JP2010255408A - 建物の基礎の設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】地耐力が小さい場合でも土砂の掘削量を大幅に増加させる必要がなく、施工が簡単で合理的な建物の基礎の設計方法を提供する。
【解決手段】建物の基礎の設計方法は、予め断面が四角形のコンクリート基礎梁の幅寸法を標準的な値に設定し、該基礎梁のみでは必要な基礎の設置面積が得られない場合、該基礎梁の幅を不変として当該基礎梁に連続するフーチング部とベタ基礎部のいずれか一方若しくは両方を形成することで当該地耐力に対応し得る接地面積を得ることを特徴とする。
【選択図】 図4
【解決手段】建物の基礎の設計方法は、予め断面が四角形のコンクリート基礎梁の幅寸法を標準的な値に設定し、該基礎梁のみでは必要な基礎の設置面積が得られない場合、該基礎梁の幅を不変として当該基礎梁に連続するフーチング部とベタ基礎部のいずれか一方若しくは両方を形成することで当該地耐力に対応し得る接地面積を得ることを特徴とする。
【選択図】 図4
Description
本発明は、地盤の地耐力の大きさに対応させた基礎を容易に且つ簡単な施工で構成することが出来る建物の基礎の設計方法に関するものである。
基礎の接地面積や設置深さは、建物の重量と該建物を支持する地盤の地耐力に応じて設計される。即ち、建物の基礎は、前記条件に応じて予め設定された設置深さに対応した深さ及び地表面からの立ち上がり高さを持った基礎梁と、基礎梁の下端部分に設けられ予め設定された接地面積に対応した面積を持った下部フーチング部と、からなる略凸字状或いはL字状の布基礎として構成されている。
上記布基礎は、最下部フーチング部の幅寸法に対応した幅寸法で且つ基礎梁及びフーチング部の設置深さに対応した深さで地面を掘削し、掘削した面に所定の地業を行なった後、フーチング部に対応させた型枠を構成してコンクリートを打設し、更に、フーチング部の上部に基礎梁に対応させた型枠を構成してコンクリートを打設することで、フーチング部と基礎梁を一体化させた略凸字状或いはL字状に構成される。
木造建物の場合、基礎梁の地表面からの立ち上がり寸法は、法規により30cm〜40cmに規定されている。また構造耐力上安全が確かめられている場合、基礎の地表面からの立ち上がり寸法に対する法的な規定はないが、床下の湿気や他の条件等の問題を考慮して木造建物と同様な範囲に設定しているのが一般的である。
また建物の基礎構造として、基礎伏図に区画された平面内に鉄筋を配筋した後、コンクリートを打設したベタ基礎を構成することもある。このベタ基礎構造では、布基礎の場合と比較して基礎の深さを浅くすることが出来、土壌の掘削量を減少させて排土処理を軽減することも出来るという利点がある。
上記略凸字状或いはL字状の基礎では、型枠を施工する際にフーチング部と梁部とに夫々対応させたものが必要であり、且つ型枠にコンクリートを打設した直後の天端レベルの均し調整については、フーチング部では鉄筋のかぶり厚さを確保するために、また梁部では上部躯体の水平精度を確保するために、手間がかかるという問題がある。
また地耐力が小さい場合、フーチング部の幅を大きくする必要があるが、この場合、土砂の掘削量が多くなって施工に要するコストが増加する虞がある。特に、従来の略凸字状或いはL字状の基礎では、フーチング部に掘削土を埋め戻すので、その分の土の積載荷重が建物荷重に加算される。従って、深さが深くなると、この分だけフーチング部の出幅を大きくして、許容地耐力以内になるように設計しようとするが、フーチング部を大きくした分、更に土の積載荷重が建物荷重に加算されることとなり、これを繰り返すことにより、自ずと限界に達してしまう。このため、土を埋め戻さない特殊基礎を設計したり、杭基礎に変更したりするような大がかりな設計を要することになるという問題がある。
本発明の目的は、地耐力が小さい場合でも土砂の掘削量を大幅に増加させる必要がなく、施工が簡単で合理的な建物の基礎の設計方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る建物の基礎の設計方法は、予め断面が四角形のコンクリート基礎梁の幅寸法を標準的な値に設定し、該基礎梁のみでは必要な基礎の設置面積が得られない場合、該基礎梁の幅を不変として当該基礎梁に連続するフーチング部とベタ基礎部のいずれか一方若しくは両方を形成することで当該地耐力に対応し得る接地面積を得ることを特徴とするものである。
