JP2010180426A - R−t−b系永久磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b系永久磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】HDDR処理による高い保磁力を有するR−T−B系永久磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】R−T−B相を有する合金粉末を用意し、水素を含む雰囲気中で熱処理を行うことにより、前記合金粉末に対してHD処理を行った後、700℃〜1000℃の温度でDR処理を行うにあたり、(1)水素含有量が、HD反応前の値の1%以下、(2)22Naを用いたγ−γ同時計測法における平均陽電子寿命値のDR反応時間に対する極大値をτmaxとしたとき、前記磁石における陽電子平均寿命値τが、(τmax−τ)≦5ps、の条件を満たす。
【選択図】図1

Description

本発明は、R−T−B系永久磁石の製造方法に関し、特にHDDR法による高い保磁力を有するR−T−B系永久磁石の製造方法に関する。
高性能永久磁石として代表的なR−T−B系永久磁石(Rは希土類元素、TはFeを50原子%以上含む遷移金属、Bはホウ素)は、三元系正方晶化合物でNdFe14B型結晶構造を有するR14B相を主相として含む組織を有し、優れた磁石特性を発揮する。このようなR−T−B系永久磁石は、焼結磁石とボンド磁石とに大別される。焼結磁石は、R−T−B系磁石用合金の微粉末(平均粒径:数μm)をプレス装置で圧縮成形した後、焼結することによって製造される。これに対して、ボンド磁石は、通常、R−T−B系磁石合金の粉末(粒径:例えば100μm程度)と結合樹脂との混合物(コンパウンド)を圧縮成形、射出成形などにより成形して製造される。
焼結磁石の場合、比較的粒径の小さい粉末を用いるため、個々の粉末粒子が磁気的異方性を有している。このため、プレス装置で粉末の圧縮成形を行うとき、粉末に対して配向磁界を印加し、それによって、粉末粒子が磁界の向きに配向した成形体を作製することができる。
一方、ボンド磁石において磁気的な異方性を発現するためには、用いる粉末粒子内の硬磁性相の容易磁化軸(R14B相の場合はc軸)が一方向に配向していることが必要である。また、実用上必要な保磁力を得るためには、粉末粒子を構成する硬磁性相の結晶粒を単磁区臨界粒経程度まで小さくすることが必要となる。従って、優れた異方性ボンド磁石を作製するためには、これらの条件を両立した希土類合金粉末を得なければならない。
異方性ボンド磁石用の希土類合金粉末を製造するため、現在、HDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)処理法が一般的に採用される。「HDDR」は、水素化(Hydrogenation)および不均化(Disproportionation)と、脱水素化(Desorption)および再結合(Recombination)とを順次実行するプロセスを意味している。公知のHDDR処理によれば、R−T−B系合金のインゴットまたは粉末をHガス雰囲気またはHガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、それによって、上記インゴットまたは粉末に水素を吸蔵させた後、例えばH分圧13Pa以下の真空雰囲気またはH分圧13Pa以下の不活性雰囲気になるまで温度500℃〜1000℃で脱水素処理し、次いで冷却することによって合金磁石粉末を得る。
上記処理において、典型的には、次のような反応が進行する。すなわち、前記水素吸蔵を起こすための熱処理により、水素化および不均化反応(双方を合わせて「HD反応」と呼ぶ。反応式の例:Nd2Fe14B+2H2→2NdH2+12Fe+Fe2B)が進行し、微細組織が形成される。次いで脱水素処理を行うための熱処理を実行することにより、脱水素および不均化反応(双方を合わせて「DR反応」と呼ぶ。反応式の例:2NdH2+12Fe+Fe2B→Nd2Fe14B+2H2)が起こり、微細なR2Fe14B結晶相を含む合金が得られる。なお、前記水素吸蔵を起こすための熱処理(HD反応が起こる熱処理)を「HD処理」、前記脱水素処理を行うための熱処理(DR反応が起こる熱処理)を「DR処理」と呼ぶ。
HDDR処理を施して製造されたR−T−B系合金粉末は、大きな保磁力を示し、磁気的な異方性を有している。このような性質を有する理由は、金属組織が実質的に0.1〜1μmと非常に微細で、かつ容易磁化軸が一方向にそろった結晶の集合体となるためである。より詳細には、HDDR処理によって得られる極微細結晶の粒径が正方晶R14B系化合物の単磁区臨界粒径に近いために高い保磁力を発揮する。この正方晶R14B系化合物の非常に微細な結晶の集合体を「再結晶集合組織」とよぶ。HDDR処理を施すことによって、再結晶集合組織を持つR−T−B系合金粉末を製造する方法は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
HDDR処理によって作製された磁性粉末(以下、「HDDR粉末」と称する)を用いて作製された異方性ボンド磁石は、高いエネルギー積と形状自由度の大きさから、さまざまな製品への応用展開が期待されている。
