以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FR(Front engine Rear drive)車両である。なお、FR以外の車両であってもよい。
車両は、エンジン1000と、オートマチックトランスミッション2000と、トルクコンバータ2100と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成する油圧回路4000と、プロペラシャフト5000と、デファレンシャルギヤ6000と、後輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。エンジン1000により、オルタネータおよびエアコンディショナーなどの補機1004が駆動される。エンジン1000の出力トルク(エンジントルクTE)は、電子スロットルバルブ8016の作動量、すなわちスロットル開度などに応じて変化する。なお、エンジン1000の代わりにもしくは加えて、駆動源にモータを用いるようにしてもよい。また、ディーゼルエンジンを用いるようにしてもよい。ディーゼルエンジンにおいては、インジェクタの開弁時間(作動量)、すなわち燃料噴射量に応じて出力トルクが変化する。
オートマチックトランスミッション2000は、トルクコンバータ2100を介してエンジン1000に連結される。オートマチックトランスミッション2000は、所望のギヤ段を形成することにより、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。なお、ギヤ段を形成するオートマチックトランスミッションの代わりに、ギヤ比を無段階に変更するCVT(Continuously Variable Transmission)を搭載するようにしてもよい。さらに、油圧アクチュエータもしくは電動モータにより変速される常時噛合式歯車からなる自動変速機を搭載するようにしてもよい。
オートマチックトランスミッション2000から出力された駆動力は、プロペラシャフト5000およびデファレンシャルギヤ6000を介して、左右の後輪7000に伝達される。
ECU8000には、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、エアフローメータ8012と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024と、油温センサ8026と、水温センサ8028と、車輪速センサ8030とがハーネスなどを介して接続されている。
シフトレバー8004の位置(ポジション)は、ポジションスイッチ8006により検出され、検出結果を表す信号がECU8000に送信される。シフトレバー8004の位置に対応して、オートマチックトランスミッション2000のギヤ段が自動で形成される。また、ドライバの操作に応じて、ドライバが任意のギヤ段を選択できるマニュアルシフトモードを選択できるように構成してもよい。
アクセル開度センサ8010は、アクセルペダル8008の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。エアフローメータ8012は、エンジン1000に吸入される空気量を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
スロットル開度センサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ8016の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。電子スロットルバルブ8016により、エンジン1000に吸入される空気量が調整される。
なお、電子スロットルバルブ8016の代わりにもしくは加えて、吸気バルブ(図示せず)や排気バルブ(図示せず)のリフト量や開閉する位相を変更する可変バルブリフトシステムにより、エンジン1000に吸入される空気量を調整するようにしてもよい。
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数(以下、エンジン回転数NEとも記載する)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数NI(トルクコンバータ2100のタービン回転数NT)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOを検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
油温センサ8026は、オートマチックトランスミッション2000の作動や潤滑に用いられるオイル(ATF:Automatic Transmission Fluid)の温度(油温)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
水温センサ8028は、エンジン1000の冷却水の温度(水温)を検出し、検出結果を表わす信号をECU8000に送信する。
車輪速センサ8030は、2つの前輪ならびに2つの後輪7000のそれぞれに対して設けられる。すなわち、車輪速センサ8030は、4つの車輪のそれぞれに対して設けられる。車輪速センサ8030は、各車輪の回転速度を検出し、検出結果を表わす信号をECU8000に送信する。
ECU8000は、ポジションスイッチ8006、アクセル開度センサ8010、エアフローメータ8012、スロットル開度センサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024、油温センサ8026、水温センサ8028、車輪速センサ8030などから送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)8002に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。なおECU8000により実行されるプログラムをCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録して市場に流通させてもよい。
