JP2010233999A - 血液浄化器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリビニルピロリドンを含む中空糸膜を有する放射線滅菌処理済血液浄化器であって、前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンの動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であり、前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度が80%以上100%未満であり、前記血液浄化器中に溶液を封入後、3ヶ月以上6ヶ月以下の時点における前記溶液中のポリビニルピロリドン濃度が10ppm以下である血液浄化器を提供する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、また、前記中空糸膜が、ポリビニルピロリドンとポリスルホン系ポリマーとからなり、前記中空糸膜が、膜内表面から膜外表面に向かって連続的に孔径が大きくなる構造を有する、前記の血液浄化器に関する。
本発明は、また、前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンが、前記血液浄化器の開口端から、架橋度調整剤溶液を中空糸膜内に注入し、次いで該架橋度調整剤溶液を中空糸膜内から取り除き、その後中空糸膜に放射線照射することによって架橋度を80%以上100%未満にしたものである、前記の血液浄化器に関する。
本発明は、また、前記放射線照射時に血液浄化器内の酸素濃度を0.01体積%以上10体積%以下にすることによってポリビニルピロリドンの架橋度を80%以上100%未満にした、前記の血液浄化器に関する。
本発明は、また、前記中空糸膜が、動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であるポリビニルピロリドンのコーティング層を内部に有する、前記の血液浄化器に関する。
本発明は、また、アルブミンの透過率が0.35%以下である、前記の血液浄化器に関する。
本発明は、また、前記血液浄化器の容器がポリプロピレン系ポリマーからなる、前記の血液浄化器に関する。
本発明は、また、前記中空糸膜の膜厚が25μm以上40μm以下である、前記の血液浄化器に関する。
本発明は、また、前記中空糸膜が、膜厚が35μm以下であって、破断強度が7MPa以上、且つ破断伸度が65%以上であるか、又は、膜厚が30μm以下であって、破断強度が7.5MPa以上、且つ破断伸度が70%以上である、前記の血液浄化器に関する。
本発明は、さらに、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度が80%以上100%未満である、ポリビニルピロリドンを含む中空糸膜を有する放射線滅菌処理済血液浄化器の製造方法であって、動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であるポリビニルピロリドンを含む溶液を用意する工程と、前記ポリビニルピロリドンを含む溶液を用いて中空糸膜を製造する工程と、前記中空糸膜の開口端から、ポリビニルピロリドンを含むコーティング溶液及び架橋度調整剤溶液を中空糸膜内に注入し、次いでこれらの溶液を中空糸膜内から取り除き、その後中空糸膜に放射線照射する工程と、を含む血液浄化器の製造方法に関する。
本発明において、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は、80%以上100%未満であることが好ましく、好ましくは80%以上99%以下、より好ましくは85%以上95%以下である。
中空糸膜中のPVPの架橋度が80%未満であると、中空糸膜中に存在して中空糸膜の親水化に寄与しているポリビニルピロリドンが膜から溶出する可能性がある。一方、架橋度を100%にしてしまうと、溶出量を低減できる一方で、透析時にロイコペニア症状が観察されることがある。
PVPの架橋度(%)
=水に不溶であるPVP量/全PVP量×100 (1)
ここで、水に不溶であるPVP量とは、全ポリビニルピロリドンの量(全PVP量)から水に可溶であるPVP量を差し引いたものである。
そして、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は、単位重量の中空糸膜に含まれる、全PVP量と、(そのうちの)水に不溶であるPVP量から求めることができる。単位重量の中空糸膜中の全PVP量は、乾燥した中空糸膜0.2〜0.5mgを横型反応炉(800〜950℃)で気化・酸化させ生成した一酸化窒素の濃度を化学発光法で測定し(装置は三菱化学製TN−10を使用)、得られた濃度から単位重量の中空糸膜中に含まれるPVP量に換算する。定量に際しては、予め、含窒素ポリマーの標準試料を用いて作成した検量線を用意し、これを用いて濃度を決定する。また、水に可溶であるPVP量は、以下の方法により求めることができる。