また、上記建物の基礎の設計方法に於いて、前記コンクリート基礎梁の天端とフーチング部の天端又はベタ基礎の底盤の天端を同一水平面に設定することが好ましい。
本発明に係る建物の基礎の設計方法によれば、断面が四角形のコンクリート基礎梁の側面で且つ地表面に対応する部位にフーチング部或いはベタ基礎の底盤を一体化させ、更にコンクリート基礎梁の天端とフーチング部の天端或いはベタ基礎の底盤の天端を同一水平面に形成したので、基礎梁の幅寸法を標準的なものとし、建物を建築する地盤の地耐力に応じて基礎の接地面積を演算し、コンクリート基礎梁のみでは必要な基礎の接地面積が得られない場合、この差をフーチング部又はベタ基礎の底盤によって満足することが出来る。
特に、地耐力が小さく基礎の接地面積を大きくする必要がある場合であっても、フーチング部,ベタ基礎の底盤が地表面に形成されるため、基礎梁の設置部位をフーチング部の幅寸法で掘削する必要がなく、土砂の掘削量を増大させることがない。このため、土砂の掘削に要するコストを削減することが出来る。またコンクリート基礎梁の断面が四角形のため、型枠の構造が簡単になり、施工性を向上することが出来る。
更に、コンクリート基礎梁の天端とフーチング部の天端或いはベタ基礎の底盤の天端を同一水平面内に設定することによって、基礎の上部に建物の躯体或いは土台を組み立てる際の作業を容易に実施することが出来る。即ち、仕上げ面のレベルが同一水平面にあるため、施工性が向上する。
以下、上記建物の基礎構造の好ましい実施形態について説明する。第1の基礎構造は、断面が四角形のコンクリート基礎梁(以下単に「基礎梁」という)を目的の建物の基礎伏図に従って構築するものであり、断面が四角形であることから、コンクリートを打設する際の型枠の単純化をはかると共に配筋の単純化をはかることが可能である。
第1の基礎構造に於いて、基礎梁の幅方向の寸法は、建設地盤の地耐力に対して建物荷重と基礎底部接地面積との関係で決定される。即ち、地耐力が小さい場合、幅寸法を大きくすることで接地面積を確保し、接地圧が許容地耐力内になるように設計される。また基礎梁の高さ方向の梁成は、上部建物に作用する水平力に抵抗できるだけの根入れ深さを確保して設計され、且つ土砂の流出を防ぐ機能をも有する。
上記基礎梁を構成する場合、型枠施工する際には、断面が矩形であるため、側面の堰板を用意すれば良く、また根切り幅も大きくとる必要はない。従って、施工性が向上し作業が簡単となる。また断面形状が単純なため、掘削,埋め戻し土量を軽減することが可能となる。
また第2の基礎構造は、地耐力が小さく、前述の第1の基礎構造に於ける基礎梁の底部の面積が不足した場合、フーチング部により接地面積を確保し、許容地耐力内に設計することを可能としたものである。
この基礎構造は、基礎梁の側面であって地表面に対応する部位にフーチング部又はベタ基礎の底盤(以下、単に「ベタ基礎部」という)を構成すると共にこれらのフーチング部,ベタ基礎部を基礎梁と一体化させて構成したものである。この基礎構造では、基礎梁に一体化させたフーチング部或いはベタ基礎部によって基礎全体の接地面積を確保することが可能であり、フーチング部,ベタ基礎部の面積を建築現場の地耐力に応じて適宜設定することで、地耐力の変化に対応することが可能である。
またフーチング部,ベタ基礎部を基礎梁の上端側に対応させた位置に構成することによって、基礎梁の設置深さ或いは根切り深さを深くさせる場合であっても、この深さに関わらずフーチング部,ベタ基礎部の深さを略一定とすることが可能であり、従って、土砂の掘削量が大幅に増大するようなことがない。更に、基礎の接地面積を変化させる場合であっても基礎梁の幅寸法を変更する必要がなく、単にフーチング部,ベタ基礎部の寸法を設定することで基礎の接地面積の変化に対応することが可能である。
従って、地耐力の変化に関わらず、基礎梁に対応する部位を一定の幅で掘削することが可能となり、該基礎梁の標準化をはかることが可能となる。またフーチング部,ベタ基礎部を形成する際には対応する地表面を掘削すれば良く、この掘削深さは、基礎梁の下端にフーチング部を形成する構造と比較して極めて土砂の掘削量を削減することが可能である。
