JP2011125301A - ポリフェノールを高濃度に含有する、渋み・苦味をマスキングしたオリーブ葉エキスの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】オリーブ葉を原料として高濃度のポリフェノールを含有し、かつ渋み・苦味を抑えた食品素材を提供する。
【解決手段】オリーブ葉を乾燥し、粉砕した後、水、クエン酸を含有する水、あるいはペプチドを含有する水を抽出媒体として抽出することによりオレウロペインを含むオリーブ葉抽出エキスを製造する方法、およびアミノ酸、ペプチド、重炭酸ナトリウムによる該エキスの渋み・苦味のマスキング方法。
【効果】オレウロペインなどのポリフェノールを高濃度に含有する渋み・苦味の少ないオリーブ葉抽出エキスが得られる。
【選択図】なし
Description
(1)オリーブ葉を抽出処理するにあたり、抽出媒体にクエン酸を添加するオリーブ葉の抽出エキスの製造方法。
(2)抽出媒体を酸性にすることにより抽出されるポリフェノールの量を増大させる上記(1)に記載のオリーブ葉抽出エキスの製造方法。
(3)オリーブ葉を乾燥し、粉砕した後、水または、クエン酸を含有する水、あるいはペプチドを含有する水を抽出媒体として抽出することを特徴とするオレウロペインを含むオリーブ葉抽出エキスの製造方法。
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載のオリーブ葉の抽出エキスの製造方法で製造したオレウロペインを含有するオリーブ葉の抽出エキス。
(5)上記(4)に記載のオリーブ葉の抽出エキスの渋み・苦味をマスキングするために、該エキスの抽出媒体にペプチド、重炭酸ナトリウム、およびアミノ酸から選ばれた1種または2種以上を添加するオリーブ葉抽出エキスの製造方法。
(6)オレウロペインを含有するオリーブ葉の抽出エキスの渋み・苦味をマスキングするために該エキスに添加されるペプチド、重炭酸ナトリウム、およびアミノ酸から選ばれた1種または2種以上からなるオリーブ葉の抽出エキスのマスキング剤。
(7)ペプチドがコラーゲンペプチド、ホエーペプチド、ゴマペプチドおよび大豆ペプチドから選ばれた1種または2種以上であり、アミノ酸が塩基性アミノ酸から選ばれた1種または2種以上である上記(6)に記載のオリーブ葉の抽出エキスのマスキング剤。
(8)塩基性アミノ酸がL-アルギニン、L-リジンおよびヒスチジンから選ばれた1種または2種以上である上記(6)に記載のオリーブ葉の抽出エキスのマスキング剤。
エキスのもつ渋み・苦味のマスキング法について、以下の2つの方法を検討することにより、マスキング法について以下の結果を得た。
1)タンパク質・ペプチドによるマスキング法
コラーゲンペプチドを加えた場合に、苦味の低減と好み性の向上が見られた。
2)重炭酸ナトリウム及びアミノ酸によるマスキング法
添加量0.2〜1.0g/Lの重炭酸ナトリウムが、特に苦味のマスキングに有効であった。
〔エキスの抽出法〕
オリーブ葉エキスの抽出方法としてクエン酸やペプチドの添加効果を検討した。
オリーブ葉エキスのもつ渋み・苦味のマスキング法について、以下の2つの方法を検討した。
(1)タンパク質・ペプチドによるマスキング法
コラーゲンペプチドを加えた場合に、苦味の低減と好み性の向上が見られた。
(2)アミノ酸などによるマスキング法
アミノ酸および重炭酸ナトリウムにはマスキング効果が見られたが、特に、添加量0.2〜1.0g/Lの重炭酸ナトリウムが、苦味のマスキングに有効であった。
エキスのもつ渋み・苦味のマスキングをペプチドを使って試みた。エキスの抽出とマスキングを同時に行うために、オリーブ葉乾燥粉末をタンパク質溶液およびペプチド溶液中で直接抽出を行った。
〔ペプチド溶液で抽出したエキスの評価〕
オリーブ葉乾燥粉末1gに、純水または各濃度(30、60、90mg/mL)の各ペプチド溶液(コラーゲンペプチド、ホエーペプチド、大豆ペプチド)を20mL加え混合・攪拌した。遠心分離(10000×g、20分間)後の上清をオリーブエキスとし、以後の実験に用いた。図1にはペプチド溶液で抽出したエキスのポリフェノール濃度を示す。純水を用いた抽出よりもペプチド溶液を用いた抽出のほうがポリフェノール濃度は相対的に高かった。なかでもホエーペプチドを用いた抽出が特にポリフェノール濃度が高かった。また、いずれのペプチドにおいても濃度をあげるごとにポリフェノール濃度が増加した。以上のことより、ペプチド溶液を用いた抽出方法は、ポリフェノール濃度の高いエキスを抽出するのに有効と考えられた。
