〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
1.以下を含むパワー系半導体装置:
(a)第1の主面側のN型Si単結晶基板表面領域及び第2の主面側のSi単結晶基板裏面領域を有するシリコン単結晶基板;
(b)前記シリコン単結晶基板の前記第1の主面側から所定の深さに渡って前記N型シリコン単結晶基板内に、相互に平行になるように、前記第1の主面に沿って周期的に形成された板状形状を有する複数のP型シリコン系エピタキシャル領域、
ここで、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域は、これらの間の前記N型Si単結晶基板表面領域とともに、スーパジャンクション構造を形成しており、
更に、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域の各P型シリコン系エピタキシャル領域は、ボロン拡散抑制効果を有する元素が添加されている。
2.前記1項のパワー系半導体装置において、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域は、トレンチフィル方式によって形成されている。
3.前記2項のパワー系半導体装置において、前記ボロン拡散抑制効果を有する元素の添加は、トレンチフィル方式によるエピタキシ成長時に行われている。
4.前記1から3項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記ボロン拡散抑制効果を有する元素は、炭素である。
5.前記1から4項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記パワー系半導体装置はパワーMOSFETである。
6.前記5項のパワー系半導体装置において、炭素の添加量は、0.01から1アトミック%の範囲にある。
7.前記1から6項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域の各P型シリコン系エピタキシャル領域は、その全領域に炭素が添加されている。
8.前記1から6項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域の各P型シリコン系エピタキシャル領域は、それと前記シリコン単結晶基板との界面領域のみに炭素が添加されている。
9.前記1から6項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域の各P型シリコン系エピタキシャル領域は、それと前記シリコン単結晶基板との界面領域を除き、その全体に炭素が添加されている。
10.前記1から6項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域の各P型シリコン系エピタキシャル領域は、以下を含む:
(b1)前記シリコン単結晶基板との界面を覆うように形成された炭素非添加界面領域;
(b2)前記炭素非添加界面領域の内面を覆うように形成された炭素添加領域;
(b3)前記炭素添加領域の内側の残余の部分を構成する炭素非添加内部領域。
11.前記1から10項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、更に、以下を有する:
(c)前記第1の主面に沿って、その近傍を相互に平行に第1の方向に延びる複数のゲート電極、
ここで、前記第1の方向と、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域の各P型シリコン系エピタキシャル領域の配向は、相互に平行である。
12.前記1から11項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記第1の主面の面方位は、ほぼ(100)である。
13.前記12項のパワー系半導体装置において、前記複数のP型シリコン系エピタキシャル領域の各P型シリコン系エピタキシャル領域の配向は、前記シリコン単結晶基板の結晶方位である〈110〉方位と、ほぼ平行、または直交するように配置されている。
14.前記1から3および11から13項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記ボロン拡散抑制効果を有する元素は、ゲルマニウムである。
15.前記14項のパワー系半導体装置において、ゲルマニウムの添加量は、5から30アトミック%の範囲にある。
16.以下を含むパワー系半導体装置:
(a)第1の主面側のN型Si単結晶基板表面領域及び第2の主面側のSi単結晶基板裏面領域を有するシリコン単結晶基板;
(b)前記シリコン単結晶基板の前記第1の主面側から所定の深さに渡って前記N型シリコン単結晶基板内に、相互に平行になるように、前記第1の主面に沿って周期的に形成された板状形状を有する複数のP型シリコン系単結晶領域、
ここで、前記複数のP型シリコン系単結晶領域は、これらの間の前記N型Si単結晶基板表面領域とともに、スーパジャンクション構造を形成しており、
更に、前記N型Si単結晶基板表面領域および前記複数のP型シリコン系単結晶領域は、それらのほぼ全体にボロン拡散抑制効果を有する元素が添加されている。
17.前記17項のパワー系半導体装置において、前記N型Si単結晶基板表面領域および前記複数のP型シリコン系単結晶領域は、マルチエピタキシ方式により形成されている。
18.前記16または17項のパワー系半導体装置において、前記ボロン拡散抑制効果を有する元素は、炭素である。
19.前記18項のパワー系半導体装置において、炭素の添加量は、0.01から1アトミック%の範囲にある。
20.前記16から19項のいずれか一つのパワー系半導体装置において、前記パワー系半導体装置はパワーMOSFETである。
次に、本願において開示される発明のその他の実施の形態について概要を説明する。
1.以下を含むパワー系半導体装置:
(a)シリコン単結晶基板;
(b)前記シリコン単結晶基板内に設けられ、交互に並行になるように周期的に設けられた板状形状の複数のPカラム領域およびNカラム領域を含むスーパジャンクション構造、
ここで、前記複数のPカラム領域およびNカラム領域の少なくとも一方は、ボロン拡散抑制効果を有する元素が添加されている部分を有する。
2.前記1項のパワー系半導体装置において、前記ボロン拡散抑制効果を有する元素は、炭素である。
3.前記1または2項のパワー系半導体装置において、前記パワー系半導体装置はパワーMOSFETである。
4.前記2項のパワー系半導体装置において、炭素の添加量は、0.01から1アトミック%の範囲にある。
〔本願における記載形式、基本的用語、用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
