図1は、本発明に係る眼科装置10の外観構成の一例を示す模式的な斜視図である。図2は、被検者側から見た眼科装置10を示す正面図であり、図3は、側方から見た眼科装置10を示す側面図である。図4は、眼科装置10におけるコントロールレバー13の傾倒操作に対する眼特性測定機構31の移動制御を説明するためのブロック図である。図5は、コントロールレバー機構20を示す模式的な斜視図である。
眼科装置10は、複数の種類の検査を行うことができる複合型の眼科装置であり、図1ないし図3に示すように、基台11とその上方に設けられた装置本体12とを備える。基台11には、一方側にコントロールレバー13と操作スイッチ14とが設けられ、他方側に顎受け15と額当て16とが設けられている。装置本体12には、コントロールレバー13および操作スイッチ14が設けられた側の面にディスプレイ17が設けられている。
この眼科装置10では、被検者が顎受け15に顎を載置しつつ額当て16に額を当接させて装置本体12に対峙した状態で、被検眼E(図3参照)の検査、観察、撮影等を行うものとされている。このため、顎受け15と額当て16とは、眼科装置10において、被検者の顔を保持する保持部として機能する。
コントロールレバー13は、検者(オペレータ)が、後述するように移動可能とされた装置本体12の移動(後述する眼特性測定機構31の位置調整)のため等に操作する。この操作については、後に詳述する。操作スイッチ14は、顎受け15や額当て16の位置調整のため等に操作される。
この眼科装置10では、基本的に、検者がコントロールレバー13や操作スイッチ14が設けられている側に位置して、顎受け15および額当て16に保持された被検者の被検眼E(図3参照)の各種検査を行う。なお、被検者を開瞼させる場合等は、検者が眼科装置10の側面に位置する場合もある。ここで、以下および各図面では、垂直方向を上下方向(矢印Y参照)とし、その上下方向に直交しつつ検者と被検者とが正対する方向を前後方向(矢印Z参照)とし、上下方向および前後方向に直交する方向を左右方向(矢印X参照)とする。
基台11には、本体駆動機構18と制御機構19とコントロールレバー機構20(図4参照)と、図示は略すが電源回路等とが収容されている。基台11は、その本体駆動機構18(図4参照)を介して装置本体12を3次元的にすなわち上下、前後、左右方向に移動可能に保持しており、装置本体12に収容された眼特性測定機構31を電気的に移動させる移動機構として機能する。この本体駆動機構18は、図4に示すように、左右方向(図1等の矢印X参照)への移動のための第1駆動部21と、前後方向(図1等の矢印Z参照)への移動のための第2駆動部22と、上下方向(図1等の矢印Y参照)への移動のための第3駆動部23と、制御機構19からの制御指令に応じて各駆動部21、22、23を駆動する駆動回路部24と、を有する。この各駆動部21、22、23は、図示は略すがモータの駆動力を利用して基台11に対して装置本体12を移動させるものであり、駆動回路部24により移動量と移動速度とが調整可能とされている。この本体駆動機構18は、従来の構成と同様であることから、詳細な説明は省略する。本体駆動機構18は、後述するように眼特性測定機構31を用いて被検眼Eの測定を行うために、顎受け15および額当て16に保持された被検者に適合する位置へと装置本体12を基台11に対して移動させる。
制御機構19は、制御部25と記憶部26と本体位置検出部34とを有する。この制御部25(制御機構19)は、記憶部26に格納された制御プログラムや各種データ等を適宜読み込んで、後述する眼特性測定機構31による測定(測定制御)、コントロールレバー機構20(コントロールレバー13および後述する押圧スイッチ30)に為された操作の判別(レバー動作検出)、コントロールレバー機構20(コントロールレバー13および後述する押圧スイッチ30)に為された操作に対する各種移動の切り換え(制御切換判断)、本体駆動機構18への各種移動の指令(駆動制御)、およびディスプレイ17の表示とその画像内での位置判断(画像表示制御)等を統括的に制御する。また、制御部25(制御機構19)は、本体位置検出部34からの検出信号に基づいて基台11に対する装置本体12(眼特性測定機構31)の位置情報を取得可能とされている。この本体位置検出部34は、基台11上での移動可能とされている領域における装置本体12の位置を検出するものであってもよく、装置本体12が後述する禁止領域Ap(図10参照)に入っている否かを判別するものであってもよい。
コントロールレバー機構20は、図5に示すように、コントロールレバー13への傾倒操作および回転操作により、装置本体12の駆動方向、駆動量、駆動速度を指示するものであり、コントロールレバー13(図1参照)に為された傾倒操作および回転操作を制御機構19の制御部25へと送信する。すなわち、コントロールレバー13が前後方向(矢印F、B参照)に傾倒されると装置本体12を被検眼E(被検者)に対して接近/離間させる(図1の矢印Z参照)指示となり、コントロールレバー13が左右方向(矢印L、R参照)に傾倒されると装置本体12を被検眼Eの眼幅方向に移動させる(図1の矢印X参照)指示となり、コントロールレバー13が左右回り方向(矢印U、D参照)に回転されると装置本体12を上下方向に移動させる(図1の矢印Y参照)指示となる。このため、検者は、後述するように、コントロールレバー13を傾倒操作および回転操作することにより、眼特性測定機構31を用いて被検眼Eの測定を行うべく、顎受け15および額当て16に保持された被検者に適合する位置へと装置本体12(眼特性測定機構31)を基台11に対して三次元方向に移動させることができる。
このコントロールレバー機構20は、図4および図5に示すように、コントロールレバー13の左右方向(矢印L、R参照)への傾倒角度を検出する第1ポテンショメータ27と、コントロールレバー13の前後方向(矢印F、B参照)への傾倒角度を検出する第2ポテンショメータ28と、コントロールレバー13の左右回り方向(矢印U、D参照)への回転角度を検出するロータリーエンコーダー29とを有する。第1ポテンショメータ27は、図示は略すがコントロールレバー13の左右方向への傾倒のための回転軸に連結されており、左右いずれかの傾倒方向とその傾倒角度とを検出して制御部25へと送信する。また、第2ポテンショメータ28は、図示は略すがコントロールレバー13の前後方向への傾倒のための回転軸に連結されており、前後いずれかの傾倒方向とその傾倒角度とを検出して制御部25へと送信する。ロータリーエンコーダー29は、図示は略すがコントロールレバー13の左右回り方向への回転のための回転軸に連結されており、左右いずれかの回転方向とその回転角度とを検出して制御部25へと送信する。
また、コントロールレバー機構20では、図1、図3および図5に示すように、コントロールレバー13の先端面に押圧スイッチ30が設けられている。コントロールレバー機構20は、上記したコントロールレバー13への傾倒操作および回転操作による装置本体12の駆動方向、駆動量、駆動速度を指示に加えて、押圧スイッチ30への押圧操作により測定動作の実行を指示するものであり、図4に示すように、押圧スイッチ30に為された押圧操作を制御機構19の制御部25へと送信する。このことから、実施例1では、押圧スイッチ30が操作部として機能する。このため、検者は、後述するように、自らのコントロールレバー13への傾倒操作および回転操作により、基台11に対して顎受け15および額当て16に保持された被検者に適合する位置へと装置本体12(眼特性測定機構31)を三次元方向に移動させることができるとともに、装置本体12の眼特性測定機構31により被検眼E(図3等参照)の眼特性測定を実行させることができる。なお、実施例1では、制御機構19の制御部25は、コントロールレバー機構20において、押圧スイッチ30が押圧操作によりON状態とされた際(電気的な断続操作を検出した際)、そのON状態とされた時点におけるコントロールレバー13の傾倒角度θを関連付けて、制御機構19の記憶部26に格納する。