本実施の形態において、ECU8000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)ポジションであることにより、オートマチックトランスミッション2000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、オートマチックトランスミッション2000を制御する。前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されることにより、オートマチックトランスミッション2000は後輪7000に駆動力を伝達し得る。なおDレンジにおいて、8速ギヤ段よりも高速のギヤ段を形成可能であるようにしてもよい。形成するギヤ段は、車速とアクセル開度とをパラメータとして実験等により予め作成された変速線図に基づいて決定される。なお、ECU8000は複数のECUに分割される。
図2を参照して、プラネタリギヤユニット3000について説明する。プラネタリギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸2102を有するトルクコンバータ2100に接続されている。
プラネタリギヤユニット3000は、フロントプラネタリ3100と、リアプラネタリ3200と、C1クラッチ3301と、C2クラッチ3302と、C3クラッチ3303と、C4クラッチ3304と、B1ブレーキ3311と、B2ブレーキ3312と、ワンウェイクラッチ(F)3320とを含む。
フロントプラネタリ3100は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である。フロントプラネタリ3100は、第1サンギヤ(S1)3102と、1対の第1ピニオンギヤ(P1)3104と、キャリア(CA)3106と、リングギヤ(R)3108とを含む。
第1ピニオンギヤ(P1)3104は、第1サンギヤ(S1)3102および第1リングギヤ(R)3108と噛合っている。第1キャリア(CA)3106は、第1ピニオンギヤ(P1)3104が公転および自転可能であるように支持している。
第1サンギヤ(S1)3102は、回転不能であるようにギヤケース3400に固定される。第1キャリア(CA)3106は、プラネタリギヤユニット3000の入力軸3002に連結される。
リアプラネタリ3200は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。リアプラネタリ3200は、第2サンギヤ(S2)3202と、第2ピニオンギヤ(P2)3204と、リアキャリア(RCA)3206と、リアリングギヤ(RR)3208と、第3サンギヤ(S3)3210と、第3ピニオンギヤ(P3)3212とを含む。
第2ピニオンギヤ(P2)3204は、第2サンギヤ(S2)3202、リアリングギヤ(RR)3208および第3ピニオンギヤ(P3)3212と噛合っている。第3ピニオンギヤ(P3)3212は、第2ピニオンギヤ(P2)3204に加えて、第3サンギヤ(S3)3210と噛合っている。
リアキャリア(RCA)3206は、第2ピニオンギヤ(P2)3204および第3ピニオンギヤ(P3)3212が公転および自転可能であるように支持している。リアキャリア(RCA)3206は、ワンウェイクラッチ(F)3320に連結される。リアキャリア(RCA)3206は、1速ギヤ段の駆動時(エンジン1000から出力された駆動力を用いた走行時)に回転不能となる。リアリングギヤ(RR)3208は、プラネタリギヤユニット3000の出力軸3004に連結される。
ワンウェイクラッチ(F)3320は、B2ブレーキ3312と並列に設けられる。すなわち、ワンウェイクラッチ(F)3320のアウターレースはギヤケース3400に固定され、インナーレースはリアキャリア(RCA)3206に連結される。
図3に、各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。この作動表に示された組み合わせで各ブレーキおよび各クラッチを作動させることにより、前進1速〜8速のギヤ段と、後進1速および2速のギヤ段が形成される。
図4を参照して、油圧回路4000の要部について説明する。なお、油圧回路4000は、以下に説明するものに限られない。
油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ4006と、マニュアルバルブ4100と、ソレノイドモジュレータバルブ4200と、SL1リニアソレノイド(以下、SL(1)と記載する)4210と、SL2リニアソレノイド(以下、SL(2)と記載する)4220と、SL3リニアソレノイド(以下、SL(3)と記載する)4230と、SL4リニアソレノイド(以下、SL(4)と記載する)4240と、SL5リニアソレノイド(以下、SL(5)と記載する)4250と、SLTリニアソレノイド(以下、SLTと記載する)4300と、B2コントロールバルブ4500とを含む。
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトが回転することにより、オイルポンプ4004が駆動し、油圧を発生する。オイルポンプ4004で発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ4006により調圧され、ライン圧が生成される。
プライマリレギュレータバルブ4006は、SLT4300により調圧されたスロットル圧をパイロット圧として作動する。ライン圧は、ライン圧油路4010を介してマニュアルバルブ4100に供給される。
