JP2011093813A - プラズマローゲン型リン脂質 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】次の一般式(1)
(式中、R1は炭素数15又は17の分岐鎖のアルキル基を示し、R2は炭素数15の分岐鎖のアルキル基を示し、Xはエタノールアミン残基、グリセロール残基、コリン残基、セリン残基、イノシトール残基又はアンモニウム基を示す。)
で表されるプラズマローゲン型リン脂質。
【選択図】なし
Description
そこで、PLを工業的に有利に製造する検討が行われ、例えば、ホヤ、ヒトデ等の水産動物からプラズマローゲン含有脂質を抽出する方法(特許文献2)や、ニワトリ表皮中からプラズマローゲン型のホスファチジルエタノールアミンを含む複合脂質画分を抽出する方法(特許文献3)等が報告されている。
一方、ルーメン細菌等の微生物が、PL含有リン脂質をその菌体内に含有していることが報告されており(J.Gen.Appl.Microbiol.,16,29−37(1970)、Journal of Bacteriology Vol.141,No.2,888−898(1980))、この場合従来のような煩雑な抽出工程は不要であるが、PL含量が低いことと、培養時に硫化水素が発生するという問題があった。
で表されるプラズマローゲン型リン脂質を提供するものである。
また、本発明は、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium sp.)に属する微生物を培養し、菌体からプラズマローゲン型リン脂質を採取するプラズマローゲン型リン脂質の製造方法を提供するものである。
<試薬>
・2% 2,4−ジニトロフェニルヒドラジンHClメタノール液;予め乾燥しておいた2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを、HClメタノール液に2%(g/vol)になるように溶解した。
・HClメタノール液;メタノール(500ml)に、乾燥HClガスを吹き込み調製した。
・NaOH・ペルオキソ二硫酸カリウム溶液;水500mlにNaOH 3.5gを溶かした後、ペルオキソ二硫酸カリウム15gを溶解した。
・モリブデン酸アンモニウム溶液;(NH4)6Mo7O24・4H2O 9.6gを、水に溶かして1000mlとした。
・酒石酸アンチモニルカリウム溶液;酒石酸アンチモニルカリウム0.667gを水に溶かして100mlとした。
・アスコルビン酸溶液;L−アスコルビン酸10gを水に溶かして100mlとした。
・Dittmer−Lester試薬;(A液)12.5M H2SO4 1Lに三酸化モリブデン40.1gを加え、緩やかに煮沸して溶解した。(B液)A液 500mlに粉末モリブデン1.78g を加え15分間煮沸した後、室温に戻し、上清をデカンテーションで採取した。使用時に、A液とB液を等量混ぜ、さらに混合液の2倍量の水を加えた後、TLCプレートに噴霧した。
1.菌の培養
供試菌;P.freudenreichiiET−3株(明治乳業生菌)
培地;TYG培地(トリペプトン 1%、酵母エキス 1%、グルコース 0.5%、NaCl 0.5%、レサズリン(1mg/mL) 1mL/L、1M NaOH(培地pH調整用))
(2)120℃で5分間オートクレーブした後、N2ガスを吹き込みながら、分注した。さらに、118℃で10分間オートクレーブした。
(3)菌を接種後、30℃で、約48時間嫌気培養した。
(1)集菌後、菌体を0.05M HEPES−NaOH緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した。
(2)(1)の菌に、エタノール:エーテル(3:1)を混合し、リン脂質を抽出後、遠心し、上清をエバポレータ用ナス型フラスコに移した。
(3)(2)の残渣に、クロロホルム:メタノール(1:3)を混合し、脂質を抽出後、遠心し、上清を(2)で用意したエバポレータ用ナス型フラスコに移した(エタノール:エーテル(3:1)と混合)。
(4)回収した上清の混合液をエバポレータで濃縮乾固した。
(5)(4)のナス型フラスコにジエチルエーテルを入れ、リン脂質を溶解した後、下記の分析に供した。
上記より得られたサンプルを、10μl、50μl、100μlに分注した(各3本×アルデヒド定量用・リン定量用)。
(i)シリカゲル薄層プレートに、スタンダード(パルミトアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体)と分注したサンプルをスポットした。別にBlankも設けた。ドライヤー(冷風)で乾かした後、原点部分に2% 2,4−ジニトロフェニルヒドラジンHClメタノール液を噴霧した。