更に、本願において、「半導体装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)単体、またはそれらを中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(たとえば単結晶シリコン基板)上に集積したものをいう。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を例示することができる。このとき、各種単体トランジスタの代表的なものとしては、パワーMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を例示することができる。これらは、一本にパワー系半導体デバイスに分類され、その中には、パワーMOSFET、IGBTの外、バイポーラパワートランジスタ、サイリスタ(Thyristor)、パワーダイオード等を含む。
パワーMOSFETの代表的な形態は、表面にソース電極があり、裏面にドレイン電極がある2重拡散型縦型パワーMOSFET(Double Duffused Vertical Power MOSFET)であるが、この2重拡散型縦型パワーMOSFETには、主に2種類に分類でき、第1は実施形態において主に説明するプレーナゲート(Planar Gate)型であり、第2はU−MOSFET等のトレンチ(Trench Gate)ゲート型である。
パワーMOSFETには、その他に、LD−MOSFET(Lateral−Diffused MOSFET)がある。
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」、「酸化シリコン系絶縁膜」等と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノクラスタリングシリカ(Nano-Clustering Silica:NCS)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
また、酸化シリコン系絶縁膜と並んで、半導体分野で常用されているシリコン系絶縁膜としては、窒化シリコン系絶縁膜がある。この系統の属する材料としては、SiN,SiCN,SiNH,SiCNH等がある。ここで、「窒化シリコン」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiNおよびSiNHの両方を含む。同様に、「SiCN」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiCNおよびSiCNHの両方を含む。
なお、SiCは、SiNと類似の性質を有するが、SiONは、むしろ、酸化シリコン系絶縁膜に分類すべき場合が多い。
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体装置(半導体集積回路装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
なお、本願において「単結晶領域」等に言及するときは、特にそうでない旨、明示したとき、または、そうでないことが明らかなときを除き、エピタキシャル領域を含むものとする。
6.パワーMOSFET等のドリフト領域に関して、従来のシリコンリミット(Silicon Limit)による制約を回避して、オン抵抗の低い高耐圧FET等とするため、ドリフト領域(主要電流通路)に比較的高濃度のスラブ(Slab)状のN型カラム領域およびP型カラム領域を交互に有するスーパジャンクション(Super Junction)構造が導入されている。このスーパジャンクション構造を導入する方式は、大まかに言って3種類の方式、すなわち、マルチエピタキシャル方式、トレンチ絶縁膜埋め込み方式、および、トレンチフィル方式(トレンチフィリング方式、オートフィル方式またはトレンチエピタキシャル埋め込み方式)がある。これらのうち、エピタキシャル成長とイオン注入を多数回繰り返すマルチエピタキシャル方式はプロセスおよび設計の自由度が高い分、工程が複雑になるため高コストである。トレンチ絶縁膜埋め込み方式は、トレンチに斜めイオン注入した後、トレンチをCVD(Chemical Vapor Deposition)絶縁膜で埋め込むものであり、プロセス的にはより単純であるが、トレンチの面積分だけ面積的に不利となる。これらに対して、トレンチフィル方式は埋め込みエピタキシャル成長の成長条件の制約のためにプロセスおよび設計の自由度が比較的低いが、工程が単純であるというメリットがある。
一般にスーパジャンクション構造は、ある導電型の半導体領域に反対導電型の柱状又は板状のカラム領域をチャージバランスが保たれるように、ほぼ等間隔に挿入したものである。本願において、トレンチフィル方式による「スーパジャンクション構造」に言及するときは、原則として、ある導電型の半導体領域に反対導電型の板状(通常は、平板状であるが屈曲又は屈折していてもよい)の「カラム領域」をチャージバランスが保たれるように、ほぼ等間隔に挿入したものである。実施の形態では、N型半導体層(たとえばドリフト領域)にP型カラムを平行に等間隔を置いて形成されたものについて説明する。
スーパジャンクション構造について、「配向」とは、そのスーパジャンクション構造を構成するP型カラムまたはN型カラムをチップの主面に対応して二次元的に見た場合(チップまたはウエハの主面に平行な面において)の長手方向を指す。
なお、スーパジャンクション構造は、パワーMOSFETのみでなく、パワー系半導体デバイス全般のドリフト領域(あるいは、これに対応する領域または主要電流通路)に、ほぼそのまま、又は、必要な変更をして、適用することができる。
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
なお、スーパジャンクションを有するパワーMOSFETについての先行出願としては、たとえば、日本特願第2009−263600号(日本出願日:2009年11月19日)がある。
1.本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの構造等の説明(主に図1から図4)
図1は、本願の一実施の形態の半導体装置であるパワーMOSFETの一例を示すデバイス上面図である。図2は図1のセル部26の一部を切り出し領域R1のチップ部分拡大上面図である。図3は図2のセル部26の一部を切り出し領域R2のX−X’断面に対応する(図1のX−X’断面にも対応)のチップ部分拡大模式断面図である。図4は図2の変形例を示す図1のセル部26の一部を切り出し領域R1のチップ部分拡大上面図である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの構造等を説明する。