さらに、コントロールレバー機構20では、コントロールレバー13が傾倒された際、そのコントロールレバー13が手放されると(付勢力が解除されると)、コントロールレバー13を元の状態(X軸方向およびZ軸方向への傾倒角度がともに0度の状態)に戻るものとされている。このようなコントロールレバー13の元の状態への復帰の構造は、従来のものと同様であることから、詳細な説明は省略する。
このコントロールレバー機構20により移動の操作が為される装置本体12にディスプレイ17が設けられている(図1等参照)。ディスプレイ17は、図1および図3に示すように、コントロールレバー13や操作スイッチ14が設けられている側、すなわち検者が位置する側に配設されている。このディスプレイ17には、図4に示すように、制御機構19の制御部25の制御下で、眼特性測定機構31からの画像データに基づく被検眼Eの前眼部像等の画像(図7参照)や、眼特性測定機構31からの各種検査情報等(検者情報、検査条件、検査結果等)が表示される。また、ディスプレイ17は、実施例1では、タッチパネルとされており、制御部25の制御下で、眼科装置10における各種動作のためのソフトウェアキーが表示され、当該ソフトウェアキーの操作により被検眼Eに対するアライメント、各種検査条件の設定、およびディスプレイ17の調整等の各種動作の実行操作が可能とされている。
この操作スイッチ14やディスプレイ17上のソフトウェアキーにアライメントの実行のための操作が為されると、制御機構19の制御部25が本体駆動機構18および眼特性測定機構31に対して制御指令を送信することにより、被検眼Eに対するアライメントが自動的に行われる。この各種検査の測定の際のオートアライメントは、顎受け15および額当て16に保持された被検者すなわち基台11に対して装置本体12を、本体駆動機構18が前後方向(矢印Z参照)、上下方向(矢印Y参照)および左右方向(矢印X参照)に移動させることにより行う。このオートアライメントについては、従来の構成および動作と同様であることから、詳細な説明は省略する。
眼科装置10は、眼特性測定を行うことが可能とされており、その測定のための眼特性測定部としての眼特性測定機構31(図4参照)が装置本体12に収容されている。この眼特性測定機構31は、実施例1では、図示は略すが、波面収差を測定する波面センサ光学系と、被検眼Eの屈折状態を他覚的に(被検者の感覚(=自覚)によらずに)測定するレフラクトメータ光学系と、角膜に同心状のプラチドリング像を投影面31a(図2参照)から投影するプラチド光学系と、が同一の測定光軸とされて構成されている。この眼特性測定機構31は、従来の構成と同様であることから、詳細な説明は省略する。
また、眼特性測定機構31は、図4に示すように、波面収差の測定のための波面撮影用カメラ32および被検眼Eの前眼部を観察するための前眼部撮影用カメラ33を有し、各カメラで取得した各画像データを制御機構19の制御部25へと出力する。この前眼部撮影用カメラ33からの画像データに基づいて、ディスプレイ17には、制御機構19の制御部25の制御下で、被検眼E(の前眼部)の画像がリアルタイムで表示される(図7参照)。
なお、本発明に係る眼科装置に搭載される眼特性測定機構としては、取得した被検眼Eの画像において、被検眼Eの任意の位置(例えば、中心位置)に眼特性測定部の測定光軸を合わせるために、検者がコントロールレバー13を用いて位置調整(アライメント)を行うものであれば、視力検査、角膜厚検査、角膜トポグラフィ検査、色覚検査、視野検査、前眼部撮影、角膜内皮撮影、眼底撮影、OCT(Optical Coherence Tomography)検査、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)検査、超音波検査、放射線検査等であってもよく、実施例1に限定されるものではない。
この眼科装置10では、上述したように、眼特性測定機構31での測定を行うために、ディスプレイ17にリアルタイムで表示された被検眼Eの画像を見ながらコントロールレバー13および押圧スイッチ30を操作することにより、被検眼Eに対する眼特性測定機構31の位置関係を調整するとともに、眼特性測定機構31による眼特性測定を実行することが可能とされている。これについて以下で説明する。
図6は、制御機構19の制御部25におけるコントロールレバー13および押圧スイッチ30に為された操作に対する装置本体12の移動制御処理の内容の一例を示すフローチャートである。図7は、ディスプレイ17に表示された被検眼Eの画像を示す模式図である。図8は、実施例1での移動制御に用いるマップの概念を示す説明図であり、図9は、移動制御の一例としての実施例1での移動制御に用いるマップを示す説明図である。図10は、禁止領域を説明するための説明図であり、図11は、報知手段の一例としての実施例1での報知記号Iを説明するための説明図である。
眼科装置10では、上述したように、被検者が顎受け15に顎を載置しつつ額当て16に額を当接させて装置本体12に対峙した状態で測定を行う。このとき、ディスプレイ17には、図7に示すように、制御部25の制御下で、眼特性測定機構31の前眼部撮影用カメラ33で取得した被検眼Eの画像がリアルタイムで表示される。このとき、制御部25は、実施例1では、被検眼Eの画像に重ねて、被検眼Eの中心位置を示す指標(以下では、中心位置Ecと記載する)と、眼特性測定機構31における測定光軸を示す指標(以下では、測定中心Maと記載する)と、を表示させる。
本発明に係る眼科装置10では、基本的に、制御機構19の制御部25が、コントロールレバー13の傾倒角度に応じて、詳細にはコントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlを超えるものであるか否かを判断することにより、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御を切り換えるものである。以下、この制御機構19の制御部25におけるコントロールレバー13に為された操作に対する装置本体12の移動制御処理の一例である図6のフローチャートの各ステップについて図7ないし図11を用いて説明する。なお、以下の説明では、制御部25における移動制御処理において、コントロールレバー13への回転操作に対する処理は従来と同様であることから、理解容易のため省略している。また、コントロールレバー13への傾倒操作に対する制御部25での移動制御処理は、上述したように、前後方向(図1等の矢印F、B参照)と左右方向(図1等の矢印L、R参照)とを複合的に判断して行うものであるが、前後方向と左右方向とをそれぞれ判断処理した後に、その処理に基づく両方向への移動を同時に行うことから、以下では理解容易のため一方の方向に対する移動制御処理のみについて説明する。なお、実施例1では、傾倒角度とは、元の状態(中立位置(角度0))のコントロールレバー13(その中心線)に対して、傾倒された状態のコントロールレバー13(その中心線)が為す角度のことをいう。また、コントロールレバー13に対して前後方向および左右方向へと為された傾倒操作を検出する第1ポテンショメータ27および第2ポテンショメータ28が、傾倒方向とその傾倒角度とを検出するものとされていることから、傾倒角度としては、傾倒方向に拘らず0度から最大傾倒角度(コントロールレバー13を傾倒させることのできる限界角度)の間で正(プラス)側の値として検出される。
ステップS1では、画像データを取得し、ステップS2へ進む。このステップS1では、眼特性測定機構31の前眼部撮影用カメラ33で取得した被検眼Eの画像データを取得するとともに、図7に示すように、その被検眼Eの画像をリアルタイムでディスプレイ17に表示させる。また、取得した画像データに基づいて、被検眼Eの中心位置Ecを検出し、その中心位置Ecを被検眼Eの画像に重ねて表示させる。さらに、測定中心Maを被検眼Eの画像に重ねて表示させる。