特公平6−82575号公報 特公平7−68561号公報
HDDR粉末の磁気特性、特に保磁力は、HDDR処理の諸条件に影響されるが、高保磁力が得られる最適条件、特にDR処理における処理雰囲気や処理時間の最適条件は、合金組成、HD処理条件などに大きく依存する。これまでの研究から、R−T−B系永久磁石の保磁力は主相であるNdFe14B型化合物相の粒界近傍における微細組織に大きく支配されると考えられている。HDDRプロセスにおいては、この微細組織が大きく変化し、結果として固有保磁力(HcJ)や減磁曲線の角形性に大きく影響する。また、発明者らの最近の検討によれば、HDDR処理を用いた従来の方法では、保磁力発現のためには、磁石組織において、NdFe14B型化合物相の結晶粒間にNdリッチ相が形成されることが必要であることを知見している(T. Nishiuchi et al, IEEJ Transactions on Electric and Electrical Engineering, Vol.3,p.390 (2008).)。これらの組織変化と保磁力の関係を理解し、高保磁力が得られる組織となるようなDR処理条件を求めることにより、DR処理の最適条件を求めることができる可能性がある。しかしながら、これら最適条件は前述のとおり組成やHD処理条件に大きく依存するため、各組成、各HD処理条件ごとに電子顕微鏡観察によって微細組織の変化を観察し、DR処理の最適条件を求めることは非常に困難である。
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、HDDR処理による高い保磁力を有するR−T−B系永久磁石の製造方法を提供することにある。
発明者らは種々の検討の結果、陽電子消滅法をR−T−B系永久磁石に適用することにより、保磁力発現に関与しているNdFe14B型化合物相の粒界近傍における微細組織の情報が、R−T−B系永久磁石の広い領域から得られる可能性があること、さらに、特定の水素量や陽電子寿命を有するR−T−B系永久磁石が、磁気特性、特に保磁力や減磁曲線の角形性に優れていることを知見し、本発明を完成させた。
以上のようにして完成された本発明のR−T−B系永久磁石の製造方法は、 R−T−B相を有する合金の粉末を用意し、水素を含む雰囲気中で熱処理を行うことにより、前記合金の粉末に対して水素化・不均化処理を行った後、前記合金の粉末に対して、700℃〜1000℃の温度で脱水素・再結合処理を行うにあたり、
(1)水素含有量が、脱水素反応ならびに再結合反応前の値の1%以下、
(2)22Naを用いたγ−γ同時計測法における平均陽電子寿命値の脱水素−再結合反応時間に対する極大値をτmaxとしたとき、前記磁石における陽電子平均寿命値τが、(τmax−τ)≦5ps、
の条件を満たす、ことを特徴とする。
好ましい形態において、陽電子寿命測定で得られるスペクトルに対して、前記陽電子平均寿命値を用いてフィッティングを行なった時のχ分析におけるχ−1(qはマルチチャンネルアナライザのチャンネル数)の値が1.5以上である。
好ましい形態において、陽電子寿命測定で得られるスペクトルに対して、高寿命成分および低寿命成分の2成分解析におけるフィッティングを行なった時の高寿命成分の陽電子寿命値が200ps以上であり、かつ、高寿命成分と低寿命成分の和に対する高寿命成分の割合(相対強度)が30%以上である。
好ましい形態において、前記合金中のRの含有量が12モル%以上20モル%以下、Bの含有量が5モル%以上10モル%以下である。
本発明によれば、原料合金組成、HD処理条件の違いにかかわらず、DR処理の最適処理時間を比較的簡易な方法で設定することができ、設定した条件を含む製造方法で得られるR−T−B系永久磁石は、他のDR処理条件で得られる同一組成、同一HD処理条件の磁石よりも高い保磁力や減磁曲線の角形性を有しており、その結果、耐熱性や減磁耐力が向上している。
(a)はDR処理過程での保磁力HcJの推移を示すグラフであり、(b)は平均陽電子寿命τの推移を示すグラフである。 本発明で用いた陽電子寿命測定システムの模式図である。
本発明のR−T−B系永久磁石の製造方法においては、R−T−B相を有する合金の粉末を用意し、水素を含む雰囲気中で熱処理を行うことにより、前記合金の粉末に対して水素化・不均化処理を行った後、前記合金の粉末に対して、700℃〜1000℃の温度で脱水素・再結合処理を行うにあたり、
(1)水素含有量が、脱水素反応ならびに再結合反応前の値の1%以下、
(2)22Naを用いたγ−γ同時計測法における平均陽電子寿命値の脱水素−再結合反応時間に対する極大値をτmaxとしたとき、前記磁石における陽電子平均寿命値τが、(τmax−τ)≦5ps、
の2つの条件を満たすように、脱水素・再結合処理の時間を設定する。
まず、前記条件の(1)について説明する。本発明の製造方法においては、R−T−B系永久磁石中の水素量がDR処理前の1%以下に低減されるまでDR反応を進行させる。HDDR法によって作製するR−T−B系永久磁石の組成は、例えばR=Nd、T=Feとすると、NdFe14Bの化学量論組成よりもNdリッチな組成を通常採用するが、R−T−B系永久磁石中の水素量がDR処理前の水素量の1%を超える場合には、化学量論組成よりも過剰なNdの少なくとも一部がNdHの状態で残存しており、結果、保磁力に寄与するNdリッチ相がNdFe14B相の結晶粒間に十分形成されないため、優れた保磁力が得られない。
