以下に、本発明に係る駆動力制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置が設けられた車両の概略図である。実施形態1に係る駆動力制御装置2を備える車両1は、内燃機関であるエンジン10が動力源として搭載され、エンジン10で発生した動力によって走行可能になっている。このエンジン10には変速装置の一例である自動変速機30が接続されており、エンジン10で発生した動力は、自動変速機30に伝達可能になっている。この自動変速機30は、変速比が異なるギア段を複数有しており、自動変速機30で変速した動力は動力伝達経路を介して、車両1が有する車輪5のうち駆動輪として設けられる左右の前輪6へ駆動力として伝達されることにより、車両1は走行可能になっている。
また、当該車両1には、運転者が運転操作をする際に用いるアクセル操作子であるアクセルペダル35が備えられており、さらに、このアクセルペダル35の操作量を検出するアクセル開度センサ36が設けられている。
なお、実施形態1に係る駆動力制御装置2を備える車両1は、エンジン10で発生した動力が前輪6に伝達され、前輪6で駆動力を発生する、いわゆる前輪駆動車となっているが、車両1は、後輪7で駆動力を発生する後輪駆動や、全ての車輪5で駆動力を発生する四輪駆動など、前輪駆動以外の駆動形式であってもよい。また、エンジン10は、レシプロ式の火花点火内燃機関であってもよく、レシプロ式の圧縮点火内燃機関であってもよい。
エンジン10は、燃焼室で燃料を燃焼させることにより運転可能に設けられているため、エンジン10には、燃料を燃焼させる空気を吸入する際の空気の通路である吸気通路12と、燃料の燃焼後に排出される排気ガスの通路である排気通路(図示省略)とが接続されている。このうち、吸気通路12には、エンジン10の運転時における吸入空気量を調節する吸入空気量調節手段であるスロットルバルブ15と、燃焼室に供給する燃料を噴射する燃料インジェクタ16と、が設けられている。
これらのように設けられるエンジン10や自動変速機30は、車両1に搭載されると共に車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)40に接続されており、エンジン10や自動変速機30は、ECU40により制御されて作動する。例えば、エンジン10に接続されている吸気通路12に設けられるスロットルバルブ15や燃料インジェクタ16もECU40に接続されており、これらのスロットルバルブ15や燃料インジェクタ16もECU40により制御されて作動する。また、ECU40には、アクセル開度センサ36も接続されており、アクセルペダル35を操作することにより入力される運転者の要求は、アクセル開度センサ36よりECU40に伝達される。
また、エンジン10には、車両1が有する各電気部品で使用する電気を、エンジン10で発生するトルクによって発電可能な発電装置であるオルタネータ20が備えられている。このオルタネータ20には、オルタネータ20の回転軸に当該回転軸と一体となって回転可能なプーリであるオルタネータプーリ26が設けられている。また、エンジン10には、クランクシャフトと一体となって回転可能なプーリであるクランクプーリ25が設けられている。
これらのオルタネータプーリ26とクランクプーリ25とには、エンジン10のトルクをオルタネータ20に伝達するベルト27が掛けられている。このベルト27は、輪状に形成されており、輪状の外側から内側に向かうに従って幅が狭くなって形成される、いわゆるVベルトとなっている。なお、ベルト27は、Vベルト以外のものを用いてもよく、例えば、輪状に形成されるベルト27の内側に周方向に形成される複数本の溝を有するVリブベルトなどを用いてもよい。
エンジン10で発生するトルクは、これらのクランクプーリ25、ベルト27及びオルタネータプーリ26によって、オルタネータ20に伝達可能に設けられている。オルタネータ20は、このようにエンジン10で発生したトルクによって発電するため、エンジン10で発生した動力の一部を消費する。このため、換言すると、オルタネータ20での発電時には、オルタネータ20はエンジン10に対して負荷トルクを与える。オルタネータ20は、このようにエンジン10に負荷トルクを付与する補機として設けられている。また、オルタネータ20からエンジン10に対して付与する負荷トルクは、補機負荷トルクであるオルタ負荷トルクとなっている。
また、オルタネータ20には、当該オルタネータ20での発電時における発電量を調節可能な発電量調節手段である、公知のレギュレータ21が設けられている。オルタネータ20は、このようにレギュレータ21によって発電量を調節可能に設けられているが、オルタネータ20で発電を行った場合には、上述したようにエンジン10に負荷を付与することが可能になっている。このため、オルタネータ20での発電量をレギュレータ21で調節して発電量を変化させた場合、オルタネータ20からエンジン10に付与する負荷も変化する。即ち、オルタネータ20は、発電量を調節することにより、エンジン10に付与するオルタ負荷トルクの大きさを調節可能に設けられている。
これらのように設けられるオルタネータ20には、当該オルタネータ20で発電した電気を蓄電可能な蓄電装置であり、充電したり放電したりすることが可能な二次電池として設けられているバッテリ(図示省略)が接続されている。このバッテリで充電した電気は、車両1が有する各電気部品で使用される。また、オルタネータ20での発電量を調節可能なレギュレータ21は、ECU40に接続されており、オルタネータ20での発電量は、レギュレータ21を介してECU40によって制御可能になっている。
図2は、図1に示す駆動力制御装置の要部構成図である。ECU40には、処理部41、記憶部60及び入出力部61が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU40に接続されているエンジン10、スロットルバルブ15、燃料インジェクタ16、レギュレータ21、自動変速機30、アクセル開度センサ36は、入出力部61に接続されており、入出力部61は、これらのエンジン10等との間で信号の入出力を行う。また、記憶部60には、駆動力制御装置2を制御するコンピュータプログラムが格納されている。
また、処理部41は、少なくともアクセル開度センサ36での検出結果よりアクセルペダル35の操作量であるアクセル操作量、即ち、アクセル開度を取得可能なアクセル開度取得部42と、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度に基づいてエンジン10の運転制御を行うエンジン制御部44と、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度に基づいて自動変速機30の変速制御を行う変速制御部48と、を有している。
このうち、エンジン制御部44は、スロットルバルブ15の開閉の制御を行うスロットルバルブ制御部45と、燃料インジェクタ16から噴射する燃料の噴射量を制御する燃料噴射量制御部46と、を有している。
また、処理部41は、オルタネータ20での発電量を制御することを介して、オルタネータ20からエンジン10に付与する負荷トルクであるオルタ負荷トルクの大きさを調節する負荷調節部であるオルタ負荷トルク調節部50と、燃料カットを行うか否かを示すフラグである燃料カットフラグの切り替えを行う燃料カットフラグ切替部51と、エンジン10から出力されるトルクであるエンジン軸トルクに対するアクセル開度の領域を示すアクセル開度領域の判定を行うアクセル開度領域判定部52と、エンジン軸トルクの制御をアクセル開度領域に応じて行うエンジン軸トルク制御部53と、を有している。
ECU40によって制御される駆動力制御装置2の制御は、例えば、アクセル開度センサ36等の検出結果に基づいて、処理部41が上記コンピュータプログラムを当該処理部41に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じてエンジン10等を作動させることにより制御する。その際に処理部41は、適宜記憶部60へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。
この実施形態1に係る駆動力制御装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の走行時には、運転者が操作をするアクセルペダル35の操作量であるアクセル開度をアクセル開度センサ36で検出し、この検出結果を、ECU40の処理部41が有するアクセル開度取得部42で取得する。アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度は、ECU40の処理部41が有するエンジン制御部44や変速制御部48に伝達される。
このうち、エンジン制御部44は、アクセル開度取得部42より伝達されたアクセル開度に基づいて、スロットルバルブ制御部45でスロットルバルブ15の開度を制御したり、燃料噴射量制御部46で燃料インジェクタ16を制御することによって燃料の噴射量を制御したりすることにより、エンジン10の運転制御を行う。また、変速制御部48は、アクセル開度取得部42より伝達されたアクセル開度に基づいて自動変速機30を制御することにより、自動変速機30の変速制御を行う。車両1の走行時には、これらのようにアクセル開度に基づいてエンジン10や自動変速機30を制御することにより、運転者の要求に応じた走行状態を実現する。
アクセルペダル35を操作した場合には、このようにエンジン10や自動変速機30の制御を行うが、アクセルペダル35の開度を小さくした場合における所定の条件を満たした場合には、本実施形態1に係る駆動力制御装置2では、燃料カットを行う。つまり、アクセル開度を所定の開度よりも小さくした場合には、アクセル開度がゼロより大きい場合、即ち、アクセル開度が全閉以外の場合でも、燃料カットを行い、燃料インジェクタ16からの燃料の噴射を停止する。
