JP2010180443A - 高炭素パーライト系レールの熱処理方法 - Google Patents

高炭素パーライト系レールの熱処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】重荷重鉄道で使用される高炭素含有のパーライト組織のレールにおいて、高硬度のパーライト組織を得て、頭部の耐表面損傷性を安定的に向上させたレールを安定的に提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.85〜1.40%、V:0.05〜0.50%、N:0.0060〜0.0300、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる熱間圧延用鋼片を用いてレールを製造するに際して、熱間圧延工程における仕上圧延工程後、前記レールの頭部を頭部表面温度が700℃以上のオーステナイト域温度から、5〜30℃/secの冷却速度で加速冷却を施し、レール頭部の表面温度が550〜650℃に達した時点で加速冷却を停止し、引き続き550〜650℃の温度範囲内で5〜180sec保定する。
【選択図】なし

Description

本発明は重荷重鉄道等で使用される高炭素パーライト系レールにおいて、高強度且つ延性に優れたパーライト系高炭素レールを安定的に得る熱処理方法に関するものである。
近年海外の重荷重鉄道では、鉄道輸送の効率をより一層高めるために、貨物の高積載化を強力に進めている。その結果、貨車の重量が大きくなり、急曲線のレールではゲージコーナー(G.C.)部や頭側部の耐摩耗性が十分確保できず、摩耗によるレール寿命の低下が問題となってきた。更に、貨車から受ける荷重により、G.C.や頭頂部において塑性変形起因の表面損傷が多発するようになってきた。このような背景から、現状の共析炭素(0.8%C)鋼以上の耐摩耗性を有する高強度レールの開発が求められるようになってきた。
これらの問題を解決するため、下記に示すようなレールが開発された。
(1)過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を増加させた耐摩耗性に優れたレール(特許文献1)。
(2)過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を増加させ、同時に硬さを制御した耐摩耗性に優れたレール(特許文献2)。
これらのレールの特徴は、鋼の炭素量を増加させ、パーライトラメラ中の耐摩耗性に優れたセメタイト相の体積比率を増加させ、さらに硬さを制御することにより、パーライト組織の耐摩耗性を向上させるものであった。
しかし、上記(1),(2)に示された発明レール鋼は、主にパーライトラメラ中の耐摩耗性に優れたセメタイト相の体積比率を増加させ、パーライト組織の耐摩耗性を向上させるものであった。しかし上記レール鋼では、パーライト組織自体の硬度に上限があるため、レール頭表部で発生する塑性変形起因の損傷性に対しての抵抗性が弱く、過酷な使用条件ではレール頭表部に表面損傷が発生する場合があった。
さらに、炭素量の高い過共析鋼を用いて、レール頭部の耐摩耗性と強度を向上させた下記に示すようなレールが開発された。
(3)過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)にV、さらにはNを添加し、圧延後、オーステナイト域温度にあるレール頭部を加速冷却することにより、耐摩耗性と耐内部疲労損傷性を向上させたレールおよびその製造方法(特許文献3)。
このレールの特徴は、過共析鋼にV、さらにはN を添加し、冷却速度が遅く、パーライト組織の高硬度が困難なレール頭部内部に、Vの炭化物、窒化物および炭窒化物を析出させることにより、レール頭表面から内部までより均一な硬度分布を付与し、レールの耐摩耗性と耐内部疲労損傷性大きく向上させるものであった。
また上記(3)に示された発明レール鋼は、耐摩耗性に優れた過共析鋼(C:0.85超〜1.20%) に微量なV、さらにはN を添加し、主に冷却速度の遅いレール頭部内部にVの炭化物、窒化物および炭窒化物を析出させることにより、レール頭表面から内部までより均一な硬度分布を付与し、耐摩耗性と耐内部疲労損傷性を向上させ、重荷重鉄道用レールの高寿命化に寄与するものであった。
しかし、上記(3)に示されたレール鋼では、冷却速度の速いレール頭表部において析出物の生成が図れず、硬度が上昇しないため、レール頭表部で発生する塑性変形起因の損傷性に対しての抵抗性が弱く、重荷重鉄道の過酷な使用条件では、レール頭表部に表面損傷が発生する場合があった。また熱処理時の加速冷却速度が速い場合は、レール頭表面と頭部内部の硬度差が過大となり、重荷重鉄道の過酷な使用条件ではレール頭部内部から疲労き裂が生成し、内部疲労損傷性が発生する場合があった。
このような背景から、過共析炭素含有のレール鋼において耐摩耗性を確保し、レール全断面において強度を増加させることで、レール頭表部において表面損傷の発生を防止し、同時に、レール頭部内部において疲労損傷の発生を防止するレールの製造方法の開発が求められていた。
特開平8−144016号公報 特開平8−246100号公報 特開2000−345296号公報
本発明は、上記の現状を鑑みて考案されたもので、熱間圧延工程においてオーステナイト相にV系析出物(炭化物、窒化物、炭窒化物)を析出させて、熱処理までの圧延後のオーステナイト粒成長抑制により、安定的にパーライトブロックサイズの微細化を達成し、鋼レールの高炭素化に伴う延性低下を改善すると共に、冷却工程において、パーライト組織中のフェライト相にV系析出物を析出させて、強度の向上を図る熱処理方法を提供することを目的とするものである。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.85〜1.40%、V:0.05〜0.50%、N:0.0060〜0.0300、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる熱間圧延用鋼片を用いてレールを製造するに際して、熱間圧延工程における仕上圧延工程後、前記レールの頭部を頭部表面温度が700℃以上のオーステナイト域温度から、5〜30℃/secの冷却速度で加速冷却を施し、レール頭部の表面温度が550〜650℃に達した時点で加速冷却を停止し、引き続き550〜650℃の温度範囲内で5〜180sec保定することを特徴とする高炭素パーライト系レールの熱処理方法。