ウエットタイプの血液浄化器は、出荷直前に溶液(例えば、UF濾過膜水等)を封入して、溶液中で放射線滅菌を行い、そのまま出荷される。このようなウエットタイプの血液浄化器では、該溶液(充填液)中のポリビニルピロリドン濃度及び溶剤濃度を測定する。ウエットタイプの場合、血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月以上6ヶ月以下の時点は、製造番号に記載されている製造月(製造番号から読み取れる製造年/月)から翌月末時点を1ヶ月経過時点として算出する。なお、血液浄化器は、入手してから25℃±1℃に保温して保管する。溶液(充填液)のサンプリングは、血液浄化器から全ての溶液(充填液)を可能な限り取り出した後、均一に混合してから行う。例えば、3ヶ月時点の測定の為のサンプリング後、残りの全溶液(充填液)を元の血液浄化器の中に入れ密封して更に3ヶ月間保管し、6ヶ月時点の測定に用いる。
ドライタイプの血液浄化器では放射線滅菌を溶液中で行わない場合が多く、乾燥状態で出荷されることが多い。したがって、血液浄化器に純水を封入した時点から、3ヶ月以上6ヶ月以下の経過時点を算出する。血液浄化器に純水を封入する際には、中空糸膜の中空部にも純水を注入して全中空糸膜の内表面及び外表面が常に純水に25℃±1℃で浸漬した状態にする。但し、製造番号に記載されている製造月(製造番号から読み取れる製造年/月)から1年以内の血液浄化器を使用する。溶液(充填液)のサンプリングは、血液浄化器から全ての溶液(充填液)を可能な限り取り出した後、均一に混合してから行う。例えば、3ヶ月時点の測定の為のサンプリング後、残りの全溶液(充填液)を元の血液浄化器の中に入れ密封して更に3ヶ月間保管し、6ヶ月時点の測定に用いる。
疎水性高分子化合物としては、例えば、ポリスルホン系ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。ここで、ポリスルホン系ポリマーとは、スルホニル基(−SO2−)を含む繰り返し構造を有する
高分子化合物をいい、従来中空糸膜において使用されている公知のものを使用できる。
ポリビニルピロリドンはポリスルホン系ポリマー等の中空糸膜の骨格を構成する疎水性高分子化合物を親水化にすることに寄与する。しかしながら、本発明者の研究により、ポリビニルピロリドンは必ずしも疎水性高分子化合物の骨格の周りを均一に被っているわけではなく、塊状で存在しているものもあることが分かった。そして、この塊状のポリビニルピロリドンが、膜の濾過抵抗を上げ、膜の透過性能を低下させていると推測される。本発明では、塊状のポリビニルピロリドンが生じる原因を特定すべく、ポリビニルピロリドンについて詳細に調査したところ、ポリビニルピロリドンには、製造過程で生じる複数の分子が絡み合った凝集成分が含まれることを見出し、これが塊状のポリビニルピロリドンを生じさせる原因となっている可能性があることに想到した。そして、中空糸膜中に存在させるポリビニルピロリドンとして、そのような凝集成分の含有量が少ないもの、具体的には、動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であるものを使用することにより、血液中の不純物の除去性能の向上を実現できることを見出した。
すなわち、従来の中空糸膜に使用されている通常のポリビニルピロリドンには、製造過程で生じる複数の分子がからみあった凝集成分が含まれ、これが、塊状で中空糸膜中に存在している。この塊状のポリビニルピロリドンは、膜の濾過抵抗を上げ、膜の透過性能を低下させると考えられる。ポリビニルピロリドンとして、凝集成分の少ないもの、具体的には、その動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下のものを使用すると、ポリビニルピロリドンが塊状で存在することなく、中空糸膜の骨格(例えば、ポリスルホン系ポリマー等の疎水性高分子化合物で構成される骨格)の周りを均一に被うようになるため、膜の濾過抵抗が下がり、膜の透過性能が向上すると推測される。
一次ピークは、協同拡散モードであり、通常の高分子濃厚溶液で観察されるピークである(『ドジャン 高分子の物理学』久保亮五監修、高野宏、中西秀共訳、吉岡書店出版、1997、pp208−210)。協同拡散モードのピークは、ポリビニルピロリドン溶液をフィルター濾過しても濾過の前後で出現するピーク位置は変化しない。
これに対して、二次ピークはポリビニルピロリドン溶液で見られる特有のピークである。本発明者の研究によれば、二次ピークのモード径(ピークにおける粒子径)(モード径)が小さいほど不純物除去性能が向上し、特に二次ピークのモード径を300nm以下にすると、ビタミンB12のクリアランス値が150ml/分以上という、極めて優れた不純物除去性能が得られることが判明した。二次ピークのモード径は小さいほど好ましく、二次ピークが存在しないポリビニルピロリドンを使用することがさらに好ましい(この場合、「動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピーク」は、一次ピークとなる)。
故に、本発明での理想的なポリビニルピロリドンの粒径分布は60nm以下である。
なお、以上では、ポリビニルピロリドンの動的光散乱法により測定される粒径分布においてピークの数が2つである場合(典型的な例)を例にとって説明したが、本発明において、中空糸膜中のポリビニルピロリドンは、動的光散乱法により測定される粒径分布においてピークの数が2つであるものには限られず、最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であるという条件を満たしている限り、3つ以上のピークが存在していてもよい。