つまり、本実施形態1に係る駆動力制御装置2では、アクセル開度が全閉以外の場合も燃料カットを行うが、燃料カットを行う際の要求減速度は、アクセル低開度領域に割り付け、運転者の要求減速度の検出時におけるアクセル開度が小さい場合に、燃料カットを行う。また、この燃料カットを行う開度以下のエンジン10の運転状態を、運転が維持できる最低の回転数、或いは最低の出力での運転状態であるアイドル運転であると判断する。また、このアイドル運転の判定基準は、燃料噴射時における最小エンジントルクとする。なお、燃料カットは、このようにアクセル開度が所定の開度よりも小さい状態で要求減速度が発生している場合に行うが、エンジン回転数が所定の高回転以上の場合も、燃料カットを行う。これにより、エンジン回転数が高くなり過ぎることを抑制する。
燃料カットは、このようにアクセル低開度領域と、エンジン回転数が高回転の場合に行うが、このうちアクセル低開度領域の燃料カットは、アクセル開度が低開度の領域で、所定の条件を満たした場合に行う。例えば、アクセル開度を小さくすることにより運転者が減速度の増加を要求した場合において、車両1を減速させる場合に、燃料カットをすることによる減速度の増加分と、減速度の変化に関わる他の装置を制御することによる減速度の低下分とがつり合うアクセル開度になった際に、他の装置で減速度を低下させる制御を行うと共に、燃料カットを行う。
また、アクセルペダル35の開度を小さくした場合における所定の条件を満たした場合には、さらに、オルタネータ20の制御も用いて車両1の走行制御を行う。即ち、オルタネータ20は、当該オルタネータ20の制御を行うことにより車両1の減速度を変化させることが可能になっており、減速度の変化に関わる装置としても使用される。このオルタネータ20に関して詳しく説明すると、エンジン10の運転時には、エンジン10で発生したトルクの一部は、クランクプーリ25、ベルト27、オルタネータプーリ26を介して、オルタネータ20に伝達される。これによりオルタネータ20は駆動し、発電を行う。オルタネータ20で発電を行うことにより発生した電気は、オルタネータ20からバッテリに伝達され、バッテリに充電される。
オルタネータ20は、このようにエンジン10で発生するトルクによって発電を行うが、オルタネータ20で発電を行う際には、ECU40の処理部41が有するオルタ負荷トルク調節部50でレギュレータ21を制御することにより、オルタネータ20での発電量を制御する。例えば、バッテリの充電量を検出し、現在のバッテリの充電量が少ない場合には、オルタネータ20での発電量を増加させ、現在のバッテリの充電量が多い場合には、オルタネータ20での発電量を低減させるように、レギュレータ21を制御する。即ち、レギュレータ21の制御を介して、オルタネータ20での発電量を制御する。
ここで、オルタネータ20で発電を行う場合には、エンジン10で発生したトルクの一部を利用して発電を行うため、オルタネータ20での発電時は、発電に利用される分のトルクが消費され、駆動力に用いられる分のトルクが減少する。換言すると、オルタネータ20での発電時は、オルタネータ20からエンジン10に対して負荷が付与される状態になる。
また、この負荷は、オルタネータ20での発電量が多くなるに従って大きくなり、発電量が少なくなるに従って小さくなるが、オルタネータ20は、オルタ負荷トルク調節部50でレギュレータ21を制御することにより、発電量の制御が可能になっている。このため、オルタ負荷トルク調節部50でレギュレータ21を制御することによって発電量を変化させた場合、オルタネータ20からエンジン10に対して付与される負荷トルクが変化する。オルタ負荷トルク調節部50は、オルタネータ20での発電量を調節することにより、このようにオルタネータ20からエンジン10に対して付与される負荷トルクであるオルタ負荷トルクの調節が可能になっている。つまり、オルタネータ20は、エンジン10に対してオルタ負荷トルクを付与することにより、エンジン10の運転時の負荷であるエンジン負荷を発生させることができ、オルタ負荷トルク調節部50は、オルタ負荷トルクを調節することにより、エンジン負荷を調節することができる。
オルタネータ20で発電を行う場合には、このようにエンジン10にはオルタ負荷トルクが付与されるため、エンジン10から自動変速機30に伝達されるトルクは、オルタ負荷トルクの大きさに応じて変化する。つまり、レギュレータ21を制御することによってオルタネータ20での発電量を増加させた場合には、オルタ負荷トルクが大きくなるため、エンジン10で発生したトルクはオルタ負荷トルクによって消費される量が増加し、エンジン10から出力されて自動変速機30に伝達されるエンジン軸トルクは小さくなる。反対に、レギュレータ21を制御することによってオルタネータ20での発電量を減少させた場合には、オルタ負荷トルクが小さくなるため、エンジン10で発生したトルクはオルタ負荷トルクによって消費される量が減少し、エンジン10から自動変速機30に伝達されるエンジン軸トルクは大きくなる。
アクセル開度が所定の開度よりも小さい場合におけるこれらの燃料カットとオルタ負荷トルクの制御は、アクセル開度に応じて協調制御を行うことにより、アクセル開度が所定の開度よりも小さい場合における運転者の要求駆動力を実現する。換言すると、アクセル開度が所定の値よりも小さい場合には、オルタ負荷トルク調節部50でオルタ負荷トルクの制御を行うことにより、車両1の減速度をアクセル開度に応じた大きさにする。
このように、燃料カットとオルタ負荷トルクの制御との協調制御を行う場合には、例えば、車両1の減速時で、アクセル開度が所定の開度よりも小さい場合における燃料カットは、エンジン10への燃料の供給状態でオルタ負荷トルク調節部50によってエンジン負荷を増大させた場合における減速度と、燃料カット状態でオルタ負荷トルク調節部50によってエンジン負荷を減少させた場合における減速度と、が等しくなる状態の場合に行う。車両1の減速中に、このように燃料の供給状態での減速度と、燃料カット状態での減速度とを比較し、双方が等しくなった時点で、燃料カットとオルタ負荷トルクの制御との協調制御を行い、運転者が要求する減速度を、エンジン負荷を増大させることにより実現している状態から、燃料カットによって実現する状態に移行する。
アクセル開度を閉じている場合において全閉以外のときに燃料カットを行う場合は、燃料カットによって減速Gが過剰になるのを避けるために、このように燃料カットと共にオルタ負荷トルクを制御することにより、エンジン負荷を軽減し、要求減速度に応じた負荷コントロールを行う。
図3は、アクセル開度が小さい領域におけるアクセル開度に対する燃料噴射量及びオルタ負荷トルクの制御についての説明図である。この図3は、横軸がアクセル開度になっており、図中の右に向かうに従って、アクセル開度が大きい状態を示している。アクセル開度が所定の開度より小さい場合には、燃料カットとオルタ負荷トルクとの協調制御を行うことにより要求駆動力を実現するが、次に、この協調制御について説明する。
エンジン10の運転制御時には、アクセルペダル35を戻し、アクセル開度が小さくなるに従って、燃料噴射量を低減する。つまり、燃料噴射量は、ECU40の処理部41が有する燃料噴射量制御部46で燃料インジェクタ16を制御することにより、燃料インジェクタ16から噴射する燃料の噴射量を制御するが、燃料噴射量制御部46で燃料インジェクタ16を制御する際には、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度に基づいて制御する。即ち、燃料噴射量制御部46は、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度が大きくなるに従って燃料噴射量を増加し、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度が小さくなるに従って燃料噴射量を低減するように、燃料インジェクタ16を制御する。
エンジン10の出力軸のトルクであるエンジン軸トルクは、エンジン10の吸入空気量と燃料噴射量とに応じて変化するので、エンジン軸トルクはアクセル開度に応じて変化し、アクセル開度が大きくなるに従って大きくなり、アクセル開度が小さくなるに従って小さくなる。また、エンジン軸トルクは、アクセル開度を小さくした場合にはアクセル開度の変化に伴って小さくなるが、車両1の走行中にエンジン軸トルクを小さくした場合において、エンジン軸トルクが、現在の走行状態につり合うトルクの大きさよりも小さくなった場合、エンジン軸トルクは、減速方向のトルクである負トルクとして、走行中の車両1に作用する。つまり、アクセル開度を小さくした場合において、エンジン軸トルクが現在の走行状態につり合うトルクよりも小さくなった場合には、アクセル開度が小さくなるに従って、エンジン軸トルクによる負トルクが大きくなる。
また、燃料噴射量は、このようにアクセル開度に基づいて制御するが、燃料インジェクタ16で噴射できる燃料は、燃料インジェクタ16の性能によって最小噴射量が決まっている。このため、アクセル開度を小さくした場合でも、最小噴射量より少ない量で燃料噴射量を調節するのは不可能になっており、アクセル開度に基づいて燃料噴射量を制御する場合には、この最小噴射量以上で燃料噴射量の制御を行う。また、このためエンジン10は、アクセル開度を小さくしている場合に、燃料噴射量が最小噴射量に到達したら、アイドル運転を行う。
一方、アクセル開度を小さくした状態は、運転者の要求加速度が小さくなっていることを示しているが、燃料噴射量が最小噴射量の場合には、上述したように燃料噴射量をそれ以上少なくして調節することはできなくなっている。このため、この場合には、燃料噴射量は最小噴射量で維持し、ECU40の処理部41が有するオルタ負荷トルク調節部50でレギュレータ21を介してオルタネータ20の発電量を調節することにより、オルタ負荷トルクを増加させる(領域a)。燃料噴射量制御部46での燃料噴射量の制御と、オルタ負荷トルク調節部50でのオルタ負荷トルクとの協調制御は、このようにアクセル開度を小さくして、燃料噴射量が最小噴射量になるアクセル開度以下の場合に行う。
つまり、オルタネータ20は、通常の運転時にはバッテリの充電量に応じた発電量になるように作動するため、電気の消費量やバッテリの充電量に急激な変化がない場合には、オルタ負荷トルクはほぼ一定の大きさになる。アクセル開度を小さくした際に、燃料噴射量が最小噴射量になった場合には、このように通常の運転時にはほぼ一定のオルタ負荷トルクを大きくすることにより、オルタネータ20からエンジン10に付与する負荷を大きくする。これにより、燃料噴射量を最小噴射量で維持した状態で、エンジン10から出力されるエンジン軸トルクを実質的に小さくし、減速時における運転者の要求加速度である要求減速度を実現する。
