得る。
Kras−2b導入遺伝子を有するベクターを送達するために使用される手段および組成物は、当該分野で周知であるように、使用される特定のベクターに依存する。しかし、代表的には、ベクターは、例えば、薬学的に受容可能なキャリア/希釈剤(例えば、生理食塩水)を含む注射用調製物の形態で存在し得る。
ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス)については、上記注射用調製物におけるウイルスの最終力価は、好ましくは、約107〜1013ウイルス粒子の範囲であり、これは、有効な遺伝子移入を可能にする。他の薬学的キャリア、処方物および投与は、以下に記載される。
Kras−2b導入遺伝子を含むベクターは、上記導入遺伝子が発現されかつ治療的利益を提供するに十分な量において、直接滑膜内注射によって上記関節に送達され得る。このような注射は、好ましくは、上記関節の全ての領域に全体的な分布を提供するために、上記滑膜腔深くに行われる。
(トランスジェニック非ヒト動物)
本発明は、本発明の核酸構築物を含むトランスジェニック非ヒト動物を提供し、上記動物は、プロモーターおよび/もしくはエンハンサーに作動可能に連結されたKras−2bを発現する核酸を含む発現カセットもしくはベクターまたはトランスフェクトもしくは形質転換された細胞を含む。本発明はまた、これらトランスジェニック非ヒト動物を作出および使用するための方法を提供する。
上記トランスジェニック非ヒト動物は、本発明の核酸構築物を含む、例えば、マウス、ラット、ウサギ、いぬ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、およびサルであり得る。これら動物は、例えば、Kras−2b発現および活性のインビボモデルとして(例えば、Kras−2b遺伝子活性をインビボで活性化し得る化合物についてスクリーニングするためのモデルとして)使用され得る。
上記トランスジェニック非ヒト動物において発現されるべき上記ポリペプチドのコード配列は、構成性であるように設計され得るか、または組織特異的、発生特異的、もしくは誘導性の転写調節因子の制御下であるように設計され得る。トランスジェニック非ヒト動物は、当該分野で公知の任意の方法を使用して設計されかつ生成され得る;例えば、米国特許第6,211,428号;同第6,187,992号;同第6,156,952号;同第6,118,044号;同第6,111,166号;同第6,107,541号;同第5,959,171号;同第5,922,854号;同第5,892,070号;同第5,880,327号;同第5,891,698号;同第5,639,940号;同第5,573,933号;同第5,387,742号;同第5,087,571号(形質転換された細胞および卵、ならびにトランスジェニックマウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタおよびウシの作出および使用を記載している)を参照のこと。また、例えば、Pollock(1999)J.Immunol.Methods 231:147−157(トランスジェニック乳用動物(transgenic dairy animal)の乳汁中で組換えタンパク質を生成することを記載している);Baguisi(1999)Nat.Biotechnol.17:456−461(トランスジェニックヤギの生産を記載している)を参照のこと。米国特許第6,211,428号は、DNA配列を含む核酸構築物を脳において発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作出および使用を記載している。米国特許第5,387,742号は、クローニングされた組換えもしくは合成DNA配列をマウス受精卵に注入し、,上記注入した卵を偽妊娠雌に移植し、トランスジェニックマウス(その細胞は、アルツハイマー病の病状に関連したタンパク質を発現する)を出産予定日まで成長させることを記載する。米国特許第6,187,992号は、トランスジェニックマウス(そのゲノムは、アミロイド前駆タンパク質(APP)をコードする遺伝子を含む)の作出および使用を記載する。
「ノックアウト動物」はまた、本発明の方法を実施するために使用され得る。例えば、一局面において、本発明のトランスジェニック動物もしくは改変動物は、内因性遺伝子(例えば、内因性Kras−2b遺伝子座もしくはその部分配列)を発現しないように操作された「ノックアウト動物」(例えば、「ノックアウトマウス」)を含む。「ノックアウト」とは、内因性プロモーターの相同組み換えによる欠失もしくは破壊によって、調製され得る。相同組み換えおよび内因性配列の発現を変化させる(および「ノックアウトする」)他の手段は、当該分野で周知であり、例えば、米国特許第5,464,764号;同第5,631,153号;同第5,487,992号;同第5,627,059号、および同第5,272,071号に記載されている。
(変形性関節症の動物モデル)
ヒトに適用可能である任意の変形性関節症遺伝子治療技術を開発するための重要な必要条件は、以下のとおりである:(a)臨床的関節変性に適用可能であり、かつ変形性関節症の状況において変化したKras−2bシグナル伝達についての機構に関する有用なデータを提供し得る、大きな動物モデルの構築、ならびに(b)遺伝子移入の効果の正確な評価。
変形性関節症の当該分野で認識されたウサギモデルが、本明細書で使用される。実験室において、OAは、前十字靭帯を横に切開すること(ACLT)によって、ウサギにおいて首尾良くモデル構築した。多くの独立した研究は、ウサギにおいて実験的に誘導したOAが、ヒトにおけるように、同じ病理的進行を示すことを示した。上記ACLTモデルは、徐々に分解して、軟骨マトリクスの持続しかつ増大する病変、軟骨GAGの減少および軟骨高さの減少(4〜12週間で始まる)を示す。この軟骨分解は、徐々に悪化し、ACLT後の12週までに、軟骨層の完全な病巣状の減少(complete focal depletion)を生じる。軟骨下骨密度および骨増殖体形成に対する影響はまた、ヒトOAにおいて観察されるものと似ている(Takahashiら(1999)Osteoarthritis and Cartilage,7:182−190;Settonら,(1999)Osteoarthritis and Cartilage,7:2−14;Goomerら,(2005)Clin.Orthop.Rel.Res.,434:239−245)。
ウサギを用いた本発明者らの研究(以下により詳細に記載され、例示される)は、軟骨膜へのKras−2bインビボ送達の過剰発現が、ヒトにおける変形性関節症を予測する動物モデルにおける軟骨の分解を予防し得ることを実証する。
(キットおよびライブラリー)
本発明は、本発明の組成物および方法を含むキットを提供し、上記キットは、異種Kras−2b発現ビヒクルを含む細胞、トランスフェクト薬剤、形質導入薬剤、説明書(本発明の方法に関する)、もしくはこれらの任意の組み合わせを含む。よって、キット、細胞、ベクターなどは、本明細書で提供される。
