JP2011021270A - セラミック薄膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、スパッタリング法で基板上にセラミック薄膜を形成する方法に関し、簡単で汎用性があるセラミック薄膜の結晶性を向上させる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】真空成膜法による基材表面上への結晶性セラミック薄膜の形成方法であり、該方法は、種結晶層を形成する工程1、該種結晶層上に結晶性セラミック層を形成する工程2を有し、前記種結晶層は酸化亜鉛又は酸化亜鉛化合物よりなる層であり、前記結晶性セラミック層は、MxOy(Mは金属元素、Oは非金属元素、x及びyは1以上の整数)で表される立方晶系の金属化合物の層であり、なおかつ該金属化合物は、該金属化合物の格子定数をa(nm)、前記種結晶層の格子定数の内a軸の格子定数をa(nm)とした時、|a−(√2/2)a|/a×100で表される値が15%以下であることを特徴とする結晶性セラミック薄膜の形成方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、真空成膜法で形成されるセラミック薄膜の結晶性を向上させる方法に関する。
基材上に形成される酸化物化合物、窒化物化合物等からなるセラミック薄膜では、これら化合物が本来有する特性を発揮せしめるために、結晶性の良い薄膜を得ることが重要である。結晶性の良いセラミック薄膜を得ることを目的として、さまざまな方法が検討されており、その中でも、真空成膜法によるセラミック薄膜を形成する方法は、生産性の点において、優れた可能性を秘めた方法として検討がなされている。
一般的に、スパッタリング法を用いて結晶性の良い薄膜を得るには、用いる基材の温度を加熱する工程(例えば300℃以上)が必要であるとされている。非特許文献1では、錫ドープ酸化インジウム(以下、ITOと呼ぶことがある)薄膜を形成する際の基板温度とX線回折図との関係が示されており、基板温度を室温から400℃へと上昇させるに従ってITOによるX線の回折線の強度が増加し、基板温度を上昇させるに従って、薄膜の結晶性が向上することが明らかとなっている。
スパッタリング法を用いて薄膜を形成する方法として、特許文献1では、基材上に(111)面に優先配向した亜鉛化合物から構成される種結晶層を形成し、その後酸化亜鉛系の導電体よりなる層を形成する方法が開示されており、該方法は、成膜中に基材を150〜180℃に加熱を行うものである。また、特許文献2では、基材上に結晶性ジルコニウム化合物よりなる層を形成し、その後、酸化チタンよりなる層を形成する方法が開示されている。
特開2002−114598号公報 再表2004−108283号公報
日本学術振興会 透明酸化物光・電子材料第166委員会編、透明導電膜の技術 改訂2版(2006) 頁137
(111)面に優先配向した亜鉛化合物から構成される種結晶層を形成し、その後酸化亜鉛系の導電体よりなる層を形成する方法では、成膜中に基材を加熱する工程を要し、また、種結晶層及び導電体層の形成には厳格な制御を要するとされ、さらに、種結晶層上に形成するセラミック層の種類は酸化亜鉛系の導電体に限られており、汎用性が高いとは言い難い。
また、結晶性ジルコニウム化合物よりなる層を形成し、その後、酸化チタンよりなる層を形成する方法では、該ジルコニウム化合物層上に形成するセラミック層として酸化チタンを用いた記載しかない。
かくして、本発明は、スパッタリング法で基板上にセラミック薄膜を形成する方法に関し、簡単で汎用性が高いセラミック薄膜の結晶性を向上させる方法を提供することを課題とする。
本出願人は鋭意検討した結果、基材上に、酸化亜鉛又は酸化亜鉛化合物よりなる種結晶層を形成し、該種結晶層上に形成するセラミック層を、酸化亜鉛の格子定数との差が小さい格子定数を有する金属化合物からなるものとすることで、セラミック薄膜の結晶性が向上することが示された。さらにそのうえ、該種結晶層と該セラミック層との界面が平滑であるほど、セラミック層の結晶性がより向上することが明らかとなった。
すなわち、本発明の結晶性セラミック薄膜の形成方法は、真空成膜法による基材表面上への結晶性セラミック薄膜の形成方法であり、該方法は、種結晶層を形成する工程1、該種結晶層上に結晶性セラミック層を形成する工程2を有し、前記種結晶層は酸化亜鉛又は酸化亜鉛化合物よりなる層であり、前記結晶性セラミック層は、MxOy(Mは金属元素、Oは非金属元素、x及びyは1以上の整数)で表される立方晶系の金属化合物の層であり、なおかつ該金属化合物は、該金属化合物の格子定数をa(nm)、前記種結晶層の格子定数の内a軸の格子定数をa(nm)とした時、|a−(√2/2)a|/a×100で表される値が15%以下であることを特徴とするものである。
