JP2011070938A - 誘導加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温の状態にあるワークの上方に誘導加熱コイルを位置させない技術を提供する。
【解決手段】被加熱材料が収納された円筒形状の炉殻105を側面から囲む形状の2分割された誘導加熱コイル111と112を配置する。炉殻105に対して、誘導加熱コイル111と112を水平方向に移動させることで、誘導加熱を行う位置への移動と、そこからの退避を行う。これにより、誘導加熱コイル111と112が、炉殻105の上方に位置することを避けることができ、炉殻105の上方で誘導加熱コイル111と112が加熱される事態が防止される。
【選択図】図3
【解決手段】被加熱材料が収納された円筒形状の炉殻105を側面から囲む形状の2分割された誘導加熱コイル111と112を配置する。炉殻105に対して、誘導加熱コイル111と112を水平方向に移動させることで、誘導加熱を行う位置への移動と、そこからの退避を行う。これにより、誘導加熱コイル111と112が、炉殻105の上方に位置することを避けることができ、炉殻105の上方で誘導加熱コイル111と112が加熱される事態が防止される。
【選択図】図3
Description
本発明は、複数のワークに対する加熱処理を連続的に行う誘導加熱装置に関する。
加熱処理を行う技術として誘導加熱が知られている(例えば、特許文献1を参照)。誘導加熱は、例えばカーボン製品を焼成するために利用されている。1000℃を超えるような環境での用途に利用されるカーボン製品は、その使用温度よりも高い温度で焼成する必要がある。
例えば、カーボン製品を誘導加熱により加熱する熱処理技術がある。この場合、円筒耐火容器(以下、炉殻)の内部に発熱体容器を収め、炉殻の隙間に断熱材料を充填し、さらに発熱体容器(以下、発熱体)の内部を非酸化雰囲気とした状態で、炉殻の外側にソレノイドコイル(以下、コイル)を配置し、このコイルに交番電流を流すことで、カーボン製品に対する誘導加熱が行われる。
この際、炉殻の外側は昇温するが、コイルを構成する線材を耐熱被覆構造とすることで、コイルの損傷を防いでいる。
上述した技術を単体の設備で使用する場合、加熱終了後はワークを炉殻に収めた状態で時間をかけて冷却する必要がある。そのため、作業効率を高める方法として、一つのコイルに対して複数の炉殻を用意し、連続処理を行う方法が考えられている。
この方法では、加熱が終了した炉殻からコイルを退避させる際にコイルが炉殻の上方に位置することになる。加熱が終了した直後では炉殻の上方は外側よりも高温であり、その環境下にコイルを曝すのはコイルを構成する線材を傷める原因となり好ましくない。この不都合を回避する方法として、温度の低下を待って炉殻を移動させる方法が考えられるが、それでは待ち時間が長くなり、作業効率が低下する。
このような背景において、本発明は、高温の状態にある炉殻の上方に誘導加熱コイルを位置させない技術を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、筒形状の炉殻の外周に沿った湾曲形状を有した面状の複数の誘導加熱コイル(以下、オープンコイル)を炉殻の側面から取り囲む様に移動、または退避させるために、水平方向に可動する移動手段を備える誘導加熱装置である。
請求項2に記載の発明は、前記オープンコイルと炉殻を複数個配置することが可能なステージを有し、予め決められた複数の場所(以下、加熱位置)において、ステージ上に配置された炉殻を側面から取り囲む様にコイルを移動、または退避させるために、水平方向に移動させる移動手段と、移動手段を制御する制御装置を備える。ステージ上に配置された炉殻内部の被加熱物に対して熱処理を施す場合の制御手段は、第1の加熱位置にオープンコイルを移動させた後コイルに通電を行い、被加熱物を誘導加熱により加熱し熱処理を行い、加熱終了後に第1の加熱位置からオープンコイルを退避させ、第2の加熱位置に移動させる制御を行う。