(薬学的組成物)
本発明は、Kras−2b発現核酸(例えば、ベクター、ウイルスなど)および薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。本発明は、Kras−2bタンパク質もしくはKras−2bを発現する核酸を含む非経口処方物を提供する。本発明は、関節において軟骨分解を予防するか、または関節における軟骨形成を正常化するための方法を提供し、上記方法は、Kras−2b発現核酸を含む薬学的組成物を提供する工程;および有効量の薬学的組成物を必要な被験体に投与する工程を包含する。本発明の特定の局面において、上記処置の必要な被験体は、変形性関節症を発症したか、発症しつつあるか、または発症するリスクがある。
これら方法は、インビボ、エキソビボ、もしくはインビトロで実施され得る。
本発明の方法において使用される薬学的組成物は、当該分野で公知の任意の手段によって、例えば、非経口的に、局所的に、経口的に、または局所投与によって(例えば、エアロゾルによってもしくは経皮的に)投与され得る。一局面において、上記薬学的組成物は、上記関節の滑膜腔へと投与される。上記薬学的組成物は、任意の方法で処方され得、疾患の状態および病気の程度、各患者の全身の医学的状態、結果的に好ましい投与方法などに依存して、種々の単位投与形態において投与され得る。処方および投与の技術に関する詳細は、科学文献および特許文献に十分に記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照のこと。
薬学的処方物は、医薬の製造について当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得る。このような薬物は、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤を含み得る。処方物は、製造に適した非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合され得る。処方物は、1種以上の希釈剤、乳化剤、保存剤、緩衝化剤、賦形剤などを含み得、そして液体、散剤、エマルジョン、凍結乾燥散剤、スプレー、クリーム剤、ローション剤、制御された放出処方物、錠剤、丸剤、ゲルとして、パッチ上で、移植物中などのような形態で提供され得る。
経口投与のための薬学的処方物は、適当なかつ適切な投与量で、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアを使用して、処方され得る。このようなキャリアは、上記医薬が、上記患者による接種に適切な、錠剤、丸剤、散剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ロゼンジ、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁物などとして単位投与形態で処方されることを可能にする。経口的使用のための薬学的調製物は、固体の賦形剤として処方され得、必要に応じて、得られた混合物をすりつぶし、適切なさらなる化合物を添加した後に、上記顆粒の混合物を処理し、望ましい場合、錠剤もしくは糖衣錠のコアを得る。適切な固体の賦形剤は、炭水化物もしくはタンパク質充填剤であり、これらとしては、例えば、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールが挙げられる);トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、もしくは他の植物由来のデンプン;セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、もしくはカルボキシ−メチルセルロースナトリウム);およびガム(アラビアガムおよびトラガカントガムが挙げられる);ならびにタンパク質(例えば、ゼラチンおよびコラーゲン)が挙げられる。崩壊剤もしくは可溶化剤が添加され得る(例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、もしくはこれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))。
適切なコーティング(例えば、濃縮糖溶液)を有する糖衣錠コアは、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/もしくは二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物もまた含み得る。染料もしくは顔料は、生成物同定のために、または活性化合物の量(すなわち、投与量)を特徴付けるために上記錠剤もしくは糖衣錠コーティングに添加され得る。本発明の薬学的調製物はまた、例えば、ゼラチンから作製されるプッシュフィットカプセル剤(push−fit capsule)、およびゼラチンおよびコーティング(例えば、グリセロールもしくはソルビトール)から作製される軟質の密封されたカプセル剤を使用して、経口的に使用され得る。プッシュフィットカプセル剤は、充填剤もしくは結合剤(例えば、ラクトースもしくはスターチ)、滑沢剤(例えば、タルクもしくはステアリン酸マグネシウム)、および必要に応じて安定化剤と混合された活性薬剤を含み得る。軟質カプセル剤において、上記活性薬剤は、適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン、もしくは安定化剤ありもしくはなしの液体ポリエチレングリコール)中に溶解され得るか、または懸濁され得る。
水性の懸濁物は、水性懸濁物の製造に適した賦形剤と混合して、活性薬剤(例えば、本発明のキメラポリペプチドもしくはペプチド模倣物)を含み得る。このような賦形剤としては、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム、ならびに分散剤もしくは湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン))、アルキレンオキシドと脂肪酸(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)の縮合生成物、エチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールから得られる部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトール無水物とから得られる部分エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。上記水性懸濁物はまた、1種以上の保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル)、1種以上の着色剤、1種以上の矯味矯臭剤、および1種以上の甘味剤(例えば、スクロース、アスパルテームもしくはサッカリン)を含み得る。処方物は、容量オスモル濃度のために調節され得る。
