以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して以下に説明する。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態のディスクブレーキを示す側断面図である。図2は、第1実施形態のディスクブレーキの要部を示す部分拡大側断面図である。図3は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータを示すもので、(a)は側面図、(b)は側断面図である。図4は、第1実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB1矢視図、(c)は(a)のC1矢視図である。図5は、第1実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材を示すもので、(a)は図4(a)のa1−a1断面図、(b)は図4(a)のb1−b1断面図である。図6は、第1実施形態のディスクブレーキを構成する移動ランプ部材を示す斜視図である。図7は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するプッシュロッドを示すもので、(a)は側面図、(b)は(a)のB2矢視図である。図8は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するカバー部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB3矢視図、(c)は(a)のC3矢視図である。図9は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータの組立手順の前半を(a)〜(c)の順に示す側断面図である。図10は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータの組立手順の後半を(a)〜(c)の順に示す側断面図である。図11は、第1実施形態のディスクブレーキへのディスクブレーキ用アクチュエータの組付状況を(a),(b)の順に示す要部拡大側断面図である。図12は、第1実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材の変形例を示す平面図である。
図1に示すように、第1実施形態のディスクブレーキ10は、車両の非回転部に固定される図示略のキャリアにディスク12を介して両側に配設された状態で摺動可能に支持される一対のパッド13と、キャリアにディスク12の軸線方向に沿って摺動自在となるよう支持されて一対のパッド13を両側から挟持するキャリパ14とで主に構成されている。
キャリパ14は、シリンダ筒部15とシリンダ筒部15の一端を閉塞するシリンダ底部(底部)16とを有し一方のパッド13のディスク12に対し反対側にシリンダ開口部17を対向させる有底筒状のシリンダ18と、このシリンダ18の半径方向における一側からディスク12の外周部を跨いで延出するディスクパス部19と、このディスクパス部19のシリンダ18に対し反対側から他方のパッド13のディスク12に対し反対側に対向するように延出する爪部20とを有するキャリパ部材21を有している。シリンダ筒部15の内周面をボア22と呼ぶ。
キャリパ部材21のシリンダ底部16には、ボア22の中央位置にボア22の軸線方向に沿って貫通する中央貫通穴26が形成されており、ボア22の半径方向におけるこの中央貫通穴26よりも外側位置にボア22側から所定深さ位置までピン穴27が形成されている。このピン穴27には、円柱状の回止ピン28が嵌合されている。また、中央貫通穴26は、主穴部29と、主穴部29のボア22側の端部に形成された大径穴部30とからなる段差状をなしている。シリンダ底部16の外側には、中央貫通穴26と同軸をなす円筒状部31とが形成されている。また、シリンダ底部16の外側には、後述するオペレーティング部材112に接続される図示せぬケーブルを係止するガイド部材32が取り付けられている。
また、キャリパ部材21のシリンダ筒部15のボア22には、最もシリンダ底部16側に一定径の嵌合穴35が形成され、この嵌合穴35のシリンダ開口部17側の端部近傍には、嵌合穴35よりも大径の円環状のリング溝36が同軸状に形成されている。また、シリンダ筒部15のボア22には、リング溝36よりもシリンダ開口部17側に、嵌合穴35およびリング溝36よりも大径の中間穴37が同軸状に形成されており、この中間穴37よりもシリンダ開口部17側に、中間穴37よりも小径で嵌合穴35およびリング溝36よりも大径の摺動穴38が形成されている。さらに、シリンダ筒部15のボア22には、この摺動穴38のシリンダ開口部17側の端部近傍に、嵌合穴35よりも大径の円環状のシール溝39が同軸状に形成されており、このシール溝39よりもシリンダ開口部17側に、嵌合穴35よりも大径の円環状のブーツ溝40が同軸状に形成されている。シリンダ開口部17の位置には、テーパ状の面取り部41が形成されている。なお、本実施形態においては、摺動穴38を嵌合穴35およびリング溝36よりも大径としたが、これに限らず、摺動穴38は、嵌合穴35またはリング溝36と同径としてもよい。
また、キャリパ14は、筒部45と蓋部46とを有する有蓋筒状に形成されて蓋部46側をパッド13側に向けてキャリパ部材21のシリンダ18の摺動穴38に摺動可能に嵌合されるピストン47と、シリンダ18の上記したシール溝39に保持されて、ピストン47とシリンダ18のボア22との隙間をシールする円環状のピストンシール48と、一端がシリンダ18の上記したブーツ溝40に嵌合され、他端がピストン47の蓋部46側の外周部のブーツ溝49に嵌合された伸縮可能なブーツ50とを有している。ピストン47の蓋部46側には内外を貫通する抜穴51がブーツ溝49内に開口するように形成されており、この抜穴51を閉塞するようにブーツ50が取り付けられている。
キャリパ14は、シリンダ18とピストン47との間に導入されるブレーキ液圧によって、ピストン47をシリンダ18の摺動穴38内で摺動させてシリンダ18からパッド13の方向に突出させることによって、このピストン47と爪部20とで一対のパッド13を両側から把持することにより円板状のディスク12にこれらパッド13を押圧するものである。
一対のパッド13は、図示略のキャリアに保持されるとともにピストン47または爪部20で押圧される裏板55と、裏板55に接合されてディスク12に接触する摩擦材56とからなっている。そして、一対のパッド13は、裏板55にこれを覆うようにシム57が取り付けられており、シム57を介してピストン47または爪部20に当接する。
上記のように、ピストン47は、ブレーキペダルへの踏み込み操作による通常制動時には、図示せぬマスタシリンダからシリンダ18内に導入されるブレーキ液圧でシリンダ18から爪部20の方向に突出させられることにより一対のパッド13をディスク12に押圧させて制動力を発生させるものであるが、シリンダ18内には、ピストン47をこのようなブレーキ液圧ではなく機械的に突出させることにより一対のパッド13をディスク12に押圧させて制動力を発生させるパーキングブレーキ機構61が設けられている。
パーキングブレーキ機構61は、図2に示すように、シリンダ底部16の中央貫通穴26から一部を外側に突出させてキャリパ部材21のシリンダ18内に配置されるボールアンドランプ機構62を有している。
ボールアンドランプ機構62は、回転力を直動推進力に変えてピストン47を推進するもので、シリンダ18内に配置されてシリンダ底部16に当接する固定ランプ部材65と、固定ランプ部材65のシリンダ底部16とは反対側に設けられたボール66と、ボール66を固定ランプ部材65との間に介装するように設けられた移動ランプ部材67とを有している。