請求項1および2に記載の発明によれば、オープンコイルは、炉殻加熱位置への移動、あるいはその位置からの退避において、炉殻を側面から取り囲む位置に対して水平方向に移動する。このため、オープンコイルは加熱後の炉殻の上方を通過しない。すなわち、オープンコイルが第1の加熱位置から第2の加熱位置に配置される遷移において、コイルは水平方向に動くので、オープンコイルが加熱後の炉殻の上方を移動することはない。
請求項3に記載の発明は、オープンコイルと炉殻を複数配置することが可能であると共に配置された前記炉殻を移動させることが可能な移動手段と、前記炉殻を側面から取り囲む様にコイルを移動、または退避させるために、水平方向に移動させる移動手段と、この移動手段を制御する制御手段を備える。ステージ上に配置された炉殻内部の被加熱物に対して熱処理を施す場合の制御手段は、予め決められた一箇所の加熱場所に第1の炉殻を移動させ、さらにオープンコイルを加熱位置に移動させた後コイルに通電を行い、被加熱物を誘導加熱により加熱し熱処理を行い、加熱終了後に加熱位置からオープンコイルを退避させ、続いて第2の炉殻を移動させる制御を行う。
請求項3に記載の発明によれば、オープンコイルは、炉殻の加熱位置への移動、あるいはその位置からの退避において、炉殻を側面から取り囲む位置に対して水平方向に移動する。このため、オープンコイルは加熱後の炉殻の上方を通過しない。また、オープンコイルが第1の炉殻の側面に配置された状態から、第2の炉殻の側面に配置される状態への遷移において、コイルが加熱位置から水平方向に退避した後に第2の炉殻が加熱位置へ移動した段階で、第2の炉殻の側面にコイルが水平移動し、その後に第2の炉殻内部の被加熱物に対する誘導加熱が開始される。この際もコイルが加熱後の炉殻の上方を移動することはない。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記炉殻は、円筒形状を有し、前記オープンコイルは炉殻を取り囲む2分割された曲面形状を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、炉殻に水平方向から近づけることで、炉殻を側面から包み込むようにして2分割されたオープンコイルが配置される。そして、水平方向に移動させることで、炉殻の上方を通過させることなく、コイルを遠ざけることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記加熱は、前記2分割されたオープンコイルが前記炉殻を取り囲んだ第1の状態における第1加熱ステップと、第1の状態から炉殻を90°回転させた第2の状態における第2加熱ステップとを含むことを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、加熱を2段階に分けることで、2分割されたコイルにおける加熱効率の高い部分と低い部分とが入れ替わる。このため、2分割されたコイルによる加熱のムラが是正され、加熱の均一性が高められる。
本発明によれば、高温の状態になる炉殻の上方に誘導加熱コイルを位置させない技術が提供される。
(1)第1の実施形態
(誘導加熱装置)
図1および図2は、実施形態の誘導加熱装置を上方から見た状態を示す概念図である。図1および図2には、誘導加熱装置100が示されている。誘導加熱装置100には、ワークが配置されるステージ101〜104を備えている。ステージ101〜104は、誘導加熱装置100上において、図示しないモータによって90°の回転が可能な構造とされている。ステージ101〜104のそれぞれには、ワークが収納された炉殻105〜108が配置される。なお、炉殻105〜108の詳細については後述する。
(誘導加熱装置)
図1および図2は、実施形態の誘導加熱装置を上方から見た状態を示す概念図である。図1および図2には、誘導加熱装置100が示されている。誘導加熱装置100には、ワークが配置されるステージ101〜104を備えている。ステージ101〜104は、誘導加熱装置100上において、図示しないモータによって90°の回転が可能な構造とされている。ステージ101〜104のそれぞれには、ワークが収納された炉殻105〜108が配置される。なお、炉殻105〜108の詳細については後述する。