(2)前記保定の時間(th、sec)が、鋼片の炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)、N量(N、質量)、保定温度(Th、℃)からなる式1
H=710−60×log(10×C)−20×log(10×V)−log(10×N)−2×10/Th・・・ (式1)
で示される値(H)に対し、
H−20<th<H+20
の範囲にあることを特徴とする(1)に記載の高炭素パーライト系レールの熱処理方法。
(3)前記仕上圧延工程の仕上最終圧延温度(FT、℃)が、鋼片の炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)およびN量(N、質量)からなる式2
P=750−100×C+400×V−3.0×10×N ・・・ (式2)
で示される値(P)に対し、
P−25<FT<P+25
の範囲にあることを特徴とする(1)〜(2)のいずれか1項に記載の高炭素パーライト系レールの熱処理方法。
本発明によれば、重荷重鉄道で使用される高炭素含有のパーライト組織の高レールにおいて、V量、C量、N量を適正な範囲に収め、熱間圧延の仕上圧延工程においてオーステナイト中に微細なV系析出物(炭化物、窒化物、炭窒化物)を析出させて、オーステナイトの粒成長を抑制することにより、微細なパーライト組織が得られ、鋼レールの延性を改善し、更に、熱間圧延後の熱処理工程において、冷却を制御することで、フェライト中に更にV系析出物を析出させてフェライトの析出強化により強度を増加させることで、使用寿命の向上を図ることが可能である。
C量が1.0質量%、V量が0.20質量%、N量が0.0085質量%の鋼片の熱間圧延試験結果を等温保持温度とフェライト相中に析出したV量の関係で示した図。 V量が0.15質量%、N量が0.0120質量%の鋼片の熱間圧延試験結果をC量とフェライト相中に析出したV量の関係で示した図。 C量が0.90質量%、V量が0.25質量%、N量が0.0130%の鋼片の熱間圧延実験結果を仕上最終圧延温度とオーステナイト相中に析出したV量の関係で示した図。 V量が0.18質量%、N量が0.0090%Cの鋼片の熱間圧延試験結果をC量とオーステナイト相中に析出したV量の関係で示した図。
次に、本発明の限定理由について詳細に説明する。
(1)熱間圧延用鋼片の化学成分の限定理由
まず、レール鋼の化学成分を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。以下、組成における質量%は単に%と記載する。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.85%未満では、パーライト組織中のセメンタイト相の体積比率が確保できず、重荷重鉄道において必要とされる耐摩耗性が維持できない。また、C量が1.40%を超えると、本発明の製造方法を適用しても、粒成長が抑制できず、かつオーステナイト粒界上での初析セメンタイトの生成が顕著になり、さらに粗大なV炭化物を形成するため延性が低下する。このため、C量を0.85〜1.40%に限定した。
Vは、熱間圧延に際し、オーステナイト相中においてCやNと結合し、V炭化物、V窒化物、V炭窒化物を形成することで、最終圧延後に再結晶したオーステナイト相の粒界移動をピン止めし、オーステナイト粒成長を抑制することで、後の冷却工程でパーライト変態する際にパーライトブロック(パーライト組織中において、フェライトの結晶方位が同一の領域)が微細化され、レールの延性を向上させる。更に、オーステナイト相中で析出しなかった固溶Vは、熱間圧延後の熱処理工程において、パーライト組織中のフェライト相にV炭化物、V窒化物、V炭窒化物として析出し、フェライト相を析出強化させパーライト組織の硬度を向上させる。このためVはレールの硬度と延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、その効果は0.05%未満では期待できず、パーライト組織の延性の向上や強度の増加は認められない。また、0.50%を超えると、鋳造後の鋼片に粗大なV炭化物、V窒化物、V炭窒化物が生成し、熱間圧延時の再加熱工程において未固溶となるため、微細な析出物として再析出させることが出来なくなり、パーライト組織の延性の向上および強度の増加が達成できない。このため、V量を0.05〜0.50%に限定した。
Nは、熱間圧延に際し、オーステナイト相中においてVと結合することで、V窒化物あるいはV炭窒化物を形成し、最終圧延後に再結晶したオーステナイト相の粒界移動をピン止めし、オーステナイト粒成長を抑制することで、後の冷却工程でパーライト変態する際にパーライトブロック(パーライト組織中において、フェライトの結晶方位が同一の領域)が微細化され、レールの延性を向上させる。また、熱間圧延後の熱処理工程において、パーライト組織中のフェライト相において、Vと結合し、V窒化物、V炭窒化物として析出することでフェライト相を析出強化させ、パーライト組織の硬度を向上させる。しかし、0.0060%未満ではその効果が十分に期待できない。また、0.0300%を超えると粗大なV窒化物が生成してしまい、熱間圧延の再加熱工程において未固溶となるため、微細な析出物として再析出させることが出来なくなり、パーライト組織の延性の向上および強度の増加が達成できない。このためN量を0.0060〜0.0300%に限定した。