(ii)30〜60分後、石油エーテル:エーテル(8:2)で展開した。
(iii)展開終了後、スタンダードと同Rf値を示す黄色スポットをかきとり、エッペンドルフチューブへ入れた。
(iv)(iii)に、クロロホルム1mLを入れて混和し、遠心後、上清を別のエッペンドルフチューブへ移した。
(v)(iv)をサンプルとして、分光光度計で波長370nmにおける吸光度を測定した。
(vi)検量線から濃度を読み取り、アルデヒド含量を定量した。
(i)分注したサンプルを分解瓶に移した。これをデシケーターに入れ、乾燥させた。
(ii)(i)の分解瓶に蒸留水を入れ、次にNaOH・ペルオキソ二硫酸カリウム溶液を加え、密栓し(バイアル瓶用テフロン(登録商標)ラミネート栓使用)、混和した。同様の手順でBlankも作成した。
(iii)(ii)を120℃で30分間オートクレーブした。
(iv)サンプルを50ml比色管にいれ、分解瓶の洗液も加え、蒸留水で20mlにfill upした。
(v)1%フェノールフタレインアルコール指示薬を1滴加え、0.04M NaOH(または0.02M H2SO4)で中和した。
(vi)2M H2SO4 5ml、モリブデン酸アンモニウム溶液5mlを加えて混和後、混合試薬(酒石酸アンチモニルカリウム溶液:L−アスコルビン酸溶液(1:1))を調製し、これを4ml加え、蒸留水で50mlにfill upした。
(vii)(vi)をよく混和し、室温で10分間置いたあと、分光光度計で波長880nmにおける吸光度を測定した。検量線からリン含量を定量した。
上記(1)アルデヒドの定量結果、(2)リンの定量結果を基に下記式に従って算出した。
A/P比=アルデヒド含量(μmol)/リン含量(μmol)
(1)一次元薄層クロマトグラフィー
(i)サンプルをシリカゲル薄層プレートにスポット後、ドライヤー(冷風)で原点を乾かした。
(ii)クロロホルム:メタノール:水(超純水)(65:25:4)で展開した。
(iii)展開終了後、プレートを真空デシケーターに入れ、吸引した。
(iv)ヨウ素、1%ニンヒドリン−アセトン溶液、Dittmer−Lester試薬で発色させた。
(i)サンプルをシリカゲル薄層プレートにスポット後、ドライヤー(冷風)で原点を乾かした。
(ii)クロロホルム:メタノール:水(超純水)(65:25:4)で展開した。(一次元)
(iii)展開終了後、溶媒のあがった位置に鉛筆で線を引き、プレートを真空デシケーターに入れ、吸引した。
(iv)吸引後、真空デシケーターからプレートを取り出し、サンプルを展開した部分が原点となるようにプレートを90℃回転させた。
(v)新たにサンプルを1点スポットし、ドライヤー(冷風)で乾かした。
(vi)クロロホルム:メタノール:28%アンモニア水(65:35:8)で展開した。(二次元)
(vii)展開終了後、front位置に鉛筆で線を引き、プレートを真空デシケーターに入れ、吸引した。
(viii)Dittmer−Lester試薬で発色させた。
(i)シリカゲル薄層プレートにサンプルをスポットし、ドライヤー(冷風)で原点を乾かした。
(ii)クロロホルム:メタノール:水(超純水)(65:25:4)で展開した。
(iii)展開終了後、プレートを真空デシケーターに入れ、一晩吸引した。
(iv)翌日、真空デシケーターからプレートを取り出し、サンプルを展開した部分が原点となるようにプレートを90℃回転させた。
(v)(iv)で定めた原点に、2% 2,4−ジニトロフェニルヒドラジンHClメタノール液を噴霧した。
(vi)(v)を真空デシケーター中で約30分吸引乾燥した。
(vii)(vi)を石油エーテル:エーテル(8:2)で展開した。
(viii)(vii)のプレートより、黄色のスポットをかきとり、それぞれエッペンドルフチューブに入れた。
(ix)(viii)にクロロホルム1mlを加え、混和し、遠心した。遠心終了後、上清を別のエッペンドルフチューブへ移した。
(x)(ix)をサンプルとして、分光光度計で波長370nmにおける吸光度を測定した。検量線から濃度を読み取り、アルデヒド含量を求めた。
(1)ヒドラゾン誘導体の回収
(i)サンプルとスタンダードをシリカゲル薄層プレートにスポットし、ドライヤー(冷風)で原点を乾かした。
(ii)原点部分に2% 2,4−ジニトロフェニルヒドラジンHClメタノール液を噴霧し、30〜60分後、石油エーテル:エーテル(8:2)で展開した。
(iii)展開終了後、サンプル部分より、スタンダードと同列の黄色いスポットをかきとり、試験管へ入れた。クロロホルムをいれ、よく混和後遠心し、上清(クロロホルム)を回収し、別の試験管へうつし、N2ガスで乾燥した。