誘導加熱装置100は、誘導加熱ユニット110を備えている。図3は、誘導加熱誘導加熱ユニット110を斜めから見た状態を示す斜視図である。図3(A)には、2分割された誘導加熱コイルを炉殻から退避させた状態が示され、図3(B)には、2分割された誘導加熱コイルを炉殻の側面に配置し、誘導加熱を行うことが可能な状態が示されている。
(誘導加熱ユニット)
図3には、2分割構造を有する誘導加熱ユニット110と、円筒形状の炉殻105(図1参照)が示されている。なお、炉殻105〜108のそれぞれに対する誘導加熱ユニット110の配置の状態は、同じであるので、ここでは代表して炉殻105の場合が示されている。
図3には、2分割構造を有する誘導加熱ユニット110と、円筒形状の炉殻105(図1参照)が示されている。なお、炉殻105〜108のそれぞれに対する誘導加熱ユニット110の配置の状態は、同じであるので、ここでは代表して炉殻105の場合が示されている。
誘導加熱ユニット110は、誘導加熱コイル111と誘導加熱コイル112の2分割されたコイル構造を有している。誘導加熱コイル111と誘導加熱コイル112とは同じ構造を有し、円筒形状の炉殻105の側面の曲面に沿った湾曲形状を有している。以下、誘導加熱コイル111と112の詳細な構造を説明する。
図4には、誘導加熱ユニット110の巻線の構造が示されている。誘導加熱コイル111と112は、平面において矩形の渦巻状に巻かれたコイルを、円筒の外周の曲面に合う形状に湾曲させた構造とされている。また誘導加熱コイル111と112の中央は、開口部とされている。
図3に示すように、誘導加熱コイル111は、長手形状の吊り下げ部材113からチェーン114によって吊り下げられて支持されている。吊り下げ部材113は、支柱115に、支柱115を軸として水平方向に回転移動することが可能な状態で取り付けられている。この吊り下げ部材113の回転は、図示省略したモータよって行われる構造とされている。
支柱115は、移動台座116に固定されている。移動台座116は、図1に示す誘導加熱装置100上での移動および回転が行える構造とされている。この移動台座116の移動および回転は、図示省略したモータによって行われる。
誘導加熱コイル111と同様に、誘導加熱コイル112は、長手形状の吊り下げ部材117からチェーン118によって吊り下げられて支持されている。吊り下げ部材117は、支柱119に、支柱119を軸として水平方向への回転移動が可能な状態で取り付けられている。この吊り下げ部材117の回転は、図示省略したモータよって行われる構造とされている。支柱119は、支柱115と同様に移動台座116に固定されている。
吊り下げ部材113と117が回転することで、図3(A)の開いた状態から図3(B)の閉じた状態への変化、あるいは逆の変化が行われる。図3(A)には、吊り下げ部材117と119を開く方向に回転させ、誘導加熱コイル111と112を炉殻105から離れる方向(退避する方向)に移動させた状態が示されている。図3(B)には、吊り下げ部材117と119を閉じる方向に回転させ、誘導加熱コイル111と112を炉殻105に近接させ、誘導加熱が行える状態が示されている。
炉殻105は、図1のステージ101上に固定された保持部材120の内側に配置される。保持部材120は、加熱処理時における炉殻105の温度に耐える耐熱材料により構成され、炉殻105を安定して支える機能を有する。前述したように、ステージ101は90°の回転が可能であり、ステージ101が回転すると、保持部材120と、そこに保持された炉殻105も一緒に回転する。これらの点は、他のステージ102〜104においても同じである。
(炉殻)
炉殻105について説明する。図5には、炉殻を縦に半割に切断した切断面の状態が概念的に示されている。炉殻105は、耐熱材料によって構成され、炉殻内部には誘導加熱によって発熱する円筒容器形状の発熱体121が収納される。発熱体121の周囲は、断熱性充填材料123とされている。断熱性充填材料123は、耐熱材料の粉体を充填した状態とされ、発熱体121の高温の影響による炉殻105や蓋部材124の温度上昇を抑える緩衝機能を有する。発熱体121の上方は解放可能とされており、ここから加熱の対象となる被加熱材料や、被加熱材料を収納する坩堝122の出し入れが行われる。