一対の固定ランプ部材65および移動ランプ部材67のうちの一方である固定ランプ部材65は、鍛造で成形されるもので、シリンダ底部16に当接する板状の円板部(板状部)71と、この円板部71の外周縁部から軸線方向一側に全体として円筒状をなして一定高さ立ち上がる側壁部72とを有するカップ状に形成されている。図3および図4にも示すように、円板部71には、その中央に軸線方向に貫通する貫通穴73が形成されており、また、貫通穴73と側壁部72との間位置にも軸線方向に貫通して、図2に示すように、固定ランプ部材65のキャリパ14に対する回動を防止するための回り止め用の貫通孔74が形成されている。さらに、図4(a)に示すように、円板部71の側壁部72側の一端面71Aには、貫通穴73および貫通孔74とは異なる位置に、円板部71の円周方向に延び円板部71の板厚方向に凹むとともに円周方向に深さが変わるランプ溝75が、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)同心状に形成されている。固定ランプ部材65においては、これらランプ溝75に、図2に示すようにボール66が当接する。
ここで、貫通孔74は、シリンダ底部16のピン穴27に嵌合された回止ピン28を挿通させることになり、これにより、固定ランプ部材65は、シリンダ18に対して回り止めがなされる。つまり、固定ランプ部材65は、回止ピン28によってシリンダ底部16に回転不能に設けられ、言い換えれば、その貫通孔74によってシリンダ18に対して回転方向の規制がなされ回転不能とされる。
図4(a)に示すように、ランプ溝75は、円板部71の円周方向における中央を中心とした鏡面対称形状に形成されている。ランプ溝75は、円板部71の円周方向における中央部が最も深くボール66をその相対移動を若干規制するように保持可能な凹部75aとなっている。この凹部75aは、円板部71の径方向の断面が図5(a)に示すように全体として円弧状をなしており、円板部71の円周方向の断面が図5(b)に示すように全体として円弧状をなしている。
また、ランプ溝75は、円板部71の円周方向における凹部75aの両側に、円周方向に凹部75aから離れるほど深さが浅くなる傾斜部75bが形成されている。これら傾斜部75bは、円板部71の円周方向の断面が直線状をなしており、凹部75aから脱出して乗り上げたボール66を当接させその移動を案内する。
さらに、ランプ溝75は、円板部71の円周方向における両傾斜部75bのさらに両外側に、円周方向に離れるほど傾斜部75bよりも急激に深さが浅くなる端部立上部75cが形成されている。これら端部立上部75cは、円板部71の円周方向の断面が図5(b)に示すように全体として円弧状をなしており、傾斜部75bを移動するボール66のランプ溝75からの脱出を規制する。以上から、複数のランプ溝75は、ボール66が当接する底部が傾斜している。また、円板部71の一端面71Aには、その円周方向における複数のランプ溝75の隣り合うもの同士の間に、板厚の厚い頂部300が形成されている。
加えて、ランプ溝75は、図4(a)に示すように、円板部71の径方向における外側となる外周側縁部(縁部)75dが円板部71の中心よりもランプ溝75側に中心を配置した円弧状をなしており、円板部71の径方向における内側の内周側縁部(縁部)75eがランプ溝75の中心を通る半径に対し直交する略直線状となっている。さらに、ランプ溝75は、円板部71の円周方向における両側の端縁部(縁部)75fが外周側縁部75dと内周側縁部75eとを滑らかに繋ぐ円弧状をなしている。ランプ溝75は、これらの周状に繋がる外周側縁部75d、内周側縁部75eおよび両側の端縁部75fによって、ボール66のランプ溝75からの脱出を規制する。
そして、第1実施形態において、円板部71のランプ溝75以外の一端面71Aには、ランプ溝75の周囲に、ランプ溝75の外周側縁部75d、内周側縁部75eおよび両側の端縁部75fに向けてランプ溝75の凹み方向と同じ方向である円板部71の板厚方向に窪む窪み部301が形成されている。
窪み部301は、ランプ溝75の全周囲を囲むように形成されており、円板部71の半径方向における外周側縁部75dの外側にあって固定ランプ部材65の外周部である円板部71の外周部から外周側縁部75dに向けて窪んで形成される外側窪み部301aと、円板部71の半径方向における内周側縁部75eの内側にあって固定ランプ部材65の内周部である円板部71の内周部から内周側縁部75eに向けて窪んで形成される内側窪み部301bと、円板部71の円周方向における両側の端縁部75fのそれぞれの外側にあって、両側の頂部300のそれぞれから近接する端縁部75fに向けて窪んで形成される両側の端部窪み部301cとを有している。
外側窪み部301aの断面は、図5(a)に示すように、外周側縁部75dに向けて円弧状に窪んで外周側縁部75dに繋がる形状をなし、内側窪み部301bの断面は、内周側縁部75eに向けて円弧状に窪んで内周側縁部75eに繋がる形状をなし、一方の端部窪み部301cの断面は、図5(b)に示すように、近接する側の一方の端縁部75fに向けて円弧状に窪んでこの端縁部75fに繋がる形状をなし、他方の端部窪み部301cの断面は、近接する側の他方の端縁部75fに向けて円弧状に窪んでこの端縁部75fに繋がる形状をなしている。
加えて、窪み部301は、図4(a)に示すように、外側窪み部301aのランプ溝75とは反対側の縁部301dが、円板部71と同心の円弧状をなしている。また、内側窪み部301bは、ランプ溝75とは反対側の縁部301eが、円板部71の円周方向における中央が円板部71と同心の円弧状をなしその両側が逆向きに円弧状をなす波形形状となっている。さらに、両側の端部窪み部301cのランプ溝75とは反対側の縁部301fが、縁部301dと縁部301eとを滑らかに繋ぐ円弧状をなしている。
ここで、円板部71の径方向における内側窪み部301bの幅は、外側窪み部301aの同方向の幅よりも広くなっており、円板部71の円周方向における端部窪み部301cの幅よりも狭くなっている。
なお、固定ランプ部材65のキャリパ材21に対する回動を防止するための上記した貫通孔74は、円板部71の円周方向において隣り合う窪み部301の間となる頂部300に形成されている。
固定ランプ部材65は、その外周縁部に、ランプ溝75の凹み方向とは逆方向に一端面71Aから突出する上記した側壁部72が形成されており、側壁部72には、図4(b)に示すように、円周方向に一定幅で軸方向に延在し円板部71とは反対側に抜ける形状の軸方向穴78が、図4(a)に示すように、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されている。また、円周方向に隣り合う軸方向穴78のすべての間位置には、図4(c)に示すように、鉤状穴(係止穴)79が形成されている。つまり鉤状穴79も軸方向穴78と同数の複数(具体的には三カ所)形成されている。
鉤状穴79は、側壁部72の円板部71とは反対側から軸方向に円板部71の手前まで形成された軸方向穴(第1の穴)81と、この軸方向穴81に連続的に円周方向に隣接して側壁部72の軸方向の中間部に径方向に貫通形成された径方向穴(第2の穴)82とからなっている。言い換えれば、軸方向穴81は側壁部72の軸方向にて円板部71とは反対側に抜ける形状をなし、径方向穴82は側壁部72の軸方向にて円板部71とは反対側に抜けない形状をなしている。図4(a)に示すように、軸方向穴81それぞれが、ランプ溝75と対応して形成され、ランプ溝75に円周方向の位置を合わせて形成されている。
図4(c)に示すように、上記した軸方向穴81および径方向穴82によって、鉤状穴79は、円板部71とは反対側が円周方向に幅の狭い一定幅の幅狭部85とされ、円板部71側がこの幅狭部85よりも円周方向に幅の広い一定幅の幅広部86とされており、また、幅広部86と幅狭部85とは側壁部72の円周方向における一側の位置を合わせており、逆側が段差状をなしている。これにより、側壁部72は、幅狭部85および幅広部86の連続する側と、軸方向穴78との間にあって固定ランプ部材65の軸線方向に立設された円周方向に一定幅の立壁部88と、幅広部86および幅狭部85の段差状をなす側における幅広部86と軸方向穴78との間にあって固定ランプ部材65の軸線方向に立設された円周方向に一定幅の立壁部89と、この立壁部89の円板部71とは反対側の端部から幅広部86を一部覆うように円周方向に延出して幅狭部85を形成する係止延出壁部90とを有している。係止延出壁部90の立壁部89とは反対側の端部には、円板部71の方向に突出する係止突出部91が形成されている。幅広部86の底面および係止延出壁部90の下面は、円板部71の底面と平行をなしている。