先ず、図1および図2に基づいて、半導体チップ10の全体構造を説明する。図1に示すように、正方形又は長方形の板状のシリコン系半導体基板(個々のチップに分割する前はウエハである)上に素子を形成したパワーMOSFET素子チップ10は中央部にあるソースパッド領域21(アルミニウム系パッド)が主要な面積を占めている。その下には、それらの幅(またはピッチ)よりも十分長く延びる帯状ゲート電極12と帯状ソースコンタクト領域(ソース領域15およびP+ボディコンタクト領域19)が交互に多数形成された帯状繰り返しデバイスパターン領域すなわち、セル領域26がある。ここで、セル領域26は、ソースパッド領域21の下方のほぼ全体に広がっており、破線で囲った部分R1(セル部一部切り出し領域)はその一部である。このリニアセル領域26の周辺には、ゲート電極12を周辺から外部に引き出すゲートパッド領域23がある。更にその周りには、アルミニウムガードリング25が設けられている。そして、チップ10の最外周部はウエハをダイシング等により分割する際の領域、すなわち、スクライブ領域24である。
次に、図2および図3により、セル領域26の詳細構造を説明する。図2および図3に示すように、N+型Si単結晶基板領域1s上には、ドリフト領域30(ドリフト領域の厚さDは、たとえば耐圧を600ボルト程度と想定すると、45マイクロメータ程度)が設けられており、その中には紙面と垂直方向に延びる板状のNカラム領域NC(Nカラム領域の幅WNは、たとえば6マイクロメータ程度)およぶPカラム領域PC(Pカラム領域の幅は、たとえば4マイクロメータ程度)が交互に形成されている。ここで、各Pカラム領域PCには、後に図6から図9で説明するように、ボロン拡散抑制効果がある元素(たとえば炭素、ゲルマニウムなどのボロン拡散防止元素)が添加されている。なお、Nカラム領域の側面下部内角θは、通常、88度から90度である。
ドリフト領域30の上端部には、チャネル領域を形成するPウエル領域9が設けられており、その中にはN型ソース領域15が設けられている。一対のN型ソース領域15を連結するようにP+ボディコンタクト領域19が設けられている。半導体基板1のデバイス面1aの側には、ゲート絶縁膜11を介して、ポリシリコンゲート電極12が設けられており、このポリシリコンゲート電極12は層間絶縁膜17によって被覆されている。層間絶縁膜17上には、バリアメタル層21b(たとえばTiW膜)を介して、たとえばアルミニウム系ソースメタル電極層21aが設けられており、このアルミニウム系ソースメタル電極層21aとバリアメタル層21bとで、ソースメタル電極21を構成している。なお、実際には、TiW膜21b中のチタンは基板のシリコンと反応してチタンシリサイドを形成することに寄与している。
図4に図2のレイアウトの変形例を示す。図2のレイアウトでは、各カラム領域NC、PCとゲート電極12の長手方向が平行になっているが、図4の例では各カラム領域NC、PCとゲート電極12の長手方向が直交している点が異なる。このレイアウトは、ソース領域、ゲート電極等の上部構造と無関係に各カラム領域NC、PCを配置できるメリットがある一方、ソース-ドレイン間電流通路の断面積が約半分になってしますというデメリットがある。
ここで、ボロン拡散防止元素(主にIV族元素で、具体的には炭素、ゲルマニウムなど)について説明する。ゲルマニウムは、シリコンに5から30アトミック%程度添加するとボロンの拡散係数を1/10から1/100に下げる効果がある。一方、炭素は、0.01から1アトミック%程度添加すると同等の効果が得られる。更に、炭素はボロンの他、リン、砒素等に対する拡散抑制効果もある。ゲルマニウムの場合は、添加によってバンドギャップが縮小する傾向にあるが、炭素の場合は、逆に増大するのでパワー系デバイスにとっては、炭素の方が有利な点が多い。一方、ゲルマニウムは高純度の半導体材料として、半導体工程と相性がよいが、炭素は結晶、エピタキシ工程等においては望ましくない不純物であり、装置の専用化等が必要になり、量産上ではゲルマニウムの方が有利な点もある。
なお、このセクションの説明では、トレンチフィル方式を前提に説明したが、図3に示した構造は、マルチエピタキシ方式によっても、構造的にはNカラム領域NCにもボロン拡散防止元素が添加されている以外、同じである。
一般にスーパジャンクション構造は、従来の単導電型のドリフト領域と比較して、高濃度で厚さの薄いN型カラム領域とP型カラム領域を交互に配列して、低いオン抵抗と耐圧(BVdssすなわち、ソースドレイン間最小ブレークダウン電圧、以下では単に「耐圧」という)を実現しているので、いずれかの不純物が他のカラムに拡散してしまうと、所定の濃度とチャージバランスが維持できないこととなる。
2.本願の一実施の形態の半導体装置におけるトレンチフィル方式によるPカラム領域の内部構造等の説明(主に図5から図9)
このセクションでは、セクション1で説明したPカラム領域PC(P型Si系エピタキシャル領域4)の詳細構造のバリエーションおよび形成プロセス(トレンチフィル方式)の基本的考え方を説明する。ここでは、Nチャネル型パワーMOSFETに関して具体的に説明するが、Pチャネル型パワーMOSFETについても、ほぼそのまま適用できることは言うまでもない。
図5は図3に示すPカラム領域PCを形成するためのエピタキシャル埋め込み用溝3(トレンチフィル方式)を説明するための半導体基板1の要部拡大断面図である。図6は図5のエピタキシャル埋め込み用溝3を各種の方式で埋め込んだ後の各種の具体的構造(全体炭素等添加型)を示す半導体基板1の要部拡大断面図(断面構造1)である。図7は図5のエピタキシャル埋め込み用溝3を各種の方式で埋め込んだ後の各種の具体的構造(周辺境界炭素等添加型)を示す半導体基板1の要部拡大断面図(断面構造2)である。図8は図5のエピタキシャル埋め込み用溝3を各種の方式で埋め込んだ後の各種の具体的構造(内部周辺炭素等添加型)を示す半導体基板1の要部拡大断面図(断面構造3)である。図9は図5のエピタキシャル埋め込み用溝3を各種の方式で埋め込んだ後の各種の具体的構造(内部全体炭素等添加型)を示す半導体基板1の要部拡大断面図(断面構造4)である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体装置におけるトレンチフィル方式によるPカラム領域の内部構造等を説明する。
トレンチフィル方式またはオートフィル(Auto−fill)方式においては、図5に示すように半導体基板1(通常、N型シリコンエピタキシャルウエハ、すなわち、数百マイクロメートル程度の厚さのシリコン単結晶基板上に数十マイクロメートル程度の厚さのN型Siエピタキシャル層を形成したもの)中のデバイス面1a(裏面1bの反対の面)の側のN型Siエピタキシャル層1e(N型Si単結晶基板表面領域)に所定の深さの溝3(通常は耐圧を稼ぐためにシリコン単結晶基板に達する溝を形成するが、シリコン単結晶基板に達しなくとも良い)を等間隔に複数形成する。なお、N型シリコンエピタキシャルウエハを使用しないで、N型シリコン単結晶ウエハ(非エピタキシャルウエハ)を使用して、バックグラインディング後に、裏面からイオン注入等で裏面1b側にN+層(ドレイン高濃度層)を形成しても良い。