マニュアルバルブ4100は、ドレンポート4105を含む。ドレンポート4105から、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の油圧が排出される。マニュアルバルブ4100のスプールがDポジションにある場合、ライン圧油路4010とDレンジ圧油路4102とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102に油圧が供給される。このとき、Rレンジ圧油路4104とドレンポート4105とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがRポジションにある場合、ライン圧油路4010とRレンジ圧油路4104とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104に油圧が供給される。このとき、Dレンジ圧油路4102とドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがNポジションにある場合、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の両方と、ドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧およびRレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
Dレンジ圧油路4102に供給された油圧は、最終的には、C1クラッチ3301、C2クラッチ3302およびC3クラッチ3303に供給される。Rレンジ圧油路4104に供給された油圧は、最終的には、B2ブレーキ3312に供給される。
ソレノイドモジュレータバルブ4200は、ライン圧を元圧とし、SLT4300に供給する油圧(ソレノイドモジュレータ圧)を一定の圧力に調圧する。
SL(1)4210は、C1クラッチ3301に供給される油圧を調圧する。SL(2)4220は、C2クラッチ3302に供給される油圧を調圧する。SL(3)4230は、C3クラッチ3303に供給される油圧を調圧する。SL(4)4240は、C4クラッチ3304に供給される油圧を調圧する。SL(5)4250は、B1ブレーキ3311に供給される油圧を調圧する。
SLT4300は、アクセル開度センサ8010により検出されたアクセル開度に基づいたECU8000からの制御信号に応じて、ソレノイドモジュレータ圧を調圧し、スロットル圧を生成する。スロットル圧は、SLT油路4302を介して、プライマリレギュレータバルブ4006に供給される。スロットル圧は、プライマリレギュレータバルブ4006のパイロット圧として利用される。
SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、SL(5)4250およびSLT4300は、ECU8000から送信される制御信号により制御される。
B2コントロールバルブ4500は、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104のいずれか一方からの油圧を選択的に、B2ブレーキ3312に供給する。B2コントロールバルブ4500に、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104が接続されている。B2コントロールバルブ4500は、SLUソレノイドバルブ(図示せず)から供給された油圧とスプリングの付勢力とにより制御される。
SLUソレノイドバルブがオンの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において左側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、SLUソレノイドバルブから供給された油圧をパイロット圧として、Dレンジ圧を調圧した油圧が供給される。
SLUソレノイドバルブがオフの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において右側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、Rレンジ圧が供給される。
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置のシステム構成について説明する。図5に示すように、制御装置は、パワートレーンドライバモデル(PDRM: Power train Driver Model)9000と、ドライバーズサポートシステム(DSS: Drivers Support System)9010と、VDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management)システム9020と、ECT(Electronic controlled Transmission)トルク制御システム9030と、パワートレーンマネージャ(PTM: Power Train Manager)9100と、エンジン制御システム9200とを備える。
広義のドライバモデル(パワートレーンドライバモデル9000とドライバーズサポートシステム9010)に対して、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数条件に合わせたスムージングが行なわれ、そのタイミングはECTトルク制御システム9030とのタイミングの整合がとれるようにされる。
パワートレーンドライバモデル9000は、ドライバの操作に基づいて、エンジン1000に対するドライバの要求エンジントルクを設定するために用いられるモデル(関数)である。
エンジントルクにオートマチックトランスミッション2000の現在のギヤ比およびデファレンシャルギヤ6000のギヤ比を乗じ、後輪7000の半径で除算することにより、エンジントルクは駆動力に変換される。したがって、要求エンジントルクは車両の駆動力に関する要求値である。
本実施の形態においては、実験およびシミュレーションの結果などに基づいて予め定められたエンジントルクマップに従って、アクセル開度ならびに車速などからエンジン1000に対する要求エンジントルク(エンジン1000の出力トルクの要求値)が設定される。なお、ドライバの要求エンジントルクを設定する方法はこれに限らない。
ドライバーズサポートシステム9010は、クルーズコントロールシステム、パーキングアシストシステムおよびプリクラッシュセーフティシステムなどにより、車両の挙動に応じて要求エンジントルクを自動的に設定する。