水素量の測定方法としては、燃焼法による測定や、昇温脱離質量分析(TDS)による分析など公知の方法が採用されるが、吸着水分に由来する水素を排除する際には、TDSがより簡便である。この場合、10−5Pa以下の真空度で、室温から1000℃までの昇温における水素発生量を積分して水素量を導出する。DR反応前、すなわち、HD処理が十分に進行したときの水素量は、組成、とくにRの含有量に依存するが、概ね2000ppmから4000ppmの範囲の値をとる。
次に、前記条件の(2)について説明するが、それにあたり、まず陽電子消滅法について概略を説明する。
陽電子消滅法は、材料内に存在する空孔や転位、粒界など原子尺度の欠陥の情報を材料の広い領域から得ることができる極めて独特な手法であり、陽電子消滅法をR−T−B系永久磁石に適用することにより、保磁力発現に関与しているNdFe14B型化合物相の粒界近傍における微細組織の情報が、R−T−B系永久磁石全体から得られる。
陽電子は電子の反粒子、すなわち電荷の符号が正であることのほかは電子と同じ性質をもつ粒子である。陽電子は、材料中に導入されると材料の表面や内部で捕捉され、その後、材料内の電子と会合したときに対消滅してγ線を放出する。陽電子消滅法はこのγ線を計測して材料の解析を行う手法である。
対象材料がR−T−B系永久磁石のような金属材料の場合、空孔や転位、結晶粒界などの格子欠陥があり、欠陥の中には正の電荷を持つ原子核からの影響が小さいものが存在する。陽電子はこうした欠陥に優先的に捕捉される。欠陥に捕捉された陽電子は、例えばその欠陥のサイズが大きいほど陽電子が電子と会合して対消滅する確率が小さくなり、欠陥内にとどまって存在する時間(寿命)が長くなる。このような陽電子の特徴を利用してR−T−B系永久磁石の陽電子寿命を計測することにより、磁石内に存在する空孔、転位、粒界などの空孔型格子欠陥に関する情報が磁石全体から得られる。
前記条件の(2)において、平均陽電子寿命τの値は、この陽電子寿命を測定することによって求める。なお、本願明細書における平均陽電子寿命τとは、例えば後述する22Naから陽電子が放出される時に発生するγ線の検出時刻と陽電子が材料内で消滅したときに発生するγ線の検出時刻の差tの関数となる陽電子寿命スペクトルF(t)から装置の分解能やバックグラウンド、線源成分(線源自身や線源を封入しているカプトン箔など)などの影響を除去した後、式1に基づいて単一成分で陽電子寿命のフィッティングの最適化を行って求めた値である。
T(t)=(1/τ)exp(−t/τ) (式1)
図1にDR処理過程での平均陽電子寿命τと保磁力HcJの推移を示す。図1からわかるようにDR処理開始直後平均陽電子寿命τは低下し、その後上昇するが、極大値を取ってさらに下降に転じる。R−T−B系永久磁石のDR処理時の平均陽電子寿命τは、原料合金の組成やHD条件の違いにより微妙に値が変わるものの、グラフの形状的にはほぼ同様の推移をたどることが発明者らの研究により判っている。
DR反応においては、HD反応によって分解生成したRH2相、α−Fe相、Fe2B相からR2Fe14B相が形成される。DR反応開始時には、このRH2相とα−Fe相の界面に陽電子が捕獲されることで平均陽電子寿命τが上昇していると考えられ、前記DR処理開始直後の平均陽電子寿命τの低下は、陽電子が捕獲され消滅するサイトがRH2相とα−Fe相の界面から再結合により形成されたR2Fe14B相中へと入れ替わることによるものだと考えられる。また、その後の平均陽電子寿命の上昇は、R2Fe14B相の再結合が進むことによって生じるR2Fe14B相同士の結晶粒界が形成され、この粒界における陽電子寿命が長寿命であるために起こると考えられる。図1からわかるように、この平均陽電子寿命τの上昇は保磁力HcJの上昇に対応している。
その後平均陽電子寿命は極大値をとって下降に転じる。この極大値を取る時点で再結合反応は完了しており、その後の平均陽電子寿命の低下は平均陽電子寿命τの減少はR2Fe14B結晶粒が成長した結果として、結晶粒界に到達して消滅する長寿命の陽電子成分の割合が減少していることによるものと考えられる。保磁力HcJの極大値は平均陽電子寿命τの極大値にほぼ一致しており、平均陽電子寿命τの減少と同様に保磁力HcJも低下している。
上記のことから、平均陽電子寿命τが極大値を取る時点は、最も高い保磁力HcJが得られる時点であり、ここでDR反応を完了させることにより、最も保磁力HcJが高い磁石が得られる。すなわち、この極大値をとる時間がDR処理の最適処理時間であることがわかる。
前記のことから、本発明では、この極大値をτmaxとしたとき、前記磁石における陽電子平均寿命値τが、(τmax−τ)≦5psとなるようにDR処理時間を設定する。(τmax−τ)は3ps以下であることがより好ましい。これにより、原料組成、HD処理条件にかかわらず、最も保磁力HcJの高いDR処理時間を設定することが可能となる。(τmax−τ)の値が5を超える場合には、図1において平均陽電子寿命が上昇している途中段階でありDR反応の進行が不完全である場合か、平均陽電子寿命が極大値を取った後下降に転じている状態であり異常粒成長などが起っているなどの原因により、保磁力に寄与する組織が十分形成されていない場合であるので、高い保磁力(HcJ)や減磁曲線の角形性が得られない。なお、減磁曲線の角形性を示す指標の一つとしてはH(磁化(J)の値が残留磁束密度(B)の90%となる減磁界の値)がよく用いられる。