このように、オルタ負荷トルクを大きくすることによりエンジン軸トルクを小さくし、エンジン軸トルクが、燃料カットを行い、且つ、オルタ負荷トルクをゼロにした場合における大きさまで小さくなったら(領域b)、燃料カットを行うと共にオルタ負荷トルクをゼロにする(領域c)。つまり、オルタ負荷トルクをゼロにした場合、オルタネータ20からエンジン10に対する負荷が少なくなるため、エンジン10からの実質的な出力であるエンジン軸トルクが大きくなる。反対に、燃料カットを行った場合には、燃料の燃焼エネルギによる動力が発生しなくなるため、エンジン軸トルクは小さくなる。このため、オルタ負荷トルクをゼロにすることによるエンジン軸トルクの増加分が、燃料カットを行うことによるエンジン軸トルクの低下分と等しくなったら、燃料カットを行い、且つ、オルタ負荷トルクを瞬時にゼロにする。
換言すると、エンジン10への燃料の供給中における車両1の減速時の燃料カットは、オルタ負荷トルク調節部50によってエンジン負荷を低下させることによる減速度の低下分と、燃料カットを行うことによる減速度の増加分と、が等しくなる状態になったら行う。このように、アクセル開度が全閉以外の場合でも、これらの運転状態になるアクセル開度の場合には、燃料カットを行う。具体的には、エンジン10の運転状態が、燃料噴射量が最小噴射量になり、燃料噴射時における最小エンジントルクでの運転状態であるアイドル運転の場合に、燃料カットを行う。これにより、運転者の要求減速度を実現できるエンジン軸トルクを、オルタネータ20の負荷をエンジン10に付与しない状態で発生させる。
なお、このようにアクセル開度に応じてエンジン軸トルクを変化させる際に、アクセル開度が全閉以外の場合に燃料カットを行う場合は、燃料カットの前後でエンジン軸トルクの勾配を等しくするのが好ましい。エンジン軸トルクの勾配を等しくすることにより、アクセルペダル35の操作時におけるトルク操作性を向上させることができる。
車両1の減速時における燃料カット時に、燃料カットを行うと共にオルタ負荷トルク調節部50によってオルタ負荷トルクを小さくすることによりエンジン負荷を低下させた後に、さらに減速度を大きくする場合には、オルタ負荷トルク調節部50によってオルタ負荷トルクを大きくし、エンジン負荷を増大させる。つまり、燃料カットを行った状態でアクセル開度を小さくし、要求加速度が小さくなった場合、或いは、要求減速度が大きくなった場合には、アクセル開度が小さくなるに従って、オルタ負荷トルクを大きくする。これにより、エンジン軸トルクは、オルタ負荷トルクが大きくなるに従って小さくなるので、大きくなった要求減速度を実現できる。また、大きくなった要求減速度を実現するために運転者がアクセル開度を小さくし、このアクセル開度が小さくなるに従ってオルタ負荷トルクを大きくする場合には、アクセル開度を全閉にした際に、オルタ負荷トルクを最大にする(領域d)。
つまり、アクセルペダル35を全閉にしてアクセル開度をゼロにした場合には、燃料を燃焼させることにより発生するトルクを、燃料カットを行うことによってゼロにした状態で、オルタ負荷トルクを最大にする。これにより、オルタネータ20からエンジン10への負荷を最大にしてエンジン軸トルクを最も小さくし、アクセル開度を全閉にした場合における負トルクを最大にする。
図4−1、図4−2は、実施形態1に係る駆動力制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。次に、実施形態1に係る駆動力制御装置2の制御方法、即ち、当該駆動力制御装置2の処理手順の概略について説明する。なお、以下の処理は、アクセル開度を小さくした場合における各部の制御の処理手順になっており、車両1の運転時に各部を制御する際に、所定の期間ごとに呼び出されて実行する。
実施形態1に係る駆動力制御装置2の処理手順では、まず、エンジン軸トルクに対するアクセル開度の領域がa→b方向の範囲内であるか否かを判定する(ステップST101)。この判定は、ECU40の処理部41が有するアクセル開度領域判定部52で行う。アクセル開度領域判定部52は、エンジン軸トルクに対するアクセル開度の領域が、燃料噴射量は最小噴射量にし、オルタ負荷トルクは通常運転時の負荷トルクにする領域である領域a(図3参照)と、最小噴射量の状態のエンジン軸トルクが、燃料カットを行うと共にオルタ負荷トルクをゼロにした場合におけるエンジン軸トルクと同じ大きさになる領域である領域b(図3参照)と、の範囲内であるか否かを、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度に基づいて判定する。
このようにアクセル開度領域判定部52でアクセル開度の領域を判定する場合には、エンジン軸トルクとアクセル開度との関係を示すマップ(図3参照)を予め設定してECU40の記憶部60に記憶しておき、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度を用いて記憶部60に記憶されたマップを参照することにより、アクセル開度の領域を判定する。また、アクセル開度領域判定部52は、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度に基づいてアクセル開度が変化する方向も判定し、このアクセル開度が変化する方向も含めて、アクセル開度が、アクセル開度領域におけるa→b方向の範囲内であるか否かを判定する。つまり、アクセル開度領域判定部52は、アクセルペダル35を戻すことによりアクセル開度が小さくなる方向に変化している場合において、アクセル開度は領域aと領域bとの範囲内であるか否かを判定する。
アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST101)により、アクセル開度が、アクセル開度領域におけるa→b方向の範囲内であると判定された場合には、次に、アクセル開度は、領域aと一致するか否かを判定する(ステップST102)。この判定は、アクセル開度が小さくなる方向に変化している場合においてアクセル開度取得部42で取得したアクセル開度が、ECU40の記憶部60に記憶されたアクセル開度領域のマップにおける領域aと一致するか否かを、アクセル開度領域判定部52で判定する。
アクセル開度領域判定部52でのこの判定(ステップST102)により、アクセル開度はアクセル開度領域における領域aと一致すると判定された場合には、エンジン出力トルクTe=最小トルクにし、オルタ負荷トルクTalt=通常トルクにする(ステップST103)。つまり、アクセル開度を小さくすることによりエンジン軸トルクが負トルクとなる場合に各部を制御するECU40の処理部41が有するエンジン軸トルク制御部53で、これらの設定を行う。詳しくは、エンジン軸トルク制御部53は、エンジン軸トルクが負トルクになる場合における制御を行う際に、エンジン10で燃料を燃焼させることによってエンジン10で発生する出力トルクであるエンジン出力トルクTeと、オルタ負荷トルクTaltと、の設定を行う。
このように設けられるエンジン軸トルク制御部53は、アクセル開度はアクセル開度領域における領域aと一致する、とアクセル開度領域判定部52で判定された場合には、エンジン出力トルクTe=最小トルクにし、オルタ負荷トルクTalt=通常トルクに設定する。即ち、エンジン軸トルク制御部53は、エンジン出力トルクTeを、燃料インジェクタ16で噴射する燃料の噴射量を最小噴射量にした場合におけるエンジン10の出力トルクであり、エンジン10で発生させることのできる最も小さな出力トルクである最小トルクになるように設定する。また、エンジン軸トルク制御部53は、オルタ負荷トルクTaltを、通常の運転時におけるオルタ負荷トルクである通常トルクになるように設定する。
これに対し、アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST102)により、アクセル開度はアクセル開度領域における領域aと一致しないと判定された場合には、次に、エンジン出力トルクTe=最小トルクにし、オルタ負荷トルクTalt=通常トルク+ΔTalt(acc)にする(ステップST104)。つまり、エンジン軸トルク制御部53は、エンジン出力トルクTeを最小トルクになるように設定し、さらに、オルタ負荷トルクTaltは、オルタ負荷トルクの通常トルクに、アクセル開度に応じたオルタ負荷トルクを加算し、通常トルクよりも大きくなるように設定する。これらのように、アクセル開度領域判定部52でエンジン出力トルクTeやオルタ負荷トルクTaltを設定したら(ステップST103、ST104)、後述するステップST109に向かう。
これらに対し、アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST101)により、アクセル開度が、アクセル開度領域におけるa→b方向の範囲内ではないと判定された場合には、次に、アクセル開度は、アクセル開度領域におけるb→d方向の範囲内であるか否かを判定する(ステップST105)。つまり、アクセル開度領域判定部52は、エンジン軸トルクに対するアクセル開度の領域が、領域bと、燃料カットを行った状態でオルタ負荷トルクを最大にする領域である領域d(図3参照)と、の範囲内であるか否かを、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度と、記憶部60に記憶されたマップとに基づいて判定する。さらに、アクセル開度領域判定部52は、アクセル開度が変化する方向も含めて判定を行い、アクセル開度が、アクセル開度領域におけるb→d方向の範囲内であるか否かを判定する。即ち、アクセル開度領域判定部52は、アクセルペダル35を戻すことによりアクセル開度が小さくなる方向に変化している場合において、アクセル開度は領域bと領域dとの範囲内であるか否かを判定する。
アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST105)により、アクセル開度が、アクセル開度領域におけるb→d方向の範囲内であると判定された場合には、次に、アクセル開度は、領域bと一致するか否かを判定する(ステップST106)。この判定は、アクセル開度が小さくなる方向に変化している場合においてアクセル開度取得部42で取得したアクセル開度が、ECU40の記憶部60に記憶されたアクセル開度領域のマップにおける領域bと一致するか否かを、アクセル開度領域判定部52で判定する。
アクセル開度領域判定部52でのこの判定(ステップST106)により、アクセル開度はアクセル開度領域における領域bと一致すると判定された場合には、次に、エンジン出力トルクTe=燃料カットにし、オルタ負荷トルクTalt=ゼロにし、燃料カットフラグFcut=ONにし、領域=cにする(ステップST107)。
つまり、エンジン軸トルク制御部53は、エンジン出力トルクTeを、燃料インジェクタ16からの燃料の噴射を停止し、燃料カットを行った場合における大きさのエンジン出力トルクになるように設定する。換言すると、エンジン軸トルク制御部53は、エンジン出力トルクTeを、燃料を燃焼させることによりエンジン10で発生するトルクを、燃料カットによる大きさのトルクであるゼロになるように設定する。また、エンジン軸トルク制御部53は、オルタ負荷トルクTaltを、オルタネータ20で発電を行わず、エンジン10に負荷を付与しない状態であるゼロになるように設定する。
また、アクセル開度は領域bと一致すると判定された場合には、エンジン軸トルク制御部53は、アクセル開度領域は燃料カットを行い、オルタ負荷トルクをゼロにする領域である領域c(図3参照)になるように設定する。つまり、この領域cと領域bとでは、エンジン軸トルクの大きさはほぼ同じ大きさで、エンジン軸トルクの発生方法が異なっている領域となっているが、アクセル開度を小さくしている場合には、これらは領域bの後に領域cに移行する。このため、アクセル開度は領域bと一致すると判定された場合には、エンジン軸トルク制御部53は、アクセル開度領域が領域cになるように設定する。
さらに、このようにアクセル開度はアクセル開度領域における領域bと一致するとアクセル開度領域判定部52で判定された場合には、ECU40の記憶部60に記憶されている燃料カットフラグFcutを、ECU40の処理部41が有する燃料カットフラグ切替部51でONに切り替える。
ここで、この燃料カットフラグについて説明すると、燃料カットフラグは、燃料カットが行われる状態であるか否かを示すフラグであり、ONの場合は燃料カットを行う状態であることを示し、OFFの場合は燃料カットを行わずに通常の燃料噴射の制御を行う状態であることを示すフラグとして設けられている。燃料噴射量制御部46は、この燃料カットフラグがOFFの場合に、アクセル開度等に応じて燃料噴射量の制御を行い、ONの場合には燃料インジェクタ16からの燃料の噴射を停止して燃料カットを行う。アクセル開度領域判定部52で、アクセル開度はアクセル開度領域における領域bと一致すると判定された場合には、燃料カットフラグ切替部51は、このように設けられる燃料カットフラグをONに切り替える。
これに対し、アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST106)により、アクセル開度はアクセル開度領域における領域bと一致しないと判定された場合には、次に、エンジン出力トルクTe=最小トルクにし、オルタ負荷トルクTalt=ゼロ→最大負荷にし、領域c→dにする(ステップST108)。つまり、エンジン軸トルク制御部53は、エンジン出力トルクTeを最小トルクになるように設定する。また、エンジン軸トルク制御部53は、オルタ負荷トルクTaltを、オルタネータ20での発電によってエンジン10に負荷を付与しない状態であるゼロの状態から、オルタネータ20での発電によりエンジン10への負荷が最大になる最大負荷の状態に移行するように設定する。さらに、エンジン軸トルク制御部53は、アクセル開度領域が、領域cから領域dに移行するように設定する。
エンジン軸トルク制御部53によって、エンジン出力トルクTeやオルタ負荷トルクTaltや、アクセル開度の領域の設定をしたり、燃料カットフラグ切替部51によって燃料カットフラグの切り替えを行ったり、アクセル開度領域判定部52での判定により、アクセル開度が、アクセル開度領域におけるb→d方向の範囲内ではないと判定されたりした後は(ステップST103、ST104、ST105、ST107、ST108)、アクセル開度は、アクセル開度領域におけるd→c方向の範囲内であるか否かを判定する(ステップST109)。つまり、アクセル開度領域判定部52は、アクセル開度が、エンジン軸トルクに対するアクセル開度領域におけるd→c方向の範囲内であるか否かを、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度とアクセル開度が変化する方向、及び記憶部60に記憶されたアクセル開度領域の判定に用いるマップに基づいて判定する。即ち、アクセル開度領域判定部52は、アクセルペダル35を踏む込むことによりアクセル開度を大きくしている場合において、アクセル開度は領域dと領域cとの範囲内であるか否かを判定する。
アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST109)により、アクセル開度はアクセル開度領域におけるd→c方向の範囲内であると判定された場合には、エンジン出力トルクTe=燃料カットにし、オルタ負荷トルクTalt=最大負荷→負荷減少(acc)にする(ステップST110)。つまり、エンジン軸トルク制御部53は、エンジン出力トルクTeを燃料カットの状態になるように設定し、さらに、オルタ負荷トルクTaltを、エンジン10への負荷が最大負荷の状態から、アクセル開度に応じて負荷を減少させる状態になるように設定する。これらのように、アクセル開度領域判定部52でエンジン出力トルクTeやオルタ負荷トルクTaltを設定したら、この処理手順から抜け出る。
これに対し、アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST109)により、アクセル開度が、アクセル開度領域におけるd→c方向の範囲内ではないと判定された場合には、次に、アクセル開度は、アクセル開度領域におけるc→a方向の範囲内であるか否かを判定する(ステップST111)。つまり、アクセル開度領域判定部52は、アクセル開度が、エンジン軸トルクに対するアクセル開度領域におけるc→a方向の範囲内であるか否かを、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度とアクセル開度が変化する方向、及び記憶部60に記憶されたアクセル開度領域の判定に用いるマップに基づいて判定する。即ち、アクセル開度領域判定部52は、アクセルペダル35を踏む込むことによりアクセル開度を大きくしている場合において、アクセル開度は領域cと領域aとの範囲内であるか否かを判定する。
アクセル開度領域判定部52でのこの判定(ステップST111)により、アクセル開度は、アクセル開度領域におけるc→a方向の範囲内ではないと判定された場合には、この処理手順から抜け出る。
これに対し、アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST111)により、アクセル開度が、アクセル開度領域におけるc→a方向の範囲内であると判定された場合には、次に、アクセル開度は、領域cと一致するか否かを判定する(ステップST112)。この判定は、アクセル開度が大きくなる方向に変化している場合においてアクセル開度取得部42で取得したアクセル開度が、ECU40の記憶部60に記憶されたアクセル開度領域のマップにおける領域cと一致するか否かを、アクセル開度領域判定部52で判定する。
アクセル開度領域判定部52でのこの判定(ステップST112)により、アクセル開度はアクセル開度領域における領域cと一致すると判定された場合には、次に、エンジン出力トルクTe=最小トルクにし、オルタ負荷トルクTalt=ゼロ→負荷b点にし、燃料カットフラグFcut=OFFにし、領域=bにする(ステップST113)。つまり、エンジン軸トルク制御部53でエンジン出力トルクTeを最小トルクになるように設定し、また、オルタ負荷トルクTaltがゼロの状態から、アクセル開度が領域bの状態におけるオルタ負荷トルクTaltに変化するように設定し、アクセル開度領域を領域bになるように設定する。また、燃料カットフラグ切替部51で燃料カットフラグFcutをOFFの状態に切り替える。これらのように、エンジン軸トルク制御部53でエンジン出力トルクTeやオルタ負荷トルクTalt、アクセル開度領域を設定し、燃料カットフラグ切替部51で燃料カットフラグFcutを切り替えたら、この処理手順から抜け出る。
これに対し、アクセル開度領域判定部52でのこの判定(ステップST112)により、アクセル開度はアクセル開度領域における領域cと一致しないと判定された場合には、次に、エンジン出力トルクTe=最小トルクにし、オルタ負荷トルクTalt=負荷b点→通常負荷(acc)にし、燃料カットフラグFcut=OFFにし、領域=b→aにする(ステップST114)。つまり、エンジン軸トルク制御部53でエンジン出力トルクTeを最小トルクになるように設定し、また、オルタ負荷トルクTaltをアクセル開度が領域bの状態におけるオルタ負荷トルクTaltから、エンジン10に対する負荷をアクセル開度に応じて変化させる通常負荷になるように設定し、アクセル開度領域を領域bから領域aに変化するように設定する。また、燃料カットフラグ切替部51で燃料カットフラグFcutをOFFの状態に切り替える。
エンジン軸トルク制御部53でエンジン出力トルクTeやオルタ負荷トルクTalt、アクセル開度領域を設定し、燃料カットフラグ切替部51で燃料カットフラグFcutを切り替えたら(ステップST114)、次に、アクセル開度は、領域a以上であるか否かを判定する(ステップST115)。この判定は、アクセル開度が大きくなる方向に変化している場合においてアクセル開度取得部42で取得したアクセル開度が、ECU40の記憶部60に記憶されたアクセル開度領域のマップにおける領域a以上であるか否かを、アクセル開度領域判定部52で判定する。アクセル開度領域判定部52での判定により、アクセル開度は領域a以上ではないと判定された場合には、この処理手順から抜け出る。
