JP2010226984A - リンゴ果実の日持ち性の予見方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 実生段階においても個体が日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体か否かの判定を高い精度で行うことができる、リンゴ果実の日持ち性の予見方法を提供すること。
【解決手段】 リンゴの組織(果実を除く)を用いてMdACS3a遺伝子の5’隣接領域に存在するグアニンとアデニンで構成されるSSRの回数を調べ、回数が15〜25回の遺伝子型を有する個体を日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体として判定することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 リンゴの組織(果実を除く)を用いてMdACS3a遺伝子の5’隣接領域に存在するグアニンとアデニンで構成されるSSRの回数を調べ、回数が15〜25回の遺伝子型を有する個体を日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体として判定することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、リンゴ果実の日持ち性の予見方法に関する。より詳細には、DNAマーカーを用いて日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体か否かを判定することによって行うリンゴ果実の日持ち性の予見方法に関する。
リンゴ果実の日持ち性は、商品としての価値に大きく影響するので、現在、生産現場から流通全般を通して日持ちの低下を招く要因(高温など)の排除に多くの労力やコストがかけられている。かかる観点から、日持ち性に優れた果実を結実する品種の開発が行われているが、リンゴは実生から初結実まで長期間(約10年)を要する幼若期が非常に長い果樹であるため、結実した後にその果実の日持ち性を果肉の軟化速度を調べるなどして評価することができるようになるまでの期間の育成や管理には多大な負担が伴う。故に、実生段階で個体が結実する果実の日持ち性を予見することができる方法が必要とされている。
一般に、果実の完熟(後熟)の進行は、果実自体が産生するエチレンによって開始される。この点に基づき、本発明者は、リンゴ果実の完熟に関連する遺伝子として知られている、エチレンの生合成に関与する1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸合成酵素(ACS)遺伝子の1つであるMdACS1遺伝子が対立遺伝子を有すること、この対立遺伝子型が果実の完熟時のエチレン産生量を規定することを明らかにし、対立遺伝子に由来する転写産物レベルの差異から個体が結実する果実の収穫前の落果性を予見する方法を提案している(非特許文献1)。しかしながら、種々のリンゴの品種の日持ち性をこの方法で確認すると、必ずしもMdACS1の対立遺伝子型だけでは品種間の日持ち性の違いを説明することができないことから、より正確に日持ち性を予見することができる方法が望まれている。
原田竹雄、リンゴ果実のエチレン生合成制御に関する遺伝子工学、p1−38,46−52、2000年3月発行、弘前大学農学生命科学部(出版者)
そこで本発明は、実生段階においても個体が日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体か否かの判定を高い精度で行うことができる、リンゴ果実の日持ち性の予見方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、MdACS1遺伝子と同様に、リンゴ果実の完熟に関連する遺伝子であるMdACS3遺伝子のサブファミリーに属し、果実が完熟する直前で発現することが知られているMdACS3a遺伝子(例えば“ゴールデンデリシャス”由来のAccession No.AB243060:配列番号1記載の塩基配列からなるもの、必要であれば本発明者による特開2007−49961号公報を参照のこと)には、酵素活性中心にアミノ酸の置換を生じる変異型のMdACS3aをコードする対立遺伝子が存在すること、この対立遺伝子がコードするMdACS3aは酵素活性中心に生じたアミノ酸の置換によって酵素活性が失われていることでエチレンが生成しないこと、この対立遺伝子中にはCDSに連鎖する特徴的なSSR(Simple Sequence Repeat)が5’隣接領域に存在することを見出し、そのSSRをDNAマーカーとして用いれば、この対立遺伝子型を有することにより、完熟の進行が遅いことで日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体か否かの判定を実生段階においても高い精度で行うことができることを知見した。
上記の知見に基づいてなされた本発明のリンゴ果実の日持ち性の予見方法は、請求項1記載の通り、リンゴの組織(果実を除く)を用いてMdACS3a遺伝子の5’隣接領域に存在するグアニンとアデニンで構成されるSSRの回数を調べ、回数が15〜25回の遺伝子型を有する個体を日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体として判定することを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号6記載の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRを行った後、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号7記載の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRを行うことで、指標とするSSRを含む遺伝子断片を増幅し、当該遺伝子断片の塩基配列を決定することによってSSRの回数を調べることを特徴とする。