Siは、脱酸材として非常に有効な元素である。また、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化によりレールの強度を向上させ、かつ過共析鋼において、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、延性の低下を抑制する元素である。しかし、0.10%未満ではその効果が十分に期待できない。また、2.00%を超えるとフェライト相が著しく強化されるため、延性が低下し、レールの延性が向上しない。このためSi量は0.10〜2.00%が望ましい。
Mnは焼き入れ性を高め、パーライト変態温度を低下させ、パーライトラメラ間隔を微細化することによりレールの高強度化を達成し、同時に初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素である。しかし0.10%未満ではこれらの効果が小さく、また、2.00%を超えると、焼入れ性が著しく増加し、延性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなることや、偏析が助長され、偏析部にレールの延性に有害な初析セメンタイトが生成しやすくなり、延性が低下する。このためMn量は0.10〜2.00%が望ましい。
なお、本発明において、熱間圧延用鋼片の化学成分については、C、V、N、Si、Mn以外の成分は特に限定していないが、さらに必要に応じて、Ti:0.005〜0.0500%、Nb:0.002〜0.050%、Cr:0.05〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%、B :0.0001〜0.0050%、Co:0.10〜2.00%、Cu:0.05〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0150%、Al:0.0050〜1.00%、Zr:0.0001〜0.2000%の1種または2種以上を含有することができる。以下に上記成分範囲を限定した理由を述べる。
Tiはオーステナイト中で窒化物や炭窒化物を形成し、オーステナイト粒の粒成長を抑制し、延性を向上させるのに有効な成分である。しかし、Ti量が0.0050%未満では、その効果が少ない。また、Ti量が0.0500%を超えると、粗大な析出物が生成して、レールの延性が大きく低下するので、Ti添加量は0.0050〜0.0500%が望ましい。
Nbは、熱間圧延で析出したNb炭化物、Nb炭窒化物により、再結晶後のオーステナイト粒の粒成長を抑制し、また、熱間圧延後の熱処理工程でパーライト組織のフェライト相中に析出したNb炭化物、Nb炭窒化物による析出強化により、パーライト組織の延性を高めると同時に、強度を向上させるのに有効な元素である。また、再加熱時に炭化物や炭窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する元素である。しかし、その効果は0.002%未満では期待できず、パーライト組織の硬度の向上や延性の改善は認められない。また、0.050%を超える添加すると、粗大なNb炭化物やNb窒化物が生成し、レール鋼の延性が低下する。このため、Nb量は0.002〜0.050%が望ましい。
Crは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させることにより耐摩耗性を向上させる元素である。ただし、0.05%未満ではその効果が小さく、2.00%を超える過剰な添加を行うと、焼入性が著しく増加し、マルテンサイト組織が多量に生成し、レール鋼の延性が低下する。このため、Cr量は0.05〜2.00%が望ましい。
Moは、Cr同様パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。ただし、0.01%未満ではその効果が小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また、0.50%を超える過剰な添加を行うと、パーライト組織の変態速度が著しく低下し、レール鋼の延性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなる。このため、Mo添加量は0.01〜0.50%が望ましい。
Bは、旧オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物を形成し、初析セメンタイト組織の生成を微細化し、同時に、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、頭部の硬度分布を均一化することにより、レールの延性低下を防止し、高寿命化を図る元素であるが、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、初析セメンタイト組織の生成やレール頭部の硬度分布には改善が認められない。また、0.0050%を超えて添加すると、旧オーステナイト粒界に粗大な鉄の炭ほう化物が生成し、レール鋼の延性の靭性が大きく低下することから、B量は0.0001〜0.0050%が望ましい。
Coは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であり、さらに、パーライトの変態エネルギーを増加させて、パーライト組織を微細にすることにより延性を向上させる元素であるが、0.10%未満ではその効果が期待できない。また、2.00%を超えて添加すると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、レール鋼の延性が著しく低下してしまう。このため、Co量は0.10〜2.00%が望ましい。
Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.05%未満ではその効果が期待できない。また、1.00%を超えて添加すると、著しい焼入れ性向上により、レール頭部の耐摩耗性やレール鋼の延性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなる。さらに、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、レール鋼の延性が低下する。このため、Cu量は0.05〜1.00%が望ましい。
Niは、Cu添加による熱間圧延時の脆化を防止し、同時に、フェライトへの固溶強化によりパーライト鋼の高硬度(強度)化を図る元素である。しかし、0.01%未満では、その効果が著しく小さく、また、1.00%を超えて添加すると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、レール鋼の延性が低下する。このため、Ni量は0.01〜1.00%が望ましい。
Mgは、O、または、SやAl等と結合して微細な酸化物や硫化物を形成し、熱間圧延における鋼片の再加熱工程において、結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO,MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成し、レール鋼の延性を低下させる。このため、Mg量は0.0005〜0.0200%が望ましい。
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらに、CaSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0150%を超えて添加すると、Caの粗大酸化物が生成し、レール鋼の延性が低下するため、Ca量は0.0005〜0.0150%が望ましい。
Alは、脱酸剤として必須の成分である。また、共析変態温度を高温側へ、共析炭素量を高炭素側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高強度化と初析セメンタイト組織の生成抑制に有効な元素である。ただし、0.0050%未満では、その効果が弱く、1.00%を超えて添加すると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる粗大なアルミナ系介在物が生成し、レール鋼の延性が低下するとともに、溶接時に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下するため、Al量は0.0050〜1.00%が望ましい。
Zrは、介在物としてのZrOがオーステナイトとの格子整合性が良いため、オーステナイトが凝固初晶である高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、レール偏析部に生成する初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素である。しかし、Zr量が0.0001%未満では、ZrO系介在物の数が 少なく、凝固核として十分な作用を示さない。その結果、偏析部に初析セメンタイト組織が生成し、レール鋼の延性を低下させる。また、Zr量が0.2000%を超えると、粗大Zr系介在物が多量に生成して、レール鋼の延性が低下する。このため、Zr量は0.0001〜0.2000%が望ましい。
また、上記成分以外にレール鋼に含まれる元素として、PやSがある。
Pは、レール鋼の延性を劣化させる元素であり、0.035%を越えて含有すると、その影響が無視できなくなる。そのためPの含有量は0.035%以下が望ましい。好ましくは、0.020%以下である。
Sは、主として介在物(MnS等)の形態で鋼中に存在し、鋼の脆化(延性の低下)を引き起こす元素である。特に、S含有量が0.035%を超えると、脆性への悪影響を無視できなくなる。よって、Sの含有量は0.035%以下が望ましい。好ましくは、0.020%以下である。
次に、本発明の製造条件について詳細に述べる。
(1)上記のような成分組成で構成されるレール鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法により、熱間圧延用鋼片を鋳造する。次に、熱間圧延用鋳片を所定の温度及び所定の保持時間で再加熱し、熱間圧延工程を施す。この熱間圧延工程は、粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程からなり、仕上圧延工程は複数回のパス(圧延)が行われる工程であり、仕上圧延工程の最終1パスを仕上最終圧延という。
なお、本製造方法では熱間工程における、熱間圧延用鋼片の再加熱温度については特に限定していないが、最加熱温度が1,200℃以下であると、鋳造後の冷却中に析出した粗大なV系析出物が未固溶となり、オーステナイト粒成長のピンニングに必要な微細な析出物および、パーライト組織を強化するフェライト中に析出する微細なV系析出物を生成させることができなくなる。そのため、加熱温度は1,200℃以上が望ましく、さらに粗大なV系析出物を十分に鋼中に固溶させるため、1,200℃以上の保持時間が40分以上であることが望ましい。
(2)仕上圧延工程の仕上最終圧延温度、加速冷却後の保定時間の限定理由
次に、請求項1において熱間圧延の際の仕上圧延後の冷却条件を限定した理由について詳細に説明する。
<加速冷却開始温度>
レール頭部表面の加速冷却速度開始温度が700℃未満になると、加速冷却前にパーライト変態が始まり、ラメラ間隔が粗大となってしまうため、レール頭部の高硬度化が図れず、耐摩耗性が確保できない。また、鋼の炭素量や合金成分によっては、初析セメンタイト組織が生成し、レール頭部表面の延性が低下する。このため、レール頭部表面の加速冷却速度開始温度を700℃以上とした。