ステップS2では、ステップS1での画像データの取得に続き、コントロールレバー13に為された傾倒角度を検出し、ステップS3へ進む。このステップS2では、コントロールレバー機構20(第1ポテンショメータ27および第2ポテンショメータ28)からの検出信号に基づいて、コントロールレバー13に為された傾倒方向(X軸方向またはZ軸方向において傾倒されていない状態を中心(傾倒角度0度)として一方をプラス側、他方をマイナス側とする)と傾倒角度とを取得し、傾倒方向に関連付けた傾倒角度θとして格納する。この傾倒角度θのデータは、例えば、制御機構19の記憶部26に格納される。
ステップS3では、ステップS2での傾倒角度θの検出に続き、高速制御モードであるか否かを判断し、Yesの場合はステップS11へ進み、Noの場合はステップS4へ進む。このステップS3では、後述する高速制御モードでの眼特性測定機構31(装置本体12)の移動制御(ステップS9参照)を実行しているか否かを判断している。
ステップS4では、ステップS3での高速制御モードではないとの判断、あるいは、ステップS11での押圧スイッチ30がON状態ではないとの判断、あるいは、ステップS12での傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さいとの判断、あるいは、ステップS13での装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っているとの判断、に続き、傾倒角度θに応じた移動速度を演算して、その移動速度で傾倒方向側への眼特性測定機構31(装置本体12)の移動を開始して、ステップS5へ進む(移動制御部)。このステップS4では、図9(図8)に示すコントロールレバー13の傾倒角度に対する眼特性測定機構31の移動速度を示すマップを用いて、傾倒角度θにおける移動速度を演算する。その後、演算した移動速度で傾倒方向側へと眼特性測定機構31を移動させる指令を本体駆動機構18へ向けて送信し、その本体駆動機構18により眼特性測定機構31が移動される。この演算した移動速度での眼特性測定機構31の移動は、コントロールレバー13の傾倒角度が0度(元の状態)とされるまで継続される(図9(図8)のマップ参照)。このコントロールレバー13の傾倒角度に対する眼特性測定機構31の移動速度を示すマップの基本的な概念について図8を用いて説明する。このマップは、図8に示すように、コントロールレバー13の元の状態(中立位置)を基準とする傾倒角度θに対する、装置本体12すなわち眼特性測定機構31を移動させるための本体駆動機構18における第1駆動部21および第2駆動部22に用いられているモータ(図示せず)の回転速度、換言するとコントロールレバー13の傾倒角度と眼特性測定機構31の移動速度との関係を示したものである。詳細には、コントロールレバー13の傾倒角度θに対して、第1駆動部21および第2駆動部22に用いられているモータ(図示せず)に付与する駆動電圧のパルス周波数ppsの関係を示したものである。この図8に示すマップでは、コントロールレバー13の最大傾倒角度が20度であるものとし、コントロールレバー13の傾倒角度とモータスピードとを比例関係とし、かつコントロールレバー13が20度(最大傾倒角度)のときにモータスピードを7000ppsとするように設定されている(以下では、この特性線を用いた移動制御を通常速度制御といい、この通常速度制御により眼特性測定機構31が移動されていることを通常制御モードと言う)。また、このマップでは、傾倒角度で見て、角度閾値θlよりも大きな値に対して、通常制御モードの特性線よりも速いモータスピードとする特性線(一点鎖線参照)、詳細にはコントロールレバー13の傾倒角度に拘らずモータスピードを30000ppsとする特性線(一点鎖線参照)が設定されている(以下では、この特性線を用いた移動制御を高速速度制御といい、この高速速度制御により眼特性測定機構31が移動されていることを高速制御モードと言う)。この一点鎖線の特性線は、後述するように、高速制御モードへと変更した場合に用いるものである。なお、高速制御モードの特性線は、等しい傾倒角度で見て通常制御モードの特性線よりも速いモータスピードとするものであればよく、例えば、二点鎖線で示すように、コントロールレバー13の傾倒角度とモータスピードとを比例関係とし、かつコントロールレバー13が最大傾倒角度のときにモータスピードを30000ppsとするように設定するものであってもよい。実施例1では、傾倒角度θに応じた移動速度の演算に、図9に示すように、角度閾値θlが19度に設定されたマップを用いている。この図9のマップでは、第1駆動部21および第2駆動部22に用いられているモータ(図示せず)の出力特性を考慮して、コントロールレバー13の傾倒角度に対するモータスピードの変化が階段状となるように、すなわち0度から最大傾倒角度の間を複数の角度範囲に分割し、かつ各角度範囲に対応するモータスピードが段階的に増加して設定されている。また、図9のマップでは、角度閾値θlである19度から最大傾倒角度である20度の間において、モータスピードを7000ppsから30000ppsへと増加させる高速制御モードの特性線(一点鎖線参照)が設定されている。このステップS4では、通常制御モードでの移動制御を開始する、すなわち図9のマップにおける通常制御モードの特性線(実線参照)を用いて傾倒角度θに応じた移動速度を演算し、その移動速度で傾倒方向側へと眼特性測定機構31(装置本体12)を移動させる通常速度制御を開始する。なお、このマップは、制御機構19において、記憶部26に格納されており、制御部25は、記憶部26から適宜読み出すことにより上記演算を行う。
ステップS5では、ステップS4での眼特性測定機構31(装置本体12)の移動制御の開始に続き、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きいか否かを判断し、Yesの場合はステップS6へ進み、Noの場合はステップS14へ進む。このステップS5では、押圧スイッチ30における機能の切り換えの判断のために、コントロールレバー13が、傾倒方向に拘らず、角度閾値θlを超えて傾倒されているか否かを判断している。また、ステップS5では、後述するようにディスプレイ17に報知記号I(図11参照)を表示させていてNoと判断した場合(後述するステップS7を経てステップS1に戻った後にステップS5へと進んできた場合)、この報知記号Iの表示を止める。
ステップS6では、ステップS5での傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きいとの判断に続き、装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っているか否かを判断し、Yesの場合はステップS10へ進み、Noの場合はステップS7へ進む。このステップS6では、本体位置検出部34からの信号に基づいて、眼特性測定機構31を収容する装置本体12の基台11上での位置が禁止領域Ap(図10参照)であるか否かを判断している。また、ステップS6では、後述するようにディスプレイ17に報知記号I(図11参照)を表示させていてYesと判断した場合(後述するステップS7を経てステップS1に戻った後にステップS6へと進んできた場合)、この報知記号Iの表示を止める。禁止領域Apは、実施例1では、図10に示すように、基台11上をX−Z平面で見て装置本体12の相対的な移動が可能とされている領域(以下、移動可能領域Afという)において、被検者側(Z軸方向プラス側)の端部(Z軸方向プラス側の移動限界位置)から検者側(Z軸方向マイナス側)へ10mmの幅の帯状の領域に設定されている。ここで、移動可能領域Afは、実施例1では、X軸方向の移動可能範囲とZ軸方向の移動可能範囲とから為る矩形状の領域とされており、図10では、装置本体12の基準位置がX−Z平面上で移動可能とされた領域として模式的に示している。禁止領域Apは、実施例1では、顎受け15に顎を載置しつつ額当て16に額を当接させて装置本体12に対峙した状態の被検者に、圧迫感を与えてしまう近接位置での後述する高速制御モードによる装置本体12(眼特性測定機構31)の移動を防止する観点で設定されている。このことから、禁止領域は、装置本体12における被検者に対峙する面の形状に応じてZ軸方向で見た幅を変化させて設定してもよい。なお、装置本体12が禁止領域Apに入っている場合、ディスプレイ17にその旨を表示する等のその旨を報知する制御を行うものであってもよい。
