JP2011143332A - 高分子自立膜及びそれを使用した分離膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】水処理膜やガス分離膜、浸透圧発電用の逆浸透膜、食品や化学品の製造用の膜など、幅広い応用が可能な、ナノメートル厚みで大面積のものを作製可能な薄膜を提供する。
【解決手段】枠に張られたポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、ゼラチンなどの界面活性高分子の水溶液の泡膜を乾燥させることで得られる高分子自立膜及びそれを使用した分離膜。
【選択図】図3

Description

本発明は極薄の高分子自立膜とその製造方法に関する。
ナノメートル厚みの薄膜には、水処理膜やガス分離膜、浸透圧発電用の逆浸透膜、食品や化学品の製造用の膜など、幅広い応用がある。液体やガスの透過速度は、一般に膜厚に反比例する。即ち、極薄の分離膜では高速透過が実現でき、分離に必要なエネルギーコストの大幅な低減が期待されている。本明細書では、少なくとも所定の面積において、他の支持体が存在しなくとも膜としての形状を保つことができる膜のことを「自立膜」と言う。極薄の自立膜の作製には、幾つかの方法が利用できる。例えば、数10nmの厚みの逆浸透膜は、液/液界面でのモノマーの重縮合により作製される。この方法は、大面積の自立膜を工業的に製造するための優れた方法であるが、多官能性モノマーの組み合わせにのみ有効であり、得られる高分子膜の種類が限られている。最近、表面を部分的に酸化した単層カーボンナノチューブを水分散し、これを濾過することで、ナノ繊維状の自立膜が製造されている(カーボンナノチューブの濾過による自立膜の製造を報告した論文である非特許文献1を参照)。類似の方法として、ナノストランドと呼ばれる金属水酸化物のファイバーに水中でタンパク質を吸着させてナノ複合ファイバーを形成させ、これを濾過することで、極薄のナノ多孔性の自立膜が製造されている。このようにして製造された極薄の膜では、従来の限外濾過膜の1000倍以上の高透過性が確認されており、水処理膜としての幅広い応用が期待されている(ナノストランドとタンパク質の複合ファイバーから作製した自立膜が限外濾過膜となることを示した論文である非特許文献2を参照)。濾過法は、大面積の自立膜を製造するための優れた方法であるが、高いアスペクト比を有するナノ繊維状の物質を形成させる必要があり、また濾過のためにサブミクロン程度の細孔をもつ平滑な基板を用いる必要がある。
熱可塑性の高分子薄膜は、インフレーション法で製造できる。この方法は、溶融高分子を円形の穴からチューブ状に押し出しつつ圧縮空気を吹き込み膨らます方法であり、ラップや袋の製造に用いられる。インフレーション法は、チューブが円筒状に延伸されて強度が増し、ポリプロピレンなどのラップの大量生産に適した方法であるが、必ずしも厚み制御に優れているとは言えない。LIEBERらは、シリコンナノワイヤーやカーボンナノチューブを混ぜたエポキシ樹脂の分散液からバブルを形成させ、柔軟かつ導電性の高分子薄膜を製造している(ナノチューブやナノワイヤーを分散させた高分子シートがバブル形成により得られることを示した論文である非特許文献3を参照)。この場合、先のインフレーション法におけるポリプロピレンのような結晶化が起こらないため、高分子溶液を膨張させることで200〜500nmの薄さの高分子膜を製造することができる。
これに対して、本願発明者は、薄い自立膜の新しい作製法として泡膜に着目した。泡膜は、界面活性分子の水溶液からなる平滑な自立膜である。一般に知られているシャボン膜は、界面活性分子の一つである長鎖脂肪酸の塩の水溶液を用いて得られる泡膜である。泡膜は、界面活性分子の水溶液に細い針金などで作った枠を浸し、引き上げることで形成される。枠の内側には界面活性分子の水溶液の膜が形成されるが、この膜は、水溶液が重力で流れ落ちることで、瞬時に数マイクロメートル厚まで薄化する。さらに放置すると、時間とともにさらに薄化していき、最終的には、数ナノメートルの薄さとなる。泡膜は、2つの気液界面に界面活性分子の単分子の膜が形成され、その間に水溶液の層が形成されている。この水溶液の層の存在は、泡膜の安定性に非常に重要であるが、泡膜のサイズが数マイクロメートル程度であれば、水を完全に失っても膜が壊れない(界面活性分子の泡膜のサイズが小さい場合、高真空下で水を完全に失っても泡膜が存在することを初めて示した論文である非特許文献4、また本願発明者と発明者が一部共通する特許文献1を参照)。このような膜(乾燥泡膜)は、高真空下でも安定に存在するため、極薄の無機自立膜の製造などに利用されている(乾燥泡膜(水を失った泡膜)が無機材料を蒸着するための基板に成り得ることを示した論文である非特許文献5を参照)。
