JP2011232220A - 表面増強ラマン分光法 - Google Patents
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Abstract
【効果】本発明によれば、従来法に比べて簡便なラマン分光法によって、シグナルノイズを抑制して、基体上に形成された薄膜の構造又は固体物質の表面部の構造を高感度で解析することが可能となる。
【選択図】図1
Description
請求項1:
基体上に形成されたラマン活性を有する物質の薄膜の構造を解析するラマン分光法であって、上記薄膜上に、表面増強ラマン散乱活性を有する金属粒子を、物理気相成長法又は液相成長法により積重し、次いで、上記薄膜及び金属粒子に励起光を照射することにより、上記金属により増強された、上記薄膜の構造に由来するラマン散乱光を分光分析することを特徴とする表面増強ラマン分光法。
請求項2:
上記薄膜が、基体上に形成された有機単分子膜と、該有機単分子膜に結合した有機分子及び/又は生体分子とを含むことを特徴とする請求項1記載の表面増強ラマン分光法。
請求項3:
上記基体が、表面増強ラマン散乱活性を有しない物質で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の表面増強ラマン分光法。
請求項4:
ラマン活性を有する固体物質の表面部の構造を解析するラマン分光法であって、上記固体物質の表面上に、表面増強ラマン散乱活性を有する金属粒子を、物理気相成長法又は液相成長法により積重し、次いで、上記表面部及び金属粒子に励起光を照射することにより、上記金属により増強された、上記表面部の構造に由来するラマン散乱光を分光分析することを特徴とする表面増強ラマン分光法。
請求項5:
上記金属粒子が平底面を有する凸形状であり、上記平底面が、上記薄膜又は上記固体物質の表面と接して積重されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の表面増強ラマン分光法。
請求項6:
上記金属粒子が、略半球状又は略半楕円球状であることを特徴とする請求項5記載の表面増強ラマン分光法。
請求項7:
上記薄膜又は固体物質の表面と、上記金属粒子との間の接触角θが90°以上180°未満であることを特徴とする請求項6記載の表面増強ラマン分光法。
請求項8:
上記金属粒子の粒径Dが5〜100nm、高さHが1〜100nmであり、かつ粒径と高さとの比(H/D)が0.1〜3.0であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の表面増強ラマン分光法。
請求項9:
上記金属粒子として、複数の金属粒子を、該金属粒子により形成された金属領域を励起光が透過可能に点在させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の表面増強ラマン分光法。
請求項10:
上記金属粒子の粒子間距離dが1〜20nmであることを特徴とする請求項9記載の表面増強ラマン分光法。
請求項11:
上記薄膜面又は上記固体物質の表面の所定の区画毎に上記励起光を照射して走査することにより、上記薄膜面又は上記固体物質の表面に沿った上記薄膜又は表面部の構造の2次元分布を得ることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の表面増強ラマン分光法。
本発明の表面増強ラマン分光法は、基体上に形成されたラマン活性を有する物質の薄膜の構造解析、又はラマン活性を有する固体物質の表面部の構造解析に好適に適用される。この薄膜又は固体物質を構成するラマン分光分析の対象物質としては、ラマン活性を有する物質であれば特に制限されない。ラマン活性を有する物質としては、有機物、無機物のいずれも対象とすることができる。薄膜を解析の対象とする場合、薄膜には、例えば、有機単分子膜を含む薄膜、更に、有機単分子膜等の膜と、この膜に結合した有機分子及び/又は生体分子とを含む薄膜などが好適な対象として含まれる。
ラマンスペクトル測定に用いた、グルタルアルデヒドで修飾された有機単分子膜が形成され基板の作製方法を示す。基板として、シリコン酸化膜が形成されたシリコンウェーハを1cm2に切り出したものを用いた。上記基板をヤマト科学(株)製プラズマリアクターPR301を用いて酸素プラズマ処理し、基板表面洗浄及び親水化処理を施した。処理した基板を、1質量%アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を含むトルエン溶液中に60℃で、7分間浸漬することにより、シリコン酸化膜上にAPTESを導入した。
上記薄膜を形成した基板に対して、薄膜上(即ち、グルタルアルデヒドで修飾された面上)に、真空蒸着装置((株)アルバック製)を用い、到達真空度3.6×10-4Pa、蒸着速度0.05nm/s、蒸着時間60秒の条件で銀を蒸着し、ラマンスペクトル分析用基板を作製した。なお、蒸着速度は、所定の厚さの銀薄膜を成膜するのに要した時間から算出した値に相当する。
実施例1において、蒸着時間を100秒にした以外は実施例1と同様に銀を蒸着し、ラマンスペクトル分析用基板を作製した。