ステップS7では、ステップS6での装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っていないとの判断に続き、高速制御モードへの切換可能な旨を報知する制御(報知制御)を実行し、ステップS8へ進む(報知制御部)。このステップS7は、押圧スイッチ30を押圧操作することにより、通常制御モードから高速制御モードへと変更可能であることを報知する報知制御を実行する。この報知制御は、実施例1では、図11に示すように、ディスプレイ17において、リアルタイムで表示させている前眼部撮影用カメラ33により取得された被検眼Eの画像に重ねて、報知記号Iを表示させる。なお、報知制御は、押圧スイッチ30を押圧操作することにより、通常制御モード(通常速度制御)から高速制御モード(高速速度制御)へと変更可能であること(コントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きいこと)を検者に認識させるべく報知するものであれば、例えば、文字による表示であってもよく、記号による表示であってもよく、少なくとも一部の画面の色を変化させる表示であってもよい。また、押圧スイッチ30を押圧操作することにより、通常制御モードから高速制御モードへと変更可能であることを検者に認識させるべく報知するものであれば、その旨の表示に換えて、音や振動等を利用するものであってもよい。
ステップS8では、ステップS7での報知制御の実行に続き、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたか否かを判断し、Yesの場合はステップS9へ進み、Noの場合はステップS10へ進む(制御切換判断部)。このステップS8では、押圧スイッチ30がON状態であるか否かを判断するとともに、ON状態である場合には傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい(大きく傾倒している)ときに押圧操作されることによりON状態とされたものであるか否かを判断し、これらの2つの判断を満たすものであった場合にYesと判断し、それ以外の場合はNoと判断する。これは、押圧スイッチ30が押圧されたまま(ON状態のまま)、コントロールレバー13が傾倒操作される場面が想定されることから、実施例1では、押圧スイッチ30がOFF状態からON状態へと押圧操作された時点を基準として、コントロールレバー13の傾倒角度θに応じた押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御の切り換えを行っていることによる。
ステップS9では、ステップS8での傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたとの判断、あるいは、ステップS13での装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っていないとの判断(高速制御モードを継続するとの判断)、に続き、高速制御モードによる移動制御を開始して、ステップS1へ戻る。このステップS9では、図9のマップにおける高速制御モードの特性線(一点鎖線参照)を用いて傾倒角度θに応じた移動速度を演算し、その移動速度で傾倒方向側へと眼特性測定機構31(装置本体12)を移動させる高速速度制御を開始する。すなわち、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下では、押圧スイッチ30が高速制御モードによる移動制御の実行を指示するための操作部として機能するように、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御を切り換えている。また、ステップS9では、ディスプレイ17の被検眼Eの画像に重ねて報知記号Iを表示させている場合(ステップS7参照)には、この報知記号Iの表示を止める。
ステップS10では、ステップS6での装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っているとの判断、あるいは、ステップS8での傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されてはいないとの判断、に続き、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下において押圧操作されることにより押圧スイッチ30がON状態とされているときのみ眼特性測定を実行し、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続してステップS1へ戻る。このステップS10では、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下において、高速制御モードに変更しないと判断した場面における制御であることから、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続する。これに加えて、ステップS10では、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下において押圧操作されることにより押圧スイッチ30がON状態とされているときには、眼特性測定機構31による眼特性測定を実行する(測定制御)。これは、後述するように押圧スイッチ30への押圧操作が、眼特性測定機構31による眼特性測定の実行のために為されたもの(ステップS14およびステップS15参照)であり、その押圧操作によるON状態が維持されていることによる。また、ステップS10では、押圧スイッチ30がON状態とされていないとき、および傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下において押圧操作されることにより押圧スイッチ30がON状態とされているときには、眼特性測定機構31による眼特性測定を実行しない。これは、前者の場合、押圧スイッチ30がON状態ではないことから眼特性測定の実行が要求されておらず、後者の場合、押圧スイッチ30が押圧操作されたもののステップS6において装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っていると判断された場面であることによる。
ステップS11では、ステップS3での高速制御モードであるとの判断に続き、押圧スイッチ30がON状態であるか否かを判断し、Yesの場合はステップS12へ進み、Noの場合はステップS4へ進む。このステップS11では、押圧スイッチ30の状態から高速制御モードを継続するか否かを判断している。
ステップS12では、ステップS11での押圧スイッチ30がON状態であるとの判断に続き、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きいか否かを判断し、Yesの場合はステップS13へ進み、Noの場合はステップS4へ進む。このステップS12では、コントロールレバー13の傾倒状態から高速制御モードを継続するか否かを判断している。