また、本発明の日持ち性に優れた果実を結実するリンゴの育種方法は、請求項3記載の通り、請求項1記載の判定を実生段階の組織を用いて行い、日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体として判定された個体を選抜し、選抜された個体を育成系統として育種を行うことを特徴とする。
また、本発明の遺伝子は、請求項4記載の通り、配列番号4記載のアミノ酸配列を有する289位がバリンであるMdACS3aをコードしてなることを特徴とする。
また、本発明の289位がバリンであるMdACS3aは、請求項5記載の通り、配列番号4記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする。
また、本発明の請求項1記載のリンゴ果実の日持ち性の予見方法を実施するためのキットは、請求項6記載の通り、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号6記載の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットと、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号7記載の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットを少なくとも含んでなることを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号6記載の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRを行った後、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号7記載の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRを行うことで、指標とするSSRを含む遺伝子断片を増幅し、当該遺伝子断片の塩基配列を決定することによってSSRの回数を調べることを特徴とする。
また、本発明の日持ち性に優れた果実を結実するリンゴの育種方法は、請求項3記載の通り、請求項1記載の判定を実生段階の組織を用いて行い、日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体として判定された個体を選抜し、選抜された個体を育成系統として育種を行うことを特徴とする。
また、本発明の遺伝子は、請求項4記載の通り、配列番号4記載のアミノ酸配列を有する289位がバリンであるMdACS3aをコードしてなることを特徴とする。
また、本発明の289位がバリンであるMdACS3aは、請求項5記載の通り、配列番号4記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする。
また、本発明の請求項1記載のリンゴ果実の日持ち性の予見方法を実施するためのキットは、請求項6記載の通り、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号6記載の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットと、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号7記載の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットを少なくとも含んでなることを特徴とする。
本発明によれば、実生段階においても個体が日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体か否かの判定を高い精度で行うことができる、リンゴ果実の日持ち性の予見方法を提供することができる。
本発明のリンゴ果実の日持ち性の予見方法は、リンゴの組織(果実を除く)を用いてMdACS3a遺伝子の5’隣接領域に存在するグアニンとアデニン(以下、「GA」と略称する)で構成されるSSRの回数を調べ、回数が15〜25回の遺伝子型を有する個体を日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体として判定することを特徴とするものである。既に知られている前出のMdACS3a遺伝子の翻訳産物(446個のアミノ酸からなるタンパク質:配列番号2)は、酵素活性中心に位置する289位がグリシンであり、酵素活性を有していることでエチレンが生成するが、本発明においてDNAマーカーとして用いるSSRの回数が15〜25回であるMdACS3a遺伝子(例えば“ゴールデンデリシャス”由来の配列番号3記載の塩基配列からなるもの)の翻訳産物は、前出のMdACS3a遺伝子の翻訳産物と同じく446個のアミノ酸からなるタンパク質であるが(配列番号4)、酵素活性中心に位置する289位がバリンであることによって酵素活性を失っていることでエチレンが生成しない。従って、289位がバリンであるMdACS3aをコードする遺伝子をホモで有する個体は、結実する果実の日持ち性がよい(完熟の進行が遅い)個体であると判定することができ、289位がバリンであるMdACS3aをコードする遺伝子をヘテロで有する個体は、日持ち性に優れた果実を結実し得ると判定することができる。逆に、289位がバリンであるMdACS3aをコードする遺伝子を持たない個体(289位がグリシンであるMdACS3aをコードする遺伝子をホモで有する個体)は、結実する果実の日持ち性が劣ると判定することができる。故に、リンゴ果実の日持ち性の予見を高い精度で行うことができる。よって、本発明によれば、指標とするSSRの回数を実生段階の組織(例えば子葉など)を用いて調べることにより、日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体の選抜が可能となるので、選抜された個体を育成系統として採用することにより、日持ち性に優れた果実を結実するリンゴの育種を効率的に行うことができる。リンゴの品種育成は交雑育種法によって行われるが、上述したようにリンゴは幼若期が非常に長い果樹であるため、実生段階で果実の形質を予見できるDNAマーカーによる選抜効果は極めて大きい(図1)。なお、本発明において、「MdACS3a遺伝子の5’隣接領域」とは、より詳細には、MdACS3a遺伝子の−600〜−200の領域(転写開始点より上流200〜600bpの領域)を意味する。
