以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。図3は、図1及び図2に示す表示体を斜め方向から観察した場合に表示される画像の例を概略的に示す図である。図1乃至図3では、表示体100の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示体100の主面に垂直な方向をZ方向としている。
図1乃至図3に示す表示体100は、第1部分P1と第2部分P2とを含んでいる。
第1部分P1は、基材10とマスク層20と潜像形成層30と保護層40とを含んでいる。第2部分P2は、基材10とマスク層20と保護層40とを含んでいる。第2部分P2は、第1部分P1と隣り合っている。図1乃至図3には、一例として、第1部分P1と第2部分P2とが互いに隣接している場合を描いている。なお、以下では、潜像形成層30に対してマスク層20側の面を「前面」と呼び、マスク層20に対して潜像形成層30側の面を「背面」と呼ぶこととする。
基材10は、光透過性を有しており、典型的には透明である。この基材10は、例えば、樹脂からなるフィルムである。このフィルムは、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。無延伸フィルムは、例えば、押出し加工又はキャスト加工により作製する。延伸フィルムは、例えば、延伸加工により作製する。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。
基材10の材料としては、例えば、セロハン、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、アクリル樹脂、及びトリアセチルセルロース(TAC)が挙げられる。
基材10は、後述するように、可視域の光を選択反射する性質を有していてもよい。例えば、基材10は、多層干渉膜であってもよい。また、基材10は、省略してもよい。
マスク層20は、基材10の一方の主面上において、正方格子状に規則的に配列した網点状のパターンを形成している。図1乃至図3には、一例として、マスク層20が基材10の背面側に設けられている場合を描いている。
マスク層20は、遮光性を有している。マスク層20の可視域の光に対する全光線透過率は、例えば80%未満であり、典型的には50%未満である。なお、この「全光線透過率」は、日本工業規格JIS K7361−1に準拠した測定値である。
マスク層20は、例えば、光反射性材料を含んでいる。この光反射性材料は、例えば、金属又は合金である。この金属又は合金としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au及びこれらの2以上を含んだ合金が挙げられる。或いは、この光反射性材料として、比較的高い屈折率を有した金属酸化物を用いてもよい。このような金属酸化物としては、例えば、TiO2が挙げられる。なお、これら光反射性材料は、透明樹脂などのバインダ中に分散させて用いてもよい。
マスク層20には、光透過部20Tが設けられている。光透過部20Tの可視域の光に対する全光線透過率は、例えば50%以上であり、典型的には80%以上である。光透過部20Tは、開口であってもよく、光透過性材料からなる部分であってもよい。図1乃至図3には、一例として、光透過部20Tが、網点間に位置した開口である場合を描いている。
潜像形成層30は、マスク層20のうち第1部分P1に含まれるものの背面と向き合っている。即ち、潜像形成層30は、マスク層20の背面のうち一部のみと向き合っている。また、潜像形成層30は、光透過部20Tの少なくとも一部の位置で開口している。図1乃至図3には、一例として、マスク層20の背面に平行な平面への潜像形成層30の正射影が、マスク層20のうち第1部分P1に含まれるものの上記平面への正射影に一致している場合を描いている。
潜像形成層30は、マスク層20とは光学的性質が異なっている。潜像形成層30とマスク層20とは、例えば、白色光に対する反射率及び/又は吸収率が互いに異なっている。潜像形成層30は、典型的には、マスク層20と比較して、白色光に対する反射率がより小さい。また、潜像形成層30は、典型的には、マスク層20と比較して、白色光に対する吸収率がより大きい。
潜像形成層30は、例えば、光吸収性材料を含んでいる。この光吸収性材料は、例えば、染料又は顔料である。これら染料又は顔料は、典型的には、インキの成分として用いる。このインキとしては、例えば、染料又は顔料を紫外線硬化性モノマーに分散させた紫外線硬化型インキ、アマニ油などの乾性油又は大豆油などの半乾性油に溶解又は分散させた酸化重合型インキ、及び、バインダ樹脂と共に有機溶剤に溶解又は分散させた熱乾燥型インキが挙げられる。潜像形成層30は、例えば、黒色の染料又は顔料を含んでいる。なお、ここで、「黒色」は、例えば、表示体100に法線方向から光を照射し、正反射光の強度を測定したときに、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が30%以下であることを意味する。
なお、潜像形成層30は、側面の少なくとも一部がマスク層20と異なった光学的性質を有していればよい。例えば、潜像形成層30は、金属又は合金を含み、その側面の少なくとも一部に黒化処理が施された構成を有していてもよい。例えば、潜像形成層30はCuを含み、その側面の少なくとも一部に酸化銅CuO及び/又は亜酸化銅Cu2Oが露出した構成を有していてもよい。
保護層40は、潜像形成層30に設けられた開口の少なくとも一部を埋めている。図1乃至図3には、一例として、保護層40が、基材10の背面、マスク層20のうち第2部分P2に含まれているものの背面、及び潜像形成層30の背面の全体を被覆していると共に、開口としての光透過部20T及び潜像形成層30に設けられた開口の全体を埋めている場合を描いている。
保護層40は、典型的には、無色且つ透明の樹脂からなる。保護層40は、マスク層20及び潜像形成層30が表示体100の表面に露出する割合を減ずることにより、これら層を保護する役割を担っている。なお、保護層40は、省略してもよい。
図1乃至図3に示す表示体100は、以下に説明するように、前面側からマスク層20の主面に対して垂直に、即ち表示面に対して垂直に観察する第1観察条件において肉眼で観察した場合と、前面側からマスク層20の主面に対して斜めに観察する第2観察条件において肉眼で観察した場合とで、互いに異なった画像を表示する。
この表示体100を第1観察条件において肉眼で観察した場合、マスク層20は、潜像形成層30の全部を隠している。従って、この場合、第1部分P1と第2部分P2との双方は、図1に示すように、マスク層20に基づいた表示色を呈する。即ち、この場合、第1部分P1と第2部分P2とは、表示色が同一な画像を表示する。それゆえ、この場合、第1部分P1と第2部分P2とを互いから判別することはできない。
この表示体100を第2観察条件において肉眼で観察した場合、図3に示すように、第1部分P1に設けられた潜像形成層30を、光透過部20Tを介して視認することが可能となる。即ち、第1部分P1は、マスク層20と潜像形成層30との双方に基づいた表示色を呈する。他方、この場合、第2部分P2は、マスク層20に基づいた表示色を呈する。従って、この場合、第1部分P1と第2部分P2とは、表示色が互いに異なった画像を表示する。それゆえ、この場合、第1部分P1と第2部分P2とを互いから判別することができる。
このように、図1乃至図3に示す表示体100では、観察条件を変化させることにより、第1部分P1に対応したパターンを可視化することができる。即ち、この表示体100では、観察条件を変化させることにより、第1部分P1に対応した潜像を可視化することができる。
このような表示画像の変化は、複写機による複写によっては再現できない。従って、この表示体100は、偽造することが困難である。また、このような表示画像の変化は、肉眼で比較的容易に知覚することができる。従って、この表示体100は、真正品と非真正品との判別が比較的容易である。
マスク層20の厚みは、通常は20μm以下とし、例えば5μm以下とする。マスク層20の厚みは、典型的には1μm以下とする。この厚みが過度に大きいと、第2観察条件において潜像形成層30を視認可能とすることが困難となる場合がある。