炉殻105について説明する。図5には、炉殻を縦に半割に切断した切断面の状態が概念的に示されている。炉殻105は、耐熱材料によって構成され、炉殻内部には誘導加熱によって発熱する円筒容器形状の発熱体121が収納される。発熱体121の周囲は、断熱性充填材料123とされている。断熱性充填材料123は、耐熱材料の粉体を充填した状態とされ、発熱体121の高温の影響による炉殻105や蓋部材124の温度上昇を抑える緩衝機能を有する。発熱体121の上方は解放可能とされており、ここから加熱の対象となる被加熱材料や、被加熱材料を収納する坩堝122の出し入れが行われる。
坩堝122は、耐熱材料により構成され、用途に合わせて様々な形状と数量となり、そこに焼成を行うための被加熱材料が充填される。被加熱材料は、特に限定されないが、例えばカーボン製品やその他セラミックス材料である。
加熱処理を行う際には、加熱時の酸化を防ぐために発熱体121の内部には不活性ガスが封入され、またその状態で上部の解放部が、発熱体121と同じ材質により構成された蓋部材124により蓋をされる。
(制御系)
図6は、図1に示す誘導加熱装置100の制御系を示すブロック図である。誘導加熱装置100の制御は、制御ユニット131によって行われる。制御ユニット131は、コンピュータとしての機能を備え、CPU、メモリ、各種のインターフェース回路を備え、メモリに記憶した動作プログラムに基づいて後述する動作を実行する。
図6は、図1に示す誘導加熱装置100の制御系を示すブロック図である。誘導加熱装置100の制御は、制御ユニット131によって行われる。制御ユニット131は、コンピュータとしての機能を備え、CPU、メモリ、各種のインターフェース回路を備え、メモリに記憶した動作プログラムに基づいて後述する動作を実行する。
制御ユニット131は、駆動電流供給回路132、コイル移動用駆動回路133およびステージ移動用駆動回路134に制御信号を送り、その動作を制御する。駆動電流供給回路132は、誘導加熱ユニット110を構成する誘導加熱コイル111および112に駆動電流を供給する。この駆動電流は、例えば0.5〜5kHzの周波数で50〜400kWの電力とされる。この駆動電流の周波数や電力は、加熱の対象や大きさによって異なる。
コイル移動用駆動回路133は、図3に関連して説明した吊り下げ部材113と117を回転移動させるモータ、移動台座116を移動させるモータ、移動台座116を回転させるモータを駆動する駆動回路である。ステージ移動用駆動回路134は、図1に示すステージ101〜104を回転させるモータを駆動する駆動回路である。
(動作の一例)
図1の誘導加熱装置100の動作の一例を説明する。この動作は、図6の制御ユニット131によって統括されて実行される。まず、誘導加熱装置100が図1(A)に示す状態にあるとする。そして、ステージ101〜104上に熱処理が行われていない被加熱材料が収納された炉殻105〜108が配置されているとする。
図1の誘導加熱装置100の動作の一例を説明する。この動作は、図6の制御ユニット131によって統括されて実行される。まず、誘導加熱装置100が図1(A)に示す状態にあるとする。そして、ステージ101〜104上に熱処理が行われていない被加熱材料が収納された炉殻105〜108が配置されているとする。
ここでは、炉殻105に収納された被加熱材料に対する誘導加熱処理→炉殻106に収納された被加熱材料に対する誘導加熱処理→炉殻107に収納された被加熱材料に対する誘導加熱処理→炉殻108に収納された被加熱材料に対する誘導加熱処理を連続して行う場合の動作の例を説明する。
図1(A)には、誘導加熱ユニット110が、炉殻105〜108から退避し(離れ)、誘導加熱コイル111と112とが開いた状態(図3(A)の状態)が示されている。まず、この誘導加熱コイル111と112とが開いたままの状態で、誘導加熱ユニット110をステージ101の方向に移動させる。