エタノールを用いた中空糸膜からのエタノール可溶性ポリビニルピロリドンの抽出は、下記の方法で行う。
血液浄化器を純水で洗浄し、血液浄化器中の水分量が中空糸膜に対して0.3重量%以下になるまで乾燥する。なお、純水での洗浄は、血液浄化器から架橋度調整剤等が抽出されなくなるまで行う。具体的には、血液浄化器の開口端から純水を注入して血液浄化器の内部を純水で充填し、3分間振とうした後、純水を排出する、という操作を10回繰り返す。次に、50℃のエタノール中に血液浄化器を浸漬して中空糸膜の外表面側から内表面側に該エタノールを3時間濾過循環させる。エタノールの循環には、循環回路にコンタミネーションの無いチューブとジョイント並びにエアポンプを使用する。濾過循環量は30ml/分とする。この時、血液浄化器全体がエタノールに浸漬していることを確認する。3時間後、中空糸膜中を循環したエタノールを、5μmのフィルター(富士フィルター(株)社製、FD−5、有効濾過面積40cm2)で濾過し、エバポレーターを用いて濾液のエタノールのみを蒸発させてエタノール可溶性ポリビニルピロリドンを得る。エバポレーターでの加熱は50℃以下で行う。動的光散乱装置にて測定できる量の可溶性ポリビニルピロリドンが得られるまで、同じ種類(製造ロット)の中空糸膜を有する複数の血液浄化器を用いて上記の操作を繰り返す。
生理食塩水を加えて総タンパク質濃度を6.5g/dLに調整した牛血清を元液とし、そのアルブミンの濃度を予めBCG法によって求めておく。これを線速0.4cm/秒でミニモジュールに通液し、膜間圧力差25mmHgの圧力をかけて濾液を採取する。元液と測定環境の温度は25℃とする。なお、ミニモジュールを構成する中空糸膜は湿潤状態でも乾燥状態でも構わない。続いて、濾液のアルブミンの濃度をBCG法によって求め、次の式(2)で求められる値をアルブミンの透過率と定義する。
Alb.の透過率(%)
=濾液のAlb.濃度/元液のAlb.濃度×100 (2)
ここで、透過率は60分間通液後の値を使用する。
2つの開口端の間の距離/2つの開口端の平均直径
=4.5〜6.5 (3)
全フィブリルの平均太さが200nmを超えると本発明の中空糸膜を透析使用時にアルブミンの透過率が0.35%を超えるので好ましくない。人体に有用であるアルブミン(分子量:67,000)をほとんど透過させない分画性を有する膜が求められているが、本発明における中空糸膜は、牛血漿アルブミンの透過率が0.35%以下を実現できる。アルブミンの透過率が0.35%を超えることは体内に有効なアルブミンを大きく損失することを意味することから透析用の膜としては好ましくない。アルブミンの生体内貯蔵量は成人男子で約300g(4.6g/kg)であり、全体の約40%は血管内に、残りの約60%は血管外に分布し、相互に交換しながら平衡状態を保っている。アルブミンの分解は筋肉、皮膚、肝臓、腎臓などで行われ、1日のアルブミンの分解率は生体内貯蔵量のほぼ4%(0.18g/kg/日)である。また生体内でのアルブミンの半減期は約17日である。一方、アルブミンの生成は主に肝臓(0.20g/kg/日)で行われている。したがって、生体内でのアルブミンの収支は±0に近い状態である。一般に透析患者は週に3回の人工透析により血液浄化を受けている。したがって、アルブミン透過率が0.35%の膜で人工透析を受けると約0.02g/kg/週のアルブミン損失となる。故に、アルブミン透過率が0.35%を超えると生体内でのアルブミンの平衡状態が崩れ、他の疾病を引き起こす原因ともなり、好ましくない。
膜厚部の最内側(膜内表面側)を視野の端に合わせてSEM写真を撮影し、これを用いて、膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さを測定する。次に、最外側を視野の端に合わせてSEM写真を撮影し、これを用いて、膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さを測定する。
全フィブリルの平均太さは、膜厚が30μm以下の中空糸膜の場合には、上記の2枚の写真を用いて測定する。一方、膜厚が30μmを超える中空糸膜の場合には、上記2枚の写真ではカバーされない(撮影できていない)部分があるので、膜厚方向において膜内表面と膜外表面からの距離が等しい点である中心点を決めた後、視野の中央をその中心点に合わせてSEM写真を撮影することによって上記2枚の写真で撮影ができない部分を撮影し、これを用いて膜厚方向の中心部にあるフィブリルの平均太さを測定する。
但し、膜厚方向の中心部にあるフィブリルの太さを求めるときは、膜内表面と膜外表面側の写真に含まれない部分を用いる。
フィブリルの太さを測定する部位は、幅15μm相当を撮影した各部位の断面SEM写真において、膜厚方向の中央部幅5μm相当の領域帯とし、その領域帯にあるフィブリルを任意に100本選択して太さを測定する。これを各部位の断面SEM写真それぞれについて実施する。それぞれの100本の値の平均値を、各部位(膜厚方向の外側、内側及び中心部(膜厚が30μmを超えるときのみ))のフィブリルの平均太さとする。また各平均値を相加平均した値を全フィブリルの平均太さとする。