界面活性分子の水溶液にポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンのような親水性高分子を混入させると、インフレーション法により、高分子薄膜の形成が可能となる。このような水溶液を用いると、割れないシャボン玉を作製できることも知られている。しかしながら、上記のインフレーション法に用いられる高分子と界面活性分子の混合水溶液は、粘性が高いために、泡膜として薄化させることができない。物理化学的な研究のために、高分子電解質を溶解させた界面活性分子の水溶液から泡膜を形成させた報告がある(界面活性分子の水溶液に高分子電解質を溶解させ、泡膜の形成過程を観察した論文である非特許文献6を参照)。しかしながら、これらの泡膜は、乾燥に耐えることができない。特殊な例として、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(界面活性高分子)を用い、溶媒としてイオン性液体を利用することで、厚み約10nm、サイズが数100マイクロメートルの高真空下でも安定な泡膜が作製されている(水の代わりに蒸気圧が著しく低いイオン性液体を用いると、界面活性高分子の溶液から高真空下でも安定な泡膜が形成できることを示した論文である非特許文献7を参照)。この場合、蒸気圧が著しく小さいイオン性液体が常に泡膜の内部に存在するため、膜の構造を保つことができる。しかしながら、イオン性液体が高価であり、かつイオン性液体に溶解する界面活性高分子が限られているため、高分子自立膜の実用的な製造法とは成り得ていない。また、スメクチック液晶相を示す液状の有機分子から、泡膜に類似した薄い薄膜が形成されているが(スメクチック液晶相を示す液状の有機分子から、孔の開いたフレームの内部に自立膜を形成できることを示した論文である非特許文献8を参照)、高分子薄膜と比較して力学的強度が著しく小さく、分離膜としての実用化が困難であった。
上述した背景技術の問題点を解消し、分離膜などとして利用できる大面積のナノメートル厚みを有する高分子自立膜を提供することが本発明の課題である。
本願発明者は、低粘性の高分子溶液から、圧力をかけて膨張させることなく、極薄の高分子膜を作製する手法の開発を行った。その結果、水への表面張力の低下を示す界面活性高分子であり、その高分子が気液界面で適度の柔軟性をもつならば、その水溶液から細い針金等の枠の内部に泡膜を形成させることができ、かつ泡膜を乾燥させることで極薄の高分子自立膜が得られることを見出した。
本発明の一側面によれば、枠に張られた界面活性高分子の水溶液の泡膜を乾燥させてなる高分子自立膜が与えられる。
上述の高分子自立膜は厚みが10nmから3μmの範囲であってよい。
上述の高分子自立膜は面積が1mmから100cmの範囲であってよい。
上述の界面活性高分子はまた、界面活性を示す直鎖状の水溶性高分子であってよい。
上述の界面活性高分子は更に具体的には、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、または親水性部位と疎水性部位を有するブロックポリマーであってよい。
上述の水溶液は気液界面に形成される上述の界面活性高分子の薄膜に流動性を与える添加剤を含んでよい。
上述の添加剤は具体的にはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミンまたはエチレングリコールであってよい。
上述の界面活性高分子はまたタンパク質であってよい。
上述のタンパク質は具体的には、ゼラチン、アルブミンまたはフィブリノーゲンであってよい。
上述の水溶液は上述の界面活性高分子の架橋剤を含んでよい。
上述の泡膜の乾燥後に加熱処理を施すことにより、上述の界面活性高分子の一部または全部を架橋せしめてよい。
上述の泡膜の乾燥後に前記界面活性高分子の架橋剤溶液に浸漬することにより、前記界面活性高分子の一部または全部を架橋せしめてもよい。
上述の架橋剤はマレイン酸、グルタルアルデヒド、トリメシン酸、乳酸、クエン酸、メラニン、またはメチロールメラニンであってよい。
上述の高分子自立膜の面積は3cm以上であってよい。