これに対し、アクセル開度領域判定部52での判定(ステップST115)により、アクセル開度は領域a以上であると判定された場合には、エンジン出力トルクTe=最小トルク+ΔTe(acc)にし、オルタ負荷トルクTalt=通常負荷にし、燃料カットフラグFcut=OFFにし、領域=a以上にする(ステップST116)。つまり、エンジン軸トルク制御部53によってエンジン出力トルクTeを、最小トルクにアクセル開度に応じたエンジン出力トルクを加算して最小トルクよりも大きくなるように設定する。即ち、エンジン出力トルクTeを、アクセル開度に応じてトルクの大きさが変化する通常の運転時における制御状態になるように設定する。
また、エンジン軸トルク制御部53は、オルタ負荷トルクTaltを、通常の運転時における負荷になるように設定し、アクセル開度領域を、領域a以上に設定する。また、燃料カットフラグ切替部51で燃料カットフラグFcutをOFFの状態に切り替える。エンジン軸トルク制御部53でエンジン出力トルクTeやオルタ負荷トルクTalt、アクセル開度領域を設定し、燃料カットフラグ切替部51で燃料カットフラグFcutを切り替えたら(ステップST116)、この処理手順から抜け出る。
アクセル開度に基づいて駆動力を制御する際には、これらの処理手順を実行することによって設定したエンジン出力トルクTe、オルタ負荷トルクTalt、アクセル開度領域や、燃料カットフラグFcutを参照し、参照した結果に基づいて燃料インジェクタ16やスロットルバルブ15、オルタネータ20等を制御することにより、アクセル開度に応じたエンジン軸トルクを発生させる。その際に、アクセル開度を小さくした場合におけるこの処理では、このようにエンジン軸トルクが負トルクの場合における各状態を判定して判定結果に応じて設定を行い(ステップST101〜ST108)、エンジン軸トルクが加速方向のトルクである正トルクの場合における各状態を判定して判定結果に応じて設定を行うことにより(ステップST109〜ST116)、エンジン軸トルクの変動状態に関わらず、連続的に負トルクのコントロールを行う。
以上の駆動力制御装置2は、アクセル開度が、オルタ負荷トルク調節部50によってエンジン負荷を低下させることによる減速度の低下分と、燃料カットを行うことによる減速度の増加分と、が等しくなるアクセル開度になったら、燃料カットを行っている。これにより、車速に対してアクセル開度を小さくすることにより、車両1を減速させる方向の駆動トルクである負トルクが発生して減速度が発生している場合において、燃料カットを行った際に、減速度に段付きが生じて、減速度が急激に変化することを抑制することができる。従って、運転者が要求する減速度が変化する場合でも、実際の減速度を、アクセル開度に応じてスムーズに変化させることができる。この結果、より適切に運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、車両1の減速時における燃料カットは、エンジン10への燃料の供給状態でエンジン負荷を増大させた場合における減速度と、燃料カット状態でエンジン負荷を減少させた場合における減速度と、が等しくなる状態の場合に行っている。これにより、燃料の供給時には増大させているエンジン負荷を、燃料カットと共に減少させることにより、減速度を変化させることなく、燃料カットを行うことができる。従って、アクセル開度に応じて減速度を変化させる際に、より確実にスムーズに変化させることができる。この結果、より適切に運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、車両1の減速時の燃料カットは、オルタ負荷トルク調節部50でオルタネータ20を制御することによってエンジン負荷を低下させることによる減速度の低下分と、燃料カットを行うことによる減速度の増加分と、が等しくなる状態の場合に行っている。これにより、燃料カット時に、燃料カットに伴う減速度の増加分を、オルタネータ20を制御し、エンジン負荷を低下させることにより減速度の低下分で補うことができる。従って、アクセル開度に応じて減速度を変化させる際に、燃料カットを行うことによって発生する減速度の急激な変化を抑制することができ、より確実にスムーズに変化させることができる。この結果、より適切に運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、アクセル開度が全閉以外の状態で、且つ、上述したような、減速度を急激に変化させることなく燃料カットを行うことができるアクセル開度の場合には、燃料カットの制御とオルタ負荷トルク調節部50でのエンジン負荷の制御との協調制御を行うことにより、減速度をアクセル開度に応じた大きさにしている。このように、燃料カットを行う際に、エンジン負荷の制御との協調制御を行うことにより、燃料カットを行うことによって発生する減速度の急激な変化を抑制することができ、減速度を、より確実にスムーズに変化させることができる。この結果、より適切に運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、車両1の減速時に、燃料カットを行うと共に、オルタネータ20を制御することによってエンジン負荷を低下させた後に、さらに減速度を大きくする場合には、オルタ負荷トルク調節部50でオルタネータ20を制御することによって、エンジン負荷を増大させている。これにより、燃料カットを行うことにより、燃料噴射量を調節することによって減速度を変化させることができない状態でも、燃料噴射量に依存することなく、減速度を変化させることができる。この結果、より適切に運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、アクセル開度が小さくなり、負トルクを発生する制御を行う場合において燃料カットを行う前は、燃料噴射量を最小噴射量の状態、即ち、エンジン最小トルクの状態で、オルタ負荷トルクを増大させることにより、燃料噴射状態のまま負トルクの制御範囲を拡大している。また、負トルクの状態でアクセル開度を大きくし、燃料カット状態のまま正トルク側へ制御範囲を拡大する際には、オルタ負荷トルクを減少することにより、正トルク側へ制御範囲を拡大している。さらに、燃料カットは、負トルク方向への制御時に、エンジン最小トルクの状態でオルタ負荷トルクを増大させる制御範囲と、正トルク方向への制御時に、燃料カットの状態でオルタ負荷を減少させる制御範囲との2つの制御範囲が交差する負荷条件で行っている。これにより、アクセル開度が所定の開度よりも小さく、エンジン軸トルクが負トルクの状態の場合において燃料カットを行う場合に、エンジン軸トルクの方向に関わらずオルタ負荷トルクを用いてエンジン軸トルクの制御を行うことができるので、より確実に、負トルクの連続コントロールを行うことができる。この結果、減速度が変化する方向に関わらず減速度をスムーズに変化させることができ、より適切に運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、負荷調節部として設けられるオルタ負荷トルク調節部50は、オルタネータ20の発電量を調節することにより、エンジン負荷を調節するので、より確実に、燃料カットを行うことによって発生する減速度の急激な変化を抑制することができる。つまり、オルタネータ20は、エンジン10で発生するトルクによって発電可能に設けられているが、オルタネータ20で発電量を調節する場合には、オルタ負荷トルク調節部50からレギュレータ21に対して制御指令を送信した直後に、発電量を変化させることができる。このため、オルタネータ20での発電量を調節することによりエンジン負荷を変化させる場合には、発電量を調節する制御指令の送信後に、即座に発電量を変化させると共にエンジン負荷を変化させることができる。従って、燃料カット時にエンジン負荷を調節する場合に、高いレスポンスで調節することができ、より確実に、燃料カットを行うことによって発生する減速度の急激な変化を抑制することができる。この結果、より適切に運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、燃料の供給時に負トルクを増大させて減速度を大きくする場合には、燃料カットの前にオルタ負荷トルクを増大させ、燃料カットと共にオルタ負荷トルクを減少させている。このため、オルタネータ20が大きな発電量で作動する期間を短くすることができ、オルタネータ20で発電する発電量に余裕を持たせることができる。これにより、バッテリの充電状態を示すバッテリSOC(State of Charge)に対するオルタネータ20の作動限界を緩和することができ、バッテリSOCに対して適切な発電量でオルタネータ20を作動させることができる範囲を大きくすることができる。この結果、バッテリの充電状態を適切な状態に維持しつつ、運転者が要求する減速度を適切に実現することができる。
また、燃料カットは、燃料噴射量が最小噴射量になり、エンジン10の運転状態がアイドル運転の場合に行い、その際の減速度の段差をオルタ負荷トルクで抑制しているので、減速度の急激な変化を抑制しつつ、連続して負トルクの制御を行うことができる。つまり、アイドル運転の状態は、エンジン10の運転を維持できる最小トルクでの運転状態なので、このアイドル運転で燃料カットを行い、負トルクを大きくした場合には、その後は再びエンジン10で発生させる出力を大きくするまでは、燃料を噴射する機会が無くなる。このため、アイドル運転の状態で燃料カットを行うことにより、その後の負トルクの制御はオルタ負荷トルクのみで行うことになるので、トルクの段差を発生させることなく、連続して負トルクの制御を行うことができる。この結果、より確実に、運転者が要求する減速度を適切に実現することができる。
[実施形態2]
実施形態2に係る駆動力制御装置2は、実施形態1に係る駆動力制御装置2と略同様の構成であるが、負トルクの制御を行う際に、燃料噴射量とオルタ負荷トルクとの制御に加えて、スロットル開度の制御も含めて協調制御を行う点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