ステップS13では、ステップS12での傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きいとの判断に続き、本体位置検出部34からの信号に基づいて装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っているか否かを判断し、Yesの場合はステップS4へ進み、Noの場合はステップS9へ進む。このステップS13では、装置本体12の位置から高速制御モードを継続するか否かを判断している。
ステップS14では、ステップS5での傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さいとの判断に続き、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたか否かを判断し、Yesの場合は通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続してステップS15へ進み、Noの場合は通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続してステップS1へ戻る(制御切換判断部)。このステップS14では、押圧スイッチ30がON状態であるか否かを判断するとともに、ON状態である場合には傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい(小さく傾倒している)ときに押圧操作されることによりON状態とされたものであるか否かを判断し、これらの2つの判断を満たすものであった場合にYesと判断し、それ以外の場合はNoと判断する。これは、上述したように、実施例1では、押圧スイッチ30がOFF状態からON状態へと押圧操作された時点を基準として、コントロールレバー13の傾倒角度θに応じた押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御の切り換えを行っていることによる。
ステップS15では、ステップS14での傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたとの判断に続き、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続しつつ眼特性測定を実行してステップS1へ戻る。このステップS15では、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下であることから、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続するとともに、眼特性測定機構31による眼特性測定を実行する(測定制御)。すなわち、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下では、押圧スイッチ30が眼特性測定機構31による眼特性測定の実行を指示するための操作部として機能するように、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御を切り換えている。
次に、作用を説明する。
実施例1の眼科装置10におけるコントロールレバー13および押圧スイッチ30の操作に対する制御の「基本的な概念とその作用」を説明した後、「小さな傾倒角度での制御作用」と、「大きな傾倒角度での制御作用」と、に分けて説明する。図12は、コントロールレバー13の傾倒角度θに応じた押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御の切り換えの基本的な概念を説明するための説明図である。図13は、測定中心位置が被検眼Eの画像上を相対的に移動した様子を示す説明図である。
「基本的な概念とその作用」
本発明に係る眼科装置10では、制御機構19の制御部25が、コントロールレバー13の傾倒角度に応じて、詳細にはコントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlを超えるものであるか否かを判断することにより、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御を切り換えるものである。
すなわち、制御機構19の制御部25は、図12に示すように、基本的には、コントロールレバー13への傾倒操作に応じて通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御(通常速度制御)を行う(ステップS4参照)。ここで、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい場合、押圧スイッチ30が押圧操作されてON状態とされると、眼特性測定機構31による眼特性測定が実行される(ステップS14およびステップS15参照)。また、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい場合、押圧スイッチ30が押圧操作されてON状態とされると、高速制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御(高速速度制御)を行う(ステップS9参照)。
このため、検者は、コントロールレバー13を傾倒操作することにより、眼特性測定機構31(装置本体12)の位置調整を行うことができるとともに、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい場合には、押圧スイッチ30を押圧操作することで眼特性測定を実行させることができ、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい場合には、押圧スイッチ30を押圧操作することで装置本体12(眼特性測定機構31)を高速で移動させることができる。よって、前述した特許文献2の眼科装置のようにコントロールレバー13の傾倒操作の速度を気にする必要がないことからコントロールレバー13の傾倒操作が容易であるとともに、眼特性測定機構31(装置本体12)を位置調整のために移動させる場合と眼特性測定機構31(装置本体12)を高速で移動させる場合とを容易に変更することができる。また、前述した特許文献2の眼科装置のように速度調整スイッチで粗動操作での移動速度を変更する場合、速度調整スイッチの押圧操作を何度も繰り返したり、速度調整スイッチを回転操作したりすることが考えられるが、押圧スイッチ30は、眼特性測定を実行させる指令または移動制御のモード変更のために一度押圧するだけであることから、上記した操作を容易に行うことができる。特に、実施例1では、コントロールレバー13の先端面に押圧スイッチ30が設けられていることから、検者は、上記した操作を片手で容易に行うことができる。
「小さな傾倒角度での制御作用」
小さな傾倒角度での制御作用とは、コントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下におけるコントロールレバー13への傾倒操作に対する眼特性測定機構31の移動制御と、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御と、の作用をいう。制御機構19の制御部25は、コントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下では、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御を、眼特性測定機構31による眼特性測定の実行の指示に切り換える。
