本発明に係る医用画像診断装置及びそれにより実行される画像再構成方法の好適な実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下、本発明に係る医用画像診断装置の一例であるX線CT装置についてのみ詳しく説明するが、被検体をスキャンしてデータを収集し、その収集されたデータに所定の前処理を施して投影データを生成し、その投影データから画像を再構成することにより医用画像を形成する構成を備えた任意の医用画像診断装置、たとえばMRI装置や核医学診断装置などについても、以下の構成を適用可能である。
[装置構成]
まず、本実施形態の医用画像診断装置の構成について図1〜図3を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る医用画像診断装置の一例であるX線CT装置の内部構成の概略を表し、図2、図3は、このX線CT装置を構成するコンピュータ装置の構成を表している。
本実施形態に係るX線CT装置は、前述した従来のX線CT装置と同様の外観構成(図10参照)を備えており、図1に示すように、架台2と、寝台(図1では図示省略)と、コンピュータ装置3と、コンソール6を構成するモニタ4及び入力デバイス5とを備えている。
被検体Pは、寝台の天板13上に載置された状態で検査に供される。天板13は、天板駆動部14によって水平方向及び垂直方向に移動される。被検体Pは、天板13とともに架台2の開口部内において水平移動される。なお、寝台の天板13は本発明の「載置手段」の一例に相当し、天板駆動部14は「駆動手段」の一例に相当する。
架台2は、被検体Pの内部形態を反映するデータ、たとえば被検体Pを透過したX線量の3次元分布データを収集するものであり、本発明の「収集手段」の一例に相当する。この架台2は支持体7を内蔵している。支持体7には、架台2の開口部内に位置する被検体Pに向けてX線を照射するX線管8と、被検体Pを透過したX線の線量を検出する検出器が2次元配置されて検出面を形成するX線検出器9とが支持されている。X線管8とX線検出器9とは、被検体Pを挟んで対峙する位置に配置されている。X線管8は、高電圧発生部10により印加される所定の管電圧と管電流に基づいてX線を出力する。なお、X線管8は本発明の「照射手段」の一例に相当し、X線検出器9は「検出手段」に相当する。
支持体駆動部11は、架台2の開口部周りに支持体7を所定方向に回転させる。それにより、X線管8とX線検出器9とが互いに対峙した状態で被検体Pの周囲を回転し、様々な方向における透過X線量のデータを検出する。また、支持体駆動部11は、支持体7を傾斜(チルト)させる。
X線検出器9が検出した様々な方向における透過X線量のデータは、データ収集部12により収集される。このデータ収集部12は、収集したデータに対して増幅処理やA/D変換を施してコンピュータ装置3に伝送する。
モニタ4は、LCDやCRT等の任意の表示装置によって構成され、コンピュータ装置3の制御に基づいて各種の画像や画面を表示する。また、入力デバイス5は、キーボード、マウス、コントロールキー、トラックボールなどの任意の入力用・操作用のデバイスによって構成される。
入力デバイス5は、たとえば、架台2がデータ収集を行うときの条件(収集条件)や、コンピュータ装置3が画像を再構成するときの条件(再構成条件)や、再構成画像の出力条件(処理画像出力条件)などの各種条件を入力するために操作される。また、複数のデータが一度に収集される場合の処理順序の設定や実行中の処理に割込する場合など、処理の優先順位に関する入力操作や、診断において特に注目する部位(心臓、頭部等;注目部位)の入力操作なども入力デバイス5から行うことができる。
収集条件としては、データの収集範囲(天板13の移動範囲)、X線検出器9の複数の検出器列の内の使用列数、X線管8の管電圧や管電流、架台2によるスキャン態様(ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン等)、支持体7の回転速度やチルト角度、X線の照射時間などの条件が指定入力される。また、再構成条件としては、たとえば、画像を再構成する範囲、再構成の種類(コーンビーム再構成/ファンビーム再構成、ハーフ再構成/フル再構成など)、再構成関数の種類、スライス画像の解像度(部位毎に設定可能)、再構成画像の間隔、画像厚(スライス厚)などの条件が指定入力される。このような収集条件や再構成条件は、たとえば被検体Pのスキャノグラムなどを参照して指定される。また、処理画像出力条件としては、2次元画像表示、3次元画像表示、4次元画像表示(3次元画像の時間変化表示)等の画像の表示態様などが指定入力される。また、診断における注目部位の指定入力は、たとえばスキャノグラムなどを参照して行う。
なお、ファンビーム再構成とは、被検体Pの体軸方向におけるX線パスの傾きが無い、つまりX線ビームが平行ビームであると仮定して行う再構成手法を意味し、コーンビーム再構成とは、被検体Pの体軸方向におけるX線パスの傾きに忠実に逆投影パスを算出して行う再構成手法を意味する。また、フル再構成とは、被検体Pの周囲360度分の投影データから画像を再構成する手法を意味し、ハーフ再構成とは、被検体Pの周囲180度分の投影データにX線ビームのファン角度分の投影データを加えて画像を再構成する手法を意味する。
〔コンピュータ装置の構成〕
図1〜図3に示すように、コンピュータ装置3には、X線CT装置1の全体制御を行う装置制御部15と、架台2が収集したデータに基づいて医用画像を形成する画像処理部16とが設けられている。
(装置制御部のハードウェア構成)
装置制御部15は、コンピュータ装置3に内蔵のCPUやメモリやハードディスクドライブ等を含んで構成され、ハードディスクドライブ等に記憶された制御プログラムをCPUが実行することにより、高電圧発生部10、支持体駆動部11、天板駆動部14及び画像処理部16の動作を制御する。また、装置制御部15は、モニタ4による各種画面の表示処理を制御するとともに、入力デバイス5からの入力操作を受けて装置各部を制御する。
(画像処理部のハードウェア構成)
画像処理部16は、図2、図3に示すように、再構成処理に関するデータ処理を実行する複数の画像処理ユニット17A〜17N(N個;N≧2)と、架台2が収集したデータ(純生データ)や投影データ(生データ)を記憶する生データ記憶部18と、画像処理ユニット16により再構成された画像データを記憶する再構成画像記憶部19とを備える。生データ記憶部18及び再構成画像記憶部19は、従来と同様に、複数枚のハードディスク等の記憶媒体からなる大容量記憶装置である。
各画像処理ユニット17A〜17Nは、図2に示すように、そのシャーシ内に複数の画像処理基板を格納している:画像処理ユニット17Aには17A−1〜17A−kのk枚、画像処理ユニット17Bには17B−1〜17B−lのl枚、画像処理ユニット17Cには17C−1〜17C−mのm枚、画像処理ユニット17Nには17N−1〜17N−nのn枚の画像処理基板がそれぞれ格納されている。
各画像処理ユニット17A〜17Nの画像処理基板には、再構成処理基板とI/O処理基板とが含まれている。
再構成処理基板は、FPGA基板やCPU基板などにより構成されている。FPGA基板は複数枚設けられており、たとえば、純生データの対数変換やリファレンス補正や水処理などを施して投影データを生成する前処理、投影データに対するバックプロジェクションやコンボリューション等の再構成処理などを実行する。また、CPU基板は複数枚設けられており、投影データに対するビームハードニング補正や体動補正などの再構成前処理や、再構成された画像を補正する画像補正処理などの後処理を実行する。なお、再構成基板としてDSP基板やGPU基板などを使用してもよい。
I/O処理基板には、装置制御部15や生データ記憶部18や再構成画像記憶部19等との間におけるデータ通信処理や各種の制御処理を行うRTM(リアルタイムマネジャ)−IO基板や、他の画像処理ユニットとの間のデータ通信処理を行う基板などが含まれている。
なお、複数の画像処理ユニット17A〜17Nのうちの少なくとも1つ(たとえば画像ユニット17A)には、後述のデータ分割部、ユニット指定部、画像合成部、処理状況取得部などとして動作するCPU等の基板が格納されている。
各画像処理ユニット17A〜17N内の画像処理基板は、図示しないバックプレーンに装着されて互いに接続されている。その接続態様としては、cPCI、PCI Express、高速データLinkなどの転送インターフェイスを使用できる。なお、転送速度を考慮すると、高速データLink等の高速な転送インターフェイスを使用することが望ましい。また、画像処理ユニット17A〜17N間の接続態様や、生データ記憶部18や再構成画像記憶部19に対する接続態様についても、同様の転送インターフェイスが用いられる。
架台2とコンピュータ装置3とは、たとえば光ファイバにより接続されており、コンピュータ装置3とワークステーション200とは、たとえばEthernet(登録商標)等によりLAN接続されている。なお、このワークステーション200は、X線CT装置1により取得されたCT画像を医者等が読影するためなどに使用される。
(機能的構成)
次に、このようなハードウェア構成を有するコンピュータ装置3の機能的構成について説明する。以下、まず画像処理部16の画像処理ユニット17A〜17Nの機能的構成について説明し、続いて装置制御部15の機能的構成について説明する。
(画像処理ユニットの機能的構成)
画像処理部16の各画像処理ユニット17A〜17Nには、データ送受信部41A〜41N、前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N、画像補正部44A〜44N及び記憶部45A〜45Nがそれぞれ設けられている。