基礎梁の側面にフーチング部,ベタ基礎部を形成したとき、基礎梁の天端とフーチング部の天端,ベタ基礎部の天端は夫々同一平面内に配置されている。地表面から基礎梁の天端までの距離は特に限定するものではないが、この距離が大きくなるとフーチング部,ベタ基礎部の厚さを厚くするか、或いは地表面に上に盛り土が必要となる。このため、地表面と基礎梁の天端までの距離は小さいことが好ましく、フーチング部,ベタ基礎部の厚さは、前記距離に数センチを加えた程度に設定することが好ましい。
基礎梁とフーチング部,ベタ基礎部との関係をこのように設定することで、地面の掘削深さを浅くして容易に施工することが可能となる。
フーチング部,ベタ基礎部を設けた基礎梁を構成する場合、該基礎梁の側面を形成するために型枠を利用することが好ましい。基礎梁に於けるフーチング部,ベタ基礎部を形成することのない面では、繰り返し使用が可能な鋼製型枠や使い捨ての型枠を用いることが可能であるが、フーチング部,ベタ基礎部を形成する面ではコンクリートを打設した後、型枠を取り外すことが不可能である。このため、基礎梁に於けるフーチング部,ベタ基礎部の下方には埋め殺し用の型枠が配置される。しかし、基礎梁を形成する際に必ずしも型枠を用いる必要はなく、地盤の掘削面をそのまま型枠の代わりに利用することも可能である。この場合、基礎梁とフーチング部,ベタ基礎部との接合部位を直角とすることが可能であり、或いはハンチを形成することも可能である。
上記の如く構成された基礎では、基礎梁の天端とフーチング部の天端,ベタ基礎部の天端が同一面内に配置される。このため、基礎の天端のレベル出しが容易であり、該基礎の上部に建物の躯体を取り付けるための土台を組み立てることが容易となる。前記土台は、特に材料,構成,形状を限定するものではない。即ち、土台を構成する材料として鉄骨で良く、通常躯体の梁に使用されるI型,H型断面の鋼材、或いは線材(縦横材)でフレームを組んだもので構成しても良い。
また基礎を構成する基礎梁の所定位置には、土台を構成する柱部材や躯体を構成する柱等を取り付ける取付部を設けておくことが好ましい。この取付部の構造は特に限定するものではなく、基礎梁の鉄筋に固定したアンカーボルトや、鉄筋と一体化させた支柱であることが好ましい。
次に、上記各基礎構造の好ましい実施例について図を用いて説明する。図1は第1の構成例に係る基礎構造の全体構成を説明する斜視図である。図2は第1の構成例に係る基礎構造の断面図である。図3は第2の構成例に係る基礎構造の全体構成を説明する図である。図4は第2の構成例に係る基礎構造の断面図である。図5は基礎構造及び該基礎の上部に構成される建物の一部との関係を説明する図である。図6は支柱の例を説明する図である。図7は支柱とコンクリート基礎梁とを一体化させる構造を説明する図である。図8は外壁の下部とコンクリート基礎梁との間を化粧する構成を説明する図である。
先ず、図1,図2により第1の構成例に係る基礎Aの構造について説明する。本構成例に係る基礎Aは、断面が四角形の基礎梁1を目的の建物の基礎伏図に従って設置して構成されたものである。即ち、基礎梁1は基礎Aの各通り(基礎Aの外周部分の外通り、図1のロ字状の外通り、外通りの内側の中通り、図1の十字状の中通り)毎に設置され、他の通りに設置された他の基礎梁1と当接する部位では、夫々の鉄筋2を互いに連結することで接続されている。
特に、基礎梁1は、目的の建物を建築する敷地に於ける地盤の地耐力、目的の建物の重量に対抗するために最適な幅寸法を有し、且つ基礎梁1が予め該基礎梁1に設定された許容撓みの範囲以上の歪みを生じることがなく、更に、この建物に作用することが想定される水平力に対し充分に対抗し得る高さ寸法を有する四角形断面に形成されている。
即ち、基礎梁1は断面が正方形,長方形を含む四角形(方形)の形状を持って形成されている。従って、目的の地盤の地耐力の大きさに対応させて幅寸法及び高さ寸法を設定することで、信頼性の高い基礎Aを構築することが可能である。このような断面形状を持った基礎梁1では、現場での地業が終了した後、コンクリートを打設する際の型枠の形状が単純となり施工が容易である。
また基礎梁1の所定位置にはアンカーボルト3が配置されており、基礎Aの上部に構築される土台C(後述する基礎Bと共通して構築され、上部に目的の建物の躯体が建築される)を構成する支柱を固定し得るように構成されている。尚、後述するように、基礎梁1に土台Cを構成する支柱Eを埋設することで一体化しても良い。
上記の如く構成された基礎Aでは、基礎梁1の断面形状が単純な四角形であるため、型枠の形状が単純になり、施工性が向上する。またコンクリートを一度打設することで、基礎を構成することが可能であり、工程上の煩雑さを低減し、作業性を向上することが可能である。