上述の水溶液の表面張力は50mN/m以下であってよい。
本発明のほかの側面によれば、上述の何れかの高分子自立膜を使用した分離膜が与えられる。
本発明によれば、厚さが数マイクロメートル以下で大面積の高分子薄膜を簡単な手順で安価に作製することができる。
PVAとTEAの混合水溶液から作製された高分子自立膜の断面のSEM像。 PVA、TEA、ならびにPVAとTEAの混合水溶液から作製された高分子自立膜のFT−IRスペクトル。 PVAとTEAの混合水溶液から作製された高分子自立膜にカーボンを蒸着して撮影した写真。 PVAとTEA、MAの混合水溶液から作製された水に不溶な高分子自立膜のSEM像。 PVAとTEA、TMAの混合水溶液から作製された水に不溶な高分子自立膜のSEM像。 金ナノ粒子の水溶液の紫外可視吸収スペクトルならびに水に不溶なゼラチン膜を用いて濾過後の該水溶液の紫外可視吸収スペクトル。 PVAとTEA、DY−50の混合水溶液から作製された高分子自立膜の写真。 PVAとTEA、F−127の混合水溶液から作製された高分子自立膜の表面のSEM像。
水への表面張力の低下を示す界面活性高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)やポリグルタミン酸(PGA)、ポリアクリル酸(PA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリビニルピリジン(PVPy)、ポリビニルピロリドン(PVP)ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)などがある。また、ホモポリマーだけでなく、親水性部位と疎水性部位をもつ多くのブロックポリマーが水の表面張力の低下を示す界面活性高分子となることが知られている。これらの高分子の水溶液は、気液界面に高分子の薄膜が形成されるために、界面活性の特性を示す。気液界面に形成される高分子の薄膜は、通常、結晶化する傾向があり、流動性の低下は泡膜の不安定化をもたらす。これは、マランゴニーフローによる泡膜の安定化のメカニズムが失われるからである。しかしながら、適当な添加剤を加えて気液界面の高分子の薄膜に流動性を与えれば、泡膜を安定化することが可能となる。この添加剤には、トリエタノールアミンやジエタノールアミン、エタノールアミン、エチレングリコールなどを用いることができる。
一方、水への表面張力の低下を示す界面活性高分子の別の例として、タンパク質が利用できる。例えば、食品として用いられるゼラチンは、熱水に溶解し、このとき、気液界面に単分子膜を形成して表面張力を低下させる。ゼラチンのようなタンパク質では、気液界面の単分子膜が適度の柔軟性をもつために、特に添加剤を加える必要はない。
ポリビニルアルコールでは、水溶性が高く、かつ表面張力を十分に低下させるために、ケン化度が80%程度のものが好適に用いられる。一方、ポリグルタミン酸では、表面張力を十分に低下させるためには、10wt%以上の濃度が適当である。泡膜の安定性は、サイズ(面積)にも依存し、安定な泡膜からは、100cm以下の面積の高分子自立膜が作製できる。3cm以上の面積の泡膜を安定化させるためには、濃度やpHにより表面張力を50mN/m以下に調製することが好ましい。一方、ゼラチンの場合、5wt%の水溶液(約70℃)で表面張力が50mN/m以下となるが、酸性になるほど表面張力を低下させる傾向が強くなるため、より低濃度の水溶液を用いることができる。本発明で形成される高分子自立膜の面積は、高分子の種類や濃度に依存するが、概ね1mm〜100cmの範囲にある。
本発明では、直径2cmの円形の枠を用いた場合、通常数10nmから数マイクロメートルの範囲の厚みの高分子自立膜が形成される。これは、高分子の水溶液から枠の内部に泡膜が形成されるときに、水溶液の粘性が低いため、瞬時に数マイクロメートルから数10マイクロメートルの薄さの薄膜となることに由来する。界面活性高分子の濃度が10wt%である場合、乾燥により、数100nmから数マイクロメートルの範囲の厚みの自立膜となる。一方、界面活性高分子の濃度が1wt%である場合、乾燥により、数10nmから数100nmの厚みの自立膜となる。泡膜では、気液界面の界面活性高分子の単分子膜で挟まれた水溶液が、キャピラリー力により周辺部に移動するため、さらに薄い高分子自立膜の形成も可能であるが、界面活性高分子の場合、分子量の小さい界面活性分子と比較して周辺部に移動する速度が遅いため、10nm以下の厚みの自立膜を得ることは困難である。