すなわち、コントロールレバー13が傾倒操作され、その傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下では、図6のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進み、ステップS4にて通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を開始し、ステップS5→ステップS14へと進み、ステップS14からステップS15を経てステップS1へ戻るまたは直接ステップS1へと戻ることにより、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続する。このとき、押圧スイッチ30が押圧操作されると、ステップS14にて、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたと判断し、ステップS15へと進んで眼特性測定機構31による眼特性測定を実行する。ここで、押圧スイッチ30が押圧操作によりON状態が維持されていると、ステップS15からステップS1へと戻り、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS14→ステップS15へと進んで、再び眼特性測定機構31による眼特性測定を実行するので、一定のタイミングで眼特性測定機構31による眼特性測定を繰り返す。
また、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下における押圧操作により押圧スイッチ30のON状態が維持されている場面において、コントロールレバー13が傾倒操作されて傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さくなった場合、高速制御モードであるとステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS11→ステップS12→ステップS4→ステップS5→ステップS14へと進み、通常制御モードであるとステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS14へと進んで、ステップS14にて傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたものではないと判断し、直接ステップS1へと戻ることにより、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続する。すなわち、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下での押圧操作により押圧スイッチ30のON状態が維持されたままコントロールレバー13が傾倒操作されて傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さくなった場合、押圧スイッチ30への押圧操作が一度解除される(OFF状態とされる)までは、眼特性測定機構31による眼特性測定を実行することなく、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続する。換言すると、押圧スイッチ30への押圧操作が一度解除された(OFF状態とされる)後に、押圧スイッチ30への押圧操作によりON状態とされると、ステップS14にて、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたと判断することから、ステップS15へと進んで眼特性測定機構31による眼特性測定を実行する。
上記のように、コントロールレバー13が傾倒操作され、その傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下では、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続するとともに、新たに押圧スイッチ30への押圧操作によりON状態とされると、眼特性測定機構31による眼特性測定を実行する。
このため、検者は、図13に示すように、ディスプレイ17に表示された被検眼Eの画像を見ながら、コントロールレバー13を傾倒操作することにより、通常制御モードでの装置本体12すなわち眼特性測定機構31を移動させて位置調整することができるとともに、そのコントロールレバー13の先端面に設けられた押圧スイッチ30を押圧操作することにより、被検眼Eの任意の位置P1、P2で眼特性測定を行うことができる。すなわち、コントロールレバー13への傾倒操作により、被検眼E(被検者)に対する装置本体12(眼特性測定機構31)の位置を調整すると、ディスプレイ17では、眼特性測定機構31の測定光軸である測定中心Maに対して、被検眼Eの画像が移動することとなり、押圧スイッチ30を押圧操作することにより、押圧操作した時点で測定中心Maが位置する個所を眼特性測定することができることから、被検眼Eにおける任意の位置P1、P2で眼特性測定を行うことができる。換言すると、検者は、コントロールレバー13を傾倒操作しているときに押圧スイッチ30を押圧操作すれば眼特性測定を実行させることができるので、位置調整のために眼特性測定機構31(装置本体12)を移動させている場面において、被検眼E上を相対的に移動する測定中心Maが所望の位置となるタイミングを逃すことなく眼特性測定を実行させることができる。このことは、例えば、オートアライメント機能では、被検眼Eの角膜中心に対して眼特性測定機構31のアライメントを行なうことから、当該被検眼Eが円錐角膜や角膜疾患(角膜びらんや角膜潰瘍等)の場合には、正確にオートアライメント機能が働かない(正確にアライメントできない)虞があるが、被検眼Eの任意の位置で眼特性測定を行なうことにより、前記条件であっても適切に測定することを可能とする。
「大きな傾倒角度での制御作用」
大きな傾倒角度での制御作用とは、コントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下におけるコントロールレバー13への傾倒操作に対する眼特性測定機構31の移動制御と、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御と、の作用をいう。制御機構19の制御部25は、コントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下では、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御を、装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を高速制御モードへの変更の指示に切り換える。
すなわち、コントロールレバー13が傾倒操作され、その傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下(高速制御モードではないものとする)では、図6のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進み、ステップS4にて通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を開始し、ステップS5→ステップS6へと進み、ステップS6にて装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っていないとステップS7でディスプレイ17に報知記号Iを表示させてステップS8へと進む。このとき、押圧スイッチ30が押圧操作されると、ステップS8にて傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたと判断し、ステップS9へと進んで高速制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を開始する。ここで、装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っている場合や、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下で押圧スイッチ30が押圧操作されなかった場合には、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を維持する。