次に、図3,図4により第2の構成例に係る基礎Bの構造について説明する。図に示す基礎Bは断面が四角形の基礎梁1を目的の建物の基礎伏図に従って設置したものであり、地盤の地耐力が変化した場合、基礎梁1の幅寸法を変更することなく、基礎梁1の側面であって地表面に対応する部位に、フーチング部4(図4(a)参照)又はベタ基礎部5を一体的に形成することで、地耐力に対応した接地面積を満足し得るように構成されている。
即ち、基礎Bは本発明に係る建物の基礎設計方法を実施して構成されたものであり、予め基礎梁1の幅寸法を標準的な値に設定しておき、目的の建物を建築すべき敷地の地耐力が小さい場合、基礎梁1の幅寸法を大きくすることなく、地耐力に対応し得る接地面積をフーチング部4,ベタ基礎部5を形成することで実現したものである。従って、フーチング部4の面積或いはベタ基礎部5の面積は、基礎梁1の面積を補完する値となり、一義的に設定し得るものではない。
フーチング部4,ベタ基礎部5は、基礎梁1の側面であって地表面GLに対応した位置に設けられ、基礎梁1の天端1aとフーチング部4の天端4a,ベタ基礎部5の天端5aは夫々同一平面内に配置されている。地表面GLから基礎梁1の天端1aまでの距離は特に限定するものではない。しかし、前記距離が大きくなるとフーチング部4,ベタ基礎部5の厚さが厚くなってコンクリートの無駄が生じる。このため、地表面GLと基礎梁1の天端1aまでの距離を約10cm程度とし、フーチング部4,ベタ基礎部5の厚さを12cm〜18cm程度の範囲に設定することが好ましい。
このような基礎Bでは、地面を掘削する際に、基礎梁1に対応する部位では地耐力に対応させて深さを深くすることがあっても幅を広くする必要はない。またフーチング部4,ベタ基礎部5に対応する部位を掘削する場合、地面を僅かに掘削すれば良く、基礎梁1の深さに対応させて深くする必要がない。従って、地耐力が小さい場合であっても、土砂の掘削量が大幅に増大することがなく、掘削作業を進める場合に有利である。
基礎梁1の側面に一体的に形成されたフーチング4,ベタ基礎5には夫々横鉄筋6が配筋されている。この横鉄筋6は基礎梁1の鉄筋2を配筋する際に、該鉄筋2の上部に固着されて一体化しており、基礎梁1とフーチング部4,ベタ基礎部5に同時にコンクリートを打設することで強固に一体化している。
尚、第2の構成例に係る基礎Bでは、基礎梁1の鉄筋2にアンカーボルト3を取り付けて固定し、このアンカーボルト3に土台Cの支柱を締結し得るように構成している。
上記の如く構成された基礎Bでは、基礎梁1の標準化をはかり、且つ地耐力が小さい場合であっても、土砂の掘削量を大幅に増大させることがない。
次に、上記基礎A,Bを用いて鉄骨造の土台Cを構成した例について図1,図5〜図8により説明する。前述したように、土台Cは基礎A,Bの何れであっても利用することが可能であるが、以下の例では、代表して基礎Aを利用した場合について説明する。
従って、以下の説明に於いて基礎梁1にはフーチング部4,ベタ基礎部5は形成されていないが、他の構成は全て基礎Bに適用することが可能である。このため、図3に示す基礎Bに於いて以下説明する構成と同一の構成を有する部位及び同一の機能を有する部位には同一の符号を付すものとする。
本構成例は、基礎梁1の少なくとも端部に、建物の躯体を構成する柱Dの直下に配置されて該柱Dを支持する支柱Eを取り付けるための脚部Fを形成し、この脚部Fに支柱Eを一体的に取り付けることで構成されている。即ち、図1,5に示すように、少なくとも端部に脚部Fを形成した基礎梁1が配置され、該脚部Fに支柱Eを一体的に取り付けて構成されている。ここで、基礎梁1は基礎Aに於ける直線状の部分に対応して設定されたものであり、図1では個々の基礎梁1の両端部及び中間部に支柱Eが配置されている。従って、各方向の基礎梁1は交差する部位に配置された支柱Eを共有することとなる。特に、支柱Eは建物の躯体を構成する全ての柱Dの直下に配置されており、従って、脚部Fも全ての柱Dの位置に対応して配置される。
前述したように、基礎梁1は基礎Aの各通り毎に設置され、他の通りに設置された基礎梁1と当接する部位では互いに接続されている。この基礎梁1の少なくとも端部に形成された脚部Fの形状は特に限定するものではなく、基礎梁1に於ける他の部位(支柱Eを取り付けることのない部位)と同一の形状であって良い。要するに脚部Fは支柱Eを一体的に取り付ける部位をいうものである。