本発明における高分子自立膜は、構造上の特徴としては、表面が界面活性高分子の分子膜で覆われていることである。これは、泡膜を経由して製造されるため、必然的に表面が分子膜で覆われることになり、膜の表面が分子スケールで平滑になっている。より詳しくは、本発明の高分子自立膜は、組成として、合成高分子と流動性を与えるための添加剤からなるものと、界面活性のタンパク質からなるものに分けられ、厚みが10マイクロメートル以下であり、かつ乾燥によって壊れることはないという特徴をもつ。
一方、本発明の高分子自立膜は、製造上の特徴として、界面活性高分子の水溶液から泡膜を形成させ、室温で、または加熱して乾燥させる工程によることが挙げられる。
さらに本発明では、上記のような高分子自立膜を架橋化することで、水に不溶な高分子自立膜を形成できる。架橋化の方法としては、泡膜を形成させる水溶液に2官能性または3官能性の架橋化剤を加える方法が好適に用いられる。2官能性の架橋化剤としては、特に限定する訳ではないが、マレイン酸、グルタルアルデヒドなどが挙げられ、3官能性の架橋化剤としては、トリメシン酸、乳酸、クエン酸、メラニン、メチロールメラニンなどが挙げられる。架橋化の方法としては、これらの架橋化剤を含む高分子自立膜を加熱する方法が好適に用いられる。一方、本発明の方法によって作製させた高分子自立膜を架橋化剤の溶液に浸すことによっても、水に不溶な高分子自立膜を作製できる。
架橋化された高分子自立膜は、熱水等に不溶となり、水処理膜などへの応用が可能となる。高分子自立膜の架橋化は、必ずしも全ての高分子を架橋する必要はない。例えば、架橋化剤の濃度や反応時間を制御することで、高分子の一部を架橋すると、多くの細孔をもつ熱水等に不溶な高分子自立膜となる。また、表面近傍の高分子を架橋すると、濾過膜としての阻止性能を維持しながら、水の透過速度を向上させることも可能となる。もちろん、求められる特性に応じて全ての高分子を架橋しても良い。さらに本発明では、泡膜を形成させる水溶液に、界面活性高分子や流動性を与えるための添加剤以外の水溶性の有機分子を混入させることで、様々な有機分子を含む高分子自立膜を製造できる。
以下の実施例では、もちろんこれらに限定する意図は全くないが、界面活性高分子の例としてPVAとPGAを示した。PVAは中性の界面活性高分子の代表格であり、PVAで自立膜が形成されることは、適度な疎水性基をもつ親水性高分子であれば、自立膜が形成出来る可能性が高い。また、PGAはカルボキシル基をもつ界面活性高分子の代表格であり、適度な疎水性を示すカルボキシル基をもつ合成高分子に一般化できる。ここで重要なことは、安定な泡膜が形成するように、表面張力が低下する条件を捜すことである。
本発明では、ゼラチンから高分子自立膜が形成されたが、表面張力の低下を示すタンパク質は、数多く存在する。例えば、アルブミンやフィブリノーゲンは、それぞれ0.01mg/mL、0.1mg/mL以上の濃度で、表面張力を50mN/m以下に低下させる。さらに、タンパク質では、表面にアミノ基とカルボキシル基が存在し、pHを制御することで、界面活性高分子としての性質を幅広く調製できる。このため、ゼラチンに限らず、表面張力を低下させることができるタンパク質であれば、本件特許の技術的範囲に属する。
高分子自立膜が水に溶解するものである場合は医用面の応用が考えられるが、他の分野では高分子自立膜は水に溶解しないものの方がその用途が広い。
本発明の自立膜を透過膜として利用する場合には、阻止率の向上と水の透過速度の向上が重要であるが、この場合、タンパク質の架橋の方法が特に重要となる。架橋化の方法は多様なものが考えられるが、水の透過速度向上には、表面近傍のタンパク質のみを架橋する、あるいは架橋されていないタンパク質を残すことが有効である。
[実施例1]
実施例1では、ポリビニルアルコールを用いて高分子自立膜を作製した。
分子量88000のポリビニルアルコール(PVA、ケン化率78〜82%)が3〜6wt%、添加剤としてのトリエチルアミン(TEA)が4.5〜30wt%を含む水溶液を調製し、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製した。これを室温または70℃で乾燥させることで高分子自立膜を作製した。TEAの代わりに、ジエタノールアミン(DEA)を10.5wt%含む水溶液、あるいはエタノールアミン(EA)を9.2wt%含む水溶液、あるいはエチレングリコール(EG)を18wt%含む水溶液からも高分子自立膜の作製を行った。実施した実験条件を表1に示す。