次に、このエピタキシャル埋め込み用溝3を図6から図9のいずれかの態様で、ボロン拡散抑制効果を有する元素(主に炭素、ゲルマニウム等のIV族元素)を含有するP型Siエピタキシ部材(ボロンドープP型Siエピタキシ部材)により、埋め込む。以下、各断面構造について説明する。
断面構造1(全体炭素等添加型)においては、図6に示すように、P型Si系エピタキシャル領域4(Pカラム領域PC)の全体が、ボロン拡散防止元素含有P型Siエピタキシャル領域2、すなわち、P型Si1−xCxエピタキシャル領域2c(たとえばX=0.0001から0.01、図7から図9においても同じ)またはP型Si1−xGexエピタキシャル領域2g(たとえばX=0.05から0.3、図7から図9においても同じ)である。このようにすることにより、ボロンの拡散係数が1/10から1/100に減少する。そのことによって、各種の熱処理を経た後のPカラム領域PC(図3)内のボロン濃度を十分に高い値に保って、Nカラム領域NCとの間でチャージバランスが取れ、良好なスーパジャンクション特性を示すことができる。ここで、スーパジャンクションを構成する各カラムのアスペクト比としては、一般に5から20程度を想定している。
断面構造2(周辺境界炭素等添加型)においては、図7に示すように、P型Si系エピタキシャル領域4の内、シリコン単結晶基板1との境界部にあたる部分のみをボロン拡散防止元素添加P型Siエピタキシャル領域2(P型Si1−xCxエピタキシャル領域2c、P型Si1−xGexエピタキシャル領域2g)とし、その他の部分をボロン拡散防止元素非添加P型Siエピタキシャル領域5(ボロン拡散防止元素非添加P型Siエピタキシャル内部領域5i)とした。このような構造としたことによって、周りから受ける引っ張り応力(Ge添加の場合は圧縮応力)を緩和しつつ、P型Si系エピタキシャル領域4外へのボロンの拡散を有効に抑制することができる。
断面構造3(内部周辺炭素等添加型)においては、図8に示すように、図7のボロン拡散防止元素添加P型Siエピタキシャル領域2(炭素添加領域)の更に外側に、ボロン拡散防止元素非添加P型Siエピタキシャル周辺領域5(5p)すなわち炭素非添加界面領域を設けたものであり、その内側に、ボロン拡散防止元素添加P型Siエピタキシャル領域2(P型Si1−xCxエピタキシャル領域2c、P型Si1−xGexエピタキシャル領域2g)およびボロン拡散防止元素非添加P型Siエピタキシャル領域5(ボロン拡散防止元素非添加P型Siエピタキシャル内部領域5i)すなわち炭素非添加内部領域が設けられている。このような構造としたことによって、周りから受ける引っ張り応力(Ge添加の場合は圧縮応力)を緩和し、且つ、良好なエピタキシャル成長特性を確保しつつ(一般に、エピタキシャル成長の初期に添加物があると欠陥が生じやすい)、P型Si系エピタキシャル領域4外へのボロンの拡散を有効に抑制することができる。
断面構造4(内部全体炭素等添加型)においては、図9に示すように、P型Si系エピタキシャル領域4の内、シリコン単結晶基板1との境界部にあたる部分のみをボロン拡散防止元素非添加P型Siエピタキシャル周辺領域5(ボロン拡散防止元素非添加P型Siエピタキシャル周辺領域5p)とし、その内部をボロン拡散防止元素添加P型Siエピタキシャル領域2(P型Si1−xCxエピタキシャル領域2c、P型Si1−xGexエピタキシャル領域2g)とした。このような構造としたことによって、良好なエピタキシャル成長特性を確保しつつ、P型Si系エピタキシャル領域4外へのボロンの拡散を有効に抑制することができる。
3.本願の他の実施の形態の半導体装置におけるマルチエピタキシ方式によるスーパジャンクション構造等の説明(主に図10)
このセクションでは、セクション2の図6で説明したPカラム領域PC(断面構造1:全体炭素等添加型)に対応するマルチエピタキシ方式によるスーパジャンクション構造の基本的構成法を説明する。ただし、図6の例と相違して、製法上の相違から、Nカラム領域NC(図3)にもボロン拡散防止元素が添加されている。このようなNカラム領域NCへの炭素の添加は、リンの拡散を抑制する効果がある。ゲルマニウムは、砒素、リン等に対して、拡散を加速する傾向があるので、N型領域にも添加するタイプのマルチエピタキシ方式では、ボロン拡散防止元素としては、炭素が好適である。
図10は本願の他の実施の形態(マルチエピタキシ方式)の半導体装置の一例であるパワーMOSFETにおける図3に示すPカラム領域PC等を形成するためのマルチエピタキシプロセスの概要を示す半導体基板1の要部拡大断面図である。これに基づいて、本願の他の実施の形態の半導体装置におけるマルチエピタキシ方式によるスーパジャンクション構造等を説明する。
図10に示すように、マルチエピタキシ方式においては、Nチャネル型デバイスの場合は、まず、N型Si単結晶基板1s上の全面に、数マイクロメートル程度の厚さの炭素を添加したN型Siエピタキシ層31を形成して、その一部にボロン注入用レジスト膜35をマスクとして、イオン注入等によりボロン不純物を導入して、部分的にボロン拡散防止元素添加P型Siエピタキシャル領域34(P型シリコン系単結晶領域)を形成する繰り返し工程を必要な厚さになるまで繰り返すことによって、ボロン拡散防止元素添加N型Siエピタキシャル領域31とボロン拡散防止元素添加P型Siエピタキシャル領域(P型シリコン系単結晶領域)で構成されたスーパジャンクション構造を形成する。
Pチャネル型デバイスの場合は、構造的には、全ての領域のPNを置き換える操作(PN反転)を実行したものとなる。
4.本願の一実施の形態の半導体装置の製造工程の要部であるトレンチフィル工程及びそれに使用する減圧CVD装置等の説明(主に図11から図13)
このセクションでは、主に、セクション1から3で説明したパワーMOSFETのスーパジャンクション構造の形成に使用するエピタキシャル成長装置および、その処理シーケンスの例を説明する。以下では、トレンチフィル方式を例にとり具体的に説明するが、マルチエピタキシ方式にも必要な変更により、ほぼ同様に適用できることは言うまでもない。
図11は本願の各実施の形態(トレンチフィル方式、マルチエピタキシ方式等)の製造プロセスの要部であるシリコン系エピタキシプロセスに使用する減圧CVD装置51(エピタキシ成長装置)の模式断面図である。図12は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の要部であるトレンチフィル工程のエピタキシ成長プロセスの具体例(断面構造1から4に対応、断面フローを示す図21に対応)を示すプロセスシークエンス図(主要例:成膜&エッチング並行プロセス)である。図13は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の要部であるトレンチフィル工程のエピタキシ成長プロセスの具体例(断面構造1から4に対応、断面フローを示す図21に対応)を示すプロセスシークエンス図(変形例:成膜&エッチング交互プロセス)である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体装置の製造工程の要部であるトレンチフィル工程及びそれに使用する減圧CVD装置等を説明する。