基礎梁1は、少なくとも端部に1個の支柱Eを一体的に取り付けることが必須であるが、支柱Eの取付数を限定するものではない。図1に示すように、各通り毎の基礎梁1が夫々4個の支柱Eを取り付けることもある。このように、基礎梁1に取り付ける支柱Eの数は目的の建物に応じて異なり、一義的に設定し得るものではない。
例えば目的の建物を、鉄骨造2階建て、外壁パネル7としてALC(軽量気泡コンクリート)パネルを用いたものとしたとき、基礎Aは基礎梁1を用いることによって、地盤に対する基礎梁1の埋設深さは規定により27cmとなる。従って、基礎梁1の設置部位に沿って前記深さ以上に掘削し、該掘削部位に所定の地業を施して深さ27cm(フーチング部4を設ける場合、ベタ基礎部の場合は12cm)に設定している。しかし基礎梁1の高さをこの寸法に限定するものではなく、あくまでも地盤条件や建物の重量,想定された水平力等の条件に応じて設定すべきことは当然である。
支柱Eは目的の建物の躯体を構成する全ての柱Dの直下に配置され、柱Dと接続されて該柱Dに作用する垂直力や水平力を基礎梁1に伝達する機能を有する。このため、支柱Eは図6に示すように、柱Dを取り付けるための天板11と、上端が天板11に溶接等の手段で固着され該天板11に作用する力を基礎梁1に伝達する伝達部材12とを有して構成されている。また柱Dに作用する水平力に伴って支柱Eに作用する引抜き力によって、該支柱Eが基礎梁1から引き抜かれることを防止するために、支柱Eを構成する伝達部材12の下端側に引抜き防止部材13が配置されると共に両者が直接、或いは接続板14を介して一体的に接続されている。
支柱Eは柱Dを接続する機能に加えて、隣接する支柱Eの間に配置され、外壁パネル7や床パネル8を支持する受け梁21、玄関部やピロティ車庫に対応する下地梁22を取り付ける機能をも有する。このため、支柱Eを構成する天板11の天端レベルは、予め目的の建物に設定された床面レベルや床の構造等の条件に対応して設定される。特に、作業上、柱Dを取り付ける天板11の天端レベルと、床パネル8の底面を支持する受け梁21の天端レベルは一致していることが好ましい。また床面をGLから如何なる高さに設定するかは個々の建物に応じた設計上の問題であり、限定されるべきものではない。
本構成例では、床面のレベルに関わらず、天板11及び受け梁21の天端レベルをGL+40cmに設定している。この数値は、通常の床を構成して床下の通気を確保する上で一般的に用いられるものである。
このため、天板11及び受け梁21の天端と基礎梁1の天端1aとの間には寸法差が生じ、受け梁21の高さ分を差し引いた隙間が形成される。この隙間は、床下の保守点検を行なう際に作業員が通過するための通路としての機能を発揮し、床下に入って行なう作業を容易に実施し得るようになる。
上記の如き機能を有する支柱Eに於いて、天板11には柱Dを取り付ける際に用いる図示しないボルトを挿通するためのボルト穴11aが形成されている。
伝達部材12は作用することが想定される水平力に対して充分に対抗し得るように、断面が十字状で且つ充分な断面積を持って形成されており、十字状に形成された各片には所定の間隔を持って複数の穴12aが形成されている。そして穴12aを介して、外壁パネル7や床パネル8を支持する受け梁21、玄関部やピロティ車庫に対応する下地梁22が接続されている。
上記受け梁21と下地梁22とは、夫々天端レベルが異なる。このため、伝達部材12の片に予め複数の穴12aを形成しておくことで、各梁21,22に設定された天端レベルに応じて最適な穴12aを選択して利用することが可能である。
引抜き防止部材13は、伝達部材12に一体的に取り付けられて支柱Eに作用する引抜き力を基礎梁1に伝達する機能を有するものであり、一部が基礎梁1に係止されるような構造を持っている。引抜き防止部材13の基礎梁1に対する係止とは、該引き向き防止部材13が基礎梁1に埋設されて一体化する状態、及び基礎梁1の上部に載置された状態で該基礎梁1に埋設されたアンカーボルト3(第2の構成例に係る基礎B)、或いはアンカーナットに締結されて一体化する状態があり、これらの構造を支柱Eに作用する力に応じて適宜選択して構成することが可能である。
例えば、図6(a)に示す支柱Eでは、引抜き防止部材13は伝達部材12の断面寸法よりも充分に長いH形鋼によって構成されており、この引抜き防止部材13と伝達部材12の間に配置された接続板14を介して支柱Eと一体的に取り付けられている。即ち、伝達部材12の下端に接続板14が溶接されており、該接続板14と引抜き防止部材13とが溶接或いはボルト,ナットを用いて一体的に取り付けられている。