表1において、F1−20の実験は、太さが0.45mmの銅線で作った直径4mmのリングを用いて行った。また、R.T.(室温)は20〜25℃を示す。
表1における膜厚は、走査電子顕微鏡(SEM)により計測した。0.08wt%、0.8wt%、8wt%のPVA水溶液は、それぞれ45.6mN/m、44.8mN/m、40.3mN/mの表面張力を示すことが確認された。即ち、表1の実験条件では、安定な泡膜が形成される条件(表面張力が50mN/m以下)を満たしている。
図1には、F1−13の条件で作製した試料の断面のSEM写真を示す。この像から、得られた高分子自立膜が極めて平滑であることがわかる。複数の箇所を観察することで、膜厚が1.5マイクロメートルであることが明らかとなった。図2には、PVA、TEA、ならびにF1−13の条件で作製した試料のFT−IRを示す。PVAは、ケン化率が78〜82%であるため、1736cm−1にエステルの吸収を有する。TEAは、1033cm−1と1070cm−1に3級アミンのCN伸縮振動のピークを示す。これらのピークが高分子自立膜でも観察されることから、2つの成分が含まれていることがわかる。自立膜に観察される1600cm−1のピークは、PVAのエステルの一部が加水分解され、酢酸がTEAと塩を形成しているものと考えられる。図3には、F1−13の条件で作製した試料の表面に70nmのカーボンを蒸着して撮影した写真を示す。本発明で得られる高分子自立膜は、乾燥によって壊れることはないという特徴をもつので、真空下でカーボンを蒸着することができる。また、Pt等の金属をスパッタリングによりコーティングすることも可能であった。
[実施例2]
実施例2では、ポリグルタミン酸を用いて高分子自立膜を作製した。
分子量分布が80万〜100万のポリグルタミン酸(PGA)が12wt%、添加剤としてのTEAが7.45wt%を含む水溶液を調製し、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製した。これを70℃で乾燥させることで高分子自立膜を作製した。TEAの代わりに、DEAを10.5wt%含む水溶液、あるいはEAを9.15wt%含む水溶液、あるいはEGを18wt%含む水溶液からも高分子自立膜の作製を行った。実施した実験条件を表2に示す。
表2において、F2−4の実験は、太さが0.45mmの銅線で作った直径4mmのリングを用いて行った。
表2における膜厚は、走査電子顕微鏡(SEM)により計測した。0.8wt%、8wt%のPGA水溶液は、それぞれ61.1mN/m、51.8mN/mの表面張力を示すことが確認された。このため、表2の実験条件では、表面張力が50mN/m以下となるように、12wt%の水溶液を用いた。
添加剤としてTEA、DEA、EAを用いた場合、膜の厚みは0.5〜1.5マイクロメートルであった。EGでは、直径2cmのリングを用いて確実に膜を作ることが困難であったが、直径4mmのリングを用いると0.5マイクロメートルの厚みの高分子自立膜の作製が可能であった。PGAは、吸水性が高いために、70℃で乾燥後、湿度が高い場所に放置すると、徐々に湿気を吸収し、膜が破れる。しかしながら、乾燥によって膜が壊れることはなかった。
[実施例3]
実施例3では、PVAと添加剤、架橋剤を含む水溶液から水に不溶な高分子自立膜を作製した。
分子量88000のPVA(ケン化率78〜82%)が4wt%、添加剤としてのTEAが7.5wt%、架橋剤としてマレイン酸(MA)を0.6〜2wt%含む水溶液を調製し、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製した。これを室温で乾燥させることで高分子自立膜を作製した。さらに165〜170℃で3時間加熱し、水に不溶な高分子自立膜を作製した。MAの代わりに、トリメシン酸(TMA)を2.1wt%含む水溶液からも水に不溶な高分子自立膜の作製を行った。実施した実験条件を表3に示す。
表3において、R.T.(室温)は20〜25℃を示す。