本実施形態2に係る駆動力制御装置2は、実施形態1に係る駆動力制御装置2と同様な構成で設けられており、車両1の走行時に動力源としてエンジン10を有しており、エンジン10はスロットルバルブ15の開度や燃料インジェクタ16から噴射する燃料の噴射量を制御することにより、エンジン10で発生する出力を制御可能に設けられている(図1参照)。また、このように設けられるエンジン10には、オルタネータ20が備えられており、オルタネータ20での発電量を制御することにより、オルタネータ20の駆動に使用されるエンジン10のトルクを変化させることができ、エンジン10から出力されるトルクを制御可能に設けられている。
また、この車両1には、車両1の各部を制御するECU40が備えられており、このECU40が有する処理部41は、アクセル開度取得部42と、エンジン制御部44と、変速制御部48と、オルタ負荷トルク調節部50と、燃料カットフラグ切替部51と、アクセル開度領域判定部52と、エンジン軸トルク制御部53と、を有している。このうち、エンジン制御部44は、スロットルバルブ制御部45と、燃料噴射量制御部46と、を有している(図2参照)。本実施形態2に係る駆動力制御装置2では、ECU40に備えられる各部のうち、オルタ負荷トルク調節部50のみでなくスロットルバルブ制御部45も、エンジン負荷を調節することができる負荷調節部として設けられている。負荷調節部として設けられるスロットルバルブ制御部45は、エンジン10の吸気量を調節することにより、エンジン負荷を調節することが可能になっている。
この実施形態2に係る駆動力制御装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の走行時には、運転者が操作するアクセルペダル35のアクセル開度をアクセル開度センサ36で検出し、この検出結果に応じてECU40で各部を制御することにより、運転者の要求に応じた駆動力を発生させる。
また、本実施形態2に係る駆動力制御装置2では、実施形態1に係る駆動力制御装置2と同様に、アクセル開度が所定の開度よりも小さい場合には、燃料カットとオルタ負荷トルクとの協調制御を行うが、本実施形態2に係る駆動力制御装置2では、さらにスロットル開度の制御も含めて協調制御を行う。
図5は、実施形態2に係る駆動力制御装置で負トルクの制御を行う場合における説明図である。本実施形態2に係る駆動力制御装置2では、実施形態1に係る駆動力制御装置2と同様にアクセル開度が小さくなるに従って燃料噴射量を低減するが、このようにアクセル開度を小さくした場合には、スロットル開度も小さくする。つまり、スロットル開度は、ECU40の処理部41が有するスロットルバルブ制御部45でスロットルバルブ15を制御することにより、スロットルバルブ15の開度であるスロット開度を制御するが、スロットルバルブ制御部45でスロットルバルブ15を制御する際には、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度に基づいて制御する。即ち、スロットルバルブ制御部45は、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度が大きくなるに従ってスロットル開度を大きくし、アクセル開度取得部42で取得したアクセル開度が小さくなるに従ってスロットル開度を小さくするように、スロットルバルブ15を制御する。
また、アクセル開度を変化させた場合には、燃料インジェクタ16を制御することにより、燃料噴射量もアクセル開度に応じて変化させるため、エンジン軸トルクは、これらのようにアクセル開度に基づいて制御するスロットル開度と燃料噴射量とに応じて変化する。エンジン軸トルクは、このようにスロットル開度と燃料噴射量とに応じて変化するが、アクセル開度を小さくすることにより燃料噴射量が最小噴射量になった場合には、燃料噴射量は最小噴射量で維持し、オルタ負荷トルク調節部50でオルタネータ20の発電量を調節することにより、オルタ負荷トルクを増加させる(領域a)。
また、このように燃料噴射量を最小噴射量で維持しつつオルタ負荷トルクを増加させる場合には、スロットル開度は全閉にする。なお、吸気通路12は、スロットルバルブ15を全閉にした場合にも所定の空気を流すことができ、詳しくは、エンジン10のアイドル運転時には、アイドル回転の維持が可能な空気をエンジン10に吸入させる必要があるため、スロットル開度を全閉にした場合でも、アイドル回転を維持できる程度の空気を流すことができる。燃料噴射量が最小噴射量になるまでアクセル開度を小さくした場合には、燃料噴射量を最小噴射量にすると共に、このようにスロットル開度を全閉にする。
このように、燃料噴射量を最小噴射量にし、スロットル開度を全閉にした状態で、さらに、アクセル開度を小さくした場合には、燃料噴射量とスロットル開度とは維持したまま、オルタ負荷トルクを増加させる。これにより、燃料噴射量を最小噴射量で維持し、スロットル開度を全閉で維持した状態で、エンジン10から出力されるエンジン軸トルクを実質的に小さくし、運転者の要求減速度を実現する。
オルタ負荷トルクを大きくすることによりエンジン軸トルクが、燃料カットを行うと共にオルタ負荷トルクをゼロにし、さらに、スロットル開度を所定の大きさまで開いた場合における大きさまで小さくなったら(領域b)、燃料カットを行うと共にオルタ負荷トルクをゼロにし、さらにスロットル開度を大きくする(領域c)。つまり、スロットル開度を大きくした場合、吸気量が増加して吸気抵抗が小さくなるため、オルタ負荷トルクをゼロにした場合と同様に、エンジン軸トルクが大きくなる。このため、オルタ負荷トルクをゼロにすると共にスロットル開度を大きくすることによるエンジン軸トルクの増加分が、燃料カットを行うことによるエンジン軸トルクの低下分と等しくなったら、燃料カットを行い、且つ、オルタ負荷トルクをゼロにすると共にスロットル開度を大きくする。
換言すると、エンジン10への燃料の供給中における車両1の減速時の燃料カットは、オルタ負荷トルク調節部50とスロットルバルブ制御部45とによってエンジン負荷を低下させることによる減速度の低下分と、燃料カットを行うことによる減速度の増加分と、が等しくなる状態になったら行う。このように、アクセル開度が全閉以外の場合でも、これらの運転状態になるアクセル開度の場合には、燃料カットを行う。これにより、運転者の要求減速度を実現できるエンジン軸トルクを、オルタネータ20の負荷をエンジン10に付与しない状態で発生させる。
このように、車両1の減速時における燃料カット時に、燃料カットを行うと共にオルタ負荷トルク調節部50によってオルタ負荷トルクを小さくし、且つ、スロットルバルブ制御部45によってスロットル開度を大きくすることによりエンジン負荷を低下させた後に、さらに減速度を大きくする場合には、スロットルバルブ制御部45によってスロットル開度を小さくし、エンジン負荷を増大させる。つまり、燃料カットを行った状態でアクセル開度を小さくし、要求加速度が小さくなった場合、或いは、要求減速度が大きくなった場合には、オルタ負荷トルクをゼロにする際に大きくしたスロットル開度を、アクセル開度が小さくなるに従って小さくする。スロットル開度を小さくした場合、エンジン10で吸気をする際における吸気量が低下して吸気抵抗が増加するため、エンジン10の回転時における抵抗であるフリクションが大きくなる。このため、エンジン軸トルクは、大きくなったエンジン10のフリクションにより消費され、エンジン10から実質的に出力されるエンジン軸トルクは、スロットル開度が小さくなるに従って小さくなる。これにより、アクセル開度を小さくすることにより大きくなった要求減速度を実現できる。
このように、燃料カットを行い、且つ、オルタ負荷トルクをゼロに維持した状態で、アクセル開度が小さくなるに従ってスロットル開度を小さくした際に、スロットル開度が全閉になった場合には(領域d)、燃料カットとスロットル開度の全閉を維持した状態で、オルタ負荷トルクを増加させる。これにより、オルタネータ20からエンジン10に対して付与する負荷を増加し、エンジン軸トルクを低下させる。また、運転者が、さらにアクセル開度を小さくし、このアクセル開度が小さくなるに従ってオルタ負荷トルクを大きくする場合には、アクセル開度を全閉にした際に、オルタ負荷トルクを最大にする(領域e)。
つまり、アクセルペダル35を全閉にしてアクセル開度をゼロにした場合には、燃料を燃焼させることにより発生するトルクを、燃料カットを行うことによってゼロにし、また、スロットル開度を全閉にしてエンジン10の吸気抵抗を大きくした状態で、オルタ負荷トルクを最大にする。これにより、エンジン10のフリクションを大きくし、さらに、オルタネータ20からエンジン10への負荷を最大することにより、エンジン軸トルクを最も小さくし、アクセル開度を全閉にした場合における負トルクを最大にする。
以上の駆動力制御装置2は、車両1の減速時に燃料カットを行う場合において、燃料カットを行うことによる減速度の増加分に、エンジン負荷を低下させることによる減速度の低下分を合わせる際に、スロットル開度を調節し、エンジン10の吸気量を調節することも含めてエンジン負荷を調節している。これにより、エンジン負荷を調節する際における制御範囲が広くなったり、オルタネータ20の制御の分担を減少させたりすることができるので、エンジン負荷を調節する制御が可能な状態である期間を長くすることができ、燃料カットを行った際に減速度が急激に変化することを、より確実に抑制することができる。この結果、運転者の要求減速度が変化する場合における実際の減速度を、アクセル開度に応じてより確実にスムーズに変化させることができ、運転者が要求する減速度を、より適切に実現することができる。
[実施形態3]
実施形態3に係る駆動力制御装置2は、実施形態1に係る駆動力制御装置2と略同様の構成であるが、負トルクの制御を行う際に、燃料噴射量とオルタ負荷トルクとの制御に加えて、気筒休止の制御も含めて協調制御を行う点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
本実施形態3に係る駆動力制御装置2は、実施形態1に係る駆動力制御装置2と同様な構成で設けられており、車両1の走行時の動力源であるエンジン10は、エンジン10で発生するトルクにより駆動するオルタネータ20を備えている。また、この車両1には、車両1の各部を制御するECU40が備えられており、ECU40は、例えば、アクセル開度センサ36で検出するアクセル開度の検出結果に応じて、エンジン10等の車両1の各部を制御する。