本実施形態に係るX線CT装置1においては、前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N及び画像補正部44A〜44Nを、複数の画像処理ユニット17A〜17Nのそれぞれに備えているが、これら3つの内の1つ又は2つのみを有する画像処理ユニットを用いることも可能である。その場合であっても、前処理部及び再構成部の内の少なくとも一方を複数備えている必要がある。また、画像補正部についても複数設けられていることが望ましい。
さて、データ送受信部41A〜41Nは、前述のI/O処理基板によって構成され、装置制御部15、生データ記憶部18、再構成画像記憶部19、他の画像処理ユニットとの間におけるデータの送受信を司っている。
前処理部42A〜42Nは、前述のFPGA基板によって構成され、架台2が収集したデータに前処理を施して投影データを生成する処理を行う。この前処理部42A〜42Nの内、後述の「前処理ユニット」に指定された画像処理ユニット17A〜17Nに搭載されたものは、本発明の「前処理手段」の一例を構成する。
再構成部43A〜43Nは、前述のFPGA基板によって構成され、前処理部42A〜42Nにより生成された投影データに基づいて被検体Pの内部形態を表す画像を再構成する処理を行う。再構成部43A〜43Nは、たとえば、Feldkamp法に代表される3次元画像再構成アルゴリズムによる再構成処理を実行し、複数のボクセルデータが3次元的に集合して形成されるボリューム画像を再構成する。また、再構成部43A〜43Nは、一般的な2次元画像再構成アルゴリズムを用いて、投影データに基づく被検体のPの2次元断層画像を再構成することもできる。このような再構成部43A〜43Nの内、後述の「再構成処理ユニット」に指定された画像処理ユニット17A〜17Nに搭載されたものは、本発明の「再構成手段」の一例を構成する。
画像補正部44A〜44Nは、前述のCPU基板によって構成され、再構成部43A〜43Nにより再構成された画像の画像補正処理などの後処理を施すものであり、それらの内、後述の「後処理ユニット」に指定された画像処理ユニット17A〜17Nに搭載されたものは、本発明の「後処理手段」の一例を構成する。
記憶部45A〜45Nは、データの書き込み及び読み出しが可能なメモリ装置等の記憶媒体によって構成される。
画像処理ユニット17Aは、これらに加えて、データ分割部31、ユニット指定部32、画像合成部33及び処理状況取得部34を備えている。
データ分割部31は、本発明の「分割手段」の一例に相当し、架台2が被検体Pをスキャンして収集したデータ(純生データ)を2以上の部分データに分割する処理を実行する。
このデータ分割部31は、たとえば画像処理ユニット17A〜17Nの個数や、前処理ユニット、再構成処理ユニット、後処理ユニットの個数、更には、各画像処理ユニット17A〜17N(前処理ユニット、再構成処理ユニット、後処理ユニット)の処理能力や、収集された純生データのデータ量などに応じて、純生データを分割する個数(つまり部分データの個数)を決定する。たとえば画像処理ユニットが4個設けられている場合、データ分割部31は、画像処理ユニットと同数の4つの部分データに純生データを分割する。このような純生データの分割態様の詳細やそのバリエーションについては後述することとする。なお、純生データの分割個数については、あらかじめパラメータを保持しておき、画像処理ユニット等の個数に対応するパラメータを自動的に読み出して決定することができる。
なお、前処理部及び/又は再構成部を有さない画像処理ユニットがある場合や(前述)、ユニット指定部32により指定された後述の前処理ユニットや再構成処理ユニットの個数が画像処理ユニット17A〜17Nの個数と異なる場合には、データ分割部31は、前処理部の個数や再構成部の個数に応じて純生データを分割する個数を決定する(その一例については後述する。)。
図4は、架台2がヘリカルスキャン(架台2の支持体7の回転と天板13の移動とを同期させて行うスキャン方法)により収集したデータの分割態様の一例を表している。データ分割部31は、ヘリカルスキャンにより収集された純生データDをM個の部分データd1〜dMに分割する。このとき、連続する部分データdiと部分データd(i+1)との分割部分fiに重複範囲eiを持たせるようにして、部分データdi、d(i+1)を形成する(i=1〜M−1)。すなわち、分割により得られる連続する部分データdi、d(i+1)は、それらの分割部分において所定範囲の重複を有している。重複範囲e1〜e(M−1)の幅は、装置制御部15により設定される。
なお、この図4には、架台2が収集した純生データD(X線量の3次元分布データ)を、被検体Pの体軸方向、つまり天板13の移動方向(「Z方向」と呼ぶことがある。)に並ぶ部分データd1〜dMに分割する手法が示されているが、純生データDの分割態様はこれに限定されるものではない。たとえば、被検体Pの体軸方向に直交する面上の2次元直交座標系(水平方向を「X座標」、垂直方向を「Y座標」と呼ぶことがある。)における各座標軸の方向に並ぶ部分データを生成するようにしてもよい。また、部分データd1〜dMのデータ量は、それぞれ等しくてもよいし、異なっていてもよい。たとえば、純生データDのデータ量に応じて分割する場合には、各部分データd1〜dMのデータ量を等しくするように分割することができるし、また、純生データDを所定のデータ量毎に逐次分割する場合には、データ量が等しい部分データd1〜d(M−1)と、それらよりもデータ量の少ない最後の部分データdMとからなる部分データd1〜dMに分割することができる。
ユニット指定部32は、本発明の「指定手段」の一例に相当し、画像処理ユニット17A〜17Nのそれぞれについて、その前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N及び画像補正部44A〜44Nの内の少なくともを1つを選択的に動作させるように指定する処理を行う。以下、前処理部42A〜42Nを動作させるように指定された各画像処理ユニット17A〜17Nを前処理ユニットと称し、再構成部43A〜43Nを動作させるように指定された各画像処理ユニット17A〜17Nを再構成処理ユニットと称し、画像補正部43A〜44Nを動作させるように指定された各画像処理ユニット17A〜17Nを後処理ユニットと称することとする。
なお、単一の画像処理ユニット17iについて、前処理部42i、再構成部43i及び画像補正部44iの内の2つ又は3つを動作させるように指定することも可能である。たとえば、前処理部42iと再構成部43iとの双方を動作させるように指定された画像処理ユニットは、前処理ユニットかつ再構成処理ユニットとして扱われる。
また、ユニット指定部32は、一旦前処理ユニットや再構成処理ユニットに指定された画像処理ユニットを異なる目的のユニットに新たに指定する(つまり指定を変更する)ように動作する。たとえば、前処理ユニットに指定されている画像処理ユニットを再構成処理ユニットに指定を変更するように動作する。
データ送受信部41Aは、データ分割部31により得られた2以上の部分データを、ユニット指定部32が指定した前処理ユニットに送信する。複数の画像処理ユニットが前処理ユニットに指定されている場合、2以上の部分データは、その複数の前処理ユニットに分散して送信される。また、データ送受信部41Aは、これら部分データから各前処理ユニットが生成した投影データ(部分投影データ;部分データと同数ある)を、ユニット指定部32が指定した再構成処理ユニットに送信する。複数の画像処理ユニットが再構成処理ユニットに指定されている場合、2以上の部分投影データは、その複数の再構成処理ユニットに分散して送信される。更に、データ送受信部41Aは、これら部分投影データから各再構成処理ユニットが再構成した画像(部分画像;部分投影データと同数ある)を後処理ユニットに送信する。複数の画像処理ユニットが後処理ユニットに指定されている場合、2以上の部分画像は、その複数の後処理ユニットに分散して送信される。
なお、或る画像処理ユニット17iが、前処理ユニット、再構成処理ユニット及び後処理ユニットの内の2つ又は3つに指定された場合、データ送受信部41Aによるデータ送信処理の形態としては複数のケースがある。たとえば、画像処理ユニット17iが前処理ユニット及び再構成処理ユニットの双方に指定された場合において、当該画像処理ユニット17iの前処理部42iが生成した部分投影データの再構成処理を同じく再構成部43iにて行う場合、データ送受信部41Aによるデータ送信処理としては次の2つのケースがある。
(第1のケース)部分データのみを送信するケース:データ送受信部41Aは、画像処理ユニット17iに部分データを送信する。画像処理ユニット17iの前処理部42iが、当該部分データから部分投影データを生成する。生成された部分投影データは記憶部44iに記憶される。再構成部43iは、記憶された部分投影データを読み出して部分画像を再構成する。再構成された部分画像は、データ送受信部41iにより再構成画像記憶部19に伝送されて保存される。このように、第1のケースにおいては、データ送受信部41Aは、部分投影データの送信処理を実際には実行しないが、この部分投影データの送信を行ったものとみなす。
(第2のケース)部分データ及び部分投影データを送信するケース:データ送受信部41Aは、画像処理ユニット17iに部分データを送信する。画像処理ユニット17iの前処理部42iが、当該部分データから部分投影データを生成する。生成された部分投影データは、データ送受信部41iにより生データ記憶部18に伝送されて保存される。データ送受信部41Aは、保存された当該部分投影データを、画像処理ユニット17iに送信する。再構成部43iは、この部分投影データを再構成して部分画像を形成する。再構成された部分画像は、データ送受信部41iにより再構成画像記憶部19に伝送されて保存される。