ここで、固定ランプ部材65において、鉤状穴79の円板部71側の端部である幅広部86の底面の位置は、軸方向穴78の円板部71の側の端部である底面の位置よりも円板部71側になっている。また、固定ランプ部材65において、一定幅の立壁部88よりも、係止延出壁部90が上部に形成された立壁部89の方が円板部71からの高さが高くなっており、係止延出壁部90の円板部71側の端部である下面と、一定幅の立壁部88の円板部71とは反対側の端部である上面との固定ランプ部材65の軸線方向における位置が一致している。さらに、鉤状穴79は、軸方向に穴形成した軸方向穴81がボール66の直径よりも大きくされており、ボール66は、側壁部72側からこの軸方向穴81を介して固定ランプ部材65内に挿入可能となっており、ボール66を、このように挿入することで、軸方向に穴形成した軸方向穴81に円周方向の位置を合わせて円板部71に形成されたランプ溝75に短距離の移動で配置可能となっている。
以上の固定ランプ部材65を製造する場合、その円板部71の一端面71Aに、複数のランプ溝75と、各ランプ溝75の周囲にあってランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて窪む窪み部301とを形成する工程が発生することになるが、この工程において、一端面71Aの窪み部301は、ランプ溝75とともに鍛造で形成されることになる。しかも、この工程において、固定ランプ部材65の外周には、ランプ溝75の凹み方向と逆方向に一端面71Aから突出する側壁部72がランプ溝75および窪み部301とともに鍛造で形成されることになる。
移動ランプ部材67は、図2および図3に示すように、軸部95と、軸部95の一端から軸部95と同軸をなして径方向に広がる板状の円板部(板状部)96とを有しており、円板部96の軸部95側の一端面96Aには、図6に示すように、円板部96の円周方向に延び円板部96の板厚方向に凹むとともに円周方向に深さが変わるランプ溝97が、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)同心状に形成されている。移動ランプ部材67においては、これらのランプ溝97に、図2に示すようにボール66が当接する。
ランプ溝97は、固定ランプ部材65のランプ溝75と同様の形状をなしている。図6に示すように、ランプ溝97は、円板部96の円周方向における中央を中心とした鏡面対称形状に形成されており、円板部96の円周方向における中央部が最も深くボール66をその相対移動を若干規制するように保持可能な凹部97aとなっている。この凹部97aも、円板部96の径方向の断面が全体として円弧状をなしており、円板部96の円周方向の断面が全体として円弧状をなしている。
また、ランプ溝97は、円板部96の円周方向における凹部97aの両側に、円周方向に凹部97aから離れるほど深さが浅くなる傾斜部97bが形成されている。これら傾斜部97bは、円周方向の断面が直線状をなしており、凹部97aから脱出して乗り上げたボール66を当接させその移動を案内する。
さらに、ランプ溝97は、円板部96の円周方向における両傾斜部97bのさらに両外側に、円周方向に離れるほど傾斜部97bよりも急激に深さが浅くなる端部立上部97cが形成されている。これら端部立上部97cも、円板部96の円周方向の断面が全体として円弧状をなしており、傾斜部97bを移動するボール66のランプ溝97からの脱出を規制する。以上から、複数のランプ溝97も、ボール66が当接する底部が傾斜している。また、円板部96の一端面96Aには、その円周方向における複数のランプ溝97の隣り合うもの同士の間に、板厚の厚い頂部305が形成されている。
加えて、ランプ溝97は、円板部96の径方向における外側の外周側縁部(縁部)97dが、円板部96の中心よりもランプ溝97側に中心を配置した円弧状をなしており、円板部96の径方向における内側の内周側縁部(縁部)97eがランプ溝97の中心を通る半径に対し直交する略直線状となっている。さらに、円板部96の円周方向における両側の端縁部(縁部)97fが外周側縁部97dと内周側縁部97eとを滑らかに繋ぐ円弧状をなしている。ランプ溝97は、これらの周状に繋がる外周側縁部97d、内周側縁部97eおよび両側の端縁部97fによって、ボール66のランプ溝97からの脱出を規制する。
そして、第1実施形態において、円板部96のランプ溝97以外の一端面96Aには、ランプ溝97の周囲にあって、ランプ溝97の外周側縁部97d、内周側縁部97eおよび両側の端縁部97fに向けてランプ溝97の凹み方向と同じ方向である円板部96の板厚方向に窪む窪み部306が形成されている。
窪み部306は、ランプ溝97の全周囲を囲むように形成されており、円板部96の半径方向における外周側縁部97dの外側にあって移動ランプ部材67の外周部である円板部96の外周部から外周側縁部97dに向けて窪んで形成される外側窪み部306aと、円板部96の半径方向における内周側縁部97eの内側にあって固定ランプ部材65の円板部96の内周側縁部97eよりも内側から内周側縁部97eに向けて窪んで形成される内側窪み部306bと、円板部96の円周方向における両側の端縁部97fのそれぞれの外側にあって、両側の頂部305のそれぞれから近接する端縁部97fに向けて窪んで形成される両側の端部窪み部306cとを有している。
外側窪み部306aの断面は、外周側縁部97dに向けて円弧状に窪んで外周側縁部97dに繋がる形状をなし、内側窪み部306bの断面は、内周側縁部97eに向けて円弧状に窪んで内周側縁部97eに繋がる形状をなし、一方の端部窪み部306cの断面は、近接する側の一方の端縁部97fに向けて円弧状に窪んでこの端縁部97fに繋がる形状をなし、他方の端部窪み部306cの断面は、近接する側の他方の端縁部97fに向けて円弧状に窪んでこの端縁部97fに繋がる形状をなしている。
加えて、窪み部306は、外側窪み部306aのランプ溝97とは反対側の縁部306dが、円板部96と同心の円弧状をなしている。また、内側窪み部306bは、ランプ溝97とは反対側の縁部306eが、円板部96の円周方向における中央が円板部96と同心の円弧状をなしその両側が逆向きに円弧状をなす波形形状となっている。さらに、両側の端部窪み部306cのランプ溝97とは反対側の縁部306fが縁部306dと縁部306eとを滑らかに繋ぐ円弧状をなしている。
移動ランプ部材67の円板部96の軸部95とは反対側には、図2および図3(b)に示すように、外径側に面取り部98が、中央に逃げ凹部99が形成されている。移動ランプ部材67の軸部95は、円板部96側が一定径の挿通部101とされ、挿通部101の円板部96とは反対側に円環状の嵌合溝102が形成され、この嵌合溝102よりも先端側に全周にわたってセレーション103が形成され、セレーション103よりもさらに先端側の端部にオネジ104が形成されている。
以上の移動ランプ部材67を製造する場合、その円板部96の一端面96Aに、複数のランプ溝97と、ランプ溝97の周囲にあってランプ溝97の縁部97d〜97fに向けて窪む窪み部306とを形成する工程が発生することになるが、この工程において、一端面96Aの窪み部306は、ランプ溝97とともに鍛造で形成されることになる。
この移動ランプ部材67は、図2に示すように、固定ランプ部材65のランプ溝75にボール66を配置した状態で、ボール66をランプ溝97に配置するようにして、軸部95を固定ランプ部材65の貫通穴73に挿通させることになり、軸部95をさらにシリンダ底部16の中央貫通穴26に挿通させて、シリンダ底部16よりも外側に突出させる。ここで、シリンダ底部16の中央貫通穴26には、主穴部29および大径穴部30の主穴部29側に、一端にフランジ部107が形成されたカラー108がフランジ部107を大径穴部30の主穴部29側に当接させて嵌合されており、大径穴部30のフランジ部107よりボア22側にOリング109が嵌合されている。移動ランプ部材67は、軸部95の挿通部101においてこれらOリング109およびカラー108の内側に挿通されることになり、Oリング109が移動ランプ部材67とシリンダ18との隙間をシールする。