また、コントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下で高速制御モードである場合、図6のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS11へと進み、ステップS11にて押圧スイッチ30がON状態ではないとステップS4へと進んで上記した作用と同様となり、ステップS11にて押圧スイッチ30がON状態であるとステップS12→ステップS13へと進み、ステップS13にて装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っているとステップS4へと進んで上記した作用と同様となり、ステップS13にて装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っていないとステップS9へと進み、高速制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続する。
さらに、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下における押圧操作により押圧スイッチ30のON状態が維持されている場面において、コントロールレバー13が傾倒操作されて傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きくなった場合、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6へと進んで、ステップS6にて装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っているとステップS10へと進み、ステップS6にて装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っていないとステップS7でディスプレイ17に報知記号Iを表示させてステップS8へと進み、ステップS8にて傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたものではないと判断してステップS10へと進み、ステップS10にて傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下において押圧操作されることにより押圧スイッチ30がON状態とされていると判断して眼特性測定機構31による眼特性測定を実行する。すなわち、傾倒角度θが角度閾値θlよりも小さい状況下での押圧操作により押圧スイッチ30のON状態が維持されたままコントロールレバー13が傾倒操作されて傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きくなった場合、押圧スイッチ30への押圧操作が一度解除される(OFF状態とされる)までは、高速制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御に変更することなく、通常制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続しつつ眼特性測定機構31による眼特性測定を実行する。換言すると、押圧スイッチ30への押圧操作が一度解除された(OFF状態とされる)後に、押圧スイッチ30への押圧操作によりON状態とされると、ステップS8にて、傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下において押圧スイッチ30が押圧操作されたと判断することから、ステップS9へと進んで高速制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を実行する。
上記のように、コントロールレバー13が傾倒操作され、その傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きい状況下では、新たに押圧スイッチ30への押圧操作によりON状態とされると、高速制御モードでの装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を実行する。
このため、検者は、装置本体12(眼特性測定機構31)を大きく移動させるべくコントロールレバー13を大きく傾倒操作(角度閾値θlを超えた傾倒操作)した際、装置本体12(眼特性測定機構31)の位置調整を行う場合には、コントロールレバー13の傾倒操作のみを行うことで通常制御モードで装置本体12(眼特性測定機構31)を移動させることができ、より早く装置本体12(眼特性測定機構31)を移動させたい場合には、コントロールレバー13の先端面に設けられた押圧スイッチ30を押圧操作することにより、高速制御モードで装置本体12(眼特性測定機構31)を移動(高速で移動)させることができる。すなわち、コントロールレバー13を角度閾値θlよりも大きく傾倒操作すると、検者は、押圧スイッチ30を押圧操作することにより、装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を通常制御モードと高速制御モードとを任意に選択することができ、通常制御モードにおいては角度閾値θlから最大傾倒角度の間でも傾倒角度θを変化させることによりその変化に応じて装置本体12の移動速度を変化させることができる(図8のマップ参照)。特に、上述したように、高速制御モードの特性線を、コントロールレバー13の傾倒角度とモータスピードとを比例関係とすると(図8の二点鎖線および図9の一点鎖線参照)、高速制御モードであっても角度閾値θlから最大傾倒角度の間でも傾倒角度θを変化させることによりその変化に応じて装置本体12の移動速度を変化させることができる。
また、検者は、ディスプレイ17に表示される報知記号I(図9参照)により、押圧スイッチ30の押圧操作で装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を通常制御モードから高速制御モードへと変更可能であることを認識することができる。このため、被検眼Eの画像から眼を離すことなく、コントロールレバー13の傾倒操作により眼特性測定機構31(装置本体12)を移動させることができ、位置調整をより容易なものとすることができる。
さらに、コントロールレバー13が角度閾値θlよりも大きく傾倒操作されると、通常制御モードによる装置本体12(眼特性測定機構31)の移動制御を継続しつつ当該移動制御を通常制御モードから高速制御モードへと変更可能とするものであることから、眼特性測定機構31(装置本体12)の移動を止めることなく適宜高速制御モードへと変更することができるとともに、コントロールレバー13を限界まで傾倒させてしまった場合であっても通常制御モードによる眼特性測定機構31(装置本体12)の移動を維持することもできる。これに対し、前述した特許文献2の眼科装置では、コントロールレバーが限界まで傾倒されると粗動操作とするものであることから、粗動操作とすることを望んでいない場合であってもコントロールレバーが限界傾倒角度に到達してしまうと強制的に粗動操作となってしまうので、コントロールレバーの繊細な傾倒操作が要求されてしまう。また、前述した特許文献2の眼科装置では、コントロールレバーが限界傾倒角度に到達した場合に粗動操作とすることを無効とするスイッチを設けることも記載されているが、このような構成では眼特性測定機構(測定部)の移動を止めてしまうこととなる。