これらペプチド溶液で抽出したエキスの抗酸化活性をDPPH法で測定した。図3には10μgポリフェノール/mL濃度での抗酸化活性を示した。純水で抽出したものよりも30mg/mLのペプチド溶液で抽出したものの方が抗酸化活性は高かった。中でも30mg/mLコラーゲンペプチドを用いて抽出したエキスの抗酸化活性が特に高かった。しかし、どのペプチド溶液も濃度をあげるごとに抗酸化活性は低下した。このことから、ペプチド溶液を用いて抽出する方法は、抗酸化活性の高いオリーブエキスを抽出するのに有効だが、ペプチド濃度が高いと抗酸化活性が低下することがわかった。以上のことから、30mg/mLのペプチド溶液を用いたエキス抽出は、ポリフェノール濃度の増加と抗酸化力の改善に適した抽出方法であることがわかった。
オリーブ葉乾燥粉末5gに、純水または30mg/mLの各ペプチド溶液(コラーゲンペプチド、ホエーペプチド、大豆ペプチド)または市販のゴマペプチド入りのウーロン茶を100mL加え混合攪拌したのち、ろ紙(No.2)でろ過した。ろ液(エキス)を加熱殺菌後、官能試験用試料とした。まず、ペプチドの入っていないエキスを口に含み苦み・好みを評価し、その評価値を基準の5とした。その後各ペプチド入りのオリーブリーフエキスを口に含み苦味・好みを評価した。苦味みがコントロール(Ct)よりも強い場合は5より大きい数字を記入することとした。一方好みについては、Ctよりも好ましいものには5よりも大きい数字を記入することとした。図4および図5には、官能検査のパネリストを35〜70歳(12名)と21〜24歳(11名)に分けて集計した結果を示す。どのペプチドを加えても苦みは低下した。なかでもコラーゲンペプチドとホエーペプチドが苦みを大きく低減させた。コラーゲンペプチドは多くのパネリストにとってCtよりも好まれる飲料であるという結果となったが、ホエーペプチドはあまり好まれなかった。ゴマペプチドは、ほかのペプチドに比べると苦みをあまり低減しなかったが、パネリストには好まれた。一方大豆ペプチドは苦みを低減したが、強い酸味があったため、多くのパネリストにとって好ましくないという結果となった。
オリーブ葉乾燥粉末に純水を加え、10分間沸騰加熱して抽出したエキス(ポリフェノール濃度500〜8000μM)と500μMのβラクトグロブリン(β−LG)、牛血清アルブミン(BSA)、鶏卵白アルブミン(OVA)、コラーゲンペプチドを混合し、分画分子量3500の透析膜に1日透析した。透析後の膜内の溶液のタンパク質濃度(Lowry法)とポリフェノール濃度(Folin−Ciocalteu法)を測定した。タンパク質1mgあたりに結合するポリフェノール分子の数を算出した結果を図6に示す。コラーゲンペプチドを除く3種のタンパク質においては、ポリフェノール濃度の増加に伴い、結合するポリフェノール分子の数が増加していった。特に、ポリフェノールが多く結合したのはBSAであり、タンパク質1mgに約8千個のポリフェノール分子が結合することとわかった。ポリフェノール分子が結合する割合の高かったのは、BSA>コラーゲンペプチド>OVA、β−LGの順であった。また、タンパク質―ポリフェノール結合曲線の挙動はコラーゲンペプチドだけ他のタンパク質と異なっていた。コラーゲンペプチドにおいてはポリフェノール濃度を増加させていっても結合するポリフェノール分子数は増加しなかった。このことから、分子量18kDa以上のタンパク質と平均分子量4kDaのペプチドでは、ポリフェノールとの相互作用の仕方が異なると考えられた。
エキス中のポリフェノールとタンパク質との相互作用があるかをタンパク質のもつ自家蛍光をもとに解析した。120μM ポリフェノール濃度のエキス、100μMの各種タンパク質(β−LG、BSA、OVA)、10mMリン酸buffer(pH7.4)を使って、タンパク質濃度10μM、ポリフェノール濃度を0、2.5、5、10、20、40、80、108μMに調製した。これら溶液の蛍光スペクトルを、励起波長280nmと295nmでそれぞれ測定した。図7および図8にはβ−LGとエキスを含むスペクトルを示す。いずれの励起波長においてもポリフェノール濃度が上昇するにつれてタンパク質の蛍光強度が減少した。