なお、τmaxは、DR処理時間を変えたサンプルについて平均寿命を測定して決定するが、特に高いHcJを得たい場合には、τmaxを決定するためのサンプル作製におけるDR処理時間は2分刻みで作製するとよい。
高い保磁力や減磁曲線の角型性に寄与する粒界で陽電子が消滅していることは、χ−1(Variance of the fit)によってさらに明確にすることができる。これらは、τを導出するときに用いる測定スペクトルF(t)を解析することによって得られる。
χ−1の値は、測定スペクトルからバックグラウンドや装置分解能、線源成分における陽電子消滅の影響を除去した後、陽電子の消滅サイトが単一であると仮定した前述の式1に基づいて行なったフィッティングに対するχ検定を行なうことにより求める。ここでχ検定における自由度qとしては、解析に用いたマルチチャンネルアナライザ(MCA)のチャンネル数を用いる。
単一成分の陽電子寿命で測定スペクトルF(t)が記述できる場合、χ−1の値は、平均値1、標準偏差(2/q)1/2の正規分布に従う。χ−1の絶対値は測定条件や解析条件によって変化するが、例えば、時間分解能200ps(FWHM)の装置を用いて、チャンネルあたりの時間分解能を4.9psとし、測定スペクトルF(T)のピークから低時間側25チャンネル、高時間側775チャンネルの計800チャンネルを用いて解析を行い、χ−1が0.9以上1.1以下となった場合には、陽電子寿命は単一成分で記述できると言うことができる。
本発明の製造方法で得られる磁石について先述した測定条件で解析を行って得られたχ−1の値は、典型的には1.5以上となり、さらには1.7以上に及ぶ。χ−1がこのような値をとるのは、主相であるNdFe14B相で消滅する低寿命の陽電子と保磁力に寄与するNdリッチ相の近傍で消滅する高寿命の陽電子が存在するとともに、高寿命の陽電子の割合が高くなっているからであると解釈され、高い保磁力が得られる材料組織を規定していることと対応している。χ−1の値が1.5未満の場合には、DR反応の進行が不完全であったり、異常粒成長などが起っているなどの原因により、保磁力に寄与する組織が十分形成されておらず、高い保磁力や減磁曲線の角形性が得られない。
また、高い保磁力や減磁曲線の角型性に寄与する粒界で陽電子が消滅していることは、2成分解析を用いて高寿命成分に関する値を求めることによっても確認することができる。これは、測定スペクトルからバックグラウンドや装置分解能、線源成分における陽電子消滅の影響を除去した後、陽電子寿命が高寿命成分ならびに低寿命成分の2種類のみで記述されると仮定した式2に基づいてフィッティングを行なった時の、高寿命成分の陽電子寿命τならびに相対強度Iを求めることによって得られる。
T(t)=(I/τ)exp(−t/τ)+(I/τ)exp(−t/τ)、ただしI+I=1.0(100%)、τ<τ (式2)
本発明の製造方法で得られる磁石について、式2のτ、I、τ、Iの値を全て固定することなくフィッティングの最適化を行うと、τは200ps以上の値をとり、Iは0.3(30%)以上の値をとる。これは、高い保磁力や減磁曲線の角型性に寄与するNdリッチ相近傍で消滅している陽電子が十分に存在していることを示している。
以下、陽電子寿命測定の詳細について説明する。
陽電子寿命測定には種々の手法が存在するが、本発明では、陽電子が線源から発生すると同時に生じるγ線と、材料内に導入された陽電子が材料内の電子と対消滅(2光子消滅)したときに生じるγ線の2本のγ線の発生時刻の差を用いる、γ−γ同時計測法を用いる。
γ−γ同時計測法には,fast-fast coincidence 法ならびに,fast-slow coincidence 法があり、後者の方が後述する装置分解能の点で有利であるが、fast-fast coincidence法 の装置構成を適性化することにより、適切な装置分解能を得ることができれば、同手法の高い測定速度を活かすことが可能となる。
一般的に陽電子が発生してから十分焼鈍された金属材料内で消滅するまでの時間は、100〜160ps(ピコ秒:10−12秒)程度と非常に短い。この時間は測定システムが有する測定分解能と同程度のオーダーであり、得られたデータを解析するためには、統計的な処理が本質的に必要とする。これら処理によるデータの精度を向上させるためには、250ps(FWHM)以下の装置分解能を有する測定システムを用いることが好ましい。
図2に本発明で用いたfast-fast coincidence法による陽電子寿命測定システムの模式図を示す。陽電子を発生させる線源としては22Na、58Co、64Cu、55Co、57Ni、90Nb、68Geなどの放射性同位元素が用いられ、陽電子は、原子核のβ崩壊に伴って放出される。これらの放射性同位元素の中でも22Naは半減期が2.6年と長く、β崩壊による陽電子の発生を効率的に行なうことができるという点で、線源として最良である。以下、22Naを用いた測定方法について詳細に述べる。