潜像形成層30の厚みは、例えば100μm乃至3μmの範囲内とし、典型的には20μm乃至5μmの範囲内とする。この厚みが過度に小さいと、第2観察条件において潜像形成層30を視認可能とすることが困難となる場合がある。この厚みが過度に大きいと、潜像形成層30の形成が困難となる場合がある。
なお、マスク層20及び潜像形成層30の厚みは、表示体100の全体に亘って均一でなくてもよい。例えば、表示体100の第1部分P1を構成している複数の網点の各々において、潜像形成層30の厚みが互いに異なっていてもよい。こうすると、第2観察条件において、階調表示を行うことが可能となる。
表示体100を構成している網点の形状は、任意である。網点の形状は、例えば、角ドット状であってもよく、丸ドット状であってもよく、網ドット状であってもよく、格子ドット状であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
表示体100を構成している網点間の最短距離は、例えば1μm乃至500μmの範囲内とし、典型的には5μm乃至200μmの範囲内とする。網点のサイズは、例えば10乃至1000μmの範囲内とし、典型的には10乃至500μmの範囲内とする。また、表示体100の主面のうち第1部分P1及び第2部分P2に対応した部分に占める網点の面積の比は、例えば1/10乃至9/10の範囲内とし、典型的には1/5乃至3/5の範囲内とする。この比が過度に小さいと、光透過部20Tの面積が過度に大きくなり、潜像形成層30の存在が悟られ易くなる。この比が過度に大きいと、光透過部20Tの面積が過度に小さくなり、第2観察条件において潜像形成層30を視認可能とすることが困難となる場合がある。
図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100には、種々の変形が可能である。
図4は、一変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図4に示す表示体100は、以下の点を除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
第1に、図4に示す表示体100では、マスク層20及び潜像形成層30が基材10の前面側に設けられている。即ち、潜像形成層30は、基材10の前面とマスク層20の背面の少なくとも一部との間に介在している。
第2に、図4に示す表示体100では、保護層40は、基材10の前面及びマスク層20の前面を被覆していると共に、開口としての光透過部20T及び潜像形成層30に設けられた開口の全体を埋めている。
図4に示す表示体100は、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様に、第1観察条件において肉眼で観察した場合と第2観察条件において肉眼で観察した場合とで、互いに異なった画像を表示する。そして、このような表示画像の変化は、複写機による複写によっては再現できない。また、このような表示画像の変化は、肉眼で比較的容易に知覚することができる。即ち、図4に示す表示体100は、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の効果を有している。
なお、図4に示す構成を採用する場合、基材10は、光透過性を有していなくてもよい。例えば、この場合、基材10は、遮光性を有していてもよい。
図5は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図5に示す表示体100は、以下の点を除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
第1に、図5に示す表示体100では、マスク層20が基材10の前面側に設けられ且つ潜像形成層30が基材10の背面側に設けられている。即ち、潜像形成層30は、基材10を間に挟んで、マスク層20の背面の少なくとも一部と向き合っている。
第2に、図5に示す表示体100は、保護層40の代わりに、第1保護層40Aと第2保護層40Bとを備えている。第1保護層40Aは、基材10の前面とマスク層20の側面及び前面とを被覆している。第2保護層40Bは、基材10の背面と潜像形成層30の側面及び背面とを被覆している。これら保護層40A及び40Bは、典型的には、無色且つ透明の樹脂からなる。なお、これら保護層40A及び40Bは、省略してもよい。
図5に示す表示体100は、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様に、第1観察条件において肉眼で観察した場合と第2観察条件において肉眼で観察した場合とで、互いに異なった画像を表示する。即ち、図5に示す表示体100は、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の効果を有している。
加えて、図5に示す表示体100では、マスク層20と潜像形成層30との間に基材10が介在している。従って、図5に示す表示体100では、表示面に対して斜めに観察する第2観察条件において、潜像形成層30の前面を表示に寄与させることができる。よって、潜像形成層30の厚みが比較的小さい場合であっても、上述した表示画像の変化を鮮明に知覚させることが可能となる。
図6は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図7は、図6に示す表示体を斜め方向から観察した場合に表示される画像の例を概略的に示す図である。図6及び図7に示す表示体100は、高さ調節層30Aを更に含んでいることを除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
高さ調節層30Aは、マスク層20のうち第2部分P2に含まれるものの背面と向き合っている。即ち、高さ調節層30Aは、マスク層20のうち潜像形成層30と向き合っていないものの背面の少なくとも一部と向き合っている。また、高さ調節層30Aは、光透過部20Tの少なくとも一部の位置で開口している。図6には、一例として、マスク層20の背面に平行な平面への高さ調節層30Aの正射影が、マスク層20のうち第2部分P2に含まれるものの上記平面への正射影に一致している場合を描いている。
高さ調節層30Aは、潜像形成層30とは異なった光学的性質を有している。高さ調節層30Aは、典型的には、潜像形成層30と比較して、白色光に対する反射率がより大きいか又は白色光に対する透過率がより大きい。高さ調節層30Aは、無色且つ透明であってもよく、有色及び/又は不透明であってもよい。図6及び図7には、一例として、高さ調節層30Aが無色且つ透明である場合を描いている。高さ調節層30Aの厚みは、典型的には、潜像形成層30の厚みと互いに等しい。
図6及び図7に示す表示体100は、図1乃至図5を参照しながら説明した表示体と同様に、第1観察条件と第2観察条件とで、互いに異なった画像を表示する。これについて、以下に説明する。
この表示体100を第1観察条件において肉眼で観察した場合、マスク層20は、潜像形成層30と高さ調節層30Aとの双方の全体を隠している。従って、この場合、図1に示した場合と同様に、第1部分P1と第2部分P2との双方は、マスク層20に起因した表示色を呈する。即ち、この場合、第1部分P1と第2部分P2とは、表示色が同一な画像を表示する。それゆえ、この場合、第1部分P1と第2部分P2とを互いから判別することはできない。
この表示体100を第2観察条件において肉眼で観察した場合、図7に示すように、第1部分P1に設けられた潜像形成層30を、光透過部20Tを介して視認することが可能となる。即ち、この場合、第1部分P1は、マスク層20と潜像形成層30との双方に基づいた表示色を呈する。
加えて、この表示体100を第2観察条件において肉眼で観察した場合、第2部分P2に設けられた高さ調節層30Aも、光透過部20Tを介して視認することが可能となる。但し、高さ調節層30Aが無色且つ透明である場合、この高さ調節層30Aは、典型的には、第2部分P2の表示色に影響を与えない。即ち、高さ調節層30Aが無色且つ透明である場合、第2部分P2は、典型的には、マスク層20に基づいた表示色を呈する。他方、高さ調節層30Aが有色及び/又は不透明である場合、第2部分P2は、マスク層20と高さ調節層30Aとの双方に基づいた表示色を呈する。
高さ調節層30Aと潜像形成層30とは、上述したように、互いに異なった光学的性質を有している。従って、第1部分P1と第2部分P2とは、表示色が互いに異なった画像を表示する。それゆえ、この場合、第1部分P1と第2部分P2とを互いから判別することができる。