誘導加熱ユニット110が、炉殻105を図3に示すように囲むことができる位置にまで移動した後、吊り下げ部材113と117を回転させて、誘導加熱コイル111と112を閉じ、図3(A)から図3(B)に示す状態に移行させる。こうして図1(B)に示す状態を得る。この際、誘導加熱コイル111と112は、炉殻105に接触させず、少し間隔を有する状態となるようにする。
図1(B)に示す状態を得たら、誘導加熱コイル111と112に駆動電流を供給し、炉殻105内部に対する誘導加熱を行う。この誘導加熱は、2段階に分けて行う。まず、第1の段階での誘導加熱を行い、その後にステージ105を90°回転させ、炉殻105に対する誘導加熱コイル111と112の位置関係を90°ずらした状態で第2段階の誘導加熱を行う。
炉殻105に対する誘導加熱が終了したら、吊り下げ部材113と117を回転させて、誘導加熱コイル111と112を図3(B)に示す閉じた状態から、図3(A)に示す開いた状態へと移行させる。その後、誘導加熱ユニット110を水平に移動させて、図1(A)に示す位置に戻す。
次に、移動台座116(図3参照)を図1における時計回り方向に90°回転させ、図2(A)に示す状態とする。図2(A)に示す状態を得たら、誘導加熱ユニット110を図の左方向に移動させ、誘導加熱ユニット110が炉殻106を囲むことができる位置にまで移動させた後、誘導加熱コイル111と112を閉じる。こうして図2(B)に示す状態を得る。そして、炉殻105内部に対する誘導加熱の場合と同様に、炉殻106内部対する誘導加熱を行う。この際、既に加熱が終わっている炉殻105内の被加熱材料(および炉殻105全体)の冷却が行われる。
以上動作を炉殻107および炉殻108に対して次々に行うことで、4つの炉殻105〜108に収納された被加熱材料に対する熱処理が連続的に行われる。
(優位性)
炉殻105〜108内の被加熱材料は、最高で3000℃を越える温度まで加熱される。熱的な緩衝材となる断熱性充填材料123の機能によって、発熱体121の側面の温度は、300℃程度に抑えられるが、内部の対流の影響で蓋部材124は相対的に高温になる。このため、加熱処理が終了した直後の炉殻105〜108の上方は、輻射熱が放射された高温の状態であり、そこを誘導加熱コイル111および112が通過するのは、コイルを構成する線材を傷める要因となる。
炉殻105〜108内の被加熱材料は、最高で3000℃を越える温度まで加熱される。熱的な緩衝材となる断熱性充填材料123の機能によって、発熱体121の側面の温度は、300℃程度に抑えられるが、内部の対流の影響で蓋部材124は相対的に高温になる。このため、加熱処理が終了した直後の炉殻105〜108の上方は、輻射熱が放射された高温の状態であり、そこを誘導加熱コイル111および112が通過するのは、コイルを構成する線材を傷める要因となる。
本実施形態では、図1(B)に示す状態から図1(A)に示す状態への遷移、および図1(A)→図2(A)→図2(B)の状態への遷移において、誘導加熱コイル111および112は、炉殻105〜108の側面に対して水平方向に移動して接近し、水平方向に移動して退避する。この際、誘導加熱コイル111と112の開閉動作時および誘導加熱ユニット110の移動時に炉殻105〜108の上方を誘導加熱コイル111および112が通過しない。このため、上述したコイル111および112が高温に曝される不都合が生じない。
また、通常のソレノイドコイルを使用し、このコイルを吊り上げにより炉殻から退避させる場合、ソレノイドコイルを上方に移動させる分のスペースを炉殻の上方に確保する必要があり、そのスペースを確保するための建屋の高さ(作業スペースの高さ)が必要となる。しかしながら、本実施形態では、コイルが上方から見て左右に水平移動することで、炉殻からの退避が行われるので、設備を収める建屋の高さをコイルが上下する場合に比較して抑えることができる。この点は、既存の建屋を利用する場合に有利となる。