表3における膜厚は、走査電子顕微鏡(SEM)により計測した。加熱処理により、PVAが架橋化され、同時に過剰のTEAが消失するが、MAが過剰の場合は、TEAと塩を形成し、自立膜の内部に留まる。このため、F3−1やF3−2の条件では、1マイクロメートル程度の厚みの自立膜が形成される。一方、MAが少ない場合、TEAが消失し、薄い自立膜が得られることが分かった。F3−4では、高分子自立膜の厚みは170nmとなる。これらの自立膜は、水やエタノールに不溶であることが確認された。図4と図5には、それぞれF3−1とF3−5の条件で作製された高分子自立膜のSEM像を示す。表3に示した自立膜は、150nm以上の厚みのカーボン膜、50nm以上の厚みの白金膜を蒸着しても、膜は破れることがなかった。F3−4の条件で作製された自立膜は、多孔性の基板に乗せ、水処理膜としての性能を評価した。その結果、直径5nmの金ナノ粒子の水溶液を90kPaの圧力差で透過させた場合、ナノ粒子が完全に除去できることが明らかとなった。PVAは結晶性の高分子であるが、水の透過速度は5.8L/mhであった。
[実施例4]
実施例4では、PGAと添加剤、架橋剤を含む水溶液から水に不溶な高分子自立膜を作製した。
分子量分布が80万〜100万のPGAが12wt%、添加剤としてのTEAが7.5wt%、架橋剤としてマレイン酸(MA)を2wt%、架橋剤としてエチレンジアミンを9wt%、架橋剤として1,3,5−トリヒドロキシベンゼンを6wt%含む水溶液を調製し、調製後直ぐに、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製した。これを70℃で乾燥させることで高分子自立膜を作製した。さらに180℃で3時間加熱し、水に不溶な高分子自立膜を作製した。このフィルムはエタノールにも不溶であることが確認された。
[実施例5]
実施例5では、ゼラチンの水溶液から高分子自立膜を作製した。
豚表皮由来のゼラチンを10wt%含む水溶液(70℃)を調製し、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製した。これを室温で1時間乾燥させ、さらに70℃で1時間乾燥させた。このような方法により厚みが500nmの高分子自立膜を作製できることが確認された。
[実施例6]
実施例6では、ゼラチンの水溶液から水に不溶な高分子自立膜を作製した。
豚表皮由来のゼラチンを10wt%含む水溶液(70℃)を調製し、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製した。これを室温で1時間乾燥させ、さらに70℃で1時間乾燥させた。この自立膜を10wt%のグルタルアルデヒドの水溶液に1時間浸し、水で洗浄した。このようにして作製された架橋ゼラチン膜は、水にも熱水(80℃)にも不溶であることが確認された。
[実施例7]
実施例7では、水に不溶なゼラチン膜の濾過膜としての特性を評価した。
豚表皮由来のゼラチンを5wt%含む水溶液(70℃)を調製し、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製した。これを室温で1時間乾燥させ、さらに70℃で1時間乾燥させた。この自立膜を10wt%のグルタルアルデヒドの水溶液に30分間浸し、水で洗浄した。このようにして作製された架橋ゼラチン膜を多孔性の基板に乗せ、水処理膜としての性能を評価した。その結果、直径5nmの金ナノ粒子の水溶液を80kPaの圧力差で透過させた場合、ナノ粒子が完全に除去できることが明らかとなった。水の透過速度は8.0L/mhであった。図6には、ゼラチン膜を用いて濾過する前後の金ナノ粒子の紫外可視吸収スペクトルを示す(吸光度が高く波打っている線が濾過前の、また吸光度が低くしかもほぼ一定の線が濾過後のスペクトルである)。これにより、濾過された水溶液には、金ナノ粒子に基づく520nm付近の吸収が完全に失われていることは明らかである。
[実施例8]
実施例8では、水に不溶なゼラチン膜のナノ濾過膜としての特性を評価した。
豚表皮由来のゼラチンを3wt%含む水溶液(70℃)を調製し、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製した。これを室温で1時間乾燥させた。この自立膜を10wt%のグルタルアルデヒドのエタノール溶液に30分間浸し、水で洗浄し、70℃で1時間乾燥した。このようにして作製された架橋ゼラチン膜を多孔性の基板に乗せ、水処理膜としての性能を評価した。その結果、80kPaの圧力差で透過した場合、幅1.2nmの色素分子(ダイレクトイエロー)やアニオンのサイズが0.9nmであるフェリシアン化カリウムが完全に除去できることが明らかとなった。水の透過速度は、11.0L/mhであった。