以上のように、ユニット指定部32とデータ送受信部41Aとは、2以上の部分データを複数の前処理部42A〜42Nに分配する処理を行うとともに、これら2以上の部分データに基づいて前処理手段42A〜42Nがそれぞれ生成した2以上の部分投影データを、複数の再構成部43A〜43Nに分配するように作用するものであり、本発明の「分配手段」の一例に相当する。ユニット指定部32(及びデータ送受信部41A)による画像処理ユニット指定処理とデータ分配処理との詳細については、装置の動作説明中において述べる。
なお、本実施形態においては、画像処理ユニット17A〜17Nのそれぞれに前処理部42A〜42N及び再構成部43A〜43Nが設けられているので、ユニット指定部32は、各画像処理ユニット17A〜17Nを、前処理ユニット及び再構成処理ユニットの双方として同時に指定できる。前処理ユニット及び再構成処理ユニットの双方に指定された画像処理ユニットは、たとえば、その前処理部にて部分投影データを生成するとともに、その再構成部により当該部分投影データに基づく画像の再構成を行うことができる。もちろん、当該画像処理ユニットの前処理部が生成した部分投影データに基づく再構成処理を他の画像処理ユニットにて行ってもよいし、逆に、他の画像処理ユニットの前処理部にて生成された部分投影データの再構成処理を当該画像処理ユニットにて行ってもよい。また、後処理ユニットについても、画像処理ユニット17A〜17Nの内から任意に指定することができる。
画像合成部33は、再構成処理ユニットに指定された画像処理ユニットが2以上の部分投影データのそれぞれに基づいて再構成した2以上の部分画像を合成する。この画像合成部33は、データ分割部31による純生データの分割部分(図4の分割部分fi)を合わせるようにして2以上の部分画像を合成する。そのために、たとえば、複数個形成される部分画像d1〜dMのそれぞれの重複範囲f1〜f(M−1)に対応する画像(画素値)を比較し、それらが一致する部分画像を連続する部分画像gi、g(i+1)と判断する。そして、一致した重複範囲の画像が重なる位置を部分画像gi、g(i+1)の合成位置として決定するとともに、部分画像gi、g(i+1)の重複範囲eiに対応する画像範囲の内の任意の一方を選択して、当該重複範囲eiに対応する画像として採用する。
処理状況取得部34は、各画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N及び画像補正部44A〜44Nによる処理状況を監視して、それらの処理状況を表す処理状況情報を取得する。ここで「処理状況」とは、前処理や再構成処理や画像補正処理の実行の有無(たとえば「処理開始前」、「処理中」「処理終了」など)や、処理実行中においてはその進捗状況(たとえば「処理の60%が終了」など)を表す情報である。
処理状況取得部34は、たとえば、データ送受信部41Aを制御して、処理状況情報の送信を指示する信号(情報送信要求信号)を、各画像処理ユニット17B〜17Nに定期的に又は不定期的に送信する。各画像処理ユニット17B〜17Nは、この情報送信要求信号を受けると、前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N及び画像補正部44A〜44Nのそれぞれの処理状況情報を収集して画像処理ユニット17Aに返信する。画像処理ユニット17A自身の処理状況については、たとえば処理状況取得部34が前処理部42A、再構成部43A及び画像補正部44Aに直接にアクセスして情報を取得する。処理状況情報の他の取得態様としては、たとえば、各画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N及び画像補正部44A〜44Nが、その処理状況を定期的に又は不定期的に処理状況取得部34に送信するようにしてもよい。この処理状況取得部34は、本発明の「情報取得手段」の一例に相当するものである。
(装置制御部の機能的構成)
装置制御部15には、データ処理制御部20、重複範囲設定部21、ユニット指定制御部22及び優先処理制御部23が設けられている。
データ処理制御部20は、架台2が収集した純生データに対する処理(前処理、再構成処理、画像補正処理など)の方向を指定して画像処理部16による処理を制御する。処理方向は、たとえば、被検体Pの体軸方向(Z方向)に沿って頭部側から足側に向かう方向に指定される場合や、体軸方向に直交する方向(X方向、Y方向)に沿った方向に指定される場合などがある。純生データDの部分データd1〜dMの処理順序は、データ処理制御部20が指定した処理方向に応じて決定される。このように、このデータ処理制御部20は、本発明の「処理順序指定手段」の一例に相当するものである。
また、データ処理制御部20は、診断における注目部位が事前に指定された場合には(前述)、当該注目部位(及びその周辺部位)に相当する範囲について収集されたデータを優先的に処理させるように画像処理部16を制御する。たとえば、スキャノグラムを用いて心臓を注目部位に指定した場合、データ処理制御部20は、当該スキャノグラムに定義された座標と純生データの座標(ボリューム上に定義された座標)とを参照して、指定された範囲に対応する純生データの範囲を判別し、その範囲の純生データに対して前処理、再構成処理、画像補正処理等を優先的に実行するように制御する。
重複範囲設定部21は、データ分割部31が純生データを分割するときの、2以上の部分データの重複範囲(図4の重複範囲e1〜e(M−1))の幅を設定する。この重複範囲e1〜e(M−1)は、たとえば再構成条件の画像厚や、画像処理ユニット17A〜17Nの個数、あるいは前処理ユニット、再構成処理ユニット、後処理ユニットの個数などに基づいて設定され、連続する分割データの分割部分における画像の再構成が可能な範囲として設定される。また、重複範囲のパラメータをあらかじめ保持しておき、画像処理ユニット等の個数に対応するパラメータ(View番号:Z位置に反映される)を自動的に読み出して決定するように構成してもよい。
ユニット指定制御部22は、入力デバイス5から指定入力された各種条件(前述)を参照し、画像処理ユニット17Aのユニット指定部32やデータ送受信部41Aを制御して、2以上の部分データに基づく前処理を担う画像処理ユニット17A〜17N(前処理ユニット)を決定させるとともに、各前処理ユニットに対する部分データの送信処理を制御する。同様に、ユニット指定部32やデータ送受信部41Aを制御して、2以上の部分投影データに基づく再構成処理を担う画像処理ユニット17A〜17N(再構成処理ユニット)を決定させるとともに、各再構成処理ユニットに対する部分投影データの送信処理を制御する。また、再構成された部分画像に画像処理を施す画像処理ユニット17A〜17N(後処理ユニット)の決定、及び、再構成された部分画像の送信処理についても同様に制御する。このように、ユニット指定制御部22は、複数の画像処理ユニット17A〜17Nに対するデータの分配処理の制御を司っている。
優先処理制御部23は、入力デバイス5から指定入力された処理の優先順位(前述)を参照し、画像処理ユニット17Aのユニット指定部32やデータ送受信部41Aを制御して、当該優先順位にしたがって処理を実行させる。たとえば、或る被検者の画像処理実行中に他の被検者の画像処理の割込があった場合、優先処理制御部23は、実行中の処理に関するデータ(部分データ、部分投影データ、部分画像、各種条件設定など)をたとえば生データ記憶部18に退避させて、割込データに対する処理を先に行うように画像処理部16を制御する。
[動作]
以上のような構成を有する本実施形態のX線CT装置1の動作の一例(第1〜第4の処理態様)について、図5〜図9を参照しつつ説明する。
最初に、以下に詳述する各処理態様について簡単に説明しておく。第1の処理態様は、N個の画像処理ユニット17A〜17Nの全てを前処理ユニット、再構成処理ユニット及び後処理ユニットに指定するとともに、純生データをN個の部分データに1つずつ分割して各画像処理ユニット17A〜17N毎に処理するものである。第2の処理態様は、N個の画像処理ユニット17A〜17Nの内のいくつか(N個未満)を前処理専用のユニットとして初期指定するものである。第3の処理態様は、操作者が確認したい診断部位を設定した場合などに、当該診断部位の画像を優先的に再構成するものである。第4の処理態様は、各画像処理ユニット17A〜17Nの処理能力に応じて部分データを分配して処理を行うものである。第4の処理態様は、画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42Nや再構成部43A〜43Nの処理能力に応じて純生データを分割して分散処理を行うものである。
〔第1の処理態様〕
図5に示すX線CT装置1の第1の処理態様は、純生データを画像処理ユニット17A〜17Nと同数の部分データに分割し、各画像処理ユニット17A〜17Nが前処理、再構成処理及び後処理を実行するものである。
まず、操作者が収集条件や再構成条件などの各種条件を入力すると(S1)、装置制御部15のデータ処理制御部20は、処理の方向(たとえば頭部側から足側に向かう方向)を設定し(S2)、重複範囲設定部21は、データの分割部分における重複範囲の幅を設定する(S3)。
架台2によるデータ収集がなされると(S4)、収集されたデータは画像処理部16に送られて生データ記憶部18に格納される(S5)。
ユニット指定部32は、複数の画像処理ユニット17A〜17Nの内、前処理を施す前処理ユニットと、再構成処理を行う再構成処理ユニットと、画像補正処理を行う後処理ユニットとをそれぞれ指定する(S6)。ここでは、N個の画像処理ユニット17A〜17Nのそれぞれを、前処理ユニット、再構成処理ユニット及び後処理ユニットに指定する。