DNAマーカーとして用いるSSRの回数を15〜25回と規定するのは、塩基配列を決定する際の困難性(スリッページの発生)に起因して間違ったカウントをしてしまう可能性を考慮したものであるが、多くの場合、結果は18〜24回である。一方、289位がグリシンであるMdACS3aをコードする遺伝子が同領域に持つGAで構成されるSSRの回数は、多くの場合、8〜10回である。従って、両者の回数の差異は明確であることから、一方を他方と間違うことはない。
指標とするSSRの回数は、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号6記載の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRを行った後、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号7記載の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRを行うことで、指標とするSSRを含む遺伝子断片を増幅し、当該遺伝子断片の塩基配列を決定することによって調べることができる。2段階でPCRを行うのは、MdACS3a遺伝子と同様に、MdACS3遺伝子のサブファミリーに属する遺伝子として知られているMdACS3b遺伝子とMdACS3c遺伝子が由来の断片の混入を防ぐためである。なお、PCRの実行とSSRの回数のカウントは、当業者に周知の方法によって行えばよい。配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号6記載の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットと、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号7記載の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットを少なくとも含んでなる上記のPCRを実行するためのキット(DNAポリメラーゼ、緩衝液、dNTPなどを含んでいてもよい)を予め準備しておくことで、上記の操作を効率的に行うことができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
(1)MdACS3a遺伝子が有するSSRの分析
複数種類の品種のリンゴの子葉から抽出したゲノムDNAを用いてSNPs解析を行うことで、既に知られている酵素活性中心に位置する289位がグリシンであるMdACS3aをコードする遺伝子とともに、その対立遺伝子として、酵素活性中心に位置する289位がバリンであるMdACS3aをコードする遺伝子を見出した(MdACS3aの289位が酵素活性中心に位置することはYip WK et al.,1990,Characterization and sequencing of the active site of 1−aminocyclopropane−1−carboxylate synthase.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,87,7930−7934.による)。また、それぞれの遺伝子は、CDSに連鎖するGAで構成される特徴的なSSRをMdACS3a遺伝子の−400〜−300の領域に持つことを見出した。具体例として、既に知られている“ゴールデンデリシャス”由来の前者の遺伝子の塩基配列とその翻訳産物のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1と配列番号2に、今回、新たに見出された“ゴールデンデリシャス”由来の後者の遺伝子の塩基配列とその翻訳産物のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3と配列番号4に示す。配列番号1記載の塩基配列においては931〜950位が指標とするSSR(繰り返し回数は10回)で1300位が転写開始点であり(CDS:1372..1551,1668..1969,2219..3077)、配列番号3記載の塩基配列においては931〜978位が指標とするSSR(繰り返し回数は24回)で1328位が転写開始点である(CDS:1400..1579,1696..1997,2247..3105)。なお、対立遺伝子型の判定のためのPCRは、MdACS3b遺伝子とMdACS3c遺伝子が由来の断片の混入を防ぐため、最初に、フォワードプライマーとして5’−TGTATGCAGCCCTAGATATC−3’(MdACS3a−1F:配列番号5)、リバースプライマーとして5’−CCATCGATTATACAAACTGATTGTG−3’(MdACS3a−2R:配列番号6)を用いて、94℃3分→(94℃10秒→58℃5秒→72℃3分)×35サイクル→72℃3分の条件で行い、次に、フォワードプライマーとして前出のフォワードプライマー、リバースプライマーとして5’−CTACATGTACCCAACAACTG−3’(MdACS3a−1R:配列番号7)を用いて、94℃3分→(94℃30秒→58℃30秒→72℃1分)×35サイクル→72℃3分の条件で行うことによって2段階で行った。図2に289位がグリシンであるMdACS3aをコードする遺伝子を例にとってPCRプライマー部位を示す(下線部分がGAで構成されるSSRである)。