オイルベースの医薬は、本発明の疎水性活性薬剤の投与に特に有用である。油ベースの懸濁物は、活性薬剤(例えば、本発明のキメラ組成物)を植物性油(例えば、落花生油、オリーブ油、ごま油もしくは椰子油)中に;もしくは鉱油(例えば、流動パラフィン)中に;またはこれらの混合物中に懸濁することによって、処方され得る。例えば、バイオアベイラビリティーを増大させ、経口投与される疎水性薬学的化合物の個体内もしくは個体間の変動性を低下させるために、精油もしくは精油成分を使用することをキサしている米国特許第5,716,928号を参照のこと(米国特許第5,858,401号もまた参照のこと)。油性懸濁物は、濃化剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィンもしくはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤は、口に合う傾向調製物を提供するために添加され得る(例えば、グリセロール、ソルビトールもしくはスクロース)。これら処方物は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)の添加によって保存され得る。注射可能な油ビヒクルの例としては、Minto(1997)J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93−102を参照のこと。本発明の薬学的処方物はまた、水中油型エマルジョンの形態で存在し得る。その油相は、上記に記載されるような植物性油もしくは鉱油、またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤としては、天然に存在するガム(例えば、アカシアガムおよびトラガカントガム)、天然に存在するホスファチド(例えば、大豆レシチン)、脂肪酸とヘキシトール無水物とから得られるエステルもしくは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、およびこれら部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。上記エマルジョンはまた、シロップ剤およびエリキシル剤の処方と同様に、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。このような処方物はまた、粘滑剤、保存剤、もしくは着色剤を含み得る。
本発明の薬学的組成物は、前出に記載されるような透過化因子とともに処方され得るか、そして/または透過化因子とともに投与され得る。「〜とともに」とは、上記核酸が、上記透過化因子の前に、それと同時に、もしくはその後に投与されることを意味する。
本発明の方法において、上記薬学的化合物はまた、鼻内、眼内および膣内経路によって投与され得、坐剤、吸入、散剤およびエアロゾル処方物を含む(ステロイド吸入剤の例については、Rohatagi(1995)J.Clin.Pharmacol.35:1187−1193;Tjwa(1995)Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107−111を参照のこと。坐剤処方物は、上記薬物と、通常の温度で個体であるが、体温では液体であり、従って、身体中で溶けて、上記薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって、調製され得る。このような物質は、カカオ脂およびポリエチレングリコールである。
本発明の方法において、上記薬学的化合物は、経皮的に、局所経路によって送達され得、アプリケータースティック、液剤、懸濁物、エマルジョン、ゲル、クリーム剤、軟膏、パスタ剤、ゼリー剤、塗布物(paint)、散剤、およびエアロゾルとして処方され得る。
本発明の方法において、上記薬学的化合物はまた、身体における徐放のためのマイクロスフェアとして送達され得る。例えば、マイクロスフェアは、皮下でゆっくりと放出する薬物の経皮的注射を介して(Rao(1995)J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623−645を参照のこと);生分解性および注射可能なゲル処方物として(例えば、Gao(1995)Pharm.Res.12:857−863(1995)を参照のこと);または経口投与のためのマイクロスフェアとして(例えば、Eyles(1997)J.Pharm.Pharmacol.49:669−674を参照のこと)投与され得る。
本発明の方法において、上記薬学的化合物は、非経口的に(例えば、静脈内(IV)投与または身体腔(例えば、上記滑膜腔)もしくは器官の内腔への投与によって)投与され得る。これら処方物は、薬学的に受容可能なキャリア中に溶解される活性薬剤の溶液を含み得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒は、水およびリンゲル溶液、等張性塩化ナトリウムである。さらに、滅菌不揮性精油は、溶媒もしくは懸濁媒体として使用され得る。この目的のために、任意の穏やかな不揮発性油が、合成のモノグリセリドもしくはジグリセリドを含め、使用され得る。
(試験分子および候補分子)
上記Kras−2b(Kras−4bと類義)(またはその上流もしくは下流のシグナル伝達分子)核酸もしくはタンパク質は、上記核酸分子の生物学的活性を調節する候補分子を同定するための1種以上の試験分子と接触させられ、しばしば、10,000g/モル以下の分子量を有する、およびときおり、5,000g/モル以下、1,000g/モル以下、もしくは500g/モル以下の分子量を有する有機化合物もしくは無機化合物である。また、上記化合物の塩、エステルおよび他の薬学的に受容可能な形態が含まれる。核酸と相互作用する化合物は、当該分野で公知である(例えば、Hurley,Nature Rev.Cancer 2:188-200(2002);Ananthaら,Biochemistry Vol.37,No.9:2709−2714(1998);およびRenら,Biochemistry 38:16067−16075(1999)を参照のこと)。
化合物は、公知のコンビナトリアルライブラリー法(空間的にアドレス可能な並行固相ライブラリーもしくは液相ライブラリー;デコンボルーションを要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物(one−bead one−compound)」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法が挙げられる)を使用して得られ得る。分子ライブラリーを合成するための方法の例は、例えば、DeWittら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909(1993);Erbら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422(1994);Zuckermannら,J.Med.Chem.37:2678(1994);Choら,Science 261:1303(1993);Carrellら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059(1994);Carellら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061(1994);およびGallopら,J.Med.Chem.37:1233(1994)において記載されている。