(iv)レブリン酸:1N HCl(9:1)とジクロロメタンを(iii)に入れ混和後、沸騰水中で12分加熱した後、超純水を加えた。
(v)(iv)にヘキサンを加えて混和したあと、ヘキサンを回収し、別の試験管へうつし、N2ガスで乾燥した。
(vi)(v)に再びジエチルエーテルを入れ、そこへLiAlH4を加えた。5分間室温放置後超純水を加えた。
(vii)(vi)にジエチルエーテルを加え、10N H2SO4を3〜4滴加えた後、よく混和し、エーテル層を回収し、別の試験管にうつした。これをN2ガスで乾燥した。
(4)アセチル化
(viii)ピリジン:無水酢酸(2:1)を(vii)の試験管に加え、よく混和後、35℃のウォーターバスで15分加温したあと、超純水を加えた。
(ix)(viii)にペンタンを入れよく混和した。その後ペンタンを回収し、別の試験管にうつした。
(x)回収したペンタンに1N HClを加えて混和し、ピリジン臭を除いたあと、ペンタン層を回収した。これをガスクロマトグラフィーで分析した。なお、標準物質については、12:0(ナカライテスク(株))、14:0(ナカライテスク(株))、15:0(シグマ社製)、16:0(ナカライテスク(株))、16:1(ナカライテスク(株))、17:0(シグマ社製)、18:0(ナカライテスク(株))、18:1(ナカライテスク(株))を用い、イソおよびアンチイソ標準物質は、Analytical Science,Vol.19,1243−1249(2003)記載の方法に従って調製した。
ガスクロマトグラフ: G3810F(Yanaco)
カラム:キャピラリーGCカラム:122−7032DB-WAX(Agilent Technologies)、30m×0.250mm、膜厚0.25μm
キャリアガスI:He( メイクアップガス)13mL/min
キャリアガスII: He(キャピラリーカラム)1mL/min
スプリット比:20:1
インジェクター:T=230℃
ディテクター:FID、T=250℃
オーブン温度:0.5℃/分で70℃〜200℃まで昇温
(1)リゾリン脂質の分離、回収
(i)サンプルにHClメタノール液を加え、処理したものを、シリカゲル薄層プレートにスポットした。プレートを3レーンに分け、両端(発色用)と、中央部分(かきとり・分析用)にスポットした。
(ii)クロロホルム:メタノール:水(超純水)(65:25:4)で展開した。
(iii)展開終了後、両端を切り取り、Dittmer−Lester試薬で発色させた。
(vi)(iii)の結果をもとにして、リゾリン脂質のスポットと同Rf値の部分を発色せずに残しておいたプレート中央部分からかきとり、これを分解瓶に入れた。
(v)(vi)に0.5N KOHを入れ、密栓し(テフロン(登録商標)栓使用)、よく混和したあと、オートクレーブした。(118℃、10時間)
(vi)オートクレーブが終了した(v)のサンプルを試験管うつし、1N HClで酸性にした。
(vii)(vi)にジエチルエーテルを入れ、リゾリン脂質由来の脂肪酸を抽出した。脂肪酸をN2ガス下で乾燥した。
(viii)脂肪酸をジエーテル中でLiAlH4で脂肪アルコールに還元した後、N2ガスで乾燥した。
(3)アセチル化
(ix)ピリジン:無水酢酸(2:1)を(viii)の試験管に加え、よく混和後、35℃のウォーターバスで15分加温したあと、超純水を加えた。
(x)(ix)にペンタンを入れよく混和した。その後ペンタンを回収し、別の試験管にうつした。
(xi)回収したペンタンに1N HClを加えて混和し、ピリジン臭を除いたあと、ペンタン層を回収した。これをガスクロマトグラフィーで分析した。
カラム:キャピラリーGCカラム:122−7032DB-WAX(Agilent Technologies)、30m×0.250mm、膜厚0.25μm
キャリアガスI:He( メイクアップガス)13mL/min
キャリアガスII: He(キャピラリーカラム)1mL/min
スプリット比:20:1
インジェクター:T=230℃
ディテクター:FID、T=250℃
オーブン温度:0.5℃/分で70℃〜200℃まで昇温
それぞれのGC分析チャートの各ピークから質量を測定し、全検出脂肪酸に対する各脂肪酸の含有割合(質量%)を求めた。
培地は上記と同様のTYG培地を用いた。
菌を48時間培養後、遠心し、上清を除いた。これを−80℃で凍らせたあと、凍結乾燥した。重量測定を行い、重量の変化が見られなくなった点で終了とした。測定した水分含量から、単位重量あたりにおける総リン脂質含量を算出した。リン脂質は、グリセリド骨格のα位及びβ位に炭素数15のイソ体を有する総ホスファチジルグリセロールを対象とした。