画像処理ユニット17Aのデータ分割部31は、指定された前処理ユニット、再構成処理ユニット、後処理ユニットの個数と、ステップS2、S3にて設定された処理方向及び重複範囲とに基づいて、収集されたデータ(純生データ)を2以上の部分データに分割する(S7;図4参照)。ここでは、画像処理ユニット17A〜17Nと同数、つまり前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N及び画像補正部44A〜44Nの各個数と同数の、N個の部分データd1〜dNに分割する。なお、部分データd1〜dNの処理順序は、ステップS2にて設定された処理方向に応じて決定されるが、この第1の処理態様においては、部分データの個数と画像処理ユニットの個数とが同じであるので、部分データは一斉に処理に供されることとなる。
画像処理ユニット17Aのデータ送受信部41Aは、生データ記憶部18に記憶された純生データDについて、部分データd1に相当する範囲を受信するとともに、部分データd2に相当する範囲を画像処理ユニット17Bに、部分データd3に相当する範囲を画像処理ユニット17Cに、・・・、部分データdNに相当する範囲を画像処理ユニット17Nにそれぞれ送信する(S8)。それにより、N個の画像処理ユニット17A〜17NにN個の部分データd1〜dNが分配される。分配された部分データd1〜dNは、各画像処理ユニット17A〜17Nの記憶部45A〜45Nにそれぞれ記憶される。以下、「純生データDの部分データdiに相当する範囲」と「部分データdi」とを同一視する(i=1〜N)。
各画像処理ユニット17iの前処理部42iは、分配された部分データdiに前処理を施して部分投影データpiを生成する(S9)。それにより、N個の部分投影データp1〜pNが生成される。ここで、部分投影データpj、p(j+1)は、部分データdj、d(j+1)の重複範囲ejに対応する重複範囲を有している(j=1〜N−1)。
次に、各画像処理ユニット17iの再構成部43iは、自身の前処理部42iが生成した部分投影データpiに基づいて部分画像giを再構成する(S10)。それにより、N個の部分画像g1〜gNが再構成される。ここで、部分画像gj、g(j+1)は、部分データdj、d(j+1)の重複範囲ejに対応する重複範囲を有している。
続いて、各画像処理ユニット17iの画像補正部44iは、自身の再構成部43iが再構成した部分画像giに後処理としての画像補正を施す(S11)。
画像処理ユニット17B〜17Nは、後処理を施した部分画像g2〜gNを画像処理ユニット17Aに送信することにより、全ての部分画像g1〜gNを画像処理ユニット17A(親ユニット)に集める(S12)。
画像処理ユニット17Aの画像合成部33は、集められたN個の部分画像g1〜gNを合成して、収集された純生データD全体に対応する画像Gを形成する(S13)。この画像Gは、再構成画像記憶部19に格納される(S14)。画像Gは、必要に応じて、コンソール6のモニタ4やワークステーション200のモニタに表示される。以上で、本実施形態のX線CT装置1による第1の処理態様は終了となる。
〔第2の処理態様〕
図6に示すX線CT装置1による第2の処理形態は、N個の画像処理ユニット17A〜17Nの内のL個(L<N)を前処理専用のユニットとして最初の指定時に指定するものである。
収集条件や再構成条件などの各種条件の入力を受けて(S21)、装置制御部15のデータ処理制御部20が処理の方向を設定し(S22)、重複範囲設定部21がデータの分割部分における重複範囲の幅を設定する(S23)。
架台2によるデータ収集がなされると(S24)、収集されたデータは画像処理部16に送られて生データ記憶部18に格納される(S25)。
ユニット指定部32は、複数の画像処理ユニット17A〜17Nの内、前処理を施す前処理ユニットと、再構成処理を行う再構成処理ユニットと、画像補正処理を行う後処理ユニットとをそれぞれ指定する(S26)。ここでは、N個の画像処理ユニット17A〜17Nの内のL個(1≦L<N)を前処理ユニットに指定し、残りのN−L個を再構成処理ユニット及び後処理ユニットに指定する。なお、再構成処理ユニット及び後処理ユニットは、異なる画像処理ユニットであってもよく、また、それぞれの指定個数は、残りのN−L個の内の任意個数とすることができる。
画像処理ユニット17Aのデータ分割部31は、指定された前処理ユニット、再構成処理ユニット、後処理ユニットの個数と、設定された処理方向及び重複範囲とに基づいて、収集されたデータを2以上の部分データに分割する(S27;図4参照)。ここでは、前処理ユニットに指定された画像処理ユニットと同数あるいはそれを超えるL′個の部分データd1〜dL′に分割する(L≦L′)。なお、部分データの個数L′は、再構成処理ユニット及び/又は後処理ユニットの指定個数と同数あるいはそれを超える個数とすることが望ましい。たとえば、4個の画像処理ユニットが設けられている場合において、それらの内の2個を前処理ユニットに指定するとともに、残りの2個を再構成処理ユニット及び後処理ユニットに指定し、更に、収集されたデータを4個の部分データに分割することができる。なお、部分データd1〜dL′の処理順序は、ステップS22にて設定された処理方向に応じて決定される。ここでは、部分データd1、d2、・・・、dL′の順に処理に供されるものとする。
画像処理ユニット17Aのデータ送受信部41Aは、生データ記憶部18に記憶された純生データDについて、部分データd1〜dL′の内のL個の部分データd1〜dLに相当する範囲をL個の前処理ユニットに分配する。(S28)。ここで、L′>Lの場合には、L′−L個の部分データd(L+1)〜dL′のそれぞれに相当する範囲が分配されずに残っている。
前処理ユニットに指定されたL個の画像処理ユニット17iのそれぞれの前処理部42i(たとえばi=A〜L)は、分配された部分データdiに前処理を施して部分投影データpiを生成する(S29)。それにより、L個の部分投影データp1〜pLが生成される。ここで、部分投影データpj、p(j+1)は、部分データdj、d(j+1)の重複範囲ejに対応する重複範囲を有している(j=1〜L−1)。生成された部分投影データpiは、生データ記憶部18に保存され、データ送受信部17Aにより、再構成処理ユニットに指定された画像処理ユニットに逐次送信される(S30)。
L′>Lの場合において(S31;Y)、未だ分配されていない部分データがある場合(S32;N)、画像処理ユニット17Aの処理状況取得部34は、各前処理ユニットの処理状況情報を逐次取得し、前処理を終了した前処理ユニットを逐次判別する(S33)。そして、データ送受信部41Aは、前処理終了と逐次判別される前処理ユニットに対して、未だ分配されていない部分データ(残りの部分データd(L+1)〜dL′)を逐次分配する(S28)。ステップS28〜S33の処理は、全ての部分データd1〜dL′を分配するまで(S32;Y)反復される。それにより、最終的にL′個の投影データp1〜pL′が生成される。
一方、L′=Lの場合(S31;N)には、各前処理ユニットによる前処理の終了に対応してそのまま再構成処理に移行する。
また、処理状況取得部34は、逐次取得される処理状況情報に基づき、全ての前処理が終了した前処理ユニットを逐次判別する(S34)。ユニット指定部32は、全ての前処理が終了したと判別された前処理ユニットを再構成処理ユニット及び後処理ユニットにその指定を変更する(S35)。
再構成処理ユニットに指定(指定変更)された画像処理ユニット17A〜17Nの再構成部43A〜43Nは、逐次送信される部分投影データp1〜pL′に基づいて部分画像g1〜gL′を逐次再構成する(S36)。
このとき、ステップS35にて指定変更された再構成処理ユニット(L個あるいはそれ未満の個数ある)は、部分投影データp1〜pL′の内の最後の方に基づいて画像を再構成することが望ましい。たとえば、指定変更された再構成処理ユニットが1つである場合、当該再構成処理ユニットは最後の部分投影データpL′に基づく画像gL′を再構成する。また、指定変更された再構成処理ユニットが複数(s個)ある場合、このs個の再構成処理ユニットは最後の方の部分投影データp(L′−s+1)〜pL′に基づく画像g(L′−s+1)〜gL′をそれぞれ再構成する。なお、s個の再構成処理ユニットに対する部分投影データp(L′−s+1)〜pL′の分配態様としては、たとえば、最初に指定変更された再構成処理ユニットに対して最後の部分投影データpL′を分配し、2番目に指定変更された再構成処理ユニットに対して最後から2つ目の部分投影データp(L′−1)を分配し、・・・、s番目に指定変更された再構成処理ユニットに対して最後からs番目の部分投影データp(L′−s+1)を分配するようにして行うことができる。すなわち、未だ分配されていない部分投影データの内、処理順序が最後のものを順次分配するように構成できる。
また、L′>Nである場合、処理状況取得部34は、各画像処理ユニット17A〜17Nによる再構成処理の処理状況情報を逐次取得して再構成処理を終了した画像処理ユニットを逐次判別する。データ送受信部41Aは、再構成処理終了と逐次判別される再構成処理ユニットに対して、未だ再構成されていない部分投影データを逐次分配する。
続いて、画像処理ユニット17A〜17Nの画像補正部44A〜44Nは、自身の再構成部43A〜43Nが再構成した部分画像g1〜gL′に画像補正を施す(S37)。なお、再構成処理ユニットと後処理ユニットとが異なる画像処理ユニットである場合(ステップS26参照)、再構成された部分画像g1〜gL′は、再構成画像記憶部19に保存され、データ送受信部17Aにより、後処理ユニットに指定された画像処理ユニットに逐次送信される。