陽電子をサンプルに導入する方法としては、種々の方法が存在するが、サンドイッチ法は本発明の測定を簡便に行なえると言う点で本発明の永久磁石の評価に好適に用いられる。この方法は、例えば線源である22NaClをポリイミドフィルム箔に密封し、ポリイミド箔を板状の固体サンプルで挟み込んだり、粉末中に埋め込んだりして、線源から放出される陽電子をサンプル内に導入する方法である。
試料内に打ちこまれた陽電子は、熱化(Thermalization)により1ピコ秒程度の極めて短い時間で熱エネルギー(kT:kはボルツマン定数、Tは絶対温度)程度まで減速された後、試料内を拡散する。この拡散過程で、陽電子が試料内の原子空孔や転位、結晶粒界などに到達すると、陽電子はその場に捕獲された後、電子と対消滅(2光子消滅)して、0.511MeVのγ線を放出する。このとき、陽電子と電子が対消滅するまでの時間は陽電子が捕獲された欠陥などのサイトにおける電子密度に反比例する。
線源から陽電子が放出される時に同時に発生する1.28eVと陽電子が資料内で電子と対消滅した時に発生する0.511eVの2本のγ線の検出器としては、時間分解能が高く、エネルギー分解能に優れており、さらに計数効率が高い、という特徴を有しているBaFのシンチレータが好適に用いられる。シンチレータによりγ線は波長200〜400nmの蛍光に変換され、その後、光電子増倍管にて増幅されてパルス信号として取り出された後、コンスタント・フラクション・ディスクリミネータ(CFD)に送信される。CFDに対してスタート信号(主に1.28MeVのγ線に対応)とストップ信号(0.511MeVのγ線に対応)のそれぞれのエネルギーに対応したエネルギーウインドウのないスタート、ストップのタイミングが得られる。このタイミング信号は時間差波高変換機(TAC)に送られ、スタート−ストップの時間差が電圧に変換された後、マルチチャンネルアナライザ(MCA)に時間差の情報として蓄積され、スタート信号とストップ信号の時間差tの関数として陽電子寿命スペクトルF(t)が得られる。
本発明における試料の評価方法は、前述の通り、計測によって得られた陽電子寿命スペクトルF(t)から装置の分解能やバックグラウンドピーク、線源成分(線源やポリイミド箔)などの影響を除去した後、式1に基づいたフィッティングの最適化を行うことにより、平均陽電子寿命τやVariance of the fit χ−1が求まる。また、必要に応じて、先述した手続きを用いて2成分解析を行う。
なお、測定によって得られた陽電子スペクトルF(t)から、これら平均陽電子寿命τならびにχ−1の導出を行なう方法としては、解析コード“Positron Extended”(P. Kirkegaard and M. Eldrup, Computer Physics Communications, 3 (1972) 240-255)(P. Kirkegaard and M. Eldrup,Computer Physics Communications, 7 (1974) 401-409)ならびに解析コード“Resolution”(P. Kirkegaard, M.E ldrup, O. E. Mogenson and P. Pederson, Computer Physics Communications, 23 (1981) 307-335)という解析コードを用いる方法が好適である。
以下に永久磁石の作製方法について説明する。なお、以下に示す作製条件は一例であって本発明を限定するものではない。
<合金組成>
本発明における出発合金は、R(希土類元素)とT(Feを50原子%以上含む遷移金属)とB(ほう素)を含むものを用いる。また、典型的にはRの総量を10原子%以上20原子%未満、Bの総量を3原子%以上15原子%未満とする。なお、ほう素の一部をC(炭素)で置換してもよい。
RとしてはNdおよび/またはPrを主体とすることが望ましく、R全体の70%以上とすることが望ましい。また、Rの一部をDyやTbで置換することで、最終的な永久磁石が発揮し得る保磁力のポテンシャルを向上させることができる。なお、本発明においてY(イットリウム)は希土類元素であるとし、Rの1種として含みうる。
Tは、Feを50%以上含む遷移金属であるが、遷移金属の中でもCoは、HDDR反応を適切に進行させ、高い飽和磁束密度を得るために有効な働きをする。Co量は1原子%以上20原子%以下とすることが好ましい。Co量が1%未満では、高飽和磁束密度Bと高保磁力HcJを両立させることが困難となるのに対し、Coが20原子%を超えると、本発明の永久磁石を作製するためのHD反応を進行させることが困難となり、水素圧力を高く設定する必要が生じるなど、大量生産を行う際に問題となる可能性があるからである。
また、本発明において、0.01原子%以上1原子%以下のGaを添加することは、高飽和磁束密度Bおよび高保磁力HcJを両立する磁粉を容易に得ることができるため好ましい。Gaが0.01%未満であると、Ga添加の効果がみられない。一方、Gaは高価な元素であり、添加量が1原子%を超えると、コストの上昇を招来するだけでなく、HD反応の進行が極端に遅くなり、高い磁気特性を得ることが却って困難となる。なお、Ga添加量は0.1原子%以上0.7原子%以下がより好ましい。