このように、図6及び図7に示す表示体100では、観察条件を変化させることにより、第1部分P1に対応したパターンを可視化することができる。即ち、図6及び図7に示す表示体100は、図1乃至図5を参照しながら説明した表示体と同様の効果を有している。
加えて、高さ調節層30Aを設けると、マスク層20及び潜像形成層30に起因した表示体100の表面の凹凸を緩和することが可能となる。即ち、高さ調節層30Aを設けると、表示体100の第1部分P1と第2部分P2との厚みの差を減少させるか又はゼロとすることが可能となる。従って、高さ調節層30Aを設けると、上記の厚みの差に基づいて潜像の存在が悟られる可能性を減ずることが可能となる。
図8は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す平面図である。図9は、図8に示す表示体のIX−IX線に沿った断面図である。図10は、図8及び図9に示す表示体を斜め方向から観察した場合に表示される画像の例を概略的に示す図である。図8乃至図10に示す表示体100は、第2部分P2を含んでいないこと、即ち、潜像形成層30がマスク層20の背面の全部と向き合っていることを除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
この表示体100を第1観察条件において肉眼で観察した場合、マスク層20は、潜像形成層30の全体を隠している。従って、この場合、表示体100は、図8に示すように、第1部分P1に対応した形状を有し且つマスク層20に基づいた表示色を呈する画像を表示する。
この表示体100を第2観察条件において肉眼で観察した場合、図10に示すように、潜像形成層30を、光透過部20Tを介して視認することが可能となる。即ち、この場合、表示体100は、第1部分P1に対応した形状を有し且つマスク層20と潜像形成層30との双方に基づいた表示色を呈する画像を表示する。
このように、図8乃至図10に示す表示体100は、第1観察条件において肉眼で観察した場合と第2観察条件において肉眼で観察した場合とで、少なくとも部分的に表示色が異なった画像を表示する。
このような表示画像の変化は、複写機による複写によっては再現できない。従って、この表示体100は、偽造することが困難である。また、このような表示画像の変化は、肉眼で比較的容易に知覚することができる。従って、この表示体100は、真正品と非真正品との判別が比較的容易である。
図11は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す平面図である。図12は、図11に示す表示体のXII−XII線に沿った断面図である。図13は、図11及び図12に示す表示体を斜め方向から観察した場合に表示される画像の例を概略的に示す図である。図11乃至図13に示す表示体100は、第2部分P2がマスク層20の代わりに画像形成層30Bを含んでいることを除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
画像形成層30Bは、第2部分P2において、網点状のパターンを形成している。画像形成層30Bは、マスク層20とは、光学的性質が互いに異なっている。画像形成層30Bは、典型的には、潜像形成層30と同一の光学的性質を有している。即ち、画像形成層30Bは、典型的には、潜像形成層30と同一の材料からなる。
この表示体100を第1観察条件において肉眼で観察した場合、マスク層20は、潜像形成層30の全体を隠している。従って、この場合、表示体100の第1部分P1は、マスク層20に基づいた表示色を呈する。他方、第2部分P2には、マスク層20が設けられていない。従って、この場合、表示体100の第2部分P2は、画像形成層30Bに基づいた表示色を呈する。それゆえ、この場合、表示体100は、図11に示すように、第1部分P1と第2部分P2とで、異なる色を表示する。
この表示体100を第2観察条件において肉眼で観察した場合、図13に示すように、潜像形成層30を、光透過部20Tを介して視認することが可能となる。即ち、この場合、第1部分P1は、マスク層20と潜像形成層30との双方に基づいた表示色を呈する。他方、この場合、第2部分P2は、画像形成層30Bに基づいた表示色を呈する。
画像形成層30Bが潜像形成層30と同一の光学的性質を有している場合、この表示体100を第2観察条件において肉眼で観察すると、第1部分P1と第2部分P2とは、互いに類似しているか又は互いに同一の表示色を呈する。それゆえ、この場合、第1観察条件から第2観察条件へと変化させると、第1部分P1と第2部分P2との判別がより困難となる。従って、この場合、観察条件を変化させることにより、例えば、第1部分P1に対応したパターンの視認性を変化させることができる。
なお、画像形成層30Bの厚みは、典型的には、第1部分P1におけるマスク層20と潜像形成層30とを含んだ積層体の厚みに一致させる。こうすると、マスク層20及び潜像形成層30に起因した表示体100の表面の凹凸を緩和することが可能となる。
図14は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図14に示す表示体は、マスク層20の前面側に選択反射層50を更に備えていることを除いては、図6及び図7を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
選択反射層50は、可視域の光を選択反射する層である。選択反射層50は、例えば、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んでいる。選択反射層50は、典型的には、コレステリック液晶を含んでいる。
選択反射層50がコレステリック液晶を含んでいる場合、選択反射層50は、例えば、コレステリック構造を有する化合物を含んだ材料、又は、ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック構造を持たせたものを含んだ材料を用いて製造することができる。コレステリック液晶は、例えば、ネマチック液晶に添加するカイラル剤の量及び種類などを変化させることにより、そのヘリカルピッチ及び偏光面の捩じれ方向を変化させることが可能である。また、液晶分子の両末端に、アクリル基などの重合基を導入することもできる。こうすると、各液晶分子を配向させた後に、その配向を固定することが容易となる。
選択反射層50がコレステリック液晶を含んでいる場合、選択反射層50は、コレステリック液晶からなる層であってもよく、コレステリック液晶顔料を含んだ層であってもよい。
選択反射層50がコレステリック液晶からなる層である場合、選択反射層50における光の散乱を、最小限に抑えることが可能となる。
選択反射層50がコレステリック液晶顔料を含んだ層である場合、選択反射層50は、典型的には、コレステリック液晶の粉末と、透明なバインダとを含んでいる。この場合、例えば、ヘリカルピッチ及び偏光面の捩じれ方向などが互いに異なった複数のコレステリック液晶顔料を用いることにより、選択反射層50の光学特性を微調整することが可能となる。
選択反射層50がコレステリック液晶を含んでいる場合、選択反射層50を照明すると、選択反射層50は、円偏光性の選択反射光を射出し得る。
コレステリック液晶を含んだ選択反射層50は、例えば、以下のようにして形成する。
第1の方法では、まず、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、セロハン及びポリビニルアルコールなどの延伸フィルムを準備する。この延伸フィルムには、ラビング処理を施してもよい。次に、コレステリック液晶の原料を有機溶剤に溶解させた塗工液を準備する。次いで、この塗工液を、上記の延伸フィルム上に塗布する。その後、得られた塗膜を乾燥させる。これにより、延伸フィルム上で、液晶分子を配向させる。そして、この状態で紫外線などのエネルギー線を照射して、液晶分子の配向を固定する。このようにして、コレステリック液晶形成フィルムを得る。
次に、被転写体、例えば基材10の一方の主面に、光透過性を有した接着剤を塗布する。そして、その上に、コレステリック液晶形成フィルムを貼り合わせる。次いで、延伸フィルムのみを剥がす。このようにして、被転写体、例えば基材10の一方の主面上に、コレステリック液晶を含んだ選択反射層50を形成する。