図11に典型的な枚葉エピタキシャル成長装置51を示す。図11に示すように、石英チャンバ52内に回転可能なウエハサセプタ53が設けられており、処理時には、その上にウエハ1がそのデバイス面1aを上に向けて置かれている。石英チャンバ52内は加熱用ランプ61によって加熱されるようになっており、石英チャンバ52内には、通常、矢印で示すようなガス流56が形成される。ガス導入系54には複数のマスフローコントローラMFC等が設けられており、DCS(シリコンソースガス)すなわち、ジクロルシラン(Dichlorosilane),TCS(シリコンソースガス)すなわち、トリクロルシラン(Trichlorosilane),H2すなわち、水素ガス(キャリアガスおよび還元ガス),HCl(エッチングガス)すなわち、塩化水素,B2H6すなわち、ジボラン(ボロンソースガス),MMS(炭素ソースガス)すなわち、モノメチルシラン(Monomethylsilane)等のプロセスガスが供給可能となっており、ガス導入口55を介して、石英チャンバ52に供給される。石英チャンバ52には、真空排気系57が接続されており、ドライ粗引きポンプ58、メカニカルブースタ59等から構成されている。
次に、図12により、セクション6の図21に対応するトレンチフィルプロセス(トレンチ埋め込みエピタキシャル成長)について具体的処理の例を説明する。まず、成膜&エッチング並行プロセスを説明する。このプロセス速度は比較的遅いが、プロセス余裕が広く、安定しているというメリットがある。なお、このように、エッチング処理を同時に実行したり、途中にエッチング処理を挿入するのは、連続的に成膜処理のみを実行すると、トレンチの上端部が閉塞する傾向があるからである。
図12に示すように、まず、図6の例から説明する。時点t0において、水素ガス(処理中一定ガス流量、たとえば10000sccm程度)が供給された石英チャンバ52内(チャンバ内気圧は、たとえば100kPa程度)のウエハサセプタ53上にウエハ1を供給する(導入時のチャンバ温度は、たとえば摂氏700度程度)。ウエハサセプタ53上にウエハ1を置いた状態で、ランプ加熱を開始する(時点t1)と、数秒で摂氏1100度程度に加熱される(時点t2)。ここで、時点t3まで、たとえば3分程度、水素高温ベーク処理(チャンバ内気圧は、たとえば20kPa程度)を実行する。
時点t3から降温を開始して、1分程度で成膜処理温度(たとえば摂氏980度)に到達する。時点t4において、HCl(たとえば4000sccm程度),DCS(処理中一定ガス流量、たとえば400sccm程度),B2H6(処理中一定ガス流量、たとえば100sccm程度),MMS(処理中一定ガス流量、たとえば50sccm程度)等のプロセスガスの供給を開始することによってエピタキシャル成長を開始する。なお、ゲルマニウムを添加する場合は、ゲルマニウムソースガスとして、GeH4,すなわちモノゲルマン(Monogermane)を用いる。成膜時間は、たとえば3時間程度であり時点t11で終了して、水素以外のプロセスガスを停止する。その後、温度を3分ほどで、チャンバ温度を導入時の温度に下げるとともに、チャンバ内気圧をたとえば100kPa程度にする(時点t12)。ここで、ウエハ1を石英チャンバ52から排出する。
次に、図7の例について説明する。この場合は、その他は全て先の図6の例と同じで、炭素ソースガス(ここでは、MMS)を流す時間帯を時点t4から時点t5までとする。
次に、図8の例について説明する。この場合は、その他は全て先の図6の例と同じで、炭素ソースガス(ここでは、MMS)を流す時間帯を時点t5から時点t6までとする。
次に、図9の例について説明する。この場合は、その他は全て先の図6の例と同じで、炭素ソースガス(ここでは、MMS)を流す時間帯を時点t5から時点t11までとする。
続いて、図13によって成膜&エッチング交互プロセスを説明する。このプロセス速度は比較的速いが、プロセス余裕が狭く、比較的安定となる傾向がある。時点t0から時点t4の間、および、時点t11から時点t12の間は、先に説明した成膜&エッチング並行プロセスと全く同じである。ここでは、時点t4から時点t11までを説明する。また、プロセスガスの流量に関しては、HCl(たとえば5000sccm程度)の流量が若干変わるほか、基本的に同じである。成膜温度は、エッチング作用がないことを考慮して、たとえば摂氏900度程度となっている。
図13に示すように、まず、図6の例から説明する。時点t4において、塩化水素以外のプロセスガス(「成膜ガス」という)の供給を開始することによって、成膜を開始し、時点t7で一旦、成膜ガスの供給を停止する。時点t4から時点t7は、たとえば、40分程度である。時点t7から時点t8の間(たとえば、1分程度)においてチャンバ内気圧をたとえば100kPa程度に、チャンバ内温度を摂氏1050度程度に変更し(温度や気圧を上げるのはエッチングを速やかに進行させるためである)、時点t8において、塩化水素の供給を開始することによって、HClエッチング処理を実施する。HClエッチング処理の処理時間は、たとえば、3分程度である。時点t9において、塩化水素の供給を停止するとともに、チャンバ内気圧およびチャンバ内温度を1分程度で成膜時のそれに戻す。チャンバ内気圧およびチャンバ内温度が戻った時点t10で、塩化水素以外のプロセスガスの供給を再開し、成膜を再開する。ここで、40分程度、成膜を続けて、時点t11でプロセスガスの供給を停止して、成膜を終了する。ここでは、成膜処理2回とその間のエッチング処理1回を施す例を示したが、同様に成膜処理N回とその間のエッチング処理(N−1)回(N=3,4,5等)としてもよい。
次に、図7の例について説明する。この場合は、その他は全て先の図6の例と同じで、最初の成膜期間において、炭素ソースガス(ここでは、MMS)を流す時間帯を時点t4から時点t5までとする。
次に、図8の例について説明する。この場合は、その他は全て先の図6の例と同じで、最初の成膜期間において、炭素ソースガス(ここでは、MMS)を流す時間帯を時点t5から時点t6までとする。
次に、図9の例について説明する。この場合は、その他は全て先の図6の例と同じで、最初の成膜期間において、炭素ソースガス(ここでは、MMS)を流す時間帯を時点t5から時点t11までとする。
5.本願の各実施の形態の半導体装置の製造工程におけるデバイス配向とウエハの結晶方位との関係の説明(主に図14から図17)
このセクションでは、セクション1から4に説明したデバイス構造とその製造の際に用いるシリコンウエハの結晶方位(及び面方位)とPカラム領域PC(またはNカラム領域NC)の配向の関係を説明する。本願の各実施の形態においては、以下説明するいずれかの方位関係を使用することが好適である。