図6は、実施形態3に係る駆動力制御装置の要部構成図である。また、本実施形態3に係る駆動力制御装置2を備える車両1に搭載されるエンジン10には、車両1の走行中に燃料カットを行った場合に、各気筒の吸排気バルブ(図示省略)を閉じた状態で停止させる制御である気筒休止の制御が可能な気筒休止機構71が設けられている。この気筒休止機構71は、エンジン10の気筒休止の制御を行うことにより、燃料カットを行った場合におけるエンジン10のフリクションを低下させることができるフリクション低下手段として設けられている。
このように設けられる気筒休止機構71は、ECU40に接続され、ECU40によって制御可能に設けられている。このECU40が有する処理部41は、アクセル開度取得部42と、エンジン制御部44と、変速制御部48と、オルタ負荷トルク調節部50と、燃料カットフラグ切替部51と、アクセル開度領域判定部52と、エンジン軸トルク制御部53と、を有している。このうち、エンジン制御部44は、スロットルバルブ制御部45と、燃料噴射量制御部46と、を有しており、さらに、気筒休止機構71を制御することによりエンジン10の気筒休止の制御が可能な気筒休止制御部75を有している。
本実施形態3に係る駆動力制御装置2では、ECU40に備えられる各部のうち、オルタ負荷トルク調節部50のみでなく、気筒休止制御部75も、エンジン負荷を調節することができる負荷調節部として設けられている。負荷調節部として設けられる気筒休止制御部75は、気筒休止機構71を制御し、エンジン10の気筒休止の制御を行うことにより、エンジン負荷を調節することが可能になっている。
この実施形態3に係る駆動力制御装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態3に係る駆動力制御装置2では、エンジン10に気筒休止機構71が設けられているが、この気筒休止機構71による気筒休止の制御について説明する。
まず、エンジン10の通常の運転時について説明すると、エンジン10の運転時には、燃焼室(図示省略)で燃料を燃焼させる際の燃焼エネルギによって動力を発生させるが、燃料の燃焼に用いる空気は、断面積が小さい吸気通路12から空気を吸入する。このため、エンジン10の運転時には、燃料の燃焼によって動力を発生させるのと同時に、断面積が小さい吸気通路12から空気を吸入することに起因する吸気損失が発生する。この吸気損失は、エンジン10の運転時に回転をするクランクシャフトの回転抵抗であるフリクションとして作用するため、吸気損失が発生している場合には、回転しているクランクシャフトを停止させようとする方向のトルクであるエンジンフリクショントルクが発生する。
このように、エンジン10の運転時には、吸気損失に起因するエンジンフリクショントルクが発生するが、燃料カット時に気筒休止機構71によって気筒休止の制御を行う場合には、気筒休止制御部75で気筒休止機構71を制御することにより、各気筒の吸排気バルブを閉弁させた状態にする。これにより、吸気が行われなくなるため、吸気損失は発生しなくなり、吸気損失に起因するエンジンフリクショントルクは発生しなくなる。
また、このように行う気筒休止は、車両1の走行時に燃料カットを行う際における所定の条件が揃った際に行うため、クランクシャフトは回転をし続けている。このため、気筒休止を行っている状態から復帰する場合には、吸排気バルブを運転状態に応じて開閉し、燃料カットをOFFにして燃料インジェクタ16から燃料を噴射することにより、エンジン10は再始動する。
本実施形態3に係る駆動力制御装置2では、このように気筒休止の制御を行うことが可能に設けられているが、この実施形態3に係る駆動力制御装置2で、実施形態1に係る駆動力制御装置2と同様に、燃料カットとオルタ負荷トルクとの協調制御を行う場合には、気筒休止の制御も含めて協調制御を行う。
図7は、実施形態3に係る駆動力制御装置で負トルクの制御を行う場合における説明図である。本実施形態3に係る駆動力制御装置2では、実施形態1に係る駆動力制御装置2と同様にアクセル開度が小さくなるに従って燃料噴射量を低減するが、このように、燃料を噴射する期間では、気筒休止の制御は行わず、通常の運転制御を行う。即ち、気筒休止制御部75は、気筒休止機構71に対して気筒休止をする制御を行わずに、通常の運転制御を行う。この場合、吸気損失に起因するエンジンフリクショントルクが発生する。このように、運転制御を行っている状態で、運転者がアクセルペダル35を操作してアクセル開度を小さくした場合には、燃料噴射量を少なくすることにより、エンジン軸トルクを低下させる。
燃料噴射量を少なくすることによりエンジン軸トルクを小さくし、エンジン軸トルクが、燃料カットを行い、且つ、気筒休止を行う場合における大きさまで小さくなったら(領域a)、燃料カットを行うと共に気筒休止の制御を実行する(領域b)。つまり、気筒休止の制御を行った場合、吸気損失が少なくなるため、エンジンフリクショントルクが小さくなり、これに伴い、エンジン10からの実質的な出力であるエンジン軸トルクが大きくなる。このため、気筒休止を行うことによるエンジン軸トルクの増加分が、燃料カットを行うことによるエンジン軸トルクの低下分と等しくなったら、燃料カットを行い、且つ、気筒休止の制御を実行する。即ち、この場合には、燃料噴射量が最小噴射量よりも多い状態であっても、気筒休止制御部75で気筒休止機構71を作動させて気筒休止を実行すると共に、燃料カットフラグをONにして燃料カットを行い、燃料の噴射を停止する。
換言すると、エンジン10への燃料の供給中における車両1の減速時の燃料カットは、気筒休止制御部75によって気筒休止機構71を作動させてエンジン負荷を低下させることによる減速度の低下分と、燃料カットを行うことによる減速度の増加分と、が等しくなる状態になったら行う。つまり、実施形態1に係る駆動力制御装置2では、エンジン10の運転状態が、燃料噴射時における最小エンジントルクになったら燃料カットを行うが、本実施形態3に係る駆動力制御装置2では、気筒休止時のエンジンフリクショントルクの変化量に基づいて、燃料カットを行う。即ち、気筒休止を行うことにより低下するエンジンフリクショントルクの変化量が、燃料噴射時における最小エンジントルクよりも大きい場合には、燃料カット時にこのエンジンフリクショントルクの変化量と同じ大きさのトルクを発生させる運転状態を、アイドル運転であると判定し、燃料カットを行う。このように、アクセル開度が全閉以外の場合でも、これらの運転状態になるアクセル開度の場合には、燃料カットを行う。これにより、運転者の要求減速度を実現できるエンジン軸トルクを、気筒休止の制御を実行して気筒休止機構71を作動させた状態で発生させる。
車両1の減速時における燃料カット時に、燃料カットを行うと共に気筒休止制御部75で気筒休止機構71を作動させて気筒休止の制御を実行してエンジンフリクショントルクを小さくすることによりエンジン負荷を低下させた後に、さらに減速度を大きくする場合には、オルタ負荷トルク調節部50によってオルタ負荷トルクを大きくし、エンジン負荷を増大させる(領域c)。つまり、燃料カットを行った状態でアクセル開度を小さくし、要求加速度が小さくなった場合、或いは、要求減速度が大きくなった場合には、アクセル開度が小さくなるに従って、オルタ負荷トルクを大きくする。即ち、本実施形態3に係る駆動力制御装置2では、要求減速度が大きくなることにより燃料カットを行う場合には、燃料カットと共に気筒休止の制御を行うことによりエンジン軸トルクを小さくするため、燃料カットの直後は、オルタ負荷トルクは通常負荷になっている。このため、要求減速度がさらに大きくなった場合には、オルタ負荷トルクを、通常負荷の状態から大きくする。これにより、エンジン軸トルクは、オルタ負荷トルクが大きくなるに従って小さくなるので、大きくなった要求減速度を実現できる。
このように、オルタ負荷トルクを大きくすることによりエンジン軸トルクを小さくした場合に、さらに、エンジン軸トルクが、オルタ負荷トルクを小さくすることによって気筒休止機構71による気筒休止を停止させた場合における大きさまで小さくなったら、気筒休止を停止すると共にオルタ負荷トルクを小さくする(領域d)。つまり、気筒休止の制御を停止した場合、吸気損失が発生するため、エンジンフリクショントルクが発生し、これに伴い、エンジン軸トルクが小さくなる。反対に、オルタ負荷トルクを小さくした場合には、オルタネータ20からエンジン10への負荷が小さくなるため、エンジン軸トルクは大きくなる。このため、オルタ負荷トルクを小さくすることによるエンジン軸トルクの増加分が、気筒休止を停止することによるエンジン軸トルクの低下分と等しくなったら、気筒休止を停止し、且つ、オルタ負荷トルクを低下させる。換言すると、気筒休止の停止は、オルタ負荷トルク調節部50によってエンジン負荷を低下させることによる減速度の低下分と、気筒休止制御部75で気筒休止を停止することによる減速度の増加分と、が等しくなる状態になったら行う。これにより、運転者の要求減速度を実現できるエンジン軸トルクを、オルタ負荷トルクを低下させた状態で発生させる。
大きくなった運転者の要求減速度を実現できるエンジン軸トルクを、燃料カットを行い、且つ、気筒休止を停止して発生させている状態で、さらに、アクセル開度が小さくなった場合には、オルタ負荷トルクを大きくしてエンジン10に付与する負荷を大きくすることにより、エンジン軸トルクを小さくする(領域e)。また、このようにアクセル開度が小さくなるに従ってオルタ負荷トルクを大きくする場合には、アクセル開度を全閉にした際に、オルタ負荷トルクを最大にする(領域f)。
つまり、アクセルペダル35を全閉にしてアクセル開度をゼロにした場合には、燃料を燃焼させることにより発生するトルクを、燃料カットを行うことによってゼロにし、また、気筒休止を停止して吸気損失によるエンジンフリクショントルクを発生させた状態で、オルタ負荷トルクを最大にする。これにより、エンジン10のフリクションを大きくし、さらに、オルタネータ20からエンジン10への負荷を最大にすることにより、エンジン軸トルクを最も小さくし、アクセル開度を全閉にした場合における負トルクを最大にする。