第2の方法では、まず、選択反射層50を形成すべき主面、例えば基材10の一方の主面上に、光配向インキを塗布する。その後、その塗膜を乾燥させ、偏光性の紫外光を照射して、配向膜を形成する。次いで、コレステリック液晶の原料を有機溶剤に溶解させた塗工液を準備し、この塗工液を、上記の配向膜上に塗布する。その後、得られた塗膜を乾燥させ、液晶分子を配向させる。そして、この状態で紫外線などのエネルギー線を照射して、液晶分子の配向を固定する。このようにして、コレステリック液晶を含んだ選択反射層50を得る。なお、この場合、選択反射層50を形成すべき主面と光配向インキからなる配向膜との接着性が不十分である場合には、アンカー層を更に設けてもよい。
なお、上では、配向膜を用いて液晶分子を配向させる方法について説明したが、液晶分子を配向させる方法は、これには限られない。例えば、液晶分子は、電場及び/又は磁場の印加又はせん断応力の印加によって配向させてもよい。
また、上では、紫外線の照射によって液晶分子の配向を固定する方法について説明したが、液晶分子の配向を固定する方法は、これには限られない。例えば、液晶分子の配向は、液晶分子を含んだ層を急冷させることによって固定してもよい。これらの方法のうち、紫外線の照射によって液晶分子の配向を固定する方法がより好ましい。
表示体100の製造コストの観点から、上記の第1及び第2の方法のうち、典型的には、第1の方法を採用する。
なお、コレステリック液晶の原料としては、例えば、エネルギー線硬化性の化合物を用いる。この化合物は、典型的には、分子中に2個以上のエネルギー線硬化性基を備えている。このような化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能性単量体、並びに、ポリウレタンアクリレート、エポキシ樹脂系ポリアクリレート及びアクリルポリオールポリアクリレートなどの多官能性オリゴマーが挙げられる。
単官能性の単量体としては、例えば、アルキル(C1〜C18)(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ(C1〜C10)アルキル(C2〜C4)(メタ)アクリレート、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、及びアルコキシ(C2〜C10)ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
カチオン系の光重合性単量体としては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、及びグリシジルエステル系化合物が挙げられる。また、コレステリック液晶の原料として、3次元架橋性液晶ポリオルガノシロキサンを用いてもよい。
エネルギー線硬化性の化合物を硬化する際に用いる重合開始剤としては、例えば、ラジカル系又はカチオン系の重合開始剤を用いる。
ラジカル系重合開始剤としては、例えば、α−ヒドロキシアセトフェノン系及びα−アミノアセトフェノン系などのアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、α−ジカルボニル系、並びに、α−アシルオキシムエステル系のものが挙げられる。より具体的には、例えば、α−アミノアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及びイソプロピルチオキサントンが挙げられる。また、これら重合開始剤の2以上を併用してもよい。例えば、ベンゾフェノンとN−メチルジエタノールアミンとを併用してもよい。
カチオン系重合開始剤としては、公知の化合物を制限無く使用することができる。このような重合開始剤としては、例えば、アリルヨードニウム塩−α−ヒドリキシアセトフェノン系、及びトリアリルスルホニウム塩系のものが挙げられる。カチオン系重合開始剤は、増感剤及び/又は過酸化物と併用してもよい。この場合、例えば、メタロセン化合物−パーオキサイド併用系、メタロセン化合物−チオキサントン併用系、又はメタロセン化合物−アントラセン併用系を採用することができる。
選択反射層50がパール顔料を含んでいる場合、選択反射層50は、例えば、雲母などの層状物質の粉末、又は、これら層状物質を後述する被覆材料で被覆してなる粉末を含んでいる。或いは、この場合、選択反射層50は、後述する多層干渉膜を粉砕してなる粉末を用いてもよい。選択反射層50がパール顔料を含んでいる場合、選択反射層50は、典型的には、透明なバインダを更に含んでいる。
層状物質を被覆する被覆材料としては、例えば、可視域の光に対して透明であり且つ屈折率が2.0以上である金属酸化物を用いる。このような金属酸化物としては、例えば、Sb2O3、Fe2O3、PbO、ZnSe、CdS、Bi2O3、TiO2、PbCl2、CeO2、Ta2O5、ZnS、ZnO、CdO、Nd2O3、Sb2O3、SiO及びInO3が挙げられる。これら被覆材料は、層状物質を単層で被覆していてもよく、これを2層以上の多層で被覆していてもよい。被覆材料からなる被膜の厚みは、例えば1乃至1000nmの範囲内とし、典型的には20乃至200nmの範囲内とする。
選択反射層50がパール顔料を含んでいる場合、選択反射層50は、典型的には、印刷法又は塗布法により形成する。これら印刷法又は塗布法としては、公知の方法を採用することができる。
選択反射層50が含み得る多層干渉膜は、屈折率が互いに異なった複数の層が積層されてなる。多層干渉膜を構成する各層は、例えば、金属薄膜、セラミクス薄膜又は有機ポリマー薄膜である。多層干渉膜は、例えば、屈折率が互いに異なった層の交互積層体を含んでいる。例えば、セラミクス薄膜又は光透過率を20乃至70%の範囲内とした金属薄膜と、有機ポリマー薄膜とを、所定の厚みで交互に積層させることにより、特定波長の可視光のみを吸収又は反射する多層干渉膜が得られる。多層干渉膜の積層数は、例えば、2乃至9の範囲内とする。
以下に、多層干渉膜を構成する各層に採用可能な材料の例を挙げる。なお、以下において、化学式又は化合物名の後ろに記載した括弧内の数値は、各々の屈折率を表している。
セラミクス:Sb2O3(3.0)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(2.0)、WO3(2.0)、SiO(2.0)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(2.0)、MgO(1.6)、Si2O2(1.5)、MgF2(1.4)、CeF3(1.6)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.6)、Al2O3(1.6)及びGaO(1.7)。
金属:Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si、及びこれらの合金。
有機ポリマー:ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)及びポリスチレン(1.60)。
選択反射層50が多層干渉膜を含んでいる場合、選択反射層50は、膜厚、成膜速度、積層数及び光学膜厚などの制御が可能な公知の方法を用いて形成する。このような方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及び化学気相堆積法(CVD法)が挙げられる。なお、光学膜厚とは、屈折率と膜厚との積である。
或いは、上記の多層干渉膜は、多層同時押し出しにより形成された多層フィルムであってもよい。この多層フィルムは、屈折率が互いに異なった複数のプラスチック薄膜の交互積層体である。これらプラスチック薄膜の各々は、プラスチック材料を含んでいる。これらプラスチック薄膜の各々は、必要に応じて、助剤を含んでいてもよい。
この多層フィルムは、例えば、高屈折率材料からなるプラスチック薄膜と、低屈折率材料からなるプラスチック薄膜との交互積層体を含んでいる。高屈折率材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(1.63)、ポリカーボネート(1.59)、ポリスチレン(1.59)、及びポリエチレンテレフタレート(1.58)が挙げられる。低屈折率材料としては、例えば、ナイロン(1.53)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリメチルペンテン(1.46)、及びフッ素系ポリメチルメタクリレート(1.4)が挙げられる。