次に、加速冷却速度範囲、加速冷却停止温度範囲、加速冷却後の保定時間範囲を前記のように定めた理由について詳細に説明する。
<加速冷却速度>
先ず、オーステナイト域温度から5〜30℃/secの冷却速度でレール頭部を加速冷却する理由について説明する。加速冷却速度が5℃/sec以下になると、成分系によっては加速冷却途中の高温度域で初析セメンタイト組織が生成し、レールの靭性や延性が低下することや、加速冷却途中の高温度域でパーライト変態が始まり、硬さの低いパーライト組織が生成し、高強度化が困難となるため、加速冷却速度の下限を5℃/secに限定した。また、加速冷却速度が30℃/secを超えると、空気およびミスト等のいずれの冷媒を用いても冷却速度が安定せず、冷却停止温度の制御が困難となり、過冷却によりレールの耐摩耗性に有害なベイナイト組織が生成し易くなることや、本成分系においては冷却速度が30℃/sec以下であれば、初析セメンタイト組織の生成の防止が可能となり、十分に高温度域で生成する硬さの低いパーライト組織の生成が抑制できるため、加速冷却速度の上限を30℃/sec以下に限定した。
<加速冷却停止温度>
次に、レール頭部の温度が650〜550℃に達した時点で加速冷却を停止する理由について説明する。オーステナイト温度域から5℃/secの冷却速度で加速冷却し、レール温度が650℃を超える温度域で加速冷却を停止すると、その後の保定領域において硬さの低いパーライト組織が多く生成し、高強度化が困難となるため、加速冷却停止温度の上限を650℃以下に限定した。また、550℃未満の温度域で加速冷却を停止すると、その後の保定領域においてレールの耐摩耗性に有害なベイナイト組織が生成し易くなるばかりでなく、フェライト中でのV系析出物の生成が抑制されるため、加速冷却停止温度の下限を550℃以上に限定した。
<加速冷却後の保定温度および保定時間>
次に、加速冷却後にレール頭部を550〜650℃の温度範囲内で5〜180secの保定を行う理由について説明する。保定時間が5sec未満になると、成分系や圧延後のオーステナイト粒度によっては、上記温度範囲内の保定中およびその後の放冷(自然冷却)中にパーライト変態が完全に終了せず、パーライト組織中にレールの靭性や耐摩耗性に有害なマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成するため、5sec以上に限定した。また、保定時間が180secを超えると、保定温度の選択よっては保定中に生成した高強度のパーライト組織中の、ラメラ状セメンタイトが部分的に分断し、球状化し始め、硬さが低下してしまうため、180sec以下に限定した。
なお、この製造法においては、保定時間中にパーライト変態が完了する場合と、その後の放冷(自然冷却)中にパーライト変態が完全に終了する場合がある。したがって、この保定時間はパーライト変態が完全に終了する時間を示すものではない。保定中にパーライト変態が終了しなくても、復熱を含むあるいは含まない保定後の冷却過程で変態が終了するため、問題はない。
従って、レール頭部がパーライト組織を呈した高強度レールを製造するには、レールの靭性や延性に有害な初析セメンタイト組織の生成を防止し、さらに、加速冷却途中の高温度域において、硬さの低いパーライト組織の生成を抑制し、変態時にパーライト中のフェライト中に微細なV系析出物を生成させるため、レール頭部をオーステナイト域温度から5〜30℃/secの冷却速度で550〜650℃まで加速冷却し、さらに、550〜650℃の温度範囲内で5〜180secの保定する必要がある。
なお、本保定領域では、550〜650℃の温度範囲内において、保定温度が低い程、即ちパーライト変態温度が低い程ラメラ間隔が微細化し、高硬度化を達成できるため、できるだけ低い温度で恒温保定することが望ましいが、冷媒の選択やその制御方法によっては、不規則な温度変化を生じることがある。しかし、保定温度が550〜650℃の温度範囲内であれば、いずれの温度においてもフェライト中に微細なV析出物が分散した十分な硬さを有するパーライト組織が得られる。したがって、本熱処理では保定中の不規則な温度変化の発生も含んでいる。
また、本製造方法によって製造されたレールの頭部の金属組織はパーライト組織であることが望ましいが、成分系、さらには、加速冷却条件の選択によっては、レール柱部、頭表部、頭部内部、底部のパーライト組織中に、微量な初析フェライト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入することがある。だが、これらの組織が混入しても、レール頭部内部の靭性には大きな悪影響を及ぼさないため、靭性に優れたパーライト系レールの組織としては、面積率で2%程度までは初析フェライト組織、ベイナイト組織、マルテンサイト組織含んでもかまわない。
本製造方法では、700℃以上のオーステナイト領域から加速冷却を施す際の冷媒については特に限定していないが、所定の冷却速度を確保するため、エアー、ミスト、エアーとミストの混合冷媒を用いて加速冷却を施すことが望ましい。
また、700℃以上のオーステナイト領域から550〜650℃まで、加速冷却を施した後の等温保定工程での冷却媒体としては、パーライト変態時の大量の発熱を抑制するため、水および水とエアーの混合気体の間欠噴射による制御冷却、あるいは油、熱湯、ポリマー+水、ソルトバスへの浸漬等を行い、変態発熱を抑えることが望ましい。なお、保定中の温度バラツキは±20℃以内に収めることが好ましい。さらに好ましくは±10℃以内である。