図4に示すように誘導加熱を行うためのコイルは、2分割されており、各コイルは、面状に展開されたものが湾曲させられた形状を有している。この形状のコイルでは、従来の筒型の形状のソレノイドコイルに比べて、ワークに対する加熱の対称性が悪い。特に中央の開口部の付近の磁束密度に比較して、コイルの外周付近の磁束密度が想定的に低くなる。図1(B)の状態でいうと、炉殻105の中心を通る左右方向の線上の領域の磁束密度は相対的に大きく、上下方向の線上の領域の磁束密度は相対的に小さくなる。
本実施形態では、誘導加熱を2段階に分け、第1段階の加熱と、そこから誘導加熱ユニット110に対して炉殻を相対的に90°回転させた状態での第2段階での加熱とを行っている。この方法によれば、上述した磁束密度が相対的に高い部分と相対的に低い部分とが、第1の段階と第2の段階とにおいて入れ替わる。このため、誘導加熱の均一性を高めることができる。
(2)第2の実施形態
第1の実施形態では、誘導加熱コイルが複数の炉殻に対して移動し、順次誘導加熱を行う構成であったが、炉殻の側を動かすことで、同様な処理を行う構成も可能である。以下、この構成の一例を説明する。
第1の実施形態では、誘導加熱コイルが複数の炉殻に対して移動し、順次誘導加熱を行う構成であったが、炉殻の側を動かすことで、同様な処理を行う構成も可能である。以下、この構成の一例を説明する。
(誘導加熱装置の構成)
図7には、上記の動作を行う誘導加熱装置200が示されている。誘導加熱装置200は、移動ステージ201〜204を備えている。移動ステージ201〜204は、軌道205に沿って周回移動する。この移動は、図示省略したモータによって行われる。移動ステージ201〜204は、個別に回転することができる。この回転も図示省略したモータによって行われる。
図7には、上記の動作を行う誘導加熱装置200が示されている。誘導加熱装置200は、移動ステージ201〜204を備えている。移動ステージ201〜204は、軌道205に沿って周回移動する。この移動は、図示省略したモータによって行われる。移動ステージ201〜204は、個別に回転することができる。この回転も図示省略したモータによって行われる。
各ステージ上には、炉殻105〜108が配置されている。炉殻105〜108は、実施形態1において説明したものと同じである。図7の移動ステージ201が位置している部分には、誘導加熱ユニット210が配置されている。誘導加熱ユニット210は、図1の誘導加熱ユニット110と構成が異なる。以下、誘導加熱ユニット210について説明する。
図8には、誘導加熱ユニット210が示されている。誘導加熱ユニット210は、誘導加熱コイル211と212を備えている。誘導加熱コイル211は、誘導加熱コイル111と同じであり、誘導加熱コイル212は、誘導加熱コイル112と同じものである。誘導加熱ユニット210において、誘導加熱コイル211は、吊り下げ部材213にチェーン214を介して吊り下げられている。吊り下げ部材213もチェーン215によって、図示省略した移動クレーンに吊り下げられている。この移動クレーンの機能により、誘導加熱コイル211は、移動ステージ201(図7参照)上に配置された炉殻105に近づき、また遠ざかる移動を行う。
誘導加熱コイル212は、吊り下げ部材216にチェーン217を介して吊り下げられている。吊り下げ部材216もチェーン218によって、図示省略した移動クレーンに吊り下げられている。この移動クレーンの機能により、誘導加熱コイル212は、移動ステージ201(図7参照)上に配置された炉殻105に近づき、また遠ざかる移動を行う。
上記の機構により、誘導加熱コイル211と212とは、両サイドから炉殻(例えば図8の炉殻105)に近づき近接した位置に移動する。また、逆に炉殻から180°異なる方向に離れるように移動する。
図8において、符号220は、炉殻105を移動ステージ201上に保持するため保持部材である。保持部材220は、加熱処理時における炉殻105の温度に耐える材料により構成され、移動ステージ201に固定されている。この構成は、他の移動ステージにおいても同じである。
(制御系)