ポリビニルピロリドン溶解液中のポリビニルピロリドン濃度は、用いるポリビニルピロリドンの分子量により異なるが、重量平均分子量1,200,000のポリビニルピロリドンであれば0.1〜15重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では実用的でなく、15重量%を超えるとフィルター濾過後のポリビニルピロリドンの粒径が300nmを超えるため好ましくない。
ポリビニルピロリドン溶解液の温度は、用いる溶剤及びフィルターの材質により異なるが、35〜120℃であることが好ましい。35℃未満では、フィルター濾過後のポリビニルピロリドンの粒径が300nmを超えることもあり、120℃以上で長時間保温するとポリビニルピロリドンが架橋又は変性する恐れがあり好ましくない。
ポリビニルピロリドン溶解液の濾過流量は、0.01〜3mL(ミリリットル)/(分(単位時間)・cm2(フィルター単位有効濾過面積あたり))であることが好ましい。0.01mL/(分・cm2)未満では濾過流量が遅いため実用的でなく、3mL/(分・cm2)を超えるとフィルター濾過後のポリビニルピロリドンの粒径が300nmを超えることがあるため好ましくない。
フィルターの最小孔径(以下、単に「孔径」という)は0.01〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.5μm、さらに好ましくは0.1〜2μmである。フィルターの孔径が3μmより大きくなると、動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径を300nm以下にするのが難しく、孔径が0.01μm未満では濾過速度が低くて実用的でない。
フィルター濾過時にポリビニルピロリドン溶解液に加える超音波振動の周波数は、20kHz以上1000kHz以下であることが好ましく、より好ましくは40kHz以上100kHz以下である。20kHz未満では効果が低い傾向にあるので好ましくない。1000kHzを超えると繰返し長時間超音波振動を与えたときにフィルター並びにフィルターハウジングが破損する怖れがあるので好ましくない。
中空糸膜の製膜原液は、温調可能な容器に、必要に応じて超音波振動を加えながら、ポリビニルピロリドン溶解液と、その他の材料(例えば、ポリスルホン系ポリマー(又はポリスルホン系ポリマーと溶剤))を入れ、攪拌機又はヘンシルミキサー等の混合機を用いて溶解することにより製造することができる。
ポリスルホン系ポリマー等中にも不純物等が混入している可能性があることから、製膜原液を調製後、不純物又は未溶解物等を取り除くために孔径40μm以下程度のフィルターで濾過することも可能である。
−O−Ar−C(CH3)2−Ar−O−Ar−SO2−Ar− (4)
−O−Ar−SO2−Ar− (5)
ポリビニルピロリドン溶解液や製膜原液の溶剤としては、ポリビニルピロリドンとその他の膜の材料を溶解するものであれば良く、例えば、ポリスルホン系ポリマーを用いる場合であれば、溶剤はN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等が用いられる。
製膜原液中のポリビニルピロリドンの量は、1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%であるが、用いるポリビニルピロリドンの分子量により最適濃度が決定される。
中空糸膜の製造に用いられる内部液は、中空糸膜の中空部を形成させるために用いるものである。外表面に緻密層を形成させる場合は、内部液としてジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等からなる郡より選ばれる溶剤の高濃度水溶液を用いることができる。内表面に緻密層を形成させる場合は、内部液には後述する凝固浴に記載したものを採用することができる。また、内部液の粘性を制御する目的でテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類及びグリセリン等の非溶剤を加えることも可能である。
ここで、エアギャップとは、ノズルと凝固浴との間の距離(隙間)を意味する。膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造を有する膜を得るためには、紡速(m/分)に対するエアギャップ(m)の比率が極めて重要である。何故ならば膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造は、内部液中の非溶剤が製膜原液と接触することによって該製膜原液の内表面部位から外表面部位側へと経時的に相分離が誘発され、さらに該製膜原液が凝固浴に入るまでに膜内表面部位から外表面部位までの相分離が完了しなければ、得られないからである。