移動ランプ部材67の軸部95の係合溝102、セレーションおよびオネジ104は、シリンダ18から外側に突出することになる。シリンダ18の円筒状部31の内側には軸カバー111が配置され、さらに、移動ランプ部材67の軸部95のセレーション103を嵌合させるように、板状のオペレーティング部材112が軸直交方向に取り付けられ、軸部95のオネジ104にナット113が螺合されている。オペレーティング部材112は、セレーション103によって移動ランプ部材67の軸部95に対して回転不可に嵌合することになり、ナット113が軸部95に締結されると、移動ランプ部材67に一体に固定される。ここで、軸カバー111は、シリンダ18の円筒状部31に嵌合される円筒状の基部115と、基部115の軸方向一端の内周側から先窄み形状で延出して軸部95の嵌合溝102に嵌合する内側カバー部116と、基部115の前記一端の外周側から先開き形状で延出してオペレーティング部材112のシリンダ18側の面に当接する外側カバー部117とからなっている。
上記のようにして、オペレーティング部材112がシリンダ18の外側で移動ランプ部材67に一体に結合されることになり、運転室内に設けられたパーキングブレーキレバーまたはパーキングブレーキペダルからなる操作部材が操作され、図示せぬケーブルを介してオペレーティング部材112が回転入力を受けると、ボールアンドランプ機構62は、このオペレーティング部材112に結合された移動ランプ部材67がオペレーティング部材112の回転に応じて回転することになる。つまり、ボールアンドランプ機構62は、非作動の状態で、固定ランプ部材65のランプ溝75の凹部75aと移動ランプ部材67のランプ溝97の凹部97aとの間にボール66を保持しており、この状態から、移動ランプ部材67の回転に応じて、ボール66が、固定ランプ部材65のランプ溝75を、凹部75aから傾斜部75bさらに端部立上部75cに移動するとともに、移動ランプ部材67のランプ溝97を、凹部97aから傾斜部97bさらに端部立上部97cに移動することになり、これらによって、移動ランプ部材67を軸線方向に直動作動させることになる。つまり、ボールアンドランプ機構62は、オペレーティング部材112の回転運動を移動ランプ部材67の直動運動に変換する。なお、固定ランプ部材65の軸方向穴78は、固定ランプ部材65の開口側から、最もシリンダ底部16側に位置する移動ランプ部材67の円板部96と固定ランプ部材65の円板部71との隙間の近傍まで延びて形成されている。より具体的に、固定ランプ部材65の軸方向穴78は、固定ランプ部材65の開口側から、最もシリンダ底部16側に位置する移動ランプ部材67の円板部96のシリンダ底部16側の面の位置まで延びている。
パーキングブレーキ機構61は、シリンダ18内において、ボールアンドランプ機構62の移動ランプ部材67の円板部96の軸部95とは反対側に配置される滑動円板121と、この滑動円板121を円板部96とで挟持するように、滑動円板121を介して円板部96に当接し、移動ランプ部材67の直動押圧力を受承してシリンダ18の軸線方向に移動するプッシュロッド122とを有している。つまり、プッシュロッド122は、シリンダ18内に配置されて、ボールアンドランプ機構62の直線運動で同方向に移動する。なお、滑動円板121には中央に貫通穴120が形成されている。
プッシュロッド122は、移動ランプ部材67の円板部96の軸部95とは反対の端面と略同径をなし、移動ランプ部材67の直動押圧力を滑動円板121を介して受承する円板状のフランジ部123と、フランジ部123の中央から移動ランプ部材67とは反対側に軸状に突出するネジ軸部(ネジ部)124とを有している。フランジ部123には、図7に示すように、その外周部から径方向外方(つまり外径方向)に突出する円周方向に一定幅の突起125が、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されている。突起125は、図2に示すように、移動ランプ部材67の円板部96の面取り部98に沿うように、径方向外側ほどネジ軸部124とは反対側に位置するように傾斜する傾斜部126と、傾斜部126の先端から径方向に沿って外方に突出するスライド部127とを有している。また、プッシュロッド122には、フランジ部123の中央に、ネジ軸部124とは反対に突出する位置決め凸部128が形成されている。この位置決め凸部128は、移動ランプ部材67との間に滑動円盤121を挟持する際に、滑動円盤121の貫通穴120に嵌合されて移動ランプ部材67の逃げ凹部99に入り込み、滑動円盤121を中央に位置決めして保持する。なお、プッシュロッド122は、複数の突起125の傾斜部126が、移動ランプ部材67の面取り部98に沿っていることで、そのフランジ部123側がこの移動ランプ部材67と同軸を維持可能となっている。
プッシュロッド122は、移動ランプ部材67の直動押圧力を受承することから、そのネジ軸部124が、移動ランプ部材67の直動押圧力を伝達して直動出力することになる。なお、このプッシュロッド122は、複数の突起125が、先端のスライド部127において固定ランプ部材65の複数の軸方向穴78に一対一で摺動可能に嵌合することになる。その結果、プッシュロッド122は、固定ランプ部材65に対して軸回りの回転が規制された状態となり、また、軸方向穴78をスライド部127が摺動することで軸方向に移動可能(つまり離間および近接可能)となっている。ここで、プッシュロッド122の複数の突起125と固定ランプ部材65の複数の軸方向穴78とが、固定ランプ部材65とプッシュロッド122との間に設けられて、移動ランプ部材67の回転方向において互いに当接して固定ランプ部材65とプッシュロッド122との相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130を構成している。言い換えれば、固定ランプ部材65の複数の軸方向穴78は、プッシュロッド122の相対回転を規制しつつプッシュロッド122を直線運動できるように案内する。
パーキングブレーキ機構61は、シリンダ18内に配置されてプッシュロッド122のネジ軸部124に、内径側に形成されたメネジ131で螺合される略円筒状のクラッチ部材132を有している。
ここで、ピストン47の内径側は、蓋部46側が小径の小径内径部135とされるとともに、小径内径部135よりも開口側がこれより大径の中間内径部136とされており、さらに中間内径部136よりも開口側がこれより大径の大径内径部137とされている。小径内径部135および中間内径部136の間には、小径内径部135側から順に、小径内径部135と連続して中間内径部136側が大径となるように傾斜するテーパ面部139と、テーパ面部139の大径側より大径で円環段差状をなす段差部140と、段差部140と連続して中間内径部136側が大径となるように傾斜し中間内径部136に連続するテーパ面部141とが、小径内径部135および中間内径部136と同軸状に形成されている。
また、ピストン47の内径側には、大径内径部137と段差部140とを繋ぐように、中間内径部136およびテーパ面部141を貫通する連通溝142が軸線方向に沿って形成されている。中間内径部136には、円環状の係止溝143が形成されており、小径内径部135の蓋部46側に上記した抜穴51が形成されている。
クラッチ部材132は、先端側がピストン47の小径内径部135に嵌合する嵌合部147とされており、この嵌合部147と隣り合って径方向に延出するフランジ部148が形成されている。フランジ部148の嵌合部147側には、ピストン47のテーパ面部141に当接するテーパ部149が同軸状に形成されている。また、クラッチ部材132の嵌合部147には円環状のシール溝150が形成されている。このシール溝150には、リング状のクラッチ部材シール151が保持されている。このクラッチ部材シール151は、クラッチ部材132の嵌合部147とピストン47の小径内径部135との間の隙間をシールする。クラッチ部材132は、メネジ131が形成された内周部の嵌合部147側の端部が蓋体152で閉塞されている。