クルーズコントロールシステムは、ドライバにより設定された車速を維持するシステムである。パーキングアシストシステムは、運転者が設定した位置への駐車を全自動もしくは一部自動で行なうシステムである。たとえば、運転者が設定した位置へ駐車するためのステアリング操作ならびに車速制御が自動で行なわれる。プリクラッシュセーフティシステムは、車両の衝突を防止するシステムである。たとえば、車両が前方を走行する車両に接近すると、減速するように車速が制御される。
ドライバーズサポートシステム9010は、これらの制御を行なうために必要な要求エンジントルクを、設計者により予め作成されたマップなどに基づいて自動的に設定する。
VDIMシステム9020は、VSC(Vehicle Stability Control)、TRC(TRaction Control)、ABS(Anti lock Brake System)、EPS(Electric Power Steering)などを統合するシステムであって、アクセル、ステアリング、ブレーキの操作量によるドライバの走行イメージと、各種センサ情報による車両挙動との差を算出し、その差を縮めるように車両の駆動力、ブレーキ油圧などを制御する。
VSCは、前後輪が横滑りしそうな状態をセンサが検出して場合において、各輪のブレーキ油圧および要求エンジントルクなどの最適値を自動的に設定し、車両の安定性を確保する制御である。
TRCは、滑りやすい路面での発進時および加速時に、駆動輪のスリップをセンサが検出すると、各輪のブレーキ油圧およびエンジン1000の要求エンジントルクなどの最適値を自動的に設定し、最適な駆動力を確保する制御である。
ABSは、ブレーキ油圧の最適値を自動的に設定し、車輪のロックを防止する制御システムである。EPSは、電動モータの力によってステアリングホイールの操舵をアシストする制御システムである。
ECTトルク制御システム9030は、オートマチックトランスミッション2000の変速時にエンジン1000に対して要求する要求エンジントルクを設定する。ECTトルク制御システム9030が設定する要求エンジントルクは、たとえば、変速ショックを低減するためのトルクダウンもしくはトルクアップを実現し得るように設定される。
図6に示すように、アップシフトする際、トルク相中において、エンジン1000に対するドライバの要求エンジントルクよりもエンジントルクが大きくなるようにトルクアップが行なわれ、イナーシャ相中において、エンジン1000に対するドライバの要求エンジントルクよりもエンジントルクが小さくなるようにトルクダウンが行なわれる。
図5に戻って、パワートレーンマネージャ9100は、パワートレーンドライバモデル9000、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020およびECTトルク制御システム9030から要求される要求エンジントルクを集約するトルク調停部9102を備える。
トルク調停部9102は、パワートレーンドライバモデル9000、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020およびECTトルク制御システム9030から要求される複数の要求エンジントルクの中から、エンジン1000の制御に用いる要求エンジントルクを決定するように、複数の要求エンジントルクを調停する。
たとえば、車両の運転状態に応じて、最大の要求エンジントルク、もしくは最小の要求エンジントルクをエンジン1000の制御に用いる要求エンジントルクとして決定する。また、予め定められた条件が満たされた場合には、パワートレーンドライバモデル9000、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020およびECTトルク制御システム9030のうちの特定のシステムから要求される要求エンジントルクをエンジン1000の制御に用いる要求エンジントルクとして決定する。なお、要求エンジントルクを調停する方法はこれらに限らない。
決定された要求エンジントルクは、エンジン制御システム9200に入力される。すなわち、エンジン制御システム9200を介して、要求エンジントルクがエンジン1000に対して要求される。
また、トルク調停部9102は、エンジン1000を決定された要求エンジントルクに応じて制御する時期を定める。すなわち、パワートレーンドライバモデル9000、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020およびECTトルク制御システム9030から要求されるそれぞれの要求エンジントルクがエンジン1000に要求される時期を定める機能は、トルク調停部9102に一元化される。
たとえば、トルク調停部9102は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数NI(タービン回転数NT)を検出する機能を有し、入力軸回転数NIから、エンジン1000を決定された要求エンジントルクに応じて制御する時期を定める。
より具体的には、入力軸回転数NIから、オートマチックトランスミッション2000のアップシフト中におけるエンジン1000のトルクダウンを行なう時期が定められる。
すなわち、ECTトルク制御システム9030からエンジン1000のトルクダウンが要求されていれば、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数NIが低下することによりイナーシャ相の開始が検出され、イナーシャ相の開始に合わせてエンジン1000のトルクダウンが行なわれる。
さらに言い換えると、イナーシャ相が検出されると、ECTトルク制御システム9030からの要求エンジントルクがエンジン1000の制御に用いる要求エンジントルクとして決定され、決定された要求エンジントルクがエンジン1000に対して要求される。
また、トルク調停部9102は、車輪の回転速度を検出する機能を有し、車輪の回転速度から、エンジン1000を決定された要求エンジントルクに応じて制御する時期を定める。
より具体的には、車輪の回転速度から、VDIMシステム9020により要求される要求エンジントルクに応じてエンジン1000を制御する時期が定められる。