紡速(Vs)に対するエアギャップ(Ga)の比率(Ga/Vs)は、中空糸膜の膜厚が34μm以上である場合には0.01〜0.1m/(m/分)であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.05m/(m/分)である。紡速に対するエアギャップの比率が0.01m/(m/分)未満では、膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造の膜を得ることが難しく、0.1m/(m/分)を超える比率では、膜へのテンションが高いことからエアギャップ部で膜切れを多発し、製造しにくい傾向にある。一方、膜厚が34μm未満である場合には製膜原液中の良溶剤量が少ないのでGa/Vsが低くても膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造を得ることが可能である。膜厚が34μm未満である場合には、Ga/Vsが0.001〜0.01m/(m/分)であることが好ましい。
ここで、紡速(Vs)(m/分)とはノズルから内部液とともに吐出した製膜原液がエアギャップを通過して凝固浴にて凝固した膜が巻き取られる中空糸膜の一連の製造工程における膜の移動速度をいい、延伸操作がある場合には延伸操作をする前までの中空糸膜の移動速度を意味する。
また、エアギャップを円筒状の筒などで囲み、一定の温度と湿度を有する気体を一定の流量でこのエアギャップに流すと、より安定した状態で中空糸膜を製造することができる。
さらに、本発明ではGa/Vs´とAm/Asの積の関係と他の製膜条件を調整することにより全フィブリルの平均太さを100nm以上200nm以下に調整することが可能である。
凝固浴としては、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;エーテル類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類など重合体を溶解しない、製膜原液に対して相分離を誘発させる液体(非溶剤)が用いられるが、水を用いることが好ましい。また、凝固浴に前記重合体の良溶剤を添加することにより凝固速度をコントロールすることも可能である。
凝固浴の温度は、−30〜100℃、好ましくは0〜98℃、さらに好ましくは10〜95℃である。凝固浴の温度が100℃を超えたり、又は、−30℃未満であると、凝固浴中の膜の表面の状態が安定しにくい。
中空糸膜に電子線及びガンマー線等の放射線を照射することにより、膜中のPVPを架橋することが可能である。放射線の照射は、中空糸膜を血液浄化器化前又は血液浄化器化後のどちらでも良い。
架橋度調整剤としては、放射線照射に対してポリビニルピロリドンの架橋反応を阻害するものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、血液浄化用途に用いる際は、その安全性を考慮する必要があるため、生理的水溶液で洗浄しやすく、且つ毒性の低いものが好適に用いられる。なかでも水溶性ビタミン、グリセリン、マンニトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テロラエチレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリグリコール類、エタノール等のアルコール類、ポリエチレンイミン、ポリフェノール、トレハロース、グルコースなどの糖類、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩、二酸化炭素などが挙げられ、好適に使用される。これらの架橋度調整剤は単独で用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。
中空糸膜に付着させる架橋度調整剤の量や種類並びに中空糸膜の周りに存在させる架橋度調整剤の水溶液中の濃度については、放射線照射線量並びに照射時間、目的とする架橋度により適宜調整することが可能である。
膜の破断強度は、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−5Dを使用し、サンプル長さ30mm、25℃、引っ張りスピード50mm/分で測定した。
破断強度は、中空糸膜1本当たりの破断時荷重を、引っ張る前の膜断面積当たりの算出(kgf/cm2)で表し、破断伸度(伸び)は、元の長さに対する破断までに伸びた長さ(%)で表した。
(ポリビニルピロリドン溶解液の作製及び該溶解液の濾過)
100℃以下の温度での乾燥により含水率を0.3重量%以下としたポリビニルピロリドン(BASF社製、K90、重量平均分子量1,200,000)84gをジメチルアセトアミド1576gに溶解して均一な溶液(ポリビニルピロリドン溶解液)とした(ポリビニルピロリドン濃度5.06重量%)。
この溶液を70℃に保温して孔径2μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−02S2、有効濾過面積20cm2)を用いて濾過流量2mL/(分・cm2)にて濾過した。濾過中は焼結フィルターを超音波洗浄機中に浸漬して、ポリビニルピロリドン溶解液に常時59kHz(出力3kW)の超音波振動を付与した。
フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を5.0重量%の濃度になるように調整して、動的光散乱装置にて測定したときのポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、130nmであった。ここで、動的光散乱装置にて測定したときのポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径としては、10回測定し、最大値と最小値を除いた8点の平均値を用いた。