ここで、硬度の低いパーライトが発生してレール硬さが低くなることを防ぐため、保定終了後に復熱のある場合は保定上限温度である650℃を超えないことが望ましい。また、保定中にパーライト変態が完遂する場合には、パーライト組織の焼き戻しによる硬さ低下を抑える目的から、水等の冷媒を用いてレールをできるだけ早く常温域まで冷却することが望ましい。
(3)加速冷却後の保定時間の限定理由
請求項2において加速冷却後の保定時間(th)の範囲を、鋼片の炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)、N量(N、質量%)、保定温度(Th、℃)からなる式1で算定される値(H)に対し、H−20<th<H+20に限定した理由について詳細に説明する。
まず、本発明者らはC量が1.0質量%、V量が0.20質量%、N量が0.0085質量%の鋼インゴットを熱間圧延試験に供し、仕上圧延を同一条件で行い、仕上圧延後オーステナイト領域である720℃から550〜650℃の温度まで10℃/secの冷却速度で加速冷却を施し、60secの等温保持を行った。
図1に試験結果を等温保持温度とフェライト相中に析出したV量の関係で整理した図を示す。60secの等温保定の結果、等温保持温度が550〜575℃の場合、他の等温保持温度よりもフェライト相中のV系析出物量が一層多かった。それぞれの温度において保定時間を延長させると、フェライト中のV系析出物の量が増加した。以上のことから、700℃以上のオーステナイト領域から550〜650℃の温度までの加速冷却後の保定において、各温度における保定時間には最適範囲が存在することを確認した。
また、V量を0.15質量%、N量を0.0120質量%とし、C量を0.9〜1.2質量%に変化させた鋼インゴットを熱間圧延試験に供し、仕上圧延を同一条件で行い、仕上圧延後オーステナイト領域である720℃から580℃まで20℃/secの冷却速度で加速冷却を施し、その温度で50secの等温保持を行った。
図2に試験結果をC量とフェライト相中に析出したV量の関係で整理した図を示す。同じ保定温度でも、C量の上昇に伴いパーライト組織中のフェライト相に析出したV系析出物の量が増加する、即ち析出が促進することを知見した。同様の傾向はC量、N量を固定してV量を変化させた場合、あるいはC量、V量を固定し、N量を変化させた場合においてもV量、N量の増加に伴いフェライト相中へのV系析出物の生成が促進した。
以上の結果より、仕上圧延後に700℃以上のオーステナイト領域から5〜30℃/secの冷却速度で550〜650℃まで加速冷却を施し、その後の550〜650℃の範囲での等温保定により、パーライト組織中のフェライト相にV系析出物を析出させる際、C量、V量、N量に応じた最適な等温保定時間の範囲が存在することを確認した。
そこで、本発明者らは、安定的にパーライト組織中のフェライト相を強化するための適切なV系析出物の分散状態を確保するため、C量、V量、N量と保定温度と最適な保定時間の関係を実験データに基づき解析を行った。その結果、最適な仕上最終圧延温度、保持時間にはある範囲があることを見出した。
仕上圧延後、700℃以上のオーステナイト領域から5〜30℃/secの冷却速度で550〜650℃まで加速冷却を施し、その後の等温保定において、保定時間(th、sec)が、鋼片の炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)、N量(N、質量)、保定温度(Th、℃)からなる式1
H=710−60×log(10×C)−20×log(10×V)−log(10×N)−2×10/Th・・・ (式1)
で示される値(H)に対し、
H−20<th<H+20
の範囲にあれば、パーライト組織中のフェライト相にV系析出物が多量に生成し、パーライト組織を安定的に強化できる。
ここで、保定時間(th)がH−20よりも短いと、V系析出物の個数が少なく、パーライト組織中のフェライト相の強化が十分に達成できない。一方、H+20よりも長いとV系析出物の個数が過剰となり、フェライト相が著しく強化されてしまい、延性が低下する。そのため、保持時間の範囲をH−20<th<H+20の範囲に限定した。
さらに、本発明者らは、前記請求項の製造条件範囲で、加速冷却および等温保定を行ったレールのパーライト組織中のフェライト相におけるV系析出物の分散状況を調査した。その結果、最適な条件で冷却され、パーライト組織中のフェライト相を強化された鋼レールから検出された析出物は、平均粒子径1nm〜100nmであり、その個数は1μmあたり10〜1,000個の範囲にあった。
析出物は任意断面より薄膜を採取し、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、倍率50,000〜500,000の倍率で観察した。析出物の粒径は、観察により個々の析出物の面積を求め、その面積に相当する円の直径を用いた。析出物は20視野の観察を行い、所定の直径に該当する析出物の数をカウントし、これを所定の視野面積に相当する数に換算した。各レール鋼の代表値はこれら20視野の平均値とした。
また観察の際、V系析出物が炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれかであるかはTEMに付属のエネルギー分散型X線分光法装置(EDX)による組成分析と、TEMによる電子線回折像の結晶構造解析などによって行われる。
(4)仕上最終圧延温度の限定理由
請求項3において仕上最終圧延温度(FT、℃)範囲を、鋼片の炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)、N量(N、質量%)からなる下記の式2で算定される値(P)に対し、P−25<th<P+25に限定した理由について詳細に説明する。
まず、著者らはC量が0.90質量%、V量が0.25質量%、N量が0.0130質量%の鋼インゴットを、熱間圧延試験に供し、断面減少率一定で温度を適宜変更させて仕上最終圧延を行い、圧延後オーステナイト領域である800℃まで空冷した後、水焼入を施し、オーステナイト相中に析出したV量を調査した。