この蛍光強度の減少は、タンパク質の蛍光発色団が出す蛍光をエキス中のポリフェノール成分が消光したためと考えられる。励起波長280nmはタンパク質中のトリプトファン(Trp)とチロシン(Tyr)の蛍光を、励起波長295nmはTrpだけの蛍光を検出することから、タンパク質のTrpやTyr残基とポリフェノールは10オングストローム以内の距離で相互作用していると考えられた。なお、BSAやOVAもβ−LGと同様の蛍光スペクトル変化を示した。また、この蛍光強度の減少パターンから見積ったところ、TrpやTyr残基と相互作用するポリフェノール分子の数は、1.2個(β‐LG)、1.5個(BSAとOVA)であった。
オリーブ葉エキスの渋み・苦味に対する各種添加剤によるマスキング作用を官能検査で検討し、最も効果のある添加物質の選択と適切な添加濃度を求めた。
(結果)
官能検査に用いたエキスは、乾燥オリーブ葉粉末をクエン酸添加で弱酸性(pH 4.5)にした水に投入し、約90℃で10分間加熱処理して得られる濃厚エキスを希釈したもので、希釈後の没食子酸換算ポリフェノール含量を0.40g/L(=0.04%)に設定した。
マスキング作用を検討した添加物は、(1)塩基性アミノ酸(L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−リジン)と(2)重炭酸ナトリウム(重曹)である。検査方法は、希釈したオリーブ葉エキスに上記の物質を種々の濃度加えた試料溶液を調製し、無添加の場合と比較した苦味の程度を、+2(苦味が減った)、+1(苦味が少し減った)、0(変わらない)、−1(苦味が少し増した)、−2(苦味が増した)の5段階でパネラー(5〜11名)に評価してもらい、評価点の平均値(スコア)を求める方法で行った。
以上の結果を総合し、添加量0.2〜1.0g/L(0.02〜0.10%:この時のエキスのpHは6〜7)で苦味のマスキング効果を発揮する重曹が、今回調べた添加物の中では最も適していると判断した。
(a)オリーブエキス
エキスに関しては、既存のオリーブ葉エキスと比べて高濃度のオレウロペインを含んだエキスの試作に成功した。コラーゲンペプチドなどによるマスキングを行うことにより、飲料としての製品化が最も近いものと考えられる。また、将来的には、美白効果などの機能性をもとに、化粧品分野への利用についても有用である。
(b)エキス入り食品
オリーブ葉エキスを添加した食品については、パン、パスタ、シフォンケーキ、プリン、ゼリーについて実施し、食味検査を行い、優れた食味を確認できた。
Claims (8)
- オリーブ葉を抽出処理するにあたり、抽出媒体にクエン酸を添加するオリーブ葉の抽出エキスの製造方法。
- 抽出媒体を酸性にすることにより抽出されるポリフェノールの量を増大させる請求項1のオリーブ葉の抽出エキスの製造方法。
- オリーブ葉を乾燥・粉砕した後、水または、クエン酸を含有する水、あるいはペプチドを含有する水を抽出媒体として抽出することを特徴とするオレウロペインを含むオリーブ葉抽出エキスの製造方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載のオリーブ葉の抽出エキスの製造方法で製造したオレウロペインを含有するオリーブ葉の抽出エキス。
- 請求項4記載のオリーブ葉の抽出エキスの渋み・苦味をマスキングするために、該エキスの抽出媒体にペプチド、重炭酸ナトリウム、およびアミノ酸から選ばれた1種または2種以上を添加するオリーブ葉抽出エキスの製造方法。
- オレウロペインを含有するオリーブ葉の抽出エキスの渋み・苦味をマスキングするために該エキスに添加されるペプチド、重炭酸ナトリウム、およびアミノ酸から選ばれた1種または2種以上からなるオリーブ葉の抽出エキスのマスキング剤。
- ペプチドがコラーゲンペプチド、ホエーペプチド、ゴマペプチドおよび大豆ペプチドから選ばれた1種または2種以上であり、アミノ酸が塩基性アミノ酸から選ばれた1種または2種以上である請求項6に記載のオリーブ葉の抽出エキスのマスキング剤。
- 塩基性アミノ酸がL-アルギニン、L-リジンおよびヒスチジンから選ばれた1種または2種以上である請求項6に記載のオリーブ葉の抽出エキスのマスキング剤。
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