また同図(b)に示す支柱Eでは、引抜き防止部材13は伝達部材12の平面寸法よりも充分に大きい寸法を持った平板によって構成されており、この引抜き防止部材13を伝達部材12の下端部に溶接することで一体的に取り付けられている。
更に、同図(c)に示す支柱Eでは、引抜き防止部材13は天板11と略等しい寸法を持った複数の平板によって構成されており、これらの平板を伝達部材12の下端部及び下端部から上方へ所定寸法離隔した位置に溶接することで一体的に取り付けられている。
上記の如く、支柱E及び引抜き防止部材13の形状や構造は特に限定するものではなく、基礎に於ける配置位置や建物の重量、作用する垂直力及び水平力等の力の大きさに応じて適宜設定することが可能である。特に、隅部に配置される支柱Eに対して取り付ける引抜き防止部材13は、図1に示すように、各通りの基礎梁1に対応させて平面形状がL字状に形成される。
上記基礎Aでは、支柱Eに伝達された柱Dに作用する垂直力は基礎梁1によって支持される。このとき、基礎梁1が力を伝達するのに必要な幅寸法を有し、且つ全幅にわたって高さが一定であるため、垂直力は均等に地盤に伝達されて支持される。即ち、基礎梁1に作用する反力は均等となる。このため、垂直力に作用によって基礎梁1に圧縮力が作用してもこの力を安定して支持することが可能であり、基礎梁1が部分的に破壊するようなことがない。
また支柱Eに対し、柱Dに作用する水平力に起因する該支柱Eを基礎梁1から引き抜く方向の力が作用したとき、支柱Eを構成する伝達部材12に直接或いは接続板14を介して取り付けた引抜き防止部材13が基礎梁1に一体的に取り付けられているため、該引抜き防止部材13の剪断強度或いは引張強度によって対抗することが可能であり、支柱Eが基礎梁1から引き抜かれたり、倒れたりすることがない。
次ぎに、基礎梁1に埋設する鉄筋2の構成や受け梁21と基礎梁1との緊結構造について具体的に説明し、合わせて施工手順について説明する。基礎A,Bを構築する場合、先ず、目的の建物が設計される。従って、以下の説明では、既に建物の設計が終了し、柱の位置や玄関等の位置が決定され、且つ基礎伏図に従って現場の地業及び位置出しも終了したものとする。
先ず、建物の躯体を構成する柱Dの設置位置に対応させて土台Cを構成する支柱Eを配置する。このとき、各支柱E毎にレベル出し用のPC板23を設置し、このPC板23に夫々支柱Eを立ち上げて配置する。このとき、夫々の支柱Eは伝達部材12の下端側に引抜き防止部材13が一体的に取り付けられている。前記PC板23は支柱Eと共に基礎梁1に埋設される。このため、引抜き防止部材13を含む支柱Eの高さは、天板11の天端の高さと基礎梁1の高さを加えた値からPC板23の厚さを差し引いた寸法に設定される。
尚、各柱Eのレベル出しを行なう場合、レベル出しの基準板として必ずしもPC板23を使用することに限定するものではなく、鋼板や他の類似の板を用いることが可能である。
全ての支柱Eの配置が終了した後、個々の支柱Eの天板11の高さを調整しつつ全ての支柱Eの天端を同一レベルに設定する。この状態で、個々の支柱EはPC板23に埋設されている図示しないボルトにナットを締結することで仮固定される。
次いで、基礎梁1の設置部位に対応して鉄筋2を構成する鉄筋籠2aを配置する。鉄筋籠2aは予め工場段階で組み立てられ、或いは予め工場段階で製作した平網状の鉄筋を現場で立体的に組み立てて用いられる。この鉄筋籠2aは長手方向に配置された複数の縦筋2bと、これらの縦筋2bを接合する帯筋(剪断補強筋)2cとによって構成されている。
鉄筋籠2aは幅寸法及び高さ寸法は、予め設定された基礎梁1の断面寸法に対応して設定され、長さは基礎梁1の長さの如何に関わらず、基礎梁1に配置される隣接した支柱E間の距離に応じて設定されている。即ち、鉄筋籠2aを隣接する支柱Eの間に配置したとき、この鉄筋籠2aは両端が支柱Eに届かず、該支柱Eから所定距離離隔した位置を保持する。
一般に柱Dの間隔は建物に設定されたモジュール寸法に規制される。このため、鉄筋籠2aの長さもモジュール寸法によって規制されることとなり、規格化することが可能となる。従って、鉄筋籠2aを工場段階で製作しておくことが可能となり、品質の安定した信頼性の高い鉄筋籠2aとすることが可能である。このことは、鉄筋籠2aを用いて構成された基礎梁1の信頼性をも高めることとなる。