画像処理ユニット17B〜17Nは、後処理を施した部分画像を画像処理ユニット17Aに送信することにより、全ての部分画像g1〜gL′を画像処理ユニット17A(親ユニット)に集める(S38)。
画像処理ユニット17Aの画像合成部33は、集められたL′個の部分画像g1〜gL′を合成して、収集された純生データD全体に対応する画像Gを形成する(S39)。この画像Gは、再構成画像記憶部19に格納される(S40)。画像Gは、必要に応じて、コンソール6のモニタ4やワークステーション200のモニタに表示される。以上で、本実施形態のX線CT装置1による第2の処理態様は終了となる。
〔第3の処理態様〕
図7に示す第3の処理態様は、操作者が確認したい診断部位(注目部位)を設定した場合などに、当該診断部位の画像を優先的に再構成するものである。
まず、操作者は、コンソール6の入力デバイス5を操作して、確認したい診断部位を設定入力するとともに(S41)、収集条件や再構成条件などの各種条件の入力を行う(S42)。これらの入力内容は、コンピュータ装置3のハードディスクドライブやRAM等の記憶装置に保存される。特に、診断部位の設定入力内容は、前述のX座標、Y座標、Z座標によりその設定範囲が特定され、その座標が保存される。
装置制御部15のデータ処理制御部20は処理の方向を設定し(S43)、重複範囲設定部21はデータの分割部分における重複範囲の幅を設定する(S44)。
架台2によるデータ収集がなされると(S45)、収集されたデータは画像処理部16に送られて生データ記憶部18に格納される(S46)。
ユニット指定部32は、複数の画像処理ユニット17A〜17Nの内、前処理を施す前処理ユニットと、再構成処理を行う再構成処理ユニットと、画像補正処理を行う後処理ユニットとをそれぞれ指定する(S47)。ここでは、N個の画像処理ユニット17A〜17Nのそれぞれを、前処理ユニット、再構成処理ユニット及び後処理ユニットに指定する場合について説明する。なお、前処理ユニット、再構成処理ユニット及び後処理ユニットを任意に指定する場合については、第2の処理態様にて説明した分配手順と同様に処理できる。
画像処理ユニット17Aのデータ分割部31は、設定された処理方向及び重複範囲に基づいて、収集された純生データを2以上の任意個数(K個)の部分データd1〜dKに分割する(S48;図4参照)。各部分データd1〜dKは、前述のX座標、Y座標、Z座標によりその範囲が特定される。ここで、K≦Nの場合には、N個の画像処理ユニット17A〜17Nの内のK個に分配して処理を実行すれば十分であるので、以下、K>Nの場合について説明する。なお、部分データd1〜dKの処理順序は、ステップS43にて設定された処理方向に応じて決定される。ここでは、部分データd1、d2、・・・、dKの順に処理に供されるものとする。
画像処理ユニット17Aのデータ送受信部41Aは、ステップS41にて設定入力された診断部位の設定範囲の座標と、各部分データd1〜dKの範囲の座標とを参照し、診断部位の設定範囲を含む部分データ(d−1〜d−kとする)に相当する純生データDの範囲を、画像処理ユニット17A〜17Nに優先的に分配する(S49)。ここで、k≦Nの場合は、N個の画像処理ユニット17A〜17Nの内のk個に部分データd−1〜d−kが1つずつ分配される。また、k>Nの場合には、最初に、部分データd−1〜d−kの内のN個(たとえば部分データd−1〜d−N)を画像処理ユニット17A〜17Nに1つずつ分配するとともに、処理状況取得部34が取得する処理状況情報に基づいて処理が終了した画像処理ユニットを判別し、その画像処理ユニットに部分データd−(N+1)〜d−kを逐次分配して、診断部位に対応する全ての部分データd−1〜d−kを分配する。
診断部位に対応する部分データd−1〜d−kが分配された画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42Nは、その部分データに前処理を施して部分投影データを生成する(S50)。それにより、診断部位の設定範囲に対応するk個の部分投影データp1〜p−kが生成される。ここで、部分投影データpj、p(j+1)は、部分データdj、d(j+1)の重複範囲ejに対応する重複範囲を有している(j=1〜k−1)。
次に、画像処理ユニット17A〜17Nの再構成部43A〜43Nは、自身の前処理部42A〜42Nが生成した部分投影データに基づいて部分画像を再構成する(S51)。それにより、診断部位の設定範囲に対応するk個の部分画像g−1〜g−kが再構成される。ここで、部分画像gj、g(j+1)は、部分データdj、d(j+1)の重複範囲ejに対応する重複範囲を有している。
続いて、画像処理ユニット17A〜17Nの画像補正部44A〜44Nは、自身の再構成部43A〜43Nが再構成した部分画像に後処理としての画像補正を施す(S52)。
画像処理ユニット17B〜17Nは、後処理を施した部分画像を画像処理ユニット17Aに送信して、診断部位の設定範囲に対応する全ての部分画像g−1〜g−kを画像処理ユニット17A(親ユニット)に集める(S53)。
画像処理ユニット17Aの画像合成部33は、集められたk個の部分画像g−1〜g−kを合成して、診断部位の設定範囲を含む画像G′を形成する(S54)。この画像G′は、再構成画像記憶部19に格納されるとともに(S55)、コンソール6のモニタ4やワークステーション200(図2参照)のモニタなどに表示させる(S56)。
次に、画像処理ユニット17Aのデータ送受信部41Aは、診断部位の設定範囲を含まないK−k個の部分データに相当する純生データDの範囲を、画像処理ユニット17A〜17Nに分配する(S57)。ここで、これら診断部位に対応しない部分データの分配は、K−k≦Nの場合とK−k>Nの場合とに応じて、ステップS49と同様にして行う。
診断部位に対応しない部分データが分配された画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42Nは、その部分データに前処理を施して部分投影データを生成し(S58)、再構成部43A〜43Nは、自身の前処理部42A〜42Nが生成した部分投影データに基づいて部分画像を再構成し(S59)、画像補正部44A〜44Nは、自身の再構成部43A〜43Nが再構成した部分画像に後処理としての画像補正を施す(S60)。画像処理ユニット17B〜17Nは、後処理を施した部分画像を画像処理ユニット17Aに送信して、診断部位の設定範囲に対応しないK−k個の部分画像を画像処理ユニット17A(親ユニット)に集める(S61)。
画像処理ユニット17Aの画像合成部33は、ステップS53にて集められた診断部位の設定範囲に対応するk個の部分画像g−1〜g−kと、ステップS61にて集められたK−k個の部分画像とを合成して、収集された純生データD全体に対応する画像Gを形成する(S62)。この画像Gは、再構成画像記憶部19に格納される(S63)。画像Gは、必要に応じて、コンソール6のモニタ4やワークステーション200のモニタに表示される。以上で、本実施形態のX線CT装置1による第3の処理態様は終了となる。
〔第4の処理態様〕
図8に示すX線CT装置1の第4の処理態様は、画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42Nや再構成部43A〜43Nの処理能力や、収集された純生データのデータ量に応じて、その純生データを2以上の部分データに分割し、画像処理ユニット17A〜17Nによって分散処理するものである。
この第4の処理態様においては、コンピュータ装置3のハードディスクドライブやROM等に、画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N、画像補正部44A〜44Nのそれぞれの処理能力を表す処理能力情報があらかじめ記憶されている。
この処理能力情報としては、たとえば、前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N、画像補正部44A〜44Nを構成する基板の演算性能や、それらによるデータ処理速度の実測値などを用いることができる。なお、データ処理速度の実測値は、コンピュータ装置3の製造時や設置時などに測定される。また、画像処理ユニットによる処理時にそのデータ処理速度を測定して記憶しておくとともに、過去(たとえば前回)の処理実行時に測定されたデータ処理速度を今回の処理能力情報として使用することもできる。このデータ処理速度は、処理したデータ量を処理時間で除算することにより算出することができる。
まず、操作者が収集条件や再構成条件などの各種条件を入力すると(S71)、装置制御部15のデータ処理制御部20は、処理の方向(たとえば頭部側から足側に向かう方向)を設定し(S72)、重複範囲設定部21は、データの分割部分における重複範囲の幅を設定する(S73)。
架台2によるデータ収集がなされると(S74)、収集されたデータは画像処理部16に送られて生データ記憶部18に格納される(S75)。
ユニット指定部32は、複数の画像処理ユニット17A〜17Nの内、前処理を施す前処理ユニットと、再構成処理を行う再構成処理ユニットと、画像補正処理を行う後処理ユニットとをそれぞれ指定する(S76)。ここでは、第1の処理態様と同様に、N個の画像処理ユニット17A〜17Nのそれぞれを、前処理ユニット、再構成処理ユニット及び後処理ユニットに指定することとする。なお、当該第4の処理態様では、前処理ユニット、再構成処理ユニット及び後処理ユニットを任意に指定することができる。