ここで、ボールアンドランプ機構62の移動ランプ部材67を回転運動させることにより、移動ランプ部材67をプッシュロッド122側に直動移動させると、移動ランプ部材67で押圧されてプッシュロッド122が軸線方向に直動移動し、このプッシュロッド122で押圧されてクラッチ部材132が軸線方向に直動移動して、クラッチ部材132がテーパ部149においてピストン47のテーパ面部141に当接してこのピストン47をシリンダ18に対しパッド13側に強制的に摺動させる。つまり、クラッチ部材132は、移動ランプ部材67の直動押圧力をピストン47に伝達する。
なお、プッシュロッド122のネジ軸部124とクラッチ部材132のメネジ131とは、プッシュロッド122とクラッチ部材132との間に互いに回転せずに所定量軸方向に移動可能なクリアランスを有している。
また、ピストン47の蓋部46側の上記した抜穴51は、ピストン47とクラッチ部材132との隙間を大気開放させるためのものである。
パーキングブレーキ機構61は、シリンダ18内においてクラッチ部材132とプッシュロッド122との位置調整を行うアジャスト部155を有している。このアジャスト部155は、ピストン47の中間内径部136に形成された係止溝143に係止される止め輪156によってピストン47とクラッチ部材132のフランジ部148との間に支持されるもので、ピストン47がシリンダ18内に導入されたブレーキ液圧によって軸方向に移動する際には、実質的には停止状態にあるプッシュロッド122に対し、クラッチ部材132を回転させながらピストン47に追従させて軸方向に移動させる。また、アジャスト部155は、プッシュロッド122が軸線方向に直動する際には、クラッチ部材132をプッシュロッド122に対し回転させることがなく、その結果、ネジ軸部124とメネジ131とによってクラッチ部材132をプッシュロッド122と一体に直動させる。
パーキングブレーキ機構61は、プッシュロッド122の一部を覆うように設けられたカバー部材160と、プッシュロッド122のフランジ部123とカバー部材160のピストン47側との間に介装されてプッシュロッド122をボールアンドランプ機構62の方向に向けて付勢するプッシュロッド付勢スプリング(プッシュロッド付勢部材)161と、シリンダ18のリング溝36に嵌合されてカバー部材160をシリンダ18に係止してシリンダ開口部17の方向に移動規制する止め輪162とを有している。これらカバー部材160、プッシュロッド付勢スプリング161および止め輪162もシリンダ18内に配置されている。言い換えれば、カバー部材160は、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持する。
カバー部材160は、内側にクラッチ部材132を挿入させるリング状底部165と、図8に示すように、このリング状底部165の外周端縁から軸線方向一側に延出する側壁部166とを有するカップ状をなしている。側壁部166は、リング状底部165に繋がる部分が軸方向に一定長さの円筒状をなす円筒基部170とされている。また、側壁部166には、この円筒基部170から円周方向に狭い一定幅でリング状底部165とは反対側に軸方向に沿って長く延出する長延出部171が、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されており、長延出部171よりも短くかつ円周方向に広い一定幅で軸方向に沿ってリング状底部165とは反対側に延出する短延出部172が円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されている。
ここで、カバー部材160には、円周方向に隣り合う長延出部171の一方に寄って短延出部172が形成されており、その結果、短延出部172の円周方向両側には、図8(b)に示すように、一方に、円周方向に狭い一定幅で軸線方向に沿って円筒基部170とは反対に抜ける形状の幅狭抜溝173が、他方に、幅狭抜溝173よりも円周方向に広い一定幅で軸線方向に沿って円筒基部170とは反対に抜ける形状の幅広抜溝174が形成されている。幅狭抜溝173も円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されており、幅広抜溝174も円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されている。
長延出部171のリング状底部165とは反対側の端部が径方向外側に折り曲げられて長位置係止部(第1の係止部)175となっており、短延出部172のリング状底部165とは反対側の端部も径方向外側に折り曲げられて短位置係止部(第2の係止部)176となっている。互いに周方向にずれて形成されている長位置係止部175および短位置係止部176は、いずれもリング状底部165と平行をなしている。なお、上記したように、長延出部171の延出長さは短延出部172の延出長さよりも長いことから、長延出部171の長位置係止部175のリング状底部165からの距離が短延出部172の短位置係止部176のリング状底部165からの距離よりも長くなっている。言い換えれば、長位置係止部175よりもカバー部材160のリング状底部165側に短位置係止部176が形成されている。さらに言い換えれば、カバー部材160においてリング状底部165とは反対側の開口側外周に長延出部171の長位置係止部175および短延出部172の短位置係止部176が、それぞれ円周方向に間隔をあけて複数カ所ずつ交互に形成されている。
カバー部材160は、図2に示すように、短位置係止部176において、シリンダ筒部15のリング溝36に保持された止め輪162のシリンダ底部16側に係止されており、その結果、シリンダ開口部17方向への移動が規制されている。また、カバー部材160は、長延出部171の長位置係止部175が、固定ランプ部材65の鉤状穴79に挿入・係止可能となっている。具体的に、図4(c)に示すように、長延出部171の長位置係止部175は、固定ランプ部材65の鉤状穴79の径方向穴82内に配置されて、側壁部72の係止突出部91と立壁部89との間の係止延出壁部90に係止されるようになっている。鉤状穴79は、幅広部86の高さがカバー部材160の長位置係止部175の厚さよりも大きく、その結果、カバー部材160の長位置係止部175の係止状態から、長位置係止部175が固定ランプ部材65の円板部71の方向に移動可能に形成されている。
図2に示す、ボールアンドランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160は、予め組み立てられてカートリッジ化された状態で、キャリパ部材21に組み込まれることになる。
つまり、まず、図9(a)に示すように、固定ランプ部材65を円板部71を下側にすることで円板部71の側壁部72側の一端面71Aを上方に向けて配置し、図9(b)に示すように、固定ランプ部材65の円板部71のランプ溝75に一端面71Aの上方からボール66を入れてランプ溝75に当接させる工程を行う。このとき、ボール66を、側方から、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴79の軸方向穴81を介して、軸方向穴81と円周方向に位置が合うランプ溝75に投入することになり、投入時のランプ溝75との高さの差を短くして跳ね上がり等を抑制する。また、このとき、ランプ溝75以外の一端面71Aには、図4(a)に示すように、ランプ溝75の周囲に、ランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて窪む窪み部301が形成されているため、ランプ溝75から多少ずれた位置にボール66が投入されたとしても、窪み部301の傾斜によってランプ溝75にボール66が入ることになる。そして、ランプ溝75に入ったボール66は、最終的に自重で凹部75aに収まって停止する。