複数種類の品種のリンゴの子葉から抽出したゲノムDNAを用いてSNPs解析を行うことで、既に知られている酵素活性中心に位置する289位がグリシンであるMdACS3aをコードする遺伝子とともに、その対立遺伝子として、酵素活性中心に位置する289位がバリンであるMdACS3aをコードする遺伝子を見出した(MdACS3aの289位が酵素活性中心に位置することはYip WK et al.,1990,Characterization and sequencing of the active site of 1−aminocyclopropane−1−carboxylate synthase.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,87,7930−7934.による)。また、それぞれの遺伝子は、CDSに連鎖するGAで構成される特徴的なSSRをMdACS3a遺伝子の−400〜−300の領域に持つことを見出した。具体例として、既に知られている“ゴールデンデリシャス”由来の前者の遺伝子の塩基配列とその翻訳産物のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1と配列番号2に、今回、新たに見出された“ゴールデンデリシャス”由来の後者の遺伝子の塩基配列とその翻訳産物のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3と配列番号4に示す。配列番号1記載の塩基配列においては931〜950位が指標とするSSR(繰り返し回数は10回)で1300位が転写開始点であり(CDS:1372..1551,1668..1969,2219..3077)、配列番号3記載の塩基配列においては931〜978位が指標とするSSR(繰り返し回数は24回)で1328位が転写開始点である(CDS:1400..1579,1696..1997,2247..3105)。なお、対立遺伝子型の判定のためのPCRは、MdACS3b遺伝子とMdACS3c遺伝子が由来の断片の混入を防ぐため、最初に、フォワードプライマーとして5’−TGTATGCAGCCCTAGATATC−3’(MdACS3a−1F:配列番号5)、リバースプライマーとして5’−CCATCGATTATACAAACTGATTGTG−3’(MdACS3a−2R:配列番号6)を用いて、94℃3分→(94℃10秒→58℃5秒→72℃3分)×35サイクル→72℃3分の条件で行い、次に、フォワードプライマーとして前出のフォワードプライマー、リバースプライマーとして5’−CTACATGTACCCAACAACTG−3’(MdACS3a−1R:配列番号7)を用いて、94℃3分→(94℃30秒→58℃30秒→72℃1分)×35サイクル→72℃3分の条件で行うことによって2段階で行った。図2に289位がグリシンであるMdACS3aをコードする遺伝子を例にとってPCRプライマー部位を示す(下線部分がGAで構成されるSSRである)。
(2)MdACS3aの対立遺伝子の構造的特徴
図3に示す。上記の分析により、289位がグリシンであるMdACS3a(MdACS3a−G)をコードする遺伝子は、5’隣接領域にGAで構成される8〜10回のSSRを持つことがわかった。一方、289位がバリンであるMdACS3a(MdACS3a−V)をコードする遺伝子は、5’隣接領域にGAで構成される18〜24回のSSRを持ち、MdACS3a−Gをコードする遺伝子に対し、第3エクソンにおいてGからTへの塩基置換が存在することがわかった。以上の結果から、図中に示したプライマーを用いたPCRを行うことによってGAで構成されるSSRの回数を判定することにより、両遺伝子型の判定が可能であることがわかった。
図3に示す。上記の分析により、289位がグリシンであるMdACS3a(MdACS3a−G)をコードする遺伝子は、5’隣接領域にGAで構成される8〜10回のSSRを持つことがわかった。一方、289位がバリンであるMdACS3a(MdACS3a−V)をコードする遺伝子は、5’隣接領域にGAで構成される18〜24回のSSRを持ち、MdACS3a−Gをコードする遺伝子に対し、第3エクソンにおいてGからTへの塩基置換が存在することがわかった。以上の結果から、図中に示したプライマーを用いたPCRを行うことによってGAで構成されるSSRの回数を判定することにより、両遺伝子型の判定が可能であることがわかった。
(3)MdACS3a−GとMdACS3a−VのACC合成酵素活性の比較
MdACS3a−Gの全長cDNAとMdACS3a−Vの全長cDNAのそれぞれを、大腸菌pETベクター(pET11d:STRATAGENE社)に挿入し、大腸菌(BL21)内で発現させた。大腸菌から翻訳産物を抽出し、Lizadaらの方法(Anal.Biochem.,100,140−145,1979)に従って、基質であるS−アデノシルメチオニン(SAM)と補酵素ピリドキサル5リン酸を加えて反応させ、生成した1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸を塩化水銀(HgCl2)と塩素酸ナトリウムを加えることで化学的にエチレンに変換し、その量をガスクロマトグラフィーにて測定することによってACC合成酵素活性を調べた。また、ポジティブコントロールとして、MdACS1についても、その遺伝子(Accession No.MDU89156)を用いて同様の方法でACC合成酵素活性を調べた。結果を図4に示す。図4から明らかなように、MdACS3a−Gは、MdACS1の約1/40のACC合成酵素活性を有していたが、MdACS3a−Vは、289位がバリンであるが故にACC合成酵素活性が失われていた(図5に両酵素のアミノ酸の置換部位を枠線で示す)。
MdACS3a−Gの全長cDNAとMdACS3a−Vの全長cDNAのそれぞれを、大腸菌pETベクター(pET11d:STRATAGENE社)に挿入し、大腸菌(BL21)内で発現させた。大腸菌から翻訳産物を抽出し、Lizadaらの方法(Anal.Biochem.,100,140−145,1979)に従って、基質であるS−アデノシルメチオニン(SAM)と補酵素ピリドキサル5リン酸を加えて反応させ、生成した1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸を塩化水銀(HgCl2)と塩素酸ナトリウムを加えることで化学的にエチレンに変換し、その量をガスクロマトグラフィーにて測定することによってACC合成酵素活性を調べた。また、ポジティブコントロールとして、MdACS1についても、その遺伝子(Accession No.MDU89156)を用いて同様の方法でACC合成酵素活性を調べた。結果を図4に示す。図4から明らかなように、MdACS3a−Gは、MdACS1の約1/40のACC合成酵素活性を有していたが、MdACS3a−Vは、289位がバリンであるが故にACC合成酵素活性が失われていた(図5に両酵素のアミノ酸の置換部位を枠線で示す)。