有機化合物および無機化合物に加えて、分子は、ときおり、核酸、触媒性核酸(例えば、リボザイム)、阻害性RNA(RNAiもしくはsiRNA)、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ポリペプチド、抗体、もしくはペプチド模倣物である。これら分子を作製および使用するためのの方法は、公知である。例えば、リボザイムを作製およびリボザイム活性を評価するための方法は、記載されている(例えば、米国特許第5,093,246号;同第4,987,071号;および同第5,116,742号;Haselhoff & Gerlach,Nature 334:585−591(1988)およびBartel & Szostak,Science 261:1411−1418(1993)を参照のこと)。また、siRNAを請求項市営するための方法は、公知であり(例えば、Elbashirら,Methods 26:199−213(2002)およびhttpアドレスwww.dharmacon.comを参照のこと)、ペプチド模倣ライブラリーが、記載されている(例えば、Zuckermannら,J.Med.Chem.37:2678-2685 (1994)を参照のこと)。
特定の実施形態において、タンパク質もしくはその標的核酸配列の活性は、アンチセンスポリヌクレオチドもしくは阻害性低分子核RNA(snRNA)、すなわち、好ましくは、コードmRNA核酸配列に相補的でありかつ特異的にハイブリダイズし得る核酸(例えば、mRNAもしくはその部分配列)の使用によって、ダウンレギュレートされるか、または完全に阻害される。上記mRNAへの上記アンチセンスポリヌクレオチドの結合は、上記mRNAの翻訳および/もしくは安定性を低下させる。
本発明の状況において、アンチセンスポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチド、または天然に存在するサブユニットもしくはそれらの近いホモログから形成される合成種を含み得る。アンチセンスポリヌクレオチドはまた、改変された糖部分もしくは糖間連結を有し得る。これらの中での典型は、当該分野での使用について公知である種を含むホスホロチオエートおよび他の硫黄含有種である。アナログは、本発明のヌクレオチドとハイブリダイズするに効率的にそれらが機能する限り、本発明によって包含される。例えば、Isis Pharmaceuticals,Carlsbad,Calif.;Sequitor,Inc.,Natick,Mass.を参照のこと。
このようなアンチセンスポリヌクレオチドは、組換え手段を使用して容易に合成され得るか、またはインビトロで合成され得る。このような合成の装置は、いくつかの業者(Applied Biosystemsが挙げられる)によって販売されている。他のオリゴヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体)の調製はまた、当業者に周知である。
アンチセンス分子は、本明細書で使用される場合、アンチセンスもしくはセンスオリゴヌクレオチドを含む。センスオリゴヌクレオチドは、例えば、上記アンチセンス鎖への結合によって転写をブロックするために使用され得る。上記アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびセンスオリゴヌクレオチドは、癌分子についての標的mRNA(センス)もしくはDNA(アンチセンス)配列に結合し得る一本鎖核酸配列(RNAもしくはDNAのいずれか)を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはセンスオリゴヌクレオチドは、本発明に従って、一般に、少なくとも約12ヌクレオチド、好ましくは、約12〜30ヌクレオチドのフラグメントを含み得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはセンスオリゴヌクレオチドを駆動する能力は、所定のタンパク質をコードするcDNA配列に基づいて、例えば、Stein & Cohen(Cancer Res.48:2659(1988)およびvan der Krolら(Bio Techniques 6:958(1988)において記載されている。
アンチセンスポリヌクレオチドに加えて、リボザイムは、タンパク質コードヌクレオチド配列の転写を標的化しかつ阻害するために使用され得る。リボザイムは、他のRNA分子を触媒的に切断するRNA分子である。異なる種のリボザイムが、記載されてきており、これらリボザイムとしては、グループIリボザイム、ハンマーヘッドリボザイム、ヘアピンリボザイム、RNase P、およびアクスヘッドリボザイム(axhead ribozyme)(異なるリボザイムの特性の一般的総説については、例えば、Castanottoら,Adv.in Pharmacology 25:289−317(1994)を参照のこと)が挙げられる。
ヘアピンリボザイムの一般的特徴は、例えば、Hampelら,Nucl.Acids Res.18:299−304(1990);欧州特許公開第0360257号;米国特許第5,254,678号に記載されている。調製するための方法は、当業者に周知である(例えば、WO 94/26877;Ojwangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6340−6344(1993);Yamadaら,Human Gene Therapy 1:39−45(1994);Leavittら,Proc.Natl.Acad Sci.USA 92:699−703(1995);Leavittら,Human Gene Therapy 5:1151−120(1994);およびYamadaら,Virology 205:121−126(1994)を参照のこと)。
(候補分子の生物学的活性)
kras−2bヌクレオチドもしくはタンパク質もしくはエフェクターの生物学的活性が、細胞、組織、もしくは生物において調節されるか否かを決定することは、インビトロアッセイもしくはインビボアッセイにおけるシグナルの調節をモニターすることによって達成され得る。上記アッセイにおけるシグナルは、ときおり、例えば、上記核酸の転写、上記核酸へのタンパク質の結合、上記核酸に組み込まれた蛍光団、または細胞増殖によって生成もしくは調節される。転写は、例えば、RNA転写物を直接検出することによって、または転写物によって翻訳されるポリペプチドを検出することによって(これらは、当該分野で公知の方法である)、検出され得る。