上記のフィルター濾過後の溶液(ポリビニルピロリドン溶解液)830gに芳香族ポリスルホン(Amoco Engineering Polymers社製 P−1700)170gを添加して溶解することにより均一な溶液(製膜原液)を作製した。ポリスルホンの未溶解物等を除去するために、この製膜原液を孔径5μmのフィルター(富士フィルター(株)社製、FD−5、有効濾過面積40cm2)を用いて濾過した。
この溶液(製膜原液)を脱泡後60℃に保ち、ジメチルアセトアミド55重量%と水45重量%との混合溶液からなる内部液とともに、紡口(2重環状ノズル 0.1mm−0.2mm−0.3mm)から吐出(内部液は内壁直径0.1mmの環状ノズルから吐出、製膜原液は外壁直径0.2mmと内壁直径0.3mmの間から吐出)させ、380mmのエアギャップを通過させて70℃の水からなる凝固浴に浸漬させた。この時、紡口から凝固浴までを円筒状の筒で囲み、筒の中のエアギャップの湿度を100%、温度を45℃に制御した。紡速は27m/分に固定した。得られた中空糸膜を巻取る前にクリンパー(中空糸膜へのクリンプ付与装置)で波長6mm、振幅0.6mmのクリンプを付与した。クリンパーでの乾燥温度を155℃、乾燥時間を120秒に設定した。
巻き取った9600本の中空糸膜からなる束を、中空糸膜の有効膜面積が1.5m2となるように設計したポリプロピレン製筒状容器に装填し、その両端部をウレタン樹脂で接着固定し、両端面を切断して中空糸膜の開口端を形成した。さらに、両端部にヘッダーキャップを取り付け、血液浄化器を得た。
2gのポリビニルピロリドンK90(BASF社製、K90、重量平均分子量1,200,000)を70℃の純水1,998gに溶解した溶液(PVPコーティング溶液)を作成した。この溶液を70℃に保温して孔径2μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−02S2、有効濾過面積20cm2)を用いて濾過流量2mL/(分・cm2)にて濾過した。なお、濾過中は焼結フィルターを超音波洗浄機中に浸漬して、ポリビニルピロリドン溶解液に常時59kHz(出力3kW)の超音波振動を付与した。この溶液を開口端から血液浄化器の中空糸膜の中空部に2.3秒間注入し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュさせた。
さらに、グルコース(和光純薬社製、特級)360gを70℃の純水1,640gに溶解した架橋度調整剤溶液を作成した。 この溶液を開口端から血液浄化器の中空糸膜の中空部に2.3秒間注入し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュさせた後、両端部にヘッダーキャップを取り付けた。血液流出入側ノズルに栓を施した後、滅菌袋に脱酸素剤(三菱ガス化学社製エージレス(登録商標))と共に入れ、酸素濃度を3.5%に調整後、電子線を20kGy照射した。放射線滅菌済血液浄化器が得られた。
血液浄化器からエタノール抽出した可溶性ポリビニルピロリドンの粒径分布を動的光散乱装置にて測定したところ、粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、130nmであり、中空糸膜を製造する際に用いたポリビニルピロリドンの値と変わらないことが確認できた。
また、得られた血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
内部液濃度を50重量%にして、実施例1と同様な操作を行った。膜厚は40.0μmであった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
内部液濃度を52重量%、エアギャップを180mm、紡速を39m/分にして、実施例1と同様な操作を行った。(Ga/Vs´×Am/As)の値は0.159であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
内部液濃度を54重量%、エアギャップを615mm、紡速を36m/分にして、実施例1と同様な操作を行った。(Ga/Vs´×Am/As)の値は0.728であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
内部液濃度を52重量%、エアギャップを210mm、紡速を33m/分にして、実施例1と同様な操作を行った。膜厚は25.5μmであった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
架橋度調整剤溶液中のグルコース濃度を2重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は99.2%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
架橋度調整剤溶液中のグルコース濃度を5重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は94.3%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