選択反射層50は、観察角度の変化により、その色彩が変化する。従って、選択反射層50を設けることにより、表示体100の偽造防止効果を更に高めることができる。
上述した通り、マスク層20は、典型的には、潜像形成層30と比較して白色光に対する反射率がより大きい。従って、この場合、図14に示す表示体100を第1観察条件のもとで肉眼で観察したときには、選択反射層50の背面側に位置したマスク層20の影響により、選択反射層50に起因した光学効果は比較的視認し難い。特には、マスク層20が光反射性材料を含んでいる場合、選択反射層50に起因した光学効果は、第1観察条件のもとでは殆んど視認できない。
他方、潜像形成層30は、典型的には、マスク層20と比較して白色光に対する吸収率がより大きい。従って、この場合、図14に示す表示体100を第2観察条件のもとで肉眼で観察したときには、選択反射層50の背面側に位置した潜像形成層30の影響により、選択反射層50に起因した光学効果は比較的視認し易い。例えば、潜像形成層30が黒色の染料又は顔料を含んでいる場合、第2観察条件のもとで、選択反射層50に起因した光学効果を特に強調することができる。
なお、潜像形成層30は、透明であってもよく、不透明であってもよい。また、潜像形成層30は、赤色及び青色などの黒色以外の色の表示に寄与してもよい。加えて、複数の潜像形成層30を形成し且つこれら潜像形成層30の各々で色などの光学的性質を互いに異ならせることにより、表示体100に、所望の図柄を表示させてもよい。
また、高さ調節層30Aは、典型的には、潜像形成層30と比較して白色光に対する反射率がより大きいか又は白色光に対する透過率がより大きい。従って、この場合、図14に示す表示体100を第2観察条件のもとで肉眼で観察したときには、第2部分P2に対応した領域における選択反射層50に起因した光学効果は、第1部分P1に対応した領域における光学効果と比較して視認し難い。よって、この場合、表示体100は、第1部分P1と第2部分P2とで互いに異なった画像を表示することができる。
このように、表示体100がマスク層20の前面側に位置した選択反射層を更に備え、マスク層20は、潜像形成層30と比較して白色光に対する反射率がより高く、潜像形成層30は、マスク層20と比較して白色光に対する吸収率がより高い場合、観察条件の変化により、選択反射層50に起因した光学効果の視認性を変化させることができる。具体的には、表示体100を正面方向から観察した場合と斜め方向から観察した場合とで、選択反射層50に起因した光学効果の視認性を互いに異ならせることができる。従って、このような構成を採用すると、特に優れた偽造防止効果を達成できる。
なお、この選択反射層50は、基材10として用いてもよい。例えば、多層同時押し出しにより形成された多層フィルムを、基材10として用いてもよい。このような構成を採用した場合も、上述したのと同様の効果を達成することができる。
図15は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図15に示す表示体100は、基材10とマスク層20との間にレリーフ構造形成層60を更に備えていることを除いては、図6及び図7を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
レリーフ構造形成層60は、マスク層20を間に挟んで潜像形成層30と向き合っている。レリーフ構造形成層60とマスク層20との界面は、凹構造及び/又は凸構造を含んでいる。これら凹構造及び/又は凸構造は、例えば、回折格子などのホログラムを形成している。
レリーフ構造形成層60は、光透過性を有しており、典型的には透明である。レリーフ構造形成層60の材料としては、例えば、光透過性を有した樹脂を用いる。例えば、この材料として、ポリカーボネート、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルスチレン共重合体、塩化ビニル、及びポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂を使用する。或いは、この材料として、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、エポキシウレタン、シリコーン、エポキシ樹脂、及びメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を使用してもよい。或いは、この材料として、紫外線又は電子線硬化樹脂を使用してもよい。この紫外線又は電子線硬化樹脂としては、例えば、アクリルモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレート等のオリゴマー、並びに、アクリル、エポキシ及びセルロース系樹脂等の反応性ポリマーが挙げられる。
レリーフ構造形成層60は、マスク層20とは屈折率が異なっている。例えば、レリーフ構造形成層60は樹脂からなり、マスク層20は金属又は合金からなる。
従って、レリーフ構造形成層60とマスク層20との界面は、照明光を反射することができる。それゆえ、この界面は、上記の凹構造及び/又は凸構造に基づいた光学効果を呈し得る。
また、レリーフ構造形成層60と光透過部20T又は保護層40との屈折率の差は、ゼロであるか、又は、レリーフ構造形成層60とマスク層20との屈折率の差と比較してより小さい。従って、レリーフ構造形成層60と光透過部20T又は保護層40との界面は、照明光を反射しないか又は照明光の反射効率が比較的小さい。それゆえ、この界面は、上記の凹構造及び/又は凸構造に基づいた光学効果を呈しないか、又は、レリーフ構造形成層60とマスク層20との界面と比較してより弱い光学効果を呈する。
例えば、上記の凹構造及び/又は凸構造が回折格子を形成している場合、図15に示す表示体100の観察方向を次第に変化させると、レリーフ構造形成層60とマスク層20との界面が射出する回折光の波長が次第に変化する。即ち、この場合、マスク層20に基づいた表示色が次第に変化する。加えて、先に説明した通り、図15に示す表示体100の観察方向を正面方向から次第に変化させると、潜像形成層30が、光透過部20Tを介して視認可能となる。即ち、こうすると、第1部分P1に対応した潜像が可視化される。
このように、図15に示す表示体100は、図6及び図7を参照しながら説明した表示体と比較して、より複雑な光学効果を呈し得る。即ち、この表示体100は、特に優れた偽造防止効果を発揮し得る。
なお、図15には、レリーフ構造形成層60の一方の主面の全体に亘って均一な凹構造及び/又は凸構造が形成されている場合を描いているが、凹構造及び/又は凸構造の構成は、これには限られない。例えば、凹構造及び/又は凸構造は、レリーフ構造形成層60の一方の主面の一部にのみ設けられていてもよい。凹構造及び/又は凸構造がレリーフ構造形成層60の一方の主面の一部にのみ設けられている場合、これら凹構造及び/又は凸構造は、パターン状に形成されていてもよい。或いは、レリーフ構造形成層60は、空間周波数、深さ又は高さ、及び配列方向などが互いに異なった凹構造及び/又は凸構造を各々が含んだ複数の領域を備えていてもよい。これらの場合、更に複雑な光学効果を達成することができる。
図16は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図16に示す表示体100は、潜像形成層30を間に挟んでマスク層20と向き合った隠蔽層70を更に備えていることを除いては、図6及び図7を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
隠蔽層70は、遮光性を有している。従って、隠蔽層70を設けると、マスク層20及び潜像形成層30の存在が悟られ難くなる。それゆえ、この場合、表示体100の偽造防止効果を更に高めることが可能となる。
隠蔽層70は、例えば、インキを塗布又は印刷することにより形成する。隠蔽層70は、例えば、白色又は黒色のインキからなる。或いは、隠蔽層70は、白色及び黒色以外のインキからなっていてもよい。或いは、隠蔽層70は、金属又は合金を含んでいてもよい。この場合、隠蔽層70の前面は、鏡面であってもよく、ホログラムなどが記録されたレリーフ構造を備えていてもよい。
図16に示す表示体100を第1観察条件のもとで観察すると、光透過部20Tを介して、隠蔽層70を視認することができる。従って、例えば、隠蔽層70とマスク層20とを同一の材料で構成すると、光透過部20Tの存在が悟られ難くなる。それゆえ、こうすると、表示体100の偽造防止効果を更に高めることが可能となる。