図14はウエハの結晶方位等とPカラム領域の配向の関係の具体例を示すウエハ上面図(基本例:Pカラム等配向関係1)である。図15はウエハの結晶方位等とPカラム領域の配向の関係の具体例を示すウエハ上面図(変形例:Pカラム等配向関係2)である。図16はウエハの結晶方位等とPカラム領域の配向の関係の具体例を示すウエハ上面図(変形例:Pカラム等配向関係3)である。図17はウエハの結晶方位等とPカラム領域の配向の関係の具体例を示すウエハ上面図(変形例:Pカラム等配向関係4)である。これらに基づいて、本願の各実施の形態の半導体装置の製造工程におけるデバイス配向とウエハの結晶方位との関係等を説明する。
(1)Pカラム等配向関係1(主に図14)
通常、エピタキシャル成長の成長特性は結晶方位に依存するから、セクション4に説明したような、埋め込みエピタキシャル成長プロセスを適用する場合は、Pカラム等配向に留意する必要がある。図14の例では、結晶面方位を比較的ウエハ単価の安い(100)面とするとともに、200φウエハにおいてはオリエンテーションフラットOF(300φウエハではノッチ)の方位を<110>とし、これとPカラム領域等の配向PDとを平行又は直交するようにしたことが特徴となっている。これによって、埋め込みが均一に行われる。
(2)Pカラム等配向関係2(主に図15)
図15の例では、結晶面方位を比較的ウエハ単価の安い(100)面とするとともに、200φウエハにおいてはオリエンテーションフラットOF(300φウエハではノッチ)の方位を<100>とし、これとPカラム領域等の配向PDとを平行又は直交するようにしたことが特徴となっている。これによって、図14の場合と同様に、埋め込みが均一に行われる。
(3)Pカラム等配向関係3(主に図16)
図16の例では、結晶面方位を比較的ウエハ単価が貴い(110)面とするとともに、200φウエハにおいてはオリエンテーションフラットOF(300φウエハではノッチ)の方位を<−1、1、−1>とし、これとPカラム領域等の配向PDとを平行又は直交するようにしたことが特徴となっている。これによって、埋め込みが均一に行われるとともに、埋め込み速度が速くなるメリットがある。
(4)Pカラム等配向関係4(主に図17)
図17の例では、結晶面方位を比較的ウエハ単価が貴い(110)面とするとともに、200φウエハにおいてはオリエンテーションフラットOF(300φウエハではノッチ)の方位を<0、0、−1>とし、これとPカラム領域等の配向PDとを平行又は直交するようにしたことが特徴となっている。これによって、埋め込みが均一に行われるとともに、埋め込み速度が速くなるメリットがある。
6.本願の一実施の形態の半導体装置の製造プロセス(トレンチフィル方式)等の説明(主に図18から図33)
このセクションでは、セクション1の図3に示すデバイス(Pカラム等の構造的には図6から図9のいずれか一つ)をセクション4で説明したいずれかのトレンチフィル方式によって製造するウエハプロセスのアウトラインを説明する。
図18は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(N型Siエピタキシ工程)である。図19は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(エピタキシャル埋め込み用溝加工用マスク形成工程)である。図20は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(エピタキシャル埋め込み用溝形成工程)である。図21は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(トレンチフィル工程)である。図22は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(平坦化工程)である。図23は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(不純物導入用表面酸化膜形成工程)である。図24は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(Pウエル領域イオン注入用レジスト膜パターニング工程)である。図25は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(Pウエル領域イオン注入工程)である。図26は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(ゲート酸化&ポリシリコン膜形成工程)である。図27は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(ゲート電極パターニング用レジスト膜形成工程)である。図28は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(ゲート電極パターニング工程)である。図29は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(N型ソース領域への不純物導入工程)である。図30は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(層間絶縁膜形成工程)である。図31は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(コンタクトホール開口用レジスト膜形成工程)である。図32は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(ソースメタル電極形成工程)である。図33は本願の一実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(バックグラインディング&裏面ドレインメタル電極形成工程)である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体装置の製造プロセス(トレンチフィル方式)等を説明する。
まず、図18に示すように、たとえばアンチモンをドープ(たとえば1018から1019/cm3のオーダ程度)したN+シリコン単結晶基板1s(ここでは、たとえば、200φウエハ、なお、ウエハ径は、150φ、300φでも450φでもよい)上に、たとえば、厚さ45マイクロ・メートル程度(600ボルト程度の耐圧を想定)のリン・ドープNエピタキシャル層1e(ドリフト領域、濃度としては、たとえば1015/cm3のオーダ程度)を形成した半導体ウエハ1を準備する。この半導体ウエハ1のデバイス面1a(裏面1bの反対の主面)上に、たとえばP−TEOS(Plasma−Tetraethylorthosilicate)等からなるP型カラム用トレンチ形成用ハード・マスク膜31を形成する(なお、溝の形成はハードマスクを使用せず、レジストをマスクとして形成しても良い)。