上記|a−(√2/2)a|/a×100の式で表される差異率が小さいほど、種結晶層とセラミック層との格子定数が似た値を示すことを意味し、該差異率が15%を越える場合、種結晶層とセラミック層との格子定数の差が大きく、結晶性のセラミック層が得られないことがある。また、より好ましくは10%以下としてもよく、下限は特に限定しなくともよい。
また、本発明の結晶性セラミック薄膜の形成方法において、前記種結晶層と前記結晶性セラミック層との界面粗さが、2.0nm以下であることを特徴とする。
種結晶層とセラミック層との界面粗さは、X線回折測定装置(Rigaku社製RINT−UltimaIII)などを用いて、X線反射率を測定し、該装置に付随した汎用プログラムによって求めることが可能であり、値が小さいほど平滑であることを示すものである。
界面粗さの下限は、基材の種類に依存する傾向にあるため、特に限定しないが、小さいほどセラミック層の結晶性が向上する。比較的平滑とされるガラス基材の場合、表面粗さが0.2nmであることから、下限を0.2nm以上としてもよい。一方、界面粗さが2.0nmを超えると、セラミック層の結晶性を向上できないことがある。
また、本発明の結晶性セラミック薄膜の形成方法において、前記結晶性セラミック層は、金属イオンと陰イオンとによって形成される金属化合物からなるものであり、該金属化合物の金属イオン半径rと陰イオン半径rとの比r/rが0.35〜0.75であることを特徴とする。イオン半径比が0.35未満、又は0.75を超えると、上記の差異率が大きくなり易く、セラミック薄膜の結晶性が向上し難いことがある。
また、本発明の結晶性セラミック薄膜の形成方法において、前記種結晶層は、該層のCuKα線を用いたX線回折測定により(002)結晶面に優先配向した酸化亜鉛の回折線が観測されることを特徴とする。
本発明の結晶性セラミック薄膜の形成方法は、基材上に形成されるセラミック薄膜の機能性の向上に奏功する。
また、本発明の形成方法は、基材を加熱する工程を必要としないため生産性に優れており、さらに、セラミック層を形成する工程は厳密な形成条件を設定せずとも容易に良好な結晶性の薄膜を得ることが可能である。なおかつ、本発明の形成方法は、種結晶層と結晶構造が異なる金属化合物からなるセラミック薄膜の結晶性を向上せしめるものであり、また、基材の種類が限定されないため、汎用性が高い方法であると言える。
マグネトロンスパッタ装置の概略図である。 種結晶層とセラミック層とで構成される薄膜積層体の断面模式図である。 基材上に直接形成したセラミック薄膜の断面模式図である。 実施例1、2及び比較例1のX線回折パターンを表す平面図である。 実施例3、4及び比較例2のX線回折パターンを表す平面図である。 実施例5、比較例3のX線回折パターンを表す平面図である。 実施例6、比較例4のX線回折パターンを表す平面図である。 比較例5、6のX線回折パターンを表す平面図である。 実施例7〜10のX線回折パターンを表す平面図である。
本発明は、真空成膜法による基材表面上への結晶性セラミック薄膜の形成方法であり、該方法は、種結晶層を形成する工程1、該種結晶層上に結晶性セラミック層を形成する工程2を有するものである。
上記種結晶層および結晶性セラミック層は、蒸着プロセスを用いて形成されることが好ましい。蒸着プロセスには、スパッタリング、電子ビーム蒸着、イオンビームデポジション、イオンプレーティングなどを用いても良いが、均一性を確保しやすいスパッタリングは好適に用いられる。
成膜装置としては、図1に示すようなマグネトロンスパッタ装置が好適に用いられる。ガラス1を基板ホルダー2に保持させた後、真空チャンバー3内を真空ポンプ4によって排気し、成膜中、真空ポンプ4は連続して稼働させ、真空チャンバー内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より導入し、ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して調整する。なお、基板ホルダー2はターゲット8に対して正面に設置されないものとする。成膜中の真空チャンバ−内の圧力は、真空チャンバーと真空ポンプの間に設置されたバルブ6の開度を制御することで調節する。裏側にマグネット7が配置されたターゲット8を用い、ターゲットへ電源ケーブル9を通じで電源10より投入する。ここで、真空ポンプの種類、ターゲットの個数や種類、直流電源と交流電源の選択は適宜なされれば良く、特に限定しない。