図3に試験結果を仕上最終圧延温度とオーステナイト相中に析出したV量の関係で整理した図を示す。試験結果より、同じ化学成分でもV系析出物が生成しやすい仕上最終圧延温度が存在することを知見した。また、V系析出物が最も生成した仕上最終圧延温度のオーステナイト粒は他の仕上最終圧延温度のものよりも粒成長を抑制していた。
また、V量を0.18質量%、N量を0.0090%とし、C量を0.90〜1.30質量%に変化させた鋼インゴットについて、仕上最終圧延温度930℃、断面減少率一定の条件で仕上最終圧延を行い、800℃まで空冷した後、水焼入れを行い、オーステナイト相中に析出したV量を調査した。
図4に試験結果をC量とオーステナイト相中に析出したV量の関係で整理した図を示す。同じ仕上最終圧延温度でも、C量が1.0質量%、1.1質量%の鋼材は他のC量の鋼材よりもオーステナイト中に析出したV量が多かった。これは、前記V量、N量では1.0〜1.1質量%のC量で930℃付近が最も析出が促進される温度であり、その温度で仕上圧延を行うことで、加工で鋼材中に導入された転位を析出サイトとして、更に析出が促進したためであると考えられる。また、仕上最終圧延温度を上昇させて同様の試験を行なった結果、V量の析出量が多くなる鋼材のC量は高炭素側にシフトした。これは鋼材中のC量が増加することでV系析出物が生成しやすい温度が高温度に移行したためであると考えられる。同様の傾向はC量、N量を固定した鋼インゴットにおいてV量を変化させた場合、あるいはC量、V量を固定し、N量を変化させた鋼インゴットにおいてもV量、N量の増加に伴い析出温度が高温度側に移行し、析出が促進されることを確認した。
以上の結果より、鋼レールを製造する際に仕上圧延工程において仕上最終圧延後熱のオーステナイト粒成長を抑制し、延性を向上させるためにはC量、V量、N量に応じた温度で仕上最終圧延を実施する必要があることを確認した。
そこで、本発明者らは、圧延後のオーステナイト粒成長を抑制するための適切なV系析出物の分散状態を確保するため、C量、V量、N量と析出を促進させるための圧延温度の関係を実験データに基づき解析を行った。その結果、最適な仕上最終圧延温度、保持時間にはある範囲があることを見出した。仕上最終圧延の温度(FT、℃)が、鋼片の炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)およびN量(N、質量)からなる式2
P=750−100×C+400×V−3.0×10×N ・・・ (式2)
で示される値(P)に対し、
P−25<FT<P+25
の範囲にあれば、オーステナイト中にV系析出物が多量に生成し、保定後のオーステナイト粒成長を抑制することができる。
ここで、仕上最終圧延温度(FT)がP+25を越える、あるいはP−25を下回ると、V系析出物の生成開始が遅く、オーステナイト中に析出物を多量に分散させることが出来ず、安定的にオーステナイト粒成長を抑制することができない。そのため、仕上最終圧延温度範囲をP−25<P<P+25の範囲に限定した。
また、本発明では、仕上圧延工程において、断面減少率は特に限定していないが、仕上圧延の際の断面減少率が5%未満では、V系析出物の生成を促進させるだけの十分な量の転位をオーステナイト中に導入することが出来ず、析出物の生成が促進されない。また、断面減少率が30%以上であると加工発熱が大きくなり、V系析出物の生成に最適な温度域から逸脱してしまうため、結果としてオーステナイト粒成長が抑制できない。このため仕上圧延の際の断面減少率は5〜30%の範囲であることが好ましい。
さらに、本発明者らは、上記請求項の製造条件範囲で、仕上圧延を行ったレールのオーステナイト中におけるV系析出物の分散状況を調査した。その結果、最適な条件で圧延され、オーステナイト粒成長を著しく抑制した鋼レールから検出された析出物は、平均粒子径10nm〜100nmであり、その個数は1mmあたり50,000〜500,000個の範囲にあった。
析出物はオーステナイト領域から、水焼入れを施した鋼レールの任意の場所から抽出レプリカ試料、あるいは薄膜試料を採取し、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、倍率10,000〜100,000の倍率で観察した。析出物のサイズはV系析出物の平均粒子径を測定することで求めた。V系析出物が真球状に近い場合は、V系析出物と等しい球の直径を粒子径としたが、真球状ではなく、楕円体、直方体と言った形状の析出物の粒子径は、長径(長辺)と短径(短辺)の平均値とした。析出物は20視野の観察を行い、所定の直径に該当する析出物の数をカウントし、これを所定の視野面積に相当する数に換算した。各レール鋼の代表値はこれら20視野の平均値とした。
また観察の際、V系析出物が炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれかであるかはTEMに付属のエネルギー分散型X線分光法装置(EDX)による組成分析と、TEMによる電子線回折像の結晶構造解析などによって行われる。
なお、本製造方法ではレール頭部の硬さについては特に限定していないが、重荷重鉄道において耐摩耗性を確保するには、Hv350以上の硬さを確保することが望ましい。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に実施例に用いたレールの化学成分を示す。
Figure 2010180443
なお、レールの構成は以下のとおりである。
(1)本発明鋼レール(13本)
符号A〜M:C、V、N、Si、Mnの添加量が上記請求範囲内の鋼レール。
(2)比較鋼レール(10本)
符号a〜j: C、V、N、Si、Mnの添加量が上記請求範囲外の鋼レール。