以上において説明した表示体100は、例えば、以下のようにして製造する。ここでは、一例として、図6及び図7に示す表示体100の製造方法について説明する。
図17乃至図19は、図6及び図7に示す表示体100の製造工程を概略的に示す断面図である。
まず、図17に示すように、基材10の一方の主面上に、マスク層20の材料を含んだ非パターン層20’を形成する。この非パターン層20’は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの真空製膜法、又は、スピンコート法などの塗布法により形成する。
なお、非パターン層20’の厚みは、通常は20μm以下、例えば5μm以下とし、典型的には1μm以下とする。この厚みが過度に大きいと、後述するエッチング処理が困難となることがある。
次に、図18に示すように、非パターン層20’の基材10とは反対側の主面上に、潜像形成層30及び高さ調節層30Aをパターン状に形成する。これら層は、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法及び凹版印刷法などの印刷法により形成する。潜像形成層30及び高さ調節層30Aの厚みを大きくする場合、例えば20μm以上とする場合には、典型的には、凹版印刷法を用いる。或いは、この場合、潜像形成層30及び高さ調節層30Aは、同一箇所に多数回の印刷を繰り返すことにより形成してもよい。潜像形成層30及び高さ調節層30Aの厚みを大きくすると、第2観察条件における潜像形成層30の視認性を向上させることができる。
続いて、図18に示す積層体を、エッチング剤に曝す。即ち、潜像形成層30及び高さ調節層30Aをエッチングマスクとして、非パターン層20’のエッチング処理を行う。このエッチング剤は、潜像形成層30及び高さ調節層30Aのエッチング耐性が、非パターン層20’のエッチング耐性と比較してより高いものを用いる。例えば、非パターン層20’が金属又は合金からなり、潜像形成層30及び高さ調節層30Aが樹脂からなる場合、このエッチング剤としては、酸又はアルカリの水溶液を用いる。
このエッチング処理により、図19に示すように、非パターン層20’のうち潜像形成層30又は高さ調節層30Aによって被覆されていない部分を除去する。これにより、マスク層20を得る。
次いで、必要に応じて、保護層40を形成する。この保護層は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びスクリーン印刷法などの印刷法、又は、バーコート法、グラビア法及びロールコート法などの塗布法を用いて形成する。特に好ましくは、リップコート法及びダイコート法などの、コーティングの際に潜像形成層30に触れずに塗工可能な手法を用いることが好ましい。こうすると、潜像形成層の傷つきを防ぐことが可能となる。或いは、保護層40は、熱可塑性樹脂からなるシートを軟化溶融させて、図19に示す積層体の潜像形成層30側の面に向けて押し込むことにより形成してもよい。この場合、熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンビニル酢酸ビニル共重合体及びポリエチレンが挙げられる。また、この場合、シートの軟化溶融及び押し込みは、例えば、オートクレーブを用いて行う。
以上のようにして、図6及び図7を参照しながら説明した表示体100を得る。
なお、上述した通り、潜像形成層30は、金属又は合金を含み、その側面の少なくとも一部に黒化処理が施された構成を有していてもよい。この場合、例えば、潜像形成層30の材料としてCuを用いる。また、非パターン層20’の材料として、Cuよりイオン化傾向の小さい金属、例えばAlを用いる。そして、エッチング剤としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いる。
こうすると、上記のエッチング処理により、非パターン層20’のうち潜像形成層30と向き合っていない部分の少なくとも一部が除去されるのと同時に、潜像形成層30の側面の少なくとも一部において、酸化銅CuO及び/又は亜酸化銅Cu2Oが生じる。従って、こうすると、余分な工程を付加することなしに、光吸収性に優れた潜像形成層30を備えた表示体100を製造することができる。
また、上では、図6及び図7を参照しながら説明した表示体100の製造方法について説明したが、図1乃至図5及び図8乃至図16を参照しながら説明した表示体100についても、図17乃至図19を参照しながら説明した製造方法と他の公知の方法とを適宜組み合わせることにより、製造することできる。
図1乃至図16では、マスク層20の背面に平行な平面への潜像形成層30の正射影が、マスク層20のうち第1部分P1に含まれるものの上記平面への正射影に一致している場合を描いているが、表示体100の第1部分P1におけるマスク層20及び潜像形成層30の構成は、これには限られない。
図20は、表示体の第1部分におけるマスク層及び潜像形成層の構成の一変形例を示す断面図である。
図20に示す構成では、マスク層20の背面に平行な平面への潜像形成層30の正射影は、マスク層20のうち第1部分P1に含まれるものの上記平面への正射影に包含されている。このような構成を採用した場合、表示体100の観察条件を第1観察条件から僅かに変化させただけでは、潜像形成層30は視認可能とならない。従って、この場合、潜像形成層30の存在がより悟られ難くなる。即ち、この場合、更に高い偽造防止効果を達成できる。
図20に示す構成を有した表示体100は、例えば、以下のようにして製造する。即ち、図19を参照しながら説明したエッチング工程において、エッチング剤の濃度及びエッチングの処理時間などの条件を調整することにより、非パターン層20’のうち潜像形成層30によって被覆されていない部分の一部を残存させる。こうすると、図20に示す構成を有した表示体100が得られる。
図21及び図22は、表示体の第1部分におけるマスク層及び潜像形成層の構成の他の変形例を示す断面図である。図21及び図22に示す構成では、潜像形成層30は、表示体100の背面側に向けて先細りした形状を有している。
図21(a)には、その一例として、潜像形成層30が、先端が丸まった錐体形状を有している場合を描いている。図21(b)には、他の例として、潜像形成層30が切頭錐体形状を有している場合を描いている。なお、潜像形成層30は、先端が丸まっていない錐体形状を有していてもよい。
図22には、潜像形成層30が多段柱体形状を有している場合を描いている。図22に示す構成では、潜像形成層30は、マスク層20の背面と向き合った第1層L1と、第1層L1を間に挟んでマスク層20の背面と向き合った第2層L2とを備えている。第2層L2のマスク層20の背面への正射影は、第1層L1の上記背面への正射影に包含されている。
これら層L1及びL2は、互いに同一の材料からなっていてもよく、互いに異なった材料からなっていてもよい。第1層L1と第2層L2との積層構造は、例えば、第1層L1上に第2層L2を印刷することにより形成する。図22に示す構成では、第2層L2のマスク層20の背面への正射影が第1層L1の上記背面への正射影に包含されている構成を採用しているため、第1層L1上に第2層L2を形成する際の位置ズレの影響を比較的被り難い。即ち、この構成では、第1層L1と第2層L2との位置合わせが比較的容易である。
図21及び図22に示すように、潜像形成層30が表示体100の背面側に向けて先細りした形状を有している構成を採用すると、表示体100の観察条件を第1観察条件から僅かに変化させた場合に、潜像形成層30の存在が比較的悟られ難い。従って、この場合、表示体100に偽造防止技術が適用されていることが比較的悟られ難い。それゆえ、この場合、更に高い偽造防止効果を達成できる。
なお、図22には、潜像形成層30が第1層L1と第2層L2との2層構造からなる場合を描いているが、潜像形成層30は、3層以上の多層構造を備えていてもよい。こうすると、潜像形成層30の厚みを更に大きくすることができる。従って、こうすると、第2観察条件における潜像形成層30の視認性を更に向上させることができる。
図23は、表示体の第1部分におけるマスク層及び潜像形成層の構成の他の変形例を示す断面図である。図23に示す構成では、表示体100の第1部分P1は、マスク層20と潜像形成層30との間に介在した中間層25を更に備えている。