種結晶層を形成する工程1において、成膜時の真空チャンバーの圧力は2.0Pa以下とすることが好ましい。2.0Paを超えると、種結晶層とセラミック層との界面粗さが大きくなり、後に形成するセラミック薄膜の結晶性を向上できないことがある。また、下限については、成膜時の放電を安定に保持するために0.1Pa以上とすることが好ましいが、この下限は、真空チャンバーの容積、ターゲットの面積などによって容易に変わるため、特に限定しない。
該種結晶層上に結晶性セラミック薄膜を形成する工程2においては、薄膜原料として金属ターゲットを用いて、酸素や窒素などの反応性ガスを導入しながら成膜する反応性スパッタリングが製造コストに優れるため好適であるが、酸化物ターゲット、若しくは窒化物ターゲットを用いても良い。プラズマ発生源には直流電源、交流電源、または交流と直流を重畳した電源、いずれの電源も好適に用いられるが、交流と直流を重畳した電源は連続生産性に優れており、好適に用いられる。
前記種結晶層には、酸化亜鉛の他に、酸化亜鉛にSn、Al、Ti、Si、Cr、Mg、Gaなどから選ばれる少なくとも一つの金属を添加した酸化亜鉛化合物を用いても良い。
また、前記結晶性セラミック層を構成する金属化合物としては、例えば、MgO、CaO、NiO、CoO、CdO等からなる酸化物、TiN、CrN等からなる窒化物、SiC等からなる炭化物、ZnSe等からなるセレン化物等が挙げられる。
基材には、ガラスが好適に用いられる。ガラスの例としては、石英ガラスや、建築用や車両用、ディスプレイ用に使用されているソーダ石灰ケイ酸塩ガラスからなるフロート板ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸塩ガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス、低膨張結晶化ガラス、ゼロ膨張結晶化ガラス、TFT用ガラス、PDP用ガラス、光学フィルム用基板ガラス等が挙げられる。また、ガラス基材以外の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリエチレン樹脂等の樹脂基材が挙げられる。
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
実施例1
図2に示すような、ガラス1に酸化亜鉛膜11と酸化マグネシウム膜12を順次積層した薄膜積層体を作製した。ガラスとしては、厚さ3mmのソーダライムガラスを用いた。薄膜積層体の成膜は、図1に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて行った。
酸化亜鉛膜の成膜は、ガラス1を基板ホルダー2に保持させた後、真空チャンバー3内を真空ポンプ4によって排気して行った。成膜中、真空ポンプ4は連続して稼働させ、真空チャンバー内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より、酸素ガスを導入し、酸素ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して調整した。真空ポンプ4にはターボ分子ポンプを用いた。成膜中の真空チャンバ−内の圧力は、真空チャンバーと真空ポンプの間に設置された排気バルブ6の開度を制御することで0.2Paに調節した。裏側にマグネット7が配置されたターゲット8には、Znターゲットを用い、Znターゲットへ電源ケーブル9を通じで電源10より投入される電力は100Wとし、電源10には直流電源を用いた。酸化亜鉛膜の厚さが70nmになるように、成膜時間を制御した。なお、以降いずれの膜についても、成膜時間を制御することで所望の膜厚を得た。
次に、酸化亜鉛膜の上に酸化マグネシウム膜を、真空を維持したまま連続して成膜した。ターゲット8に酸化マグネシウムターゲットを用いて、真空チャンバー3内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より、アルゴンと酸素ガスを1:1の割合になるように導入し、圧力は、排気バルブ6を制御して0.5Paに調節した。酸化マグネシウムターゲット8へ電源ケーブル9を通じて電源10より投入する電力は200Wとし、電源10には交流電源を用いた。酸化マグネシウム膜の厚さが80nmになるように、成膜時間を制御した。
実施例2
酸化亜鉛膜の膜厚を30nm、酸化マグネシウム膜の膜厚を10nmとした以外は実施例1と同様にして薄膜積層体を作製した。
比較例1
図3に示すようなガラスに酸化マグネシウム膜を作製した。ガラスとしては、厚さ3mmのソーダライムガラスを用いた。酸化マグネシウム膜の成膜は、図1に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて行い、成膜条件は実施例1と同様にした。