鉄筋籠2aを支柱Eの間に配置したとき、配置された鉄筋籠2aの端部は支柱Eから離隔した位置にある。このため、支柱Eを中央として直線方向、或いはL字方向に夫々配置された鉄筋籠2aを互いに接合することが必要である。この接合は、支柱Eを挟むようにして配置した複数の縦筋2dによって、鉄筋籠2aの縦筋2bを接合すると共に帯筋2eによって縦筋2bを接合することで行なわれる。
上記の如くして支柱Eの設置と配筋を行なうことが可能である。ここで、支柱Eの天板11のレベルを設定する作業は、前述したように、必ずしも配筋作業を実施する以前に行なう必要はなく、配筋作業を実施した後行なっても良いことは当然である。
図7は、上記の如くして中通り及び外通りに夫々配置された支柱Eと鉄筋籠2a及び基礎梁1との関係を説明するものである。即ち、同図(a)は、中通りの基礎梁1に配置された支柱Eと鉄筋籠2aの関係を示すものであり、支柱Eを幅方向の中央に配置すると共に該支柱Eを基準として基礎梁1の幅方向に鉄筋籠2aの縦筋2bを振り分けて構成されている。また同図(c)は支柱Eの構成が異なる以外は、(a)と同一の構成である。
同図(b)は外通りの基礎梁1に配置された支柱Eと鉄筋籠2aの関係を示すものであり、支柱Eは基礎梁1の外側に偏った位置に配置されるものの、鉄筋籠2aは基礎梁1の略中央に配置されている。
特に、全ての支柱Eを配置した後であって基礎梁1を構築するコンクリートを打設する以前に、支柱Eに受け梁21,下地梁22を接続しておくことが好ましい。予め支柱Eに受け梁21,下地梁22を接続しておくことで、個々の支柱Eの安定性を確保することが可能である。
受け梁21は、外通りに配置された場合は外壁パネル7及び床パネル8を支持する機能を有し、中通りに配置された場合は床パネル8を支持する機能を有する。このため、受け梁21としては支持すべき外壁パネル7や床パネル8の重量に充分に耐え得る寸法を持ったH形鋼によって構成されている。
また受け梁21及び下地梁22は、夫々のウエブと支柱Eの伝達部材12の片を突き合わせると共にプレート25をボルト,ナット26によって締結することで接続されている。
受け梁21は床パネル8を支持するものであり、複数の床パネル8の端部が載置されるため、受け梁21には各床パネル8の荷重が作用して曲げが生じる。このため、受け梁21の長手方向の略中央の位置、或いは長手方向に複数の位置で基礎梁1に接続し、該基礎梁1によって受け梁21を支持することが好ましい。
本構成例では、図5に示すように、受け梁21の略中央に受け梁支持部材27を配置し、この受け梁支持部材27によって基礎梁1の天端1aと受け梁21の下端を接続することで、受け梁21に作用する荷重を基礎梁1に伝達して支持し得るように構成されている。
受け梁支持部材27は、受け梁21に対する取付部位に作用する力に対抗し得る強度と受け梁21を介して伝達される水平力に対抗し得る曲げ強度及び曲げ剛性を有することが必要であり、前記強度を発揮し得るものであれば形状を限定するものではない。
このため、受け梁支持部材27は、受け梁21の下端と基礎梁1の天端1aとの間に形成される隙間の寸法に対応する長さを有し、長手方向の両端に夫々フランジ27aを形成した側面視がコ字状の本体と、フランジ27aをスチフナ27bによって接続して構成されている。
受け梁支持部材27は、予め受け梁21の下フランジにボルト,ナット26によって或いは溶接によって固着され、自由端となる下側のフランジ27aには予め基礎梁1に埋設される埋込ボルト28を取り付けている。
上記の如くして建物の躯体を構成する柱Dの直下に支柱Eを配置して天端レベルを調整し、且つ隣接する支柱Eの間に夫々鉄筋籠2aを配置すると共に、配置された鉄筋籠を縦筋2d,帯筋2eによって接続し、更に、隣接する支柱Eに間に受け梁21,下地梁22を配置すると共にプレート25によって接続した後、基礎梁1の設置位置に対応させて図示しない型枠を配置し、該型枠にコンクリートを打設する。
型枠に対するコンクリートの打設によって、引抜き防止部材13を含む支柱E,PC板23,鉄筋籠2a,受け梁支持部材27の下側のフランジ27aに取り付けた埋込ボルト28は基礎梁1に埋設される。型枠に打設されたコンクリートは所定の養生期間を経過した後脱型され、これにより、前記各部材を埋設して一体化した基礎梁1を有する基礎A,Bが構成される。