架橋度調整剤溶液中のグルコース濃度を40重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は80.7%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。この血液浄化器を臨床血液透析により評価したところ、透析患者の白血球数が一時的に低下するロイコペニア症状は観察されなかった。
架橋度調整剤溶液中のグルコース濃度を30重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は85.8%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。この血液浄化器を臨床血液透析により評価したところ、透析患者の白血球数が一時的に低下するロイコペニア症状は観察されなかった。
ポリビニルピロリドン溶解液の濾過に用いるフィルターを孔径3μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−03S2、有効濾過面積20cm2)にした以外は実施例2と同様な操作を行った。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を希釈して、動的光散乱装置にて測定した時のポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、290nmであった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
フィルター濾過時のポリビニルピロリドン溶解液の温度を90℃にした以外は実施例2と同様な操作を行った。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を希釈して、動的光散乱装置にて測定した時のポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、40nmであった。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
PVPコーティング溶液中のポリビニルピロリドン濃度を0.5重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
PVPコーティング溶液中のポリビニルピロリドン濃度を1.0重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。この血液浄化器の性能を表1に示す。血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以下であることが明らかとなり、ポリビニルピロリドン由来の溶出が少ない血液浄化器が得られた。さらに、破断強度及び破断伸度も十分高く、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であることも明らかになった。この放射線滅菌済血液浄化器について、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験を行ったところ、該基準を満たす結果が得られ、溶出物試験液中には膜孔保持材が含まれなかった。
ポリビニルピロリドン溶解液の濾過に用いるフィルターを孔径5μmのステンレス製の焼結フィルター(富士フィルター(株)社製、FD−5、有効濾過面積40cm2)にしてポリビニルピロリドン溶解液に超音波振動を与えない以外は実施例2と同様な操作を行った。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を希釈して、動的光散乱装置にて測定した時のポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、550nmであった。この血液浄化器の性能を表2に示す。なお、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値並びにリンのクリアランス値を測定した値は、それぞれ156ml/分、190ml/分であった。また、アルブミンの透過率は、0.20%であった。実施例1と比べて血液中の不純物の除去性能が低いことが明らかとなった。
内部液濃度を50重量%にして、実施例1と同様な操作を行った。膜厚は40.8μmであった。この血液浄化器の性能を表2に示す。破断強度が6.0MPa未満、破断伸度が60%未満であった。
内部液濃度を52重量%、エアギャップを180mm、紡速を39m/分にして、実施例1と同様な操作を行った。(Ga/Vs´×Am/As)の値は0.145であった。この膜の性能を表2に示す。アルブミンの透過率が0.35%を超える性能であった。
内部液濃度を52重量%、エアギャップを585mm、紡速を24m/分にして、実施例1と同様な操作を行った。(Ga/Vs´×Am/As)の値は0.755であった。この血液浄化器の性能を表2に示す。膜切れが多発して、中空糸膜を長時間安定して生産することが困難であった。
内部液濃度を52重量%、エアギャップを210mmにして、実施例1と同様な操作を行った。この血液浄化器の性能を表2に示す。膜厚は25μm未満であった。