実施例1および2で作製した薄膜積層体、および比較例1で作製した酸化マグネシウム膜のX線回折測定結果を図4に示す。実施例1および2においては、回折角が34°付近に酸化亜鉛(002)面に帰属される回折ピーク、42°付近に酸化マグネシウム(200)面に帰属される回折ピークが得られ、酸化マグネシウム膜は高い結晶化度と高い配向性を示した。特に実施例2では、酸化マグネシウムの膜厚が10nmと非常に薄いにも関わらず、結晶性の膜を得ることが出来た。一方、比較例1においては、酸化マグネシウム膜による回折ピークが得られず、非晶質または微結晶であった。
実施例3
図2に示すような、ガラス1に酸化亜鉛膜11と窒化チタン膜12を順次積層した薄膜積層体を作製した。ガラスとしては、厚さ3mmのソーダライムガラスを用いた。薄膜積層体の成膜は、図1に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて行った。
酸化亜鉛膜の成膜は、ガラス1を基板ホルダー2に保持させた後、真空チャンバー3内を真空ポンプ4によって排気して行った。成膜中、真空ポンプ4は連続して稼働させ、真空チャンバー内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より、酸素ガスを導入し、酸素ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して調整した。真空ポンプ4にはターボ分子ポンプを用いた。成膜中の真空チャンバ−内の圧力は、真空チャンバーと真空ポンプの間に設置された排気バルブ6の開度を制御することで0.2Paに調節した。裏側にマグネット7が配置されたターゲット8には、Znターゲットを用い、Znターゲットへ電源ケーブル9を通じで電源10より投入される電力は100Wとし、電源10には直流電源を用いた。酸化亜鉛膜の厚さが55nmになるように、成膜時間を制御した。なお、以降いずれの膜についても、成膜時間を制御することで所望の膜厚を得ており、意図的な基板加熱は行わなかった。
次に、酸化亜鉛膜の上に窒化チタン膜を、真空を維持したまま連続して成膜した。ターゲット8にチタンターゲットを用いて、真空チャンバー3内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より、アルゴンと窒素ガスを8:2の割合になるように導入し、圧力は、排気バルブ6を制御して0.5Paに調節した。チタンターゲット8へ電源ケーブル9を通じて電源10より投入する電力は100Wとし、電源10には直流電源を用いた。窒化チタン膜の厚さが60nmになるように、成膜時間を制御した。
実施例4
酸化亜鉛膜の膜厚を30nmとした以外は実施例3と同様にして薄膜積層体を作製した。
実施例5
窒化チタン膜の膜厚を500nmとした以外は実施例4と同様にして薄膜積層体を作製した。
比較例2
図3に示すような、ガラスに窒化チタン膜を作製した。ガラスとしては、厚さ3mmのソーダライムガラスを用いた。窒化チタン膜の成膜は、図2に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて行い、成膜条件は実施例5と同様にした。
比較例3
窒化チタン膜の膜厚を500nmとした以外は比較例2と同様にして、窒化チタン膜を作製した。
実施例3および4で作製した薄膜積層体、および比較例2で作製した窒化チタン膜のX線回折測定結果を図5に示す。実施例3および4においては、回折角が36.0°付近と42.0°付近に窒化チタン(111)と(200)面に帰属される二つの回折ピークが得られ、特に(200)面による強い回折ピークが得られた。一方、比較例3および4においては、36.0°付近に膜による窒化チタン(111)面に帰属される回折ピークが得られるものの、実施例3〜5と比較して強度が弱く、結晶性が悪かった。実施例5および比較例3で作製した窒化チタン膜のX線回折測定結果を図6に示す。実施例5では、窒化チタン(111)および(200)面に帰属される回折ピーク、比較例3では窒化チタン(111)面の回折ピークが得られた。(111)面および(200)面の結晶性は薄膜の膜厚を厚くすることで向上し、膜厚あたりの結晶化した窒化チタンの割合は、回折ピークの面積と相関関係にあることから、実施例5の方が比較例3よりも結晶化した窒化チタンの割合が増加したということができ、本発明の方法を用いることによって、さらに結晶性が向上することが確認された。
実施例6