実施例1において、蒸着時間を200秒にした以外は実施例1と同様に銀を蒸着し、ラマンスペクトル分析用基板を作製した。
銀を蒸着しないグルタルアルデヒド修飾基板を、そのままラマンスペクトル分析用基板とした。
実施例1,2及び比較例1において作製したラマンスペクトル測定用基板の表面に蒸着している銀を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。基板上に蒸着した銀の電子顕微鏡写真を図3に示す。実施例1及び2では、蒸着した銀は、半球状乃至半楕円球状の粒子が球面を上、平面を下に向けて薄膜上に積重した状態であった。また、実施例1は、平均粒径が15nm、平均高さが12nm、平均粒子間距離が5nm、接触角が118〜163°、実施例2は、平均粒径が30nm、平均高さが19nm、平均粒子間距離が5nm、接触角が105〜136°であり、粒子が孤立し、島状に分散して点在することが確認された。一方で、比較例1では、蒸着した銀は、網状に連続した状態で存在することが確認された。
実施例1,2及び比較例1,2の分析用基板を用いて、基板上の薄膜をラマン分光法によって解析した。グルタルアルデヒドで修飾された有機単分子膜が形成された基板のラマンスペクトルは、三次元顕微レーザーラマン分光装置((株)東京インスツルメンツ製)を用い、633nmの励起光を照射して取得した。結果を図4に示す。実施例1及び2の銀蒸着基板からは、波長1,000cm-1から2,000cm-1の範囲において、グルタルアルデヒドのアルデヒド基と単分子膜のアミノ基が結合したときに形成されるシッフ塩基(1,600cm-1)のピークをはじめ、有機分子に由来するラマンスペクトルが確認された。特に、実施例2の銀蒸着基板からは、多くのラマンピークが確認された。一方、比較例1の銀蒸着基板からは、有機分子に由来するピークは確認されなかった。また、銀蒸着を行わなかった比較例2の基板からは、有機分子に由来するラマンスペクトルは確認されなかった。なお、520cm-1付近、及び950cm-1から1,000cm-1付近に確認されたラマンピークは、基板として用いたシリコンに由来するものである。
2 薄膜
3 金属粒子
4 ラマン活性を有する固体物質
d 粒子間距離
t 接線
D 粒径
H 粒子の高さ
θ 接触角
Claims (11)
- 基体上に形成されたラマン活性を有する物質の薄膜の構造を解析するラマン分光法であって、上記薄膜上に、表面増強ラマン散乱活性を有する金属粒子を、物理気相成長法又は液相成長法により積重し、次いで、上記薄膜及び金属粒子に励起光を照射することにより、上記金属により増強された、上記薄膜の構造に由来するラマン散乱光を分光分析することを特徴とする表面増強ラマン分光法。
- 上記薄膜が、基体上に形成された有機単分子膜と、該有機単分子膜に結合した有機分子及び/又は生体分子とを含むことを特徴とする請求項1記載の表面増強ラマン分光法。
- 上記基体が、表面増強ラマン散乱活性を有しない物質で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の表面増強ラマン分光法。
- ラマン活性を有する固体物質の表面部の構造を解析するラマン分光法であって、上記固体物質の表面上に、表面増強ラマン散乱活性を有する金属粒子を、物理気相成長法又は液相成長法により積重し、次いで、上記表面部及び金属粒子に励起光を照射することにより、上記金属により増強された、上記表面部の構造に由来するラマン散乱光を分光分析することを特徴とする表面増強ラマン分光法。
- 上記金属粒子が平底面を有する凸形状であり、上記平底面が、上記薄膜又は上記固体物質の表面と接して積重されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の表面増強ラマン分光法。
- 上記金属粒子が、略半球状又は略半楕円球状であることを特徴とする請求項5記載の表面増強ラマン分光法。
- 上記薄膜又は固体物質の表面と、上記金属粒子との間の接触角θが90°以上180°未満であることを特徴とする請求項6記載の表面増強ラマン分光法。
- 上記金属粒子の粒径Dが5〜100nm、高さHが1〜100nmであり、かつ粒径と高さとの比(H/D)が0.1〜3.0であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の表面増強ラマン分光法。
- 上記金属粒子として、複数の金属粒子を、該金属粒子により形成された金属領域を励起光が透過可能に点在させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の表面増強ラマン分光法。
- 上記金属粒子の粒子間距離dが1〜20nmであることを特徴とする請求項9記載の表面増強ラマン分光法。
- 上記薄膜面又は上記固体物質の表面の所定の区画毎に上記励起光を照射して走査することにより、上記薄膜面又は上記固体物質の表面に沿った上記薄膜又は表面部の構造の2次元分布を得ることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の表面増強ラマン分光法。
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