実施例では引張試験により全伸び、ビッカース硬度により硬度、光学顕微鏡を用いてミクロ組織を調査した。各試験条件を以下に示す。
(3) 頭部引張試験
試験機:万能小型引張試験機
試験片形状:JIS4号相似
試験片採取位置:頭表面より6mm下
平行部長さ:25mm、平行部直径:6mm、伸び測定評点間距離: 21mm
引張速度:10mm/min、試験温度: 常温(20℃)
評価基準:全伸びが7%以上
(4)ビッカース硬度試験
測定位置:レール頭頂面下2mm
荷重:30kgf
負荷時間:15sec
評価基準:硬度が420Hv以上
(5)ミクロ組織
ミクロ組織現出液:3%ナイタール溶液
腐食時間:10sec
評価基準:レール頭部がパーライト組織であること(面積率で2%以内のマルテンサイト、ベイナイト、初析フェライト、初析セメンタイトは許容する)
表2に本発明鋼レール4本(符号B、E、H)と比較鋼レール10本(符号a〜j)の成分の熱間圧延用鋼片を用いて、熱間圧延の仕上圧延工程の仕上最終圧延を950℃で行い、熱間圧延後は720℃から12℃/secで570℃まで加速冷却を施し、その温度で100sec等温保持したレールのミクロ組織および、引張試験により得られた全伸び、ビッカース硬度試験により得られた硬度を示す。本発明の範囲内の製造範囲で製造しても、レールの化学成分が限定した範囲外であると、初析セメンタイトやマルテンサイトの生成による延性の低下、あるいは望ましい析出状態が得られず、延性の低下や高硬度化が達成されないことが確認された。
Figure 2010180443
表3に本発明鋼レール(A、B、C、D、G、K、M)を用いて請求項1に示した製造条件範囲内で製造したレールおよび製造条件範囲外のレールの引張試験の結果得られた全伸び、ビッカース硬度試験により得られた硬度を示す。前記製造条件範囲内で製造されたレールはV系析出物の析出強化により、レールの硬度が上昇した。一方、前記製造条件範囲外で製造されたレールは前記の製造条件の詳細な説明で示したように、初析セメンタイトやマルテンサイトの生成による延性の低下、ラメラ間隔が粗大な低硬度パーライトやベイナイトの生成による硬度の低下が認められた。
Figure 2010180443
表4に本発明鋼レール(B、C、F、G、J、K)を用いて、仕上圧延後、760℃のオーステナイト領域から、冷却速度8℃/secで570〜620℃まで加速冷却を施した後、その温度で等温保持をする工程において、請求項2に示した製造条件範囲内(本発明レール製造方法2)あるいは製造条件範囲外(本発明レール製造方法)で製造した場合のレールの全伸びビッカース硬度を示す。等温保定時間(th)を前記請求項2の1式でレールのC量、V量、N量、等温保定温度から求められるH値に対し、H−20<th<H+20の範囲に収めた場合、等温保定時間を前記範囲外とした場合よりも高い硬度が得られた。本製造方法符号F、GはthがH+20を越えた場合(符号F、G)と比較して高い延性が得られた。
Figure 2010180443
表5に本発明鋼レール(A、C、D、H、I、L)を用いて、仕上圧延を施すに際し、仕上最終圧延温度を前記請求項3に示した製造条件範囲内で製造したレールおよび製造条件範囲外で製造したレールの引張試験の結果得られた全伸び、ビッカース硬度試験により得られた硬度を示す。なお、仕上圧延後は710℃のオーステナイト領域から、冷却速度16℃/secで570℃まで加速冷却を施し、冷却停止後はその温度で60sec等温保持した。仕上最終圧延温度(FT)を前記請求項3の2式でレールのC量、V量、N量から求められるP値に対し、P−25<FT<P+25の範囲に収めた場合、仕上最終圧延温度を前記範囲外とした場合よりも高い延性が得られた。
Figure 2010180443

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.85〜1.40%、V:0.05〜0.50%、N:0.0060〜0.0300、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる熱間圧延用鋼片を用いてレールを製造するに際して、熱間圧延工程における仕上圧延工程後、前記レールの頭部を頭部表面温度が700℃以上のオーステナイト域温度から、5〜30℃/secの冷却速度で加速冷却を施し、レール頭部の表面温度が550〜650℃に達した時点で加速冷却を停止し、引き続き550〜650℃の温度範囲内で5〜180sec保定することを特徴とする高炭素パーライト系レールの熱処理方法。
  2. 前記保定の時間(th、sec)が、鋼片の炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)、N量(N、質量)、保定温度(Th、℃)からなる式1
    H=710−60×log(10×C)−20×log(10×V)−log(10×N)−2×10/Th・・・ (式1)
    で示される値(H)に対し、
    H−20<th<H+20
    の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の高炭素パーライト系レールの熱処理方法。
  3. 前記仕上圧延工程の仕上最終圧延温度(FT、℃)が、鋼片の炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)およびN量(N、質量)からなる式2
    P=750−100×C+400×V−3.0×10×N ・・・ (式2)
    で示される値(P)に対し、
    P−25<FT<P+25
    の範囲にあることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の高炭素パーライト系レールの熱処理方法。
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