図2に示すような、ガラス1に酸化亜鉛膜11と窒化クロム膜12を順次積層した薄膜積層体を作製した。ガラスとしては、厚さ3mmのソーダライムガラスを用いた。薄膜積層体の成膜は、図1に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて行った。
酸化亜鉛膜の成膜は、ガラス1を基板ホルダー2に保持させた後、真空チャンバー3内を真空ポンプ4によって排気して行った。成膜中、真空ポンプ4は連続して稼働させ、真空チャンバー内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より、酸素ガスを導入し、酸素ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して調整した。真空ポンプ4にはターボ分子ポンプを用いた。成膜中の真空チャンバ−内の圧力は、真空チャンバーと真空ポンプの間に設置された排気バルブ6の開度を制御することで0.2Paに調節した。裏側にマグネット7が配置されたターゲット8には、Znターゲットを用い、Znターゲットへ電源ケーブル9を通じで電源10より投入される電力は100Wとし、電源10には直流電源を用いた。酸化亜鉛膜の厚さが30nmになるように、成膜時間を制御した。なお、以降いずれの膜についても、成膜時間を制御することで所望の膜厚を得た。
次に、酸化亜鉛膜の上に窒化クロム膜を、真空を維持したまま連続して成膜した。ターゲット8にCrターゲットを用いて、真空チャンバー3内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より、アルゴンと酸素ガスを1:1の割合になるように導入し、圧力は、排気バルブ6を制御して0.5Paに調節した。Crターゲット8へ電源ケーブル9を通じて電源10より投入する電力は100Wとし、電源10には交流電源を用いた。窒化クロム膜の厚さが50nmになるように、成膜時間を制御した。
比較例4
図3に示すようなガラスに窒化クロム膜を作製した。ガラスとしては、厚さ3mmのソーダライムガラスを用いた。窒化クロム膜の成膜は、図1に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて行い、成膜条件は実施例1と同様にした。
実施例6で作製した薄膜積層体、および比較例4で作製した窒化クロム膜のX線回折測定結果を図7に示す。実施例6においては、回折角が34°付近に酸化亜鉛(002)面に帰属される回折ピーク、43.5°付近に窒化クロム(200)面に帰属される回折ピークが得られ、窒化クロム膜は高い結晶化度と高い配向性を示した。一方、比較例4においては、窒化クロム(111)面に帰属される極めて弱い回折ピークが得られるのみで、微結晶であった。
比較例5
図2に示すような、ガラス1に酸化亜鉛膜11と窒化ホウ素膜12を順次積層した薄膜積層体を作製した。ガラスとしては、厚さ3mmのソーダライムガラスを用いた。薄膜積層体の成膜は、図1に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて行った。
酸化亜鉛膜の成膜は、ガラス1を基板ホルダー2に保持させた後、真空チャンバー3内を真空ポンプ4によって排気して行った。成膜中、真空ポンプ4は連続して稼働させ、真空チャンバー内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より、酸素ガスを導入し、酸素ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して調整した。真空ポンプ4にはターボ分子ポンプを用いた。成膜中の真空チャンバ−内の圧力は、真空チャンバーと真空ポンプの間に設置された排気バルブ6の開度を制御することで0.2Paに調節した。裏側にマグネット7が配置されたターゲット8には、Znターゲットを用い、Znターゲットへ電源ケーブル9を通じで電源10より投入される電力は100Wとし、電源10には直流電源を用いた。酸化亜鉛膜の厚さが30nmになるように、成膜時間を制御した。なお、以降いずれの膜についても、成膜時間を制御することで所望の膜厚を得ており、意図的な基板加熱は行わなかった。
次に、酸化亜鉛膜の上に窒化ホウ素膜を、真空を維持したまま連続して成膜した。ターゲット8に窒化ホウ素ターゲットを用いて、真空チャンバー3内の雰囲気ガスは、ガス導入管5より、アルゴンと窒素ガスを8:2の割合になるように導入し、圧力は、排気バルブ6を制御して0.2Paに調節した。窒化ホウ素ターゲット8へ電源ケーブル9を通じて電源10より投入する電力は200Wとし、電源10には交流電源を用いた。窒化ホウ素膜の厚さが50nmになるように、成膜時間を制御した。