以上の駆動力制御装置2は、車両1の減速時に燃料カットを行う場合において、燃料カットを行うことによる減速度の増加分に、エンジン負荷を低下させることによる減速度の低下分を合わせる際に、気筒休止制御部75によってエンジン10の気筒休止の制御を行うことにより、エンジン負荷を調節している。気筒休止機構71を作動させてエンジン10の気筒休止を行った場合には、エンジン負荷を低下させることができるが、この気筒休止によるエンジン負荷の低下量は、オルタネータ20を制御することによるエンジン負荷の低下量よりも大きくすることができる。このため、車両1の減速時にエンジン10の気筒休止を行ってエンジン負荷を低下させることにより燃料カットを行う場合には、オルタネータ20を制御することによってエンジン負荷を低下させる場合よりも、早いタイミングで燃料カットを行うことができる。
つまり、エンジン10の気筒休止を行った場合には、エンジン負荷を大幅に低下させることができるので、エンジン10の気筒休止を行った場合における減速度の低下量は、燃料噴射量が最小噴射量である場合に燃料カットを行った際の減速度の増加量よりも大きくなる。従って、車両1の減速時にエンジン10の気筒休止を行ってエンジン負荷を低下させる場合には、燃料噴射量が最小噴射量になるタイミングよりも早い時期に、気筒休止を行うことによる減速度の低下分を、燃料カットを行うことによる減速度の増加分と等しくすることができる。これにより、車両1の減速時には、より早い時期に燃料カットを行うことができるため、燃料消費量を抑えることができ、このように早い時期に燃料カットを行いつつ、気筒休止の制御を行うことにより、減速度が急激に変化することを抑制することができる。この結果、より適切に運転者が要求する減速度を実現することができると共に、燃費の向上を図ることができる。
また、燃料カットを行うことによって負トルクの制御を行って減速度を増加させている状態で、気筒休止を作動状態から停止をすると共に、オルタ負荷トルクを急減させることにより、負トルクを増大させて減速度を大きくしている。これにより、負トルクの制御範囲を、拡大することができ、運転者が大きな減速度を要求している場合でも、要求減速度を実現することができる。また、このように、気筒休止を作動状態から停止すると共に、オルタ負荷トルクを急減させることによって負トルクを増大させているので、負トルクを増大させて減速度を大きくする場合における減速度の急激な変化を抑制でき、減速度をスムーズに大きくすることができる。この結果、より適切に、運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、燃料の供給時に負トルクを増大させて減速度を大きくする場合には、燃料カットと共に気筒休止の制御を開始し、気筒休止の停止を行う場合には、気筒休止の停止と共にオルタ負荷トルクを低減させている。これにより、オルタネータ20で発電する発電量に、より大きな余裕を持たせることができ、バッテリSOCに対するオルタネータ20の作動限界を、より緩和することができる。従って、バッテリSOCに対して適切な発電量でオルタネータ20を作動させることができる範囲を、より確実に大きくすることができる。この結果、より確実に、バッテリの充電状態を適切な状態に維持しつつ、運転者が要求する減速度を適切に実現することができる。
なお、上述した駆動力制御装置2は、燃料カットを行った状態から復帰する場合には、燃料カット時と同様に燃料カットの状態とオルタ負荷トルクとの協調制御を行い、燃料カット時と同じアクセル開度で燃料カットから復帰しているが、燃料カットの状態から復帰する場合には、オルタ負荷トルクの状態に応じて制御を適宜変更してもよい。図8は、燃料カットから復帰するアクセル開度を固定して燃料カットから復帰する際における説明図である。燃料カットを行った状態で、アクセル開度を変更した場合には、オルタ負荷トルクを調節することにより、エンジン軸トルクをアクセル開度に応じた大きさにするが、オルタ負荷トルクの調節量には上限値があるため、オルタ負荷トルクによってエンジン軸トルクを調節する場合、適切な大きさに調節することができない場合がある。例えば、アクセル開度に対して燃料カットを行う領域である燃料カット領域Acutでは、アクセル開度が大きくなるに従ってオルタ負荷トルクが小さくなるようにオルタ負荷トルク調節部50でオルタネータ20の発電量を調節することにより、図8に示すように、アクセル開度が大きくなるに従って、エンジン軸トルクを大きくする。
このように、アクセル開度が大きくなるに従って、エンジン軸トルクが大きくなるように制御している場合に、アクセル開度及びエンジン軸トルクが、アクセル開度とエンジン軸トルクとにより示される制御状態における、燃料カットからの復帰タイミングである燃料カット復帰点Pcutを超えた場合には、燃料インジェクタ16から燃料を噴射する。つまり、アクセル開度とエンジン軸トルクとの制御状態が、燃料カット復帰点Pcutを超え、燃料を噴射することによりエンジン軸トルクを調節する制御である燃料供給制御を行う領域である燃料供給領域Afuelに入った場合には、オルタ負荷トルクの調節のみでなく、燃料噴射量も調節することにより、エンジン軸トルクの制御を行う。
燃料供給領域Afuelでは、このように燃料噴射量とオルタ負荷トルクとを調節することによりエンジン軸トルクを発生させるため、燃料供給領域Afuelでエンジン軸トルクを制御する際におけるマップは、オルタ負荷トルクを最大トルクにしてエンジン軸トルクを発生させる際における制御量である最大トルク制御可能量Tmaxを基準にして設定されている。燃料供給領域Afuelでは、このように設定されたマップに沿ってアクセル開度に対するエンジン軸トルクを制御するが、オルタネータ20の発電量は、バッテリSOC等により作動状態が制限される場合がある。例えば、バッテリの充電量が少ない場合には、オルタネータ20の発電量を確保するため、エンジン軸トルクを増大させるためにオルタ負荷トルクを低下させる場合でも、所望の大きさまでオルタ負荷トルクを低下させることができない場合がある。
このような場合、アクセル開度に対する実際のエンジン軸トルクは、マップに沿って発生させることができず、アクセル開度が、マップ上の最大トルク制御可能量Tmaxにおける開度以上になって燃料噴射量が増加するまでは、燃料噴射量と現在のオルタ負荷トルクによって発生させることができるエンジン軸トルクの制御量である現在トルク制御可能量Tprsを上限として、エンジン軸トルクを制御することになる。この場合、アクセル開度を大きくした場合でも、エンジン軸トルクは現在トルク制御可能量Tprs以上の大きさにはならない。
このため、アクセル開度を大きくすることによりエンジン軸トルクが現在トルク制御可能量Tprsの大きさになり、アクセル開度が、最大トルク制御可能量Tmaxにおける開度以上になって燃料噴射量が増加するまでは、エンジン軸トルクが大きくならなくなる。このように、オルタ負荷トルクの制御範囲が制限された場合には、アクセル開度を大きくしてもエンジン軸トルクが大きくならず、エンジン軸トルクがアクセル操作に対して無反応になる領域である無反応領域Aursが発生する場合がある。
図9は、燃料カットから復帰するアクセル開度を可変にして燃料カットから復帰する際における説明図である。燃料カット復帰点Pcutを固定した場合には、オルタ負荷トルクの制御範囲が制限された場合に、このように無反応領域Aursが発生し、アクセル開度を大きくしてもエンジン軸トルクが大きくならない状態が発生する場合があるが、このような状態を抑制するために、上述した駆動力制御装置2において燃料カット復帰点Pcutを可変にしてもよい。この場合、例えば、図9に示すように、現在トルク制御可能量Tprsが最大トルク制御可能量Tmax(図8参照)よりも小さい場合に、燃料カット復帰点Pcutを、予め設定されている燃料カット復帰点Pcutよりも、アクセル開度が閉じられている側に変更してもよい。この場合、エンジン軸トルク制御部53で、オルタ負荷トルクの制御範囲を検出し、この検出結果に基づいて、オルタ負荷トルクを用いたトルク制御可能量を判断することにより、燃料カットフラグをONからOFFに切り替えるアクセル開度を、予め設定されているアクセル開度よりも小さくする。
これにより、燃料カットフラグ切替部51は、アクセル開度を大きくしている際における早い段階で、燃料カットフラグをONからOFFに切り替える。このため、燃料カット時にアクセル開度を大きくした際に、予め設定されているマップよりも早い段階、即ち、小さいアクセル開度で、燃料カット領域Acutから燃料供給領域Afuelに移行し、燃料インジェクタ16から燃料を噴射する制御が行われる。換言すると、現在のオルタ負荷トルクの制御範囲が、マップの設定に用いたオルタ負荷トルクの制御範囲と異なることに起因して、アクセル開度に対してエンジン軸トルクを大きくすることができない場合には、早めに燃料噴射を開始することにより、オルタ負荷トルクの制御によって実現できないエンジン軸トルクを補う。従って、現在のオルタネータ20を許容レベル外の目標値を設定することで、アクセル操作に対して無反応になることを抑制することができる。この結果、より確実に、運転者が要求する減速度を実現することができる。
また、上述した実施形態1に係る駆動力制御装置2では、エンジン負荷を調節する手段してオルタネータ20を用いており、実施形態2に係る駆動力制御装置2では、エンジン負荷を調節する手段してオルタネータ20とスロットルバルブ15とを併用しており、実施形態3に係る駆動力制御装置2では、エンジン負荷を調節する手段してオルタネータ20と気筒休止機構71とを併用しているが、エンジン負荷を調節する手段は、これら以外のものを用いてもよい。エンジン負荷を調節する手段としては、例えば、車両1に搭載され、エンジン10からの出力を用いて作動するコンプレッサ(図示省略)を有するエアコン(図示省略)を用いたり、自動変速機30の変速比を適宜変速することにより、自動変速機30を、エンジン負荷を調節する手段として用いたりしてもよい。エンジン負荷を調節する手段は、アクセル開度、即ち要求減速度に応じて制御することにより、エンジン軸トルクを連続的にコントロールすることができ、燃料カットによるトルク段差を抑制することができる手段であれば、その手段や組み合わせは、上述した手段や組み合わせ以外のものであってもよい。