ついで、コントロールレバー13の傾倒角度θが角度閾値θlよりも大きいか否かで、押圧スイッチ30への押圧操作に対する制御を切り換える構成であることから、コントロールレバー13に為された傾倒操作を制御機構19の制御部25へと送信するコントロールレバー機構20の機能をそのまま利用することができるので、制御の切り換えのための新たな部品を設ける必要がない。これに対し、前述した特許文献2の眼科装置では、コントロールレバーが限界まで傾倒操作されたことを検出するための検知部を設ける必要がある。
コントロールレバー13を角度閾値θlよりも大きく傾倒操作された際、ステップS6にて装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っていると判断されると、押圧スイッチ30を押圧操作しても通常制御モードから高速制御モードへと変更することはないので、被検者の近接位置で装置本体12が高速制御モードで移動されることを確実に防止することができ、高速制御モードでの移動に起因して被検者に圧迫感を与えることを防止することができる。ここで、装置本体12が禁止領域Ap(図10参照)に入っている場合には、コントロールレバー13が角度閾値θlよりも大きく傾倒操作されても、ディスプレイ17に報知記号I(図9参照)が表示されることはない(ステップS6からステップS10へと進む)ので、検者が違和感を覚えることもない。
次に、効果を説明する。
実施例1の眼科装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)被検者の顔を固定すべく保持する保持部(15および16)が設けられた基台11に対して前記被検者の被検眼Eを測定するための光学系を備える眼特性測定部(31)を電気的に移動させる移動機構(18)と、前記被検眼Eに対する前記眼特性測定部(31)の位置を調整すべくコントロールレバー13に為された傾倒操作を電気的な信号として出力する電気式のコントロールレバー機構20と、該コントロールレバー機構20からの信号に基づいて前記コントロールレバー13の傾倒角度に応じた前記眼特性測定部(31)の移動速度の制御指令を生成して移動機構(18)へと送信する通常速度制御(ステップS4)を行うとともに、前記被検眼Eの眼特性測定の実行のための制御指令を生成して前記眼特性測定部(31)へと送信する測定制御(ステップS15)を行う制御機構19と、自らに為された断続操作を電気的な信号として該制御機構19へ出力する操作部(30)と、を備える眼科装置10であって、前記制御機構19は、前記コントロールレバー13の傾倒角度が該コントロールレバー13への傾倒操作に対して予め設定された角度閾値θlよりも小さい場合、前記操作部(30)への断続操作を検出すると前記通常速度制御を継続しつつ前記測定制御を行い、前記コントロールレバー13の傾倒角度が前記角度閾値θlよりも大きい場合、前記操作部(30)への断続操作を検出すると前記通常速度制御から該通常速度制御よりも大きな移動速度で前記眼特性測定部(31)を移動させる高速速度制御(ステップS9)へと変更する。このため、搭載された電気式のコントロールレバー機構20のコントロールレバー13による操作性を向上させることができる。
(2)前記制御機構19は、予め設定された前記コントロールレバー13の傾倒角度と前記眼特性測定部(31)の移動速度との対応関係(図8および図9)に基づいて移動速度を設定する。このため、通常速度制御および高速速度制御において、コントロールレバー13への傾倒操作に対して眼特性測定部(31)の移動の態様を一義的なものとすることができ、コントロールレバー13による操作性を向上させることができる。
(3)前記制御機構19は、前記コントロールレバー13の傾倒角度が前記角度閾値θlよりも大きい場合であって、前記操作部(30)への断続操作を検出していないとき、該操作部(30)への断続操作により前記通常速度制御から前記高速速度制御へと変更可能であることを報知する報知制御(ステップS7)を行う。このため、検者は、操作部(30)への断続操作で通常速度制御から高速速度制御へと変更可能であることを認識することができ、コントロールレバー13による操作性を向上させることができる。
(4)前記操作部(30)は、前記コントロールレバー13に設けられ断続操作のために押圧される押圧スイッチ30である。このため、検者は、眼特性測定の実行の指令および通常速度制御から高速速度制御への変更の指令を片手で容易に行うことができる。
(5)前記コントロールレバー機構20では、前記コントロールレバー13が傾倒操作された状態において、該コントロールレバー13への付勢力が解除されると該コントロールレバー13を元の状態へと復帰させる。このため、コントロールレバー13を一度手放すことにより、微調整後の眼特性測定部(31)を基準としてコントロールレバー13を元の状態(傾倒角度0度)からの傾倒により更なる微調整を行うことができる。
(6)前記制御機構19は、前記基台に対する前記眼特性測定部(31)の位置を検出する位置検出部(34)を有し、前記眼特性測定部(31)の位置が予め設定された禁止領域に入っていると、前記コントロールレバー13の傾倒角度が前記角度閾値θlよりも大きい場合に前記操作部(30)への断続操作を検出しても前記通常速度制御から前記高速速度制御への変更を行わない。このため、例えば、禁止領域を眼特性測定部(31)が被検者に近接位置に設定すると、被検者の近接位置で眼特性測定部(31)が高速で移動されることを確実に防止することができ、高速速度制御での移動に起因して被検者に圧迫感を与えることを防止することができる。
なお、上記した実施例1では、禁止領域が設けられていたが、コントロールレバーへの傾倒操作に応じて通常速度制御を実行するとともに、コントロールレバーが角度閾値よりも小さく傾倒されたときは、操作部への断続操作により眼特性測定部による眼特性測定を実行させ、コントロールレバーが角度閾値よりも大きく傾倒されたときは、操作部への断続操作により通常速度制御から高速速度制御へと変更するものであればよく、禁止領域を設けなくてもよい。
また、上記した実施例1では、禁止領域が、移動可能領域Afにおいて装置本体12が被検者に近接する位置に設定されていたが、高速制御モードでの装置本体12の移動制御を制限することが望ましい位置、もしくは高速制御モードでの装置本体12の移動制御が求められない位置に設定されていればよく、実施例1に限定されるものではない。例えば、アライメント位置を中心とする所定の領域では、高速制御モードでの装置本体12の移動制御が求められないことが考えられることから、当該領域を禁止領域としてもよい。このように設定すると、アライメント位置の近傍であるにも拘らず装置本体12を高速で移動させてしまうことを防止することができる。
さらに、上記した実施例1では、コントロールレバー13の傾倒角度に応じて押圧操作(断続操作)に対する制御の切り換えの対象となる操作部として、コントロールレバー機構20のコントロールレバー13の先端面に設けられた押圧スイッチ30が示されていたが、自らに為された断続操作を制御機構19(その制御部25)へと出力するものであって被検者が容易に断続操作可能な個所に設けられていればよく、実施例1に限定されるものではない。
上記した実施例1では、角度閾値θlが19度に設定されていたが、コントロールレバー13の傾倒角度で見て0度から最大傾倒角度の間の任意の値とすることができる。ここで、角度閾値θlは、通常制御モードの特性線を考慮しつつ、眼特性測定機構31(装置本体12)を移動させながら眼特性測定を実行することが求められる移動速度と、高速で眼特性測定機構31(装置本体12)を移動することが求められる傾倒角度θと、を勘案して設定することが望ましい。