また、本発明では、これらの元素の他に、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ta、W、Biなどの元素を適宜添加してもよい。ただし、これらの元素の添加総量が5原子%を超えると、磁気特性の低下を招くため、総添加量は5原子%以下に調整することが好ましい。
<出発合金>
出発合金は、例えば、ブックモールド法、遠心鋳造法、ストリップキャスト法、アトマイズ法、拡散還元法などの公知の合金作製方法によって得られ、典型的には、三元系正方晶化合物でNdFe14B型結晶構造を有するR14B相を主相として全体の70体積%以上含んでいる。
これらの方法によって作製された出発合金に対しては、マクロ偏析の解消、結晶粒の粗大化、α−Fe相の減少などを目的として、均質化熱処理を行なっても良い。均質化熱処理としては、例えば窒素以外の不活性ガス雰囲気中で1000〜1200℃、1〜48時間の処理を行う。この熱処理によってR−T−B系合金インゴット中の元素の拡散が生じ、成分が均質化される。
R−T−B系合金インゴットは、主に、主相であるRFe14B相、Rリッチ相、およびBリッチ相から構成されているが、RFe14B相の他にα−Fe相やRFe17相などの強磁性相が存在していたり、添加元素のマクロ偏析が起こっていたりすることが多い。そのため、熱処理によって、R−T−B系合金インゴット中のα−Fe相およびRFe17相等を拡散し、これらの相をできるだけ消滅させるとともに、マクロ偏析を解消して、実質的に強磁性相がRFe14B相のみからなる均質な組織にすることが好ましい。
このような均質化処理により、RFe14B相の平均結晶粒径は約100μm以上に粗大化する。適正な平均結晶粒径はHDDR処理に供する粉末の大きさによって適宜決定されるが典型的には30μm以上とする。
均質化熱処理を行う場合に、不活性ガス雰囲気として窒素を用いない理由は、窒素がR−T−B系合金と反応するためである。1000℃未満の温度では、R−T−B系合金中の元素拡散に時間がかかりすぎるため製造コストを引き上げ、また、別の相が形成されるために好ましくない。一方、熱処理温度が1200℃を超えると、合金の融解が生じるため好ましくない。より好ましい熱処理温度範囲は、1100℃〜1150℃の範囲で合金組成などに応じて適宜設定される。なお、熱処理時間が1時間未満の場合には元素拡散が不十分になるが、逆に48時間を超える長時間の処理を行う意義はない。
<粉砕>
次に、出発合金を公知の方法で粉砕することにより、出発合金粉末を作製する。粉砕は、例えばジョークラッシャーなどの機械的粉砕法や、水素吸蔵崩壊法を用いて行うことができる。
水素吸蔵崩壊法による場合は、上記の出発合金を0.05〜1.0MPaの水素雰囲気で5分〜10時間保持することにより合金に水素を吸蔵させ、合金を脆化させればよい。出発合金は水素を吸蔵すると、自然崩壊を起こし、亀裂が生じる。このような水素粉砕は、R−T−B系インゴットを圧力容器中に入れた後、純度99.9%以上のHガスを50〜1000kPaまで導入し、次いでその状態を5分〜10時間保持することによって行うことができる。こうして、粒径1000μm以下の原料粉末を得る。水素粉砕後に行う機械粉砕は、例えば、フェザーミル、ボールミル、またはパワーミルなどの粉砕機を用いて行うことができる。
こうして得た粗粉砕粉は、略単一の結晶方位を有する粒子から構成されており、各粒子の中では磁化容易軸が一方向にそろっている。この結果、HDDR処理によって得られる永久磁石が磁気的な異方性を示すことが可能になる。本実施形態で使用する出発合金は、結晶方位が同一方向に揃ったNdFe14B型結晶相が20μm以上のサイズを有している。このことは、最終的に高い磁気特性、特に高い飽和磁束密度Bを得る上で重要である。
本実施形態における出発合金粉末の平均粒径は特段限定されないが、最終的にボンド磁石用粉末を得る場合には、30μm未満になると、HDDR処理によって粉末を構成する粒子間の拡散凝集が過度に生じるため、HDDR処理後の解砕が困難となり、結果として高い磁気異方性を有する磁粉を得ることが困難となる。一方、平均粒径が300μmを超えると、結晶方位が同一方向に揃ったNdFe14B型結晶相のみから構成され、かつ、α−Fe相のない合金組織を得ることが困難となり、結果として、高い飽和磁束密度Brおよび保磁力HcJを両立する磁粉を得ることが困難となる。これらの理由により、出発合金粉末の平均粒径は、30〜300μmであることが好ましく、50〜150μmであることが更に好ましい。
<HDDR処理>
続いてHDDR処理を行うが、HDDR処理は出発合金を粉砕した粉末に対して行っても良いし、特願2008−72213号に記載の方法のように、出発合金を粉砕した粉末を圧縮成形した圧粉体に対して行っても良い。
HDDR処理は、前述したように水素化・不均化処理(HD処理)と脱水素・再結合処理(DR処理)とに分けられる。水素化・不均化処理および脱水素・再結合処理は、同一の装置内で行うこともできるが、別の装置を用いて行うことも可能である。水素化・不均化処理および脱水素・再結合処理を、連続的または不連続的に行うことにより、HDDR処理を完結することができる。