次に、図9(c)に示すように上側から、移動ランプ部材67をその軸部95を下側にして固定ランプ部材65の側壁部72の内側に挿入し、軸部95を固定ランプ部材65の貫通穴73に挿通させ、ボール66上に円板部96を搭載する工程を行う。このとき、必要により移動ランプ部材67を回転させることで、固定ランプ部材65のランプ溝75の凹部75aからずらすことなくボール66を移動ランプ部材67のランプ溝97に当接させるように、移動ランプ部材67の円板部96を固定ランプ部材65の円板部71に対向して配置する。また、このとき、円板部96のランプ溝97以外の一端面96Aには、図6に示すように、ランプ溝97の周囲に、ランプ溝97の縁部97d〜97fに向けて窪む窪み部306が形成されているため、ランプ溝97から多少ずれた位置にボール66が当接したとしても、窪み部306の窪みによってランプ溝97にボール66が入る方向に、移動ランプ部材67の回転を案内できることになり、最終的に、ボール66は、ランプ溝97の凹部97aに収まって、節度感を持つように移動ランプ部材67の回転を停止させる。
次に、図10(a)に示すように、滑動円板121を移動ランプ部材67の円板部96上に、逃げ凹部99に貫通穴120の位置を合わせて敷設した後、プッシュロッド122をフランジ部123側を下側にして、突起125のスライド部127を固定ランプ部材65の軸方向穴78に挿入し、また位置決め凸部128を貫通穴120および逃げ凹部99に挿入しながら、滑動円板121の上に搭載する。
次に、図10(b)に示すように、プッシュロッド122のネジ軸部124を内側に挿入させるようにしてプッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122のフランジ部123上に搭載する。
次に、図10(c)に示すように、カバー部材160を、長位置係止部175および短位置係止部176を下側にして、側壁部166の内側にプッシュロッド122のネジ軸部124およびプッシュロッド付勢スプリング161を挿入し、プッシュロッド122のネジ軸部124をリング状底部165の内側に挿入するようにして被せる。
以上のようにして、固定ランプ部材65に、ボール66、移動ランプ部材67、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160を、この順番で組み付け、図8に示す長延出部171の位相を、図4(c)に示す固定ランプ部材65の鉤状穴79の幅狭部85に合わせて、カバー部材160を固定ランプ部材65側に押圧し、図10(c)に示すプッシュロッド付勢スプリング161を縮長させながら、図8に示す長延出部171の長位置係止部175を、図4(c)に示す幅狭部85に挿入し、長位置係止部175が、係止突出部91よりも下側に位置したところで、カバー部材160を固定ランプ部材65に対して相対回転させて、長位置係止部175を幅広部86内で係止延出壁部90の鉛直下側に位置させて、押圧を解除する。
すると、カバー部材160は、図4(c)および図10(c)に示すように、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力で長位置係止部175を係止延出壁部90に当接させる。これにより、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力でカバー部材160の長延出部171の長位置係止部175が、固定ランプ部材65の係止延出壁部90に当接した状態を維持することになり、固定ランプ部材65の鉤状穴79に係止されることになる。しかも、長位置係止部175は、図4(c)に示すように、固定ランプ部材65の係止突出部91および立壁部89で回転が規制されることになって、カバー部材160が固定ランプ部材65に取り付けられる。そして、この状態で、短延出部172の短位置係止部176の位相が、固定ランプ部材65の幅狭部85に合い、短延出部172の短位置係止部176が幅狭部85内に挿入可能となる。なお、上記の取り付けが可能となるように、長延出部171の長位置係止部175の位相を幅狭部85に合わせた状態で、短延出部172の短位置係止部176の位相は、高さの低い立壁部88に合うことになり、この立壁部88の高さは、長延出部171の長位置係止部175を幅狭部85に挿入して係止突出部91よりも下側に位置させてから短延出部172の短位置係止部176を当接させる高さとなっている。
以上のアクチュエータ組立工程によって、ボールアンドランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160が、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴79にカバー部材160の長位置係止部175を挿入・係止することで予め組み立てられてカートリッジ化される。このようにして、ボールアンドランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160からなる、図10(c)および図3に示すアクチュエータアッシー(ディスクブレーキ用アクチュエータ)180が組み立てられる。
次に、上記のアクチュエータ組立工程で組立体とされたアクチュエータアッシー180をキャリパ部材21のシリンダ18内に挿入する挿入工程を行う。この挿入工程では、図2に示すキャリパ部材21をシリンダ底部16を下側にして配置し、回止ピン28をピン穴27に嵌合し、カラー108およびOリング109を中央貫通穴26に配置する。そして、このキャリパ部材21のシリンダ18内に、シリンダ開口部17から、上記のアクチュエータアッシー180を、移動ランプ部材67の軸部95側を先頭にして挿入する。このとき、移動ランプ部材67の軸部95を中央貫通穴26のOリング109およびカラー108の内側に挿入し、固定ランプ部材65の貫通孔74に回止ピン28を挿入することになり、その結果、固定ランプ部材65がシリンダ底部16に当接することになる。これにより、アクチュエータアッシー180がシリンダ18内に配置されることになる。このとき、図11(a)に示すように、アクチュエータアッシー180のカバー部材160の短位置係止部176がシリンダ筒部15のリング溝36と略同位置に位置することになる。
次に、シリンダ18に止め輪162を装着する係止工程を行う。つまり、図2にしめすシリンダ開口部17から、止め輪162を挿入し、図11(b)に示すように、止め輪162でカバー部材160の短位置係止部176を押圧して、プッシュロッド付勢スプリング161を縮長させながらカバー部材160をシリンダ底部16側に若干押し込むと、止め輪162が、リング溝36に嵌合してシリンダ18に装着されるとともに、カバー部材160の短位置係止部176を係止することになる。このとき、短位置係止部176は、図4(c)に示すように、固定ランプ部材65の幅狭部85に位相が合っているため、この幅狭部85に入り込むことになって、固定ランプ部材65との干渉を回避して、カバー部材160の上記押し込みを許容することになる。このようにして、アクチュエータアッシー180が止め輪162によりシリンダから抜け止めされた状態となる。
なお、図11(b)に示すように、カバー部材160は、上記した止め輪162のシリンダ12への係止工程によって、短位置係止部176が止め輪162に係止されることになり、この状態で、長位置係止部175を固定ランプ部材65の係止延出壁部90から止め輪162とは反対方向(固定ランプ部材65の円板部71の方向)に移動させて離間させることになる。つまり、上記した係止工程は、固定ランプ部材65の鉤状穴79とカバー部材160の長位置係止部175との係止状態から、カバー部材160の長位置係止部175を固定ランプ部材62から浮かせ、長位置係止部175と鉤状穴79との係止状態を解除して、カバー部材160を、止め輪162を介してキャリパ部材21に係止する工程となる。図2に示すように、このようにカバー部材160が止め輪162でキャリパ部材21に係止された状態で、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力で、カバー部材160が止め輪162に押し付けられるとともに、プッシュロッド122が滑動円板121を介してボールアンドランプ機構62の移動ランプ部材67に押し付けられ、移動ランプ部材67がボール66に、ボール66が固定ランプ部材65に、固定ランプ部材65がシリンダ底部16にそれぞれ押し付けられることになる。