図7に示す誘導加熱装置200の動作を制御する制御系について説明する。誘導加熱装置200の制御系のブロック図は、図6に示す構成と同じである。ただし、以下の点で実施形態1の場合と異なっている。以下、本実施形態の制御系における実施形態1の場合と異なる点について説明する。
図7に示す誘導加熱装置200の動作を制御する制御系について説明する。誘導加熱装置200の制御系のブロック図は、図6に示す構成と同じである。ただし、以下の点で実施形態1の場合と異なっている。以下、本実施形態の制御系における実施形態1の場合と異なる点について説明する。
図7に示す誘導加熱装置200における制御系において、図6におけるコイル移動用駆動回路133は、図8に関連して説明した誘導加熱コイル211と222とを移動させるクレーンを動かすモータを駆動する。ステージ移動用駆動回路134は、ステージ201〜204を周回移動させるモータおよび各ステージをその場で回転させるモータを駆動する。
駆動電流供給回路132は、第1の実施形態の場合と同様に、2つの誘導加熱コイルに駆動電流を供給する。制御ユニット131は、制御系の各回路に制御信号を送り、各回路を通じて、誘導加熱装置200の動作を制御する。
(動作の一例)
図7の誘導加熱装置200の動作の一例を説明する。この動作は、図6の制御ユニット131によって統括されて実行される。以下、炉殻105〜108のそれぞれに収められた被加熱材料に対して連続的に加熱処理を行う場合の動作の一例を説明する。
図7の誘導加熱装置200の動作の一例を説明する。この動作は、図6の制御ユニット131によって統括されて実行される。以下、炉殻105〜108のそれぞれに収められた被加熱材料に対して連続的に加熱処理を行う場合の動作の一例を説明する。
まず、全ての移動ステージに炉殻を配置する。そして、誘導加熱ユニット210を開き、図7(A)に示す状態とする。次に誘導加熱ユニット210を閉じ、図7(B)に示す状態とし、誘導加熱ユニット210に駆動電流を供給し、炉殻105に収納された被加熱材料に対する加熱処理を行う。
この加熱処理は、2段階に分けて行われる。すなわち、第1の段階で加熱を行った後、移動ステージを90°回転させ、第2の段階の加熱を行う。このような2段階の加熱を行う理由は、第1の実施形態の場合と同じである。
炉殻105内に収納された被加熱材料に対する加熱処理が終了したら、図8に示されるようにコイル211と212を図7の左右方向に互いに離れるように移動させ、再び図7(A)に示す状態とする。
次いで、移動ステージ201〜204を図の反時計回り方向に90°の角度で周回移動させ、移動ステージ202を図7に示されている移動ステージ201の位置に移動させる。そして、誘導加熱ユニット210を閉じ、誘導加熱ユニット210を構成する誘導加熱コイル211と212とを炉殻106に近接させる。この際、誘導加熱コイルが炉殻に接触しないようにする。この状態は、図7(B)において、移動ステージ201の代わりに移動ステージ202が位置し、炉殻105の代わりに炉殻106が位置した状態である。
そして、炉殻106に収められた被加熱材料に対して、炉殻105の場合と同様な加熱処理を行う。後は同様な動作を繰り返し、炉殻107内の被加熱材料に対する加熱処理、更に炉殻108内の被加熱材料に対する加熱処理を行う。
(優位性)
本実施形態の優位性は、第1の実施形態の優位性と同じである。
本実施形態の優位性は、第1の実施形態の優位性と同じである。
(その他)
誘導加熱コイルの分割構造は2分割構造に限定されない。また図4には、上下方向では分割されていないコイルの構造が示されているが、上下方向においてコイルを複数に分割した構造も可能である。実施形態は、炉殻を4つ配置することが可能な構造であるが、2つ以上であれば、その数に制限はなく、その数は、設置スペースや生産能力等を勘案して決めればよい。ステージ等を動かす動動力源は、モータに限定されず、各種アクチュエータや油圧装置等であってもよい。