次に、図19に示すように、CVDシリコン酸化膜パターニング用レジスト膜7によってパターニングされたP型カラム用トレンチ形成用ハード・マスク膜6(ここで、ハードマスクのドライエッチングガス雰囲気としては、たとえばCF4,CHF3,アルゴン等の混合ガス雰囲気を好適な例とすることができる。)をマスクとして、Nエピタキシャル層1e等をドライ・エッチング(エッチングガスとしては、SF6/O2系またはHBr/Cl系ガスを例示することができる)することにより、図20に示すように、P型カラム用トレンチ3を形成する。続いて、不要になったハード・マスク膜6を除去する。
次に、図21に示すように、P型カラム用トレンチ3に対して、埋め込みエピタキシャル成長を実行し、P型埋め込みエピタキシャル層4(濃度としては、たとえば1015/cm3のオーダ程度)を形成する。埋め込みエピタキシャル成長の条件は、セクション4に詳しく説明したが、たとえば、成膜チャンバ内気圧:5kPaから110kPa、成膜温度:摂氏900度から1100度、シリコンソースガス:DCS,エッチングガス:塩化水素、ボロンドーパントソースガス:ジボラン、炭素ドーパントソースガス:MMS(ゲルマニウムドーパントソースガス:モノゲルマン)を例示することができる。
次に、図22に示すように、平坦化工程、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により、P型カラム用トレンチ3外のP型埋め込みエピタキシャル層4を除去するとともに、半導体ウエハ1の表面1aを平坦化する。なお、ここでは、図22のようなスーパ・ジャンクション構造は、トレンチ・フィル方式のほか、マルチ・エピタキシャル方式で形成してもよい。
次に、図23に示すように、ウエハ1のデバイス面1a(第1の主面)のほぼ全面に不純物導入用表面酸化膜13を形成する。
次に、図24に示すように、Pウエル領域イオン注入用レジスト膜8を通常の光リソグラフィ等により形成する。
次に、図25に示すように、P型不純物ドープ用のイオン種をイオン注入により導入することにより、Pウエル領域9を導入する。打ち込み条件としては、たとえば、イオン種:ボロン、打ち込みエネルギ:20keVから80keV程度、注入濃度:1x1015/cm2から5x1015/cm2程度を例示することができる。その後、不要になったレジスト膜8およびシリコン酸化膜13を除去する。
次に、図26に示すように、ウエハ1のデバイス面1a(第1の主面)のほぼ全面に、熱酸化により、ゲート絶縁膜11を形成する。続いて、その上の全面にゲート電極となるポリシリコン膜12(たとえば厚さ10から100nm程度)をCVDにより堆積する。
次に、図27に示すように、ゲート電極パターニング用レジスト膜14を通常の光リソグラフィ等により形成する。
次に、図28に示すように、ゲート電極パターニング用レジスト膜14をエッチングマスクとして、ドライエッチングを実行することにより、ポリシリコン膜12のパターニングを実行する。その後、不要になったレジスト膜14を除去する。
次に、図29に示すように、注入すべき領域上に表面酸化により比較的薄いシリコン酸化膜(イオン注入用絶縁膜)を形成した後、N型不純物をイオン注入することにより、N型ソース領域15を導入する。打ち込み条件としては、たとえば、イオン種:砒素、打ち込みエネルギ:20keVから50keV程度、注入濃度:1x1015/cm2から5x1015/cm2程度を例示することができる。
次に、図30に示すように、ウエハ1のデバイス面1a(第1の主面)のほぼ全面に、CVDにより酸化シリコン系の絶縁膜を主要な構成要素とする層間絶縁膜17を形成する。続いて、必要があれば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等により、層間絶縁膜17の表面を平坦化する。
次に、図31に示すように、層間絶縁膜17上に通常の光リソグラフィ等により、コンタクトホール開口用レジスト膜20を形成する。そして、コンタクトホール開口用レジスト膜20マスクとして、コンタクトホール18をドライエッチングにより形成するとともに、更に、シリコン表面をたとえば5から10マイクロメートル程度、更にエッチングする。続いて、コンタクトホール18を介して、イオン注入により、P型不純物を導入することにより、P+ボディコンタクト領域19を導入する。打ち込み条件としては、たとえば、イオン種:BF2、打ち込みエネルギ:たとえば40keV程度、注入濃度:1x1015/cm2から5x1015/cm2程度を例示することができる。その後、イオン打ち込み後のアニール(たとえば、RTA処理で摂氏1000度、30秒程度)を実施する。
次に、図32に示すように、主に下層のバリアメタル層(たとえばTiW)および上層のアルミニウム系メタル電極膜から構成されたソースメタル電極21をスパッタリング成膜等により形成する。続いて、ファイナルパッシベーション膜(たとえば酸化シリコン系膜、窒化シリコン系膜、ポリイミド膜等の有機系樹脂膜またはこれらの内個以上の複合膜)を形成して、このファイナルパッシベーション膜に必要な開口部を開口する。続いて、ウエハ1の裏面1bをバックグラインディング処理することにより、ウエハの厚さをたとえば100から300マクロメートル程度(図中に破線で示す)まで薄くする。
次に、図33に示すように、裏面金属電極22をスパッタリング成膜等により形成する。裏面金属電極22の構成としては、たとえば、シリコン基板1sに近い方から、ニッケル膜、チタン膜、金膜等から構成される幕を例示することができる。
この後、ダイシングにより、ウエハ1をここのチップに分割して、個別デバイスとなる。
7.本願の他の実施の形態の半導体装置の製造プロセス(マルチエピタキシ方式)等の説明(主に図34から図39)
このセクションでは、セクション1および3で説明したデバイス構造をセクション4等で説明した装置等によって実現する際のウエハプロセスのアウトラインを説明する。以下は、セクション6の図18から図22に対応するもので、その後は、図23から図33とほぼ同じであるので、その部分に関する説明は繰り返さない。
図34は本願の他の実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(1層目ボロン拡散防止元素含有N型Siエピタキシャル成長工程)である。図35は本願の他の実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(1層目ボロン拡散防止元素含有N型Siエピタキシャル領域への選択的ボロン不純物導入)である。図36は本願の他の実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(1層目ボロン拡散防止元素含有N型Siエピタキシャル領域への選択的ボロン不純物導入用レジスト膜除去工程)である。図37は本願の他の実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(2層目ボロン拡散防止元素含有N型Siエピタキシャル成長工程)である。図38は本願の他の実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(2層目ボロン拡散防止元素含有N型Siエピタキシャル領域への選択的ボロン不純物導入)である。図39は本願の他の実施の形態の半導体装置の一例であるパワーMOSFETの製造工程の全体の流れを示すデバイス断面プロセスフロー図(2層目ボロン拡散防止元素含有N型Siエピタキシャル領域への選択的ボロン不純物導入用レジスト膜除去工程)である。これらに基づいて、本願の他の実施の形態の半導体装置の製造プロセス(マルチエピタキシ方式)等を説明する。