候補分子は、これらが、上記核酸の生物学的活性を調節するか否かを決定するために、インビトロもしくはインビボアッセイにおいてスクリーニングされ得る。候補分子および核酸は、上記候補分子が、上記核酸の生物学的活性を調節するか否かを決定するために、任意の順序でアッセイシステムに添加され得る。例えば、候補分子は、ときおり、核酸が添加される前に、それと同時に、もしくはその後に、アッセイ系に添加される。
これらアッセイにおいて、候補分子は、上記アッセイ系において上記核酸と接触させられ、ここで用語「接触」とは、候補分子を、核酸に対して近位に配置し、上記アッセイ成分が、しばしば、核酸によって、互いに衝突することを可能にすることをいう。これらアッセイ成分と互いに接触させることは、例えば、アッセイ成分を流体本体にもしくは反応容器中に、添加することによって達成され得る。上記系における成分は、種々の様式において(例えば、容器を振動させるか、容器をボルテックス生成装置に供するか、ピペットで反復して混合するか、または1つのアッセイ成分を含む流体を、別のアッセイ成分が固定化された表面に通過させることによって)混合され得る。
本明細書で使用される場合、用語「システム(系)」とは、上記アッセイ成分を受容する環境をいい、これらとしては、例えば、マイクロタイタープレート(例えば、96ウェルもしくは384ウェルプレート)、分子が固定化され、必要に応じてアレイ状に配向されたケイ素チップ(例えば、米国特許第6,261,776号およびFodor,Nature 364:555−556(1993)を参照のこと)、および微小流体デバイス(例えば、米国特許第6,440,722号;同第6,429,025号;同第6,379,974号;および同第6,316,781号を参照のこと)が挙げられる。上記系は、上記アッセイを行うための付随する装置(例えば、シグナル検出器、ロボットプラットフォーム、およびピペットディスペンサー)を含み得る。
1種以上のアッセイ成分(例えば、上記核酸,候補分子もしくは核酸結合タンパク質)は、ときおり、固体支持体に固定化される。アッセイ成分と上記固体支持体との間の結合は、しばしば、共有結合であり、ときおり、非共有結合であり(例えば、非共有結合については、米国特許第6,022,688号を参照のこと)、上記結合は、ときおり、連結部分によるものである。上記固体支持体は、しばしば、上記系の1つ以上の表面(例えば、マイクロタイタープレートの各ウェルにおける1つ以上の表面、シリコンウェハの表面、必要に応じて別の固体支持体に連結されたビーズの表面(例えば、Lam,Nature 354:82−84(1991)を参照のこと)、または微小流体デバイスにおけるチャネル)である。固体支持体、固体支持体への共有結合および非共有結合のためのリンカー分子のタイプ、ならびに核酸および別の分子を固体支持体に固定化するための方法は、公知である(例えば、米国特許第6,261,776号;同第5,900,481号;同第6,133,436号;および同第6,022,688号;ならびにWIPO公開WO 01/18234を参照のこと)。
タンパク質分子は、ときおり、上記核酸と接触させられる。ポリペプチド分子は、ときおり、遊離形態において上記系に添加され、ときおり、固体支持体もしくは別の分子に連結される。例えば、ポリペプチド試験分子は、ファージコートタンパク質を介してファージに連結される。後者の実施形態は、しばしば、ファージディスプレイ系を使用することによって達成され、ここで固体支持体に連結された核酸は、異なるポリペプチド候補分子をディスプレイするファージと接触させられる。上記固定化核酸と相互作用するポリペプチド候補分子をディスプレイするファージは、上記固体支持体に接着し、次いで、上記接着したファージに対応するファージ核酸は、単離され、上記固定化核酸と相互作用した上記ポリペプチド試験分子の配列を決定するために配列決定される。広く種々のペプチドもしくはタンパク質をバクテリオファージコートタンパク質との融合物としてディスプレイする方法は、公知である(Scott and Smith,Science 249:386−390(1990);Devlin,Science 249:404−406(1990);Cwirlaら,Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382(1990);Felici,J.Mol.Biol.222:301−310(1991);米国特許第5,096,815号および同第5,198,346号;米国特許第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,571,698号;および同第5,766,905号)。方法はまた、上記試験ポリペプチドを、上記ファージコートタンパク質のN末端もしくはC末端に連結するために利用可能である。
候補分子が核酸および/もしくは核酸結合タンパク質に結合する場合に上記系によって生成されるシグナルは、しばしば、漸増する核酸、核酸結合タンパク質、もしくは候補分子濃度の範囲で直接測定される。シグナル強度は、しばしば、核酸、候補分子、もしくは核酸結合タンパク質の成分の機能としてプロットされる場合に、双曲的関係を示す。上記シグナルは、ときおり、候補分子が核酸および/もしくは核酸結合タンパク質に結合する場合にバックグラウンドレベルに対して増大し、そしてときおり、上記シグナルは、このような環境下でバックグラウンドシグナルレベルに対して低下する。上記候補分子は、しばしば、可逆的結合によって、上記核酸および/もしくは核酸結合タンパク質と相互作用し、ときおり、不可逆的結合で相互作用する。例えば、上記候補分子は、上記候補分子の化学的構造に依存して、上記候補分子の一部と、上記タンパク質におけるアミノ酸側鎖(例えば、リジン)との間の共有結合を可逆的に形成し得る。
候補分子は、しばしば、上記候補分子を含む系において生成されるシグナルが、上記候補分子を含まない系において生成されるシグナルとは異なる場合、上記核酸および/もしくは核酸結合タンパク質と相互作用すると同定される。バックグラウンドシグナルが、各時間で評価され得る間に、新たな候補分子、核酸、もしくは核酸結合タンパク質は、上記アッセイによってプローブされ、上記バックグラウンドシグナルを検出することは、しばしば、各時間に新たな試験分子もしくは試験核酸が評価されることを必要としない。コントロールアッセイはまた、バックグラウンドシグナルを決定するためおよび擬陽性結果および偽陰性結果を排除するために、行われ得る。このようなコントロールアッセイは、しばしば、他のアッセイにおいて含められる1種以上のアッセイ成分を含まない(例えば、コントロールアッセイサンプルは、ときおり、候補分子も、核酸も、上記核酸と相互作用するタンパク質も含まない)。