誘導加熱コイルの分割構造は2分割構造に限定されない。また図4には、上下方向では分割されていないコイルの構造が示されているが、上下方向においてコイルを複数に分割した構造も可能である。実施形態は、炉殻を4つ配置することが可能な構造であるが、2つ以上であれば、その数に制限はなく、その数は、設置スペースや生産能力等を勘案して決めればよい。ステージ等を動かす動動力源は、モータに限定されず、各種アクチュエータや油圧装置等であってもよい。
本発明は、誘導加熱装置に利用することができる。
100…誘導加熱装置、101〜104…ステージ、105〜108…炉殻、110…誘導加熱ユニット、111…誘導加熱コイル、112…誘導加熱コイル、113…吊り下げ部材、114…チェーン、115…支柱、116…移動台座、117…吊り下げ部材、118…チェーン、119…支柱、120…保持部材、121…発熱体、122…坩堝、123…断熱性充填材料、124…蓋部材、200…誘導加熱装置、201〜204…移動ステージ、210…誘導加熱ユニット、211…誘導加熱コイル、212…誘導加熱コイル、213…吊り下げ部材、214…チェーン、215…チェーン、216…吊り下げ部材、217…チェーン、218…チェーン、220…保持部材。
Claims (5)
- 筒形状の炉殻の外周に沿った湾曲形状を有した面状の複数の誘導加熱コイルと、
前記複数の誘導加熱コイルを前記炉殻の側面から取り囲む位置に移動、またはそこから退避させるために、前記複数の誘導加熱コイルを水平方向に移動させる移動手段と
を備えることを特徴とする誘導加熱装置。 - 筒形状の炉殻の外周に沿った湾曲形状を有した面状の複数の誘導加熱コイルと、
前記複数の誘導加熱コイルと複数個の前記炉殻を配置することが可能なステージと、
予め決められた複数の場所において、前記ステージ上に配置された前記炉殻を側面から取り囲む位置に前記誘導加熱コイルを移動、またはそこから退避させるために、前記誘導加熱コイルを水平方向に移動させる移動手段と、
前記移動手段を制御する制御手段を備え、
前記ステージ上に配置された前記炉殻内部の被加熱物に対して熱処理を施す場合において、前記制御手段は、第1の加熱位置に前記誘導加熱コイルを移動させた後この誘導加熱コイルに通電を行い、被加熱物を誘導加熱により加熱し熱処理を行い、加熱終了後に第1の加熱位置から前記通電を行った誘導加熱コイルを退避させ、第2の加熱位置に移動させる制御を行うことを特徴とする誘導加熱装置。 - 筒形状の炉殻の外周に沿った湾曲形状を有した複数の誘導加熱コイルと、
前記炉殻を複数配置することが可能であると共に配置された前記炉殻を移動させる炉殻移動手段と、
前記炉殻を側面から取り囲む位置に前記誘導加熱コイルを移動、またはそこから退避させるために、前記誘導加熱コイルを水平方向に移動させるコイル移動手段と、
前記炉殻移動手段と前記コイル移動手段を制御する制御手段と
を備え、
ステージ上に配置された炉殻内部の被加熱物に対して熱処理を施す際に、前記制御手段は、予め決められた一箇所の加熱場所に第1の炉殻を移動させ、さらに前記誘導加熱コイルを加熱位置に移動させた後に前記誘導加熱コイルに通電を行い、被加熱物を誘導加熱により加熱し熱処理を行い、加熱終了後に加熱位置から前記誘導加熱コイルを退避させ、続いて第2の炉殻を移動させる制御を行うことを特徴とする誘導加熱装置。 - 前記炉殻は、円筒形状を有し、前記複数の誘導加熱コイルは、前記炉殻を取り囲む2分割された曲面形状を有するコイルにより構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
- 前記加熱は、前記2分割された曲面形状を有するコイルが前記炉殻を取り囲んだ第1の状態における第1加熱ステップと、第1の状態から炉殻を90°回転させた第2の状態における第2加熱ステップとを含むことを特徴とする請求項4に記載の誘導加熱装置。
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- 2009-09-25 JP JP2009221128A patent/JP2011070938A/ja active Pending
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