すなわち、VDIMシステム9020から、車輪のグリップ力を回復するためのエンジン1000のトルクダウンが要求されていれば、車輪の回転速度が急増したことにより車輪のスリップが検出されて、スリップの検出を起点にしてエンジン1000のトルクダウンが行なわれる。
エンジン制御システム9200は、パワートレーンマネージャ9100から入力された要求エンジントルクを実現するように、電子スロットルバルブ8016、点火時期、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブなど、エンジン1000の出力トルクを制御するためにエンジン1000に設けられた機器を制御する。
すなわち、エンジン制御システム9200は、トルク調停部9102により定められた時期において、エンジン1000をトルク調停部9102により決定された要求エンジントルクに応じて制御する。エンジン制御システム9200は、エンジントルクがトルク調停部9102により決定された要求エンジントルクになるように制御する。
パワートレーンマネージャ9100、パワートレーンドライバモデル9000、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020、ECTトルク制御システム9030およびエンジン制御システム9200は、複数のECUあるいはコンピュータに分散して実装される。
たとえば、パワートレーンマネージャ9100、パワートレーンドライバモデル9000は、共通のECUに実装され、ドライバーズサポートシステム9010、VDIMシステム9020、ECTトルク制御システム9030およびエンジン制御システム9200は、それぞれ別々のECUに実装される。
すなわち、車両には、パワートレーンマネージャ9100およびパワートレーンドライバモデル9000の機能を有するECU、ドライバーズサポートシステム9010の機能を有するECU、VDIMシステム9020の機能を有するECU、およびECTトルク制御システム9030の機能を有するECU、エンジン制御システム9200の機能を有するECUの、少なくとも5つのECUが搭載される。
なお、ECUの数は5つに限らない。パワートレーンマネージャ9100と、パワートレーンドライバモデル9000とを、それぞれ別々のECUに実装するようにしてもよい。その他、任意の組合せで、ECUを統合するようにしてもよい。
各ECUの性能(仕様)は、実装するシステムの要件に応じてECU毎に異なり得る。また、ECU間の通信速度もECU毎に異なり得る。
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、パワートレーンドライバモデル、ドライバーズサポートシステム、VDIMシステムおよびECTトルク制御システムにおいて定められる要求エンジントルクは、パワートレーンマネージャのトルク調停部に集約される。トルク調停部は、複数の要求エンジントルクの中からエンジンの制御に用いる要求エンジントルクを決定するように複数の要求エンジントルクを調停するとともに、エンジンを決定された要求エンジントルクに応じて制御する時期を定める。エンジン制御システムは、トルク調停部により定められた時期において、エンジンをトルク調停部により決定された要求エンジントルクに応じて制御する。これにより、エンジンを要求エンジントルクに応じて制御する時期を定める機能をパワートレーンマネージャのトルク調停部に一元化することができる。そのため、パワートレーンドライバモデル、ドライバーズサポートシステム、VDIMシステムおよびECTトルク制御システムを実装する各ECUから、パワートレーンマネージャを実装するECUへの通信速度を考慮せずとも、正確な時期において、エンジンを、パワートレーンドライバモデル、ドライバーズサポートシステム、VDIMシステムおよびECTトルク制御システムからの要求エンジントルクに応じて制御することができる。そのため、エンジンの制御精度を向上することができる。
また、各システムを実装するECU間の性能および通信速度の差を考慮せずに、要求エンジントルクを設定できるようになるため、要求エンジントルクを定める際に用いられるマップを作成するために要する工数を抑制することができる。そのため、車両の開発期間を短縮することができる。
なお、要求エンジントルクの代わりに、車両に対する要求駆動力を用いるようにしてもよい。この場合、エンジン制御システム9200は、車両の駆動力がトルク調停部9102により決定された要求駆動力になるようにエンジン1000を制御するようにしてもよい。すなわち、要求駆動力に後輪7000の半径を乗じ、オートマチックトランスミッション2000の現在のギヤ比およびデファレンシャルギヤ6000のギヤ比で除算することにより要求駆動力から変換された要求エンジントルクを実現するようにエンジン1000を制御するようにしてもよい。
また、要求エンジントルクの代わりに、車両に対する要求加速度を用いるようにしてもよい。この場合、エンジン制御システム9200は、車両の加速度がトルク調停部9102により決定された要求加速度になるようにエンジン1000を制御するようにしてもよい。すなわち、要求加速度に車重を乗じて算出される要求駆動力を実現するようにエンジン1000を制御するようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1000 エンジン、1004 補機、2000 オートマチックトランスミッション、2100 トルクコンバータ、5000 プロペラシャフト、6000 デファレンシャルギヤ、7000 後輪、8000 ECU、8002 ROM、8004 シフトレバー、8006 ポジションスイッチ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 エアフローメータ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ、8026 油温センサ、8028 水温センサ、8030 車輪速センサ、9000 パワートレーンドライバモデル、9010 ドライバーズサポートシステム、9020 VDIMシステム、9030 ECTトルク制御システム、9100 パワートレーンマネージャ、9102 トルク調停部、9200 エンジン制御システム。