画像処理ユニット17Aのデータ分割部31は、収集された純生データDのデータ量を取得する(S77)。取得された純生データDのデータ量をB(バイト)とする。また、データ分割部31は、画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N、画像補正部44A〜44Nの処理能力情報を取得する(S78)。ここで、取得された前処理部42A〜42Nの処理能力の比をa1:a2:・・・:aNとし、再構成部43A〜43Nの処理能力の比をb1:b2:・・・:bNとし、画像補正部44A〜44Nの処理能力の比をc1:c2:・・・:cNとする。データ分割部31は、純生データDの分割個数を決定するとともに、純生データDのデータ量Bと前処理部42A〜42Nなどの処理能力比とを参照して各部分データのデータ量を決定することで、純生データDを2以上の部分データに分割する(S79;図4参照)。
ここでは、画像処理ユニット17A〜17Nと同数のN個の部分データd1〜dNに分割することとする。また、参照される処理能力比は、前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N及び画像補正部44A〜44Nの内の少なくとも1つの処理能力比であり、たとえば再構成部43A〜43Nの処理能力比を参照する場合には、純生データDは、データ量の比がb1:b2:・・・:bN(再構成部43A〜43Nと同様)の部分データd1〜dNに分割される。ここで、参照された処理能力比に厳密にしたがって純生データDを分割する必要はなく、当該処理能力比に概ねしたがうように分割してもよい。なお、純生データDの分割個数はN個には限定されず任意である。たとえば純生データDを2N個に分割する場合、部分データd1〜dNのデータ量の比がb1:b2:・・・:bNであり、部分データd(N+1)〜d(2N)のデータ量の比がb1:b2:・・・:bNであるような2N個の部分データd1〜d(2N)に分割することができる。
画像処理ユニット17Aのデータ送受信部41Aは、生データ記憶部18に記憶された純生データDについて、部分データd1に相当する範囲を受信するとともに、部分データd2に相当する範囲を画像処理ユニット17Bに、部分データd3に相当する範囲を画像処理ユニット17Cに、・・・、部分データdNに相当する範囲を画像処理ユニット17Nにそれぞれ送信する(S80)。
各画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42Nは、分配された部分データd1〜dNに前処理を施して部分投影データp1〜pNを生成し(S81)。再構成部43A〜43Nは、部分投影データp1〜pNに基づいて部分画像g1〜gNを再構成し(S82)、画像補正部44A〜44Nは、部分画像g1〜gNに画像補正を施す(S83)。
画像処理ユニット17B〜17Nは、後処理を施した部分画像を画像処理ユニット17Aに送信して、全ての部分画像g1〜gNを画像処理ユニット17A(親ユニット)に集める(S84)。
画像処理ユニット17Aの画像合成部33は、集められたN個の部分画像g1〜gNを合成して、収集された純生データD全体に対応する画像Gを形成する(S85)。この画像Gは、再構成画像記憶部19に格納される(S86)。画像Gは、必要に応じて、コンソール6のモニタ4やワークステーション200のモニタに表示される。以上で、本実施形態のX線CT装置1による第4の処理態様は終了となる。
[作用効果]
以上のような本実施形態のX線CT装置1の作用効果について説明する。このX線CT装置1は、前処理、再構成処理及び画像補正処理を実行可能な複数の画像処理ユニット17A〜17Nを備えている点が特徴的である。
X線CT装置1の第1の処理態様においては、架台2により収集されたデータを画像処理ユニット17A〜17Nと同数のN個の部分データに分割してN個の画像処理ユニット17A〜17Nに1つずつ分配するとともに、各画像処理ユニット17A〜17Nが1つの部分データに基づく前処理、再構成処理及び画像補正処理を実行するようになっている。したがって、従来のように、収集されたデータの全てに対する処理を単一の画像処理ユニットによって実行する場合と比較して、画像の形成に要する処理時間を大幅に短縮することができる。特に、多数の画像処理ユニットを搭載することにより、従来よりも極めて短い時間で画像を形成することが可能となる。
また、この第1の処理態様によれば、収集されたデータを画像処理ユニット17A〜17Nの個数、つまり前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N及び画像補正部44A〜44Nの個数に分割された部分データを分散処理するように構成されているので、特に、各画像処理ユニット17A〜17Nの処理能力が同等である場合や処理能力に大きな差が無い場合において、収集されたデータ全体に対する処理時間を効果的に短縮することができる。
また、各部分データに基づく前処理、再構成処理及び画像補正処理を1つの画像処理ユニットで行っている。それにより、前処理により生成された部分投影データや再構成された部分画像を生データ記憶部18等に保存する必要がなく、また、それらを他の画像処理ユニットに送信する必要もないので、処理時間の短縮を図ることができる。
X線CT装置1の第2の処理態様においては、最初のユニット指定時に画像処理ユニット17A〜17Nの内のいくつかを前処理専用のユニットに指定して部分データの前処理を担わせるとともに、その前処理ユニットによる全ての前処理が終了したら再構成処理ユニットに指定を変更して再構成処理を実行させるようになっている。したがって、第1の処理態様と同様に前処理や再構成処理や後処理を、複数の画像処理ユニット17A〜17Nの分散処理によって行うことができ、画像の形成に要する時間を大幅に短縮できる。また、前処理を終了した画像処理ユニットが、未だ分配されていない部分投影データに基づく部分画像を再構成することができるので、再構成処理を効率的に行うことができ、画像形成に掛かる時間を大幅に短縮することができる。
また、第2の処理態様において、前処理ユニットから再構成処理ユニットに指定変更された画像処理ユニットには、部分投影データp1〜pL′の内、処理順序が最後の方のものが分配される。特に、前処理が終了して再構成処理ユニットに指定変更された画像処理ユニットに対して、未だ分配されていない部分投影データの内、処理順序が最後のものを順次分配するように構成することができる。それにより、再構成処理を円滑に実行でき、画像形成時間の短縮を図ることができる。
また、第2の処理態様によれば、前処理部により逐次生成される部分投影データを再構成部に逐次分配するように構成されている。それにより、生成された部分投影データから順に再構成処理に移行されるので、画像形成時間の短縮を図ることができる。
また、第2の処理態様によれば、収集されたデータを任意個数の部分データに分割可能とされているので、データ分割の柔軟性が向上して利便性が高まるとともに、画像形成時間の短縮を図ることができる。
特に、収集されたデータを画像処理ユニットより多くの部分データに分割する場合においては、各画像処理ユニットの処理状況を監視し、未だ分配されていない部分データや部分投影データを処理が終了した画像処理ユニットに分配して前処理や再構成処理を実行させるように構成されている。それにより、複数の画像処理ユニットによる前処理や再構成処理を効率的に行うことができ、画像形成時間の短縮を図ることができる。
X線CT装置1の第3の処理態様においては、収集されたデータを2以上の部分データに分割して複数の画像処理ユニットで分散処理するときに、設定入力された診断部位に対応する範囲を含む部分データに基づく前処理や、当該診断部位に対応する範囲を含む部分投影データに基づく再構成処理を優先的に実行するとともに、この優先処理の終了後に、当該診断部位に対応しない範囲の処理を実行するようになっている。それにより、第1、2の処理態様と同様に、前処理や再構成処理や後処理を画像処理ユニット17A〜17Nの分散処理によって行うことができ、画像形成時間を大幅に短縮できる。また、第3の処理態様によれば、当該診断部位(及びその周辺部位)の画像を優先的に表示できるので、操作者は、当該診断部位を迅速に確認することが可能となる。したがって、診断時間の短縮を図ることができ、特に緊急性を伴う診断時などに有効である。
X線CT装置1の第4の処理態様においては、収集されたデータを、画像処理ユニット17A〜17Nの前処理部42A〜42Nや再構成部43A〜43Nや画像補正部44A〜44Nの処理能力と、収集された純生データのデータ量とに応じたデータ量の部分データに分割するとともに、各部分データをそのデータ量に対応する処理能力の画像処理ユニットによって処理するようになっている。それにより、第1〜3の処理態様と同様、前処理や再構成処理や後処理を画像処理ユニット17A〜17Nの分散処理によって行うことができ、画像形成時間を大幅に短縮できる。また、前処理部42A〜42N、再構成部43A〜43N、画像補正部44A〜44Nに対して、その処理能力に応じたデータ量の部分データに基づく処理を担わせることができるので、各部分データに対する処理をほぼ同じ処理時間で行うことができ、画像形成時間を効果的に短縮することができる。また、純生データのデータ量に応じた個数の部分データに分割して分散処理を行うことで、処理の更なる効率化を図ることが可能である。
なお、本実施形態のX線CT装置1によれば、上記の第1〜4の処理態様を任意に組み合わせた処理態様を実行することも可能である。また、コンソール6からの手動設定入力や自動設定により、第1〜4の処理態様(それらの任意の組み合わせを含む)を選択的に実行できるように構成してもよい。