一方で、クラッチ部材シール151が装着されたクラッチ部材132をピストン47に嵌合させるとともに、アジャスト部155を止め輪156でピストン47に係止させることで、ピストン47、クラッチ部材132およびアジャスト部155を別のピストン組立体181としておく。
そして、キャリパ部材21において、シリンダ開口部17から挿入したピストンシール48をシリンダ筒部15のシール溝39に嵌合させるとともに、ブーツ50の一側をシリンダ18のブーツ溝40に嵌合させてから、上記のピストン組立体181を、ピストン47の開口側を先頭にしてシリンダ筒部15の摺動穴38内に嵌合させ、そのクラッチ部材132のメネジ131にアクチュエータアッシー180のプッシュロッド122のネジ軸部124を螺合させる。これにより、ピストン組立体181がシリンダ18内に配置される。そして、ブーツ50の他側をピストン47のブーツ溝49に嵌合させる。
また、これと前後して、シリンダ底部16の円筒状部31の内側に、軸カバー111を嵌合させてその内側カバー部116の先端をシリンダ底部16から突出する移動ランプ部材67の嵌合溝102に嵌合させる。そして、移動ランプ部材67のセレーション103にオペレーティング部材112を嵌合させた後にナット113をオネジ104に螺合させる。
以上のようにして、キャリパ14が組み上がる。
このような構成のディスクブレーキ10では、図示せぬパーキングブレーキレバーあるいはパーキングブレーキペダルが操作されることによりオペレーティング部材112が回転しボールアンドランプ機構62の移動ランプ部材67が回転すると、ボール66を、固定ランプ部材65のランプ溝75の凹部75aから傾斜部75bさらには端部立上部75cまで移動させると同時に、移動ランプ部材67のランプ溝97内で凹部97aから傾斜部97bさらには端部立上部97cまで移動させることになり、その結果、移動ランプ部材67はボール66で押されて直動移動する。すると、移動ランプ部材67は、プッシュロッド122をその突起125のスライド部127を、シリンダ18に固定された固定ランプ部材65の軸方向穴78で移動させながら、シリンダ18に対し非回転でディスク12の方向に移動させる。すると、このプッシュロッド122と一体にクラッチ部材132が移動して、ピストン47をディスク12の方向に移動させて、機械的に一対のパッド13をディスク12に押し付ける。
他方、通常のブレーキペダルによるブレーキ操作でブレーキ液圧がシリンダ18とピストン47との間に導入されると、ピストン47にはピストンシール48による受圧面積に対し液圧が作用してディスク12の方向への推進力が発生することになるが、クラッチ部材132にもクラッチ部材シール151による受圧面積に対し液圧が作用してディスク12の方向への推進力が発生し、初期においてはメネジ131およびプッシュロッド122のネジ軸部124における螺合のクリアランス分回転せずに軸線方向に移動してピストン47を押すことになる。
そして、さらにブレーキ液圧がシリンダ18内に導入されて、所定液圧以上になると、クラッチ部材132へ作用する液圧でクラッチ部材132がピストン47に押し付けられることになり、ピストン47に液圧が作用してディスク12の方向への推進力が発生することになり、クラッチ部材132にも液圧が作用してディスク12の方向への推進力が発生することになる。
ここで、上記した特許文献1のディスクブレーキでは、回転力を直動推進力に変えてピストンを推進するボールアンドランプ機構の固定ランプ部材および移動ランプ部材のボールを保持する対向面に、回転力を直動推進力に変えるためのランプ溝が形成されているが、これらの狭いランプ溝に位置を合わせてボールを入れてボールアンドランプ機構を組み付ける必要があり、製造が煩雑であった。
これに対し、第1実施形態のディスクブレーキ10によれば、固定ランプ部材65のランプ溝75以外の一端面71Aには、ランプ溝75の周囲に、ランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて窪む窪み部301が形成されているため、ランプ溝75から多少ずれた位置にボール66が投入されたとしても、窪み部301の傾斜によってランプ溝75にボール66が自重で自然に案内されることになる。したがって、製造を容易にできる。
また、移動ランプ部材67のランプ溝97以外の一端面96Aには、ランプ溝97の周囲に、ランプ溝97の縁部97d〜97fに向けて窪む窪み部306が形成されているため、ランプ溝97から多少ずれた位置にボール66が当接したとしても、窪み部306の傾斜によってランプ溝97にボール66を入れる方向に、移動ランプ部材67の回転を案内できることになる。したがって、製造を容易にできる。
よって、固定ランプ部材65の窪み部301および移動ランプ部材67の窪み部306のうちの少なくともいずれか一方が形成されていれば、製造を容易にできることになり、好ましくは両方に形成されていれば、さらに製造を容易にできることになる。
また、固定ランプ部材65の円板部71の一端面71Aの窪み部301は、固定ランプ部材65の外周部および固定ランプ部材65の内周部からランプ溝75の縁部75d,75eに向けて窪んで形成されているため、ランプ溝75に対し円板部71の径方向内外側にずれてボール66が投入されたとしても、窪み部301の傾斜によってランプ溝75にボール66が自重で自然に案内されることになる。したがって、製造を容易にできる。
また、固定ランプ部材65の円板部71の一端面71Aの窪み部301は、複数のランプ溝75の間の板厚の厚い頂部300からランプ溝75の縁部に向けて窪んで形成されているため、ランプ溝75に対し円板部71の円周方向外側にずれてボール66が投入されたとしても、窪み部301の傾斜によってランプ溝75にボール66自重で自然に案内されることになる。したがって、製造を容易にできる。
また、固定ランプ部材65の円板部71の一端面71Aの窪み部301は、ランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて円弧状に窪んで形成されており、移動ランプ部材67の円板部96の一端面96Aの窪み部306は、ランプ溝97の縁部97d〜97fに向けて円弧状に窪んで形成されているため、ボール66の窪み部301および窪み部306からのはみ出しを規制できる。
また、固定ランプ部材65の円板部71の一端面71Aの窪み部301は、ランプ溝75の凹み方向と同じ方向に窪んで形成されており、移動ランプ部材67の円板部96の一端面96Aの窪み部306は、ランプ溝97の凹みの方向と同じ方向に窪んで形成されているため、ランプ溝75および窪み部301の鍛造による成形と、ランプ溝97および窪み部306の鍛造による成形とが容易になる。したがって、さらに製造を容易にできる。
また、固定ランプ部材65の外周には、ランプ溝75の凹み方向と逆方向に一端面71Aから突出する側壁部72が形成されているため、ランプ溝75および側壁部72を鍛造により成形することができる。したがって、さらに製造を容易にできる。
また、固定ランプ部材65には、そのキャリパ14に対する回動を防止するための貫通孔74が設けられ、貫通孔74が隣り合う窪み部301の間に配置されているため、貫通孔74の軸方向長を確保できる。なお、固定ランプ部材65のキャリパ14に対する回動を防止するための貫通孔74を、図12に示すように、窪み部301の内部に配置しても良い。このように構成した場合、貫通孔74の軸方向長が若干短くなるものの、加工時に生じるバリの除去等が容易にできる。