HD処理は、水素中での熱処理で、これに伴い、HD反応が進行して、少なくともR水素化物相(RはYを含む希土類元素の少なくとも一種)、α−Fe相、Fe−B化合物相を含む組織が得られる。
HD処理のための昇温時における雰囲気は、真空中、または水素、アルゴン、ヘリウムなどを単独または混合ガスとして用いる。
700℃以上1000℃未満の温度に昇温した後、水素ガスを導入して水素雰囲気とし、HD処理を行なう。水素ガスを導入する温度は、合金組成に応じて適切なレベルに設定される。1000℃以上の温度で水素を導入すると、HD反応の進行が極めて遅くなるため、水素ガスを導入する温度(HD処理温度)は1000℃以下が好ましい。また、HD処理時の水素分圧は、10kPa以上500kPa未満が好ましく、20kPa以上300kPa未満が好ましく、30kPa以上150kPa未満がさらに好ましい。
HD処理における高温での保持時間は合金組成によって適宜選定されるが、HD処理によってR水素化物相(RはYを含む希土類元素の少なくとも一種)、α−Fe相、Fe−B化合物相などへの分解を十分に進行させるために、HD処理時間は15分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。また、HD処理時間が長時間となると、HDDR処理後の異方性が低下し、Brの低下を招くため、HD処理時間は8時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。
前記HD処理を行なった後にDR処理を行い、脱水素反応ならびに再結合反応を進行させることによって、平均結晶粒径0.1μmから2μmのRFe14B相を主体とする希土類系永久磁石が得られる。
DR処理の温度は700℃以上1000℃未満にて実施する。DR処理時の雰囲気は、真空や不活性ガス雰囲気など、水素分圧が1kPa未満の雰囲気で行なう。DR処理の処理時間は、前述のとおり設定される。
<解砕、粉砕>
脱水素化・再結合処理が終了した後、室温まで冷却された材料は、弱い凝集体を形成している場合がある。このような場合、公知の方法で解砕を行えばよい。また、最終的な目的に応じて、さらに粉砕による粒度調整を行なってもよい。粉砕方法は、公知の粉砕技術を使用することができるが、粉砕時の磁石粉末の酸化を抑制するために、Arなどの不活性ガス雰囲気で粉砕を行うことが好ましい。
<磁石粉末の応用>
得られた磁石粉末は、必要に応じて公知の表面処理を行った後、ボンド磁石や熱間成形磁石の製造に用いることができる。ボンド磁石を製造する場合、主として圧縮成形、射出成形、押出し成形などにより成形される。得られたボンド磁石には、さらなる耐食性や耐酸化性の付与を目的として、樹脂塗装やめっきなどの方法で、被膜を形成しても良い。
Nd12.5FebalCo6.5Ga0.2組成のインゴットを1110℃で16時間熱処理を行なった後、アルゴン雰囲気中で機械的に粉砕し、分級することで53〜300μmの粉末を作製した。
得られた粉末を管状熱処理炉に投入し、大気圧のアルゴン流気中で840℃まで1時間で昇温し、840℃で15分保持した後、炉内の雰囲気を大気圧の水素流気に切り替えて、さらに4時間保持することにより、水素化反応ならびに不均化反応を進行させ、その後、5.33kPaの減圧アルゴン流気中で840℃で表1に示す時間保持することにより、脱水素反応ならびに再結合反応を進行させ、その後、冷却し、実施例ならびに比較例のサンプルを得た。
Figure 2010180426
なお、水素化反応ならびに不均化反応のみを進行させ、脱水素反応ならびに再結合反応を行なわずに、冷却したサンプルをX線回折法(XRD)にて評価した結果、主にNdH相、α−Fe相、FeB相で構成されていることを確認した。
一方、表1に示す、種々の脱水素−再結合反応時間で得られたサンプルの水素量を昇温脱離型質量分析計(TDS)で測定した。TDSの測定条件としては、10−5Pa以下の真空度で、1℃/秒の条件で昇温した。
また、種々の脱水素−再結合反応時間で得られたサンプルの陽電子寿命測定をγ−γ同時計測法を用いて行なって平均陽電子寿命値ならびにχ−1の値を求めるとともに、DR処理を2分刻みとして作製したサンプルの平均陽電子寿命の測定値から、脱水素−再結合反応における平均陽電子寿命の最大値τmaxを求めた。
具体的には、装置分解能が190ps(FWHM)で、マルチチャンネルアナライザ(MCA)のチャンネルあたりの時間幅は4.9ps、チャンネル数8192である、図2に示すシステムを用いて、カプトン箔に密封した50μCiの22NaCl線源をサンプル粉末中に埋め込んで測定を行なった。測定はガンマ線のカウント数が100万カウントになるまで実施し、これを3回繰り返して測定して得られた値の平均値をτとした。
実試料の測定に先立ち、線源自身ならびにカプトン箔内で消滅する陽電子の寿命ならびに消滅比率を、標準試料を用いて求めた。標準試料としては、Nd12.5Febal6.5のインゴットを溶体化処理して結晶粒を十分に粗大化させたものを用いた。また、陽電子寿命と相対強度は先述した解析コード“Resolution”を用いた。