[実施例9]
実施例9では、様々な有機分子を含む高分子自立膜を作製した。
分子量88000のPVA(ケン化率78〜82%)が6wt%、添加剤としてのTEAが7.5wt%、有機分子として銅フタロシアニン4スルホン酸ナトリウム(CuPC)を0.3wt%含む水溶液を調製し、太さが0.45mmの銅線で作った直径2.0cmのリングを水溶液に浸し、引き上げることで泡膜を作製し、室温で乾燥させることで高分子自立膜を作製した。CuPCの代わりに、スルホローダミンB(SRAB)、ダイレクトイエロー50(DY−50)、フェリチン、プルロニックF127(F−127)を含む水溶液からも高分子自立膜の作製を行った。実施した実験条件を表4に示す。
表4において、R.T.(室温)は20〜25℃を示す。
表4に示すような条件では、高分子自立膜の内部に添加剤とは異なる有機分子(色素、タンパク質、界面活性分子)を含有させることが可能であった。図7には、F4−3の条件でDY−50を含有させた高分子自立膜の写真を示す。これより、有機色素が均一に分布しており、高分子自立膜が平滑であることが明らかである。F4−4の条件でフェリチンを含有させた場合にも、平滑なフィルムが得られた。
図8には、F4−5の条件でF−127を含有させた場合の高分子自立膜の表面のSEM像を示す。F−127はトリブロック高分子であり、PVAと同じような界面活性を示す。図8より、2つの界面活性高分子が共存する場合、必ずしも平滑な自立膜を得られないことが確認された。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、たとえば各種のガスや液体の透過/濾過などに使用することのできるナノメートルスケールの厚さの膜を容易に提供することができるので、産業上大いに有用である。
特開2006−929号
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Claims (16)

  1. 枠に張られた界面活性高分子の水溶液の泡膜を乾燥させてなる高分子自立膜。
  2. 厚みが10nmから3μmの範囲である請求項1に記載の高分子自立膜。
  3. 面積が1mmから100cmの範囲である請求項1または2に記載の高分子自立膜。
  4. 前記界面活性高分子は界面活性を示す直鎖状の水溶性高分子である、請求項1から3の何れかに記載の高分子自立膜。
  5. 前記界面活性高分子はポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、または親水性部位と疎水性部位を有するブロックポリマーである、請求項1から4の何れかに記載の高分子自立膜。
  6. 前記水溶液は気液界面に形成される前記界面活性高分子の薄膜に流動性を与える添加剤を含む、請求項1から5の何れかに記載の高分子自立膜。
  7. 前記添加剤はトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミンまたはエチレングリコールである、請求項6に記載の高分子自立膜。
  8. 前記界面活性高分子はタンパク質である、請求項1から4の何れかに記載の高分子自立膜。
  9. 前記タンパク質はゼラチン、アルブミンまたはフィブリノーゲンである、請求項8に記載の高分子自立膜。
  10. 前記水溶液は前記界面活性高分子の架橋剤を含む、請求項1から5の何れかに記載の高分子自立膜。
  11. 前記泡膜の乾燥後に加熱処理を施すことにより、前記界面活性高分子の一部または全部を架橋せしめた、請求項10に記載の高分子自立膜。
  12. 前記泡膜の乾燥後に前記界面活性高分子の架橋剤溶液に浸漬することにより、前記界面活性高分子の一部または全部を架橋せしめた、請求項1から9の何れかに記載の高分子自立膜。
  13. 前記架橋剤はマレイン酸、グルタルアルデヒド、トリメシン酸、乳酸、クエン酸、メラニン、またはメチロールメラニンである、請求項7から12の何れかに記載の高分子自立膜。
  14. 面積が3cm以上である、請求項1から13の何れかに記載の高分子自立膜。
  15. 前記水溶液の表面張力が50mN/m以下である、請求項14に記載の高分子自立膜。
  16. 請求項1から15の何れかの高分子自立膜を使用した分離膜。
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