比較例6
窒化ホウ素膜を作製する際のアルゴンと窒素ガスを4:6の割合とした以外は比較例5と同様にして薄膜積層体を作製した。
比較例5および6で作製した窒化ホウ素膜のX線回折測定結果を図8に示す。比較例5および6において、窒化ホウ素膜による回折ピークは得られず、非晶質または微結晶であり、酸化亜鉛層を用いても窒化ホウ素膜の結晶性を向上できなかった。
得られた結果を表1にまとめる。差異率は、金属化合物の格子定数をa(nm)、種結晶層の格子定数の内a軸の格子定数をa(nm)とした時、|a−(√2/2)a|/a×100の式によって算出される値である。なお、酸化亜鉛の格子定数aは0.325nmとした。また、表中の○は、種結晶層としてZnOを用いることでセラミック薄膜の結晶性が向上したことを意味する。
差異率が10%より低い酸化マグネシウム、窒化チタン、窒化クロムでは、酸化亜鉛種結晶層による結晶性の向上が確認され、一方、差異率が15%を超える窒化ホウ素では、結晶性の向上は確認されなかった。更に、酸化マグネシウム、窒化チタン、窒化クロムはイオン半径比が0.35〜0.75の範囲にあり、窒化ホウ素はイオン半径比が0.16と小さかった。したがって、酸化亜鉛の種結晶層によりセラミック層の結晶性を向上できるか否かは、差異率、およびイオン半径比に依るところが大きいことが示された。
Figure 2011021270
実施例7
酸化亜鉛成膜中の真空チャンバ−内の圧力を0.4Paに調節した以外は、実施例3と同様にして薄膜積層体を作製した。
実施例8
酸化亜鉛成膜中の真空チャンバ−内の圧力を1.0Paに調節した以外は、実施例3と同様にして薄膜積層体を作製した。
実施例9
酸化亜鉛成膜中の真空チャンバ−内の圧力を1.6Paに調節した以外は、実施例3と同様にして薄膜積層体を作製した。
実施例10
酸化亜鉛成膜中の真空チャンバ−内の圧力を3.3Paに調節した以外は、実施例3と同様にして薄膜積層体を作製した。
実施例7〜10で作製した薄膜積層体のX線回折測定の結果を図9、X線反射率測定により求めた薄膜積層体の界面粗さを表2にまとめる。界面粗さが小さくなるに従い、窒化チタン膜のX線回折強度は高くなり、結晶性が向上することが分かった。したがって、種結晶層とセラミック層との界面粗さを調節することで、より結晶性が高いセラミック層を得ることが可能となることが示された。
Figure 2011021270
本発明のセラミック薄膜の形成方法は、基材の種類に関わらず、結晶性を有している高機能な種々のセラミック薄膜を形成できるので、たとえば半導体などの電子製品や光学部品などオプトエレクトロニクスデバイスにおける薄膜の製造工程に利用し得る。
1 ガラス
2 基板ホルダー
3 真空チャンバー
4 真空ポンプ
5 ガス導入管
6 排気バルブ
7 マグネット
8 ターゲット
9 電源ケーブル
10 電源
11 種結晶層
12 セラミック層

Claims (4)

  1. 真空成膜法による基材表面上への結晶性セラミック薄膜の形成方法であり、該方法は、種結晶層を形成する工程1、該種結晶層上に結晶性セラミック層を形成する工程2を有し、前記種結晶層は酸化亜鉛又は酸化亜鉛化合物よりなる層であり、前記結晶性セラミック層は、MxOy(Mは金属元素、Oは非金属元素、x及びyは1以上の整数)で表される立方晶系の金属化合物の層であり、なおかつ該金属化合物は、該金属化合物の格子定数をa(nm)、前記種結晶層の格子定数の内a軸の格子定数をa(nm)とした時、|a−(√2/2)a|/a×100で表される値が15%以下であることを特徴とする結晶性セラミック薄膜の形成方法。
  2. 前記種結晶層と前記結晶性セラミック層との界面粗さが、2.0nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性セラミック薄膜の形成方法。
  3. 前記結晶性セラミック層は、金属イオンと陰イオンとによって形成される金属化合物からなるものであり、該金属化合物の金属イオン半径rと陰イオン半径rとの比r/rが0.35〜0.75であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の結晶性セラミック薄膜の形成方法。
  4. 前記種結晶層は、該層のCuKα線を用いたX線回折測定により(002)結晶面に優先配向した酸化亜鉛の回折線が観測されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の結晶性セラミック薄膜の形成方法。
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