(4)各種のリンゴ品種の対立遺伝子型の判定結果
PCR産物をアクリルアミドゲル(Acrykanude:Bis=30:1、6%)により1500Vで1時間電気泳動を行った結果を図6に示す。図6から品種毎の遺伝子型が明らかとなった。“はつあき(Hatsuaki)”は果実の日持ち性が優れている品種として知られているが、この事実は289位がバリンであるMdACS3aをコードする遺伝子(MdACS3a−V)をホモで有していることによって裏付けられた。
PCR産物をアクリルアミドゲル(Acrykanude:Bis=30:1、6%)により1500Vで1時間電気泳動を行った結果を図6に示す。図6から品種毎の遺伝子型が明らかとなった。“はつあき(Hatsuaki)”は果実の日持ち性が優れている品種として知られているが、この事実は289位がバリンであるMdACS3aをコードする遺伝子(MdACS3a−V)をホモで有していることによって裏付けられた。
(5)まとめ
以上の実験結果から、MdACS3a遺伝子の5’隣接領域に存在するGAで構成されるSSRの回数を調べ、回数が15〜25回の遺伝子型を有する個体は、ACC合成酵素活性が失われた289位がバリンであるMdACS3aを発現するので、日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体であると判定することができることから、この判定結果によって果実の日持ち性を予見することができることがわかった。
以上の実験結果から、MdACS3a遺伝子の5’隣接領域に存在するGAで構成されるSSRの回数を調べ、回数が15〜25回の遺伝子型を有する個体は、ACC合成酵素活性が失われた289位がバリンであるMdACS3aを発現するので、日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体であると判定することができることから、この判定結果によって果実の日持ち性を予見することができることがわかった。
本発明は、実生段階においても個体が日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体か否かの判定を高い精度で行うことができる、リンゴ果実の日持ち性の予見方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
Claims (6)
- リンゴの組織(果実を除く)を用いてMdACS3a遺伝子の5’隣接領域に存在するグアニンとアデニンで構成されるSSRの回数を調べ、回数が15〜25回の遺伝子型を有する個体を日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体として判定することを特徴とするリンゴ果実の日持ち性の予見方法。
- 配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号6記載の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRを行った後、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号7記載の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRを行うことで、指標とするSSRを含む遺伝子断片を増幅し、当該遺伝子断片の塩基配列を決定することによってSSRの回数を調べることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 請求項1記載の判定を実生段階の組織を用いて行い、日持ち性に優れた果実を結実する、または、結実し得る個体として判定された個体を選抜し、選抜された個体を育成系統として育種を行うことを特徴とする日持ち性に優れた果実を結実するリンゴの育種方法。
- 配列番号4記載のアミノ酸配列を有する289位がバリンであるMdACS3aをコードしてなることを特徴とする遺伝子。
- 配列番号4記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする289位がバリンであるMdACS3a。
- 配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号6記載の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットと、配列番号5記載の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号7記載の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットを少なくとも含んでなることを特徴とする請求項1記載のリンゴ果実の日持ち性の予見方法を実施するためのキット。
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CN102653790A (zh) * | 2012-03-31 | 2012-09-05 | 中国农业科学院果树研究所 | 苹果种质资源改良tp-m13-ssr分子标记方法 |
CN109825636A (zh) * | 2019-04-04 | 2019-05-31 | 山西省农业科学院生物技术研究中心 | 一种用于鉴定苹果新品种“赤霞”指纹图谱的ssr分子标记及其应用 |
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