まず、図34に示すように、たとえばアンチモンをドープ(たとえば1018から1019/cm3のオーダ程度)したN+シリコン単結晶基板1s(ここでは、たとえば、200φウエハ、なお、ウエハ径は、150φ、300φでも450φでもよい)すなわち、シリコン単結晶基板裏面領域上に、たとえば、厚さ5から10マイクロ・メートル程度のリン・ドープN型シリコン系エピタキシャル層31a(ドリフト領域、濃度としては、たとえば1015/cm3のオーダ程度)すなわち、N型シリコン単結晶基板表面領域を形成する。ここで、シリコン系エピタキシャル層1eは、たとえば、Si1−xCxエピタキシャル層(ボロン拡散防止元素添加N型Siエピタキシャル層)である。ここで、たとえばX=0.0001から0.01である。エピタキシャル成長条件は、たとえば、たとえば、成膜チャンバ内気圧:5kPaから110kPa、成膜温度:摂氏900度から1100度、シリコンソースガス:DCS,エッチングガス:塩化水素、リンドーパントソースガス:PH3(ホスフィン)、炭素ドーパントソースガス:MMSを例示することができる。
次に、図35に示すように、ウエハ1のデバイス面1a上に通常の光リソグラフィにより、ボロン注入用レジスト膜35aを形成し、それをマスクとして、N型シリコン系エピタキシャル層31a中にP型不純物をイオン注入等で導入する。打ち込み条件としては、たとえば、イオン種:BF2、打ち込みエネルギ:数MeV程度を例示することができる。打ち込み濃度は、アニール後(たとえば摂氏900度、60分程度)に1から8x1015/cm3程度になるように設定する。これによって、図36に示すように、1層目ボロン拡散防止元素添加P型Siエピタキシャル領域34a(P型シリコン系単結晶領域)が形成される。
なお、この方式においては、(必須ではないが)繰り返し堆積する下層のエピタキシ層から上層のエピタキシ層に変わるにつれて、徐々に打ち込み濃度を減少させてゆくことにより、アニール後に全体を均一にすることができる(以下においても同じ)。
次に、図37に示すように、図34と同様に、ウエハ1のデバイス主面1a側のほぼ全面に、たとえば、厚さ5から10マイクロ・メートル程度のリン・ドープN型シリコン系エピタキシャル層31b(ドリフト領域、濃度としては、たとえば1015/cm3のオーダ程度)を形成する。ここで、シリコン系エピタキシャル層1eは、たとえば、Si1−xCxエピタキシャル層(ボロン拡散防止元素添加N型Siエピタキシャル層)である。ここで、たとえばX=0.0001から0.01である。エピタキシャル成長条件は、たとえば、たとえば、成膜チャンバ内気圧:5kPaから110kPa、成膜温度:摂氏900度から1100度、シリコンソースガス:DCS,エッチングガス:塩化水素、リンドーパントソースガス:PH3(ホスフィン)、炭素ドーパントソースガス:MMSを例示することができる。
次に、図38に示すように、図35と同様に、ウエハ1のデバイス面1a上に通常の光リソグラフィにより、ボロン注入用レジスト膜35bを形成し、それをマスクとして、N型シリコン系エピタキシャル層31b中にP型不純物をイオン注入等で導入する。打ち込み条件としては、たとえば、イオン種:BF2、打ち込みエネルギ:数MeV程度を例示することができる。打ち込み濃度は、アニール後(たとえば摂氏900度、60分程度)に1から8x1015/cm3程度になるように設定する。これによって、図39に示すように、1層目ボロン拡散防止元素添加P型Siエピタキシャル領域34b(P型シリコン系単結晶領域)が形成される。
このエピタキシャル成長とイオン打ち込みのサイクルを耐圧に対応する所定の厚さになるまで繰り返し、その後、図23へ進む。
8.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前記実施の形態では、プレーナー型ゲート構造のMOS構造を例にとり具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、U−MOSFET等のトレンチ型ゲート構造やLD−MOSFETにも全く同様に適用できることは言うまでもない。また、MOSFETのレイアウトは、pnカラムに平行にストライプ状に配置した例を示したが、pnカラムに直交する方向に配置したり、格子状に配置したり種種応用可能である。
なお、前記実施の形態では、N+シリコン単結晶基板上のNエピタキシャル層上面に主にNチャネルデバイスを形成するものを具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、P+シリコン単結晶基板上のNエピタキシャル層上面にPチャネルデバイスを形成するものでもよい。
また、前記実施の形態では、Nチャネル系パワー半導体(またはNPN系)を中心に説明したが、Pチャネル系パワー半導体(またはPNP系)については、構造的には、全ての領域のPNを置き換える操作(PN反転)を実行したものとなる。なお、製法的には、PまたはN型の選択的イオン注入、PまたはN型の(全面又は埋め込み)エピタキシャル成長等を適宜使用すればよい。
また、前記実施の形態では、パワーMOSFETを例にとり具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、スーパジャンクション構造を有するパワーデバイス(IGBT,サイリスタを含む)、すなわち、ダイオード、バイポーラトランジスタ等にも適用できることは言うまでもない。なお、これらのパワーMOSFET、ダイオード、バイポーラトランジスタ等を内蔵する半導体集積回路装置等にも適用できることは言うまでもない。
更に、前記実施の形態では、スーパジャンクション構造の形成法として、主にトレンチフィル方式を具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、たとえば、マルチエピタキシャル方式等も適用できることは言うまでもない。
なお、前記実施の形態では、カーボンドープについて、モノメチルシラン等を使用した例を具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、たとえば、トリメチルシラン等の液化ガスを用いることも可能であることは言うまでもない。