候補分子が、異なるシグナルを生じるか否かを決定することに加えて、上記候補分子間の、上記核酸および/もしくは核酸結合タンパク質との相互作用の親和性が、ときおり、定量される。IC50、Kd、もしくはKiの閾値は、ときおり、各相互作用について測定されたIC50もしくはKd値と比較され、それによって、上記核酸もしくは核酸結合タンパク質と相互作用する候補分子を同定するために使用され、上記生物学的活性を調節する。例えば、10M以下、1M以下、および100nM以下のIC50もしくはKd閾値が、しばしば利用され、ときおり、10nM以下、1nM以下、100pM以下、および10pM以下の閾値が利用されて、核酸および/もしくは結合タンパク質と相互作用し、上記生物学的活性を調節する候補分子を同定する。
特異的アッセイは、ときおり、核酸および/もしくは結合タンパク質複合体の生物学的活性を調節する候補分子を同定するために利用される。例えば、蛍光アッセイ、ゲル移動度シフトアッセイ(例えば、Jin & Pike,Mol.Endocrinol.10:196−205(1996)およびPostel,J.Biol.Chem.274:22821−22829(1999)を参照のこと)、ポリメラーゼ停止アッセイ、転写レポーターアッセイ、DNA切断アッセイ、タンパク質結合およびアポトーシスアッセイ(例えば、Amersham Biosciences(Piscataway,New Jersey)を参照のこと)は、ときおり、利用される。また、トポイソメラーゼアッセイは、ときおり、その後、上記四重鎖相互作用分子が、トポイソメラーゼ経路活性を有するか否かを決定するために利用される(例えば、TopoGEN,Inc.(Columbus,Ohio)を参照のこと)。
(Krasエフェクターの使用)
さらに、上記シグナル伝達カスケードのkrasエフェクターのうちのいくつかはまた、良好な治療候補を形成し得る。Kras 2bの点変異は、強力なオンコジーンとして同定された。全ての癌腫のうちの30%が、ras変異を有する一方で、膵臓腺癌のうちの90%は、上記kras遺伝子における発癌性変異と関連している。Kras変異はまた、肺腺癌と強く関連する。N−Ras、H−Ras、およびKras−2Aアイソフォームはまた、それらそれぞれの下流改変および足場を介した細胞下位置に関して、KRas−2Bとは異なる。例えば、哺乳動物MAPK足場は、特異的細胞下位置を有するようであり、いまや、区画に分けた(compartmentalized)ras媒介性シグナル伝達に必須であると認識されている。この区画分け(compartmentalization)はまた、インビボで観察されるras特異的応答の多様性を説明する。他の例は、Erk足場(例えば、Rasのキナーゼサプレッサ(KSR))であり、これは、上記Ras/MAPK経路の正の調節因子である、KSRは、Raf−1、MEK、およびErk、ならびにいくつかの他のタンパク質を結合するマルチドメインタンパク質である。休止細胞において、KSRは、サイトゾルにおいて、Raf−1のように、14−3−3タンパク質によって隔離される。しかし、有糸分裂シグナルに応答して、KSRは、S392において脱リン酸化され、14−3−3に対する親和性を失い、システインリッチドメインのおかげで形質膜へと位置を変える。従って、KSRは、上記形質膜に対して特異性を有するRas/MAPKシグナル伝達についての誘導性足場を代表する。哺乳動物には、少なくとも2つのksr遺伝子が存在する。ksr1の標的化破壊は、比較的正常であるマウスを生じたが、T細胞活性化は損なわれていた。MEKパートナー1(MP1)は、MEK1およびErk1を結合するが、MEK2およびErk2を結合せず、その結合は、MEK1によってErk1のリン酸化を促進した(Mor & Philips(2006)Annu.Rev.Immunol.24:771−800)。
カベオリンは、H−Rasを阻害したが、KRasシグナル伝達を阻害せず、この示差的効果は、コレステロール減少によって模倣され得る。これらデータは、rasアイソフォームが、機能的に異なる形質膜マイクロドメインにおいて機能するという事実を示した。さらなるデータは、H−Rasが、脂質筏(raft)と会合する一方で、K−Rasは会合しないことが示された。さらに、H−Rasの脂質筏への接近は、動的であった;GDP結合したH−Rasが有利であった。このことは、活性化が筏において起こるが、エフェクター結合は、非筏ドメインで生じることを示唆する。これら研究は、GDP結合したH−Rasが、コレステロール減少に感受性であるドメインにおいて密集するのに対して、GTP結合したH−Rasおよび全ての形態のK−Rasが、コレステロール減少に非感受性のドメインにおいて密集することを確認した。
よって、他のras分子(H、N、K,およびrasもしくはKrasのドミナントネガティブ部位指向性変異体、rasの短縮物、およびRAF,RAP,RAC,PAC,14−3−3、MAPK、MAPKK(もしくは改変体)、MAPKKK(もしくは改変体)、MEK1/2,ERK 1/2、mTOR、TOR、Tob1、P38、PI3K、Ink4、Akt、JNK、S6、S6キナーゼ、サイクリン、Smadsおよび上記rasシグナル伝達カスケードにおける他のプレイヤーが挙げられるが、これらに限定されない)は、関節炎および炎症に関連する関節疾患および障害を処置および/もしくは予防するために、本発明において有用である。一局面において、これら分子(およびその調節性化合物)は、変形性関節症を処置もしくは予防するために有用である。他の局面において、これら分子(およびその調節性化合物)は、関節リウマチ(RA)、結晶沈着病、セリアック病、1型糖尿病(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、多発性硬化症(MS)、橋本甲状腺炎、グレーブス病および突発性血小板減少性紫斑病を処置もしくは予防するために有用である。特定の局面において、上記分子もしくはその調節性化合物は、上記関節の1つ以上の組織の細胞増殖指数を低下させることによって、上記関節疾患もしくは障害を処置もしくは予防する。
以下の実施例は、当業者をさらに補助するために提供される。このような実施例は、例示であることを意図され、従って、本発明を限定するとはみなされないものとする。多くの例示的改変およびバリエーションは、本願において記載され、および他は、当業者に明らかになる。このようなバリエーションは、本明細書で記載されかつ特許請求されるように、本発明の範囲内に入るとみなされる。
実施例1:一般的方法
遺伝子送達プロトコル:
2工程の遺伝子送達プロトコルを、ほかのところ(Goomer,米国特許第6,573,101号;Goomerら,(2000)Clinical Orthopaedics & Related Research,379:S189-S200)で記載されるように使用した。