中間層25は、光透過性を有しており、例えば透明であり、典型的には無色且つ透明である。中間層25は、例えば、無色且つ透明の樹脂からなる。中間層25は、マスク層20と30Lとの間の距離を大きくする役割を担っている。マスク層20と潜像形成層30との間に中間層25を介在させると、表示面に対して斜めに観察する第2観察条件において、潜像形成層30の前面を表示に寄与させることができる。
マスク層20と中間層25と潜像形成層30との積層構造は、例えば、以下のようにして形成する。即ち、図18を参照しながら説明した工程において、非パターン層20’上に潜像形成層30を形成する代わりに、非パターン層20’上に中間層25を形成する。その後、中間層25の背面上に、潜像形成層30を更に形成する。その後、図19を参照しながら説明したエッチング処理を行う。このようにして、マスク層20と中間層25と潜像形成層30との積層構造を得る。
なお、中間層25は、マスク層20の側面を更に被覆していてもよい。即ち、中間層25は、光透過部20Tを埋めていてもよい。この場合も、上述したのと同様の効果を達成することができる。
図24は、表示体の第1部分におけるマスク層及び潜像形成層の構成の他の変形例を示す断面図である。
図24では、マスク層20の背面に平行な平面への潜像形成層30の正射影は、マスク層20のうち第1部分P1に含まれるものの上記平面への正射影を包含している。
即ち、マスク層20の背面に平行であり且つ表示体100の前面側に位置した第1観察面OP1へのマスク層20の第1正射影の面積S1に対する第1観察面OP1への潜像形成層30の第2正射影のうち上記第1正射影と重なり合っていない第1領域の面積S2の比R1=S2/S1は、ゼロより大きい。
他方、マスク層20の背面に交差し且つ表示体100の前面側に位置した第2観察面OP2へのマスク層20の第3正射影の面積S3に対する第2観察面OP2への潜像形成層30の第4正射影のうち上記第3正射影と重なり合っていない第2領域の面積S4の比R2=S4/S3は、比R1と比較してより大きい。即ち、比R2と比R1とは、R2>R1なる関係を満足している。
表示体100がこのような構成を有している場合、表示体100を第1観察条件のもとで肉眼で観察すると、第1部分P1は、マスク層20と潜像形成層30との双方に基づいた表示色を表示する。また、表示体100を第2観察条件のもとで肉眼で観察した場合も、第1部分P1は、マスク層20と潜像形成層30との双方に基づいた表示色を表示する。しかしながら、上記のR2>R1なる関係から明らかな通り、第2観察条件では、マスク層20は、第1観察条件と比較して潜像形成層30のより多くの部分を表示に寄与させる。従って、この表示体100は、第1観察条件において肉眼で観察した場合と第2観察条件において肉眼で観察した場合とで少なくとも部分的に表示色が異なる画像を表示する。
図24に示す構成を有した表示体100は、例えば、図19を参照しながら説明したエッチング工程において、マスク層20のサイドエッチングを生じさせることにより製造する。
なお、マスク層20の背面に平行な平面への潜像形成層30の正射影が、マスク層20のうち第1部分P1に含まれるものの上記平面への正射影に一致しているか又は包含されている場合、上記の比R1は、ゼロである。従って、この場合も、R2>R1なる関係は満たされている。
上では、マスク層20が正方格子状に規則的に配列した網点状のパターンを形成している場合について説明したが、マスク層20の構成は、これには限られない。
例えば、マスク層20は、矩形格子状又は三角格子状に規則的に配列した網点状のパターンを形成していてもよい。或いは、マスク層20は、不規則的に配列した網点状のパターンを形成していてもよい。
マスク層20は、網点状のパターン以外のパターンを形成していてもよい。
図25及び図26は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す平面図である。図25に示す表示体100は、ストライプ状のパターンを形成している。図26に示す表示体100は、網目状のパターンを形成している。このような構成を採用した場合であっても、表示体100は、第1観察条件において肉眼で観察した場合と第2観察条件において肉眼で観察した場合とで、少なくとも部分的に表示色が異なる画像を表示する。従って、このような構成を採用した場合であっても、高い偽造防止効果を達成できる。
以上において説明した表示体100は、例えば、シールラベルなどの粘着ステッカ、ストライプ転写箔及びスポット転写箔などの転写箔、又はスレッドの一部として使用してもよい。或いは、この表示体100は、ティアテープの一部として使用してもよい。
図27は、本発明の一態様に係る粘着ステッカを概略的に示す断面図である。図27に示す粘着ステッカ200は、図6及び図7に示す表示体100と、表示体100の背面上に設けられた粘着層80とを備えている。
粘着層80は、保護層40の背面上に設けられている。粘着層80は、潜像形成層30を間に挟んでマスク層20と向き合っている。
粘着層80の材料としては、典型的には、感圧接着剤を使用する。粘着層80の材料としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、及び、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系又はポリイソブチル系のものが挙げられる。粘着層は、必要に応じて、凝集成分、改質成分及び添加剤を更に含んでいてもよい。凝集成分としては、例えば、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリロニトリル、スチレン及びビニルモノマーが挙げられる。改質成分としては、例えば、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有ポリマー、及びアクリロニトリルが挙げられる。添加剤としては、例えば、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤及び酸化防止剤が挙げられる。或いは、粘着層80として、両面がフィルムセパレータで構成された接着剤を用いてもよい。
粘着層80は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びスクリーン印刷法などの印刷法、又は、バーコート法、グラビア法及びロールコート法などの塗布法により形成する。粘着層80の厚みは、例えば1μm乃至10μmの範囲内とする。
この粘着ステッカ200は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、又は、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。なお、粘着ステッカ200の貼り付けは、例えば、ロールラミネート法により行う。
なお、表示体100と粘着層80との間に脆性層を更に設けることにより、粘着ステッカ200に貼替え防止機能を付与することもできる。これにより、更に高い偽造防止効果を達成できる。
図28は、本発明の一態様に係る転写箔を概略的に示す断面図である。図28に示す転写箔300は、図6及び図7に示す表示体100と、表示体100を剥離可能に支持した支持体層90とを備えている。図17には、一例として、表示体100の前面と支持体層90との間に剥離層92が設けられており、表示体100の背面上に接着層94が設けられている場合を描いている。
支持体層90は、例えば、樹脂からなるフィルム又はシートである。支持体層90の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は塩化ビニル樹脂を使用する。
剥離層92は、転写箔300を被転写体に転写する際の支持体層90の剥離を容易にする役割を担っている。剥離層92の材料としては、例えば、樹脂を使用する。剥離層92は、パラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス及びシリコーンなどの添加剤を更に含んでいてもよい。なお、剥離層92の厚みは、例えば0.5μm乃至5μmの範囲内とする。
接着層94の材料としては、例えば、反応硬化型接着剤、溶剤揮散型接着剤、ホットメルト型接着剤、電子線硬化型接着剤及び感熱接着剤などの接着剤を使用する。
反応硬化性接着剤としては、例えば、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン及びアクリルウレタンなどのポリウレタン系樹脂、又は、エポキシ樹脂を使用する。