上記の如くして基礎梁1を現場打ちコンクリートによって構成したとき、各支柱Eの天端レベルは予め設定された精度を保持しており、改めてレベル出しを行なうことなく、柱Dを取り付けることが可能である。同様に受け梁21のレベルも精度が保証され、柱Dの取り付けに引き続き外壁パネル7,床パネル8の取り付けを行なうことが可能である。
建物として床下を常に開放した状態にしておくことは好ましくはないため、受け梁21に外壁パネル7を取り付ける際に化粧パネル29及びコーナーパネル30(図1参照)を取り付けている。
化粧パネル29,コーナーパネル30によって受け梁21と基礎梁1との間に構成された隙間を閉鎖するに際し、各パネル29,30を取り付ける構造は特に限定するものではない。例えば、化粧パネル29を支柱Eに取り付ける場合、図8に示すように、支柱Eの伝達部材12の片に形成した穴12aにボルト,ナット26によってブラケット31を取り付け、該ブラケット31に化粧パネル29を取り付けることが可能である。またコーナーパネル30も同様にして支柱Eに取り付けることが可能である。
また化粧パネル29は軽量であることから、必ずしも直接支柱Eに取り付ける必要はなく、受け梁21のウエブ、或いは下フランジに図示しないステーを取り付けておき、このステーによって化粧パネル29を取り付けるように構成することも可能である。
前述の例では、引抜き防止部材13を含む支柱Eを、現場打ちコンクリートによって構成した基礎梁1に埋設して構成したが、必ずしも支柱Eを基礎梁1に埋設する必要はなく、支柱Eを基礎梁1の天端1aに載置して一体的に取り付けても良い。
例えば、第2の構成例に係る基礎B(図3,4参照)に示すように、基礎梁1に於ける支柱Eを取り付ける部位には、予め基礎梁1の低部にベースプレート32が配置され、該ベースプレート32に一端が取り付けられると共に他端が基礎梁1を高さ方向に貫通して突出したアンカーボルト3が埋設されている。そしてアンカーボルト3に支柱Eの伝達部材12に溶接したプレート状の引抜き防止部材13が締結されることで、支柱Eは基礎梁1に一体的に取り付けられている。
従って、支柱Eに垂直力や水平力が作用した場合であっても、これらの力はアンカーボルト3,ベースプレート32を介して基礎梁1に伝達されて支持され、且つこれらの力によって基礎梁1が破壊したり、支柱Eが引き抜かれたり或いは倒れることがない。
A,B 基礎
C 土台
D 柱
E 支柱
F 脚部
1 基礎梁
1a,4a,5a 天端
2 鉄筋
3 アンカーボルト
4 フーチング部
5 ベタ基礎部
6 横鉄筋
7 外壁パネル
8 床パネル
11 天板
11a ボルト穴
12 伝達部材
12a 穴
13 引抜き防止部材
14 接続板
21 受け梁
22 下地梁
23 PC板
2a 鉄筋籠
2b,2d 縦筋
2c,2e 帯筋
25 プレート
26 ボルト,ナット
27 受け梁支持部材
27a フランジ
27b スチフナ
28 埋込ボルト
29 化粧パネル
30 コーナーパネル
31 ブラケット
32 ベースプレート
C 土台
D 柱
E 支柱
F 脚部
1 基礎梁
1a,4a,5a 天端
2 鉄筋
3 アンカーボルト
4 フーチング部
5 ベタ基礎部
6 横鉄筋
7 外壁パネル
8 床パネル
11 天板
11a ボルト穴
12 伝達部材
12a 穴
13 引抜き防止部材
14 接続板
21 受け梁
22 下地梁
23 PC板
2a 鉄筋籠
2b,2d 縦筋
2c,2e 帯筋
25 プレート
26 ボルト,ナット
27 受け梁支持部材
27a フランジ
27b スチフナ
28 埋込ボルト
29 化粧パネル
30 コーナーパネル
31 ブラケット
32 ベースプレート
Claims (2)
- 予め断面が四角形のコンクリート基礎梁の幅寸法を標準的な値に設定し、
該基礎梁のみでは必要な基礎の設置面積が得られない場合、該基礎梁の幅を不変として当該基礎梁に連続するフーチング部とベタ基礎部のいずれか一方若しくは両方を形成することで当該地耐力に対応し得る接地面積を得る
ことを特徴とする建物の基礎の設計方法。 - 前記コンクリート基礎梁の天端とフーチング部の天端又はベタ基礎の底盤の天端を同一水平面に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の建物の基礎の設計方法。
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