3つの実験において使用されるDNA成分は、以下のとおりであった:1)Promegaから購入した細菌β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を有する哺乳動物発現プラスミド(pSV−β−ガラクトシダーゼコントロールベクター;Madison,WI)、および2)pORF9−hKRAS2b v21哺乳動物発現プラスミド(Invivogen,San Diego,CA)上に保持された上記ヒトK−ras2b遺伝子。上記発現プラスミドを、エンドトキシン非含有プラスミドDNA単離および精製システム(エンドトキシン非含有Mega−Giga プラスミド精製キット,Promega,Inc.,Madison,WI)を使用して、形質転換したDH5α細胞のグリセロールストックから大量に増幅した。
上記2工程遺伝子送達システムは、以下からなった:組織を、透過化因子としてのリゾレシチンで処理し、直後に(2〜5分後に)、正に荷電したポリマーで濃縮した上記プラスミドDNAで処理した。これら実施例において、ポリ−L−リジンを、高親和性リガンドであるトランスフェリンに共有結合させ、DTPLナノ粒子を形成した。上記DTPLナノ粒子を、カチオン性リポソームとさらに複合体化して、DTPLLナノ粒子を形成した(Goomer,米国特許第6,573,101号;Goomerら,(2000)Clinical Orthopaedics & Related Research,379:S189−S200を参照のこと)。当然のことながら、上記ポリ−L−リジン足場が、高親和性リガンドに共有結合した、別の適切に正に荷電したポリマーで置換され得る一方で、上記リガンドであるトランスフェリンが、異なる適切な組織特異的もしくは細胞特異的リガンドで置換され得ることは、十分に理解される。
反対側のウサギ膝を、正常コントロールとして使用した。
注射で送達されるDNA、上記DNA複合体化試薬および透過化因子の量は、表II(以下)に列挙される。
ACL横切開および遺伝子送達:
実験動物手順の全ての人道にかなった処置は、UCSDのInstitutional Review Committeeによって是認されかつ指導されるように行った。1群あたり骨端の閉じた3匹の成熟ニュージーランドホワイト(NZW)ウサギ(n=3)(年齢:10〜12月齢)(表I)を使用した。実験的OAを、左膝においてACL横切開によって誘導した。ACL横切開を、以下のように行った:動物に鎮静剤を与え、麻酔した;無菌条件下で、3cmの内側膝蓋骨切開を、作製した;膝蓋骨を外し、サイズ11外科用メスを使用して、そのACLを横切開した。ACL横切開を、視覚的に、かつラックマン試験を行うことによって確認した。
この時点で、150μLの上記透過化因子(PA)(リゾレシチンもしくはL−α−リゾホスファチジルコリン(PC)Sigma−Adrich,St.Louis,MO)を、関節内部位に添加した。リゾレシチンの最終注射濃度は、(0.175% w/v)であった。この1回目の注射の正確に2分後に、150μLのDNA+TPLL(トランスフェリン(transffering)−ポリ−L−リジンおよびリポソーム)カクテルを含む2回目の注射を追加した。上記種々の試薬の正確な濃度は、表IIに表した(Goomerら,(2000)Clinical Orthopaedics & Related Research,379:S189−S200)。反対側のウサギの膝を、正常コントロールとして使用した。上記手術部位を縫合し、上記動物を覚醒させた。ウサギに、適切な術後ケアおよび疼痛用の鎮痛剤を与えた。回復後、上記動物に、自由な運動および範囲を許した。
手術の2週間後、上記ウサギの膝(左膝)に、上記遺伝子送達カクテル+DNA(表IIにも詳述されるように)の関節内注射を与えた。上記PAの150μLを、150μLの上記DNAカクテルに対して2分後に行った。上記2つの試薬を、同じ注射シリンジに充填し、関節腔に逆の順序で注射した。
ACLTの4週間後、上記実験動物を安楽死させた。上記膝関節の任意の通常でない腫脹を、注意深く観察し、記録した。上記関節組織(滑膜、関節内半月、大腿骨顆、脛骨プラトー、ACLおよびPCL)を、各膝から直ぐに採取して、評価のために使用した。
組織学的評価:
採取後、上記膝組織(滑膜、関節内半月、大腿骨顆、脛骨プラトー、上記ACLおよび上記PCL)を、組織固定のために12〜24時間にわたって10% ホルマリンの緩衝化溶液中に浸漬させるか、RT−PCR評価のために用いるか、または以下に詳述されるように、β−ガラクトシダーゼ酵素活性の存在について評価するために処理した;次いで、組織学標本を、脱石灰化のために17時間にわたって5% 塩酸中に移動させた。次いで、脱石灰化した組織を、アルコール中で連続して脱水し、パラフィンブロック中に包埋し、5ミクロン切片に切片化した。上記切片を、以前に発表されたプロトコル(Goomerら,(2000)Clinical Orthopaedics & Related Research,379:S189−S200)に従って、エオシン(滑膜および靱帯について)、ならびにH&Eおよびサフラニン−O(軟骨区画について)で染色した。
β−ガラクトシダーゼ機能アッセイ:
機能的β−ガラクトシダーゼのレベルを、パラフィン包埋および切片化する前に、公開されたプロトコル(Goomerら,(2000)Clinical Orthopaedics & Related Research,379:S189−S200)に従って、組織中での酵素的アッセイによって決定した。関節周囲靱帯、滑膜、および周囲組織を、X−galで12〜18時間にわたって、中性pHで染色した。細菌発現されたβ−ガラクトシダーゼ酵素とX−galとの反応は、青色に呈色した生成物を生じる。上記染色された組織を、パラフィン切片化し、エオシンで染色した。
リアルタイムRT−PCR:
Kras−2b、β−ガラクトシダーゼ、S6およびサイクリンD1転写物の相対濃度を、滑膜mRNAからの第1鎖合成生成物に対してリアルタイムPCRを行うことによって決定した。上記組織RNAを単離し、標準的な分子生物学技術を使用して精製した。上記第1鎖合成生成物を、以前に発表されたプロトコル(Takahashiら(1999),Osteoarthritis and Cartilage,7:182−190)に従って合成した。リアルタイムPCRを、ABIによって提供されるPrimer ExpressTM ソフトウェアを使用して設計した、問題の遺伝子に対して特異的な合成オリゴヌクレオチドを使用して、製造業者のプロトコルに従って、Applied Biosystems 7300 リアルタイムPCRにおいて三連で行った。上記オリゴヌクレオチドは、Operon Biosciencesが合成した。簡潔には、上記PCR工程を、「PCRマスターミックス」(SYBRグリーン、緩衝液、ABIからのTaq酵素を含む)、プライマーおよび適切な量の上記第1鎖cDNA生成物を含む96ウェルプレート中で行った。上記cDNAを、連続希釈し、内部標準として使用したU6 snRNAに標準化した(Goomer & Kunkel,(1992) Nucleic Acids Res,20:4903−4912)。上記プロトコルを行った後、データを、上記ABI比較遺伝子発現ソフトウェアを使用して分析した。