次に表1に示す各サンプルについて、陽電子寿命スペクトルF(t)を測定し、得られたスペクトルに対して、先述した方法で得られた線源自身ならびにカプトン箔内で消滅する陽電子の寿命ならびに消滅比率の値を固定して解析コード“Positron Extended”を用いてフィッティングの最適化を行い、陽電子寿命τを求めた。なお、フィッティングの範囲は、各サンプルについて得られたF(t)のピーク位置から短時間(短寿命)側25チャンネル、長時間(長寿命)側775チャンネルの計800チャンネルとした。
なお、本実施例におけるτmaxの値はDR処理時間18分のときの175.1psであった。
また、得られたサンプルのHcJ(固有保磁力)ならびにH(磁化の値がB(残留磁束密度)の90%となる減磁界の値)を振動試料型磁力計(VSM)を用いて求めた。
得られた結果を表2に示す。実施例に示すサンプルは、本発明の水素量、平均陽電子寿命τの条件を満たしており、高いHcJならびにHが得られており、(τmax−τ)≦3psを満たすDR18分ならびに20分で特に高いHcJならびにHが得られた。一方比較例のサンプルは、本発明の水素量、平均陽電子寿命τのいずれかが満たされておらず、HcJまたはHが低い値にとどまった。
Figure 2010180426
次に、DR20分のサンプルについて得られた陽電子寿命スペクトルF(t)について、装置分解能やバックグラウンド、線源成分などの影響を除去した後、式1を用いてフィッティングを行ない、χ−1を求めた。具体的には、測定スペクトルF(t)のピーク位置から短時間(短寿命)側25チャンネル、長時間(長寿命)側775チャンネルの計800チャンネルを用いて、解析を行った。この条件において、χ−1が1.5以上となった場合には、陽電子寿命は粒界で消滅する長寿命成分を含む2成分以上であると言うことができるが、DR20分のサンプルにおけるχ−1の値は1.94であった。
また、DR20分のサンプルについて得られた陽電子寿命スペクトルF(t)について、装置分解能やバックグラウンド、線源成分などの影響を除去した後、F(t)のピーク位置から短時間(短寿命)側25チャンネル、長時間(長寿命)側775チャンネルの計800チャンネルを用い、τ、I、τ、Iを固定することなく式2によるフィッティングの最適化を行なう2成分解析を行い、3回の測定における解析結果の平均値から、高寿命成分の陽電子寿命τと相対強度Iを求めた。結果、τ=229.3ps、I=0.41(41%)であり、高い保磁力に寄与するNdリッチ相で消滅する高寿命の陽電子が存在していることを確認した。
本発明によれば、原料合金組成、HD処理条件の違いにかかわらず、DR処理の最適処理時間を比較的簡易な方法で設定することができ、設定した条件を含む製造方法で得られるR−T−B系永久磁石は、他のDR処理条件で得られる同一組成、同一HD処理条件の磁石よりも高い保磁力や減磁曲線の角形性を有しており、その結果、耐熱性や減磁耐力が向上しており、従来のボンド磁石が用いられてきた種々の用途により好適に利用され得る。

Claims (4)

  1. 水素化・不均化反応ならびに脱水素・再結合反応による、R−T−B系永久磁石(Rは希土類元素、TはFeを50原子%以上含む遷移金属)の製造方法であって、
    R−T−B相を有する合金粉末を用意し、水素を含む雰囲気中で熱処理を行うことにより、前記合金粉末に対して水素化・不均化処理を行った後、
    前記合金粉末に対して、700℃〜1000℃の温度で脱水素・再結合処理を行うにあたり、
    (1)水素含有量が、脱水素反応ならびに再結合反応前の値の1%以下、
    (2)22Naを用いたγ−γ同時計測法における平均陽電子寿命値の脱水素−再結合反応時間に対する極大値をτmaxとしたとき、前記磁石における陽電子平均寿命値τが、(τmax−τ)≦5ps、
    の条件を満たす、R−T−B系永久磁石の製造方法。
  2. 陽電子寿命測定で得られるスペクトルに対して、前記陽電子平均寿命値を用いてフィッティングを行なった時のχ分析におけるχ−1(qはマルチチャンネルアナライザのチャンネル数)の値が1.5以上の条件を満たすように、脱水素・再結合処理の時間を設定する、請求項1に記載のR−T−B系永久磁石の製造方法。
  3. 陽電子寿命測定で得られるスペクトルに対して、高寿命成分および低寿命成分の2成分解析におけるフィッティングを行なった時の高寿命成分の陽電子寿命値が200ps以上であり、かつ、高寿命成分と低寿命成分の和に対する高寿命成分の割合(相対強度)が30%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のR−T−B系永久磁石の製造方法。
  4. 合金中のRの含有量が12モル%以上20モル%以下、Bの含有量が5モル%以上10モル%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のR−T−B系永久磁石の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101451508B1 (ko) * 2013-04-22 2014-10-15 삼성전기주식회사 Nd-Fe-B계 희토류 소결 자석의 제조방법

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