溶剤揮散型接着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー樹脂及びウレタン樹脂などを含んだ水性エマルジョン型接着剤、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合樹脂及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂などを含んだラテックス型接着剤を使用する。
ホットメルト型接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂及びポリウレタン樹脂などをベース樹脂として含んだものを使用する。
電子線硬化型接着剤としては、例えば、アクリロイル基、アリル基及びビニル基などのビニル系官能基を1個又は複数個有したオリゴマーを主成分として含んだものを使用する。例えば、電子線硬化型接着剤として、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート又はポリエーテルメタクリレートと、接着付与剤との混合物を使用することができる。この接着付与剤としては、例えば、リンを含んだアクリレート若しくはその誘導体、又は、カルボキシ基を含んだアクリレート若しくはその誘導体を使用する。
感熱接着剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴム系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を使用する。
接着層94は、例えば、上述した樹脂を、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータなどのコータを用いて表示体100の背面上に塗布することにより得られる。
この転写箔300は、例えば、ロール転写機又はホットスタンプによって、被転写体に転写される。この際、剥離層92において剥離を生じると共に、表示体100が、被転写体に、接着層94を介して貼付される。
上述したように、表示体100は、優れた偽造防止効果を有している。したがって、表示体100を物品に支持させた場合、真正品であるこの表示体付き物品の偽造も困難である。また、この表示体100は上述した視覚効果を有しているため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
図29は、表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図29には、表示体付き物品の一例として、印刷物400を描いている。この印刷物400は、商品券であって、印刷物本体401を含んでいる。
印刷物本体401は、基材402を含んでいる。基材402は、例えば、少なくとも表示体100に対応した部分が光透過性を有している紙である。基材402上には、印刷層403が形成されている。基材402の印刷層403が形成された面には、上述した表示体100が固定されている。表示体100は、例えば、粘着層又は接着層を介して貼り付けることにより、基材402に固定する。
印刷物400は、表示体100を含んでいるため、その偽造は困難である。また、この印刷物400は、表示体100を含んでいるため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
表示体付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体10を支持させてもよい。
表示体100は、2つの基材の間に挟んで用いてもよい。この場合、これら2つの基材のうち少なくとも一方は、表示体100を観察可能とする光透過性の観察口を備えている。この観察口は、例えば、開口である。或いは、この観察口は、光透過性の樹脂からなる部分であってもよい。
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品としても使用することができる。
(表示体の製造)
隠蔽層70を更に備えていること以外は図14を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している表示体100を、以下のようにして製造した。
まず、基材10として、二軸延伸ポリエステルフィルムであるルミラー25T60(東レ社製)を準備した。次に、この基材10の背面上に、真空蒸着機を用いて、アルミニウムを蒸着させた。このようにして、アルミニウムからなる非パターン層20’を形成した。なお、この非パターン層20’の厚みは、500Åとした。
次いで、黒色インキ(TU 345 FDSS 911 墨;東洋インキ製造社製)を、表示体100の第1部分P1に対応した位置に、網点状に印刷した。この印刷は、スクリーン印刷により行った。その後、紫外線照射機を用いて200mJの紫外線を照射した。このようにして、潜像形成層30を形成した。
続いて、無色透明インキ(TU 345 FDSS 盛り上げワニス;東洋インキ製造社製)を、表示体100の第2部分P2に対応した位置に、網点状に印刷した。この印刷は、スクリーン印刷により行った。その後、紫外線照射機を用いて200mJの紫外線を照射した。このようにして、高さ調節層30Aを形成した。
得られた積層体を、5%水酸化ナトリウム水溶液に浸した。このようにして、非パターン層20’のうち潜像形成層30又は高さ調節層30Aによって被覆されていない部分を溶解及び除去した。水を用いた洗浄を行った後、これを乾燥させた。このようにして、マスク層20を形成した。
その後、基材10の背面、マスク層20の側面、並びに、潜像形成層30及び高さ調節層30Aの側面及び背面を被覆するようにして、無色透明インキ(TU 345 FDSS 盛り上げワニス;東洋インキ製造社製)を印刷した。この印刷は、スクリーン印刷により行った。その後、紫外線照射機を用いて500mJの紫外線を照射した。このようにして、保護層40を形成した。
続いて、保護層40の背面上に、白色インキ(SS NSA 611白;東洋インキ製造社製)をベタ印刷した。この印刷は、スクリーン印刷により行った。その後、得られた積層体を、80℃で3分間に亘って乾燥させた。このようにして、隠蔽層70を形成した。
次いで、基材10の前面上に、以下の組成を有するインキをベタ印刷した。
ネマチック液晶(パリオカラー LC242;BASF(株)製) 30質量部
カイラル剤(パリオカラー LC756;BASF(株)製) 1.5質量部
重合開始剤(イルガキュア184;チバガイギー(株)製) 1.5質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 67質量部。
この印刷は、グラビア印刷により行った。印刷後、80℃で1分間に亘って乾燥させた。その後、高圧水銀灯を用いて、500mJの照射を行った。このようにして、選択反射層50を形成した。
以上のようにして、表示体100を得た。この表示体100では、マスク層20を、各々が円形状を有し且つ正方格子状に配列した網点パターンとして形成した。これら各網点の直径は、80μmとした。これら網点間の最短距離は、120μmとした。マスク層20の厚みは、500Åとした。潜像形成層30及び高さ調節層30Aの厚みは、40μmとした。選択反射層50の厚みは、4μmとした。
(偽造防止効果の評価)
<実施例>
この表示体100を第1観察条件のもとで肉眼で観察したところ、均一な緑色の反射光が確認された。即ち、この観察条件では、第1部分P1と第2部分P2とは、互いに判別不可能であった。
次に、この表示体100を第2観察条件のもとで肉眼で観察したところ、第1部分P1は、明瞭な青色に見えた。他方、第2部分P2は、緑色に見えた。即ち、この観察条件では、第1部分P1と第2部分P2とを互いから判別することができた。
このように、表示体100は、観察条件を変化させることにより、互いに異なった画像を表示した。具体的には、この表示体100では、観察条件を変化させることにより、第1部分P1に対応した潜像パターンを可視化することができた。
<比較例>
この表示体100を、複写機を用いてカラーコピーした。そして、得られた複写物を、様々な角度から観察した。その結果、この複写物は、第1観察条件と第2観察条件とで、互いに異なった画像を表示しなかった。それゆえ、この複写物が非真正品であることを、容易に確認することができた。