(実施例2:遺伝子送達の効率および関節組織における発現の試験)
OAについての有効な遺伝子治療レジメンの開発に対する主な障害物は、インビボでの関節内組織における遺伝子送達(現在利用可能な非ウイルスプロトコルを使用する)の明らかに低い効率である。上記OA病態に影響を与えるために、治療遺伝子を上記関節組織(特に、上記滑膜および上記靱帯)に送達するための効率的非ウイルス的方法を開発することは、最も重要である。従って、生きた動物における関節組織へのマーカー遺伝子送達の効率を研究した。
上記滑膜におけるβ−ガラクトシダーゼマーカー遺伝子の発現を、リアルタイムPCRによって定量した。リアルタイムPCRを、上記β−ガラクトシダーゼ群から単離し、組織培養物中で増殖させた上記滑膜組織から単離および精製されたRNAから合成した第1鎖合成cDNA生成物に対して行った。上記β−ガラクトシダーゼ遺伝子の発現は、β−ガラクトシダーゼでトランスフェクトした動物の滑膜において顕著に増大した(ベースラインに対して8×〜39×の範囲)(図1)。このことは、β−ガラクトシダーゼ転写物が、遺伝子送達の4週間後に、トランスフェクトした組織において強く生成されつつあることを実証した。
同様に、Kras−2b(図2)転写物は、上記Kras−2bプラスミドでトランスフェクトした組織において顕著に増大した(ベースラインに対して100×〜>250×の範囲)。
S6は、ras依存性リボソーム遺伝子であり、その発現は、細胞増殖の真の指標である。S6は、細胞周期を介して、細胞の継代に必要とされる。本発明者らの結果は、野生型Krasが増大される組織および細胞においてS6遺伝子発現が激しく抑制されることを明らかに示す。これら結果はさらに、トランスフェクトした組織におけるKras−2bによるS6 RNAの特異的かつ用量依存性抑制を示す(ベースラインと比較して、0.2×〜0.01×)(図3;図2と比較のこと)。それによって、野生型Kras−2bでトランスフェクトした滑膜細胞の増殖は、激しく抑制される。本発明者らの定量的データはまた、Kras−2bが、28日の研究期間の長さにわたって上記形質導入された組織において(特に、滑膜において)機能的に高レベルで送達されたことを示す(図2および3)。Krasはまた、滑膜におけるサイクリンD1遺伝子発現を直線的に抑制することが分かった(データは示さず)。
目的の組織におけるトランスフェクト細胞の相対量を定量した。ACLT4週間後のウサギ膝から単離した組織を、X−galで染色した。上記滑膜組織を切片化し、エオシンで同時染色した(図4)。イヌ腱修復モデルにおいて以前観察されたように、上記ウサギにおける滑膜組織をまた、100%に近い効率で標識した(Goomerら(2000)Clinical Orthopaedics & Related Research,379:S189−S200)。
さらに、関節内半月(図5aおよび5b)に結合した上記滑膜組織(および脂肪パッド細胞)、ならびに骨への結合部位におけるACL(図5c)およびPCL(示さず)の細胞をまた、非常に効率的にトランスフェクトしかつ標識した(図5c)。従って、この結果は、膝組織が、マーカーである細菌β−ガラクトシダーゼ遺伝子を発現するプラスミドを含む所有しているナノ処方された非ウイルス複合体を使用することによって、非常に効率的にトランスフェクトされ得ることを初めて示す(図1〜5)。
(実施例3:Kras−2bは、OA関連の病理的損傷の発生を防止する)
変形性関節症を、ACL(前十字靭帯)を完全に切断することによってウサギにおいて誘導した(図6と図7とを比較のこと)。ウサギACLTは、膝変形性関節症の標準的かつ受容されたモデルであり、他のOA薬物(例えば、SYNVISCおよびSUPARTZ(登録商標))を試験するために使用されてきた(Goomerら,(2005)Clin.Orthop.Rel.Res.,434:239−245)。前出で議論されるように、手術後に、膝を、非ウイルス性複合体中のKras−2bコードベクターでトランスフェクトしたか、またはβ−ガラクトシダーゼ構築物でトランスフェクトした。
Kras−2bでトランスフェクトした上記膝(大腿骨顆)の軟骨組織の肉眼評価は、上記Kras−2bでトランスフェクトした膝が、ACLT処置4週間後に変形性関節症病変を発生させないことを明らかに示した(図8aおよびb)。このことは、Kras−2b大腿骨顆の肉眼的形態と、上記マーカー遺伝子を受けているACLT後4週間の動物の膝とを比較した場合に容易に観察可能であった(図7)。コントロール膝において、軟骨線維形成および表面の荒さは、矢印で示される(図7)。
上記で議論された肉眼的分解に加えて、コントロール膝(β−ガラクトシダーゼ処置)の軟骨は、プロテオグリカンレベルが低下し(サフラニン−O染色の低下した組織的保持によって決定される場合)、軟骨高さが顕著に低下し、上記軟骨細胞が無秩序になっていることを示した(図9上パネル、図10および図11(左パネル))。Kras−2b発現は、ACLTの4週間における上記軟骨の変形性関節症的分解を予防した。上記Kras−2bでトランスフェクトした膝は、サフラニン−O染色によって決定される場合保存されたプロテオグリカンレベルを示した(図9〜12)。さらに、上記Kras−2b処置した膝の軟骨表面には、顕著な病変がなく(図9〜12)、上記細胞は、比較的よく組織化されたままであった(図10)。
これら結果は、野生型腫瘍サプレッサ遺伝子(Kras−2b)を ACLT手順を受けている動物の滑膜へ送達することによって細胞増殖指数を変化させることは、上記関節軟骨に4週間の研究期間にわたって、OA関連病理的損傷の発症から防止したことを実証する。従って、この遺伝子生成物が、インビボで軟骨を保護し得るようである。さらに、ここで詳述した上記非ウイルス遺伝子治療プロトコルは、非常に高効率でインビボでの遺伝子の送達に成功し、長期間持続した(28日)。Kras−2bは、用量依存様式においてS6リボソーム転写物を減少させることによって、関節滑膜における細胞増殖を抑制した(図3)。これは、おそらく、本発明者らの動物モデルにおけるOA関連分解から軟骨を保護することにおいてその成功をもたらす主要な機構のうちの1つである。さらに、Kras−2bはまた、ヒアルロン酸シンターゼ(HAS)の生成を増大させ、COX−2のインヒビターである(Smakman & Kranenburg,(2005)Clinical Cancer Research,11:41−48;Itanoら,(2004)J.Biol.Chem,279:18679−87)。ras/raf/rac、ならびにTob1および/もしくはmTORのシグナル伝達カスケードにおける他の分子が、軟骨を保護するために同様に機能し得ることが仮定される。
本発明の種々の特定の好ましい実施形態が、上記に記載され、一般に、以下に特許請求される。本発明は、今や十分に記載され、多くの変化および改変が、現在特許請求されている本発明の趣旨もしくは範囲から逸脱することなく、本発明に対してなされ得ることは、当業者にとって明らかである。