また、X線CT装置1によれば、指定された前処理ユニット、再構成処理ユニット、後処理ユニットの個数に応じて純生データを分割するように構成されているので、部分データの処理を効率的に行うことができる。ここで、前処理ユニット、再構成処理ユニット及び後処理ユニットのそれぞれの個数の内の少なくとも1つに基づいて、純生データの分割個数(部分データの個数)を決定することができる。分割個数決定のために参照されるユニットは、操作者が選択してもよいし、自動選択するようにしてもよい。たとえば、前処理に長時間を要する場合や前処理の時間を短縮したい場合には、前処理ユニットの個数に応じて純生データを分割し、再構成処理に長時間を要する場合やその処理時間を短縮したい場合には、再構成処理ユニットの個数に応じて純生データを分割するように選択することができる。
また、X線CT装置1によれば、収集された純生データの部分データを生成するときに、連続する部分データの分割部分に重複範囲を形成するようになっているので(図4参照)、分割部分の画像を有効に再構成することが可能である。また、複数個形成される部分画像のそれぞれの重複範囲を比較して、重複範囲に対応する画像(画素値)が一致する部分データを連続する部分データと判断することができ、更に、一致した重複範囲を重ね合わせるようにして画像を合成できるので、収集されたデータ全体に対応する画像の合成を正確に行うことができる。
また、X線CT装置1によれば、架台2が収集した透過X線量の3次元分布データ(純生データ)を、前述のX方向、Y方向、Z方向の内、任意の方向に沿って分割して部分データを生成することができる。したがって、データ分割の柔軟性が向上して利便性が高まるとともに、画像形成処理に掛かる時間の短縮を図ることもできる。
[変形例]
以上で詳述した実施形態の各種変形例について説明する。
上記実施形態のX線CT装置1は、前処理、再構成処理及び後処理を実行可能な画像処理ユニットを複数個備えた構成とされているが、前処理、再構成処理及び後処理の内の1つ又は2つの処理のみを実行可能な画像処理ユニットを設けることができる。また、複数の画像処理ユニットは、単一のコンピュータ装置に搭載されている必要はなく、2台以上のコンピュータ装置に複数の画像処理ユニットを設けるように構成してもよい。また、前処理部、再構成部、画像補正部の個数は同数である必要はなく、それぞれ任意の個数を設けた構成を採用できる。なお、前処理部及び再構成部の少なくとも一方(望ましくは双方)は、複数個搭載されている必要があり、画像補正部については複数個搭載されていることが望ましい。より一般に、本発明に係る医用画像診断装置は、収集されたデータに前処理を施して投影データを生成する前処理手段と、その投影データに基づいて画像を再構成する再構成手段とを備えるものであって、複数個の前処理手段及び/又は再構成手段が設けられていれば十分である。
以下、本発明に係る医用画像診断装置の各種のバリエーションを説明する。なお、各手段による具体的処理内容については、上記実施形態で詳述したものと同様である。
複数個の再構成手段が設けられた場合、収集されたデータは、再構成手段の個数に応じて2以上の部分データに分割され、前処理手段が各部分データに前処理を施して2以上の部分投影データを生成する。そして、この2以上の部分投影データを複数の再構成手段に分配して部分画像を再構成するとともに、再構成された2以上の部分画像を合成して、収集されたデータ全体に対応する画像を形成する。それにより、再構成処理に掛かる時間を大幅に短縮することができ、結果として画像形成に掛かる時間を大幅に短縮することができる。当該構成は、再構成処理に時間を要する場合に特に有効である。
一方、複数個の前処理手段が設けられた場合、収集されたデータは、前処理手段の個数に応じて2以上の部分データに分割されて複数の前処理手段に分配される。複数の前処理手段は、それぞれ分配された部分データに前処理を施して部分投影データを生成する。再構成手段は、生成された2以上の部分投影データのそれぞれに基づいて部分画像を再構成する。そして、再構成された2以上の部分画像を合成して、収集されたデータ全体に対応する画像を形成する。それにより、前処理に掛かる時間を大幅に短縮することができ、結果として画像形成に掛かる時間を大幅に短縮することができる。当該構成は、前処理に時間を要する場合に特に有効である。
なお、これら2種類の構成において、前処理手段により逐次生成される部分投影データを再構成手段に逐次送ることにより、処理全体の高速化を図ることが望ましい。
また、複数個の再構成手段が設けられた場合において、最初の分配時に部分投影データの一部のみを分配する場合には、情報取得手段によって各再構成手段の処理状況を取得し、それに基づいて分配先を指定して未だ分配されていない部分投影データ(つまり未だ再構成されていない部分投影データ)を新たに分配して再構成処理を行わせることができる。それにより、たとえば、再構成手段の個数よりも多くの部分データに分割された場合などに、再構成処理を効率的に行うことができ、処理時間短縮を図ることができる。
一方、複数個の前処理手段が設けられた場合において、最初の分配時に部分データの一部のみを分配する場合には、情報取得手段によって各前処理手段の処理状況を取得し、それに基づいて分配先を指定して未だ分配されていない部分データ(つまり未だ前処理が施されていない部分データ)を新たに分配して前処理を行わせることができる。それにより、たとえば、前処理手段の個数よりも多くの部分データに分割された場合などに、前処理を効率的に行うことができ、処理時間短縮を図ることができる。
また、複数個の再構成手段が設けられた場合において、上記実施形態の第3の処理態様のように、確認したい診断部位の設定要求を行えるように構成し、前処理手段により生成された部分投影データの内、設定された診断部位に対応する部分投影データを再構成手段に優先的に分配して、再構成処理を優先的に実行させることができる。それにより、設定された診断部位及びその周辺の画像を迅速に確認することができる。このとき、設定された診断部位に対応する部分データの前処理についても優先的に実行させることが望ましい。
同様に、複数個の前処理手段が設けられた場合においても、確認したい診断部位の設定要求を行えるように構成し、設定された診断部位に対応する部分データを前処理手段に優先的に分配して、部分投影データの生成を優先的に行わせることができる。それにより、設定された診断部位及びその周辺の画像を迅速に確認することができる。このとき、設定された診断部位に対応する部分投影データの再構成処理についても優先的に実行させることが望ましい。
なお、診断部位の設定要求は、上記実施形態の第3の処理態様のように操作者が手動で行ってもよいし、自動設定されるようにしてもよい。後者のケースは、たとえば、医用画像診断装置が専ら心臓等の特定部位の診断に供される場合などに有効であり、当該特定部位に相当する範囲をあらかじめ設定しておくことにより実現できる。なお、被検者の身長などに応じて特定部位の範囲が変わるような場合には、たとえば平均身長等に基づいて当該特定部位の平均的な範囲をあらかじめ設定しておくとともに、平均的範囲から逸脱するような場合に範囲を変更できるような構成を適用することが可能である。
上記実施形態では、図4に示したように、収集された純生データDの各分割部分fiにおいて、連続する部分データdi、d(i+1)の双方に重複範囲eiを持たせるようになっているが、その一方(たとえばdi側)のみに重複範囲を持たせるように純生データDを分割し、当該重複範囲の画素値と他方の部分データの画素値とを比較して部分画像gi、g(i+1)の合成位置を決定するようにしてもよい。
また、保存データの高速読み出しが可能な生データ記憶部18を使用する場合、データ分割部31により逐次分割される部分データを前処理部42A〜42Nに逐次分配して前処理を行うように構成してもよい。同様に、前処理部42A〜42Nにより逐次生成される部分投影データを生データ記憶部18に逐次伝送して記憶するとともに、再構成部43A〜43Nに逐次分配して再構成処理を行うようにしてもよい。
上記実施形態においては、あらかじめ設定された再構成条件に基づいて各部分投影データの再構成処理を実行するように構成されているが、たとえば臨床目的によっては、異なる再構成関数を用いて或る部分投影データに対する再構成処理を行うようにしてもよい。その場合には、スキャン前の再構成条件設定時や、バッチ再構成(角度を指定して行う再構成処理)時などに、再構成範囲の指定を行う。
また、上記実施形態のデータ分割部31は、画像処理ユニット17A〜17Nの個数や、前処理ユニット、再構成処理ユニット、後処理ユニットの個数に応じて、純生データの分割個数や、部分データの重複範囲を決定しているが、たとえば各画像処理ユニット17A〜17Nに搭載される画像処理基板の枚数が異なる場合などにおいては、前処理部42A〜42Nや再構成部43A〜43Nや画像補正部44A〜44Nのそれぞれを構成する画像処理基板の枚数に応じて、純生データの分割個数や部分データの重複範囲を決定するように構成できる。
たとえば、2つの再構成処理ユニットが指定されている場合において、第1の再構成処理ユニットの再構成部はα枚の画像処理基板から構成され、第2の再構成処理ユニットの再構成部はβ枚の画像処理基板から構成されている場合、純生データDをα+β個の部分データd1〜d(α+β)に分割することができる。そして、部分データd1〜dαに基づく部分投影データp1〜pαを第1の再構成処理ユニットに分配するとともに、部分データd(α+1)〜d(α+β)に基づく部分投影データp(α+1)〜p(α+β)を第2の再構成処理ユニットに分配する。第1の再構成処理ユニットは、α個の部分投影データp1〜pαをα枚の画像処理基板に1枚ずつ分配して再構成処理を行い、第2の再構成処理ユニットは、β個の部分投影データp(α+1)〜p(α+β)をβ枚の画像処理基板に1枚ずつ分配して再構成処理を行う。