また、第1実施形態のディスクブレーキの製造方法によれば、ボールアンドランプ機構62の固定ランプ部材65の円板部71の一端面71Aに、周方向に延びてボール66が当接する底部が傾斜してなる複数のランプ溝75と、ランプ溝75の周囲のランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて窪む窪み部301とを形成する工程と、ボールアンドランプ機構62の移動ランプ部材67の円板部96の一端面96Aに、周方向に延びてボール66が当接する底部が傾斜してなる複数のランプ溝97と、ランプ溝97の周囲のランプ溝97の縁部97d〜97fに向けて窪む窪み部306とを形成する工程と、一の固定ランプ部材65の一端面71Aを上方に向けて配置して一端面71Aの上方からボール66を入れてランプ溝75に当接させる工程と、ボール66が他の移動ランプ部材67のランプ溝97に当接するように、他の移動ランプ部材67の円板部96を一の固定ランプ部材65の円板部71に対向して配置する工程とを有する。これにより、固定ランプ部材65のランプ溝75以外の一端面71Aには、ランプ溝75の周囲に、ランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて窪む窪み部301が形成されているため、ランプ溝75から多少ずれた位置にボール66が投入されたとしても、窪み部301の傾斜によってランプ溝75にボール66が自重で自然に案内されることになる。したがって、製造を容易にできる。また、移動ランプ部材67のランプ溝97以外の一端面96Aには、ランプ溝97の周囲に、ランプ溝97の縁部97d〜97fに向けて窪む窪み部306が形成されているため、ランプ溝97から多少ずれた位置にボール66が当接したとしても、窪み部306の傾斜によってランプ溝97にボール66を入れる方向に、移動ランプ部材67の回転を案内できることになる。したがって、製造を容易にできる。
また、固定ランプ部材65の円板部71の一端面71Aの窪み部301は、固定ランプ部材65のランプ溝75とともに鍛造で形成され、移動ランプ部材67の円板部96の一端面96Aの窪み部306も、移動ランプ部材67のランプ溝97とともに鍛造で形成されるため、製造をさらに容易にできる。
また、固定ランプ部材65の外周には、ランプ溝75の凹み方向と逆方向に一端面71Aから突出する側壁部72がランプ溝75および窪み部301とともに鍛造で形成されるため、製造をさらに容易にできる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図13に基づいて説明する。
図13は、第2実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のa2−a2断面図、(c)は(a)のb2−b2断面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図13に示す第2実施形態においては、固定ランプ部材65の窪み部301の形状が第1実施形態に対し相違している。
第2実施形態においても、円板部71のランプ溝75以外の一端面71Aには、ランプ溝75の周囲に、円板部71の径方向における外周側縁部75dの外側にあって固定ランプ部材65の外周部である円板部71の外周部から外周側縁部75dに向けて窪んで形成される外側窪み部301aと、円板部71の径方向における内周側縁部75eの内側にあって固定ランプ部材65の内周部である円板部71の内周部から内周側縁部75eに向けて窪んで形成される内側窪み部301bと、円板部71の円周方向における両側の端縁部75fのそれぞれの外側にあって、両側の頂部300のそれぞれから近接する端縁部75fに向けて窪んで形成される両側の端部窪み部301cとを有している。
そして、第2実施形態において、外側窪み部301aの断面は、図13(b)に示すように、外周側縁部75dに向けて直線状に傾斜して外周側縁部75dに繋がる形状をなし、内側窪み部301bの断面は、内周側縁部75eに向けて直線状に傾斜して内周側縁部75eに繋がる形状をなし、一方の端部窪み部301cの断面は、図13(c)に示すように、近接する側の一方の端縁部75fに向けて直線状に傾斜してこの端縁部75fに繋がる形状をなし、他方の端部窪み部301cの断面は、近接する側の他方の端縁部75fに向けて直線状に傾斜してこの端縁部75fに繋がる形状をなしている。
このような第2実施形態によれば、一端面71Aの窪み部301が、ランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて傾斜して形成されているため、鍛造による形成が容易となる。
なお、第2実施形態では、固定ランプ部材65の窪み部301を、ランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて直線状に傾斜して形成するようにしたが、図6に示す移動ランプ部材67の窪み部306を同様に、ランプ溝97の縁部97d〜97fに向けて直線状に傾斜して形成するようにしても良い。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図14に基づいて説明する。
図14は、第3実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のa3−a3断面図、(b)は(a)のb3−b3断面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図14に示す第3実施形態においては、固定ランプ部材65の窪み部301の形状が第1実施形態に対し相違している。
第3実施形態においても、円板部71のランプ溝75以外の一端面71Aには、ランプ溝75の周囲に、円板部71の径方向における外周側縁部75dの外側にあって固定ランプ部材65の外周部である円板部71の外周部から外周側縁部75dに向けて窪んで形成される外側窪み部301aと、円板部71の径方向における内周側縁部75eの内側にあって固定ランプ部材65の内周部である円板部71の内周部から内周側縁部75eに向けて窪んで形成される内側窪み部301bと、円板部71の円周方向における両側の端縁部75fのそれぞれの外側にあって、両側の頂部300のそれぞれから近接する端縁部75fに向けて窪んで形成される両側の端部窪み部301cとを有している。
そして、第3実施形態において、外側窪み部301aの断面は、図14(b)に示すように、外周側縁部75dに向けて、円板部71の軸直交方向に対する角度が外側ほど小さい複数の直線状部301a1が組み合わされて窪んで外周側縁部75dに繋がる波形形状をなし、内側窪み部301bの断面は、内周側縁部75eに向けて、円板部71の軸直交方向に対する角度が外側ほど小さい複数の直線状部301b1が組み合わされて窪んで内周側縁部75eに繋がる波形形状をなし、一方の端部窪み部301cの断面は、図14(c)に示すように、近接する側の一方の端縁部75fに向けて、円板部71の軸直交方向に対する角度が外側ほど大きい複数の直線状部301c1が組み合わされて窪んで端縁部75fに繋がる形状をなし、他方の端部窪み部301cの断面は、近接する側の他方の端縁部75fに向けて、円板部71の軸直交方向に対する角度が外側ほど大きい複数の直線状部301c1が組み合わされて窪んでこの端縁部75fに繋がる形状をなしている。
このような第3実施形態によれば、一端面71Aの窪み部301が、波形形状をなしてランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて窪んで形成されているため、鍛造による形成が容易となる。
なお、第3実施形態では、固定ランプ部材65の窪み部301を、波形形状として、ランプ溝75の縁部75d〜75fに向けて窪ませるようにしたが、図6に示す移動ランプ部材67の窪み部306を同様に、波形形状として、ランプ溝97の縁部97d〜97fに向けて窪ませるようにしても良い。
なお、上記実施の形態においては、パーキングブレーキレバーやパーキングブレーキペダル等の操作部材の操作によりケーブルを介してオペレーション部材112で移動ランプ部材67を回動してパーキングブレーキを作動させるディスクブレーキを例にて説明を行なったが、パーキングブレーキ機構61の作動を電動モータで行なう電動パーキングブレーキのディスクブレーキに適用してもよい。
また、上記実施形態においては、ランプ溝75、97の円周方向における中央部が最も深いランプ部材65,67を例に説明を行なったが、ランプ溝の円周方向における端部が最も深いランプ部材に窪み部301、306を設けるようにしてもよい。