架橋度調整剤溶液を純水にして、水溶液中の酸素を除去しない以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は100%であった。この血液浄化器の性能を表2に示す。ポリビニルピロリドンの架橋度が100%であったので、可溶性ポリビニルピロリドンを得られなかった。したがって、ポリビニルピロリドンの粒度分布において最も大粒径側にあるピークのモード径を測定することはできなかった。この血液浄化器を臨床血液透析により評価したところ、透析患者の白血球数が一時的に低下するロイコペニア症状が観察された。
ポリビニルピロリドン溶解液に超音波振動を与えない以外は実施例10と同様な操作を行った。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を希釈して、動的光散乱装置にて測定した時のポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、320nmであった。この血液浄化器の性能を表2に示す。血液中の不純物の除去性能が低いことが明らかとなった。
架橋度調整剤溶液中のグルコース濃度を45重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は77.9%であった。この血液浄化器の性能を表2に示す。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は80%未満で、ポリビニルピロリドンが高架橋度である中空糸膜を有する血液浄化器が得られなかった。さらに、この血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度をそれぞれ測定したところ、いずれも10ppm以上であることが明らかとなった。
B 二次ピーク
1 波長
2 振幅
Claims (10)
- ポリビニルピロリドンを含む中空糸膜を有する放射線滅菌処理済血液浄化器であって、
前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンの動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であり、
前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度が80%以上100%未満であり、
前記血液浄化器中に溶液を封入後、3ヶ月以上6ヶ月以下の時点における前記溶液中のポリビニルピロリドン濃度が10ppm以下である血液浄化器。 - 前記中空糸膜が、ポリビニルピロリドンとポリスルホン系ポリマーとからなり、前記中空糸膜が、膜内表面から膜外表面に向かって連続的に孔径が大きくなる構造を有する、請求項1に記載の血液浄化器。
- 前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンが、
前記血液浄化器の開口端から、架橋度調整剤溶液を中空糸膜内に注入し、次いで該架橋度調整剤溶液を中空糸膜内から取り除き、その後中空糸膜に放射線照射することによって架橋度を80%以上100%未満にしたものである、請求項1又は2に記載の血液浄化器。 - 前記放射線照射時に血液浄化器内の酸素濃度を0.01体積%以上10体積%以下にすることによってポリビニルピロリドンの架橋度を80%以上100%未満にした、請求項3に記載の血液浄化器。
- 前記中空糸膜が、動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であるポリビニルピロリドンのコーティング層を内部に有する、請求項1〜4のいずれかに記載の血液浄化器。
- アルブミンの透過率が0.35%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の血液浄化器。
- 前記血液浄化器の容器がポリプロピレン系ポリマーからなる、請求項1〜6のいずれかに記載の血液浄化器。
- 前記中空糸膜の膜厚が25μm以上40μm以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の血液浄化器。
- 前記中空糸膜が、膜厚が35μm以下であって、破断強度が7MPa以上、且つ破断伸度が65%以上であるか、又は、膜厚が30μm以下であって、破断強度が7.5MPa以上、且つ破断伸度が70%以上である、請求項8に記載の血液浄化器。
- 中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度が80%以上100%未満である、ポリビニルピロリドンを含む中空糸膜を有する放射線滅菌処理済血液浄化器の製造方法であって、
動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であるポリビニルピロリドンを含む溶液を用意する工程と、
前記ポリビニルピロリドンを含む溶液を用いて中空糸膜を製造する工程と、
前記中空糸膜の開口端から、ポリビニルピロリドンを含むコーティング溶液及び架橋度調整剤溶液を中空糸膜内に注入し、次いでこれらの溶液を中空糸膜内から取り除き、その後中空糸膜に放射線照射する工程と、
を含む血液浄化器の製造方法。
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