1.アルデヒド/リン比(A/P比)
菌20.53g(菌湿重量)におけるアルデヒド含量は5.7μmol、リン含量は6.9μmolであった。従って、A/P比は0.83であり、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属に属する微生物には、プラズマローゲン型リン脂質が高濃度で蓄積されていることが確認された。
結果を図1及び図2に示す。総リン脂質中、グリセロール型とエタノールアミン型の割合は、約9:1であった。
各リン脂質スポットより得られた脂肪アルデヒドの量(かきとったスポットに含まれる量)は、ホスファチジルグリセロール由来が7.80×10-2(μmol)、ホスファチジルエタノールアミン由来が0.55×10-2(μmol)であった。従って、プラズマローゲン型リン脂質中、グリセロール型とエタノールアミン型の割合は、約156:11(93.4%がグリセロール型、6.6%がエタノールアミン型)であることから、菌20.53g(菌湿重量)中のアルデヒド含量5.7(μmol)のうち、5.32(μmol)がグリセロール型であり、0.38(μmol)がエタノールアミン型であるものと計算できる。
結果を表1に示す。表1はガスクロマトグラフィーにおいて検出された順序(溶出順)に示されている。表1に示すとおり、グリセロール骨格のα位に炭素数15又は17の分岐型炭化水素基を有するプラズマローゲン型リン脂質が確認された。
結果を表2に示す。表2はガスクロマトグラフィーにおいて検出された順序(溶出順)に示されている。表2に示すとおり、グリセロール骨格のβ位に炭素数15の分岐型脂肪酸残基を有するプラズマローゲン型リン脂質が確認された。
菌20.53g(菌湿重量)における水分含量は16.94gであった。
菌20.53g(菌湿重量)中、総リン脂質含量は6.9μmolであったことから、リン重量を算出すると214.31μg、グリセリド骨格のα位及びβ位に炭素数15のイソ体を有するホスファチジルグリセロール重量は4.93mgであり、その単位重量あたりにおける総含量は、0.24mg/g(菌湿重量)、1.37mg/g(菌乾重量)と含有率が高かった。
<方法>
1.生きたホヤ(10個)から内臓を摘出し、上記実施例1の「2.リン脂質の抽出」と同様にしてリン脂質を抽出し、サンプルとした。
2.サンプルを、上記実施例1の「3.アルデヒド/リン比(A/P比)の測定」、及び「6.プラズマローゲン型リン脂質における脂肪アルデヒド組成の分析」と同様にして分析した。
1.アルデヒド/リン比(A/P比)
ホヤ内臓中の総リン脂質におけるプラズマローゲン型リン脂質の割合(A/P比)は、0.25であった。
結果を表3に示す。表3に示すとおり、ホヤの内臓から得られるプラズマローゲン型リン脂質は、グリセロール骨格のα位に主に炭素数14,16及び18の直鎖状炭化水素基を有するものであった。
サンプルとして牛脳由来のプラズマローゲン(エタノール型プラズマローゲン:90%純標品、フナコシ薬品(株))を用いた。
<方法>
サンプルを、上記実施例1の「6.プラズマローゲン型リン脂質における脂肪アルデヒド組成の分析」と同様にして分析した。
表4に示すとおり、牛脳由来のプラズマローゲンは、グリセロール骨格のα位に主に炭素数16及び18の直鎖状炭化水素基を有するものであった。
Claims (5)
- 次の一般式(1)
で表されるプラズマローゲン型リン脂質。 - R1が13−メチル−テトラデシル基、12−メチル−テトラデシル基、15−メチル−ヘキサデシル基又は14−メチル−ヘキサデシル基であり、R2が13−メチル−テトラデシル基又は12−メチル−テトラデシル基である、請求項1記載のプラズマローゲン型リン脂質。
- プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium sp.)に属する微生物を培養し、菌体からプラズマローゲン型リン脂質を採取するプラズマローゲン型リン脂質の製造方法。
- プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属に属する微生物が、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)である請求項3記載のプラズマローゲン型リン脂質の製造方法。
- プラズマローゲン型リン脂質が、次の一般式(1)
で表されるプラズマローゲン型リン脂質である請求項3又は4記載の製造方法。
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