また、上記実施形態では、純生データや生データ(投影データ)を記憶する生データ記憶部18を1つしか設けていないが、複数個の生データ記憶部を搭載した構成を適用することもできる。
図9に示すX線CT装置1′は、複数(3個)のX線検出器9a、9b、9cを搭載して複数のデータを一度に収集する架台2′と、少なくとも1個(ここでは3個とする。)の前処理装置51、52、53とを有する。X線検出器9aにより検出され収集されたデータは前処理装置51に転送され、X線検出器9bにより検出されて収集されたデータは前処理装置52に転送され、X線検出器9cにより検出され収集されたデータは前処理装置53に転送され、それぞれ前処理が施されるようになっている。すなわち、このX線CT装置1′は、架台2′により収集された全データを複数のX線検出器9a、9b、9cのそれぞれによる検出結果毎に分割して処理するものである。そこで、上記実施形態における用語と同様に、架台2′が収集した全データを「純生データD」と称し、X線検出器9a、9b、9cのそれぞれにより検出されて収集されたデータを「部分データda、db、dc」と称することとする。ここで、純生データは部分データda、db、dcにより構成される。
前処理装置51は、X線検出器9aからの部分データdaに前処理を施して部分投影データpaを生成する。生成された部分投影データpaは、生データ記憶媒体54に格納される。前処理装置52は、X線検出器9bからの部分データdbに前処理を施して部分投影データpbを生成する。生成された部分投影データpbは、生データ記憶媒体55、56に分割して格納される。ここで、生データ記憶媒体55、56に格納されるものを部分投影データpb1、pb2とそれぞれ呼ぶこととする。前処理装置53は、X線検出器9cからの部分データdcに前処理を施して部分投影データpcを生成する。生成された部分投影データpcは、生データ記憶媒体57に格納される。
X線CT装置1′には複数(ここでは2個とする。)の再構成装置58、59が設けられている。再構成装置58は、生データ記憶媒体54、57に格納された部分投影データpa、pcに基づいて部分画像ga、gcをそれぞれ再構成する。また、再構成装置59は、生データ記憶媒体55、56に格納された部分投影データpb1、pb2に基づいて部分画像gb1、gb2をそれぞれ再構成する。再構成装置58、59によりそれぞれ再構成された部分画像ga、gb1、gb2、gcは、画像記憶媒体60に格納される。制御用コンピュータ61は、格納された部分画像ga、gb1、gb2、gcを合成して、純生データD全体に対応する画像Gを形成する。形成された画像Gは画像記憶媒体60に格納される。なお、部分画像の合成処理は、ワークステーション200あるいは再構成装置58、59などにより行うようにしてもよい。ワークステーション200の操作者は、画像記憶媒体60に格納された画像Gを閲覧することができる。
制御用コンピュータ61は、複数の前処理装置51、52、53の動作制御、再構成装置58の動作制御、画像記憶媒体に格納された画像Gのワークステーション200への送信処理の制御に加え、架台2や寝台(図示せず)の動作制御など、X線CT装置1′の全体制御を司っている。
このようなX線CT装置1′によれば、架台2′により収集される純生データDを複数の部分データda、db、dcに分割するとともに、この複数の部分データda、db、dcに対する前処理を3個の前処理装置51、52、53によって分散処理できる。それにより、前処理に掛かる時間が短縮され、結果として画像Gの形成処理に要する時間が短縮される。
また、複数の再構成装置58、59によって画像の再構成を分散して処理するので、再構成処理に掛かる時間が短縮され、結果として画像Gの形成処理に要する時間が短縮される。
また、前処理装置51、52、53が生成する部分投影データpa、pb1、pb2、pcを生データ記憶媒体54、55、56、57にそれぞれ逐次格納するとともに、それらを再構成装置58、59に逐次転送して部分画像ga、gb1、gb2、gcを再構成するように制御して、画像形成時間の短縮を図ることが望ましい。
また、前処理装置、生データ記憶媒体、再構成装置及び画像記憶媒体は、それぞれ任意の個数だけ搭載することが可能である。なお、前処理装置が1個だけであったとしても、複数の再構成装置により再構成処理を分散して行うため、処理時間の短縮を図ることができる。
なお、図9に示すX線CT装置1′において、架台2′は複数のデータ(部分データda、db、dc)を一度に収集する「収集手段」の一例に相当し、前処理装置51〜53は「前処理手段」の一例に相当し、生データ記憶媒体54〜57は「データ記憶手段」の一例に相当し、再構成装置58、59は「再構成手段」の一例に相当し、制御用コンピュータ61(又はワークステーション200もしくは再構成装置58、59)は「合成手段」の一例に相当するものである。
また、上記実施形態においては、単一のコンピュータ装置3に複数の画像処理ユニット17A〜17Nを設けて前処理や再構成処理を分散処理する構成を適用したが、図9の構成のように、前処理や再構成処理を実行するプログラムを搭載したコンピュータ装置からなる前処理装置や再構成装置を複数設けて分散処理を行う構成を採用することも可能である。
上記実施形態のX線CT装置1や図9のX線CT装置1′は、前処理や再構成処理の大幅な高速化が実現されているため、被検体をスキャンしてデータを収集しつつ、そのデータを部分データに逐次分割するとともに前処理を施して部分投影データを逐次生成し、生成された部分投影データを逐次再構成して部分画像を形成して表示させることができる。したがって、X線CT装置1、1′によれば、処理を被検体をスキャンしてデータを収集しながら医用画像を再構成する処理、つまり医用画像の実質的なリアルタイム再構成が可能となる。特に、3次元医用画像の実質的リアルタイム再構成を実現するためには、前処理や再構成処理等を行う画像処理基板として処理能力の高い画像処理基板を搭載させたり、画像処理基板やユニット間の接続に高速データLinkなどの高速転送インターフェイスを採用したり、X線CT装置1の第2の処理態様のように前処理を終了したユニットに再構成処理を実行させるよう制御したりして、装置としての処理能力を向上させることが望ましい。
このようなリアルタイム再構成を実行可能な医用画像診断装置を構成する場合、通常の再構成モードやリアルタイム再構成モードなど複数の再構成モードを選択設定できるように構成することができる。再構成モードの選択設定は、たとえば入力デバイス5を操作して行う。
また、リアルタイム再構成を行う場合において、前処理を終了したユニットに再構成処理を実行させる構成を採用する場合には、X線CT装置1の第2の処理態様と同様に、処理順序が最後の方の部分投影データを当該ユニットに分配することにより、処理の円滑化を図ることが望ましい。
また、リアルタイム再構成を行う場合において、複数の再構成処理ユニットの処理能力が異なる場合には、X線CT装置1の第4の処理態様と同様に、各再構成処理ユニットの処理能力に応じて純生データを分割するように構成することが望ましい。前処理ユニットや後処理ユニットについても同様である。
また、各ユニットの処理能力が同等である場合などには、各ユニットに前処理、再構成処理、画像補正処理を行わせるようにしてもよい。
上記実施形態の〔第3の処理態様〕の変形例として、設定された診断部位の画像を緊急に取得したい場合などには、その診断部位の範囲を複数に分割して分散処理を行うことが可能である。すなわち、収集された全データの内、設定された診断部位の範囲にて収集されたデータを2以上の部分データに分割し、その2以上の部分データに対する前処理及び/又は再構成処理を画像処理ユニット17A〜17Nによって分散処理するとともに、当該診断部位の範囲に対する再構成処理の終了後に、他の範囲について収集されたデータに対する(分散)処理を実行するように構成することができる。それにより、設定された診断部位に関する処理時間を短縮でき、その診断部位の画像を迅速に表示させることが可能となる。
また、上記実施形態では、ヘリカルスキャンの場合における分散処理について説明したが、ダイナミックスキャンやラピッドシーケンススキャン等のコンベンショナルスキャン(スキャン中に被検体を体軸方向に移動させないスキャン方法)を行う場合においても本発明に係る構成を適用することが可能である。ここで、ダイナミックスキャンとは、被検体の一定位置を連続的に複数回スキャンしてその位置の断面の時間的変化などを見るためのスキャン方法であり、ラピッドシーケンススキャンとは、被検体の或る位置をスキャンして位置を変更し、スキャンして位置を変更し、・・・を繰り返して複数位置の断面画像を取得するスキャン方法を意味する。
ダイナミックスキャンにおいて一定位置に対するスキャン回数が多数である場合や、ラピッドシーケンススキャンにおいて多くの位置をスキャンする場合などには、前述のヘリカルスキャンの場合と同様に、ボリューム再構成に要する時間が増大するおそれがある。
そこで、このようなコンベンショナルスキャンを行う場合に(スキャン数=ガントリ回転数=Nとする。)、全回転数を1〜i1回転分、i1+1〜i2回転分、・・・、ih〜N回転分のh+1個の部分に分割し、各部分に関する前処理及び/又は再構成処理を画像処理ユニット17A〜17Nに分散処理させるように構成する。それにより、スキャン数の大きなコンベンショナルスキャンを行う場合に、その処理時間を短縮することが可能となる。
以上で詳述した構成は、本発明を実施するための一具体例に過ぎないものである。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜施すことが可能である。